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第10章 賞金を賭けられた美女たち 1話 涼しき美女の熱き気持ち

第10章 賞金を賭けられた美女たち 1話 涼しき美女の熱き気持ち

府の西側、ほとんど県境際にある山中の施設にスノウたちは待機していた。

この施設に入るには公共の道路から脇に逸れ、監視員が駐屯しているゲートを2つも抜けなければならなかったことから、かなりの秘匿性の高い施設だと推測できるのだが、いまのスノウにとってそれは特に気にする問題でもない。

山奥の辺鄙な場所にあるにも関わらず、山を切り開いた広大な敷地は草が短く切り揃えられ整備されており、管制塔やレーダーなど最新の設備が整えられ、スノウの左隣りにはズラリと同じ形の大きな倉庫が並んでいる。

その一つの倉庫の庇の下でスノウは滑走路の先の空を眺め続けていた。

スノウは美佳帆たちを乗せたヘリが飛び立った方向の空をじっと眺めているのだ。

日も高く登り、時刻は正午を少しまわっている。

秋空の天気も良く、初秋とはいえさんさんと太陽から降り注ぐ日差しはきつそうだが、庇の影に入っているので日焼けの問題もない。

しかし天候とは違い、スノウはの心中はもやもやしており焦れていた。

宮川佐恵子の話どおりならそろそろ帰ってきてもおかしくない時刻になりつつあるというのに、未だに美佳帆たちを乗せたヘリの姿は確認できない。

早朝にこの施設から日本海側に浮かぶSと呼ばれる孤島に10機のヘリが救援に向かったのである。

出立の際、スノウも美佳帆たちと一緒に行きたいと申し出たのだが、佐恵子に却下されてしまっていた。

スノウは憤懣やるかたなかった。

本気で腹が立った。

朝にその話をした時はまだ紅蓮にやられたキズが完治していなかったとはいえ、それは美佳帆も同じだったはずである。

(私もはやく会いたい・・助けになりたいのに・・!)

アリサや千尋は自分以上に怪我が酷かったので、同行が難しいのはわかるが、スノウのキズは軽微なものだったし、なによりスノウは希少な能力である【治療】がつかえるのだ。

ヘリで移動している間に自分を治療できると言ったが無駄だった。

「スノウさん・・?スノウさんも行くつもりですか?いけませんわ。キズはほとんど癒えたようですが、・・ここでお待ちになるのが賢明です」

更衣室でアーマースーツに身体を押し込んでいるとき、隣で同じくアーマースーツを着ようとしていた下着姿の宮川支社長が、右目に光を灯して凝視しながらそう言ってきたのだ。

スノウは首を横にぶんぶんと振って手振りも交えてアピールした。

所長が危機だというのに私が待機・・?【治療】が使える私の出番ではないの?と・・。

しかし、結局は美佳帆や美里の宥めもあって、結局待機することになったのだ。

(もっと・・もっと私が強ければ・・ついていけたのに・・!・・所長のお姉さんや霧崎捜査官がしてみせてくれたような強力な治癒が使えたら!・・戦力だとアテにされるぐらい強かったら・・っ!)

スノウが胸の前で握った両手に力が入る。

(そもそも・・私がもっと強かったら、緋村さんの・・いえ紅蓮の作戦にも呼ばれていたかもしれない・・。そうすれば今回の作戦に同行できて所長の近くにいられたかもしれないのに・・・)

スノウのその考えは結果的にはかなりズレているし、宮コー内での対立組織紅蓮こと緋村紅音派と宮川佐恵子の本流派においては、今や本流派の主力の一角を担う菊一探偵事務所出身の能力者の壊滅を考え、菊一の戦力を分断して殲滅しようとしていた紅蓮の思惑を考えれば起こりえないことである。

しかし、昨晩【共有】能力を、美佳帆たちを巻き込んで発動した際に、宏への恋慕の念が菊一女性メンバーのなかで共通の秘密として知られてしまったため、スノウが長年表に出さず封印していた想いがあふれ出し、普段クールなスノウも宏のことに関しては些か冷静な判断ができないようになっていた。

(少しは【治療】もできるし・・多少なら脳波でコンピューターを操作だってできるのよ・・。【通信】だって私がいれば機械に頼らず脳波で全員をつなげられる。・・・肉体強化だってそれなりに・・。・・所長や和尚の肉体強化の水準は所長たちが特別なだけって思ってたけど・・強化はそもそも元々の身体能力がありきのものだし…。しかし昨日見た紅蓮・・・彼女は術者寄りの能力者のはずなのにそのうえ体型も私よりも小さく華奢に見えたけど、私たち四人を同時に相手してもゆとりがあった・・悔しいけど私たち四人のオーラをアリサにほとんど集めてもまだ遊ぶゆとりさえ・・ってことは紅蓮も不得手な肉体強化でも下手したら所長たちの強化力ほどに水準に近かったの?・・さすがにそれは・・。でも、術者系の紅蓮があそこまで肉体強化を使いこなせているということは、私もがんばれば紅蓮みたいな水準で肉体強化できるようになるはずよね・・!可能性があるなら・・頑張らなきゃ!)

昨夜対峙した紅蓮が、美佳帆とスノウの鉄扇を涼しい顔で受け止めたのを思い出し身震いと同時に強く拳を握りしめる。

自分自身の能力を心中でアピールし、肉体強化能力を伸ばすことを決意する。

それにしても待つのは長い。

かれこれ1時間ぐらいだだっ広い滑走路の隅っこで待ちぼうけをしているのだが、ただ待っているだけなのももったいないと思ったスノウは大好きな所長のことを考え出していた。

最初は普通に宏と話したことを思いだしたりしていたが、どんどんと記憶の掘り出しから作り話へと映像が変化していく。

宏と敵地二人で潜入し、息を合わせてミッションをこなしていく、今の自分ではあり得ない姿を妄想し出していた。

「スノウ。こっちは片付いたで?そっちはどうや?」

「こっちも問題ないです。もう少し・・・OK。ロック解除に成功しました」

「さすがスノウや。あの難しいファイアウォールをこんな短時間で突破できるやなんてな。ウデも立つし、俺にできんような繊細なこともやってのける。おまけにこんな美人や・・。いままでなんで俺はスノウの魅力に気づけんかったんやろか・・」

「そ、そんな所長・・ほめ過ぎです・・でも、ええ・・私に任せてください」

警備兵に厳重に守られ、多重のセキュリティロックが施された扉の前で、宏がスノウを護りながら敵を打ちのめし、スノウ本人も華麗に敵を翻弄しながらも思念でコンピューターにハックし続けドアロックを解除したのだ。

恋慕している上司から褒められ、おまけに美人と言われてしまったスノウは赤くなってしまっている頬を見られないよう顔を逸らす。

「くっ・・あんな手練れがおるなんてな。油断したわ・・」

「所長・・!ああ・・私を庇って・・少し我慢してください。いま治します!」

「無理すんなやスノウ!スノウももうオーラ無いやろ?!それ以上やったらオーラだけやのうて生命も削ってまうぞ?!」

「・・・大丈夫です・・!それに・・それでもいいんです。私・・所長を治せるなら・・
私はどうなっても・」


「ス・・スノウ・・。俺も・・スノウに死んでほしないんやで・・」

なんとか深手を癒したものの、敵地深くで絶体絶命のピンチを迎えた二人は見つめ合い、自然とお互い視線と唇に吸い寄せられるように引き合う。

逃げ込んだ部屋は医療器具が置いてあることから、医務室のようである。

消毒液の臭いがする暗い部屋で、並ぶ簡易なパイプベッドの側で身を寄せ合う。

遠慮がちにお互いの背に手を回し、引き寄せるように探っていた手は、だんだん激しくなってついにはきつく抱擁をし合う。

そして確かめ合う探り合いの唇同士が、お互いを求めあうように激しい口づけへと変わっていく。

敵地内部という状況のなか燃え上がる禁断のラブロマンス・・・。

汗にまみれた裸体を恥ずかしがる間もなく宏に服を脱がされる・・。

「は・・はずかしい」

「・・雪。綺麗やで・・」

両手で胸を隔しているスノウの細い腰に手が回され、宏の大きな体が覆いかぶさるようにして求めてきた。

腰を抱きかかえられ、後ろに数歩さがるとパイプベッドが膝裏にあたり、そのままベッドに押し倒されるが、あるはずのベッドの感触がない。

「えっ!わっ!!?」

ごんっ!!

「きゃっ?!スノウちゃん?!どうしたの?なんで急にずっこけてんの?」

「スノウ大丈夫?!まだ全快してないのにそんな根を詰めて立って待ってるから・・」

ババババババババババババッ!

アリサと千尋が心配そうに声を上げ背後から駆けつけてくると同時に、空気を切り裂く音が遠くの空から聞こえてくる。

黒い点のような小ささだが、まだ彼方とはいえヘリはローター音を響かせこちらに向かってきており、それが能力者の3人にははっきりと見えたのだ。

妄想の中に完全にトリップしていたスノウは、頭部への激しい衝撃と痛み、同僚の声とヘリの音で現実に引き戻されたのであった。

ずっこける寸前、スノウは空気を両手で掴むような仕草をしながら、コンクリートの滑走路に一人でバックドロップを喰らったかの様子で勢いよく倒れ込んだのである。

「だ・・大丈夫?随分派手にいったわね・・。けっこうすごい音がしたわよ?」

千尋が膝を付きスノウの後頭部と背中をさするようにして気遣ってくれる。

アリサも心配そうな表情で身を起こしたスノウを引き起こそうと手を差し伸べてきてくれている。

「いたた・・。だ・・大丈夫。すこし躓いただけ・・」

千尋とアリサはスノウのセリフを訝しがるようにお互い顔を見合わせている。

「歩いてもないのに躓くなんて・・」

「そ、それにしても時間通りね!」

スノウは慌てて立ち上がり、千尋のセリフを遮って背中やお尻についた埃を慌ただしく払ってそう言った。

「え、ええ・・。そうね。連絡だとみんな無事だって聞いてるけどやっぱり早く会いたいよね。モゲくんも今回はけっこう活躍したって言ってたの。正直所長や和尚の足引っ張るんじゃないかな?って心配してたんだけど、高嶺の有名な剣士を退けたってモゲ君言ってたのよ?すごくない?ふふふっ、まあ、生きて帰ってきてくれるだけでも嬉しいんだけど、あのモゲ君がこんなに頑張ってくれるようになるなんて・・」

近づいてくるヘリを見ながら千尋が嬉しそうに言っている。

アリサも千尋のセリフに合わせて「へぇー、モゲくんすごいんだね」としきりに感心したりしているが、スノウは先ほどの妄想を思い出し赤らめてしまった顔を見られないよう、二人より前に歩を進めてヘリに手を振った。

(私って知的でクール・・冷めてる・・なんて周りから思われてるかもしれないけど、あんな妄想して相当イタくないかしら・・・?・・・・でも、美佳帆さんたちにも私の気持ち知られちゃったし、所長に知られるのも時間の問題だわ・・。いまから心臓が破裂しそう。顔から火が出そうだわ・・。美佳帆さんに口止めお願いして置いたらよかったけどバタバタしててそんな時間なかったし・・帰ってきたら真っ先に美佳帆さんにお願いいしなきゃ・・。・・・ってヘリの中で美佳帆さんが所長に話してたらどうしよう!!・・そ・・そんなことになってたら私どんな顔で所長を出迎えたらいいの?・・・隠れたいけど、出迎えたい!ど・・どうしよう!・・はっ!まずは・・・!)

「ね、ねえ!二人とも」

「どうしたの?」

「昨夜のこと・・みんなには内緒にしててね?」

「・・・ええ、お互い様じゃない」

「うんうん・・!しーっ!だよ?」

「うん・・お願いね!約束」

スノウ、千尋、アリサは3人とも少し顔を赤らめて破顔し、右手を重ね合って誓いあうのも一瞬で、千尋の表情が少し曇る。

「ここに麗華もいれば・・菊一メンバー全員揃うのにね」

千尋は悲しそうな顔で言ったセリフに、スノウもアリサも頷く。

「バタバタしてて捜査できてなかったけど、杉刑事たちが手掛かりもってきてくれてたから、みんなが帰ったら引き続き麗華を探しましょ」

そうこうしているうちに、頭上には10台のヘリがゆっくりと着陸を開始してはじめており、3人とも日差しを眩しそうに手で遮って、帰還した仲間たちに手を振る。

麗華の情報をもった宏たちが降りてくるとは知らず、とりあえず無事帰還した宏達を迎える為に3人は笑顔で手を振り続けたのであった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 1話 涼しき美女の熱き気持ち】

第10章 賞金を賭けられた美女たち 2話 宮川コーポレーション関西支社のその後

第10章 賞金を賭けられた美女たち 2話 宮川コーポレーション関西支社のその後

宮川コーポレーション関西支社は先日の火災騒動のおかげで業務の大半は停止しており、いまはヘルメットをかぶった多くの工事関係者らしい人で溢れかえっていた。

幸い晴天に恵まれ作業には支障はなさそうである。

支社の敷地内にはいくつも重機や発電機が運び込まれ、作業員が忙しそうに慌ただしく働いているのが、仮設事務所の2階窓から見下ろせる。

関西支社ビルの上部半分は紅蓮の起こした炎によりほとんど消失しており、10F以下の火災の被害を免れた部分の機能も大部分麻痺している。

そのため、支社敷地内の駐車場などはヘルメットを被った作業員が大勢忙しそうに動き回っていた。

大規模な復旧工事が必要になるほど宮コー関西支社の被害は甚大だったのだ。

情報操作をし、多くの事実を世間に隠すことができても実際いまの宮コー関西支社はほとんど稼働できない状態に陥っている。

だが、そのことに頭を抱える暇も許されない3人の美女が、早朝から忙殺気味の過密な諸問題を猛烈に処理しまくっていた。

「ま~ったく・・あのくそビッチ。やりたい放題やってくれちゃって!紅音はあんな大惨事起こしたのに、また本社勤務に戻っただけって・・・。社長も依怙贔屓があからさますぎるでしょ!?」

白い工事用のヘルメットを被り、制服のスーツ姿の上に工事ジャケットを着た稲垣加奈子は、その括れた腰に左手を当て、右手で日差しを遮るようにして半壊した宮コー関西支社の社屋を見上げて不平を鳴らした。

そして、すぐそこの自販機で買ってきたスポーツ飲料のキャップを空けると、白い喉を反らしてゴクゴクと喉を潤しだす。

「本社がそうなのはいまさらでしょ?紅音は社長の愛人だしあの戦力よ?社長は紅音を手放さないわ・・何があっても。それに、会長が佐恵子に蜘蛛を派遣したことに相当焦ってるでしょうからね。・・蜘蛛に唯一まともに対抗できるカードが紅蓮。・・・だから、なおさらよ」

不平をいいペットボトルの半分を飲み干し、口を尖らせている加奈子の隣で、加奈子と同じような服装をした神田川真理は、顔を上げずにそう言うと、手にした資料と、目の前の長机の上に置いた複数のモニタを難しい顔で眺めては、時折素早く手元のメモ書きにペンを走らせている。

「佐恵子。これの確認と承認もお願い」

真理はそう言って、座ったまま後ろを見もせず資料を持った手を後方にバサリと差し出す。

「ええ・・ありがとう」

佐恵子も真理の方を見ず資料を受け取ると、その資料を長机の隣に置き、先に手にしていたバインダーに挟まれた膨大な資料をパラパラとめくり目を通している。

「だからってそんなあからさまな・・まだあれから1日と経ってないのに、本社のくそビッチの処置決定に一般社員の中じゃ不平満々なのよ?」

佐恵子と真理の作業を横目で見ながら、加奈子はまだ納得しない様子で二人の反応を伺うようにこぼした。

「あら、それでいいじゃない。その体制批判は私たちが浴びるべきものじゃないわ。非難の矛先は私たちじゃない。だから好都合でしょ?問題はこの状況下からの私たちの行動による結果・・・。いま宮川誠社長は紅蓮を庇ったおかげで多くの社員の信用を失ってるわ。こないだ佐恵子が関西支社長を解任されて失脚させられたとき、佐恵子や私たちを潜在的に妬む社員たちはほくそ笑んだ・・。少数とは言えそういう輩はいるし、誠社長と佐恵子、どちらを支持しているかっていいとこ8対2って比率だったわ。今はそういう輩たちを含め、日和見している社員や、社長の威光や方針に盲目的に従う社員の心を動かしやすい時なのよ。佐恵子や私たちに対するネガティブなパラダイムを変化させられる貴重な局面だわ。壊滅的な被害を受けた関西支社をどう再建するかだけじゃ足りない・・。そういう輩たちが持っていた不満ですら改善させてしまうことで、多くの一般社員たちの心情の勢力図を塗り替えられるチャンスってわけ」

加奈子の言葉に真理は資料に目を通しながら涼しい顔でそう応える。

そこに普段の真理スマイルはない。

この仮設事務所には佐恵子ら3人しかいないため、普段の牡丹の花が綻ぶような奥ゆかしい笑顔は必要ないのだ。

真理はそう言い終わったあとも忙しく資料を持ち替え、素早く報告書に目を走らせてページをめくっている。

「宮コー十指の良心・・。菩薩の神田川真理と言われてる真理しゃんの真の姿を皆にも知ってもらいたいですよ・・」

「何言ってるのよ。普段も今も真の姿でしょ?それになにか変なこと言ったかしら?加奈子も実はそう思ってるでしょ?そんなことより、ここは私たちに任せて加奈子は私たちの指示どおり現場が進捗してるか確認してきてちょうだい。下した決定事項と現実の乖離が起こるのは、今は特によろしくないわ。・・・あ、佐恵子これもお願い」

話しながらも手を止めず作業を進めている真理の様子に、加奈子は肩をすくめて頷いて了承の意を示す。

「わかりましたわ。それにしても真理、さすがに速いわね・・。眼が満足に使えない状態だと、真理と双輪の対になるにはわたくしでは役者不足ですわ・・」

「十分ですよ佐恵子。それより眼がきつくなったら言って?」

「まだ頑張れそうですわ」

改めて真理の優秀さに感嘆している佐恵子と真理の机の上には、ブラックコーヒーの入っていた紙コップがいくつも並んでいる。

昨日、Sと呼ばれる島から帰ってきたばかりであるが、休む暇などいまの支社の状態ではありえなかったのである。

佐恵子たち3人は早朝から山積している問題の処理に追われているのだ。

Sから帰った日の昨晩だけは佐恵子も真理も慌ただしいながら、短いが恋人と甘い時間をすごすことができた。

しかし今朝は3人とも5時から出社してもう4時間もぶっ続けで働きっぱなしである。

究極のホワイト企業を目指す宮川佐恵子であるが、その規定は自分に適用する気はさらさらなく、側近である真理や加奈子もその範疇に含めてしまっている。

それでも3人に不満はない。

優秀な美女3人は己が能力を十分に発揮できることで、身も心も充実しているのである。

自分の能力を発揮できる職場、それに加奈子以外の二人は自らの美貌に釣り合う彼氏もいる。

昨晩も、佐恵子は哲司と、真理は公麿と、加奈子は自分の指と濃厚な時間をすごせたのであった。

ただ、唯一自身も満足できたのは真理だけであり、佐恵子はモゲの施した呪詛のおかげで一度も満足することができなかったし、加奈子も一応は満足を得ることができたものの、2度目を一人で迎えたところで空しくなりふて寝してしまったのでっあった。

そんな恋人との濃厚な時間を慌ただしく過ごさなくてはいけない理由は、稲垣加奈子が愚痴っていたように紅蓮こと緋村紅音の暴走によって起こった業務の不具合、そして緋村紅音の支社長退任、それによる今後の再建計画の見通し、半壊した支社の再建で、いまや宮コー関西支社は蜂の巣を突いたような忙しさとなってしまっているからであった。

各部署から送られてくる膨大な報告書などを真理と佐恵子が高速で資料に目を通して、処理していく。

そして、宮川コーポレーション関西支社において、もっとも優秀な頭脳たる組織運営能力をもっているのは宮川佐恵子も認めているように、神田川家の令嬢、魔眼佐恵子の腹黒い参謀でありながらも、普段の笑顔は聖なる後光が迸っている宮コー十指の良心、菩薩と呼ばれる神田川真理であった。

ちなみに、真理の真の正体を知るモブからは密かに菩薩モドキと呼ばれている。

菩薩モドキとモブに密かに揶揄されながらも、真理の処理能力は本物で、【未来予知】の能力も相まって、問題の処理速度は常人のそれをはるかに上回っている。

資料を手にした瞬間に【未来予知】が働き、資料を作成した者の思惑や狙いとしている結果の期待値などが頭に流れ込んでくるためだ。

紅蓮こと緋村紅音が3か月とはいえ宮コー関西支社長に就任していた間に、偏向していた運営方針の是正、それによる歪み、そして今回の大惨事による被害及び復旧計画などのことで、真理はその能力と優秀な頭脳をフル稼働させてことに当たっている。

宮コーの各部署は言うに及ばず、下請けや協力業者、宮コーとアライアンス契約をしている企業も今回の騒動でかなり動揺していた。

それらの情報をまとめ上げ、出来得る限り最善と言える方策を導き出さねばならない。

ハインリッヒの法則において1件の重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、その裏には300もの異常があると言われているが、真理は最大限の効果を導き出すべく、その一つすら逃さぬよう対処すべきと考えていた。

各部署の報告書の提出者は、さすが宮コーの部長職以上の者達で、細部まで細かく書かれ、その一冊一冊が目を通すのも膨大な時間を要するボリュームであるにも関わらず、真理はそれらの分厚い資料を高速で読み進めていく。

一般人が見れば読んでいないのでは?と思えるような速度でどんどん手にした紙をめくっているのだ。

そしてそれと同時に、愛用の万年筆がはしり素早く要点を纏め、対処案をメモ用紙に書きなぐっている。

書類の山をひっくり返さなければならない、もしくは各部署の部長クラス以上の者たちと熟考しなければならないような案件を、真理は一人で分析、判断、対処案を出していく。

もちろんそのようなことはいくら真理が【未来予知】の能力や真理の地頭だけで処理できるはずもない。

真理の頭の中には、宮コーの社内規定はもちろん法律、コンプライアンス、ビジネススキルのありとあらゆることが詰まっているからできる芸当である。

それらを熟知していなければできないことを真理は常人離れした頭脳を駆使し、もう4時間もぶっ通しで続けているのだった。

そんな真理がまた一つ分厚めの報告書をまとめ上げ、後方に座る上司の佐恵子に資料を回し、次なる報告書を目にしたとき真理の動きが止まった。

「え・・?」

真理のもとに集まってくる報告書類を高速で処理しまくっていた真理があげた声に反応して佐恵子も顔を上げた。

「どうかして真理?・・そろそろ休憩でもいれましょうか?・・わたくしも真理の処理速度に追いつけなくなってきましたわ」

目元を指でマッサージして背筋を伸ばした佐恵子は、自身の首を手で揉みながら真理に声を掛ける。

真理のもとに寄せられている報告は多岐にわたる。

重要な案件もあれば、郵便物などの簡易なモノもあった。

「佐恵子・・これは・・・。こんなことはさすがに想定してなかったわね」

真理はそう言うと、佐恵子の方へと完全に椅子ごと向き直ったのだ。

真剣な顔の真理の様子に佐恵子も真理が手にしている1枚の紙に目を落す。

「え!?」

「・・どうします?佐恵子」

真理が手にしている1枚の紙はエントランスに常駐している受付嬢たちが使うメモ用紙であった。

そこには予期しない人物の名が、達筆な文字で枠からはみ出す大きさで記載されており、来訪目的欄は同様の書体で商談と書かれていた。

宮コーに飛び込み営業をかけてくる営業マンは少なくない。

しかし、本日外部からの来訪者は原則シャットアウトしている。

ということは、この来訪者は門にいる警備守衛の制止を無視し、どうどうと正面から侵入してきたということだ。

そして、その者の来訪は佐恵子にとっても真理にとっても意外過ぎた。

「・・真理。モブと凪姉さまをお呼びして。そのあたりにいるはずですわ。それと・・わたくしたち以外にも今日は誰か能力者は来ていませんの?」

真理の手から用紙をとった佐恵子は、正面の真理にそう言い、社内を先ほどまで巡回していた加奈子に目を向ける。

「あ!えっと、グラサンが5階の自分のデスクのところにいました。あんな大怪我してたのにあの男タフですよね・・」

加奈子は佐恵子の問いに応えて、唯一元菊一事務所のメンバーで本日出社している男を見かけ、挨拶を交わした今朝のことを思いだす。

「そう・・菊沢部長が・・それは心強いですわ・・。では、加奈子は菊沢部長を1Fのエントランス脇にある応接室に連れてきて。大至急ですわ」

「わかりました。ってでも何があったんです?」

「・・敵よ。たぶん敵が来たの。報告が間違いではないのならね・・。だから加奈子も菊沢部長と一緒にくるのよ?」

「わ、わかりました!真理。急いで帰ってくるからここはお願いね!」

加奈子はそう言うと駆け出していき、佐恵子は真理を伴い蜘蛛こと最上凪と元底辺ドキュンのモブがいそうな場所へと足を運ぶ。

最上凪はモブなる得体のしれない無名の男が、妹のようにかわいがっている佐恵子の側近ボディガードに突然なったことに不安を感じたようで、その実力を試したいと言いだし、先ほどモブを連れ出していったのである。

「佐恵子も支社長に再任させられたばかり・・、いま支社は紅蓮がまき散らした難題だらけというのに、このうえ・・いったい何なんでしょうね。先日のSでのことが関係しているんでしょうけど・・なぜいまウチに・・?」

そう、宮川佐恵子が神田川真理の上司に返り咲き、宮川コーポレーション関西支社長へと再任したのであった。

紅蓮こと緋村紅音の暴走、そして逮捕という宮コーの大スキャンダルは報道されることはなかったが、宮コー内部は大混乱になり、その混乱をそのまま佐恵子に丸投げした形になっているのだ。

「・・きっと緊急で重要な用で訪れたのですわ・・。ただし、その者にとってですが・・。わたくしたちにとっては碌なものではないでしょう。しかしその報告が本当であれば対処しないわけにはまいりません。まったく・・この忙しいときに・・」

真理の問いに佐恵子は歩く速度を緩めず苦い表情で、自身に降りかかってくる災難には最早諦めている表情で応えた。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 2話 宮川コーポレーション関西支社のその後終わり】3話へ続く

第10章 賞金を賭けられた美女たち 3話 商談前の戯れ

第10章 賞金を賭けられた美女たち 3話 商談前の戯れ

「ったく5階のデスクにいると思ったのに、おかげで探したじゃないのよ!手間取っちゃったわ!はやくはやく!」

加奈子は階段を駆け下りながら、後ろの男を急かす。

二人の男女は宮川コーポレーション関西支社の全壊した10Fから一気に階段を駆け下りてきている真っ最中だ。

トレードマークであるサングラスを掛け、ベージュのチノパンに濃紺のジャケット、インナーには黒いTシャツ姿という、宮コーが指定している男性社員の服装を完全に無視した菊沢宏は、前を駆けるようにして階段を飛び降りるように走り降りる加奈子に促されるまま階段を降っていた。

昨日宮川コーポレーション関西支社長に再任した宮川佐恵子からは、菊一メンバーにおいては、昨日の災難によるハードワークを穴埋めするために、本日はメンバー全員休暇が言い渡している。

しかし、宏は半壊した支社に菊一メンバーの中で唯一出社していたのであった。

孤島Sで華僑の倣一味と行動を共にしていた麗華のことが気になってしかたがなかったからである。

麗華が去った行先はもちろん、麗華の立ち振る舞いも気になっていた。

もともと麗華は口調も荒く、あの美貌であるにもかかわらず男受けがイマイチ芳しくない程お転婆だったのだ。

宏としても菊一事務所を運営していた際において、麗華は誰とペアを組ますか、どんな仕事をさせるか・・ということを考慮しなければいけないタイプのメンバーだった。

けっして悪い人間ではないのだが、麗華は良い言い方をすれば素直だったのだ。

その麗華が、華僑の倣に対しては深い敬意をもって接していた態度が腑に落ちない。

洗脳系の能力だと見当はつけているものの、そう決定してしまうにも、今後麗華の捜索を続けるにも情報が足りないと感じた宏は、自身の部署にある麗華の手がかりになる情報をかき集めていたのだ。

妻の美佳帆や部下のスノウが、大塚刑事の部下である杉刑事や粉川刑事を使って集めてくれていた資料を手に、佐恵子らが詰めている仮設事務所へと伺うつもりであった。

そして佐恵子らの仕事のタイミングをみて、麗華捜索の依頼を掛け合うタイミングをはかっていたのだ。

しかし、休憩もなくぶっ続けで働いている佐恵子ら3人のタイミングがつかめず、宏はそわそわしながらも、所在なく紅蓮が破壊した10Fの様子を見に行っていたというわけだ。

それが稲垣加奈子を走り回らせてしまった理由なのだが、そもそも今日休みのはずの宏が社内にいたこと事態が幸運なのであって、加奈子に文句を言われるようなことではない。

少し前の宏なら、加奈子の態度や、佐恵子ら3人の都合などお構いなしに麗華のことや自分の考えを優先させただろう。

だが宏は自分自身も宮コーという体制の中に身を投じたことで、佐恵子ら3人の常人離れした仕事に対する取組み姿勢に、徐々に感じいり始めていたのだ。

(俺の方が年上やのに、俺ばっかりが我通すわけにいかへんからな・・まったくあのねえちゃんら・・まだまだなところあるやろけど、普通あれだけの力を個人でもっとったら、もっと好き勝手自由気ままになんぼでも生きていけるちゅうのに、あの社会に対する献身性は大したもんや・・見上げた奴等やでホンマ・・)

階段を下りながら思惑に耽る宏は、前を駆け降りる加奈子の背中を見やる。

(この女もそうや。これほどの肉体強化能力があるんやったら、どんな世界でもやっていけるはずやって言うのに、宮コーに・・あの宮川のお嬢様のところにおるんはそれなりの理由があんねんな)

妻の美佳帆と初商談で3人とこの宮コー関西支社で出会った時は、最悪に近い印象で、じゃじゃ馬三人娘と一括りにしていた認識が、今や完全に変わっていることに宏自身も驚いていた。

それだけに宏の加奈子に対する口調も、菊一メンバーに対するような口調になってきている。

「わかっとる。急いどるやないかい。せやけど俺に同席してくれって珍しいな?俺を訪ねてくる奴は大抵直接俺のとこに来るねんけど・・・。宮コーにきた客で俺が会わんといかんヤツなんてそうおらへんやろ?」」

「そうだけど、今回は特別。高嶺が来たらしいのよ」

「なんやて?・・高嶺ってあの高嶺か?高嶺の誰が来たんや?!なんで先にそれを言わんのや?!」

「敵が来たって言ったじゃない!高嶺の誰って、高嶺弥佳子よ。高嶺製薬の社長!会社同士だと表向き、ウチと接点なんて皆無だからね。・・・来た理由って・・きっとSでのことでしょ!」

宏は階段を駆け下りながら、先日Sで立ちはだかった眼鏡の似合う美貌の女剣士、千原奈津紀のことを思い出し、その勝負の顛末が不本意な結末に終わったことに苦い表情を浮かべる。

「・・わかった。急ぐで!」

宏はやや伏せ気味になっていた顔を上げると、加奈子の背中に力強い声でそう言った。

一方、1Fエントランス脇にある応接室ではモブこと茂部天牙が苦しそうに手足を不自由にバタつかせ、空中でもがいてた。

「ひどい」

「ちょっ!?ぐるじい!!・・いでで!・・な、何のつもりっすか?!」

空中でもがくモブを、呆れ顔で眺めていた白づくめの女、最上凪は眉間にしわを寄せてから軽くため息をつくと指を弾いた。

どさっ!

「いてっ!」

全身真っ白のゆったりとしたワンピース姿の凪は、大理石の床で尻を強打したモブに背を向ける。

「なんなんすか!?力を試すって言われたって・・!いきなりこんな仕打ちするなんてあんまりっすよ!」

「もういい。静かにする」

その白い華奢な背中に向かって抗議の声を上げたモブであったが、振り返って静かに言う蜘蛛のセリフに背筋を凍らせた。

けっして大きな声ではない。

言葉も乱暴ではなく、細い透き通った声で静かに言った蜘蛛に怖気づいたのだ。

身長190cm近くもあり、恵まれた体格のモブが、見た目か細い女の発した言葉に言い返すことができないでいるのだ。

「な・・なん・・!?」

街ではどんな不良共やヤクザにもここまでビビったことはない。

しかしそのモブも、凪に真正面から見据えられると、言葉が口からうまく発せられず、身が・・いや心が竦んでしまったのだ。

モブは数か月前オルガノで支社長こと宮川佐恵子と初めて対峙した際も、異様な気配に直感が最大警鐘を鳴らしたことを思いだしていた。

目の前にいる掴めば壊れそうに見える華奢な女が発する言葉には、かつてのアラームを超える凄みがあった。

いや、言葉だけでないその目、雰囲気、オーラ、凪も決して威圧しているわけではないのだが、今のモブにははっきりとわかる。

能力者としての自分との差が、どれだけ開いているかわからないぐらい開いていることを感じてしまったが故の恐怖であった。

疑い、僅かな期待、そして失望からの侮蔑。

それはモブと出会ってからの最上凪の心境の変化である。

最初はモブも最上凪のことをキレイな姉ちゃんだな。ぐらいにしか思ってなかったのだが、上司である宮川佐恵子が姉さまと敬称を付けて呼び、周囲から蜘蛛と畏怖されている人物が只者であるはずがなかったのだ。

しかしいまははっきりとわかる。

モブの目の前にいる華奢な女は自分より上位の能力者だということが・・。

それも圧倒的に上だということが、一瞬のやり取りであったが身に染みてわかったのだ。

しかし、それをそう感じ取れたのはモブが能力者として確実に一定レベル以上に成長した証でもある。

両肘をかるく掴むようにして両腕を組み、首をかしげて尻もちをついたままのモブを見下した格好のまま凪は口をひらく。

「私は望まない」

静かな声でそう言い、見下ろしている冷淡な目には侮蔑は消え、落胆が感じ取れる。

「・・・へ?・・な・・なにをっすか?」

「だまる。必要ない」

言葉足らずでいったい何を言っているのかモブにはイマイチわからないが、目の前にいる蜘蛛こと最上凪はどうやら自分に興味を失ったのだとわかった。

言葉も少ないし、表情にもほとんどあらわれていないが、はっきりとソレが態度や雰囲気で伝わってくる。

しかし、モブはいくら恐怖に心が支配され、凪を失望させてしまったとはいえ、最上凪は味方であるという認識から、かなり怖気ながらも質問する。

「わ・・わかんねえっすよ。なにを望まねえんすか?!なにが必要ないんすか?!俺がここにいるのを望まねえってことっすか?!それとも俺なんて必要ないってことっすか?!俺・・これでも前よりは随分マシになったんすよ・・。オフクロにもようやく安心してもらえて俺・・ここなら・・ここなら今までの俺のクソみてえな人生やり直せそうなんすよ・・!もう一度やらしてくださいっす!お願いします!」

モブは、最上凪に及第点を付けてもらえなかったと感じたのだ。

今まで好き勝手に生きてきたが、ここ最近の自分は出来過ぎている、ツキ過ぎているということもわかっていた。

しかし、それだけに簡単には諦められなかった。

ここで凪に見限られ、宮コーを去らなければならないように仕向けられるかもしれないと思うとモブは是が非でも、何にでも縋りたい思いに駆られていた。

そんな様子のモブを凪は冷ややかに観察している。

神田川真理や稲垣加奈子の職位称は「主任」と呼ばれているが、それは正確ではない。

能力者であり且つ役員のボディガードを兼ねる側近は「秘書主任」という職位が与えられ、部長クラスと同等かそれ以上の権限がある。

そしてモブも佐恵子が支社長に返り咲いたせいで、役員のボディガードとして自動的に「秘書主任」の辞令が下っていた。

モブ本人はまだよくわかっていないが、それは大変な出世である。

府内トップの低偏差値高校を中退したモブでは、本来到底到達できるボジションではない。

雨宮雫や楠木咲奈のように名門大学を主席に近い成績で卒業し、能力開発を受けているエリートたちですらまだその職位ではない。

ついこないだまでヤクザどころか、裏ビデオ作製販売が主な収入源という半グレ組織の下っ端構成員であったモブこと茂部天牙というチンピラなどが成れるものではないのだ。

ゆえにモブの預かり知らぬところで、昨日からモブは、秘書主任を目指しているエリート候補生たちの中では噂の人物であった。

最上凪は現会長宮川昭仁の側近であり当然秘書主任であり、秘書主任としては最古参である。

その凪としても新米の秘書主任には興味があったのだ。

しかも、ポッと出の無名の新人がいきなり秘書主任になったばかりか、可愛い妹分の側近になるとはいかなる人物か・・と疑い、そして少し期待していたのだ。

若いが能力者として優れている、もしくは近くに置いておきたいほど頭脳が明晰か、もしかしたら佐恵子が男として気に入ったのかもしれない・・、それならば応援は吝かではないが・・とすら最上凪はモブのことを見ていたのだ。

しかしである・・。

いま見たが、実力は全力でなかったにしても大したことがないと推測できる。

以前モブが受けたという筆記試験結果も閲覧したがひどすぎる。

恋人という線も「そんなわけありませんわ」と苦笑い気味にはっきり佐恵子本人から完全否定された。

(野良犬や野良猫みたいに能力者なら誰でも拾ってくる癖治ってないわね・・。能力者の力が貴重なのはわかるけど、だからこそ、その品性が大事。この男が裏切らないという保証でもあるというの?魔眼で見たと言っても、人の心は移ろいやすい。ずっと監視が必要な人物が主任秘書だなんて反対だわ。加奈子からはこいつを警戒するようにって忠告されてる。真理にいたっては、こいつのことは実験動物ぐらいにしか思ってない節がある。加奈子や真理がいるときに悪さは出来ないでしょうけど、秘書主任は役員近くに侍り、権限は絶大で機密情報も手に入れやすい・・。弱い心の人間ならすぐに腐敗する。だけど佐恵子は・・・甘やかされ育ったせいで自分には誰もが優しく接してくれると思ってる気質が抜けてない・・私が来たからには私がしっかりしないと)

「・・・」

モブの懇願する必死に近い視線を、美しい無表情の鉄面皮で跳ね返しながら凪は考えを巡らせるも言葉にはしない。

しかしモブの懸命さとしつこさに、凪もモブを諦めさせる引導を渡さんが為、もう一度チャンスを与えることにした。

「・・・・もう一度」

凪はかなり長い沈黙の後、静かな声で言った。

するとモブの目に途端に希望の光が灯った。

「ありがとうございまっす!」

モブは勢いよく立ち上がってそう言いながら、ばっ!と腰を90度折り、頭を下げる。

先ほどモブは凪に実力を測られた。

モブにとって最初、凪は容姿が華奢で頼りない女性に過ぎず、「力を見る」と言われても全力でかかれなかった。

それゆえ、モブの見せた力を「ひどい」と評価されてしまったのだ。

しかし、宮コー十指の蜘蛛、紅蓮とは相性の悪い能力と言われながらも、紅蓮に対抗しうる戦力と言わしめる碧眼の蜘蛛最上凪を見た目通りと侮り手を抜くことは最早ない。

当の最上凪はモブの奮起になど興味はない様子で人差指をちょいちょいと曲げて、かかってこいと合図をする。

(全力でいくぜ!栗田先生直伝の・・・!)

「【念動力】!!!」

モブの両手から放たれたオーラの波動が凪を捉え、後方へと吹き飛ばす。

「・・!」

(念動力?まさか本当に念動力とは・・?こんな燃費の悪い技能を使えるのには驚き。・・でもすぐにガス欠になるんじゃ・・?)

凪はそう分析しつつ念動力によるオーラの波動を逸らし、その影響の範囲から逃れるように脱して応接室の大理石の壁に足だけで張り付く。

「おおおおおっ!【拳気】、【疾風】、【即応反射】!」

念動力を躱されたことに同様するでもなく、凪が回避する一瞬の隙にモブは自身を強化する付与術を発動させていた。

「・・・」

(付与に逆技技能まで・・見た目によらず器用。肉体強化もしつつここまで偏った技能を使うとなれば、さっきのは本気じゃなかったのね。これなら戦力として使えるかも)

「先生直伝っ!!【執刀】!!」

そう言うとモブの右手の人差指と中指から30cmほどの青白いオーラの刀身が現れる。

「おらぁぁぁ!!ああ??!」

発現したオーラの刃を構え、雄叫びを上げ勢いよく地面を蹴ったモブが突如困惑の声をあげる。

「・・っく・・」

呻いたのは凪であった。

モブの首、数センチという所まで白刃が迫っており、その刃は空中でなにかに動きを阻害されたかのようにブルブルと震えている。

「だ・・だれだてめえ?!」

そう叫んだのはモブであり、そのモブの目の前に、いつの間に現れたのか見たこともない佳絶柳眉の美女がスーツ姿で会議室の長大なテーブルの上に片膝を付いて刀を抜き放っていたのだ。

「あ・・あっぶねえ・・!」

モブはここでようやく女が自分の首を切り落とす為に放った一閃の刃を目視し、顔を青く染めて呻った。

「後ろ!飛べ!」

壁に足だけで張り付くように立っている最上凪が、モブとスーツ姿の女剣士にそれぞれ手を向けて踏ん張りながら、今日一番の大声をあげた。

凪によって部屋中に一気に見えないほどの細さの糸が張り巡らされており、その糸の何百本かで女が放った神速の一閃を受け止めているのだ。

見えない糸の張力により、部屋中にギリギリッと不可解な不協和音を奏でている。

「うっす!」

凪のセリフの意味や、部屋中に響く音のすべてを理解したわけではないが、モブは直感を信じ、凪に言われた通りに刀の発現を止めて後方へと地面を蹴る。

「うおっ?!おあああ?!なんで?!!」

モブは確かに後方へと飛んだにも関わらず、あり得ない軌道で空中を滑空し、背面の壁ギリギリを滑るようにして空中を移動して、スーツ姿の女のずいぶん手前にいる最上凪の背中まで引っ張られるようにして飛んでいったのだ。

「な・・なんなんすかいまの?!」

「黙る。忙しい」

背に隠したモブを肩越しにチラリと見やり、凪が呟く。

「付与。私にも」

「・・・ガス欠っす・・面目ないっす」

高燃費の念動力、発動させた執刀も高燃費であり、モブはオーラを使い果たしていたのだ。

「・・・いい」

自身の背で隔した若く多彩な能力者を戦力と期待しかけた凪は、落胆しつつもそう言って気を取り直し、目の前の女に意識を集中する。

「久しぶりですね。・・たしか最上さんでしたか?つい抜いてしまいましたが、すぐに栗田ではないと分かったので斬り飛ばすつもりではなかったのですよ?それより、宮川会長はご壮健ですか?」

「・・どの口が。飛んで火にいるなんとやら」

「ふふっ、虫は蜘蛛と呼ばれる貴女のほうがお似合いなのでは?」

そう軽やかに笑って会議室の中心にあるテーブルの上に立ちあがり、抜き放っていた白刃、備前長船を流麗な動作で鞘に納めた女、高嶺17代目当主高嶺弥佳子がそこにはいた。

「その男・・栗田にしては若すぎますね。ですがその刀身の光・・忘れもしません・・!」

柳眉を吊り上げ、凪の後ろにかくまうようにされている大柄なモブに鋭い目を向ける。

「御屋形様~。穂香にさっき大人しく待ってろって言ったのに御屋形様が始めちゃってるじゃないですか~。ってことで穂香も混ざって良いですよね~?」

「御屋形様。穂香さんも・・散々待たされましたが、ここの主人がようやく表れたようです」

弥佳子の入ってきた扉から、二人の女性が現れた。

一人は緩そうな表情の豊満なロングソバージュの女性、もう一人はいかにもお堅そうな細身のベリーショートの女性である。

「・・・私としたことが・・。そのオーラについ反応してしまいました。そこのデク男。隠れてないで出てきなさい。穂香さんの言ったとおり、女の背に隠れて恥ずかしくはないのですか?しかし、まさかその若さで天穴を使えるとは・・宮コーめ・・。まあ、まずは話し合いでしたね。穂香、静いいわね?」

当主の言葉に二人の部下の女性は軽くだが恭しく頭を下げ了承の意を示す。

「デ、デクって?・・俺のこと?!」

カツカツとヒールの音を響かせて上座の一番上等な席にドサリと座って足を組んだ弥佳子に向かってモブが声をあげた。

「貴方以外に誰がいるのです」

肘置きに頬を付き、モブに微笑を向けて揶揄うように弥佳子は声を掛ける。

「だっさーい。女の背中に隠れちゃって。ママー助けてーって?」

弥佳子のすぐ後ろに追従してきていた、ロングソバージュの豊満な女剣士の方が身振りを交えてモブを更に揶揄う。

「んだとぉ!?」

穂香と呼ばれた女の挑発にモブが激昂し声を荒げると同時に、穂香と呼ばれる豊満な女性もにこやかな表情を崩さず、隙の無い動きで白刃を鞘から引き抜いた。

モブは前に出ようとガッつくが、凪の糸がそれを許さない。

「やっぱやっちゃおっかなぁ~」

そう言い、ソバージュ女の表情の笑みが深まったところで、斬り飛ばされた会議室の扉のほうから声が掛けられた。

「武器はお仕舞になさって。戦いをしに来たわけでもないのでしょう?」

会議室の入口に真理と加奈子に左右を護られた佐恵子が現れ、部屋の上座で座っている弥佳子たちに声を掛けたのであった。

「ずいぶん待ちましたよ。宮川佐恵子さん。ここも私の手の者から聞いていた報告より随分ひどい有様で、ご心労お察しします。」

「心にもないことを・・。凪姉さま、モブも此方へ」

弥佳子のセリフに佐恵子はカツカツと音を響かせ歩きながら横目でそう返すと、真理、加奈子、宏を伴って仕方なく下座の席に座る。

凪もモブも壁から降り、下座へと向かう。

「なんで俺たちがこっちなんすか・・?あいつ等偉い奴等なんすか?俺なんであの女に殺されかけたんすか?!全然知らねえ女っすよ?!」

「疑問。我慢できない?」

不平を漏らしたモブは、凪に呆れた口調で叱責を浴びせかけられ、他の女にそう言われた覚えでもあるのか「うっ」と呻いて黙ってしまった。

そんな調子のモブ以外は、わざわざ出向いてきた高嶺の頭領に、佐恵子たちは緊張の面持ちで身構えており、佐恵子以外は誰も座る事無く、商談とやらが開始されたのであった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 3話 商談前の戯れ終わり】4話へ続く

第10章 賞金を賭けられた美女たち 4話 髙峰弥佳子の謎めいた力

第10章 賞金を賭けられた美女たち 4話 


「よくわかりませんわ」

しばらくの沈黙の後、ポーカーフェイスの宮川佐恵子はそう口にした。

「そんな難しいことは言ってないでしょう?」

対する高嶺弥佳子は円卓の上座にある椅子に深々と腰を掛け、笑みを浮かべた表情で足を組みなおして言い返す。

「内容がわからないわけではありませんわ。なぜそんな要求をするのかわからないと言っていますの」

弥佳子の尊大な様子に多少イラついたのか、佐恵子は丁寧な口調ながらも目を細めて言い返す。

「静」

弥佳子は佐恵子の問いかけを笑顔で無視すると、その視線を隣にいる、いかにもお堅そうなベリーショートの側近の名を口にした。

名を呼ばれたベリーショートの側近女は、「はっ」と短く返事をし、きびきびした態度で頭を軽く下げつつ佐恵子たちの方に向かって口を開く。

「当方高嶺は宮川コーポレーションより張慈円の殺害依頼を受け、これを受諾することと致します。本来なら国際指名手配されており、裏の世界からも高額の賞金首をかけられている張慈円を殺害するとなれば相当な報酬となるところではありますが、この度は無報酬とさせていただきます。なお、無報酬の条件として、御社のほうから神田川真理さま、菊沢宏さまの2名には張慈円殺害ミッションに参加していただくことになります」

説明をし終わった静という女性の顔は、緊張か、もしくは魔眼と呼ばれる宮川佐恵子に凝視されて緊張したのか、僅かに頬を紅潮させ目を伏せた。

名を呼ばれた真理と宏は何も言わないが、顔に何故?と書いた表情で弥佳子の微笑から何かを読み取ろうしている。

当の弥佳子はそんな視線より、静の様子がいつもと違うことを多少訝ったが、敵地のど真ん中ということで緊張しているのであろうと察し、言い終わった静に顔を向け笑顔で頷いて見せてやる。

静が弥佳子の気遣いに目礼をした時、佐恵子が口を開いた。

「何を勝手なことを・・。お断りいたしますわ。出口はそちら、足元の明るいうちにお帰りになってくださいませ」

そう言い放ち椅子から立ち上がった佐恵子は、ふんと軽く鼻をならし時間を無駄にしたと言わんばかりの表情で弥佳子を睨みつけて踵を帰そうとする。

しかしその時、弥佳子の隣でニコニコと話を聞いていた穂香という女から殺気があふれ出したのだ。

「やっぱやっちゃうことになるじゃ~ん。いいよね御屋形様?」

穂香はズラリと腰に下げた太刀を抜くと、浮かべていた笑みを深めて腰を落とし構える。

その動作に隙は無く、攻撃することに躊躇いもなさそうな笑顔の女剣士の様子に、佐恵子の周囲の面々が途端に色めき立つ。

加奈子を正面にして佐恵子の周囲を真理、凪、宏、ついでのモブがビビりながら警戒する。

「穂香おやめなさい」

「ぶ~」

どこか配線が一つ切れてしまっている様子のソバージュ女も、当主である高嶺弥佳子の命令には従うらしく、子供のような返事をして太刀を鞘にしまう。

「ですが宮川さん。必ず我らに依頼していただきたいのです。なんならこちらからすこしサービスを付け加えてもいいのですよ?」

穂香と呼んでいる女を手で制して、弥佳子は続ける。

その弥佳子に席を立ち、去りかけた佐恵子は半身で振り返り皮肉気にしゃべりだした。

「戯言を。張慈円が目障りで殺したくなったのなら、わたくしたちを巻き込まず高嶺だけでやればよろしいではありませんか。わたくしたちに依頼させたい理由はSでの任務失敗の処理を高嶺自身の手でもみ消すのを良しとせず、宮川から依頼されたからという大義名分がほしいのでしょう?・・お生憎様。さあ、お引き取りを」

佐恵子はあざ笑うような表情を弥佳子に向け、今度こそ去りかけた佐恵子に弥佳子はなおも続けた。

「・・・条件としてあなたの命を一つ買いましょう」

そのセリフに佐恵子の取り巻き達が再び色めき立ち、ことさら加奈子に関しては髪の毛を銀髪に変えて弥佳子に肉薄する。

「きったぁ~!♪」

加奈子の縮地による接近を、瞬時に察知し嬉しそうな声をあげて穂香が抜き放った白刃で受け止める。

「てんめ!邪魔!」

穂香と加奈子が肉薄しつつ刃と拳を交えだす。

「高嶺さん、本当にこれ以上ことを荒立てるおつもりですか?」

「あら?宮川さん、荒立てているのはそちらの方ですよ?」

穂香と加奈子の戦闘を、目を細めて横目で見て、危険な雰囲気になりかけている佐恵子に対し、弥佳子はいまだ座ったまま顎を少し持ち上げて微笑を浮かべたまま返す。

「では、あなたの命を一つ条件として付けましょうか」

笑みを浮かべたまま弥佳子が椅子から立ち上がり、腰にした太刀の柄に手を伸ばす。

流麗な動きでその場で抜刀した刹那、常人の目には見えない速度で剣圧が迫る。

南川沙織の得意とする刀閃に近いが、速度は更に早い。

「【十重二十重】」

しかし弥佳子の抜刀と同時に凪は反応していた。

目は緑色に光り、一言だけそう呟き、両手を交差させ身を血締めるようにして交差させる。

「させへんで!」

宏も弥佳子の動きに当然反応し、佐恵子をその太い腕で庇うようにして刀閃の射線に割り込ませる。

ぎ!ぎ!ぎ!っぎちんっ!!

無数の金属音のような音が響き渡り、弥佳子が発した刀閃は、凪が無数に張り巡らせた硬質の糸によってボロボロになり佐恵子のずいぶん手前で失速し力を失い霧散する。

完全な敵対行動を取られたことで、凪や真理、すでに戦っている加奈子たちの目に闘志が宿る。

開戦の合図を確認しようと、佐恵子の方を振り返った面々は息を飲んだ。

佐恵子の黒く長い髪の毛が、肩口からすっぱり斬り落とされていたのだ。

「・・・えっ?」

細い目を見開き、当の佐恵子本人が一番当惑した表情を浮かべている。

高嶺弥佳子は【刀閃】を放った。

しかし、それは凪の発した糸によって、止められたはずである。

そして、宏も弥佳子の【刀閃】に反応し凪の糸で止めきれないときはという動きで、対応していた。

にも拘わらず、佐恵子の長い髪の毛は斬り落とされてしまっていたのだ。

「な・・なんやて?!」

宏もバサリと床に落ちた佐恵子の大量の髪の毛を見て狼狽する。

「ふふふっ、せっかくの長い髪でしたが、けっこう傷んでいましたのでカットして差し上げました。最近少しお忙しかったのですか?随分傷んでましたよ?美容室代もサービスしてあげたのですから今回は私共に依頼してくださいますよね?」

目を見開き、自分の首が斬り落とされていないか両手でさすっている佐恵子に向かって、弥佳子は軽やかに笑いながら言う。

「・・な・・なんて奴や。あの速度の刀閃と同時にもう一発なんか放ってたんや・・!こりゃ、あの千原とかいう女以上やで・・」

宏の発言に弥佳子から笑みが消え、びくりとその柳眉を跳ね上げる。

「あなたが菊沢宏さんですね?今回はどうしても私に同行していただきますよ?あなたのことはSで調べさせていただきました。うちにも残り香を使える者は大勢いますからね。奈津紀さんをああまで追い詰めたその腕前、今回は私に貸してもらいます。そしてその奈津紀さんの刀も持ってきてください」

先ほどまで微笑の表情だった柳眉佳絶の女剣士の真面目な表情に、宏も真面目に応える。

不本意ながらも、千原と名乗った女剣士を手にかけてしまったのを宏は悔いており、その上司の高嶺弥佳子の心境を慮ったのだ。

「てことは、俺があの女をやったんは知っとるんやな・・すまんかった。あんなつもりや無かったんやが、思った以上にあの女が強うてどうしても手加減してやれへんかった。あの女はあんたの部下やったんやろ?それでアンタの気が済むなら、俺は力貸してやってもええねんで。張慈円をやるってことやしな。それには俺も賛成や」

「誤解無きよう。奈津紀さんは死んでませんわ。どういった経緯でその刀を、和泉守兼定を持つに至ったのかわかりませんが・・・、奈津紀さんに返してもらえませんか?」

「あ‥あの女生きとるんかいや?!それやったら喜んで返すわ。最後にあの女に刀託すみたいに言われて正直困ってたんや。これで悩みが一つ無うなったわ」

「・・・驚きです。戦利品を返さないと言うと思っていたのですが・・、なるほど、腕が立つだけではなく、奈津紀さんは貴方を敵として認めていたようですね」

敵から奪った武器をハンティングトロフィーのように思っている男ではない。と弥佳子が感心しているも、当の宏は憂いが一つ消え去ったことから「よっしゃ」とガッツポーズをとっていた。

そしてその宏が後ろを振り返り、張慈円討伐の同行の同意を佐恵子に求めるような視線をサングラス越しに求めるも、佐恵子は、自分の髪の毛が散乱した床にへたり込み、自らの首を確認するように両手で摩りながら呆然としている。

「お・・せやった・・放心中やったな・・。大丈夫か宮川さん?」

そして、そのそばでは、すでに真理と凪か駆け寄っている状況だ。

「佐恵子。しっかりして、佐恵子の身体に害があるようなことは私の能力でもなにも感知してないわ」

「佐恵子。髪だけ。当たってない」

その様子に微笑を浮かべなおした弥佳子は、へたり込んだ佐恵子を見下すようにして口を開く。

「ふっ、興味深い人材を集めながらも、リーダーが一番お粗末ですね。・・オーラを糸状にし何万本同時に操る蜘蛛、神田川家の令嬢で未来予知能力者の菩薩、それに奈津紀さんを破った剛の者・・・。ともあれ、あなたの命も一つ私が買いました。私がその気なら、髪だけで済まなかったのは、いくらあなたでもわかったはず。そのうえ美容院代もサービスしてあげたのですから今回の依頼は成立・・ということでいいですね?」

そんな弥佳子の勝ち誇った様子に、穂香と干戈を交えていた銀獣が吼える。

「なに勝手なことほざいてんのよ!」

「私のこと忘れちゃダメ~!」

「くっそ!・・あんた!邪魔ねえ!!」

弥佳子に再び肉薄しようと床を蹴った加奈子に、穂香が弥佳子との間に入り込み拳と剣で押し合う。

「穂香。話はつきました。剣を引きなさい」

弥佳子はそう言うと、静を少し手で前に押すようにすると静のことを紹介し出した。

「宮川さん。この子は私の親族で、高嶺静といいます。【未来予知】を持つ神田川家のご令嬢と、うちの奈津紀さんを打ち負かしたという菊沢宏さんにはとても興味があります。是非今回のミッションに参加して、その能力を発揮していただく代わりに、この子を置いていきます。身内の私が言うのは何なのですが、静は腕も立ちますし、機転も利きますから、きっとお役に立てると思います。・・・それに私の血縁者というほうが人質として価値があるでしょう?」

弥佳子はそう言うと、返事ができずにいる佐恵子を見て溜息をつくと、「返事はすぐに。私たちはあちらで少しだけ待たせてもらいますね」と言い、私も静と一緒に宮コーに残ってみたいと言っている穂香を、「いい加減にしなさい。穂香さんは私と一緒に行くんです」と言って連れて応接室を出て行ってしまった。

高嶺弥佳子ら剣客集団のいきなりの訪問にかき回され、なすすべもなかった宮コー面々の表情は暗い。

佐恵子の動揺が治まるまで、その苦々しい沈黙は続くのであった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 4話 髙峰弥佳子の謎めいた力終わり】5話へ続く

第10章 賞金を賭けられた美女たち 5話 若い燕に懐かれ体質の才媛

第10章 賞金を賭けられた美女たち 5話 若い燕に懐かれ体質の才媛

香澄は新しく用意されたデスクに座り、誰もいない広々としたオフィスを見回す。

今日からここが新しい職場だ。

といっても、ここでの仕事がまともに稼働するのは少し先になると聞かされている。

一昨日のあの火災事件の翌日、急に香澄が在籍していた宮川アシストの親会社から辞令が下ったのだ。

つい3か月ほど前、平安住宅を退職し、宮川アシストの部長職という待遇でヘッドハントされた岩堀香澄であったが、まさかこんなすぐに転職することになるとは思ってもいなかった。

いま香澄の座っている席は宮川コーポレーション関西支社6Fにある。

緋村紅音が赤字部門である不動産部を、支社から切り離し子会社していたのが解消されたのだ。

法的な手続きはまだまだ時間がかかるとのことではあったが、勤務場所は宮コー関西支社内に変わり、そのまま手続きに要する時間が過ぎれば、自動的に親会社である宮川コーポレーション組織に香澄の業務は組み込まれる予定になっている。

ただ、今日は一般社員のほとんどは休業させられており、ここ6Fにも香澄以外に人影はない。

上階や1Fあたりでは、一昨日の騒動の後始末で、工事関係者が慌ただしくしているが、被害のなかった6Fは静かなものである。

辞令書と共に送られてきた書類には香澄の待遇が事細かに書かれていた。

宮川コーポレーション関西支社不動産部部長、それが今の香澄の肩書だ。

宮川アシストでの待遇も平安住宅より随分良かったが、今の待遇はもっと良い。

「う~ん・・。私生活や身体の不思議な変調はともかく、仕事は・・というか誠のことや今後の生活の展望は明るいっぽいわね・・・。でも身体の不思議な変調もむしろ調子いいわ。落ち着いたらまた神田川さんに聞いてみましょうか。あの人が平安にいた私に声を掛けてくれたし、変なマッサージもしてくれたおかげ?のせいで身体の調子もかわったんだしね」

♪♬~♪♬♪~♪♬♪~

フロア全体が見渡せる自分の席から管理を任されたフロアを眺めながら、独り言を呟き今後のことや、気持ちと考えを、整理をしているとスマホが鳴った。

まただわ。

そう思いながら香澄はスマホの画面を見て眉を僅かに顰める。

画面を見る前から設定している着信音で誰かがわかるのだが、もしかしたら違う人であってほしいと、そんな訳がないにも関わらずそう思って画面を見てしまったのだ。

やっぱりというか、当然予想していた通りの人物からである。

画面には【浩二さん】と表示されていた。

数年前までなら、この着信音が鳴ると嬉しい気分になっていたことが今では信じられない。

電話を取らない。という選択肢が頭をよぎったが、迷ったのは本当に一瞬だった。

「はい」

香澄は画面をスライドし、抑揚のない声を相手に返す。

「香澄。忙しいところごめんな。いま少し大丈夫か?」

聞き慣れた声だが、以前とは明らかに声のトーンが違う。

此方の機嫌を伺うような声色の元夫の声色に、ここ最近電話を寄越してきている内容の続きだと確信した香澄は一気に気が滅入る。

香澄が平安住宅を辞め、上場企業である宮川コーポレーション傘下の子会社に就職したころから、頻繁に着信があるのだ。

香澄の元夫である岩堀浩二は、証券会社に勤めている。

もともと給与水準も高い業界ではあったが昨今のネット証券の台頭により、浩二の勤めている平和証券は数年前から徐々にだが、確実に圧されつつあった。

香澄も、浩二の会社が顧客を目減りさせていたことは、夫婦生活中の会話からよく耳にしていたことである。

その影響がここ最近になり、ついに浩二の勤務時間やノルマに顕著に影響してきだしたらしいのだ。

香澄が元夫との共通の知人伝えに聞いたところでは、浩二は課長から主任へと降格したあげく、大幅な減給の憂き目にあったらしい。

いまの岩堀家では、浩二と浩二の母静江の二人暮らしだ。

浩二と香澄には誠という7歳になる男の子がいるが、当然香澄が親権を持ち、香澄のマンションで暮らしている。

浩二が住む母と二人だけで住むことになった広すぎる二世帯住宅は、大幅に減給した浩二の給料では生活が苦しくなっているのだ。

二世帯で住む為に建てた大きな住宅、家族みんなで乗る為に買ったフォーシルバーリングスエンブレムで有名なドイツ製の高級車のローンが、薄給となった浩二の双肩に重くのしかかってきているのだろう。

「だから何度も言うように誠も父親がいたほうがいいと思うんだ。俺もこの通り何度も謝ってるだろ?香澄も強情を張らず誠の為だと思って折れてくれよ。な?一度ぐらいの過ちは誰にだってあるだろ?結婚して8年じゃないか・・。男はどうしても我慢できない時があるんだ。わかってくれよ」

降格や減給のことを一切香澄に伝えず、息子である誠の為に再婚してまた元の鞘に戻って暮らそう、と提案してくる浩二の言葉は香澄には響かなくなっていた。

浮気のことが大きな原因ではない。

浮気ということであれば、香澄も潔白ではないからだ。

こうやって元夫と話していると、それがよく分かる。

お互いすでに冷めていたのだ。

いまこうやって熱心に浩二が話しているのは、浩二自身の生活の為だ。

香澄が宮コーに栄転していなければ、こんなラブコールは決してないだろう。

「ええ、・・ええ・・でもよく話合って決めたことじゃない」

「でも誠も俺に会いたがっているだろ?」

浩二が降格し減給したとこっそり教えてくれた浩二との共通の友達は、香澄が宮川アシストにヘッドハントされて好待遇で就職したことを伝えてしまったことを、香澄に詫びの電話をしてきていた。

その知人が、浩二に香澄が宮川アシストに就職たから安心しなよと親切心で伝えたとたん、浩二は香澄とヨリを何としても戻すと目を血走らせていたらしいのだ。

(もう私たちの関係に愛はないのね)

1時間後、香澄は浩二の長く熱心な説得をようやく切り上げると、スマホをデスクに滑らすように置いて溜息をついた。

あんなに楽しいと思えていた浩二との生活が、遠い昔のことのように感じる。

周囲に誰もいないことをいいことに、はぁと再び声に出して大きな溜息をつき、イスの背もたれに背を預け天井を見上げた時、エレベーターの方からポーンと音がした。

「?誰かしら?」

香澄はそう呟くと背もたれから身を起こして、エレベーターに続く廊下の方へと目を凝らす。

見るとスーツに着られている感のある男の子が、その大柄な体躯を丸めトボトボとこちらに歩いてきている。

香澄もよく知る人物である。

「あら茂部くんじゃない。おはよう。茂部くんは今日から出勤だったわね。どうだった?新しい会社は?っていってもいきなり火災でボロボロよね」

香澄はモブの歩き方でなにやら落ち込んでいそうだと思いつつも、あえて明かる声を掛けてみたのだが、モブの様子は芳しくない。

「俺もボロボロっす」

茂部はそう言うと、うなだれたまま香澄の前を通り過ぎ、無料の自販機の前まで来るとコーヒーを二つ押した。

「・・・どうしたの?」

「俺、情けないっす・・」

香澄のデスクにコーヒーのカップを二つ置いたモブはそう言うと、机の上で両手を握りしめてそう言うと、顔を伏せた。

「何が情けないのよ?しゃきっとしなさい。茂部くんも晴れて天下の宮コーの正社員になったのよ?しかも秘書主任だっけ?特殊な役職みたいだけど私と同じ部長職と同じぐらいの待遇なんでしょ?・・・失礼だけど茂部くんの経歴からすれば大出世じゃない。社長・・いえ、宮川支社長も茂部くんを気にかけてるのかしらね・・。でも理由はどうあれ立派なことよ?胸を張ったらいいわ」

モブのいつになく深く落ち込んでいる様子に、香澄も少し心配になって励ましてみる。

出社初日でこんなに落ち込むとはいったい何があったのだろうと思うも、香澄はあえて追求しない。

男という生き物が、失敗したことやプライドを傷つけられる内容を根掘り葉掘り聞かれるのは嫌いなはずだと思ってのことだ。

「でも俺・・今朝ほんっとーに思い知ったんす。・・他の秘書主任のみんなと比べると全然っす・・。俺クソザコっす・・ゴミカスっす・・。栗田先生や稲垣主任、神田川主任に色々教えてもらって、随分俺変れたと思ってたっすけど・・ぜんぜんでしたっす」

もともと深く考えず、喜怒哀楽の感情を隠すことなどほとんどできないモブキャラであったが故にモブと呼ばれていた茂部天牙である。

しかしいくらモノを深く考えないタイプの人間だと言っても、百聞は一見に如かずというように、目で見、肌で体感し、心に響く経験からくる本当の認知は、思考が得意でなかったとしても心によく刺さるものである。

香澄はモブが演技をしているわけではなく、本気で傷ついているのだわかり、掛ける言葉を慎重に考える。

よく考えれば目の前で肩を震わし、顔を伏せているモブと香澄では一回り以上歳が違うのだ。

(そういえば茂部くんって今年20になったばかりよね。しかも高校中退でヤクザまがいのことをしていたって本人も言ってたわ。そんなこの子が、あの名門神田川家の真理さんや、宮川さんと一緒に英才教育を受けた稲垣さんとじゃ肩を並べる役職が務まるなんて普通じゃとても考えられない。・・・でも茂部くんは彼女たちに及ばないことが悔しいのね。・・・あんな超がつく才媛たちに負けて悔しいって思えるなんて成長したじゃない。それともただ無謀なだけかしら・・?でも実際茂部くんって私と働いてる3か月の間でも物凄く成長したのよね・・)

目の前で顔を伏せ肩を震わせている若い大柄な男の子を見て、香澄は目を細める。

まったくタイプは違うが、以前勤めていた平安住宅でも香澄が気にかけていた大柄な若い男の子がいた。

その子も仕事のことで悩み、香澄自身も厳しく注意することもあったが、成長してほしい一心で愛のある叱責をしたものだった。

今はもういないが、その子はモブより少し背は低く、学生時代ラグビーをしていたと言っていたしその子も大柄であった。

当時様々な事件が重なり、香澄も一度だけその子と関係を持ったことがある。

若くたくましい身体、ラガーマンらしい太い腕、厚い胸板、仕事では頼りないのに、ベッドでは太く熱い塊となってくれた。

彼にテクニックはなかったが、ぶつけてくるまっすぐな感情に昇りつめらされたことを思いだす。

その子と目の前で肩を震わせているモブの姿が重なり、顔を伏せているモブの前でぶんぶんと頭をふって思考を元に戻す。

(いけないいけない・・。でも、わたしって若い子に懐かれちゃう性質なのかしら?それとも私が若い子に世話を焼いちゃうタイプ?)

モブと香澄は3か月ほど宮川アシストで共に仕事をした仲である。

はっきりいってモブの仕事は香澄から見ればまだまだお粗末なレベルではあった。

しかし、モブ本人がこっそり鬼と呼んでいた神田川、稲垣両名からの激しい可愛がりを受け、成長スピードは信じられないぐらい速かったのだ。

香澄の目にも、モブ自身よく耐え、本人なりに努力をしているのはよく伝わってきていた。

「茂部くん」

「・・?」

香澄の声にモブが情けない顔をあげる。

「いくわよ」

「・・へ?どこにっすか?」

情けない顔のままモブが聞き返す。

「飲みに」

「ええ?」

モブが情けない顔から面食らった表情に変わる。

香澄はその表情の変化が面白くて笑顔になって続ける。

「今日私本当は休みなのよ。新しい職場を出勤前に見ておきたくて来ただけだったの。茂部くんも今日午前様でしょ?」

「そ・・そうだったんすか。でも部長が飲みに行こうなんて言うのって珍しいっすね。珍しいというか初っすね。でもこんな昼間っから飲みに行くんすか?」

香澄の突然の提案にモブの表情も明るくなり出した。

「私もさっきちょっと嫌なことあって帰る前に飲みたいと思ってたとこなのよね。家じゃ子供もいるし夜中じゃなきゃ飲めないから、昼間日が高いうちに飲んで、夕方帰るころには少し酔いが醒めてるほうがいいかなってね。茂部くんも今までのこと悔やんでもしょうがないでしょ?これからのこと考えなきゃ。茂部くんと比べると、神田川さんや稲垣さんたち秘書主任がスゴイのは当たり前じゃない。彼女たち茂部くんのずっと先輩だし、彼女たちは小さな時から英才教育受けてるエリートたちなのよ?でもそのエリートたちに目をかけてもらってる茂部くんもすごいじゃない。素質があると思われてる・・のかも?まあ、とにかく、さっきみたいな顔しててもしょうがないでしょ?昼から予定がないなら私に付き合いなさい。それとも昼間っから女の私一人に居酒屋でお酒をあおらせるつもり?」

「是非お付き合いするっす!」

普段仕事モードの香澄らしさのない茶目っ気たっぷりな口調と表情に圧されたモブは、先ほどの落ち込んだ様子が嘘のような表情で元気よく応える。

「よろしい。今日は私の驕りです。そのかわりしっかりエスコートなさい」

香澄もモブの返答に合わせ、腰に手を当てて胸を張り笑顔でモブに頷いたのであった。

茂部天牙(もぶ てんが)
188cm 80kg 20歳 24cm 賞金額:0円
通称モブ。本名なのでしょうがないにも関わらず、本人はモブと呼ばれることを嫌っている。府内屈指の低偏差値高校を中退し、チームを作ってバイクなどで暴走行為をしていた。親類や先輩のコネで何度か就職するも長続きせず直ぐに辞めてしまっている。
暴走行為を続けるうちに、ヤクザに目を付けられるが、イザコザのケツ持ちを張慈円のグループに依頼したことから、橋元一味との関係が始まる。
一時橋元傘下の木島健太のところで世話になるも、木島のアジトであるオルガノを強襲した佐恵子らに叩きのめされ、宮コーに身柄を拘束される。
警察に突き出す前に、当時無能力者だと思われたモブが宮コー十指に数えられる実力者、魔眼佐恵子を2度もKOしたことを調べる為、神田川真理と稲垣加奈子の尋問と実験を受ける。
真理たちの可愛がりと呼ぶ尋問と実験によりモブは能力者として覚醒。
【複写】及び【肉体強化】に開眼し、当時宮川アシストに左遷され人材不足に陥っていた宮川佐恵子の即席ボディガードとして任用される。

栗田教授の肉体改造手術を経て、能力と股間のサイズがパワーアップしている。
モブの持つ【複写】は一度見たり、身に受けた技を70%~100%の精度で復元可能で、一度複写に成功した技能は100技能までストックでき、本人が消去するまで何度でも使用可能な凶悪な技能である。しかしその凶悪な技能もモブでは使いこなせていないのが現状で、【複写】を使いこなせばモブこそが最強になれるかもと栗田教授は密かに期待している。

岩堀香澄(いわほり かすみ)
164cm 54kg 33歳 85D⇒87D、62⇒60⇒64、88⇒87⇒90(香澄はここ数か月の様々な出来事から、ストレスや急激な環境変化によりスタイルに変化がありました。)

賞金額:新規エントリーに付き1000万円からのオークションスタート

大手住宅メーカー平安住宅の賃貸部門に勤務していたが、紆余曲折を経て宮川コーポレーションに席を置くに至る。
夫である浩二とは離婚しており、息子である誠の親権は香澄が持っている。

産後下半身などがふくよかになってきていることを気にしており、プロポーションを維持するトレーニングを日々密かに行っている努力家な一面を持ち合わせているが、当人が気にしているほど太ってはおらず、むしろ均整の取れたプロポーションで20代半ばと言っても十分通用するメガネ美人。

真面目でお堅い性格ながら、諸事情により平安住宅時代に部下である水島喜八と大原良助と肉体的関係を持ってしまっている。
前者はレイプで後者は香澄が誘った形である。

宮川コーポレーションに所属する神田川真理の人体実験を経て能力に開花。【事象拒絶】という交渉術と【肉体強化】、さらには竹刀や木刀、真剣を持った時のみに発動する更なる肉体強化技、剣聖千原奈津紀が刀を振るう際に発動している【剣気隆盛】を香澄も発現できるようになっている。

剣道四段の腕前で、真剣は天然理心流。

宮コーへの転職は、部長職での抜擢をされており仕事への関西支社長である宮川佐恵子の信頼も厚い。また、能力者としての遅すぎる開花にもかかわらず、センスがありそうなことで戦力として期待されてもいるが、そのことが袁揚仁の運営する変態サイトの「プロ変態」たちに目を付けられることになるとは今は知る由もない。


筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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