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第9章 歪と失脚からの脱出 4話 哀愁を漂わす悲しき天才

第9章 歪と失脚からの脱出 4話 哀愁を漂わす悲しき天才


中東アジア系と言っても通用するかもしれない濃い顔つきで、頭頂部はやや薄くなりつつあるが、当の本人は自分の容姿など全く気にもしていない。

勤務時間中は着用を義務付けられてるので、仕方なくスーツに身を包んではいるが、ネクタイはだらしなく、シャツの一番上のボタンは外されている。

アフターファイブで退社寸前の疲れ果てたサラリーマンのような風体の男、モゲこと三出光春は、まだ出社前だというのに、すでに無精髭に覆われた口周りを撫でまわし溜息をついた。

溜息の理由はいくつかある。

ひとつ、宮コーの正社員になり月給も高額で安定したというのに借金が減らないこと。

ふたつ、哲司の紹介で宮川佐恵子を紹介してもらい、宮コー傘下の金融機関に、特別に金利の安いプランへの借換に変更してもらったまではよかったが、初回目の返済日から、いきなり未返済をしてしまっただけで、昨日佐恵子から罵られたこと。

みっつ、銀行員の旦那と、正式に離婚したお嬢こと伊芸千尋と付き合うことになって2か月ほど経つが、いまだに深い仲には進展せず、ディナーデート止まりで足踏みしていること。

「はぁ・・。なんでなんやろなぁ・・。俺なりに頑張ってるんやねんけど、なんもうまいことこといかへんわ。・・・給料が増えたのに借金減らへんし・・。なんでなんや・・?借金返してお嬢を諸手で受け入れられるキレイな身体になりたいんや、ってテツに相談したら、あの女に紹介されたとこに、金利の安いええプランやからて、言われるがままに契約してしもたけど、一回返済が遅れたぐらいで、あの女・・!美佳帆さんやスノウの前であんな言い方せんでもええやろが・・。テツの女やから許してやったけど・・あの女は男を立てるちゅうことを知らんのかいな?・・男は恥かかされたらダメな生き物なんやで。はぁ・・くっそ~・・、美佳帆さんやスノウにあんなこと知られてしもたら、お嬢に知られてしまうんも時間の問題や・・。あんなに人がおるところで俺の借金返済が遅れたんを言いおってからに・・。これでますますお嬢との距離に溝ができてまうやないか・・」

根っからのギャンブル好きで、少しまとまったお金が入ってきてしまうとバカラなどの賭博につぎ込んでしまい、借金はむしろ前よりも膨らんできている。

給料も安定して、先月も先々月も、部長の宏にできるだけ割のいい仕事を回してもらい、かなりの手取りを手にしていたモゲだが、入ってくるお金以上に使ってしまったため、借金がまるで減っていないどころか増えてしまった。

逆に宮コーに就職したおかげで、信用がつき、余計に借り入れができるようになってしまったため、モゲ自ら泥沼に嵌っているのである。

再度ため息をついたところで、聞きなれた声を背後から掛けられた。

「おう、モゲ!珍しく今朝は早いやないか。・・っておまえシャツもネクタイもぐにゃぐにゃやぞ?・・あ!もしかしてシャツもスーツも昨日のままか?」

「おー・・テツか。おはようさん。・・相変わらずビシッと決めとるのう。今日は彼女ところからの出勤やないんやな。会社にあてがわれた部屋で泊まっとたんかいな。そうと知っとったら飲みに付きおうてもろたのにな。・・俺の方は昨日一人で晩酌しながら考え事してたら、そのまま寝てしもて、起きたら起きたで寝れんようになってしもてなあ・・」


哲司こと豊島哲司はエレベーターホールでエレベーター待ちをしながら、なにやらブツブツ呟いていたモゲを見かけて声をかけたのだ。

緋村紅音の強引な計らいで、二人とも宮コー関西支社ビル上階にあるホテルのスイートルームを与えられているのだ。

以前、哲司は宮コー関西支社近くの宮川佐恵子が住むマンションに寝泊まりしているときが多かったのだが、モゲが思うに、ここ最近はどうもこちらのスイートルームで泊まることが多くなってきているような気がする。

二人は高校時代からの付き合いで、性格は真逆ながら妙に馬が合い、フリーで探偵業をしていたモゲを菊沢事務所に誘ったのは美佳帆と、もう一人はこの哲司であった。

「どないしたんや考え事って?なんか悩みでもあるんか?」

「まあなぁ・・、色々とな」

哲司はモゲの歯切れの悪い言葉を追及するが、モゲが言いにくそうにするので、心当たりを適当に投げかけてみる。

「千尋のことか?・・・それとも借金のことか?借金はこないだ佐恵子さんの顔で金利が安いところに変えてもらってたやないか」

「そうなんやけど・・・。悩みの内容はどっちもってとこやな・・」

「そうか・・・。まあ若い時も今も年とっても悩みちゅうもんは尽きることなく、誰でもあるんかもしれんなぁ・・」

哲司の意味深なセリフを聞いたモゲは違和感を覚え、逆に聞いてみたくなった。

哲司がこういう曖昧なものの言い方をするときは、言いたいことがある時だということを経験で知っているからだ。

「・・テツのほうもなんか悩みありそうやな?俺でよかったら相談乗るで?」

「うー・・ん、そやな・・、始業までだいぶ時間あるし、もともと1階のカフェでモーニング食べるつもりだったんや。モゲも付き合えや?・・電車や車での通勤でないんはこういう時ほんま助かるな」

「お、おう。モーニングか・・ええけど俺文無しやけどええか?」

哲司のセリフにすきっ腹を抑えてモゲが申し訳なさそうに言葉を返す。

「マジか・・!?まだ給料日までだいぶあるで?・・・しゃーないやっちゃな。まあええわ。朝飯ぐらい奢ったるわ・・って言いたいところやねんけど、忘れたんか?モゲよ。・・あんまり堂々と行くんも気が引けるんやけど、俺らはあのカフェタダやぞ?」

「おぉ!そうやった!」

モゲは何故こんな重要なことを忘れてたんだ!というようなリアクションで手を叩いて哲司を指さした。

「でも、俺らが食った分は宮コー本社に請求が行くらしいから、俺は自分の分は払ってるんやけどな。やから今日は俺がモゲの分も払たるわ」

「かたいこと言うなぁ。いただいとったらええんや。・・取り合えず明日から食い物には困れへんな」

今朝は哲司がご馳走することで話がついたところでポーンと音がしてエレベーターの扉が開く。

宮川コーポレーション関西支社の1階にはコンビニ、カフェレストラン、フィットネスクラブがテナントとして軒を連ねている。

二人は、受付のある天井の高いエントランスの大理石を革靴で音を響かせながら、ここ最近哲司はすっかり馴染みになったカフェレストランに入り、常連になりつつある哲司の顔を覚えているウエイトレスが、いつも哲司の座る外の景色が見える席に二人を案内する。

ほどなくして先ほど席を案内した者とは違うが、同じく礼儀正しく愛想の良いウエイトレスがやってきたのでオーダーを通すと、何分も待たないうちに、光沢のある綺麗な陶器の食器に、ピカピカに磨かれたナイフとフォークが並べられたプレートを二つ持ってきた。

タマゴサンドとベーコン、コーンポタージュスープ、そして酸味のあるドレッシングの掛かったレタスと胡瓜の千切りが添えれていたモーニングをあらかた食べ終えた二人は、ホットコーヒーを啜っている。

カフェから見える大通りの歩道には通勤途中の人が速足で歩いているのが見える。

ガラス越しに朝から出社する為に歩いている人混みを見ながらモゲが哲司に切り出した。

「で、テツの悩みってなんやねん。さっきよりなんか神妙な顔になってるで?・・あ、モーニングごっそさん」

モゲの単刀直入な質問とついでのお礼に、哲司はうーん・・と声を上げ「悩みというほどでもないんやけどな」と前置きをすると、モゲと同じくガラス越しに人の流れを見ていた視線をモゲの方に向けて、少し言いにくそうに答える。

「佐恵子さんのことやねん・・」

「ふんふん・・どないしたんや?うまいこといってないんか?」

モゲは哲司の切り出した人物の名前に、出来るだけ過剰な反応を示さないように注意しながらも、内心前のめりになって耳を傾ける。

「俺らもう付き合いだして3か月になるんやけどな・・」

モゲの様子を見ながら、哲司がつづけだしたので、更に話を促そうと、もうそないになるんやな。とモゲが相槌を打ちながらカップのホットコーヒーを啜る。

「・・・俺まだ一回も佐恵子さんとSEXしてないんや」

ぶーーーーーーーーーっ!!

「モゲ!・・お!おまっ!きったな・・!・・汚いやないか!・・」

「げほっげほっ!!・・はぁはぁ!・・そんなこ・・!げほっ・!すま・・ん!げほっ・・!!」

モゲと哲司の様子に気が付いたウエイトレスが濡れた布とペーパータオルを両手に持ち、慌てて駆けつけてきて二人の洋服とテーブルを拭きはじめた。

清潔な布でスーツやシャツなどを丁寧に拭いてくれたウエイトレスたちに、哲司とモゲは丁寧にお礼を言いって、ようやく落ち着いたところで、再度モゲが聞きなおす。

「テツ・・おまえもう3か月も付きおうてるんやろ?・・どないしたんや?・・普通やあらへんで?・・俺てっきりテツが風俗通いで磨いた技を、あのお高い佐恵子さんに使いまくっとるんと思とったわ・・。それに、美佳帆さんやアリサが言うには、あのおん・・いや佐恵子さんのほうがテツにべた惚れっぽいて聞いてんぞ?」

「アホ!声が大きい!・・俺らや公麿が風俗によう行ってたんは女性陣には絶対内緒やぞ?!どんな目で見られるかわからへんわ。・・それより、佐恵子さんとは、良いとこまではいくねんけど・・。いざってなると、なんか避けらるちゅうか・・、何となく嫌そうな素振り見せるんや・・。・・なんでかようわからへんけど、それまで良い雰囲気だったのに、急に無口になってもてさっさと一人でシャワーして自分の部屋に戻ってしまうんや・・」

「・・・テツ!それはあの女・・・いやすまん。佐恵子さんなりの照れか、愛情表現や!・・そうでなきゃ、男をその気にさせて肩透かしさせるんが快感な性悪女のどっちかや。・・押すんや!結局女ちゅうもんは抱いてなんぼやぞ?・・どっちみち嫌われてまうかもしれんのなら、抱いて一回モノにしてしもたほうが得やし、それで上手いこといくかもしれへんやないか!?部屋に入れるまでしてるんやぞ?!女のほうにも責任がある!遠慮することあらへん!」

「こ、声がでかい!落ち着けや!モゲ!・・あ、いかん!・・またウエイトレスさんが不安そうにこっち見てるやないか!」

「すまん・つい・・熱うなってもた・・。ってでも、テツにこんな偉そうなこと言う資格は俺にはないんや・・。俺かて千尋とまったく進展せえへんねん・・」

熱くなって語っていたモゲは、急に自分自身の不甲斐なさを嘆きだした。

「・・そうなんか。千尋がモゲと付き合うことにしたって聞いたときは驚いたけど、モゲはずっと千尋のこと想とったんは知っとったから、あの時はほんまによかったなあと思とったんやけど・・。・・そっちも進展なしか?・・どないしたんや?」

哲司と自信とよく似た悩みをモゲも抱えていると知って、心配しながら身を乗り出し理由を尋ねる。

「・・・たぶん、俺のだらしなさもあると思うんやけど、SEXに誘う時ちょっと乱暴やった時があったいうのもあったんと、・・こないだ借金や生活態度のこともはっきり言われたんや・・。もう少ししっかりしてほしいって・・そうじゃないと、決心がつかない・・ってな・・。・・けど、すぐには人間変わられへんし・・、俺もテツみたいにパリッとスーツ着こなして、落ち着いて仕事こなしてたら千尋も見直してくれるんやろうけどな・・」

悩みを聞いてもらうつもりが、モゲからも同じような悩みを聞かされ哲司はカップに目を落す。

「・・・そうか・・なんか似たようなことで悩んでたんやな」

モゲも哲司と同じように目を伏せて、項垂れかけたが、急に閃いたというような顔になりテーブルに両手を勢いよく置く。

「テツよ!・・怒らんで聞いてくれるか?」

モゲは前のめりになり、テーブルをはさんで正面に座る親友の目をしっかり見ながら問いかける。

「な、なんや・・?急にびっくりするやないか。怒るような話なんか?話によるで?」

「俺の能力・・言うけど内緒にしててくれるか?」

モゲの真剣な顔つきに、やや拍子抜けした哲司は少しだけ安堵した表情で答える。

「ああ・・それはもちろんええねんけど、隠すような能力持っとるんか?モゲの能力って肉体強化やろ?」

哲司の様子にうんうんと頷いてからモゲは、更に前かがみになり哲司に顔を寄せ、「実はな・・」と前置きしてから切り出した。

「・・・それだけやないねん・・。俺もフリーの探偵で何とかやけど、何年もメシ食うてきてたんやで?・・腕力馬鹿だけやったらとっくに飢え死にしとるわ」

前傾姿勢のままモゲが流石に声のトーンを落として言ってくる。

「そうあったんか・・まったく知らんかったわ。俺にも言えんようなことだったんやな?どんな能力なんや・?で、なんで言う気になったんや?」

モゲの真剣な顔と雰囲気に、哲司もつられて小声で聞き返す。

「すまんな・・知られてもうたら使い勝手悪いと思て、なかなか言われへんかった・・。フリーも長かったし、敵さんに知られてもうたらちょっと不味いような能力やねん。それに効果時間を正確に操れ出したんはここ最近なんや」

「・・いまいちまだピンとけえへんけど・・まあ、企業秘密あったわけやな?で、効果時間とか言うからには条件ありそうやな?」

モゲは口の動きを周囲から隠すように片手で被い、周囲をキョロキョロと伺ってから先ほどより小声で言う。

「俺は【認識交換】・・って名付けてるんやけど・・どないしよ・・説明めんどいな・・えーっと・・・そやな・・。・・お!!ええところに・・神田川さんや」

哲司はモゲにつられて会社の入口玄関の方に顔を向けると、たった今出社してきた真理が挨拶の言葉を掛けてくる守衛や社員たちに笑顔で挨拶を返しながらエントランスを歩いてくる姿が見えた。

「テツ!もうちょっとだけ顔こっちに寄せてくれや。はよう!神田川さんが行ってまう!」

「・・・こうか?」

「よっしゃ・・ええか?いくで?」

慌ててそう言うモゲに理由を聞きたかったが、哲司は素直に頭をモゲのように寄せると、モゲも頭を哲司に寄せて、二人の額と額が時間にして3秒ほどだけ重なった。

「な、なんや?・・別段・・特に変化ない気がするけど・・?たしかにオーラが流れたんは感じたけど・・どないなったんや?どんな効果やねん?」

訝しがって額を手のひらで押さえながら呟く哲司に、モゲは手でまあまあとする仕草をしてから不敵に笑う。

「まあ、見とけよテツ・・。おーい!神田川さん!」

哲司の返答を待たずにモゲはエントランスをカツカツと良い姿勢で歩いている真理に声を掛け、ぶんぶんと手を振った。

真理はモゲの姿を認めると、爽やかな笑顔を向けこちらに軽く手を振りながら近づいてきて、哲司とモゲが座っているテーブルまで歩いてきた。

「おはようございます。豊島さん。今朝もここで朝食とってたのですね。今日は三出さんもご一緒なのですか。三出さんも豊島さんと朝一緒に出勤されたら、駆け込んでギリギリ出社しなくてもよさそうですね。・・・豊島さんネクタイ曲がってますよ?」

哲司は目の前で起きていることが不可解すぎて目を白黒させた。

神田川真理がモゲのことを哲司と呼び、モゲのぐにゃぐにゃのネクタイを締めなおしているのだ。

モゲはニヤニヤと哲司の驚いた顔を笑っている。

「???・・あ、え・・?」

真理に三出さんと呼ばれた哲司が、まともに言葉を返せずにいると、モゲのネクタイを整え終えた真理が「これでよし」といいモゲの身だしなみを整え終わった。

「豊島さん、ネクタイとシャツが汚れていたのは佐恵子には内緒にしておいてあげますね。じゃ、では私はそろそろ行きます。ちょっと急ぎの案件がありまして・・ん!?」

「な、なにしてるんやモゲェェェッー!!!」

真理が立ち去ろうと踵を返した瞬間に、モゲは真理のヒップを触ろうと手を伸ばしたところで、予知能力のある真理がヒップに伸びたモゲの手を掴んだのだ。

咄嗟のことで混乱しながらも哲司は大声を上げてしまった。

「・・・豊島さん・・・?これは何かの間違いですか?・・ほんの出来心なのですか?・・こんなオフィシャルな場所でこんな冗談・・、私は嫌いです。ましてや豊島さんには佐恵子がいるじゃないですか?・・こんなこと佐恵子が知ったら・・すごく傷ついてしまいますよ?」

モゲの手首をしっかり握ったまま、真理は信じられないといった顔つきでモゲを見ながら言う。

真理は顔には出さないように我慢しているが、怒りを抑えているのは明白だ。

「すまん・・。ちょっと手が滑っただけや」

モゲは笑いながら手を上げて、茶化した口調で真理にそう言うと、真理は、ポーカーフェイスながらも、形の良い眉を僅かに吊り上げて掴んでいるモゲの手首を放るように手放した。

「・・・・豊島さんのこと誤解してたかもしれません。失礼します」

そう言うと真理は踵を返し、ヒールの音を先ほどより強く響かせながら立ち去ってしまった。

「モ、モ、モ、、も、も、モ、モゲよ!シャレにならんことするなや!!あんな顔した真理さん見たん初めてやで?!どないしてくれるんや?!それにモゲのこと豊島って・・真理さんの尻、触ろうとしたん俺と思ってんちゃうんか?!ほんまどない、ほんまどないにしてくれるんや!?・・・俺、真理さんや佐恵子さんに次会うたとき、俺なんて言えばええんや?!モゲよぉ!」

哲司はテーブルに突っ伏して大声で嘆いてモゲを非難する。

「・・す、すまん。調子に乗りすぎてしもた・・。あとで一緒に謝りに行くから許してくれ・・。せやけど、これでどんな能力かわかってくれたかいな?」

流石にやりすぎたと思ったモゲは哲司に手を合わせ深々と頭を下げて謝る。

「たぶん・・わかった・・俺が今モゲなんやな?・・それで【認識交換】ていう訳か・・。せやけど、真理さんの俺に対する印象、無茶苦茶になったやないか」

哲司は突然降りかかってきた災難にげんなりとした表情でそう言うと、モゲのほうを向いて溜息をついた。

「すまんすまん・・けど、どないや?あの神田川真理ですら気づかんかったんやで?・・俺も真理さんに通用するかちょっと不安やったんやけど・・改めてこの能力の精度に自信が持てたわ・・。・・・この【誤認識】については俺の能力の方が神田川真理を上回ったってことや」

調子に乗りすぎたとさすがに少し反省したモゲだが、真理に気付かれなかったことが大いに自信になった様子で、少し鼻息が荒めになっている。

「た、たしかに、それはそやな・・。真理さんをオーラ扱った能力で謀るちゅうのは、すごいことかもしれん・・」

「この能力は潜入捜査とかで使うし、バレたら敵のド真ん中で正体晒すことになるからな・・。精度に関しては特に気を付けとる・・・。あと時間も同じぐらい重要や・・。どのぐらいの時間、効果が継続するかっていうのを正確にしとかんと、これもまた命とりやからな・・。きっちり3時間って訳や」

哲司の感想に気をよくしたモゲは、【認識交換】の詳しい説明を補足する。

「・・・なるほど・・たいした能力や・・潜入捜査にはうってつけなんは間違いないな。まさかモゲにこんな切り札があるとは思いもよらんかったな。正直にほんま驚いたわ」

哲司がモゲの隠し玉に正直に感心していると、モゲがまたもや身を乗り出して小声で話しかけてくる。

「で、どないや・・。テツさえよかったらさっきの悩みのことなんやけど・・」

「どないやって・・どないするんや?」

モゲの言いたいことがわからずにいたが、哲司もモゲにつられて小声で聞き返す。

「相変わらず鈍いのう。まあそれでこそテツなんやが・・」

「もったいぶらんと言えや。悩みと何の関係があるんや」

「テツは千尋に優しい上にパリッとしたええところを見せて、俺のことを見直させる。で、俺は佐恵子さんに、多少嫌な時があっても最大限男の意思を尊重せんといかんことを教える・・・。どないや?」

相変わらずの前傾姿勢のまま小声で続けるモゲに、哲司は怪訝な表情で眉を顰めて聞き返す。

「な、なんやそれ。ちょっと危なないか?・・そんな話をするってことは、お互いの彼女と二人っきりになるいう事やぞ?モゲお前は平気なんか?・・俺と千尋が二人っきりになんねんぞ?」

はっきりと否定の言葉を口にしない哲司の答えに、モゲはあと一押しやな・・と確信を持って話を続ける。

「大丈夫やって。時間内ならバレへん。佐恵子さんも何でか知らんけど、あの能力使えれんようになってるんやろ?絶対バレへんで?・・テツが聞きにくいようなことでも俺ならズバッときけると思うで?なんで俺のこと避けてるんや?なんで俺とSEXする避けてるんや?もしかして浮気してるんか?ってな」

「ま、まあ・・そやな。そやけど騙すみたいで悪いと思ってまうんやねんけど・・」

彼女のいない時期に風俗には通っていたが、女性関係に関してはかなり誠実に向き合ってきた哲司である。

それだけに佐恵子が哲司とのSEXを避けている真意を知りたくもある。

しかし、モゲの持ちかける提案に含まれる、千尋のプライベートな部分を見れるというあやしい期待というものに、少しだけ哲司の心が揺れ始めていた。

ただ、それは彼女である佐恵子の無防備なプライベートな部分を、親友とは言えモゲに差し出すことを意味している。

「なに言うてんのや。実際に騙すんやって。けど、千尋にも佐恵子さんにも絶対バレへんのやで?・・誰もキズつかんやろ?・・・それに、おれも最愛の千尋をテツと二人っきりにするってことなんやぞ?テツもリスクを冒すべきやで?フィフティーフィフティーや。うまく行けばお互い彼女が心開いてくれる。万事解決や。どや?ちょっとやってみんか?」

モゲの勢いに哲司は少しだけ躊躇いながらもコクリと頷いて見せた。

「よっしゃ!・・決まりやな」

モゲはそう言うと右手を哲司に差し出した。

哲司は一瞬躊躇する素振りを見せたが、ガッチリとモゲの手を掴み、顔をお互いに見合わせ頷きあった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 4話 哀愁を漂わす悲しき天才終わり】5話に続く


第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル

第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル

哲司と佐恵子は、宮コー関西支社の近くにある、ホテルの高級レストランの個室にいた。

今日昼過ぎに、突然哲司からの誘いがあり、ディナーをすることになったのだ。

突然のことだったが、平日ということもあり哲司からリクエストのあったこのレストランの予約が取れたのである。

佐恵子は哲司の誘いに喜んだが、哲司はモゲこと三出光春と、お嬢と呼ばれている伊芸千尋も一緒にという提案をしてきたのだ。

佐恵子はできれば哲司と二人っきりでディナーを楽しみたかったが、お付合いするということは相手の友人関係も理解すべき、と思い快諾したのであった。

佐恵子にとって人生初のダブルデートと言うイベントであるが、どのような振舞いをしてよいかはわからない。

一応彼氏である哲司に恥をかかさぬよう、佐恵子はスーツから着替え、七分丈のネイビードレスに、同じくネイビー色のヒールで服装の統一感を持たせ、髪の毛はメッシーバン気味のシニヨンで緩くアップにして身だしなみを整えている。

佐恵子なりにフォーマルすぎないように気を付けたのだが、ダブルデートとなると相手側にも配慮しなくてはならないと思い、かなり服装には迷ってしまったであった。

しかし、モゲとお嬢は来ておらず、二人の席にはナプキンが置かれているのみである。

二人が来るまでの間、佐恵子は今日あった出来事を哲司に話していた。

「本当に残念でした・・。おそらく直前に巻き込まれた揉め事のせいと思うのですが、麗華さまかもしれない人物に勘づかれてしまったようで、姿を晦まされてしまったのです・・」

「そうか。残念やったな・・。佐恵子さんも折角同行してくれたって言うのに・・。せやけど姿晦ますってこと事態が、自分で怪しいって言うてるようなもんやな。アパートの方も、もぬけの空やったんやろ?・・・てことは今回のが麗華やないにしても、なんか事件性はありそうやな・・。それにその襲ってきたチンピラ共もタイミング的にも気になるし、どこの依頼なんやろな・・・」

残念そうに語る佐恵子に、哲司は頷き同意する。

佐恵子も麗華の行方にはかなり責任を感じ、佐恵子が私財を投じ捜索させていたのは哲司もよく知るところである。

「はい、美佳帆さまも哲司さまと同じことおっしゃってましたわ。明日あの食品会社とアパートに行くそうです。美佳帆さまが、食品会社の社長とアパートの管理会社には話をすでに付けてきたようですので・・。明日は、スノウさん以外にも、伊芸さまと北王子さまも同行して本格的に追跡すると息巻いておられました」

「そうやな。それなら盤石の態勢やな。そこまで情報が揃とって、その3人に追われたら時間の問題やで。いつもの必勝パターンや。うちは府内・・いや、たぶん探偵業やったら日本一のはずやからな。実際、県外依頼も3割ぐらいあったんや。手が回らへんから、どうしても後回しになりがちになってたんやけどな・・。明日は俺も一緒に行きたいところなんやけど、宏もモゲも俺も明日は支社長・・あ、すまん」

哲司は、紅音のことを佐恵子の前で、支社長と呼ぶのは悪いと思ったのだが、杞憂だったようで、佐恵子は哲司に優しい笑みを向け促す。

「気になさらないで?続けてください」

哲司は、咳払いをし、軽く頭を下げてから続ける。

「・・緋村さんからの直接の依頼で、明日から3人とも別々のところに潜入捜査なんや。そやから明日はアリサが皆の護衛として行く手はずになっとる」

哲司のセリフに佐恵子は、僅かに表情を曇らせる。

「・・そうですか。では暫く寂しくなりますわね。いつ頃こちらにお帰りに?」

佐恵子の、寂しくなる・・という発言に、少しだけ疑問とまではいかないが、哲司は心に僅かに引っかかりを感じたのだが、表情に出さず続ける。

「佐恵子さんにそう言うてもらえるのは、男として光栄の極みやな・・。せやけど日程はちょっと不明なんや。1週間もかからへんと思うんやけど、一応予定は内密なことらしくてまだ明かされてないんや」

「・・・そうですか・・。帰ったらまたご連絡くださいませ。・・・それにしても、明日は護衛対象が多いですわね。アリサさまお一人では何かあった時大変そうです。真理か加奈子に依頼できればいいのですが・・」

哲司の帰ってくる日程が不明なのが残念なようで、佐恵子は声のトーンが少し下がってしまう。

そのうえ、今の立場では、親会社の従業員である、かつて側近の部下だった二人を動かせない自らの不甲斐なさを嘆いているようにも見えた。

「ありがとうな佐恵子さん。気を使うてもうて。でも大丈夫や。アリサも美佳帆さんがおったら的確に指示には従うし、なにより公麿以外はみんなかなり強いからな。心配あらへんと思うよ。あれ以来香港の奴等も全然噂聞かへんしな。張慈円クラスの達人なんかそうそうおらへんよ。それ以外やったら相手の方が気の毒なことになるから。実際今日そうやったんやろ?」

哲司はなるべく佐恵子に気を使わせないよう、冗談を交え優しく言いふくめる。

「・・・モブをそちらにお貸しいたしましょうか?」

哲司の言葉に、モブを貸せ、と言われてると勘違いしてしまったのか、佐恵子は自身の身辺が手薄になるのを、少し心配している表情ながらも哲司に提案してくる。

「いやいや、それはダメや。ただでさえ佐恵子さんの護衛はあいつだけになってしもうとるのに・・・。これは俺の言い方悪かったな勘違いさせてしもて・・。それにしてもまったく・・、一族直系のご令嬢に対して護衛の一人も寄こさんと宮川家はいったいどういうつもりなんや・・」

佐恵子のモブ貸出提案をきっぱりと断り、余計なことかもしれなかったが、哲司は少しだけ不満を吐露した。

「・・・仕方ありませんわ。お父様と叔父様はここ10年ほどずっと不仲ですもの・・。叔父様からすれば、病床のお父様はともかく、最近魔眼の力を増しつつあった、わたくしの影響を今のうちに削いでおきたかったのでしょう・・。それに宮川家始まって以来、女が当主になった歴史はございませんわ・・。わたくしが一族の当主となるには、もともと反対も多いのです・・。本社から聞こえてくる話では、私の魔眼の力が弱まったのを喜んでいる声もある・・、と聞き及んでいますわ」

哲司は余計な一言を言ってしまったと思ったが、少しだけ気弱になっているのか佐恵子は、普段は全く話さない宮川家のことをこぼした。

「・・・なんて話や。可愛い姪っ子が奮闘して、会社大きいにしとるちゅうのに・・!」

哲司のセリフに佐恵子は驚いた顔してすぐに、口を片手で押さえ、くすっと笑うと「叔父様が、わたくしのことを可愛いなどと思っているはずございませんわ」と言って続ける。

「そう、そうですわね。哲司さまの感覚が普通なのかもしれませんね。・・・でも哲司さま・・よいのです。わたくしの眼力瞳術は、ついこの間までは叔父様の力をも上回っていました。・・そのせいでここ数年様々な嫌がらせや妨害を受けましたわ。叔父様には、本当にわたくしのことが驚異だったはずなのです。ここだけの話・・、わたくしも叔父様にできれば引いて頂きたいと本気で考えていましたしね。でも、今の状態は紅音から聞いているはずですし、真理が言うには、こっそり叔父様本人も、こちらに確認に来ていたようです。・・わたくしのオーラ量を叔父様は魔眼でご覧になったはず・・さぞ安心しているでしょう。・・叔父様は息子の・・わたくしからすれば従弟ですね。従弟の史希(しき)が一人前になるまでは、宮コーを切り盛りして頑張るおつもりでしょう・・・・。それに、わたくしの力が弱いほうが、一族から色々な謀略を受けませんわ。・・・つまり安全ということになります。能力の力は乏しいわたくしが、宮川の為の仕事だけはこなす・・。このほうが身内からは狙われにくいのです。皮肉なものですがね・・」

そう言うと佐恵子は静かにふぅと息を吐き、食前酒としてオーダーしていた、フルーツブランデーのグラスをくゆらせて、揺れる琥珀色の液体を視線を落した。

「佐恵子さんはそれでええんか?」

哲司は、二人っきりの時に佐恵子が時折見せる儚げな目を見て、優しくそして力強く聞いた。

「・・・宮川の為になるのであれば・・と思って、今はできることをやってはおりますが・・、どうでしょう・・・。IR法で解禁になったカジノ計画が一区切りつけば・・、少し考えなければならないのかもしれません。宮川アシストの株は持っておりませんが、今のところ宮川アシストの人事権は全てわたくしにございます。・・・落ち着けば香澄に任せようと思ってますわ。あの方、本当に優秀ですから・・。少し強引でしたけど、真理が香澄の能力を強引にこじ開けてしまいましたわ。香澄といいモブと言い、本来ならやってはいけないこと・・オーラを直接流し込むという。・・真理や加奈子にはわたくしの為に、ともすれば相手を壊してしまうかもしれないことをさせてしまったのです。・・・哲司さま、今のはなし・・誰にも言わないでくださいね?」

佐恵子は、今後の未定で不明確なことと、真理や加奈子の強引な手法を容認してしまったことを哲司以外には誰にも言わないつもりなのだろう。

モブには加奈子が、香澄には暴漢にみせかけて真理が、オーラを直接相手の体内に流し込むという強制開花を促したのだ。結果的に二人とも後遺症もなく無事能力を扱えるようになったが、それはただ運がよかっただけで、失敗すれば重大な後遺症を残す可能性があるのだ。

哲司もオーラを扱う以上その手法は理屈ではわかっていた。

そのため、佐恵子は念のために誰にも言わないよう哲司にくぎを刺したのであった。

「ああ、言わへんから安心してな」

哲司のことを信頼して秘密を語ってくれている佐恵子に対し、哲司はこれからしようとしている企みを思い出して、痛みが胸にはしった。

「ありがとうございます哲司さま。お願いいたしますわ。でも、こんな手法をしてしまうわたくしのこと嫌ってしまいませんか・・・?」

罪悪感から哲司の顔が僅かに強張ったが、もはや【感情感知】すら使えない佐恵子は哲司をすでに信頼しきっている。

佐恵子はアンバーアイの不思議な目の色で哲司を見つめてお礼を言い、そして不安をにじませ嫌われるのを怖れた、悲し気な表情で訴えかけてくる。

「大丈夫やから・・っお・・。ようやく来たようや」

哲司は佐恵子の顔を直視しにくくなってきたちょうどその時、個室の扉が開かれ、千尋を伴ったモゲが騒がしく入ってきた。

「すっごい部屋やな!おお?!府内の夜景が一望できるやんか!・・あれが今開発工事やってるところやな~?上からみると随分広いんがようわかるやないか!なあ千尋!?あれうちの会社がやってんのやで?すごいやろ~!」

時間から10分ほど遅れてきたモゲが挨拶もなく、一面がガラス張りになっているところまで行って、ガラスに手を付いて大声で夜景に感動している。

「ちょっと!モゲ君ってば!やめてよ恥ずかしい!モゲ君の会社じゃないでしょ!ごめんなさいね宮川さん、和尚・・。モゲ君!いい加減に窓から離れて!」

高すぎない黒のヒールで足元を飾り、シックな黒のワンピースドレスに黒のストールを羽織った千尋は、ワンピースに深めに入ったバックスリットが大人の色気を醸し出しているが、千尋自体の雰囲気は、いかにも清楚なお嬢様としての品の良さを十分に感じさせる。

しかしその千尋が、窓ガラスに張り付くモゲの腕を掴み、やや足を開いて引き剥がそうとする姿がなんとなく、そのせっかくの品の良さと美しさをコミカルに感じさせてしまう。

「お、おう!すまんすまんついな!」

穴があれば隠れてしまいたいほど恥ずかしそうにしている千尋とは対照的に、モゲは高いテンションを維持したまま、全く悪びれた様子もない謝罪を口にしてようやく窓ガラスから手を離した。

「モゲよ。遅かったやないか。19時って言うとったやろが」

モゲの相変わらずの様子に、しょうがないやつやな、と言いながら哲司が声を掛けるが、テンションの上がったままのモゲはモゲ節を続ける。

「すまん。まあほんの少し遅れただけやないか。誤差の範疇やろ?!」

「あのなモゲよ。それは俺らが言うんなら成り立つセリフであって、お前が言うたらあかんセリフやねんぞ?」

苦笑交じりに親友を窘める哲司だったが、今までの経験上モゲにはあまり効果がないことは解っているようで、哲司も本気で言っている様子ではない。

「ほんとごめんね」

そんなモゲの隣で千尋は、佐恵子と哲司に申し訳なさそうに頭をかなり深めに下げて謝っている。

「ええからええから。これから美味しいもん食うのにそんなに謝っててもしゃーないやろ。楽しいにやろや?な、千尋ももう座れや。ほらこっちの席や」

雰囲気を悪くさせないように哲司が千尋に優しく席を勧める。

それでもまだ申し訳なさそうに畏まる千尋に、佐恵子も笑顔を送り、軽く会釈するが、まともな謝罪の言葉もなく左隣の席にどかっ!と座ったモゲを一瞥する佐恵子の目は冷ややかだ。

千尋も哲司の隣にようやく座ったところでレストランの支配人が挨拶に現れた。

「皆様本日はありがとうござす。コースを承っておりますが、お好み等があれば仰ってください。まずはいらっしゃったお二方のお飲み物からお伺いさせていただきます」

~~~~~~~~~~

牛ヒレ肉のクリスピーステーキのメインディッシュをガツガツと平らげ、続けて出されたフルーツの盛り合わせを食べ終えたモゲが言う。

「ん~・・!んまかったな!しこたま食うたで~。それにしてもテツよ。おまえあのお嬢様にいつもこんなメシご馳走してもらってん・・」

「んなわけないやろが!コース以外のもんまでがんがん注文しよってからに・・ここは俺とお前が出すんやぞ?!」

ジャケットのボタンをはずし、お腹をさすりながら言うモゲのネジの緩んだセリフに、哲司がかぶせ気味に反応して言う。

「ええぇ~?嘘言えやぁ・・。テツの彼女大金持ちやん?あのお嬢様に出してもろうたらええやないか」

「・・あのなあモゲ。男が誘ったら男が出す。当たり前やろが?」

びっくりしたような顔で言うモゲのセリフに、哲司があきれ顔で諭すように言う。

佐恵子と千尋はさきほど化粧直しに席を立ったところで、いまテーブルには哲司とモゲしかいない。

女性たちがいなくなった二人の口調は、とたんにざっくりしたものとなる。

「そうかもしれへんけど、一番金持っとんは確実にあのお嬢様やで?」

「はぁ・・。そういやおまえ文無し言うとったな・・。しっかしその感覚は重症やぞ?千尋にええところ見せるんちゃうんか?・・佐恵子さんがもってるんはそらそうやろうけど、こういうのは男が出すもんやろが」

「そうか・・ええとこな・・。そうやったな。・・そらそうや。そらそうやな。わかった!俺らで払おう!そらそうや!千尋にええところ見せんとな!・・・けどテツ・・ここはおまえが立て替えとってくれ」

「まあそうなるよな!おまえ文無しやもんな?!文無しなくせになんでこんな高いとこ行きたいっていうたんや?!」

千尋に良い所を見せなければ・・と言うことを思いだしたモゲは払おうと決心したが、払うものがなかったので、いつもどおり哲司に頼るが、哲司は呆れを通りすぎかけた口調でモゲに言う。

「怒るなって。俺てっきりお嬢様払いと思とったから・・」


「んなわけないやろ・・。こっちからデートに誘っといて4人分の食事代を、人の女に全部払わすつもりやったっちゅう神経がまったく理解できんわ・・・。畑に花ばっかり植えとったらあかんぞ?」

そう言うと哲司ははぁ~と大きなため息をついた。

「はっはっは、相変わらずテツは冗談が上手いな。・・まあ・・テツよ。そんな冗談言うとる場合ちゃうぞ?・・今のうちや。二人が便所行っとる間に入れ替わるぞ?準備ええか?」

「・・化粧直しって言うたれや・・。し、しかし・・ほ、ほんまにやるんやな?」

こいつほんまなにいうてんねん・・とテツはモゲのセリフにいろいろ突っ込みたい気持ちを抑え、このデート本来の目的を思い出しゴクリと喉を鳴らす。

「あったりまえやがな。せっかくこんな高いレストラン奢ってんねんで?・・それに、俺から見ても悔しいけど千尋はお前のこと尊敬しとる。・・なんやお前のほうにばっかり気を使っとるやんか。・・ほなけどその感じでこれから3時間千尋に接してやってくれや。それできっと俺の印象も上がるはずや。さっきお互い部屋で飲みなおすことになったやろ?きっちり頼むで?」

奢ったんは俺だけな。おまえは全く奢ってないからな・・?いやむしろお前の分すら俺が払ってるからな?立て替えるったってお前いままで一度も返したことないやろ?・・と哲司は再び突っ込みそうになるが、もう一度ぐっとこらえ自分の心の準備をする。

「まじか・・・。わかったわ・・。ほな、おまえこそ佐恵子さんにちゃんと聞いてくれや?」

「もちろんや。任せとけ。なんで彼氏である俺とのSEXを避けとるんや?って聞くだけや。簡単なこっちゃ。しっかし佐恵子さんも間近で見るとフェロモンむんむんやのう・・。一つ一つの仕草がたまらんわ。これでオアズケくらわされ続けたら流石にテツも我慢の限界やったやろ?」

不安いっぱいの哲司とは違い、モゲは根拠のない自信たっぷりの顔で胸をどんと叩いて頷いた。

「おまえ・・もし佐恵子さんとそう言う雰囲気になったらどうするつもりや・・?」

モゲのセリフに不安を抱いた哲司が不安そうに聞くと、モゲは哲司の心配そうな顔を見てニヤッと笑って言う。

「まあ心配するな。いくら俺のことをテツと認識しとっても、俺みたいな態度や口調の男に絶対その気にならへんと思うで?・・さっきからずっと俺に対してあの女から一言も話しかけてこうへんし、目すら合わせてけえへんで?・・それよりテツよ。おまえこそ千尋に変な真似するなよ?・・まあ、いままでの感じからして、いくら何でも千尋が急に俺に身体許すなんてありえへんと思うわ・・残念やけど・・な」

モゲはほとんど可能性がないとは思っているが、そう言いながらも成り行きで佐恵子が身体を開きそうであれば、頂くつもりでいた。

どうせ本人にバレることは無いし、モゲにすれば佐恵子には罵られ、今日は一言も会話もなく目すら合わせてこない女である。

借金の借換には手を貸してもらったが、モゲの借金がなくなったわけではない。

実はモゲは3年ほど前フリーの探偵時代に、宮コーがらみの件で宮川佐恵子を調査したことがあったのだ。

その時も今回使う【認識交換】が効果を発揮し、かなりの情報を持ち帰ることができ大儲けに繋がった。その仕事のついでで得た情報の中に、宮川佐恵子個人の資産だけでも相当な額だったということは憶えている。

なぜなら通帳に印字されているカンマの位置が、見たこともない桁にあったからだ。

自分を見下して人前で罵り、自分がなくて困っている金を、使い切ることができないほど持っている女がマヌケにも自分を哲司と勘違いして身体を開いたのならば、遠慮なくハンティングトロフィーの証を佐恵子に刻んでやるつもりでいた。

哲司はいまだ佐恵子と肌は重ねていないと言っていた。そうだとするとまだ佐恵子の裸体すらまともに見たことがないはずなのだ。

それはモゲも同じことなのだが、他人の女というものはどうしてこうも掻き立てるものがあるのだろう。それに持ち主すらまだその身体を味わっていないのだ。

そこに持ち主よりも早く土足で侵入し、最初の足跡を残す優越感はどのぐらいの快感を与えてくれるのだろうと、モゲもそして哲司も密かに考えを巡らし下腹部に血が行き過ぎそうになっていた。

風俗の女とは違い、人妻やキャリアウーマンをいただいてしまうのは何とも言えない恍惚とした感覚がある。ましてや佐恵子も千尋もタイプは違うが間違いなく美女と断言してもいい水準の女たちである。

このレストランの個室まで着飾った彼女を連れてくる際、モゲも哲司もすれ違う男やカップルに優越感を抱くことができる女たちなのは間違いなかった。

しかし、あと一歩というところで身体を許してくれない自分たちの彼女のことを、哲司とモゲは少しだけ怨めしく思い、もしかしたら今日、自分に身体と心を許すかもしれない身近な人の女に意識を向けてしまうのは無理もないことなのかもしれなかった。

「まあ、大丈夫やって。心配するな」

「お、おう。しっかり聞いてきてくれや?俺の方もきっちり決めてくるさかい」

モゲにそう言われても哲司は、正直不安は多かったが、さっきの食事中に隣に座る千尋の普段とは違うドレス姿を間近で見られるという好奇心が哲司の心を確実に揺さぶっていた。

それに佐恵子は普段は優しく接してくれるが、いざベッドに行こうとすると、突然突き放し避けてくる態度は、正直男としては内心かなり自尊心が傷つけられているのも確かだ。

おそらく女にはこの感情はあまり理解できないのであろう。SEXを避けている真意を確かめたい、何か理由があるのかもしれないとは思うが、3か月も断り続けられると、さすがに怒りに近いものが心の奥底で燻ってくることがあったのも確かだ。

その佐恵子の態度を今回の作戦を決心した理由にこじつけ、高校からの幼馴染である学校中から正統派美人として人気のあった千尋と二人っきりで過ごせるチャンスを見逃すのは惜しい、とも思う。

哲司は佐恵子と付き合い始めた頃にはこういう事は思いもしなかっただろうなと、心境の変化に驚きつつ、こういう心境になったのはやはり愛を確かめるという行為を拒絶され続けたにほかならない。

千尋にはよくモゲのことで相談されていた。そのときに信頼し接してきてくれる千尋は無防備で美しかったが、親友の彼女であるため、いい人でいなければならなかったのは正直辛いものがあった。

その千尋に、哲司本人だとバレることなく近づき肌に触れられるかもしれない。もしかしかしたらそれ以上のことになるかもしれないという、暗い期待がむくむくと湧いてくる。

しかし、それでもモゲの毒牙にまんまと佐恵子を晒してしまうのは・・と決心が鈍りかけた哲司の表情を読み取ったモゲが手を叩き大きめの声で言った。

「よっしゃ!ほな帰ってくる前にやるで?」

そう言うとモゲは、かき上げる必要もないぐらい短く薄い前髪を大げさに片手で上げ、哲司に催促する。

哲司もモゲのその額を出したポーズをみて覚悟を決めた表情になり、額を重ねた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル終わり】6話へ続く


第9章 歪と失脚からの脱出 6話 精神スワッピング

第9章 歪と失脚からの脱出 6話 精神スワッピング 

宮川コーポレーション15階にいくつかあるスイートルームは、部屋ごとに内装や間取りの趣向を変えた造りになっており、1つとして同じ部屋はない。

菊一事務所メンバーはスイートルームの使用を半ば強引に勧められて、そこで寝泊まりしているが、まだ誰がどの部屋に宿泊しているのが決まっているわけではなく、部屋の割り振りは、数日ごとにメンバーで入れ替わったりして、それぞれ使い心地を試している状況であったからだ。

それと、使い勝手や好みという面もあるが、それ以外に調べなければいけないことがあった。

一方的に疑うのは良くないと分かっているが、万が一の為、最初の1か月ほどはメンバーを入れ替えながら、それぞれ各部屋に如何わしい仕掛けがないかを調べつくしていたのである。

結果的に、探偵事務所の全員のメンバーの調査では、どの部屋も盗聴器や盗撮カメラなどはなくシロだったということはすでに判明している。

また、どの部屋に誰が宿泊しているのを固定してしまうと、敵に思惑があった場合には、良からぬ企みを計画しやすい・・という懸念もある。

しかし、ここ3か月ほど、美佳帆の【百聞】や千尋の【残り香】などでも徹底的に調査をしているので、宮コー幹部からの思念を使った企みも今のところ無いのは間違いがない。

という訳で、そう言った意味から安全だと分かりつつある状況であるし、哲司は昨日から泊っているこのスイートルームを気に入っていた。

すでに何度かこの部屋では寝泊まりしているが、ほかの部屋よりもこの部屋が一番落ち着く。

壁はほとんどアイボリー色で、調度品や家具、そして扉などはダークブラウンでまとめられている。

哲司にとっては、このぐらいシックで落ち着いた色合いのほうが好みなのだ。

哲司は部屋に備え付けられているサイドボードの中に用意しておいたボトルをいくつかとり出して、窓際に立って夜景を眺めている女性に声を掛けた。

「食後酒って言うたらブランデーとかなんやろけど、千尋はこっちのほうが好みやと思て用意してたんや」

声を掛けられた千尋は、ボトルを取り出し、グラスや氷を用意している哲司を見て驚いた。

「ど、どうしたのモゲ君?・・そんな気を使うなんて・・ひょっとして飲み過ぎてる?」

モゲがいままでそういう気の利いたセリフや、準備をしていることに慣れていない千尋はついいつもより大きめの声で答えてしまった。

哲司も千尋に思いのほか大きな声で返事されたため、少し驚いた顔になってしまったが、すぐに笑顔になり千尋に返答する。

「どうしたって部屋で飲みなおす話やったやないか。もう忘れたんかいな?ほら・・、だいぶ前やねんけど、これ、千尋が言うてた酒やろ?買うてきてたんや」

哲司は笑顔のまま、鮮やかなレモン色の液体の入ったボトルを、千尋に見えるように片手で軽く持ち上げた。

「え・?これって・・結構前の話だよ?・・そんな前のこと覚えてたの?」

千尋は窓際の縁から哲司の近くまで歩きより、哲司に渡されたボトルをまじまじと見て、顔を上げた。

「そや。ちょっと度数たかいけど肉料理のあとはこれでええやろと思うし、千尋の口にもあいそうや思てな。・・・どや?」

ボトルを手に、千尋は哲司の顔とボトルとを驚いた顔で何度も見比べる。

「ど、どないしたんや?」

哲司はすぐ身近にまで近寄ってきた千尋の距離が、いつも以上に近いことに内心焦りつつもできるだけ平静を装い聞き返す。

(これって・・ほんまにバレてないんやろな・・)

哲司はモゲの能力によって、周囲からはモゲと認識される誤認作用のあるオーラを全身に纏っている。

「う、ううん?なんでも・・。ありがとうモゲ君。・・でも、いつもマイペースなモゲ君が急にこんなことしてくれるとびっくりするよね」

バレてないかと心配して妙に背中が汗ばみだした哲司は、伏し目がちに嬉しそうな表情でそう呟く千尋を見て一気に安堵する。

「す、すまんなぁ千尋。今日も俺・・、テツや佐恵子さんの前であんな感じになってしもて、千尋に恥ずかしい思いさせてもたな。・・すまんかった。もうちょっと俺ちゃんとせなあかんよな」

伏し目がちで俯く千尋を間近で見下ろすようにしている哲司は、普段こんな近くで千尋をまじまじと見る機会がなかったので、内心ドギマギしながらも答える。

「ほんとよ。すっごく恥ずかしかったんだから。和尚や佐恵子さんはきちっと身だしなみしてるのに、モゲ君ったらネクタイも外しちゃってて、あんなに大声で夜景にはしゃいだり、お料理だってあんなにガツガツ食べるんだもん・・。それに、私だけ頑張ってドレスアップしてても・・って・・あ、あら?モゲ君いつの間にネクタイしたの?」

自分の耳では「どきぃ!」という心臓の跳ね上がる音が聞こえた哲司は、かろうじて表情を動かさずに我慢できた。

哲司は、誰にも分らない程度に目を泳がせただけで、ほぼ表情に出さずにできるだけ落着いて、ゆっくりとそしてはっきりと千尋に目を合わせて口を開く。

「さっきはちょっとふざけてしもてたけど、いまは千尋と二人っきりやし、ちゃんとせなあかん思て、締めなおしたんや。・・・真面目な話もせなあかんしな」

哲司はかなり焦ったが千尋の様子を見る限り、自分だとバレている様子はなさそうだ・・と改めて胸をなでおろすと、真面目な顔で千尋に向ける。

「ど、どうしたの?急に・・・」

突然真面目な顔で改まった様子の哲司に千尋は、普段とは違う雰囲気を感じ、哲司の目を見つめ返してしまう

「まあ、ちょっとだけ飲みながら話そうや・・」

鮮やかなレモン色の液体を湛えたグラスを二つ手に持ち、哲司は後で窓際のソファを指し千尋に座るように促す。

「・・・なんだか、モゲ君。雰囲気違うよね」

ソファに腰を下ろした千尋は「ありがとう」と言いグラスを受け取りながら、まだ立ったままの哲司を見上げる。

「・・そうか?ちょっと真面目な話しときたい思てな。普段のままやとまた千尋にふざけてるって怒られてまうからな」

哲司もそう言いながら千尋が座る二人掛けのソファの隣に座り、一口だけ口を潤し、グラスをテーブルに置いた。

「真面目な話?」

「そや・・俺と千尋の今後のことやねん」

そう言うと哲司は千尋の手を取って続けた。

「俺ら付き合うとるよな?」

その言葉に千尋は少しだけ罰の悪そうな顔になり、僅かながら身を引きながらも答えた。

「そう・・だね・・。付き合ってるよね」

「そやな・・よかったわ・・。ありがとうな千尋」

一応肯定の言葉を口にした千尋にお礼を言い、哲司は更に続ける。

「言うておきたいことって言うんはな・・実は俺・・借金返して博打やめたんや・・いや、すまん・・。まだ博打はやめた言うても、まだ数日やから完全とは言えん。せやけど千尋との将来考えて宮コーで給料も安定したし、千尋が安心できるように頑張ろう思てる。・・・千尋が俺と上手いことやっていかれんかもしれんって不安がってるんって、・・・こういう事やろ?」


哲司はいつの間にか千尋の手を両手でしっかり握り、千尋の目をしっかりと見つめながら話していた。

モゲがまだ借金を返せてないことは知っていたが、そろそろ本気でなんとか借金を返済させるべきだと思っていた。

佐恵子もモゲが最初の返済にいきなり遅れたことに対して、モゲの友人である哲司にもチクリと苦言を呈していたからでもある。

モゲにはまだそのことは話していないが、ここまで借金が膨らんできた以上、そろそろそうでもしないと千尋も安心できないだろうと哲司は思い、モゲにはこの際どうにかさせようと思っていたから出た発言である。

「・・モゲ君・・。そういう事で真面目に言うの初めてだよね・・。・・・信じていいのかな・?モゲ君が借金返して真面目に働いてくれるなら私とてもうれしい・・。でも、モゲ君こそいいの?私なんかでさ・・?私・・ついこないだバツがついたばっかりなんだよ・・?」

哲司は千尋の反応に思いのほか簡単に話済そやな・・いったいモゲは普段千尋とどんな話してんねん・・と思い始めた矢先に、千尋の美しい顔が今にも泣きだしそうな表情になり、みるみる目に涙が溜まってきているのに驚いた。

「ど、どないしたんや?なんで泣くんや・・?バツなんて関係あらへんよ。もちろん千尋でいいに決まってるやろ。俺が千尋のことずっと好きだったん知ってるやろ?千尋おまえ自分が周りにどんなに思われてるのか知らんのか?高校の時から正統派美女って呼ばれてたんやで?ええもわるいも・・ええにきまっとる!」

突然の千尋の涙に狼狽えた哲司は、勢いよく言い切った後、本当に千尋を慰めようとして自然に軽く肩を抱く。

「だ・・だって私・・。私・・捕まったとき・・張慈円に・・されたんだよ・・?いいの?」

「ええに決まっとるやろ!」

美しい顔を涙で濡らしながら言う千尋に、哲司は思わず抱いている肩を強く握り千尋の身体を揺さぶるようにして大きな声で答える。

「・・・ありがとう・・モゲ君。・・私が離婚されたのって・・、張慈円にされたこと・・ほんの少しだけ旦那に言ったからなの・・。まさかご両親にも言うなんて・・・。そしたらすぐ親戚中に知られちゃってさ・・幸い子供もいなかったから・・ってとんとん拍子に話が進んで・・離婚・・・なんだって・・。わたし・・わたしって・・うううううう・・!」

知的でクールな美人と学生時代から持てはやされていた伊芸・・いや哲司の記憶では旧姓である大西・・大西千尋は喋りながらながらどんどんと涙声になっていき、しゃくりながらなんとか言い切ると、ついには大声で泣きだした。

哲司は自分の胸板に顔を埋め、わんわんと泣く千尋を哲司はしっかりと抱きしめた。

「そ、そうやったんか・・!そんなことで・・!・・千尋が一番辛い思いしてるときに・・クソ旦那はなんてことするんや!・・・すまん!・・気づいてやれんかって・・!しかも張慈円のクソに捕まったんも千尋が旦那を盾に取られ守ろうと思ったから、逃げれんかったのに・・・」

哲司は千尋が離婚したことについては偶然だと思っていた。

今回の事件のことなど関係ないと勝手に思い込んでいたのだ。ただ単純に親友であるモゲにもチャンスが巡ってきたとさえ思い、内心喜んでいた自分に怒りが沸いてきた。

(くそ・・!千尋がこんなに苦しんでたやなんて・・!・・それやのに俺は・・なんも気づ言えやれんかったし・・・ひどいことされた上に癒してくれると思とった相手に離婚突き付けられるなんてな・・・!)

「すまん・・!」

哲司はそういうのが精いっぱいで、泣きじゃくる千尋の背中を撫で続けた。

モゲとの約束のことなどは頭から飛んで行ってしまい、ただ千尋が泣くに任せて身体を寄せてくるのを撫で続けた。

どのぐらいそうしていたのかは哲司も把握していなかったが、次第にしゃくりあげる回数が減っていき、やがて千尋が哲司の胸から顔を上げた。

「・・・・泣いちゃったよ」

「ああ・・もうええんか?もっと泣いててもええんやで?」

「・・大丈夫・・ありがとモゲ君」

涙に濡れた顔を上げた千尋が笑顔でお礼を言う。

その表情とモゲというセリフに哲司は我に返った。

(俺今モゲやったんや・・・!すっかり忘れてしもとった・・)

「モゲ君。・・・わたし・・シャワー浴びてくるね・・?・・バスルーム貸してくれるかな・・?」

「え?」

千尋が泣きだしてから本気で心配して、ついモゲであることを忘れていた哲司は、なにか失言があったのではと狼狽から抜け出せずにいと、千尋がいまだ涙の乾かぬ顔ながらも、気恥ずかしそうな笑顔を浮かべ、哲司と目を合わせ、顔を少し赤らめて言ってくる千尋の意図がすぐに理解できずに素っ頓狂な返事をしてしまった。

「やっぱり・・・だめなの?モゲ君も私なんかじゃ嫌・・・?」

「ち、ちが!・・そうやない!いままでそういう事なかったから驚いただけや。もちろん嫌やない!遠慮のうシャワーしてきい!」

「うん・・」

千尋は安堵した表情になって笑顔を哲司に返して頷くと、足取り軽くバスルームに消えていった。

バスルームの扉が閉じられ千尋の姿が完全に見えなくなると、哲司は肺にたまっていた空気を一気に吐き出した。

「はぁあああ!・・・上手いこといった・・よな?・・けど、・・これからどないしよ・・・」

哲司は一口しか口を付けていなかった度数30のリモンチェッロを、グイっと勢いよく煽って一気飲みすると再度大きく息を吐き出した。

「・・・まだ時間・・2時間以上あるやんか・・。これは・・覚悟決めなしゃあない・・よな?・・モゲよ・・・これから起こることは不可抗力や・・お前が持ち出してきた話やしな・・。・・・もう一杯ぐらいいっとくか・・」

哲司は、そう言い訳を独白しながらグラスにレモン色の液体を注ぎ、先ほど抱きしめていた学生時代からのみんなの憧れの存在、伊芸・・いやもう大西性にに戻っているはずの千尋の身体の柔らかさを思い出しもう一度レモン色の液体の入ったグラスを勢いよく煽った。

(しかし俺って男は何でいっつもこうなんや・・・ひまわりやタンポポならいくらでも摘めるが百合の花はどうも、摘むのが下手くそなんよなぁ・・・百合の花タイプの女性が好みのくせにのう・・・佐恵子さんもバリバリに百合タイプの女性やさかい、いまだなんもようせんといるわけやしなぁ・・・)

そんな事を考えながら、高校時代からの高嶺の花である千尋がシャワーを浴びているであろう音を、バックミュージックに高鳴る鼓動を抑えきれずに哲司はやめたはずのタバコを吸いたい気分になっていた。


一方、哲司と認識されているモゲと佐恵子サイドは・・・

「て、哲司さま!酔っぱらってしまったのですか?お止めになってください!」

ブランデーを飲みながら、だんだんと詰問口調で詰め寄ってきていたモゲが、ついに佐恵子の腕を掴んできたのだ。

「酔うてないわ!だからただ聞いてるだけやろ?!なんで俺のこと避けてるんや?」

「い、痛いですわ!・・避けてなんかいませんわ・・」

宮コー関西支社のほど近くの、佐恵子の私室のあるマンションで、まだいくらかも飲み始めていないというのにモゲが佐恵子に迫り出したのだ。

「嘘言えや避けてるやろ?俺ら付き合うてもう3か月もなるんやで?!・・なんでなんや?ええ?佐恵子さんよ?」

「そ、それは・・」

モゲに左腕を掴まれ、部屋の隅まで追い詰められた佐恵子はモゲから目を逸らせた。

「それは?・・なんや?!浮気でもしてるんちゃうんか?」

「ち!・・ちがいますわ!!・・浮気だなんて!哲司さま!!わたくしがそんな女に見えまして?!」

左腕を掴まれながらも浮気の濡れ衣を着せられるのは我慢できなかった佐恵子は、三白眼の目を見開いて全力で否定の言葉を口にする。

「さぁなあ?でも恋人である俺に抱かせてもくれへんし、浮気してるって思われるんはしゃーないんちゃうんか?」

しかし、モゲはそんな佐恵子の様子に動じた様子もなく、肩を竦め突き放したように言う。

「そんな・・哲司さま・・。わたくし、断じて浮気などしておりませんわ・・信じてくださいませ」

今まで見たこともない哲司の口調と反応にこれ以上にない不安を感じた佐恵子は、語尾を弱めながらも再度なんとか否定の言葉と懇願のセリフを口にする。

「ほんまかいな?ほななんで俺のこと拒むんや?3か月も付き合うてSEXなしのカップルやなんて有り得えへんやろが!そんな彼女おってもしょうがあらへんしな」

「そ、・そんな・・ですが。ああ・・哲司さま・・。居てもしようがないだなんておっしゃらないでください・・・もしかして・・わたくしのこと、もう嫌いになってしまったのですか?」

掴まれてない右手で自身の胸を押さえながら、必死に訴えるように聞いてくる佐恵子の表情は、モゲはもちろん、おそらく今まで誰にも見せたことがない程狼狽えた顔であった。

モゲは自分のことを罵り見下してきた女が、このように不安な表情で懇願してくる姿に気分が高揚してくるのを感じていたが、佐恵子の内心での心情の不安の渦の大きさはモゲの想像を超えている。

しかしそれが正確に分からないでいた為、モゲは更に佐恵子を責める。

「そやな。3か月もオアズケ食らわせる女なんか嫌いやわ。俺のこと弄んで楽しんどったんやろ?その気にさせて肩透かしさせて、男が落胆してるの見てほくそ笑んで楽しんどったんやろ?あんたそういうのしそうやしな。もしそうなんやったら、今日ここでこれっきりや」

「そんな!嫌です!違います!違いますわ!断じて違います!ああ!そ、そんな!そんなこと思いもしておりませんわ!哲司さま!どうしてそんなひどいこと仰るのです!」

佐恵子はモゲのセリフに自分自身でも制御できないほど狼狽えていた。

瀕死の加奈子の治療の際・・・いや、佐恵子だけが栗田教授に手術室に呼ばれたとき、実はすでに加奈子は瀕死ではなく【治療】の甲斐なく死亡してしまっていたのだ。

死亡した加奈子を前に、取り乱し錯乱して泣く佐恵子に、栗田教授は噛んで含めるように、優しくそれでいて冷淡に佐恵子に提案した。

『近しい者のオーラの籠った触媒があれば【蘇生】の可能性がある』ことを・・。

佐恵子はさすがに【蘇生】が使える能力者が存在するなどとは聞いたことがなかったが、栗田の説明を聞いて即断した。

栗田の言葉を疑う事などなかった。栗田のオーラは微塵も乱れておらず、真実のみを伝えそして佐恵子の意思での返答を待っていたのが分かったからである。

今の佐恵子の左目は栗田が術後に用意した特別性の義眼である。

佐恵子の左目は【蘇生】効果が確実に発現するように、魔眼が加奈子の左目として蘇りますようにと、願いとオーラを十分に込めたうえで加奈子の左目に移植されたのだ。

魔眼という強力な触媒を使用して発動した【蘇生】は、栗田の想像を超える域で見事成功し、加奈子は生き返ったのだ。。

手術の結果、加奈子の左目はアンバーアイの魔眼となり、一方佐恵子の左目は右目のアンバーアイの色味に合わせた義眼である。

佐恵子は両目を使って行使していた魔眼は上手く発動しなくなったばかりか、左目の義眼には視力すらない。

一方魔眼の力を得たはずの加奈子は、魔眼に慣れてないせいもあり未だ上手く使いこなせていない。

それに加奈子の両方の目は、色が違うオッドアイ状態になってしまったので、もともと自前の右目の色に合わせたカラーコンタクトを左目の魔眼に着用していて、周囲にこの事実を伏せている。

佐恵子の力が弱まったのは、失脚による精神的なもので一時的なものだと周囲に思わせておかなければならないからだ。

なぜなら、宮川佐恵子は魔眼が完全に使えなくなったかもしれない。などと周知されてしまうと身内である宮川誠やその愛人の緋村紅音などによって、本当に殺されてしまうかもしれないからだ。

脅威もなく役にも立たないが、血統だけが上等なものはあの二人にとってはむしろ邪魔だと判断されるかもしれない。

社内での地位を失い、部下も失い、魔眼の力を失っても一族から疎まれないよう上手く立ち回りチャンスを狙って生きていくと決心できたのには、自分には哲司という恋人がいてくれたからだ。

魔眼のパッシブスキルで哲司の感情を読み取れていた時は、今まで出会ったどの男性よりも自分と相性が合うと思った。

しかし、今はもう能力で哲司の感情を読み取ることはできない。

学生時代に人生で初めての一回きりのSEXでのトラウマのせいで、哲司ともSEXに踏み切れずにいた。

付合いだして3か月間、何度も悩んだが、勇気がだせず、哲司の想いを無視し続け、踏み切れずにいたせいで、哲司の心は自分から離れつつあるのかもしれない、と佐恵子は今更ながら壮絶に後悔し始めていた。

佐恵子の表情はともかく、頭の中は完全に冷静さを失っていた。

いままで頼りとしてきた絶大な思念能力の魔眼がほとんどを使えなくなったとしても、加奈子には生きていてほしいし、自分には哲司という存在がいる。

そう思ってきたのに哲司のセリフは佐恵子の心をズタズタにしようとしていた。

やっと自分のことを好きでいてくれるかもしれない、と思った恋人までも失うのは想像するだけでも心が張り裂けそうであった。

「酷いんはどっちや!はっきりせえや!俺とSEXする気があるんかないんかどっちや!?」

「あ、あります!・・で、ですが・・」

佐恵子の左腕を掴んでいたモゲの腕を、もはや佐恵子の方が縋るように両手で掴んでいる。

「ですが?ですがってなんや?またオアズケさせる理由考えてるんか?」

「そんなこと考えていませんわ・・。お願いでございます。今日、何か気に障ることでも・・わたくし、してしまったのですか?もしそうだとしたら・・!・・哲司さま・・どうか・・お許しください・・哲司さまに嫌われるだなんて夢にも想像したことすらありませんでした・・辛すぎます・・謝ります!・・どうかこの通りです・・」

そう言うと佐恵子は大粒の涙を零しながら、生れてはじめて人に対して膝をつき頭を下げた。

「できるんやな?」

モゲは足元で膝をつき顔を伏せて丸くなり、嗚咽を漏らしながら小刻みに震えて、顔を上げず頷いている佐恵子の姿を見て、普段はドSな振舞いをしている女を完全にへし折ったことに優越感を感じていた。

泣いて肩を震わせている佐恵子を見下ろしながら、なんとかSEXの同意を取り付けたられたことに対して、一応は哲司に面目が立ったと胸をなでおろしたが、生意気で自分に恥をかかせ続けた女とは言え、少しやりすぎたか・・とちょっとだけ反省したする。

しかし、ここまで来たのであればと思ったモゲは蹲った佐恵子にトドメの言葉を投げかけた。

「ほな脱いでもらおか」

「・・はぃ」

佐恵子は蚊の鳴くようなか細い声で返事をし、涙で濡れた顔を上げた。

そして、モゲの気が変わらぬうちにと、気ばかり焦っている仕草でネイビードレスの背中のファスナーに手を掛け一気に引き下ろしと、ドレスを床の絨毯パサリと落とした。

【第9章 歪と失脚からの脱出 6話 精神スワッピング終わり】第7話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 7話 欲望と葛藤の狭間で

第9章 歪と失脚からの脱出 7話 欲望と葛藤の狭間で

哲司がバスタオルを腰に巻きベッドルームに戻ると、メインの照明は落とされ、いくつかある間接照明の数個だけが点灯していた。

部屋は歩くには不自由のない程度の明るさしかない。

キングサイズのベッドには、少し厚手の白い毛布がこんもりと膨らんでおり、その形が紛れもなく女性であることがわかる。

顔を毛布で隠しているが、黒髪が毛布から洩れシーツにこぼれ出ている。

その女性は横を向いているらしく、双丘の膨らみは確認できないが、ウエストとヒップの落差が毛布ごしにもよくわかり、普段は見せかけの朴念仁である哲司の男心を刺激するには十分すぎる魅惑的なボディラインを持っているのがわかる。

佐恵子という彼女がいながらも、その佐恵子が身体を許してくれないが故に、哲司の性欲は哲司が自覚している以上に抑圧されていた。

「・・・千尋」

哲司が女性の形をした毛布の膨らみにそう声を掛けると、顔の部分の毛布を、毛布の内側から両手でずりさげた千尋の目もとが現れた。

「うん・・」

そう言った千尋の目はこの状況を受け入れ、これから起こることを明らかに期待している。

哲司は喉を鳴らしてツバを飲み込むと、ベッドに片膝を置き、毛布に手を掛けた。

毛布に隠れていた口元、首、鎖骨・・そして胸。

目だけではわかりにくかった表情も口元が露わになったことでよりいっそう伝わってくる。

照れ、緊張・・そして期待。

千尋は頬を赤く染めてはにかんでいるが、無言で哲司を見上げているだけである。

Dカップはありそうな胸は、両手で隠されて乳首は見えないが、柔らかそうなそのふくらみは隠しきれていない。

「きれいやで。千尋」

哲司は率直に思った言葉を千尋に呟いた。

千尋はますます顔を赤くして、目を逸らしクルリと身体をひねらせて、向こう側を向いてしまう。

「もう・・ばか!恥ずかしいんだから」

向こうに向く瞬間の千尋の表情とセリフ、そして今見せている白い背中に腰までかかっている毛布。

彼女の佐恵子に罪悪感は感じてはいるが、今の千尋の仕草とセリフで、哲司の導火線に火がついてしまい一気に毛布を捲り上げる。

本来なら、このようなあり得ない千載一遇のチャンスに恵まれたことを活かし、千尋に能力を使って害にならな烙印を押してしまおうと、濁ったサディスティックな感情が胸を焼く。

「きゃっ!」

メインの照明を落とされ、間接照明だけとなった薄暗い部屋だが、すでに目は慣れてきているし、哲司や千尋のような能力者にとっては、見ようと思えばこの程度の暗闇はほとんど意味をなさない。

それでも、千尋が部屋の照明を落としていたのは、単純に女としての恥じらいからであろう。

毛布を奪われ、その裸体を隠す術を失った千尋は、両手で胸を被うようにするが、千尋の太ももほどもある哲司の腕で背後から抱きすくめられ首筋と項に唇を這わされる。

「ん~!ああああっ!」

千尋は、急に首筋にはしった甘美な感触とくすぐる吐息に顎を逸らし、思わず女の声を上げてしまった。

続けて肩と腰を哲司の大きな手で掴まれると、身体ごと哲司の方に向かされ、今度は唇を奪われる。

「んんっ」

唇を奪われると同時に、肩にまわされていた哲司の手は千尋の股間に滑り込み、一般的には少し量の少ない秘所の茂みの奥の既に潤いを帯びた蜜道の中心の核部を優しく擦り上げられる。

「んんんんん!?」

すでに潤わせてしまっているのがもうバレてしまったことと、包皮の上からとはいえ陰核に与えられた快感を脊髄が反射で脳に信号を送り、思わず腰を引いてしまう。

「もうショーツも脱いでたんやな。せっかちなやっちゃ」

哲司のセリフに千尋は更に羞恥心を掻き立てられるが、哲司の仕事は千尋の反応より早かった。

腰を引いたところで、哲司の手は執拗に千尋の陰核を追ってきており、陰核を逃がさないように追いつめる。

執拗ではあるが優しく、一瞬の隙をついて、千尋の秘部からあふれ出した蜜を人差指で掬い、陰核の包皮を向いて塗り付ける。

「あふぅ!あああ!んんっ!」

喉を反らし一瞬だけ唇から逃れ、歓喜の声を上げるもすぐに唇でふせがれてしまう。

腰を引こうとしたり、どんなに足をぎゅっ!と閉じても哲司の手を股間から排除することはできず、哲司の指技の前に、無防備に晒された弱点を責められ続けてしまう。

ようやく唇が開放されて間近で目が合うと、哲司の口からは更に千尋を恥ずかしがらせる言葉が発せられた。

「千尋・・・めっちゃかわいいで?千尋も普段は澄ました顔しとるもんのう。いまの顔は昼間とは別人や」

哲司は、得意の指技の準備が整ったことに内心ガッツポーズを作りながら、右手の指先にオーラを込める。

千尋からは見えない位置だ。

些細なことだが、千尋の身体を抱いた証を施す準備が整ったのだ。

「ば・ばか・・」

いっぽう哲司の内心の思惑など知る由もない千尋は、自らの愛液で陰核をぬるぬるにされてしまったことに、耳まで赤くさせて顔を背けながらそう言って照れを誤魔化すのが精いっぱいである。

哲司はオーラを込めた右手の親指と薬指で摘まんだ千尋の陰核の先端を、器用に人差指でクリクリと優しく撫でる。

身体を許した女に、オーラによる呪詛を貼り付ける為の作業が始まったのだ。

(・・千尋。まったく害はないからな・・。しかし、知り合いにこれを貼り付けられる日がくるとは・・しかもあのお堅い千尋や。少しだけエッチな女にしてやるぐらいや。モゲにも内緒やけど、千尋がエロくなるんはモゲも喜んでくれるやろ)

哲司の思惑を知らず、千尋は送り込まれてくるあまりの快感に、目を白黒させて歯を食いしばり、あげてしまいそうになる声をできるだけ我慢する。

「んくぅ!んんん!あぁはぁ!モゲ・・くぅん・・・!」

陰核を責めてくる哲司の右手を掴み、千尋は潤んだ目をさせて声を上げる。

「めっちゃかわいい反応するやんか・・元旦那はこんなことしてくれへんかったんか?」

「うっ!くっはぁあ!そ、そんなこと聞かないで・・!」

「なんや?嫌なんか?こっちはそんな感じやなさそうやで?」

弄ばれている陰核はぬちゃぬちゅとはしたない音をさせて、恥ずかしく勃起させてしまっている。

その陰核は哲司の親指と中指によって、包皮を剥ぎ取られつつ器用に摘まみ指先で淫らな音階を奏でられながら転がされている。。

「・・・・ぃ、いや・・じゃないよ?」

「やろな。こんなにクリ勃起させとるし、お汁もすごいわ(千尋・・クリでかいな・・これやと仕事しやすいわ)」

千尋は自分では清楚な女だと見られたいのに、制御できない愛液が止めどない溢れ方をしてしまっているのを怨めしく思いながらも、陰核を剥いて摘ままれ、先端をおよそ快感だけしか感じない強さに調整されたような触感で弾かれ続けてはあられもない表情を哲司に見せてしまっている。

体温が3度は上がってしまっている!と焦る千尋に哲司は言葉での追撃を始める。

「元旦那はこういうことしてくれへんかったんか?って聞いてるやろ?」

普段は鋭そうで凛とした清楚な千尋が、牝の顔になり恥じらいつつも快感に耐えようとしている姿を見て、完全に嗜虐心に火がついた哲司は陰核を摘まんだ親指と中指を千鳥にグリグリと動かして、陰核の先端には、人差指で強めにとんとんとノックの刺激を追加させた。

「あふっ!?ひあ!もげくぅううん!!いひゃ!」

腰を引いて逃げようにも、いつの間にかグローブのような大きな手でヒップも掴まれており、逃げられない。

腰が引けないとむき出しにされた陰核は哲司によって摘ままれたままだ。

千尋からは見えないが、哲司の3本の指先はオーラによって淡く赤い光を帯びており、千尋の陰核はオーラで防御もされておらず、無防備なままで女の弱点を摘まみ上げられている。

「聞いたことには答えてや?」

哲司はくりゅくりゅと陰核を潰し過ぎないように器用に力加減を調整して、千尋の陰核を弄びながら質問を続ける。

「う!ん!うん!してくれない!してくれない!ああ!」

千尋は片手ではシーツを掴み、もう一方の手は哲司に腕を掴んで引き離そうとしながらも、目標を達成できずに喘ぎながら答える。

「それにしても千尋・・、クリデカいな・・。バッキバキに勃起してるやん?ひょっとして自分でけっこうやってるやろ?・・どや?清楚な顔してる癖にけっこうオナってるんやろ?旦那もあんまり抱いてくれへんかったんやろ?自分で頻繁に弄ってないとこんなデカならへんやろ?」

手を休めず哲司は、喘ぐ千尋の顔を眺めながら言葉で煽る。

学生時代はお嬢と呼ばれ、学校の憧れの的だった大西千尋が自分の指使いだけで、陥落しようとしているのだ。

佐恵子という彼女の存在が頭にチラついて、罪悪感が呼び起こされるが目の前で起きている現実は、哲司のモラルを吹き飛ばすには十分すぎた。

(こっこれは、佐恵子さんを喜ばす予行演習なんや・・・そっそうや、それにこんな美人の据え膳を食わん男はもはや男やない!いくら僧籍を持つ俺でも、人には我慢の限界っちゅうもんがあるからな・・・)

哲司は自分自身を言い聞かせるように、自分自身に言い訳するように思い、千尋の普段見せない夜の顔に自分自身の欲望が理性を包み込んでしまった事に対して、かすかに生き残っていた理性を保つ脳内での思念波が宿る粒子体を撲滅した。

「千尋。オナニーどのぐらいの頻度でしてるんや?」

「う・!ううう!ひぃ!やめ・・ひぃ・そん・な!こと・・!ひゃ!・・聞いちゃダメぇ!」

くりゅくりゅくりゅくりゅと千尋の股間からは粘着質な摩擦音のような音が響いている。

「ええから答えんかい。オナってるかどうか、どないやって聞いてるやん?!」

くりっくりっ!

「はぁ!!そんな!きかないでええ!はずかしい!」

学生時代、学校中の憧れの女が、どんな頻度で自慰をするのかを白状させたくなった哲司は陰核を潰す指の力を少し強める。

「週に何回や?どんな時にするんや?元旦那とのセックスでは逝かれへんかったんとちゃうんか?満足してたんか?」

くりっくりっくりっくりっ!

「ああ!さ、3回!3回・・ぐらい!!」

「千尋は週3でオナっとるんやな?3回で間違いないな?で、元旦那とのSEXでは満足したんか?」

「いや!ああ!はずかしいぃ!も、もう!モゲ君そういう事聞くのだめよ!」

「元旦那には満足させてもらえずに、35歳にもなって週3回もオナニーしてたんやな?」

「うっくぅ!っそ・・そう!・・週に3回はしてる!ああ、恥ずかしすぎる!」

哲司のそのセリフに羞恥心を煽られ、普段の千尋が付けている仮面とは程遠い秘密を知られてしまった。

「よっしゃ3回もしてるんやな。元ミス洛高の高値の花が、今では週3でオナって、自分で慰めてるやなんて、ほんまわからへんもんやな。高校の時の奴等に、今の千尋の貧しい性生活教えてやりたなるよな?ええ?普段あんなに澄ましてるからギャップでみんな大興奮するで?」

対象の口から週のオナニー回数を聞き出し、発動条件の二つの内、一つ目の条件が揃ったことで、哲司は右手指先にオーラを更に集中させる。

まったく哲司の思惑に気付けない千尋は、哲司の言葉責めで、千尋は陰核を摘まんでいる哲司の手の甲を濡らすほど愛液を吹き出してしまい、一気に快楽の階段を駆け上がる。

「だ、だめぇ!そんなこと知られたら!あああああ!・・・もう、い、、いっちゃ・・・!!!」

哲司の言葉責めで快楽の決壊が間近になった千尋は、危うくはしたない言葉を口走りそうになったが、寸でのところで止めることができた。

「よっしゃ。一回目逝くとこみせろや」

千尋の陥落宣言に気をよくした哲司は、そう言うと千尋のヒップを掴み手に力を入れ、陰核を摘まんでいる指も高速で動かし始めた。

くりっくりっくりっくりっくりっ!

「い、いっかい目??!・・あぁっ!!あっ!あああ!っあ!!うぅ!!」

「千尋。SEXのときは声大きいんやな。普段のクールさはどこいったんや?みんな千尋のこと知的な女やと思ってると思うで?」

「そんなこと!言わないでぇ!」

くりっくりっくりっくりっくりっ!くりっくりっくりっくりっくりっ!

陰核に与えられる左右からの刺激に加え、絶妙な強さで人差指が高速でノックされる。

経験豊富な風俗嬢ですら何人も泣かせてきた哲司の指技の一つを千尋に施術することになるとはと思いながらも、その身につけた技術がお嬢こと千尋を鳴かせている事実に自信が沸いてくる。

「あああ!!い、いく!モゲくぅん!ううううう!だめえええ!」

モゲ君と呼ばれる時に一瞬我に返ってしまうのが、すこし癪だが、モゲの【認識交換】能力は素晴らしい。

あの千尋がこんなにみだれて、「だめえええ!」と口走り、抱えるように自分の身体を掴んでくる。

しかも、自分だとバレずにである。

明日以降、千尋を見る目が変わるのは間違いない。

「っくぅん!!っ!!はぁはぁ!はぁ!っ・・・っ!はぁ!はぁ!」

「よっしゃ1回目や!今の逝ったんやろ?逝くんわかりやすい反応で助かるわ」

千尋が何とか抑え込んだ言葉を聞いた哲司はそう言うと、摘まんでいる無防備な千尋の陰核をぐりりっ!と摘まみ、更に捻って潰された陰核の上部を人差指で弾きはじめた。

「ほら、続きや千尋」

「っ!?はぁ!!ああ!モゲくん!あああ!いや!だ、だめええ!」

がくんがくん!と千尋は腰を大きく前後に振り、陰核のみの刺激で駆けあがったドライな快感に身悶えして、美しい顔を快感で歪めて哲司の目の前で羞恥の顔を晒す。

「っく!!ぅく!んん!~っんんんん!ま、また!あぐぅう!もげ!くぅ!ぅんん!!」

千尋は、陰核だけの刺激で乾いた強いオーガズムに囚われていた途中であったのに、逝った余韻をやり過ごす前に、2度目のドライオルガズムで身を震わせる。

哲司は、思ったよりも早く二つ目の条件が整ったことに内心でほぞを噛むと、張り付ける呪詛の一つ目を思いついた。

「あ~・・なるほどな、2回目も言わへんかったな・・。元旦那は嫁の夜の躾けもできてなかったってことやな。躾けも兼ねてやっていこか。せっかく逝くときの痙攣は可愛いちゅうのに、言葉足らずでは片手落ちや・・・。3回目逝くときには、きっちりSEX時の女がとるべき作法ができるようにしてやるからな」

(千尋が白状したオナニー回数の3回目の絶頂は、告白した回数の3つの呪詛を貼り付けるまで逝くことができへんのやけどな)

「はぅ!!ほぅ・!うくぅ!!い、いや!わかった・・から!・・!ああ!!?モゲくん!!はぁぁぁっ!!・!はぅう!もう離してえ!ああああ!だめまた!まただめになるう!!」

逝って収縮を繰り返す陰核を、哲司はいまだしっかりと摘まみ上げて逃がしておらず、『逝く』という報告ができなかった千尋に躾けと称し呪詛を施す。

(この呪詛は命令に対して口での同意が絶対条件や。条件が整うんはめちゃムズイ代わりに、この呪詛が張り付いてしまうと剥がすんも難しいで・・)

昔からみんなの憧れの的である千尋に、一つ目の呪詛を貼り付けることに成功したのだ。この呪詛を解除するには、同じような状況をつくって解呪していくしか方法はないが、千尋を今日以外に抱く日は無いはずなので、解除は実質不可能である。

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「ひぁ!ひぃ!も!もげ!くぅん!だめ!ほぉう!!き!つい!からぁ!!」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「ちょっ!!ああっ!もげくぅん!!あああ!また!ううううぅ!ああああぁ!!!」

千尋は再び仰け反り、ひと際大きな嬌声を上げて果てたが、その言葉を言わずに果てたせいで、哲司による躾と称される剥がせない呪詛張りが続行される。

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「もげくぅうん!あああ!ひいぃい!きっついのおお!」

千尋は執拗な陰核責めから逃れようと、全身に力を込めて本気で振りほどこうと試みるが、哲司の膂力からすると、千尋が全開で肉体強化をして抵抗したとしても可愛いものである。

「きついか千尋?これは躾けや。『大西千尋逝きます』って言うんや。次からは逝くときは必ず言うんや。大きな声で本名言いながら逝きますって言うんやで?死ぬまでずっとやで?一人でオナニーするときもや。わかったな?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「はひ!はい!!」

(よっしゃ・・。同意の言葉言いよったな・・。千尋に呪詛一つめや。3回目逝く前に3つの呪詛貼り付けたら、もうこの呪詛は剥がれへん・・)

泣き顔で激しく2度頷いた千尋をみて、哲司は陰核責め調教で【逝き報告】を呪詛付けたこと確認し、次の呪詛を貼り付ける準備を始める。。

「そやな。次は逝きそうになったら『逝ってもよろしいですか?』ってお伺いもたてるんやで?誰に対してもや。俺とするときも、もしも他の男とする機会があっても、一人でオナるときもや。相手に許可もらえれんと千尋は絶対に逝かれへん。わかったな?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「あっう!?はぅ!わ、わかったから!ああ!っ・・!逝っても!よろしいですかああああ?!!」

「よっしゃ同意したな。もう絶対に許可されんと逝かれへんぞ?でも、3回目の絶頂はまだや。まだそのセリフ言うてもまだ逝かれへんぞ?どや?逝けそうやけど逝かれへんやろ?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「あああう!ひぃ!?ど、どうしてえ!?い、逝けない・・?!ああ!逝ってもよろし!いですかあ!?」

哲司の術中に嵌っていることを知らない千尋は、普段ならSEXの最中でも絶対に言わないようなセリフを呪詛により連発してしまう。

しかし、まだすべての手順が終わっていないため、呪詛で定められたセリフを口走ってしまうが、まだ決して逝けないのだ。

哲司のオーラによる陰核責めは、オナニー回数を本人の口から言わせ、その回数の最後の絶頂を得るには、口にしたオナニー回数分の呪詛を貼り付けないと、今後SEXでもオナニーでもけっして逝けなくなるというもので、使い方次第によってはかなり意地悪な能力である。

「ははは、すごい顔やん。美人がこういう顔して、【逝き懇願】すると興奮してまうな。今はまだ逝かれへん言うてるやろ?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「はぁはぁはぁ・・・ひっ・・ぃい!?あふぁ・・!あぐぅううう?!もげ!くん!な・なんでええ?!」

千尋の絶叫に近い喘ぎ声を無視して、最後の呪詛を何にしようかと哲司は思案を巡らせる。

「最後どうしよか・・。うーん・・・」

(害がない呪詛にするつもりやったけど・・・、ちょっとぐらいええやろかな・・誰にもばれる心配もないことやし・・)

「そやなぁ・・。今後、大西千尋は生理後5日目から7日目までの間の2日間は、普段やってるオナニーや普段やってる男とのSEXでは絶対に逝けんくなって、やったことない変態オナニーか、いつものパートナー以外とのSEXでなら逝ける身体になる。・・・どや?」

哲司は自分で言ってみたものの、条件を満たして発動するかどうか不安であったため、誰ともなく問いかけるような口調になってしまった。

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「え??・・そんなぁもげくぅうん!じょ、じょうだんでしょ!あああん!ひぃ・・ああう!そんなこと・・!ああ!大西千尋いきそうですうう!っっ!!ううう!な、なんでええ!逝きそうです!大西千尋逝ってもよろしいですか!っっ!~~!なんでえええ!」

そう言いながらも指の動きを止めてしまうと、能力の発動が止まってしまうので千尋の陰核を甚振り続けながらも、最後の命令の発動を確認した。

「・・条件いけたようやな。千尋。いま俺が言うたとおりに言えや。こうなったら言わん限り千尋・・。絶対に逝かれへんぞ?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「な、なんでえ!ながいよお!なんて言うのよお!?」

「千尋・・言わへんと苦しいだけやぞ?まあ、俺は楽しいからゆっくりでもええんやけどな」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

「はぐぅ!!おおにし千尋はあぁ!あああうぅう!長いってばああ!」

・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・


「大西千尋はぁ!生理後5日目からあ!・・・ぅ!7日・・目までの間2日間はぁ!!っく・・・!普段やってるおなにい!や普段やってる男ぉ!とのせっくす!ではぁ!絶対に逝けなくなってえ!!・・やった!こと!ない!変態おな!にい!か!っ!いつものぱー!となー!以外とのぉ!!っっ!!セックス!でえ!ならあ!逝ける!身体になる!!」

30分間掛けて何度も言いなおした、千尋がようやく何とか言い切ることに成功した。

「千尋言うてもたな。まあ、単なるプレイや。どや?興奮できたやろ?」

「ああぅ!も、もげくん!私こんなわけわかんないSEX初めて!だよぉお!」

「せやな。ほな千尋。言うてみ?いけそうなんやろ?・・・ちなみに今日はその日や無いな?ないんなら思いっきり逝けるで?」

ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!ぐりっ!

千尋がセリフをとちって言えずにいた30分間の間も、哲司による陰核責めはずっと続いており、千尋は逝きたくても何故かいけない寸止め地獄に身もだえっぱなしなのだ。

「ああああっ!大西千尋逝ってもよろしいですかぁあ!はぐうう!」

「よっしゃ、ええで。そうやって言わされると、頭真っ白になって今まで以上に感じるやろ?・・千尋、逝くときの教えたセリフちゃんと言うんやで?言わへんかったら、逝かれへんからな?」

「あああああ!!きた!来ました!言いますう!!ああああああ!大西千尋いきますぅ!あうううううう!逝っくぅ!!!ぅっ~!!!!」

言いつけ通りのセリフを大声で叫ぶと千尋はがくん!と身体を反らせ全身を駆け抜ける絶頂に痙攣させられる。

呪詛の刻印確定の3度目の絶頂だとは知らず、千尋は全身をガクンガクンと震わせて絶頂で呪詛を刻み込まれていく。

哲司の能力に由来した指技の技術を、無駄にエロ技術につぎ込んだクリ拷問によって千尋はガクンガクンと3度目の強烈且つ乾いたオルガズムに、まだ身体を痙攣させている。

絶頂の余韻中でも哲司は千尋の陰核を開放することはない。

千尋が逝っている最中にも、ぐりり!ぐりり!と陰核を弄ぶように乾いた快感を千尋に送り込み、逃れらず身悶えしている、苦しそうであり、快感に歪んだ千尋の表情を楽しんでいる。

すでに千尋には呪詛添付は完了しているが、いまだに哲司が陰核を摘まんで弄んでいるのは、単なる加虐心からくる遊びである。

彼女がいない時期が長かった哲司は、硬派で通ってはいたが、哲司自身もちろん石や木ではないため、モゲや画伯こと公麿などとは、よく風俗に行っていた。

その時、たまには生意気な態度の風俗嬢に当たる時がある。

そんな時はコースを延長し、その生意気な嬢をクリ拷問の指技で足腰立たなくなるまで甚振りぬいたものだ。

その時も嬢が生意気なほど、恥ずかしい呪詛を付けてやったものだ。

風俗通いで培った指技の一部を、元ミス洛高の千尋に容赦なく使う。

普段の清楚な姿や、当時の憧れなどが哲司の頭の中で混じり合い、千尋を知る他の男たちに対する優越感から、千尋に対する責めがサディスティックなものになってしまったのだ。

自分のことを彼氏だと勘違いして、身体を許している千尋に対して罪悪感よりも、征服感や優越感の方が勝ってしまっている。

一生抱くことはないと思っていた、かつての同級生に深い快感を叩き込んだ優越感と達成感に十分酔いしれると、哲司はようやく千尋の陰核を開放してやった。

陰核拷問していた指は指の付け根までねっとりと千尋の愛液で濡れており、指と指の間は透明に光る粘液で糸を引いている。

哲司の能力は身体強化が主であるが、得意なのは握力の強さをいかした握力による圧迫攻撃である。

しかし、今回千尋に使ったのはそのような破壊技ではない。

痛みはほぼ感じさせず、しかし逃れられないように摘まむこともできる指技を駆使した技だ。

いままでSEX中にこの技を使って女に約束させたことは、生意気な風俗嬢などばかりであり、的に掛けた嬢の証言では例外なく、約束を守るようになってしまったと言っていた。

いまでは、そういう嬢とも連絡は取り合っておらず、たまにそれらしき嬢からショートメールなどが届くが、放置している。

呪詛を掛けた風俗嬢にいちいちどんな呪詛を掛けたか覚えてはいないが、ほとんど日常生活に害はない呪詛である。

しかし長い付き合いで、高校からの美人の同窓生の大西千尋が、今後逝くときは、哲司の施した『大西千尋逝ってもよろしいですか?』と『大西千尋逝きます』の【逝き懇願】と【逝き報告】を絶対に言わなければ達することができなくなったことと、排卵日直撃の2日間は普段通りのオナニーやSEXパートナーでは決していけない身体にしてしまったことは、風俗嬢を的にして成功した比ではない達成感と満足感である。

哲司はいわれのない征服感で満たされていた。

(・・・千尋は今後、逝くときは俺の命令守って恥ずかしいセリフいうてくれるんやな。・・・それから排卵日はエッチな気分になるにもかかわらず、まともに逝くことも出来へんのや)

もうすでに呪詛でまともに逝けなくなった千尋は、今回の拷問で陰核は肥大してしまい、完全に包皮では隠れきれなくなってしまっている。

呪詛貼り付け成功の副次的な効果である。

あの清楚な千尋が、明日からはクリトリスずる剥けで、ショーツとの摩擦に苛まれるようになると思うと、哲司は再度陰核を確認するように剥けた千尋の陰核をやや乱暴に摘まみ上げ、根本を潰すに摘まみ上げてから、人差指でクリトリスを少しだけ強く弾いた。

「きゃう!」

可愛い悲鳴を上げ哲司を睨み返してくる千尋であったが、その目は笑っておりもともと少しマゾっ気のあった千尋は恥ずかしそうに眼を伏せた。

哲司はそんな反応をする千尋を満足そうに眺め頭を撫でてやり、呪詛だが、ほぼ無害な烙印を押せたことに満足する。

千尋はぷるぷるといまだに最後の激しい絶頂の余韻をその身で震わせながら、抱き着いてきている。

哲司はいまだ満足してない自らの怒張を、余韻から抜け出せずに息を切らせている千尋に握らせた。

余韻に浸っていた千尋は、握らされたもののサイズに一瞬驚いてまじまじと凝視してサイズを確認している。

「・・すごい・・もげくん・・噂じゃ聞いてたけどすごい大きいのね」

(あー・・・確かにモゲのやつは異常なデカさやな・・俺のも十分デカい方やと思うけど、モゲのは形もいびつやし、俺のよりもっとデカいんやけどな・・まあ、俺らの中じゃ長さのモゲ、太さの哲司、堅さの宏、そして震動の公磨あったからな・・・
公磨の奴は股間にオーラ流しあいつのオーラの微調整のうまさは俺らの中でも群を抜いているからバイブのように動くらしいが・・・いったいどうやったらそんな事ができるようになるんや・・・?ほんまあいつはようわからんやっちゃで・・・)

千尋が観察するように眺めたり触ったりしている様子を見て、哲司は仲間内で温泉に行ったときのモゲのサイズや仲間との下ネタを話していた時の会話を思い出し、心中で呟いた。

哲司の男根の太さが、中指と親指では届かないほどの太さがあることに歓喜と同時に恐怖を感じつつも、うっとりとした表情で顔を哲司の股間にうずめた。

(・・・お・・お嬢が、俺のをしゃぶっとる・・。・・・自分に受け入れようとしてしゃぶっとる!!)

「おぉ・・!」

つい気持ちよさから歓喜の嗚咽が出てしまったことに哲司は、慌てて唇を噤む。

感じているのを悟られるのが恥ずかしいのもあったが、考え事を中断されてしまったからだ。

「・・私もしてあげるね」

しかし、千尋は哲司が上げた声に気をよくしたようで、そう言うと、先ほどよりも一生懸命にできるだけ喉奥までをも使って奉仕を始めた。

「ん!んん!ぷはぁ・・んん!んん!!」

お尻を突き上げ、顔を股間にうずめた千尋は、ちゅぶちゅぶと音を立てて一生懸命に奉仕してくれている。

そんな千尋の髪の毛を撫ぜながら、形の良いヒップ、白い背中を見下ろしながら哲司はいまだに少しだけ迷っていた。

(こ、これ以上やってまうと・・千尋と関係持ってしまう。モゲも約束守って佐恵子さんには手を出さんやろし、何より佐恵子さんを裏切ってまう・・。今でも十分いろいろ裏切ってる気がするけど、ホンマにSEXしてもうたらホンマに裏切りや・・。ど、どうしたらええんや・・。イタズラ心で千尋に呪詛はりつけてしもたけど・・これはまあ、ハンティングトロフィーってやつや・・いまさらもう解除するん難しいしな・・・)

そんな哲司の心中を無視して、哲司の怒張は千尋の奉仕姿を見て硬度を増してゆく。

更に大きく硬くなった怒張に驚いた千尋が顔を上げて哲司に言う。

「気持ちいい?」

「お・・・おっふ」

思わずマヌケな返答をしてしまった哲司に対して、千尋は恥ずかしそうに笑顔を浮かべて、両手で愛おしそうに哲司の怒張を撫でながら更に言う。

「うれしい・・こんなに大きくなってくれて・・私あんまりこういう事やったことないから、自身なかったんだけど、こんなになってくれて・・本当に嬉しいよ?」

そう言うとまた顔を股間に埋め、先ほどよりも更に喉の奥まで使ってちゅぶちゅぶ!と奉仕を始めた。

(やばいな・・。どないしよ・・・。これ以上はホンマにあかんよな・・。せやけど・・、この状況でせえへんって言うのは明らかに不自然や・・。いや!しかし!・・モゲや佐恵子さんを完全に裏切ってまうぞ・・!・・・でも、こんなことになったんは佐恵子さんが全然させてくれへんっていうんもあるんや・・・。待て待て哲司!お前何時からそんな言い訳するようになったんや!彼女がおる間は、他の女とは絶対にSEXせえへんって言うんがお前のポリシーやったはずやろ!)

千尋を指技で責めていた時よりは随分と冷静になり、普段と同じくらいの理性的な思考が働くようになってきた哲司は現状を抜け出し打破する妙案が結局は浮かばないまま、千尋の献身的なフェラチオ姿を見下ろし、頭と体の相反する反応に。人生で一番の葛藤に苦しんでいた

【第9章 歪と失脚からの脱出 7話 欲望と葛藤の狭間で 終わり】8話へ続く


筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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