2ntブログ

■当サイトは既婚女性を中心に描いている連続長編の官能小説サイトです■性的な描写が多く出てくる為18歳歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい■

第10章  賞金を賭けられた美女たち 19話 六刃仙2人の脱出作戦

第10章  賞金を賭けられた美女たち 19話 六刃仙2人の脱出作戦

廊下から差し込む淡い光を避けるように、沙織と香織は身を寄せ合い、無機質な金属製のテーブルの後ろにしゃがんで隠れていた。

そんな二人が隠れた部屋の前を、何者かがカツカツと足音をさせて通り過ぎてゆく。

廊下を照らす灯りを遮り、足音を響かせて通り過ぎてゆく人影を背中に感じながら、二人は息を殺していた。

沙織は目覚めたばかりで、いまだに隣にいる香織ともほとんど会話はできていない。

それでも沙織は、場所も状況も全くわからないが、この場所が敵地であり、自身と同僚である前迫香織ともども敵の手に落ちてしまったのだと見当をつけていた。

沙織は神経を集中し、廊下を歩く気配が部屋を通り過ぎ、遠ざかっていくのを感じると、ようやくゆっくりと肺にたまった息を吐きだし隣にいる同僚の顔を覗き込んだ。

「かおりん。大丈夫?」

ひとまずの危機が去ったことで南川沙織は、隣で顔色を蒼白にして息を切らせている前迫香織を気遣ったのだ。

沙織が目覚めたときから香織の様子はおかしかったし、一緒に廊下を逃げているときも香織はどこか精彩を欠いているように見えたからだ。

普段なら立場は逆で、クールな前迫香織が暴走しがちな南川沙織を気遣う場合が多いだけに、沙織は心配そうに香織の顔を伺うように言ったのである。

「大丈夫です。沙織こそひどい怪我だったのですよ?」

そんな沙織の様子を感じ取ったのか、香織も普段の口調で、沙織より3つ年上らしく優しくそう返してきたが、その顔には不安とも言えない憂いを帯びていることに、沙織は顔を曇らせないように話を逸らせた。

「治癒入魂するから」

沙織はそれ以上追求せず短くそう言うと、握っていたいくつかのメスを物色し出した。

沙織は先ほどの部屋からつかみ取ってきた医療用の刃物のなかから、清潔そうな一本を選び、着ている患者衣の裾で、刃部分の先端をよく拭ってからオーラを込め出した。

普段は部下の一人である十鬼集が造った刃物、治癒専用に造らせている匕首に治癒オーラの入魂をするのだが、身ぐるみをはがされ、愛刀どころか患者衣しか身につけていない。

そのため沙織は、とっさに武器と治癒に利用できそうな刃物を、逃げる際に目ざとく見つけ引っ掴んできたのであった。

いつもの愛用匕首ほどの効果は期待できないが、治癒できる道具が有るのにこしたことはない。

淡い緑色の光が沙織の両手から発っせられ、握った刃物いわゆる円刃と呼ばれる医療用のメスへと流し込む。

沙織の治癒は特殊で、刃物を媒介させなければ効果を発現できない。

もともと治療は得意ではないのだが、沙織はたゆまぬ努力で得手でもなく適正も乏しい治癒を何とかモノにしていた。

しかし本来とは違った形で、しかも通常の治癒能力者に比べて効果も低いながら、高嶺六刃仙の中では唯一の治癒使い手なのである。

左手薬指の【爪衣蓑】に仕込んでいた治癒匕首はS島ですべて使い果たしてしまっていた。

「できた・・。かおりん使って」

沙織は治癒の力を込めたメスを香織に差し出した。

「ありがとう。でも私の傷を癒しても役に立てないわ。オーラが回復するまでしばらくかかりそうなの」

香織は少し迷うそぶりを見せたが、メスを手にしている沙織の手を握り押し戻した。

「でも・・」

沙織は、はだけた香織の患者衣から覗く包帯に滲む傷口を見て顔を悲しませた。

「大丈夫・・傷はふさがってるの。血が滲んでるから見た目は派手だけど」

先ほど袁揚仁に弄られる際に、治癒を浴びせられたため香織の傷口は完全に塞がっていたのだ。

香織は患者衣をはだけ、整ってはいるが控えめなバストを露わにすると、沙織に心配させないように包帯を解いてゆく。

そこにはうっすらと打撲痕が残ってはいるが、傷口自体はすっかりふさがっている様子であった。

「ね。だからそれは沙織に使って。それに沙織の方こそ傷はいいの?治癒入魂ができるということは、オーラは少し戻ってるんでしょうけど肝心の傷は?沙織は銀獣にずいぶん傷つけられていたのですよ?」

香織がそう言うと沙織は可愛らしい顔にエクボをほころばせかけたが、きっ痛みをこらえる顔になった。

「ほら・・やっぱり」

「つつつ・・。あのケモノ女」

沙織は肩口と鎖骨付近を抑え、恨めし気に目を吊り上げてそう言った。

不十分な状態で銀獣こと稲垣加奈子に甚振られた屈辱が、沙織の脳裏に思い出され、言葉に変えられない感情が沸きあがってくる。

沙織の傷は見た目にほぼ塞がっているが、肩口から肺に達するまで太刀を突き刺されたのだ。

肺をはじめ、筋肉を複雑に傷つけられた見えない部分の治癒はいまだ不完全で、先ほどまで緊張と我慢で痛みを抑え込んでいただけだったのだ。


香織は沙織が手にしているメスを優しく取ると、そのまま沙織の肩と鎖骨の間に治癒入魂されたメスをゆっくり差し込んだ。

「うっく!」

自分で治癒入魂したメスが、自分の白い肌に食い込んでいく、鈍い痛みに沙織は顎を上げて短く悲鳴を上げてしまう。

メスが刺さった傷口から鮮血がぷっくりと湧き出してくるが、肌に食い込んだ刃が淡く緑色に光って治癒のオーラが沙織の体内に流れ込んでいく。

「この治癒。人に刺すのは何ともないけど、自分に刺すのってけっこうぞくっとするよね」

「ふふっ、何ともない?沙織は人をいつも匕首で仲間を治療するときでも楽しそうですもんね」

「え・・そう見えてるんだ?」

「ええ、そう見えてますよ」

香織の答えに沙織は、痛みと治癒が混ざった不思議な感覚に耐えるように片目を閉じ聞き返すも、香織からは笑顔で再度そう言い渡されてしまった。

そうなのかなぁ。と沙織が首をかしげている間にも治癒は進み、完全とは言えないでも痛みがほぼ気にならない程度になってきた。

沙織は体の回復を認めると、香織に向きなおり真剣な顔で問いかけた。

「かおりん・・。状況教えてほしい。わかる範囲でいいから。・・ここはどこ?さっきのヤツはだれ?・・なっちゃんさんは?」

淡い緑色の治癒の光をまとったメスを自分に使ってくれた香織に感謝の目を向けて、沙織は問いかけた。

沙織は敵にとっては悪鬼のごとく思われているが、沙織にしても味方であり、普段から気に掛けてくれ、何かと尻ぬぐいをしてくれている香織や奈津紀にはその可愛らしい人形のような顔を素直に向けるのだ。

香織は頷くと、沙織に刺していたメスが治癒の光を失う寸前に引き抜いて口を開いた。

「・・・私たちは宮コーの大量人員投入により撤退を余儀なくされました。50名を超える人員をSに送り込んできたのは覚えていますか?」

篭められていたオーラを放出しきったメスが、金属としての硬度を失い灰のようになって香織の手から床に落ちる。

自らの治癒刃のおかげで傷がほぼ癒え、沙織の顔には普段の血色が戻りつつあり、ほぼ平常を取り戻した様子で返事を返しだした。

「うん。覚えてるよ。かおりんが【見】で見て言ってたね。そのあとなっちゃんさん背負って逃げてるときに銀獣がきて・・そこから私【夢想剣】を使ったから・・」

「そう・・・やはりそこまで・・」

香織のそこまで無理をさせたという色を帯びたセリフに対し、笑顔でかぶりを振った沙織は、まだいくつか持っているメスを物色しマシなものを選び、もう一本だけ治癒刃を作ろうと治癒の力を流し込みだした。

「沙織、わたしは大丈夫なのですよ」

「これ、予備。あと一本ぐらいなら。とっさの時につくってたんじゃ間に合わないからね」

年少である沙織に無理をさせ、いままた回復しきっていないオーラで治癒入魂をしている沙織に、香織は数年前まではまだまだ頼りなかった沙織の成長に目を細めた。

【夢想剣】を使えば意識はなくなる。

身体能力を大幅に向上させ、眼前に居る者全てを殲滅するまで剣を奮う修羅となるが、一度【夢想剣】を使ってしまうと、周囲すべてを殲滅するまで意識はなくなってしまうのだ。

「あの人数相手に【夢想剣】など・・。沙織、私たちを逃がすために・・」

「ほかにもう手はなかったからね。あのケモノ女もいたし・・。でも1日一度の制限を付けてたせいでちゃんと発動してくれなかったの。途中から意識も戻ったし、【夢想剣】自体も解除されちゃったしね・・・。でも、だからかえって命拾いできたのかもしんない・・」

「二度目だったのですか?」

もう一本治癒刃を作成し終わった沙織は、左手薬指の【爪衣蓑】に治癒刃を押し込みながら、バツが悪そうに頷いた。

「う、うん。私たちが海岸で追いかけまわしたムキムキの3人の男たち・・。私と戦ったヤツ相手に一回使っちゃったんだよね」

「それほどの相手だったのですね沙織の相手は・・。しかし一日に【夢想剣】を二回とは・・無茶です・・」

「まあ・・あのままじゃどうせ死ぬしと思って・・ね」

残った数本のメスを一応使えるかな?と物色しながら沙織は左手中指の【爪衣蓑】に押し込みつつ、沙織に自嘲気味の笑顔を向ける。

「・・沙織がいなくなってしまったら悲しいわ。きっと奈津紀も御屋形様も同じ思いのはずよ?」

「ありがとう。でも御屋形様もそう思ってくれるかなあ・・?」

医療用メスをすべて収納し終わった沙織は、片手で口元を隠すようにして真剣に考えこんだ。

「もちろん御屋形様も思ってますよ。それに、沙織には帰りを待つ弟がいるじゃありませんか。私や奈津紀以上に沙織は帰らなくてはいけません。今回ほどの危機は初めてですが、何とか脱出しましょう」

「うん。そうだね」

そう言って二人は患者衣がはだけないよう腰帯できつく結びなおして立ち上がった。

「まずは奈津紀を助けないと、それからできれば私たちの装備もですね・・」

「なっちゃんさん私たちと同じ部屋にいなかったけど、別のところに掴まってるの?」

「ええ、一度【見】で見たときから動いてなければ、あちらの方向です」

「よし行こう」

「慎重に行きましょう。沙織のおかげで怪我はほとんど癒えましたが、オーラはほとんど回復していないのです。沙織は・・?」

「怪我は・・うん・・まだ銀獣にやられた肩口がちょっと痛いけど、表面の傷はふさがってるし、無茶しなきゃ大丈夫。でも、オーラは2割ってとこかな・・。だから、治癒刃もあと一本だけ・・。助けたなっちゃんさんが負傷してたら、なっちゃんさんに使おうと思って。かおりんは怪我は大丈夫なんでしょ?」

「ええ、でもオーラがほぼ枯渇してます。戦力としては期待しないで・・」

「了解。じゃあ、さっきの男には出会わないようにいかなきゃね・・。私の蹴りをまともに受けても立ち上がってたじゃん・・。あいつ何者なの?」

「袁です。香港三合会の袁揚仁、夢喰いの袁揚仁です」

「え?あいつが?・・・でも、どおりで。ってでもここ日本だよね?袁揚仁もいるなら、張慈円と倣華鹿もいて、三合会全員そろってるじゃん」」

「そうなりますね。あのヘリで日本海を渡れるほどの燃料があるはずがありません。おそらくここは日本でしょう。袁揚仁は張慈円と取引したらしく、取引の内容はわかりませんが、私たちの治癒が取引の条件だったようです」

「え?張慈円と取引?・・わたしさっき思いきり袁揚仁のこと蹴っちゃったんだけどまずかったかな?・・どう考えてもまずいよね・・?でもあいつ、かおりんにひどい事しようとしてたよね?」

「ええ・・オーラも刀もない私では袁に抗うことができなかったので、沙織が目覚めてくれて助かったのです」

「そっか・・。でも張慈円と袁揚仁が私のせいでヘソ曲げちゃうならマズいかもしれないね・・。私っていっつも早とちりでかき回しちゃう・・・」

「いいのよ沙織。後で詳しく話すけど、張慈円も袁揚仁ももはや私たちの敵とみてもよさそうなの」

「え?そうなの?!」

張慈円が袁揚仁と取り交わした内容に、私たちを売り払った節があったことを香織は沙織にそれとなく伝えた。

しかし香織は、すでに奈津紀が張慈円に犯され、自身も袁揚仁に奈津紀の脳をリンクさせられて、現実と夢との違いが付かない状態にされてしまい、犯されていると思い込まされ、無意識に自慰してしまっていたことは流石に言い出せなかった。

そして、袁揚仁が香織個人に興味をもって迫ってきところで、運よく予想外の回復の速さで目覚めた沙織が、問答無用で袁揚仁を蹴り飛ばしてくれたことに感謝していた。

「ええ、だから奈津紀を助けて一刻も早く御屋形様に報告しに戻りましょう」

「うん!私が蹴ったのがもとでダメになったんじゃないならよかったよ・・。今度こそ御屋形様に丸坊主にされちゃうもん・・」

沙織は、短くなった髪の毛を指先で摘まみ、かつてロングヘアだったことを思い出して、苦笑した。

「でも、かおりん。いま張慈円が私たちの敵になったって言ったのに、なんで私たちの治癒が取引の条件なの?私たちの敵になったんなら、手酷くやられたままの私たちをそのままトドメ差しちゃえば話早くない?」

「・・・ええ、・・いえ、それは奈津紀を助け出した時に二人に話しますね」

沙織の無意識な当然の質問に、香織はドキリとしたが、曖昧に濁して未来の自分に丸投げしてしまった。

「うん、わかった」

当の沙織はそう聞いたものの、特に疑問を感じた様子もなく、手首や足首をコキコキと鳴らし、体の不調具合を調べながら素直にそう言って返し、油断なく慎重にドアノブに手を掛けた。

「じゃあ行こう。ここって人の気配は少なそうだから、見つかりにくそうではあるけど、広そうだよね。なっちゃんさん助けてとっとと脱出しようよ。・・刀がないとすっごく不安だけど、行くっきゃないもんね」

「ええ、沙織の爪衣蓑には、なにかめぼしい武器や服ってないのかしら?」

長身な香織では簡素な患者衣だけだと、露出部分がどうしても多くなり、裾を抑えながら沙織の背に問いかける。

香織が着ている患者衣は、沙織が来ている患者衣と同じサイズらしく、沙織はスネの中ほどまで服があるが、香織に膝上までしか生地がないのであった。

S島でモゲこと三出光春にムダ毛のことを指摘され、沙織にもでてるよ?と笑われたことが今更だが気になってしまっていたのだ。

彼氏もなく普段パンツルックだったことで、ムダ毛処理の頻度は少なめだったのだ。

「予備で持ってた瓶割刀は取られちゃったみたい・・。あれ太刀の中じゃお気に入りだったのに・・。・・あれも見つけられたらいいんだけど・・。あ、服は、Sでかおりんに渡したのだけなの。ごめんね。・・・飴玉ならあるけど・・いる?」

振り返った沙織は、常備しているお気に入りの飴玉を2個取り出し、自身の口に一つ放り込むと、もう一つを香織についと差し出した。

Sでは丁重にお断りした飴玉だったが、空腹なうえ激しい戦いの連続のストレスで、甘いものが欲しくなっていた香織は、服のことはあきらめて、飴玉をありがたく受け取ると、口に放り込んだのだった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 19話 六刃仙2人の脱出作戦 終わり】20話へ続く

第10章  賞金を賭けられた美女たち 20話 一触即発三つ巴の行方


第10章  賞金を賭けられた美女たち 20話 一触即発三つ巴の行方


私たちは裸足でリノリウムの床を音もなく駆ける。

私の少しだけ後ろを、ショートヘアをなびかせた小柄な同僚、南川沙織も私の【見】を頼りに並ぶように駆けてきている。

私たちには、普段獲物として振るっている刀もなく、そのうえ手負いでオーラ量も乏しい。

しかし、張慈円に売られた今、座して待っていても、袁揚仁の虜になるだけだ。

沙織には奈津紀が張慈円に犯されたことを伝えていない。

沙織の性格からして、激昂するのはわかりきっているし、私たちの治癒を条件に奈津紀が張慈円に犯されたなどと言ったら、沙織がどういう行動をとるのか不安だったからだ。

沙織の性格なら、私たちの芳しくない状況を考えず、張慈円に向って突っ走ってしまう虞すらある。

万全の状態ならともかく、今の私たちの状態で張慈円に挑むのは無謀だ。

私たちの今の状態だと、彼の部下である劉幸喜にすら及ばないかもしれない。

そう言えば劉幸喜はSから脱出するヘリには搭乗していなかった。

あのままSで宮コーに捕まってしまったのかもしれないが、私たちには知る由もないし、今はそんなことを気にしている余裕はない。

私のすぐ後ろには、私よりはずいぶん体調がマシそうな沙織が駆けてきている。

しかしその沙織も二刀流で奮う刀は破損しているし、一刀流で使う大刀の瓶割刀は取り上げられてしまっているようであった。

取り上げられていないなら、沙織ならきっと、さっきは蹴りではなく剣撃を繰りだしているはずだからだ。

とにかく体調も万全には程遠く、刀も持たないこの状況では敵に見つかることは避けたいのである。

こんな状況では敵に見つかるのは極力避けなければならない。

その為には前方10mほどだけに【見】を展開し、敵に見つからぬよう慎重に進みながらも、素早く移動する必要がある。

下着すらなく、薄青色の患者衣だけ身につけているのみで心もとないが、私たちが逃げ出したのはすでにここの主である袁揚仁の知るところだ。

奈津紀を助け出し、敵に見つかる前に急いでここから脱出する。

奈津紀を救出したとしても、奈津紀も万全には程遠いはず。

難しいことだとはわかっているが、何としても脱出し京都の本社まで戻らなければならない。

こんなところで高嶺の最高戦力である六刃仙の3人が、敵の手に落ち嬲られるわけにはいかないのだ。

万全の状態で私たちに刀さえあれば、張慈円とサシでやっても遅れを取るとは思えないが、今は何とかして脱出し機会を伺うべきだ。

「まずは刀を取り返さないといけませんね」

駆けながら隣の沙織にそう言うと、沙織も力強く頷いてきた。

「そうだね。刀が無いとさすがに張慈円ぐらいのヤツを相手するのは無理かもしれない。かおりん。【見】でわかる?オーラをまとってるものなら見えるんでしょ?私の瓶割刀みつけられないかな?九字兼定も京極政宗はSで鈍ガメ男にひん曲げられちゃったのよね・・」

沙織はそう言って【爪衣蓑】に収納している自身の二本の愛刀を思い出したようで、腹立たしそうな表情を浮かべている。

「目が覚めたら瓶割刀も無かったんだけど、ここの何処かにあるんじゃないかな?かおりんの【見】でなら斬撃強化の入魂してる瓶割刀は見えると思うし、かおりんの備前長船長光も見えるんじゃない?」

沙織も、どうしても刀を取り戻したいようだ。

それもそのはずで、私たち剣士は剣あってこそ力を発揮できると言っても過言ではない。

それだけに、私も沙織の言うことはよくわかる。

沙織に言われるまでもなく展開している【見】に反応がないか常に注意してはいるが、如何せん今展開している【見】は、索敵範囲は極小範囲に絞っている。

敵に見つからないようにと、それに乏しいオーラを使い果たしてしまわないよう、前方のみ10mほどにしか使っていないからだ。

しかし、先に奈津紀がいたと思われる方向に進みながら考えていたのだが、やはり刀が無いといざという時にどうしようもない。

「わかったわ。一瞬だけ全開でいきますね」

少ないオーラが更に枯渇してしまいそうで少し迷った。

しかし、刀が無いとやはり脱出すら難しい。

そう判断して、立ち止まり集中し目を閉じる。

極小範囲で展開していた【見】の範囲を、円状に波紋として展開し広げてゆく。

広範囲の【見】の発動で、弱った身体に一気に疲労感が襲い掛かり気を失いそうになるが、額に流れる汗をそのままに、オーラのある気配を探る。

すると、運よくオーラの反応がある方向で引っ掛かり、頭に位置と映像を伝えてきた。

しかし、もっと【見】の範囲を広げようとしたとき気が遠くなりかけ、直後に能力の酷使からか頭痛が襲ってきた。

残念だが、これ以上は無理だ。

「大丈夫?無理させてごめんだけど、何か分かった?刀はある?なっちゃんさんは?」

頭痛でよろめいた私を心配しながらも、沙織が支えるように寄り添って急かすように聞いてきた。

「奈津紀のところまでは【見】を伸ばせませんでしたが、刀を見つけましたよ」

「ほんと?!」

沙織の可愛らしい童顔に大きな目が見開く。

「近くて助かったわ。でもそれ以外は何も分からなかったのです。【見】を広げるのはまだ無理のようです・・」

「ううん。無理させてゴメン。でもよかった。とりあえず刀があるところまで行こう。かおりんの備前も私の瓶割刀もあるんだよね?」

「ええ、ありました。幸い刀はすぐそこの部屋です」

三差路の突き当りにある扉を指してそう言うと、沙織は目を輝かせた。

「でももう私は本当にオーラが尽きてしまってます。【見】も狭い範囲ですらもう一度使えるかどうかですから、敵に出会ってしまうと沙織に負担をかけてしまいますが・・」

「うん。まかせて」

そう力強く頷いた沙織に先立って刀の反応があった方向へと駆け始めたとき、ただでさえ際どい所まで露出してしまっている患者衣がぐいっ!と引っ張られた。

「きゃっ?」

小さく悲鳴を上げてしまい、患者衣になにが引っかかっているのか顔を向ける。

すると、それは私の患者衣を沙織がむんずと掴み、引っ張っていたのだった。

沙織は童顔に大きな目を見開き、焦った表情で危険を伝えてくる。

沙織の様子を察して、私は急いで廊下の角に身を潜めた。

沙織も廊下の向こう側を伺っている。

そっと角から廊下の突き当りを覗くと、ちょうど人影が現れたところだった。

「サングラス野郎だ・・・。くっそ・・!こんなところまで追って来たのかよ!」

沙織が怨恨の籠った視線を廊下の向こう側に向けて吐き捨てるように唸った。

30mほど先にある三差路の突き当りの部屋の前に、サングラスを掛けた男、菊沢宏が周囲を警戒しながら、歩いていたのだ。

親しい同僚である千原奈津紀をSでクレーンの頂上まで追い詰め、刀を奪った挙句、あの高さから海面に叩き落した男。

これが沙織の菊沢宏について知っているすべてである。

沙織は海から引き揚げた時の奈津紀のことを思い出したのか、気配を消しながらも憎々しげに童顔の眉間にしわを寄せて、菊沢宏に向って飛び掛からん気配で睨んでいる。

「沙織っ!いけませんよ。今の私たちでは・・!」

いまにも飛び出していきそうな沙織の肩を手で留めて窘める。

「わかってるっ!・・せめて刀さえあれば・・」

武器もない今、奈津紀ですらあれほど追い詰めたあの男に見つかれば確実に命はない。

沙織も自分が万全でないことに、腹立たし気に唇をかんで言い捨てた。

Sでは万全の態勢で待ち伏せし、一方的に先制攻撃を加えられたが、今は状況が悪すぎる。

私より小柄な沙織は、私の顔のすぐ下で、廊下の角から菊沢宏の一挙手一投足を油断なく注視し、汗をその白いうなじに伝わせている後ろ姿でもわかるほど、身体を強張らせていた。

「さっさとどっかに行けよ!・・そこに私らの刀があるんだよっ!」

沙織がすぐ近くにいる私にすら聞こえない程度の声だが、罵るように呟いた。

しかし、こちらの祈りもむなしく、菊沢宏はサングラスを右手の人差し指で押し上げ、やや前かがみの姿勢でこちらに歩きだしてきてしまった。

「くっ!」

二人で慌てて来た道を裸足で駆け戻り、廊下の角へと身を隠すように滑り込む。

「ちくしょう。何でこんなことしなきゃ・・!」

「あの男は?!」

悔しそうに言った沙織の気持ちはわかるが、今はそれどころではない。

私は廊下の角の向こうの気配を再び探る。

もしかしたら、引き返すかもしれないという淡い期待は水泡と消え、菊沢宏は、しっかりとした足取りで確実に近づいてきていた。

(ここにいたら見つかるわ)

背後を見ると、薄暗い照明が10m間隔程度で照らされている長い廊下が見えた。

菊沢宏がここまで来るのと、私たちが背後の廊下を走り切り、廊下の向こう側へと身を隠すのとどちらが早いかは一目瞭然である。

(・・無理だわ。逃げきれない)

そう思い不運を呪いかけたとき、沙織に腕を掴まれた。

「かおりん・・。やろう!逃げ回るのなんてやっぱりヤダ」

沙織は肚を決めた顔で言い切った。

そして、先ほどの部屋で拝借してきた医療用のメスを【爪衣蓑】から2本出すと、私にも渡してくる。

沙織の言う通り、たしかに逃げ切るのは無理そうだ。

菊沢宏は何者かが潜んでいるのをすでに確信した様子で、しっかりと進んできているのが背中越しに気配で伝わってくる。

暗殺を生業にし、剣客としての人生を歩んでいれば、生きる道が突然に窮することがあると覚悟はしていた。

しかし、このような勝機も薄い状態で、万全の奈津紀ですら勝てなかった相手に、玩具のような医療用メス1本で立ち向か分ければいけないのは無念であった。

得意の得物である備前長船長光を使って、超長距離からの射撃をもってしても屠り切れると言い切れないほどの相手に、メス一本だけとは、いかにも心もとない。

ここが私たちの死に場所か・・。そう言う思いが心を暗く埋め尽くす。

もう一度だけ、菊沢宏が来ているのとは逆方向の背後の廊下に顔を向ける。

急死に一生を得ようとして無意識に振り返ってしまったのだ。

私たちが囚われていた部屋がある、逃げて来た方向。

そちらに逃げ切ることができればという思いであったが、其処にはつい先ほどはなかった見たくもない人影があった。

「やあ、まだそんなところにいたのかい?」

袁揚仁は金属で覆われた殺風景な廊下を、瀟洒な姿に白衣を羽織って、微笑みながら歩み寄ってきていたのだ。

袁揚仁の姿を認めた沙織も死期を悟ったのか、可愛らしい童顔を絶望に蒼くして袁揚仁が近づいてくる様に釘付けになっている。

「君はさっき僕のこと蹴ってくれたね。ひどいじゃないか。君は瀕死の重傷で、僕は君を治療してあげてたんだよ?それをいきなり蹴りつけるなんて・・」

笑顔の袁揚仁が沙織にそう言うが、沙織は答えない。

前からは菊沢宏、後ろからは袁揚仁が迫っており、折れてはいるが廊下は一本道だ。

「ぐっ!?」

突如、沙織の身体がくの字になって吹き飛び、悲鳴を残して私の横から消えた。

いや、沙織は袁揚仁に蹴り飛ばされたのだ。

背後の廊下の壁に激突した沙織が、そのまま尻もちをつく。

「沙織!」

「く・・くそったれが・・」

さすが沙織というべきか、吹き飛ばされはしたものの、きっちり両手でガードしきった様子である。

沙織の無事を確認すると、私は身体を翻し、手にしていたメスを逆手にもって袁揚仁の首筋に振り下ろした。

しかし、手首をつかまれ簡単に背中まで捻り上げられたところでメスを持った手を捻りあげられてしまう。

そして奪われたメスが投げ捨てられ、ちんっ!と音を鳴らして床を鳴らすと、私は後ろから髪の毛を引き掴まれ、顎が上がるようにされてしまった。

「くっ!」

(やはりオーラ強化無しで、こんな速度では見切られてしまいます・!)

「おとなしそうな顔してても、流石に高嶺六刃仙だね。こんな体でずいぶん頑張るじゃないか?でも、いい表情だよ。香織さん。でも、まだこんなところにいるなんて、やっぱり全然体調は戻ってないみたいだね」

私が長身と言っても、袁揚仁の方が長身なため、髪を引っ張られ無理やり顎を上げさせられた顔に、息がかかるほど顔を近づけてそう言ってきた。

袁揚仁の端正で品の良い顔だが、その口元はサディスティックな笑みで歪んでいる。

髪の毛を更に引っ張られてのけ反らされ、唇を再び奪おうとしてきた。

捻り上げられた左手首と左肩が悲鳴を上げる。

顔を背け、右手を伸ばして殴ろうとするも、無理な態勢で力が入らない。

奈津紀が張慈円に犯されるのを容認し、その一部始終の出来事を私が疑似体験できるように脳へリンクした卑劣な男に、いいようにされることの屈辱と怒りが込み上げてくる。

必死の抵抗も、オーラも刀も無いこの身では抵抗らしいこともできない。

不自由な身体では逃げきれず、唇を再び塞がれる。

口惜しさと屈辱で眼を逸らすように閉じたとき、何処か聞き覚えのある落ち着いた低い声がした。

「お前、だれやねん。この女、ケガしとるみたいやけど、お前がやったんか?」

薄目を開けて声の方を見ると、蹴られて壁際に蹲っている沙織のそばにしゃがみ込みこんだ菊沢宏が、袁揚仁に向ってそう言っていたのだ。

サングラス越しにも、菊沢宏の声と表情に怒気が含まれているのが伝わってくる。

なぜ怒っているのかわからないが、沙織にトドメをさす絶好の機会だと言うのに、菊沢宏にその気配はない。

沙織も無防備な状態で菊沢宏に近づかれていることに、最初は目を見開いていたが、菊沢宏が、怒気をはらんだ雰囲気であるにもかかわらず、沙織自身に敵意が向けられていないことに気づいて、沙織はその童顔を困惑顔にして袁揚仁と菊沢宏のやり取りを注視している。

「・・・誰って。人の家に勝手に入ってきて誰とはご挨拶だね。君こそ誰なのさ?」

袁がそう言う為に、私の唇を解放したとき、私は、はじめて袁が驚いた顔をしているのを目にした。

ぴっちぴちで鈍い光沢を不気味に反射するボディスーツを着た屈強のサングラス男がいきなり目の前に現れたのだから無理もない。

しかし、袁揚仁が菊沢宏を見て驚くということは、菊沢宏は袁揚仁と少なくとも協力関係にはないことを意味している。

私は、僅かだが希望を見出した。

「なに?・・・張慈円の根城やないんか?あいつの乗ってたヘリがあったんやが・・」

菊沢宏は小首をかしげ、なにやらブツブツ言っているが、壁際に座ってこちらを伺っている沙織も、私と同じことに気が付いたようである。

この二人は味方同士ではない。

もしかしたら潰し合わせられるかもしれないということにも。

私と同じことを思ったであろう、沙織の目つきがギラりと変わった。

そして沙織は蹴られた腹部を抑えたまま、膝立ちの格好のまま大声で叫んだ。

「おい!グラサン!そいつは袁揚仁!香港三合会三幹部の一人で張慈円の仲間だ!私ら高嶺は張慈円に裏切られたんだ!てめえの目当ては張慈円なんだろ?!そのスカした優男は張慈円の仲間だ!そいつは張慈円とグルなんだよ!そいつなら張慈円の居場所もきっと知ってるはずだ!」

菊沢宏は、沙織の声に振り向きはしなかったが、やや俯き加減に床の一点を眺めているような恰好のまま動かなくなった。

宏が動きを止めたのは1秒にも満たない短い時間であった。

僅かに顔を上げ、油気の無い髪の毛を手櫛でかきあげて袁揚仁を観察したのだろう。

沙織の駆け引きじみたセリフと、目の前の袁揚仁と呼ばれた男の力量と人となりを推し量ったのだろう。

菊沢宏がどう動くかというところであったが、彼は袁揚仁に向ってサングラス越しから鋭い視線を向けた。

「わかった。クソ慈円のことは、この兄ちゃんに聞くことにするわ」

「何者なんだ?・・張慈円と旧知みたいだけど。彼をそう呼ぶってことは仲良くはないみたいだね。まあ、もっとも彼を好いてるヤツより嫌ってるやつの方が多いのは当然か」

捻り上げていた私の手首を放し、袁揚仁は菊沢宏に向かって口を開く。

私を片手で拘束したまま、敵意を向け出した菊沢宏と相対するのは危険だと判断したのだろう。

さすがに袁揚仁も相当な使い手らしく、菊沢宏の実力を侮りがたいとわかったようだ。

私たちは、隙をみてこの場を離れ、刀を回収する・・。

沙織にそうアイコンタクトを送りあったところで、菊沢宏が口を開いた。

「あんたらは早いとこ、お仲間と合流してくれや。さっきまで一緒におったんやが、人影見つけたら追いかけて行ってもたんや。あんたらであのマイペースなねえちゃん探してくれや。垂れ目のソバージュ女や。・・・それと・・俺とやり合った女も生きとるって聞いてるんやが、一緒やないんか?」

その言葉の意味が一瞬わからずに、沙織と目を合わせてから、再び菊沢宏の言葉を咀嚼しようと目を向ける。

今のセリフを言葉通りに解釈すると、ここに私たちの味方が救援に来てるということ、そしてその特徴から同僚の大石穂香に間違いない。

それに、ついこの間、S島で散々やり合ったこの男が、今は味方ということになる。

しかも、奈津紀のことを言っているのだろうが、奈津紀のことを気遣っているような様子が伺える。

「どうなんや?」

菊沢宏がやや答えを急くような様子で重ねて聞いてくるが、それには沙織が口を開いた。

「なんでてめえがなっちゃんさんのこと心配してんだよ。てめえがやったんだろうがよ・・?!ああ?!」

「・・・せやな」

菊沢宏は言葉少なく、そう言った。

菊沢宏の心境は彼の表情からは読み取れないが、とにかく私たちは九死に一生を得たのかもしれない。

我ら六刃仙の一人、大石穂香と一緒にここまで行動してこれたということは、菊沢宏が味方なのはほぼ間違いない。

なぜなら、大石穂香は相手が敵ならば悠長に肩を並べて歩くようなタイプではないからだ。

それに、単独行動をさせると問題を起こしまくる大石穂香が来ているということは、彼女の手綱を引ける人物も来ているということ。

そんなことができる人物には奈津紀を除いては御屋形様しかいない。

「菊沢宏!ここは頼みます。夢喰いの袁揚仁と呼ばれるその男は侮れる強さではありません。香港では、雷帝張慈円が最強とは言われていますが、袁揚仁も相当な強さのはずです・・・!ですが・・、ここは本当に任せていいのですよね?!」

サングラスを掛け、袁揚仁と向かい合ったままむっつりと黙りこくっている菊沢宏に、私は確認を取るように問いかけた。

沙織は、菊沢宏が奈津紀にしたことが腹に据えかねている様子だが、奈津紀と脳をリンクされた私は奈津紀が菊沢宏に対して抱く感情を知ってしまっている。

奈津紀は張慈円に犯されながらも、相手が張慈円でなくこの男ならば・・と思っていた。

あの奈津紀が菊沢宏のことを、そういう風に思っているのであれば、S島で菊沢宏と奈津紀との間に戦い以外の何か特別なことがあったのかもしれない。

あの奈津紀がそこまで心を開いている男を信用してもよさそうだが、一応念を押すように聞いたのだ。

「・・ああ、任せとけや。納得出来たらもう行ってくれ。この兄ちゃんに聞くこと聞きたいからな」

菊沢宏は、言葉こそぶっきらぼうにそう答えたが、私はこの男のことが少しわかった気がした。

(つい昨日お互いに命の奪い合いをしたというのに、この男は・・)

しかしその思いは言葉にせず、私は沙織と目配せし合い、タイミングをはかると、菊沢宏と袁揚仁の二人を残して駆け去ったのだった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 20話 一触即発三つ巴の行方終わり】21話へ続く

第10章  賞金を賭けられた美女たち 21話 高峰弥佳子VS張慈円

第10章  賞金を賭けられた美女たち 21話 高峰弥佳子VS張慈円

白いブラウスに、黑いジャケットとお揃いのタイトスカートというスーツ姿。

バックスリットの入った、やや短めのタイトスカートから伸びる脚線美は、1デニールの光沢を放つ極薄ベージュパンストに包まれて艶美さを放っている。

それでいてその女性自身の表情と、洗練された所作仕草の一つ一つには、近寄りがたさを感じさせる厳たる魂が宿っていた。

その脚線美を持つスーツ姿の女の雰囲気は、艶美さと厳粛さという反する二つが混ざり合い、程よい嫋やかさとなって醸されている。

意志の強さを感じさせる口元は自信に満ち、知的で洞察に優れた目は、やや目尻の方が上がり気高をも感じさせた。

やや暴を感じさせる危険な雰囲気を纏いながらも、その女を見る者が十人いれば十人をして佳絶の美女と断ずるだろう。

スタイルにおいても、身長は170cmほどの長身でありながら、Eカップのバストに90は超えるヒップ、そしてその両者を際立たせるくびれた腰回り。

モデルのような細すぎるスタイルではなく、引き締まった肢体は機能美を極限まで追求し、その上女を十分感じさせるラインを描いていた。

その女が着れば、オフィシャルな黒のスーツ姿すらもエロティックに見えてしまう。

しかし、見る者から見れば、その佳絶美女の表情や仕草、それに言動には、努力や才能の裏付けからくる不遜な色が僅かに見て取れるだろう。

月も恥じて隠れ、美しい花も閉じてしまうほどの佳絶の美人でありながら、地位も財力もあり、高い知識と高い戦闘力をも兼ね備えているが、やや不遜な女、それが高嶺弥佳子なのである。

そのような女は、女性軽視でプライドの高い男性の嗜虐心を猛烈に刺激しているのだが、文字通り高嶺の花となっている弥佳子に、ヨコシマな感情を持って近づいて成功した男は今のところ皆無である。

ヨコシマな男は容赦なく弾き飛ばすものの、高嶺弥佳子の性欲は石木には程遠く、健全な精神と肉体を持っていた。

それ故、時折身分を偽り、変装をして、繁華街をソレ目的で練り歩いたりする時もある。

そして、その時は、その優れた洞察眼にオーラを使用してフル活用し、もっともマシな男を物色しているのだ。

運よく弥佳子が、自身の厳しい眼鏡に適った男を見つけた際は、弥佳子の方から声を掛けて息抜きをしているのだが、今のところそのような戯れが誰かにバレている様子はない。

高嶺製薬の現社長でありながら、剣技の名門高嶺の当主という弥佳子の立場を考えれば、火遊びが過ぎるのだが、ストレス過剰の立場に若くして座った弥佳子には必要なことであった。

(暫くご無沙汰してますからね・・)

弥佳子は普段はまったく見せないが、旺盛な性欲の持ち主なのだ。

下腹部に僅かな淀みに似た疼きを感じ、つい心中でそう言い訳してしまう。

立場を忘れ変装し、被った仮面を外して、羽を伸ばそうと目論んでいた予定が、延期になったのが残念だった。

ここ2か月ほど会社は繁忙期であったし、尚且つ暗殺の裏家業も受注が相次ぎ多忙を極めていたのだ。

Sでの取引が終了すれば、一息つけるはずだったのがそうはならず、今回の事態である。

(しかし、いまはそれどころではありません・・。奈津紀さんたちを救い出し、我ら高嶺を甘く見た張慈円に確実な誅を下すのが優先事項です)

心中でそう呟き、肩まで伸びた艶のある黒髪を、ただ単に手で、かき上げるという何気ない仕草すらも、弥佳子がすると絵になった。

そして、慣れた手つきで腰に履いた二振りの太刀の柄に左手を添え、高嶺弥佳子は背後の神田川真理に確認するように振り返った。

「近くに気配はありません。もちろんこの部屋の中からもです」

弥佳子は、先ほど疼いた下腹部のことなど曖気にも出さず、真理の【未来予知】での反応を真剣な顔で伺っているのだ。

「大丈夫です。私の視界にもこの部屋に危険個所はまったくありません」

弥佳子は、そう返してきた全身ボディスーツに身を包んだ神田川真理にゆるく笑顔で頷くと目の前の扉を開いた。

するとそこは、二人が今まで物色してきた部屋とは、明らかに部屋の作りが違っていた。

簡素な造りではあるが、今までの部屋のように壁や天井が金属むき出しではなく、黒く光沢のある革が張られていたのだ。

室内を数歩歩いた感触でも、床に敷かれている絨毯は、毛足が長く上等なものだとわかる。

しかし、部屋の豪華さや置かれた調度品よりも、目を引いたのは四面ある壁の一面だった。

入口の扉と対になった一面すべてがガラス張りなのだ。

「窓?でもここは地下のはずじゃ・・?」

真理が部屋を見まわし、不審そうに正面の壁一面にあるガラス壁を訝しそうに観察している。

真理の言った通り、この施設は侵入してくる際に確かに地下施設だということはわかっていた。

にもかかわらず、ガラスの外側は部屋の照明より明るいぐらいなのだ。

弥佳子も真理も一瞬外の景色が見えたのかと思ったがそうではないことがすくに分かった。

目が慣れ、窓の外の景色が確認できたからである。

この部屋と同じような部屋が、同じ高さでいくつも並んでいるのだ。

この部屋は、大きな坪庭の中二階あたりの高さにあり、坪庭を見下ろすように配置されているのだ。

「・・なんですかこれは?」

窓に近づき、坪庭のような、といっても上を見上げても空は見えないので、正確には坪庭とは呼べない空間を眺めながら、弥佳子は首を傾げた。

弥佳子の隣で真理も、目元だけが違うよく似た顔を同じように傾けている。

弥佳子達が見下ろしている空間は、形状で言えばタマゴ型であり、その底が直系30mほどはあろうかという不思議な空間であった。

そのタマゴ型の部屋を見下ろすように、タマゴ型の部屋の床から10mほどの高さのところにぐるりと部屋があるのだ。

弥佳子と真理は、その部屋の一つにいるのだ。

「ここはなんでしょうね?」

「・・・何かの実験施設?・・いえ、それならば・・」

弥佳子の問いに真理が答えようとしたが思いなおした。

タマゴ型の空間が実験するスペースであるならば、このような見下ろす部屋は不自然であるし、何より部屋の雰囲気が実験観察をするような仕様ではない。

「闘技場のような娯楽施設・・かしら・・?ここはその観客席なのでは?」

真理はそう言ってから不快そうに眉をひそめた。

弥佳子もふんと鼻で笑い、この部屋の造った下賤を嘲ったものの、心中では囚われている部下たちのことが思い出され、心にさざなみが立った。

「神田川さん。同じような部屋がここを含めて8部屋もあるようですね。ここからその闘技場には降りられないようですが、ここより下の階層に行けば、この悪趣味な施設の中枢に近づけるかもしれません。もしかしたらそこに張慈円がいるかも・・」

弥佳子はタマゴ型の闘技場を見下ろすように壁一面を覆っている硝子を、コンコンと手の甲で小突きながらそう言った。

「その硝子・・。どうやらただの硝子ではないようですね。壁の厚みからしても50cmはありそうです。・・尋常な厚さではありません。その闘技場の中からはもちろん、こちら側からも破壊するのはちょっと無理っぽいですね」

真理も闘技場を部屋から見下ろしながら、硝子に手を当ててそう呟いた。

「・・なるほど、無駄に刃毀れさせることもありませんから、この下に降りられる場所を探しましょう」

そう言った弥佳子が振り返りかけた時、弥佳子は振り返って柳眉を釣り上げた。

正面にある同じような部屋に人影を認めたからである。

「っ!行きますよ!神田川さん!」

「えっ?!な、なに?!」

真理を押しのけるようにして部屋の入口まで駆けた弥佳子に、真理は窓と弥佳子を見比べてから弥佳子を追う。

「間違いありません!いました!張慈円です!」

吐き捨てるように言った弥佳子のセリフを、真理は目で確認することはできなかったが、嘘を言っているはずがないと思い、駆ける弥佳子に続く。

湾曲している廊下を駆け、張慈円が見えたと思われる部屋の前まで一気に走り、弥佳子はドアノブを掴む。

ドアを押し開こうとするも、鍵がかかっているようでびくともしなかったが、弥佳子は躊躇することなく佩いていた太刀の一振り、長曾根虎徹を音もなく抜くと、金属のドアノブの付け根めがけて振り下ろした。

音もなく斬れたドアノブが、廊下の床に落ちるより速く、弥佳子は扉を部屋の内側に蹴り落とすようにして踏みこんだ。

真理も【未来予知】で危機を察知しなかったので、弥佳子の乱暴な行動を止めなかったのだが、扉を足で倒し、部屋に踏み込んだところで弥佳子と真理は部屋に壁にあるモニタに映ったものに目を疑い驚いた。

『っ?!』

オーラで五感を強化し、扉を蹴り飛ばしても即座に攻撃されないとわかっていた弥佳子も、【未来予知】で危険が無いとわかっていた真理も、扉が開くと同時に息を飲んだのだ。

「見てはなりません!」

そう叫び自らのジャケットを脱いだ弥佳子は、脱いだジャケットを部屋の中央奥にある大きなモニタに覆いかぶせた。

(・・ハム女だわ。一足遅かった・・のね)

弥佳子と同時に部屋に入った真理の目に入らないわけがない。

一瞬だけ見えた停止された画像には、涙を流し、歯を食いしばって悔しそうな表情の千原奈津紀が、襲い掛かってくる絶頂に押し上げられている顔が映っていたのだった。

奈津紀は枷を嵌められ、脚も閉じれないように拘束が施されたまま四つん這いの格好で、その背後には痩身ながらも隆起した筋骨が逞しい男が映っていた。

浅黒い肌、目の吊り上がった男、張慈円であった。

「くっ!おのれ!!張慈円っ!!・・遅かったのですね・・!ああぁ!奈津紀さんをこのような目に・・!」

ジャケットを脱いだ弥佳子は、抜いた愛刀の一振り長曾根虎徹を一閃させて、部屋奥にいるであろう張慈円の命を絶たんと続きの間に通じる扉を一気に蹴り破った。

どがっ!

「ぬぅお?!」

弥佳子の怒りに任せた蹴りで、扉を留めていた3つの蝶番がすべて外れ、猛烈な勢いで部屋の壁に扉がぶつかりけたたましい音が鳴り響く。

そして、そこにはさっきシャワーを浴びていたという様子の張慈円が、驚きの声を上げてのけ反ったところであった。

「張慈円!」

「た、高嶺弥佳子か!?どうしてここがわかったのだ?!」

高嶺弥佳子がまさかこんなところまできているとは思いもしていない張慈円は、驚きのあまり、普段細めの吊り上がった目を大きく見開いて叫んだのだ。

「黙れ!私の部下たちはどこです!奈津紀さんをあのような目にっ・・!貴様という男はっ!」

言うや否や、弥佳子は長曾根虎徹を横薙ぎに一閃させる。

神速の一閃が迸り、壁に貼ってある黒い革、ワインナリー、陶器製の調度品が真っ二つに斬れてゆく。

当たれば必殺の一閃だったが、張慈円は膝を曲げ、上半身をのけ反らせて、寸でのところで胴体が二つになることを避けるたのだ。

そして、張慈円は無様に尻もちをついたものの、その勢いで後ろに大きく飛び退る。

「ま、待て!高嶺弥佳子!話せばわかることなのだ!」

ボタンをいまだに留めていないゆったりとした上下黒の功夫服姿の張慈円が、左手で弥佳子を制するようにして叫び、その声に弥佳子の動きが止まった。

「莫迦め!死ねい!【迸雷】!!」

バチッバチッバチッバチッ!

張慈円が「待て」と言って上げた手の袖に仕込んでいた暗器【百雷】を、弥佳子めがけて飛ばし、尚且つ右手で最大出力の【迸雷】による紫電を迸らせたのだ。

「うははははっ!この距離ではひとたまりもある・・なにっ!!?」

弥佳子は、片手で振るった長曾根虎徹で【百雷】をすべて叩き落し、尚且つ腰に佩いている奈津紀の愛刀和泉守兼定を鞘から半分引き抜き、【迸雷】の紫電をほとんど受け切ったのだ。

「児戯に等しいですね!」

弥佳子はその一喝と共に、張慈円の左手首を長曾根虎徹の刃の腹で強かに打ち据えたのだ。

「ぎゃあ!」

弥佳子は、至近距離の袖という死角からの暗器攻撃と、張慈円の技能の中で最大の威力である【迸雷】の最大出力を防ぎ切り完全に見切ったのだ。

そして、尚且つ張慈円という達人の口を割る前に殺してしまわぬよう、手加減した反撃を返す神技。

息を飲むほどの剣技であり、おそらく初見であろう雷撃攻撃を慌てず対処する胆力。

弥佳子と張慈円の戦いを背後から見ている神田川真理も、あの雷帝張慈円を圧倒している弥佳子の絶技にごくりと息を鳴らした。

真理は以前、張慈円が戦っているのを見たことがある。

実際に張慈円と直接戦ったのは、魔眼の力を失っていない頃の、オーラ量だけは馬鹿みたいに多い傲慢状態の宮川佐恵子だったのだが、それでも佐恵子では目を使わずに張慈円と戦っていれば勝てなかっただろう。と真理は見ている。

魔眼による【恐慌】の発動で張慈円を戦闘不能に陥らせることに成功したのも、張慈円がその技能に対し初見だったから通用しただけで、運が良かったのだ。

現に、【恐慌】の発動をその時におそらく見ていた千原奈津紀には、その後完全に見切られてしまっている。

しかし、高嶺弥佳子の剣技はもちろん体術も、佐恵子の体術とはレベルが明らかに違う。

(は、張慈円に勝ち目は無いわ・・・。でもなんてこと!・・この高嶺弥佳子って女、ゴスロリやハム女より少し強いなんてレベルじゃないわ・・・。こんなヤツ、敵になったらどうやって対処すればいいの?!)

弥佳子の圧倒的な戦闘力に安堵しつつも、恐怖しながら真理は心中でそう叫んでいた。

現に張慈円の左手首は刀で強打され、防御思念を突き破り、骨にヒビを入れるぐらいのダメージは与えたようである。

脂汗を額に滴らせ、痛みで片目を瞑り睨みあげてくる張慈円に対し、弥佳子は間合いを詰める。

「張慈円。私の部下はどこです?正直に言えば死という慈悲をあげましょう」

カチリと和泉守兼定を鞘に納め、長曾根虎徹だけを片手中段で構えなおして、張慈円の首元か眉間を狙うようにして距離をさらに詰める。

「ぐっ・・さすがは高嶺の頭領というわけか・・。あの千原をも上回る使い手だということだな・・。しかし死が慈悲とは・・それのどこが慈悲なのだ?」

手首を抑え、痛みに顔をゆがめながら後退る張慈円は、弥佳子の質問に応えず聞き返した。

弥佳子は質問を質問で返されたことに、不快そうに眉をピクリと一瞬はねさせたが、口を開いた。

「四肢を切断し、死なないように生かしておくこともできるのですが、死をくれてやると言っているのです。それが慈悲でなくてなんだというのですか?・・・奈津紀さんを・・あのような目に合わせたのですから、奈津紀さんが望めばそうするかもしれませんね!」

大事な部下を凌辱した張慈円を今すぐ叩き切りたいという衝動に駆られたのか、弥佳子の表情が残酷な笑みになるも、奈津紀に張慈円の処分方法を選ばせてやったほうが良いか迷う表情になった。

「く・・ふふふっ・・。さすがだ。いや、想像以上の強さだな・・。くくくくくっ・・。だからこそ残念であろうなあ・・。くくくくくっ。あははははははっ」

手首の痛みを堪えながらも立ち上がった張慈円が、壁を背にもたれかかり、狂ったように笑い出した。

張慈円の様子に、弥佳子は油断なく剣先を違えず、壁に寄りかかっている張慈円を壁際へと更に追い詰める。

張慈円は風前の灯のはずである。

高嶺弥佳子という圧倒的な戦力の前に、どうすることもできないはずなのだが、真理には張慈円の高笑いは決して狂って発しているようには見えなかったのだ。

真理は、弥佳子の邪魔にならないよう、弥佳子の背から数歩下がったところで二人を注視している。

その時、真理の目には、足元が、否、部屋の床すべてが濃褐色に鈍く光ったのが見えた。

(え・・?床?こ・・これは!)

「下よ!!飛んでっ!!」

「遅いわっ!」

がごんっ!

真理の叫びと同時に、張慈円の嘲笑と部屋の床が二つに割れる音が響く。

弥佳子は、真理の声でで危機を察知して跳躍しようとしたが、場所が悪すぎた。

「くっ!」

部屋のほぼ中央にいた弥佳子の真下で、床が二つに割れたのだ。

ジャンプしようにも足場がなければどんな達人でも跳躍することはできない。

弥佳子は空間を操る能力者とはいえ、空中を歩くことはできないのだ。

一方の張慈円の背には、この部屋の仕掛けを作動させるスイッチがあった。

そして、張慈円は壁際にいたことから、すぐには落下せず、壁を蹴って弥佳子に飛びかかることができた。

空中で態勢を崩した弥佳子に、張慈円が勢いよく組み付き絡みつく。

「くっ!この期に及んでっ!」

(しかしそれでは張慈円も落ちるのでは?!)

弥佳子は張慈円が破れかぶれで、張慈円の命もろとも相打ちに持ち込もうとしているのかもしれないと思い慌てたが、次の張慈円のセリフでもっと張慈円の思惑がわからなくなった。

「くはははははっ!高嶺弥佳子!覚悟するのだな!貴様も千原奈津紀と同じ目に合わせてやるぞ!」

空中で組み付いた張慈円は、高笑いを上げながら弥佳子の体に巻き付くようにして一塊となり、真っ暗に口を開けている階下へと落ちはじめたのだ。

(私に適わないのは今の一瞬のやり取りとはいえよくわかったはず・・!どういうつもりですか?!張慈円!!)

弥佳子は纏わりついた張慈円を振りほどこうとするが、張慈円はここだけはという覚悟で、抜かれた長曾根虎徹の刀身をオーラ防御全開でしっかりと握りこみ、両脚は弥佳子の腰を挟み込むようにがっちりと巻き付けてきた。

床が開いた一瞬に気を取られたせいか、振りほどくのは無理な態勢である。

(おのれ・・!油断しているつもりはなかったのですが・・!)

弥佳子が見上げると、そこには神田川真理が焦燥の表情を隠そうともせず、ドアノブを握って手を伸ばしている姿が見えたが、その手を掴めるはずもなく、真理の姿は見えなくなり弥佳子は暗い闇の中に落ちていった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 21話 高峰弥佳子VS張慈円 終わり】22話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

最新記事
最新コメント
リンク
カテゴリ
ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へ
にほんブログ村
アダルトブログランキングへ
  • SEOブログパーツ
ご拝読ありがとうございます
ご拝読中
現在の閲覧者数:
問い合わせフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
官能小説 人妻 

ランキング