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第9章 歪と失脚からの脱出 17話  髙嶺17代目当主

第9章 歪と失脚からの脱出 17話  髙嶺17代目当主

古めかしく錆び付いた大きな倉庫に続く鉄橋の上を4人のスーツ姿の女性達が、カツンカツンと足音を響かせ颯爽と歩いている。

日本海側にあるこの孤島では、初秋とはいえ寒風が容赦なく吹き荒れ4人の女性は髪を、風に靡かせるのをそのままに、やや緊迫した表情をして歩いていた。

あいにくの曇り空で天気も悪いが、天気とは違い、歩いてくる4人の女性は、それぞれに個性はあるが、一様に美しい。

同じような黒いスーツにタイトスカート、長髪で背の高い一人はパンツスーツだが、4人の共通点は腰に刀を帯びているというところだ。

美女と言っても過言ではない4人であるが、纏う雰囲気は華やかな明るさではなく、妙齢の女性達が放つ雰囲気はない。

むしろその周囲の空気の密度は濃く重くさえ感じられた。

しかし、その重い雰囲気の中でも、特に他の3人を従えるように歩く先頭を女性は、柳の葉のように細く美しい眉に、切れ長の意志の強そうな目、総じて顔立ちや体形は、佳絶を極めたりと言っていい程の容姿である。

その佳絶柳眉の美女も他の3人同様腰に刀を帯びており、鞘は漆黒、柄は黒地に金と紫の刺繍が施され、鍔は黒鉄に鷹を模した意匠が拵えられていた。

4人はそのまま古びて錆の目立つようになった大きな倉庫に入っていくかに思われたが、鉄橋の中ほどに差し掛かった時、先頭の女性がはたと歩みを止めた。

「・・・気に入りませんね」

鷹のように鋭い目だが佳絶の女、髙嶺弥佳子が刀の柄に左手を置き呟くと、不快げにその美しい柳眉を顰めた。

追従する3人は畏怖する主の煩いの原因を探ろうと一瞬の沈黙があったが、3人ともすぐに理由を察知した。

千原奈津紀、前迫香織、南川沙織は鉄板の床をヒールで蹴り、髙嶺弥佳子を防御するよう陣形を組んだのとほぼ同時に2か所から銃声が轟いた。

「ふっ!」

「えいっ!」

3人のうち二人はすでに抜刀し、弥佳子を狙って放たれた銃弾を、奈津紀が抜刀と同時に真っ二つに切裂いて打ち落とし、香織もまた別の方向から放たれた銃弾を、能力を発動して、ぐにゃりと捻じ曲げ明後日の方向に吹き飛ばしたのだ。

「おらぁ!ざっけんじゃねーぞ!死ねや!!」

ショートカットを振り乱した南川沙織はそう吼えると、腰と背中に背負った小太刀二刀を特殊な構えから跳躍して抜刀し、500mは離れているであろう弾丸の発射地点目掛け【刀閃】をぶっ放した。

青白いクレセント型の真空の刃が、猛スピードで唸りを上げ回転しながら鉄塔の監視小屋と、鉄橋の側面にある廃屋の屋上に直撃して、爆音と埃を巻き上げる。

劉幸喜と同じ、否、似て非なる強力な技能だが、沙織は二刀流故それを二方向に同時に飛ばしたのだ。沙織の【刀閃】をみれば、その切味、破壊力、飛距離、正確さに驚嘆し、髙嶺以外のオーラを使う剣士ならばほとんどのものが肝を潰し、自信を失うだろう。

髙嶺六刃仙に籍を置く者は皆、生まれながらにして天賦の才を持ち、特殊な選別を潜り抜け、さらに磨き上げた者たちなのだ。

沙織は小柄な可愛らしい容姿で、ゴスロリメイクと派手なラメピンクのマニキュア、ごついシルバーリングを細い指に幾つもゴリゴリと付けている。

黙っているところを一見すれば人形のような可愛らしさがあるのだが、。いざ戦闘となれば悪鬼のような笑みと、乱暴な口調になるのだった。

「沙織?」

「直撃。殺った。・・・当たった手応えからするとたぶん二人とも能力者」

千原奈津紀の問いかけに、着地しすでに納刀した沙織が即答で返したところで、通路の先にある倉庫の入口の方から拍手が聞こえてきた。

「いや、お見事、お見事。皆さん私の予想に反して素晴らしいお手並みでした。私が雇ったくずボディーガードを瞬殺してくれるとは・・、まあ、あの程度の腕前だったので、始末も兼ねてちょうど良かったです。前金だけしか払ってなかったのでね。それにしても、募集して雇ったのが、まさかあんな雑魚だったので、大損だと後悔してましたが、始末もでき、あなた方の腕を確認できて一石二鳥でしたよ」

パチパチパチと拍手しながら、気取った仕草で背の高いスーツ姿の男が、とんでもないことを言いつつ、にこやかな表情で現れたのだ。

男は右目の銀縁片眼鏡を親指で押し上げると、大げさで慇懃な態度で頭を下げた。

「試すような真似をして申し訳ございません。わたくし、樋口と申します。この度、こちらに来られるボディーガードが全員女性と聞いたもので、つい不安になってしまっていたのです。しかし、これは私の思い込みで浅慮の致すところでした。深く、お詫び申し上げます」

品があり慇懃な態度と口調で、気取った紳士が下げていた頭をあげると、目の前には南川沙織が刀の切っ先を突きつけ迫っていた。

「おっさん。遺言はすんだのか?」

沙織の左手に逆手で握られた九字兼定が男の首筋にあてがわれ、右手の京極政宗は同じく男の胸を今にも貫かんと構えられている。

樋口と名乗った男の背後にもすでに前迫香織が回り込んでおり、愛用の長刀を男の首の後ろからあてがい、沙織の九字兼定と交差させている。

「これはこれは、しかし、わたくしはまだおっさんと呼ばれるほどの歳ではありませんよ。今年で45になったばかりですからね」

沙織に剣先を突きつけられた状態だというのに片眼鏡の男は、虚勢とは思えない落ち着き払った口調で、害意が無いことをアピールするように両手を肩まで軽く上げ、鋭い目つきの沙織に笑顔で言い返す。

「45って・・・おっさんじゃねーか

沙織が表情を崩さずそう言い、握っていた柄に力を込めたところで、片眼鏡の男の後ろから声がした。

「まて!待ってくれ!髙嶺の・!」

そう言い慌てて走ってきたのは、褐色の肌に整った顔立ち。三浦春馬を少しだけ軽そうにした見た目の劉幸喜である。

「あ、あんたは・・!うぉ!!」

劉幸喜が樋口に駆け寄ってきたところで前迫香織がビュンと長刀を翻し、その切っ先が劉に向けられたのだ。

劉は香織の殺気に思わず声をあげた。

今の香織は、スタジオ野口にある庭園で出会った人物とは別人のような鋭い顔であり、あの時の温厚で優し気な目付きの印象が強く残っている劉は面食らったのであった。

「くっ・・!ま、待ってくれ!誤解なんだ・・手違いを説明させてくれ!とにかく・・!聞いてくれ!」

香織の殺気と怒りを本気と捉えた劉ではあったが、香織に一言断わると、兎にも角にも髙嶺とこの樋口を揉めさせるわけにはいかなかい劉は樋口に怒鳴った。

「あんた!さっき言ってたの本気だったのかよ?!いくら依頼主と言っても、この人達を試すようなことは絶対にやめてくれって言っただろ?!まったく何考えてんだよ。」

沙織に刀の切っ先を突きつけられている樋口に対して、劉は冗談じゃねえよといった表情と口調で捲し立てる。

「劉君・・。そうは言っても、女が護衛に来ると言われれば誰だって不安になりますよ。女はろくな仕事をしてくれませんからね。あ、ベッドの上では別ですよ?女に相応しい無様な仕事がありますから」

必死な形相の劉とは対照的な表情の樋口は、刀を突きつけながらも肩を竦め、しょうがありません、とうそぶいたような様子である。

「てめえ・・」

樋口のあまりにもなセリフに、沙織が目付きと口元を歪め危険な表情になると

「沙織。先ほど名乗っていただいたように、その方が今回の護衛対象の樋口様のようです」

香織は相変わらず長刀の切っ先を劉に突き付けたまま、当主である髙嶺弥佳子の意思を伺いつつも、ひとまず沙織を制止する。

「そうだ!その通りだ!悪かったアンタら!今回は俺たち香港の護衛も兼ねてるだろ?!どうかここはボスに免じて・・、頼む!ことが始まる前に揉めて空中分解なんて、しゃれにならないんだ!頼む・・!」

香織のセリフを渡り舟とばかりに、劉幸喜が髙嶺弥佳子に深々と頭を下げて必死に頼み込んだ。

劉と髙嶺弥佳子は初対面ではあったが、周りの女の様子や雰囲気から、間違いなくこの女が髙嶺弥佳子だと劉にも確信が持てたからだ。

嘆願する劉を眺めていた弥佳子であったが、目を閉じふっと失笑すると、左手の親指で鍔を押し上げ、そしてカチンと鞘に落した。

「・・不愉快極まりないですが・・・、香港本国からのじきじきの依頼です。張慈円の顔を立てるとして、ついでの護衛対象の無礼にも、これで目を瞑りましょう・・。しかし、二度目はありませんよ」

目を開けそういうと、その切れ長の目で樋口のことをじっと見つめた弥佳子であったが、ちらりと劉に視線を戻し、澄んだ静かで抑揚のない声でそう言った。

そして、カツカツと足音をさせ、劉と刀を突きつけられている樋口の間を通り過ぎていった。

千原奈津紀と前迫香織もそれに続き、

南川沙織も鋭い目つきで樋口を睨んだままであったが、無言で刀を引き少し遅れて3人に続く。

「・・・感謝するぜ!」

通り過ぎた4人の美女剣士たちの背中に再度深々と頭を下げた劉が、重ねて謝辞の言葉を口にした。

恐るべき力を持った4人の剣士たちが、倉庫の中に消えて行ったのを見届けると、劉は肺に溜まった空気を思い切り吐き出し、樋口に向き直った。

「さあ、アンタも外をあんまりうろつかないでくれ。まったく寿命が縮むぜ・・。ったく!・・あんたが連れてきたボディーガードの後始末もしなきゃいけねえじゃねえか」

額の汗を拭きながら、不満を口にし、樋口を打ち合わせ場所である倉庫の中に促す。

「劉くん。気にしすぎだよ。あの気の利かない役立たずなボディーガードの二人は海にでも投げ込めばいい。こんな孤島から人を二人投げ込んだところで気にする奴なんて誰もいないさ」

その投げ込むのが大変なんだよ・・。と、劉が内心悪態をついていると樋口が更に続ける。

「宮コー本社が嗅ぎつけたとしても、俺とまともに戦えるのはジョーカー技能持ちの宮川のガキか、紅蓮の緋村紅音ぐらいのもんさ。でも、宮川は失脚したし、紅蓮もこういう泥臭い仕事は絶対に直接しない。もし、宮川のガキがかぎつけても、周りが反対してお嬢様自らがくるわけないさ。だから二人とも、こんな僻地までこない。安心していいはずだよ。・・・それに、さっきの女剣士たちが意外にも腕利きだというのはわかったのは良かったけど、最後に偉そうなことを言っていた女の実力はよくわからないな。取り巻きの3人に守られてるだけでひょっとしたら無能なのかもしれない。無能な女はいくら美しくてもただの穴だからね。・・・・でもあんなに護衛を補強するなんて香港は臆病なのか人材不足なのか・・いったい何をそんなに怖れているんだい?張慈円が達人だということは承知しているし、俺だって自分自身の身は守れるんだぜ?」

樋口の楽観的且つ人格崩壊したセリフを聞きながら、ほんとにこいつそんなに強いのかよ?と疑問を感じながらも、誤魔化すように頭をかき、一応念を押す。

「本当に、頼むから、そういう事もう言わないでくれ」

揉め事は本当にうんざりだと言った様子で劉が呻いた。

劉達香港はすでに確かなルートから宮川コーポレーションが今回の取引を嗅ぎつけ、3人の能力者を送り込んでくるという情報を得ていたのだが、それを樋口には伝えていない。

今回の取引を嗅ぎつけられているというのを仲介役である香港としてはクライアントに知られたくはなかったからだ。

しかも、奇妙なことに事前に宮コーが妨害をしてくる人員の詳細や日時までもが、あまりにもあからさまにキャッチできたことを、張慈円とともに不信に思っていた。

樋口は扱いにくく変人だが、宮川重工業の重要機密を大量に詰め込んだディスクを持ち出してきており、その認証のパスワードとして樋口の網膜とオーラが必要であった。

劉としてはこの大きな取引をどうしても成功させたかったのだが、宮コーの手先となった菊一、それに対抗するために雇った髙嶺、そして変態クライアントの樋口のことで、いまから胃が悲鳴を上げていた。

「とにかく、顔合わせだ。髙嶺の当主がわざわざこんなところまで出向くなんて珍しいって話だからな。失礼のないようにってボスから言われてたってのに・・まったく・・。なんて日だよ。いまから嫌な予感しかしないぜ」

劉はクライアントに余計なことを言って、信用を落とすよりは、黙っていて今回の潜入してくるであろう菊一の面々を圧倒できそうな髙嶺を雇い、ぶつけるという張慈円の作戦を高くつくところが不満ではあったが確実だと思っていた。

ボスの張慈円ですら、菊沢事務所の豊島哲司には手を焼いたのだ。

ここは髙嶺でもなんでも、とにかく強いカードをぶつけるのが得策というモノだ。

「なにブツブツ悩んでるんだい?君は若そうなのに気苦労が多いね?ハゲるよ?」

劉の心労など気にした様子もなく樋口はそう言うと、倉庫の方に向き直り、片眼鏡を親指で押し上げ歩き出そうとしたその時。

「うっ!」

押し上げた銀縁片眼鏡が縦横十字に切断されており、親指で押したときにずれて鉄橋の上に割れ落ちたのだ。

「こ、これは・・」

そう言って樋口が4つに切り割かれた片眼鏡を拾い上げようとしゃがむと、腰に違和感を覚えた。

スラックスのファスナーがベルトのバックルごと切られており、二つに割れたバックルとバラバラになったファスナーが鉄橋の床の上に散らばったのだ。

「い、何時の間に!・・まさか・・あの二刀女か・・?いや、そんなはずはない・・違う!・・・あいつか・・?しかし・・馬鹿な!」

樋口はスラックスがズリ落ちてしまわないよう掴みつつも、この不可解な現実の原因が、柳眉佳絶の女の仕業だと直感で悟り肌を粟立たせた。

(ただの上等な穴だと思ったが・・俺とあの女の間には、二刀のチビ女がいた・・!メガネはともかく、あの一瞬でこんなところを攻撃できるわけがない・・・!しかし・・!現に・・・どうやって?!)

この樋口という男は、女性蔑視の人格破綻者だが、口だけではなく本当に優れた能力者で、今は宮コーの下部組織の役員とはいえ、佐恵子や真理も警戒をしている人物であった。

以前から人材集めに躍起になっていた佐恵子も、かつて宮川本体の勤務であった樋口の能力者としての噂を聞きつけ真理と共に面会したのだが、樋口の纏うオーラがあまりにも女性軽視で卑猥且つ邪悪だったので、佐恵子は樋口を一目見た一瞬で嫌いになり、問答無用で下部組織の閑職に左遷したのであった。

しかし、樋口はもともと仕事では優秀だったし、そのうえ能力を駆使して、本社の目が届きにくくなった宮川重工業で、常務取締役にまで出世し、立場を利用して汚職に汚職を重ねて私服を肥やしていたのだ。

そして、さらなる利益を求め香港にわたりをつけてもらい、大陸の組織に宮川重工業の機密を高値で売りさばき、日本からとんずらする予定であったのだ。

「・・。日本を発つ前に、女の然るべきポジションを教えてやる必要があるヤツがまた増えちまった」

自分の気づかぬうちにメガネとバックルを切裂いた弥佳子の絶技に慄きながらも、女性軽視の歪んだ感情が樋口の胸を憎悪の炎が激しく焼いていた。


~~~~~~~~~~~~~

弥佳子は簡素な椅子に腰を下ろしており、奈津紀は弥佳子に向かって立ったままでいた。

張慈円の部下に促され、顔合わせの会合が始まるまでの間、この部屋で待っていてほしいとのことであったからだ。

前迫香織と南川沙織は部屋の扉の外で、一応の警戒をしている。

今は部屋内に二人しかいない。

「どうしたの奈津紀さん?」

奈津紀と二人きりだと、畏怖の対象とされる髙嶺17代目当主の目も些か優しい。

「いえ・・」

そんな弥佳子のセリフに奈津紀は短く返した。

「ははは、はっきり言ったらどう?私があいつの胴を切断してしまうと思ったのでしょ?」

「ええ・・まあ」

部屋の外には聞こえない程度の声で、弥佳子は快い音色で笑い言うと、奈津紀は言いにくそうに同意し頷いた。

この部屋が機械的な機器などで、盗聴盗撮されていないのはすでに確認済みだ。

弥佳子が愉快そうな声で続ける。

「退屈しのぎよ。こういうのも久方ぶりだしね。あの忌まわしいジジイに封印された力がやっと戻ったのだから、楽しみの芽を早々に積んでしまうのは憚れるじゃない?香港に宮コー、あのジジイを血祭にあげるというのも目的の一つだけど、奈津紀さんの話じゃ栗田は宮コーにいるらしいんでしょ?寄り道のようだけど、案外これが最短ルートのように思えてるのよね。となれば道中の楽しみは多い方がいいじゃない?」

弥佳子の様子とは裏腹に、奈津紀は表情を曇らせて頭を下げた。

「あの時は私の失態です。栗田を御屋形様の前まで連れてきてしまいました。栗田の意思をもっと確認すべきでした。我々に匹敵する違った能力者を仲間に引き込めるかもしれないと、舞い上がってしまったのです。そのせいで・・あやうく・・」

さげていた頭をあげた奈津紀の顔はいまだに曇ったままであり、弥佳子も先ほどの愉快そうな表情を引き締め、しかし優し気な口調で奈津紀に返す。

「たしかに・・・、でも奈津紀さん。あなたはいつでもよくやってくれてるわ。私のオーラが封じられている間、あなたが切り盛りしてくれたわね。本当にかわいい妹」

そのセリフに奈津紀ははっとした表情になり周囲を警戒すると、小声で弥佳子に呟いた。

「御屋形様。・・どこに耳があるやもしれませんので・・」

「ふふ・・。大丈夫よ。でもそうね。気を付けるわ」

弥佳子がそう言ったとき、扉の外からノックされ声が掛けられる。

「御屋形様。張慈円様が戻られたそうです」

「わかりました。参りましょう」

扉越しにそう言うと、弥佳子は組んでいた脚を戻すと膝丈のタイトスカートに鋭く入ったスリットから覗く筋肉と贅肉がバランスよくついた太ももの肉を妖艶に揺らしながら立ち上がった

【第9章 歪と失脚からの脱出 17話  髙峰17代目当主終わり】18話へ続く




第9章 歪と失脚からの脱出 18話 香港と髙嶺

第9章 歪と失脚からの脱出 18話 香港と髙嶺

深くスリットの入った膝上5cmほどのタイトスカートの裾を掴み、そして少しずり下げる。

(さむい・・もう少し分厚いのにしたらよかった)

南川沙織は、前かがみになるとゴリゴリと刺繍の入った黒いストッキング越しに必要最低限の肉付きではあるが奈津紀や弥佳子に比べれば細く見える両脚の中核を担う両膝を温めるように、手の平で撫でていた。

そしてピンクのマニキュアが施された左手の親指の爪を摘まみ、ずるりと真っ白いファーを取り出す。

隣でその様子を横目で見ていた前迫香織が感心したように言う。

「沙織の【爪衣嚢】って本当に便利ですよね」

「んふ、まぁね」

二人はいま待機室として弥佳子の為に用意された部屋の前で、見張りを兼ねて待機している。

日本海側のこの孤島では、初秋だというのに大陸から吹き込んでくる、冷えた乾いた寒風のせいで本土より随分寒かったのだ。

沙織はふわふわの真っ白いフォックスネックファーを取り出し、首に巻き顔を肌触りのよいふわふわに埋めると、戦闘の時とは違う本当に可愛らしい笑顔で香織に応えた。

人形のように可愛らしく整った顔を、ファーにうずめ、目を細めて笑っている沙織は童顔好きな男性諸君からは天使に見えるであろう。

既に20代後半で間もなく三十路の声も聞こえる沙織だが、どう見ても20歳前後の大学生だと言っても通用するであろう容姿である。

そんな若い母親と学生の親子のようにも見えるシルエットを醸し出す母親役のシルエットの香織のセリフに気をよくした沙織は、今度は左手の人差指の爪を摘んで引っ張っぱると、今度は飴玉を二つ取りだした。

そして、一つは自分の口に放り込み、「はい」と言って、もう一つを香織に差し出してきた。

「ありがとう」

香織は笑顔でそういったものの、手で遠慮する仕草をしてみせる。

「そう・・?美味しいのに・・。いっぱいあるから欲しかったら言ってよね。かおりん」

そう言ってお母さんに飴玉を優しく拒否されたような感じになっている沙織の小さな口には少し大きめの丸い飴玉を、口の中でコロコロとさせて頬を丸く膨らませると、香織にもらってもらえなかった飴玉を爪の中に戻した。

【爪衣嚢】沙織の両手のすべての爪はモノを収容できることができる技能。それぞれの指によって収納できるサイズや量が違うが、その収納したモノの重さと同当分、重くなるため、あまり重いモノは入れないようにしている。

「そろそろですかね・・。向こうから、5人歩いてきてますね。おそらく準備ができたので、迎えを寄越してきたんでしょう。・・・この気配は劉さまもいらっしゃるようですね」

広範囲、といっても100mほど円形にオーラを展開し、周囲の様子を伺っていた香織のセリフに、沙織は背筋を反射的に伸ばし、沙織らしからぬ返答を返した。

「んぐ、・・じゃあ御屋形様をお呼びしなきゃ」

マイペースで自由奔放な沙織も、当主である髙嶺弥佳子の前では行儀が良い。

「私がお声がけしてくるから、沙織は劉さまたちの相手をしてて」

香織のセリフに沙織は頷き、先ほど口に放り込んだばかりの飴玉を、もったいないがゴクリと飲み込んで、胸を摩って姿勢を正した。

当主の前で、口をもごもごさせるのが良くないと分かっているのだ。

南川沙織は、剣の技量や体術、オーラ量、そして多彩なオーラを使った特殊能力を有しており、戦闘力のポテンシャルにおいては実は髙嶺六刃仙のなかでも1,2の実力がある。

二刀流による近接戦闘が最も得意だが、【刀閃】のように強力な遠距離攻撃、敵の間接攻撃をほぼ無効にする【不浄血怨嗟結界】、媒体が必要だが【治療】も使いこなすし、便利技能の【爪衣嚢】もあるので、隠し持った武器を一瞬で手元に発現することもできる。

しかし、多彩故の選択肢の過ちと、挑発に応じてしまう短気な性格や、見た目同様まだ精神が成熟しきっていない部分が災いして隙をつくってしまいやすく、任務でたまに失敗をしてしまうことがあった。

そのため、沙織の潜在能力を高く評価している当主である髙嶺弥佳子の逆鱗に触れ、実力に見合った成果を挙げれなかった沙織は何度か生命の危機に晒されたことがあり、その都度、奈津紀や香織のとりなしで命を救われていた。

沙織がショートカットなのは弥佳子に、任務失敗の度に、戒めで髪を斬られたからである。

もともとは、銀髪ロングで三つ編み、髪を真珠とシルバーをふんだんに使ったバレッタでアップにまとめ、サイドは緩く三つ編みで垂らし、うなじや襟足はストレートでなびかせていたのだが、いまはシンプルな黒髪ショートカットである。

一人廊下に突っ立って、沙織は廊下の向こうから歩いてくる一団を眺めていたが、5mほどの距離までくると、黒服たちを引き連れた、三浦春馬似の褐色肌の優男が、クールな口調で沙織に声を掛けてきた。

「よう。待たせたな。南川・・さんだよな。ボスも帰ってこられたから案内するぜ。あんたのボスを呼んできてくれ」

「うん・・。ツレが呼びに行ってるからまってて」

ファーのせいで顔の半分が隠れた沙織が、無表情で劉に素っ気なく言い返す。

素っ気ない返事をする童顔の背の低い女は、敵対心こそ露わにしていないが、まったく隙がなく、決して油断はしている風ではない様子に、劉は沙織をまじまじと観察する。

すると、むしろ沙織の方こそ、劉や劉の取り巻きの一挙手一投足を警戒しているがよくわかる。

「えっと・・。すでに呼びに行ったってことは、俺たちが向かってきてるのがわかったんだな。それにしてもあんたとは何度か話させてもらったし、前にもう少し打ち解けられてたと思ってたんだが・・」

以前、大塚マンション強襲前に会ったときとは、沙織の様子がずいぶん違うことに戸惑った劉が、間を持たせるために言ったセリフに沙織がギロリと目を鋭くさせて反応してきた。

「そんなのわかって当然。あんた達、さっきいきなり襲ってきたし警戒して当たり前でしょ?・・・変な動きしたら・・・ダメだよ?・・私、かおりんみたく手加減できるような器用な技能も無いし、性格でもないから・・じっと待ってて。わかった?」

警戒しながらも沙織のちょっとした優しさが見えたような気がした劉は、少しだけ安堵したが、沙織の警戒心をこれ以上あげないようできるだけ言葉を選んで答えた。

「お、おう・・すまなかった。まあ・・・あれは俺らの本意では無く・・・いや良い。おいっお前ら変な動きするなよ」

部下を引き連れた劉幸喜も、組織では立場があるのであろうが、沙織の有無を言わさない様子に弁解をしようともしたが、いまさらなので沙織の機嫌を損ねないよう振り返り部下たちにもそう促した。

しかし、いかに沙織が短気だといっても、クライアントのアジトで傍若無人な振舞いをするほど愚かではない。

それに、今日は当主である髙嶺弥佳子も来ているし、そうそう失態をするわけにもいかないのだ。

「わざわざお出迎えご苦労様です。劉幸喜といいましたか」

そうこうしていると、沙織の背後から劉に向かって声を掛ける人物が近づいてきた。

柳眉佳絶の女剣士、高嶺弥佳子である。

皆一様に腰に刀を携えており、見る者が見ればそれが歴史的に名を残している名刀揃いで全てがレプリカではなく実物なのである。

そんな名刀の一振り菊一文字則宗を腰にした弥佳子から一歩後を弥佳子より少しだけ背の高い千原奈津紀と、長身と言える前迫香織を従えるように歩いてきていた。

「はい。お見知りおきを。ボスの張慈円が戻ったのでお迎えにあがりました。お待たせしてすいません」

劉はそう言うと、弥佳子に深々と頭を下げ、「どうぞ」と促し先を行きはじめた。

刀を腰に帯びた4人の美女を、劉が先導し、劉の部下4人が前後に二人ずつ囲むようにしている。

「ねえ、この周囲の者たちは護衛かエスコートのつもりでしょうか?・・内ポケットに拳銃を持っているようですが、そのような身のこなしでは、いざとなれば邪魔にしかならないし、目ざわりですね。・・・それより、奈津紀さん。私は張慈円さんとは今日初対面ですが、どういった人物なのでしょう?」

弥佳子は、周囲を囲むようにして歩く黒服の男達のことを無表情でそう評価してから、構わず奈津紀に話を振る。

「はい・・。雷神と二つ名を持っているとおり、オーラを電気に変換することができ、攻撃の手段として使います。そして功夫・・とくに蟷螂拳の達人でもあります・・。百雷と呼ばれる布状の暗器の扱いが得意としており、その暗器にも電撃を纏わせられるので、侮れない手練れです。香港三合会のトライアドの中では規模は小さいものの張慈円様が最強だと噂されており、一目置かれています。」

「ふぅん・・、組織運営は下手だけど、腕に自信ありというタイプですか。奈津紀さん、張慈円の戦闘を見たことがあるのでしょう?奈津紀さんから見てどうです?」

弥佳子たちの前を歩く劉幸喜は、背後から聞こえてくる無遠慮な会話に、耳を澄ませて聞いていたが、何も言えず極力無表情で前を歩いている。

周囲をかためて歩く黒服たちも、本来ならこの場面で劉が会話を止めに入ったりするのだが、上司である劉がだんまりなので、戸惑いつつも4人の美女の様子を伺いながらも何も言えずにいた。

「・・はい、強いですが、余程のことが無い限り、私が張慈円様に後れを取ることは無いと思います。」

「なるほど…そうですか。余程の事があれば、奈津紀さんでも後れを取るほどの相手ですか。それはかなりの腕前ですね。ふふふ、それはお会いできるのが少し楽しみですね。」

現状の髙嶺の戦力の中では発展途上の沙織はまだ力の波があるので、奈津紀に香織が完成度としては最高峰の戦力であり、2人なら多少腕が立つ程度の能力者では太刀打ちできず、まず余程の事があったところで2人を打ち負かすことなど不可能であると、弥佳子は考えていた。

そんな2人の会話が嫌でも耳に入る周囲を取り囲んで歩く劉をはじめ黒服の男たちの戸惑いなど意に介した様子もなく、弥佳子がカラカラと澄んだ嫌味のない音色で喉をあげて笑う。

「実際に立ち会わないと分からないところもありますが、たぶん間違いありません・・。それに御屋形様であれば張慈円様などに不覚をとることは万に一つもないと確信してますが、私の手に余る相手を御屋形様の前に連れて行くわけにはまいりません・・」

その弥佳子の様子と奈津紀のストレートすぎる発言に、周囲を取り囲む黒服の一人が、小さな声を上げ非難がましく弥佳子を睨むが、その視線を遮るように沙織が割り込み、鋭い視線で睨み返すと、沙織の殺気にたじろいだその黒服は目を逸らし俯いてしまった。

先頭を歩いている劉などは、ボスを愚弄されたという思いから、その顔は普段の優男と同じ顔とは思えないほど怒りで歯を食いしばっていたが、肩が震えるのを抑え黙々と歩いている。

「いつもの事ですが、奈津紀さんは生真面目ですね。ま、今日は顔合わせと今後のビジネスができる相手かどうかってところですからね。私やあなたが張慈円さんや香港の方々相手に刀を抜くような事にはなりませんよ。」

弥佳子と奈津紀が話している間に、目的の部屋についたらしく先頭を歩く劉が扉を開け、振り返って声を掛けてきた。

「・・・さあ、ついたぜ。入ってくれ」

弥佳子は促されるまま、かろうじて怒気を抑えた表情の劉の隣を抜け、部屋に入り3人も弥佳子に続く。

そして取り巻きの黒服は部屋の外に残し、劉だけが入ってきた。

部屋にはすでに二人いた。

「初めましてだな。髙嶺・・弥佳子殿。お待たせして申し訳ない」

まずは部屋の奥の正面に脚を開き、どっかりとソファに座った細身の男、カマキリのように吊り上がった目ではあるが、その表情には歓待の表情を浮かべ座ったまま声を掛けてきた。

「こちらこそ初めまして。張慈円殿」

弥佳子はそう言うと、流麗な動作で用意されていた椅子に腰を掛け、背もたれに背を預けると脚を組んだ。

弥佳子に用意されていた椅子は、こんな僻地の倉庫内にあるにしては小奇麗なものではあるが、やや座面位置が低く、足を組んで座ろうが普通に座っても、張慈円の座る椅子からは沙織よりはかなり短めで奈津紀よりは少し長めの丈の黒のタイトスカートの裾なのでその内部を覗きやすそうな高さであった。

好色な張慈円が、異性相手によく使う手である。

「くっくっく、これはこれは・・」

張慈円の思惑通り、弥佳子が座る際に確かに薄いパンスト越しに黒いショーツが一瞬だけ見えたことが、張慈円の口角をあげさせ、好色な笑みを浮かべさせた。

いまは張慈円からはぎりぎり見えないが、一瞬だけ黒のショーツが見えたのは事実であるし、今もその肉付きの良い、熟れてはいるが引き締まった脚線美と、弥佳子の整った顔立ちを交互に眺めている。

張慈円は弥佳子の整った美しい顔、そして組まれた脚線美を舐るように交互に眺め、そして脳裏では一瞬覗いた下着を脳裏に思い浮かべ、頭の中で3枚の写真をフラッシュバックさせ弥佳子を辱めていた。

この澄ました自信満々の見るからにお高くとまった女に自分の雷砲で女芯を串刺しにしてやればどんな表情になりどのような声を上げて喘ぐのかという卑猥な妄想を堪能している張慈円であったがそんなことを考えていた張慈円に気付いた千原奈津紀が、弥佳子の前に立ち張慈円の視線を遮る。

(ほほう、下半身の熟れ具合は当主も側近も同様に良い肉付きで串刺しにし甲斐がありそうだな・・・)

と視界が弥佳子の下半身から奈津紀の4人の中では1番短いタイトスカートに包まれた膝から上の白く肉付きの良い太ももに変わりそんなことを考えていた張慈円に、視野に入る美脚の持ち主の相手が、

「・・・張慈円さま?戯れが過ぎるのでは?我らの当主に対してこのようなゲスな振舞い・・。断じて許されることではありません」

静かな声ではあるが、張慈円の好色でゲスな思惑で配置された椅子と張慈円の思惑に対して、耐え難い怒気を含んだ千原奈津紀の声色に、弥佳子の背後にいる二人も無言で気色ばみオーラを増幅させて主の指示を待つ。

「おやめなさい」

従える3人の剣士を制止するよう弥佳子の発した声で、3人が発していた気配が水を打ったように静まると

「失礼いたしました」

と言って奈津紀は頭を下げ弥佳子の右隣りに場所を移した。

弥佳子の背後にいる二人も、先ほど発した殺気が嘘のように霧散しており静かにたたずんでいる。

「はっ!こりゃすごい。すごい殺気だ。それに、部下もよく教育できてるねえ!俺が雇ってたボディーガードどもとは全く格が違うよ。女っていうのに大したもんだ」

このやり取りを同じように最初から張慈円の左隣で座って見ていた樋口が、愉快そうな声をあげて手を叩いた。

沙織の視線が鋭く樋口を突き刺すように動くが、言葉も動作もなくそれだけだ。

樋口も沙織の視線に気づき、肩を竦め手のひらを沙織に向け宥めるような仕草をしている。

当主が許している以上、こちらに危害が加えられない限り沙織も動かない。

劉は樋口発言に胃を抑えるような仕草をしながら、この状況に脂汗をかいて苦虫をかみつぶしたような表情になっている。

セクハラまがいの行為を受けた、当の弥佳子がふっと失笑し

「この程度のことで有頂天になったのですか?女性に飢えているわけでもあるまいでしょうに。幼稚な悪戯がすぎると自身の品格や程度が疑われますよ。雷神という二つ名は大仰と言わざるを得ないのですか?張慈円さん」

弥佳子は皮肉たっぷりにそう言うと、再度挑発するように脚を組み変えると、その豊満な膝上の肉が薄めのベージュのパンスト
越しにその存在感を露わにするように揺れ、その豊かな白い肉の揺れが張慈円に(私が欲しければ力づくでどうぞ?まあ叶わぬ夢で終わるでしょうが)と言わんばかりに誘惑とも挑発ともとれるように見える。

「くっく、さすがはあの千原奈津紀の主というだけのことはある。豪胆なうえ部下もよくしつけているようだな…(こいつらまとめてギロチン台にかけて雪や千尋のようにいたぶってやりたいがそれにはこいつらの弱みでも握らなきゃ力ではまず無理か…)」

「ふふふっ、さっさと本題にはいってもらえるかしら?会話に知性を感じられない相手だと話をするのは苦痛しかないわ。その会話が長ければ長い程ね・・・。であれば、最早ビジネスの話に期待するほかありません」

張慈円のセリフを苦笑しバッサリと切り捨てた弥佳子は、美貌の顔で眉ひとつ動かさず言い放つ。

相手を煽っているわけでもなく、本心からのセリフである。

「くっ、貴様・・(女の身でこの俺を見下す者は初めてだぞっ!)」

張慈円が弥佳子のセリフが演技や冗談ではなく本心だと本能的に分かったからこそ腹が立った。

しかし、

「いいねえ!君!髙嶺弥佳子さん?最高だよ。張慈円、まんまと一本とられたね。この女は君の姑息なセクハラなんて意にも解してないんだよ!まったく良い穴・・んん!・・良い女だよ。本当に気に入ったよ!」

一人樋口が満足した声をあげてはしゃいでいる。

「気に入った」というセリフに、弥佳子以外の三剣士の視線が樋口に突き刺さるが、樋口の興奮はそれ以上で、興味深そうに弥佳子をじろじろと舐めるように観察している。

そんな様子の樋口を弥佳子は一瞥したが、まるで吠えている犬の声に一瞬だけ反応したかの如く無視して無言で視線を張慈円に戻し先に勧めるように手の平を差し出し張慈円に話を続けるよう即した。

「ふん、まあいい。・・・劉!説明をしてやれ」

弥佳子らが部屋にはいってきたときは満面に近い笑みであった張慈円も、いまは不愉快そうに顔を歪めて劉にそう言い放った。

「はい!承知しました!」

この場の微妙な雰囲気を吹き飛ばすような大きな声で、劉が返事をし説明を始めたのだった。

劉は今、世の企業の中間管理職が自社の傲慢社長と取引先の傲慢社長同士を引き合わせその板挟みになって胃の痛い思いをしている中間管理職と同様のストレスを感じに感じまくっていた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 18話 香港と髙嶺終わり】19話へ続く


筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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