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第10章  賞金を賭けられた美女たち 28話 大石穂香の技と力

第10章  賞金を賭けられた美女たち 28話 大石穂香の技と力

廊下の突き当りには金属製の扉があり、その横には黒いロングコートを羽織った男が、壁にせを預け、スマートフォンをいじっている。

廊下の角で息をひそめ、様子を伺っている香織と穂香に気づいている様子はなさそうだ。

「ここまで接近しても我らに気づけないとは・・そこまでの使い手ではないかもしれません。ですが、油断は禁物です。くっ・・もう一人は室内にいるようです。奈津紀の気配も・・・。できれば一瞬で敵を無力化させたいものです。・・・穂香?準備はいいですか?外にいるあの男は私が射貫くことにしましょうか」

小声でそう言う香織は、室内にいるもう一人の男が奈津紀にしていることがはっきり分かってしまったため、怒りで眉間にしわを寄せ鋭い口調になってしまっていた。

そんな香織を、穂香はにっこりした表情を浮かべると手で制して口を開いた。

「そだね~。かおりんの言うとおり、たいしたことないのかも~。でも、かおりん疲れてるみたいだし、穂香が二人ともやっちゃうよ~」

怒りに任せて備前長船長光をスラリと抜き、弓形状に変形させようとしていた香織を横目に、穂香はのんびりとした口調でそう言いつつ、廊下の角から敵の目の前に無造作に姿を晒したのだ。

「ほのっ・・」

香織は制止しかけたが、もう遅い。

穂香は廊下のど真ん中に行くと、廊下の突き当りにいる男の方へと歩き出したのだ。

170cmほどで、女性にしては長身。

均整の取れた女性らしいスタイルを、フォーマルなタイトスカートスーツで包み、ジャケットから覗く白いブラウスには緑色の細いタイが絞められている。

やや明るい髪はソバージュで肩ほどまであり、一見すると容姿は人懐っこさを感じさせる牧歌的な美人でありながらも、歩き方はモデルのように流麗である。

穂香を知る人は、その人懐っこい笑顔が相手にはまったく為にならないものであることを知っているが、目の前の黑ロングコート男は穂香のことなど知らない。

突然、愛想の良さそうな美女が歩んでくる様子に、やや表情が明るくなってしまっている始末ですらある。

「お?なんだ?どっからはいってきたんだ?」

スマホから顔をあげ、黑ロングコート男は、突如現れた美女に、すこし声のトーンをあげて問いかけた。

ありえないことだが、近所に住む美人OLが帰宅途中にうっかり迷い込んだのか?と一瞬思ったが、スーツ姿の女にはあるまじきモノが、腰に佩かれているのを見て黑ロングコート男の表情に緊張が走る。

「高嶺か?!」

黑ロングコートの声が、一気に強い焦りと警戒をはらむ。

離れてその様子を見ていた前迫香織には、黑コート男が誰何したその「穂香の形」をしたものに、すでに穂香の気配がないのを感じ取っていた。

だが、黑コート男にはいまだその変化は感じ取れている様子はない。

次の瞬間、黒ロングコート男は、再び目を見開き、後ずさりをして恐懼した。

「っ?!」

突然目の前にもう一人穂香が現れたからだ。

軽やかに宙に舞い、すでに抜かれた蒼く煌めく刃、穂香は普段の笑みを浮かべたまま、葵紋越前康継を両手で握り、振りかぶっていたのだ。

すでに、袈裟掛け斬りを放つべく構えた穂香は、普段の表情で浮かべている笑みと同様である。

牧歌的でのどかな笑顔。

しかし、その笑顔と行動のギャップに黑コートの男は、頭で処理できずにフリーズしてしまっているのだ。

30mほど先にいる女と、同じ姿の女が、目の前で刀を振りかぶっているのである。

遠くにいる女を見て、目の前で振りかぶっている女の目に、視線を戻した時、女がしゃべった。

「一人目~」

牧歌的な笑顔のまま、蒼く煌めく死の一閃を、今まさに振りおろそうとしている女から、のどかな声が聞こえる。

黑ロングコート男は、状況を理解できていない表情で、口を「え?」の形にするのがやっとだった。

「ぐあっ!」

直後悲鳴を上げる。

黑ロングコートは、その悲鳴が自分の口から出たことに、すぐには気づけなかった。

左肩口から、右の骨盤上部までに灼熱を感じさせる痛みが走り抜ける。

「ん~?」

穂香は、腑に落ちないといった表情と口調で、そう口を尖らせたものの、表情を変えず連続で刀を縦横に閃かせて、黒コート男を五回立て続けに斬りつける。

「ぎゃああああ!」

黑コート男はあまりの痛みに絶叫をする。

「なにこれ~?!・・あはははっ!」

穂香は、目の前にいる黑コート男がなぜか絶命しないことを不審に思ったものの、斬撃がある程度ダメージとして通っていることがわかり、愉快そうに声をあげて刀を振るいだした。

黑コート男は、穂香の斬撃を浴びながらも、何とか殴打で応戦してくるが、それらは穂香になんなく躱されてしまう。

「穂香!何らかの能力ですよ!」

「わかってるよ~、かおりん。きっとダメージをどっかに分散させてるんだと思う~。でも、効いてるみたい。何回も斬ってたら死ぬんじゃないかな~?これ面白いね~」

斬られてもすぐには死なない黑コート男は、穂香にむかってがむしゃらに拳や足を振り回すが、当てるどころか、卓越した剣士である穂香の斬撃を鈍らせることすらできない。

穂香の斬撃で絶命しない黑コート男の能力を警戒した香織だったが、穂香は普段の表情をややサディスティックな笑みに変えただけで、振り返らないまま香織に返事を返して、刀を振るい続けている。

「おもしろ~い!たっぷり楽しみたいタイプの人なんだね~?男の人って大抵みんなすぐ果てちゃうからさ~。君、穂香と相性いいかもぉ~」

「ぎゃあああああああ!」

右に左に袈裟懸け唐竹割と、ずたずたに切り刻まれている黑コート男だが、絶叫をあげ、なんとか穂香の太刀筋を避けようとしている。

「・・どういう能力なの?」

嬉々として黑コート男に斬撃を浴びせ続けている穂香と、ずたずたに切り刻まれながらも絶命しない黑コートを見比べ、香織は【見】で注視してオーラの流れを読み取る。

(なるほど・・。受けたダメージのほとんどがどこかに散逸している・・。どこかの身代わりとなる依り代か何かにダメージを軽減させる能力ですか・・。だとすれば、どこに・・・?ですが本人にとっても悲惨ですね。相手が悪すぎます・・よりによって穂香とは・・。穂香ほどの格上相手には、長い時間サンドバックにされる能力でしかありません。しかし・・部屋の中にいるもう一人の者の能力はまだわかりません・・・。それにしても、こちらの様子にようやく気付きましたか・・・やっと奈津紀から離れましたね・・・ケダモノが・・・!)

「もう一人が来ますよ!穂香!」

香織は、楽しそうに刀を振るう穂香と、絶叫をあげつつ斬撃を浴び続けている黑コート男のオーラの流れを【見】で分析し、部屋内にいるもう一人の能力者の動きを察して、穂香に注意を促す。

「ありがとう、かおり~ん。でも、かおりんの【見】じゃなくても、この距離なら気配でわかるよ~」

穂香がそう言い終わると同時に、突き当りにある金属扉が勢いよく開いた。

香織より扉の近くにいた穂香は、すでに部屋内の男の動きは察知していたのだ。

なぜか死なない黑コート男をずたずたに斬り刻みながらも、穂香は、部屋から現れた背後の男の気配に反応する。

「【スティッキーバインド!】」

和柄ジャンパーを着た男が、穂香の背に向かって叫び両手を突き出した。

穂香の背に、オーラでできた網状のモノを飛ばしてきたのだ。

穂香は振り向いたものの避ける気配を見せず、嬉しそうな表情のまま両手をやや広げ、その網を全身で受けた。

「あは~。ネバネバだぁ~」

「よし!佐倉!今だ!こいつはもう動けない!やっちまえ!」

和柄ジャンパー男は、顔を赤らめ恍惚な笑みを浮かべて技を受けた女を訝しがったものの、両手から発したオーラによる網を引いて、穂香の動きを完全に拘束して黑ロングコートをけしかけるように怒鳴った。

佐倉と呼ばれた黑コートの男も、その声に、ふらつかせていた足に踏ん張りを利かせて、痛みを耐えて穂香の背に向けて殴りかかる。

「バカめ!それにかかったらもうおしまいだ。今度はお前がサンドバックになる番だぜ?!」

黑コート男は下卑た笑みを顔に張り付かせ、唾を飛ばしながら口汚く穂香を罵った。

しかし、穂香がピンチに陥った様子を、少し離れてみていた前迫香織の表情に焦りはない。

何故なら高嶺最高剣士の一人、六刃仙大石穂香の剣技の高さと、能力はある程度知っているからだ。

大石穂香は頭のネジが緩く、ド天然で、一人だと任務もろくにこなせないが天才である。

六刃仙に選ばれた時点で、剣技は絶技の域に達している。

それにくわえ、大石穂香の能力は幻術。

催眠などの類ではなく、自身や剣筋の幻覚を見せるのだ。

刹那の判断が要求される近接戦闘において、すでに絶技の域に達している剣士が、幻覚まで使ってくるのである。

オーラの網で絡めとられ、拘束されて動けない恍惚の表情の穂香の背中に、黑コート男の拳が直撃する。

そう見えるだろう。

しかし前迫香織は、その「穂香」に気配がすでにないことがわかっていた。

(速い。奈津紀や沙織並みだわ。それでいて、この正確な術の発動・・)

香織は、同僚の剣士の技量を素直に感心する。

拳が背中に当たる瞬間、「穂香」の姿がかき消えた。

手ごたえを感じなかった黑コートが驚愕の表情のまま、拳を振り抜きたたらを踏む。

そして空振りの勢いを殺しきれず、黑コート男は和柄ジャンバーが発した【スティッキーバインド】なる網に突っ込み、もつれながら床に突っ伏した。

「くそっ!?なんだ?!ちくしょう!俺がかかっちまったじゃないか!」

黑コート男は味方の能力に絡まってしまったのだ。

能力で絡めとっていた女が急に消えてしまい、訳が分からないという表情だった和柄ジャンバーの左肩に、形のいい顎をのせた穂香が、いたずらっぽい口調で言う。

「誰が動けないの~?その人のことかな~?それとも君のことかな~?」

恐懼し固まった和柄ジャンパーの耳に「ふっ」と息を吹きかけたのと同時だった。

ずぶぅ!

「ぐあっ!?」

痛みで我に返った和柄ジャンパーが、右わき腹に走った痛みで悲鳴を上げ、膝を折りそうになる。

穂香は、刃を平に倒して腎臓の一つを貫いていたのだ。

「男って刺したことはあるだろうけど~。刺されることってあんまりないでしょ~?きもちいい~?」

そう言うと穂香は、痛みで膝から崩れ落ちそうになる和柄ジャンパー男を、刺した刀をぐいと持ち上げてから刀を引き抜き、刃の方向を変えて再び突き刺した。

ぐすぅ!!

「ぐっ?!ぎゃああああああああああああ!・・・・」

和柄ジャンパーの絶叫が廊下に響き渡る。

「あはっ。きもちよさそう~。・・・・君、さっきまで気持ちいいことしてたでしょ~?穂香、匂いでわかるんだから~。でもね~、あんまりおイタがすぎると~ひどいんだよ~?」

穂香は叫ぶ和柄ジャンパーの表情を肩口から覗き込む。

「な・・なんで?ぐぅ!!」

和柄ジャンパーは、粘着性を持たせたオーラの網で、張慈円に消耗させられた奈津紀の身体を拘束し、黑コート男と交代で奈津紀の身体を追い詰めむさぼっていたのだ。

「穂香も見たかったな~・・・」

そう小声で言うと、穂香は残念そうに微笑んだ。

そして次の瞬間、穂香は刺したままの刀身を回転させる。

ぐぎゅぅ!

「ぐぎゃあああああああ!」」

和柄ジャンパーは、これまで以上に大きな絶叫をあげる。

永遠に続くかと思われた和柄ジャンパーの悲鳴であったが、しだいに絶叫が小さくなっていき、最後は口から血を垂らし、僅かにうめいて静かになってしまった。

「死んだ?ん~でも脈あるね。気を失っちゃったの~?まだ楽しみたかったのに~・・・早漏なんだから~。そっちの彼はもっと頑張ってくれたのにね~」

穂香は、刃から和柄ジャンパーの脈があることを確認して、生きていることがわかると、まだ刃でえぐったり、抜き差ししてみる。

しかし、それでも和柄ジャンパーは、僅かにうめくだけでほとんど動かなくなったことに、つまらなそうにため息をついた。

そして、気を失いぐったりとした和柄ジャンパーの背を踏むようにして、刀を抜きつつ、和柄ジャンパーが着ていた服で、刀身に付着した血をぬぐい取った。

「ふぅん。そのネバネバ・・気を失ったのに能力消えないんだね~。めずらし~・・・そっちの彼、まだネバネバにからまってるし~。」

血だまりに倒れ伏した瀕死の和柄ジャンパーの隣で、白濁したネバネバの網に絡まったまま、怯えの色に濁った眼で見上げてくる黑コート男を見て穂香は呟いた。

「う~ん・・。二人もいたんだからもう少し楽しませててもいいのに~」

致命傷を負い、床に倒れ伏してかろうじて呼吸をしている和柄ジャンパーと、穂香の斬撃を数十太刀受けたダメージで、脂汗をかき和柄ジャンパーの能力のネバネバに絡まって、床に這いつくばっている黑コートを見下ろしながら穂香は不満そうに口をとがらせる。

そして、まだ動けそうな黑コート男に、やや蒼く輝く葵紋越前康継を喉元に突き付けて、笑顔で振り向いた。

「かおり~ん。おわっちゃったよ。もう殺しちゃう~?」

マフィアの能力者二人を一瞬で無力化させた穂香は、普段通りの口調と表情で香織に向って物騒なことをさらっと大声で聞いてきた。

(まったく・・怖い子。でもさすがね)

心中でそう呟いた香織は駆け出す。

香織は、倒れた二人と穂香の間を通り過ぎ、【見】を展開したまま警戒して部屋に急いで入っていく。

千原奈津紀の現状を詳しく知るのは、味方の中では【見】の使える香織だけで、先ほど張慈円に激しく凌辱されたのを知っているのも香織だけである。

奈津紀の今のオーラは乏しく、精神的にもずいぶん摩耗していることが香織には伝わってきていたのだ。

今しがたも、和柄ジャンパーの男と奈津紀の気配はほとんど密着していたのを【見】で認識している。

(味方といえども・・、今の姿はできるだけ人には見られたくないはず・・。奈津紀・・・こんな弱弱しい奈津紀のオーラなんて今まで見たことが無いわ・・・。悔しかったでしょう。でももう終わりよ)

奈津紀と張慈円のプレイを、袁揚仁に疑似体験させられていた香織には、奈津紀の憔悴がよくわかった。

自分は幻覚だったとわかったからこそ、まだ自分を維持できている。

しかし奈津紀は、張慈円に騙され凌辱されたうえ、今もハイエナとハゲタカに不自由な恰好のまま啄まれていたのだ。

香織は、それが【見】を通してわかったとき、和柄ジャンパーと黑コート男の二人は、情報を聞き出し次第殺すと決めていた。

「穂香はその人たちから、御屋形様や張慈円の居場所を聞き出してくれないかしら?穂香、尋問するの得意でしょう?・・聞き出したら私たちが出てくるのを待たなくていいから殺してしまってください」

香織は口早にそう言うと、香織にとっては短かすぎる薄青い患者衣を片手で押さえ、急いで部屋へと入っていく。

「は~い。いってらっしゃ~い」

穂香は笑顔で返事を返すと、香織の背から、床に倒れた二人に視線を落とした。

和柄ジャンパーは気を失っているので、香織のセリフは聞けなかったが、黑コート男のほうは、恐怖で顔を引きつらせている。

「聞いたとおり~。正直に言わないと苦しんで死ぬことになるよ~?御屋形様と張慈円はどこ~?」

「し、知らない!本当に知らないんだ!」

ずぶぅ!

そう答えた黑コート男の眉間に、葵紋越前康継の切っ先が刺さり後頭部から貫通する。

「うがっ!あがががっ!やめてくれ!本当に知らないんだ!」

「ふぅん~。知らなかったら死ぬしかないよね~」

穂香はそう言うと、突き刺した刃の剣先が黑コート男の顎に達するまで一気に引き下げる。

「ぐわあああああああ!」

黑コート男の悲鳴がこだまするが、黑コート男は自身で展開している能力で簡単には死ねないようである。

刀身が走って斬り裂いた箇所も、一瞬で傷がふさがっていく。

ただ、痛みを完全に除去はできない能力であった。

「君、すごいね~」

穂香は普段の笑顔のままそう言うと、本心からそう呟く。

「でも、言ってくれないなら~、とりあえずお友達には死んでもらおっかな~。こっちの彼は、どうもダメージ普通にはいるみたいだから~、すぐ死んじゃうだろうしね~」

穂香はそう言うと、意識のない和柄ジャンパーの方へと視線を向けた。

そして、黑コートの男からは見えないようすると、ふっと表情を寂しげなモノに変えた。

香織は、奈津紀が受けた屈辱を、できるだけ誰にも悟られないようにしていたのだが、穂香には感づいていたのだ。

穂香は間近で、この二人と戦った為、僅かに男性のソレの臭いに気が付いていたのだった。

奥の部屋には奈津紀がいると香織は言っていた。

そして、香織は穂香を残し、一人で奥の部屋に入っていたため、穂香は自分の推測を確信したのであった。

「・・・かおりん、きっと今は、なっちゃんとナイショ話だよね~。なっちゃんも、こんな三下にやられちゃうなんて、六刃仙筆頭剣士としては汚点でしかないもんね~」

穂香はそう小声でつぶやくと、黑コート男の方に向き直ってしゃがみ込み、再び刃を喉に突き刺した。

「ごはっ!・・がはっ!?」

和柄ジャンパーの方を攻撃すると思っていた黑コート男は、再び突き刺され驚いた。

「君たちみたいな三下が~。穂香より先になっちゃんの泣き顔を見ただなんて許せないな~。あっちの彼は、あれ以上したら死んじゃいそうだし~、もう少し君に聞こうかな~」

自分の能力で簡単に死ねない黑コート男は、和柄ジャンパーのネバネバの能力でまともに動けないまま、穂香に甚振られ出す。

ド天然で、任務の内容すら忘れてしまうマイペースな穂香であったが、男女分け隔てなくサディスティックな性癖をもっているのだ。

ただ御屋形様だけは例外で、畏怖と尊敬の対象としてみているが、穂香にとって、六刃仙に名を連ねる同僚は、性癖の範疇であり例外ではない。

もちろん穂香にも、高嶺に属する者として六刃仙は味方という認識はあり、力づくという手段で行為に及ぼうとすれば、敬愛する御屋形様の逆鱗に触れることもなんとなくわかっているから行動に移せずにいるのだ。

「む~。許せない・・。こんな三下が~・・・。」

穂香が黑コート男の喉を、何度目かにそう言って刺した時、黑コート男が口を開いた。

「ごぼっ!・・言う!ごぼっ!・・言うから!とりあえず・・・!ぬ、抜いてくれ。がはっ!・・こんなに・・・喉を刺されてたらまともにしゃべれない!げほっげほっ!・・言ってから能力解除するから、頼む!」

黑コート男の懇願に、穂香は素直に刀を抜いてやる。

「ほら、どこ~?言っちゃって~。でも穂香言われてもどこかわかんないから、ちゃんとわかるように言ってよ~?」

穂香がしゃがみこんだままそう言うと、黑コート男は、僅かに意識が戻った和柄ジャンパー男と目を合わせた。

「ん。こっちの人も気が付いたみたいだね。言えば楽に殺してあげるよ~?」

穂香がそう言った時、黑コート男が息も絶え絶えながら、懇願した。

「能力を解除するから、待ってくれ・・。そうしたら楽に死ねる。この技能は、そいつと二人で発動させてるんだ。そいつの手をつかませてくれ。そいつが死んでしまうと、解除できなくなるのかもしれない」

黑コート男は、穂香の機嫌を伺うような表情で怯えて頼みこんでくる。

「いいよ~」

穂香は、その言葉に普段の笑顔を浮かべた表情のまま応えた。

「恩に着る・・」

そう言うと黑コート男は、和柄ジャンパーがのばしてきている手を掴んだ。

穂香は、その時の黑コート男の雰囲気が微妙に変わったのを見逃さなかった。

穂香は直感に従い、考えるよりも早く刀を振るっていた。

神速の一閃となった葵紋越前康継が、黑コート男の脳天へと突きたたる。

「ぐああああああああ!」

黑コート男絶叫がこだました。

しかし、絶叫を迸らせながらも黑コート男は勝ち誇ったかのように口角を上げた。

笑ったのだ。

「【ゲート】!」

和柄ジャンパーの手を握ったまま、黑コート男はそう言ったのだ。

その瞬間、二人の男の姿は一瞬にしてかき消える。

一瞬だった。

今さっきまで、倒れていた二人の男の姿はそこにはもうない。

穂香が刀身に感じていた頭蓋の感触すらも、なくなっていた。

「あ~!うそ!うそ!そんな~!」

穂香は慌てた。

両手で頭を抱えてわたわたと周囲を見回す。

先ほどまで黑コート男たちが倒れていた場所には、白濁したネバネバのオーラ上のモノと、和柄ジャンパーが残した血だまりしかない。

穂香は、今日初めてうろたえた表情になり、うろうろと動き回って、ぐるぐると身体を回転させた。

そして刀を周囲にぶんぶんと振ってから口を真一文字にして泣きそうな表情になってから、大声で叫ぶ。

「あ~!やられちゃった~!にげられちゃったよぉ~~~!!!」

薄暗い廊下の照明の下、穂香は天を仰いで、大声をあげて嘆いたのであった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 28話 大石穂香の技と力 終わり】29話へ続く

第10章  賞金を賭けられた美女たち 29話 まあまあの女

第10章  賞金を賭けられた美女たち 29話 まあまあの女


まっすぐと男の目を見ることができない。

それどころか目を開けてすらいられない。

目を開けるのが怖いのだ。

こんなことは初めてであった。

アーマースーツ越しに柔らかな絨毯な感触が背中に伝わってくるも、自分の汗が冷えて、不快感しか感じない。

目を開くと自身が展開している能力で先が見えてしまう。

自分にとって都合のいい未来が見えるかもしれないが、今の状況だとその可能性は低い。

だからこそ、真理は目を開くことができずにいるのだ。

真理は、能力ではなく想像で、蜘蛛の毒で干乾びて死ぬ自分を思い浮かべてしまい、慌ててそれを振り払い、更にぎゅっと目を閉じる。

【未来予知】を解除すればいいのだが、いま身体の自由を奪っている忍者男の感覚は鋭敏である。

真理の肩口は忍者男の膝で抑えられ、その指は首にあてがわれている。

生身で触れられているため、些細な動きも、僅かなオーラの流動ですら忍者男に察知されてしまうかもしれない。

(いま能力を解除したり、防御しようとオーラを動かせば敵対行動だと判断されるかもしれないわ)

真理は今、仰向けで目を瞑り、両腕をできるだけ広く開いて、手のひらは抵抗の意思がないことを示すため開いて見せている。

そして敵である男の身体の下で、自らの呼吸をできるだけ整えようと、意識するでもなくアーマースーツの胸部分を緩やかに上下させ、ふくよかな胸をアピールしてしまっていた。

そうしている時間が長く経過したように真理は感じていたが、実際は数秒である。

真理は先ほど降参の意思を伝えた。

今も抑えつけられた恰好ながらも、忍者男に対して、可能な限り抵抗の意思がないことを見せている。

忍者男の判断を待つ以外にないのだ。

できるだけゆっくりと息を吐き呼吸を整えようとするも、緊張から心臓は早鐘のように速い。

おそらく、忍者男には脈の速さも知られてしまっているだろう。

無抵抗の意思を示した真理に、もはやこれ以上できることはない。

しかし、真理は目を閉じているとはいえ忍者男の殺気が些かも小さくなっていないことを感じ取っていた。

その殺気が衰える様子はなさそうである。

真理は、強張り僅かに震えていた全身から力が抜けていくのを感じた。

(・・・おわり・・かしら。・・・あっけないものね。こういうときって)

真理の気持ちは妙に落ち着いてきたのだ。

真理はこれが諦めの心境なのかと思い至る。

真理は目を閉じたままであったが、これから起こりうることを受け入れようと、普段の菩薩の微笑になった。

(・・・最後だって言うのに走馬燈っていうのもないし、気の利いたセリフって思い浮かばないものね。・・・やるならはやくやってよ。こんな変な恰好した人に殺されるなんてね・・・。私としたことが・・ツイてないわ)

普段の真理らしく、菩薩の表情のまま、心中で毒舌を吐く。

その時、忍者男の懐から僅かだがメロディがこぼれだした。

能力者でないと聞き取れないほどの音量。

時代劇のテーマソングである。

その場違いなメロディにつられ真理はとっさに目を開けてしまう。

想像していた死の色。

赤色の世界か広がっていると思い、とっさに目を閉じようとしてしまいかけたが、眼前に広がる色は違っていた。

目の前では、軽くため息をついて、殺気のなくなった忍者男の姿が、さっきと変わらぬ姿でそこにある。

だが、殺気が無いにしても真理を拘束している忍者男の手からは力が抜けていない。

ただ、すでに忍者男の気配に殺気はなくなっているのは間違いない。

何故なら、真理の【未来予知】による死の色が消え去っていたのである。

「殺さない・・?なぜ・・?どうしたの?」

一気に安堵した真理は、目の前の忍者男にすら聞き取れないかもしれない小声で、独白ともとれるように問いかけた。

「仕事は終わりや。聞こえたやろ?今のは契約期間が終わったのを知らせるアラームやねん」

忍者男はそう言うと、真理から奪ったアトマイザーを二つともを、真理の手の届かない絨毯へと転がして答えた。

忍者男のそのセリフで、真理は先ほどかいていた汗とは別の種類の生暖かい汗がどっと全身から噴き出したの感じながら、大きく息を吐きだした。

「おわり・・なの?・・・おつかれさま。・・また今度何処かでかしら・・?」

真理はそう返し、忍者男が立ち上がってくれないかと様子を伺っていたが、忍者男は何故か真理の身体の上からどいてくれない。

「ど・・どうしたの?」

忍者男の様子を伺いながら問いかける。

忍者男は、仕事は終わったと言ったものの、いまだに真理の身体の上で、真理の自由を奪ったままなのだ。

「侵入者は始末するようにって言われてたんやが、あんたさっき言うたこと覚えてるか?助けてくれるんやったらなんでもする言うたな?」

忍者男はそう言って、真理を縛めたままである。

「そ、そうね。でも、もう仕事は終わったんでしょ?それに、私はまだ仕事中なの。そういうワケだから、そろそろどいてくれると嬉しいんだけど?」

訝しがりながらも真理は、忍者男の目を見ながら、菩薩の笑みをつくり慎重に問いかける。

「俺もあんたを殺すつもりで仕掛けたから、あんま言われへんのやけど、アンタもエグい毒物つこうて俺のこと殺そうとしたやろ?それにあんなこと言われたら、やらへん男なんておらへんと思わへんか?」

そう言うと忍者男は、頭巾の隙間から、真理の目を見つめてきた。

「え・・っと・・。でも、今私は仕事中だから、後日私を訪ねて来てくれないかしら・・?名乗ったでしょ?私、宮コーにいるわ」

「いや、待てへんな。嘘かもわからへんし、行っても罠があるかもしれん。それに、あんな怖い会社にそう何度もノコノコと出向くんは気が進まへんな」

「何度も・・?」

「あー・・・っと、この話は終わりや。結論。またへん。いまからや。OKやな?ていうてもアンタに拒否権はないんやけどな」

「ちょ・・ちょっと強引すぎない?」

真理は忍者男とのやり取りを交わしながら、油断なく【未来予知】を注視していた。

(危険はない・・。生命を脅かす色はない・・・。・・・でも・、こ・・これって・・この色は・・ほんとにやる気だわ・・・)

先ほど恐怖で飲み込んだ生唾とは違う意味合いで、真理はごくりと生唾を飲み込んだ。

死を意味する赤ではない。

致命傷などを負う可能性のある赤褐色でもない。

それよりも軽度の怪我を負う可能性のある黄褐でもない。

そのどの色とも違った色が視界に広がりだしたのだ。

(ほ・・ほんとに?ここで・・?・・ええええぇ!)

真理の心臓はドクンと跳ね上がり、下腹部の芯がきゅっと反応する。

女の部分を守るように膝と膝を合わせて足を動かしてしまう。

数秒先に起こることがわかってしまうがゆえに真理は、吐息を漏らさぬように下唇を噛んでしまった。

「んぅ・・」

しかし、完全には吐息を殺しきれていない。

自分が女の表情になってしまっているかもしれないと思ったが、漏れた吐息は女のそれであった。

(さっきは、蜘蛛の毒から逃れようと、とっさにそう言ったけど・・・この人・・本気で私のこと・・・あっ!)

忍者男の手がアーマースーツのファスナーを摘まむ。

「・・・わかったわ。抵抗しない・・・。でも私はまだ仕事があるの・・・。あまり時間はかからないのでお願いするわ・・」

出来るだけ平静を装いながらも覚悟を決めた真理だったが、その熱くなった声色は明らかに普段の真理の声色とは違っていた。

忍者男は殺気こそないものの、先ほどと同じ口調で答えた。

「さっきも言うたやろ?あんたは俺と対等に交渉できる立場やないねん。そやろ?」

ジィッ!

「っ・・!」

能力で、そうされることがわかっていても、声が出てしまう。

「ぅ・・」

これから何をされるのかが鮮明に頭に流れ込んでくるが故、声が漏れてしまう。

まずはファスナーが臍の下まで引き下げられ、汗にまみれた双丘がこぼれたのだ。

脈拍が再度上がり始め、真理は忍者男から目を逸らす。

(公麿ごめん!こ・・こんなっ!こんなことって・・)

真理は公麿に詫びずにはいられなかった。

真理は死ぬぐらいなら、それ以外の選択肢を迷いなく選ぶぐらいの合理的な考え方をする。

現に、さっきは死ぬのを回避できるなら、忍者男に貞操を奪われてもかまわないと思っていた。

犯されるのも覚悟していた。

しかしである。

真理が想像しているのとは、【未来予知】で伝えてくるイメージが違い過ぎるのだ。

それゆえに、真理は恋人である北王子公麿に謝ってしまったのである。

忍者男との戦闘では数秒先すらも覗かせてもらえなかったが、今はなぜか10分以上先も覗けてしまっていた。

(くっ・・こ・・こんなこと・・私が・・?)

未来を見てしまった真理の肌が粟立つ。

逸らせていた目を確かめるように忍者男に合わせる。

真理の目線からも、零れた白い双丘で尖った桃色の突起は、【未来予知】で見えているイメージをすでに期待し硬くなってしまっていた。

「お互いに少し楽しむだけや。あんたみたいなエリート女が、あんなセリフ言うたんや。男として据え膳喰わぬはなんとやらちゅうやろ?・・・妙な気起こすんやないで?出来たら仕事以外で殺しはしとうないんや。・・・あんたも期待しとるみたいやしな?」

忍者男はそう言って、真理の左の先端を摘まみ、やや強くひねったあと指で弾いた。

「んっ!」

不覚にも声をあげてしまう。

真理は【未来予知】を展開したままSEXをした経験はなかった。

10分ほど先の自分自身に起きる出来事に、半信半疑ながらも、いままで予知されてしまえば裏切られたことがないことを思い出す。

「・・・い、いいわ。それで命がたすかるのなら安いものだものね・・。でも、汚いのや痛いのとかキズが残るのはイヤよ・・?」

真理は覚悟をきめるも確認するようにそう言った。

「物分かりがようて助かるわ。日本に来て二人目や。初日の子は、二度とお目にかかれんぐらいの最っ高な上玉やったけど、あんたも・・まあまあってとこや。・・・幸先ええなあ。まぁ、あんたも妙な気起こせへんとおとなしいにしとったら、今までどんな男とのSEXよりも気持ちいい思いさせたるからな。またこれで、俺を思い出してオナる女が増えるんやと思うと、ええ気分や」

かなり失礼なことをしゃあしゃあという忍者男から殺気が消えたとはいえ、隙は無い。

ただ、真理はキレた。

(こ、このクソコスプレ野郎何言ってるのよ!わ、私がまあまあですってぇ!?・・・この私がまあまあですってええええ?!!このっ!こんなヤツが私をっ・・・!)

忍者男の戯言に対して、真理は心中で盛大に罵りだしたが、自分の能力の精度を、真理はよく知っている。

相手の力量によって、見通せる先は違ってくるが、予知できた範囲での結果は絶対なのだ。

(このクソコスプレ忍者男を振り払って逃げるのは・・無理だわ!。高嶺弥佳子がどれだけ持つかわからないけど・・・。この男の相手をこの身で・・受けなければ・・死ぬ。・・・でも、私のことをまあまあだだなんて評価する男に抱かれるのがこんなに屈辱だなんて・・・・!・・・それに、【未来予知】が伝えてくるイメージ・・・!わたし・・こんなヤツに・・・!!)

真理が頭の中で、高速で思いを馳せている間にも、忍者男に肩口のアーマースーツを掴まれ、一気に腰まで引きずり降ろされてしまった。

「きゃっ!」

「おっ、女らしい声出すやないかい。宮コーのエリートさん。秘書主任言うたら超エリートさんやなぁ?神田川真理さん?あんま好みやないんやけど、しっかり刻ましてもらうで?あんたもせっかくやし楽しんでや?」

(うっさい!なにほざいてるのよ!服脱がされて平然となんてしてられるわけないでしょ?!バッカじゃない?!何が好みじゃないよ!頭巾のせいで見えないけど、どうせあんたも大した顔じゃないんでしょうが!?顔に自信が無いんでしょ?!だからそんなコスプレして顔隠してるに違いないわ!このブ男!ブサイク!)

声に出さずに、真理は顔の見えない忍者男のことをブサイクと決めつけて罵りまくっていた。

しかし、手を出して抵抗すれば確実に死ぬことが【未来予知】で察知できてしまう。

そして、抵抗しなければ約7分後には、このクソコスプレ忍者ブサイク男に、今まで経験したことのない絶頂を味わされてしまうのが見えていた。

そして、その絶頂のあと能力で見通せる時間の限界まで続いているのだ。

(そんなぁ・・。な・・なんで私がこんな目に・・・!でも、さっさと終わらせないと張慈円と戦ってる高嶺弥佳子もやられちゃうかもしれないわ・・・。それにこんな姿誰にも見られたくない・・!・・こうなったら、このクソコスプレ忍者ブサイク男が早漏であることを祈るのみよ!)

そして何より、真理の脳裏には、先日愛し合い始めた恋人の顔が浮かぶ。

しかし、選択の余地はない。

腕力で抵抗すれば死ぬのがわかっているのだ。

(ここは・・恥を忍んで・・さっさと終わらせるべきだわ・・)

「ふっ」

真理がそう覚悟を決めた時、頭巾の中から失笑が聞こえた。

アーマースーツを掴んだ忍者男の手が真理のくびれた腰に達した時、真理はアーマースーツを忍者男が引きずり下ろしやすいように、腰を浮かせてたからであった。

さっさと忍者男の欲求を解消してやらないと、真理自身も仕事に戻れず、おそらくオーラを封じられたまま張慈円と戦っている高嶺弥佳子の援護に向かいたいがための行動であったのだが、その行為を忍者男に笑われてしまったのである。

(こ・・この野郎がっ!こっちの気も知らないでっ!)

「・・は、恥ずかしいわ・・。優しくして・・ね?」

女のいじらしい表情と仕草でそう言って見せるが、真理の心境はいまだかつてないほど、複雑な感情で焼かれ口汚く罵っていた。

しかし、抵抗すれば忍者男が自分を簡単に屠ることがわかっている。

【未来予知】で予知してしまった結果は絶対である。

そうならないように行動や言動を選び、回避するのが利口である。

真理が嫌悪している目の前の、クソコスプレ忍者ブサイク男に、いままで味わったことのないレベルでの絶頂が与えられることも確実なのがわかってしまっている。

死と今まで味わったことのない甘美な絶頂が与えられるSEXの両方が見えているが故の真理の思惑が行動に出た結果なのであるが、真理は今までに感じたことのない屈辱に焼かれていた。

真理は、羞恥と怒りで顔を真っ赤に染めていた。

「こんなに照れて可愛えなあ」

(死ね!)

真理の両手は、忍者男の手からは開放されているが、腕は開いたままで、手のひらも無抵抗を示すため開いたままであった。

(この私が・・・この私がこんな目に・・・!せめて私のことを絶世の美人だとか言えば、ほんの数ミクロンでもレイプされるのにも納得できたかもしれないのに!・・・まあまあですってぇ!?)

だが、怒りに任せて腕を振るえば、忍者男になんなく防がれ、反撃として激しく頬を殴打されるのが能力で伝わってくる。

(くっそ・・くっそくっそ!)

だから腕は動かせない。

腕を動かさずに忍者男に無抵抗を貫けば、はしたなくも甘く屈辱にまみれた甘美な絶頂が待っているのが見える。

(こんなヤツに・・!)

そして、その絶頂の先は、波が鎮まることなく延々と続いているのだ。

(・・・公麿・・ごめん。私が・・あなた以外の男とこんなことになるなんて・・)

公麿と出会うまでに、数多の男をつまみ食いしてきた真理をして、忍者男とのSEXは過去のすべてを上回っている。

まだ愛撫行為が始まったばかりだが、【未来予知】を持つ真理にはそれがもうわかってしまう。

(ご・・めん・・。公麿以外と・・もうするつもりなんてもうなかったのにっ・・!しかも・・こいつは私のこと好きでも何でもない・・・!そこそこの女だから一応抱いておくか・・ってぐらいの感情しか持ってないっ!)

既に足首からアーマースーツは引き抜かれ、全裸にされてしまっていた。

「んあっ!くっ・・あうっ!」

真理は、ついに忍者男の反り返った男根に貫かれたのだ。

「うっ!・・はぁ!」

それだけで、軽く絶頂に達し、顎をのけぞらせ軽く痙攣している姿を晒してしまう。

忍者男からまた失笑が漏れるのが聞える。

(く・・くやしい!こ・・こんなことが・・!こんな男ので・・こんなにすぐ果てるなんてっ!)

真理は羞恥で顔を逸らし、自分の異常な感じ方に狼狽したが、忍者男はそんな真理のことなどお構いなしに行為を進めてゆく。

膝を持ち上げられ、正常位の格好にさせらる。

「やっ!やだっ!・・んんっ・・ああっ・う!」

やや腰を持ち上げられ、陰核の裏当たりを膣内で擦りあげるような動きに真理は、耐えられず嬌声をあげてしまった。

当然今までより深いところを抉られる。

【未来予知】でどうなってしまうか、既にわかっているだけに真理は狼狽えずにはいられない。

「ああっ!だ、だめっ!」

自ら誘った相手や、恋人ではない相手とのSEX。

力の差を見せつけられ、意思とは反して相手の顔色を窺わねばならないSEXは、真理にとっては初めての経験である。

そして真理は、【未来予知】で見えてしまっている。

自分がよがり狂う未来を。

自分のことを大して好いてもない男に、いいように逝かされてしまう未来を。

しかし、すでに自分自身の身に起きることが確実な行為に、鼓動を弾ませ、期待し、今までに無いぐらいはしたなく蜜を溢れさせてしまってもいる。

(私が・・私は・・神田川真理・・なのよ!こんな目にあうなんて!何かの間違い・・でしょ?!)

「いやっ!いやっ!ああっ!・・だめっ!・・いっ・・いっくぅ!ああっ!だめぇ!!いやぁ!!」

十数回のピストンであっけなく深い絶頂に押し上げられた真理は、忍者男の背中に手をまわした。

もはや服従を示すために両腕を開いていることもできない。

押し上げられたあまりにもの絶頂の深さに、快感を与えてくれた男に反射的に抱き着いてしまったのだ。

「おお、おお、もう逝ったんかいな?だいぶたまってたみたいやなあ?宮コーのエリート主任さん?神田川真理さんやっけ?名前も覚えたで?自分はしたないなあ。今日であったばっかりの名前も知らん男にこんなに抱き着いてきて。よっぽど欲求不満やったんやなあ。どうせ彼氏もおらへんか。おっても大した男やないんやろ?さっきまで戦ってた相手に犯されてソッコー逝くぐらいやからなぁ?」

忍者男が煽るセリフに、真理は言い返したかったが、再び上り詰めらされそれどころではなくなっていた。

そして真理は自身の能力で見ている未来と、現実とが重なり二重に快楽を貪り始めた。

そのため、忍者男のセリフが現実なのか未来のことなのか、よくわからないままおぼれ始めたのだった。




名門神田川家の一人娘として生まれた真理は、高校に入学してからはすぐに男性との経験もしていた。

真理の通う高校で頭が最もよく、女生徒から最も人気のあった生徒会役員の男子生徒を選び、真理から誘って行為に及んだのである。

宮コーに入社したのちも、宮コーの内外を問わず、真理の目に適った優秀な雄は、すべて味見してきた。

上司である宮川佐恵子のことを、ひそかに狙っている関西支社勤務の角谷道弘部長ですら、とっくに真理の毒牙にかかっている。

真理からすればSEXは火遊びである。

親友であり、上司でもある佐恵子の見合い相手など、将来上司の夫となる可能性のある男と関係を持ったりもした。

もちろん、佐恵子がその見合い相手に興味がないことを確認してからであったが、それでも十分スリルを味わえたのであった。

そういう背徳感で相当な興奮を得ることはでき、何度か誘惑し行為に及んだものの、そのうち自慰の方が感じてしまうようになった。

実際数多の男を経験した真理であったが、実際は真理を満足させてくれる男はいままででただの一人だけであったのだ。

普段の菩薩の笑顔の裏で、能力者であり、生まれつき性欲の強い真理を、唯一満足させてくれた男は、同じ能力者である北王子公麿だけであった。

真理は、SEXの時にいままで【未来予知】を使ったことはなかった。

行為事体がつまらなくなると思ったからだ。

それに、ホテルまでノコノコついてくる男の性技を、出会ったばかりの状態から見通せるほど真理の【未来予知】は遠くまで見通せない。

真理は菩薩の笑顔の裏に隠した旺盛な性欲を満たすため、真理の選別眼に適った雄をクジ感覚で摘まみ喰っていたのだ。

日本屈指の名門神田川家の令嬢、神田川真理が食った男は、宮コーに籍を置いてから実は100人を超えている。

そんな豊富過ぎる性経験を持った真理を満足させた男はほとんどおらず、真理を満足させることができた男は、つい先日恋人となった北王子公麿ただ一人だけであったのだ。

そして、神田川家の令嬢である真理が、そんな男漁りをしても周囲に気づかれていないのは、真理が【忘却】という技能を持っているからである。

性行為に及んだ男の記憶を、行為の時間を含め、行為の前後1時間ほど忘却させてしまう能力を持っているのだ。

だからこそ、立場もある神田川真理が自らの性欲を満たすべく奔放に振舞っても、誰も気づかなかったのである。

常時【感情感知】を発動させていた佐恵子でさえ、真理の火遊びに気づいていなかったのである。

単に佐恵子が、性経験に乏しく、知識も疎いためであるせいでもあるのだが、真理は周囲には品行方正の淑女とみられていた。

唯一野性的な勘と、人一倍以上の嗅覚を持つ加奈子だけが、真理の本性に気づいていたのである。

しかし加奈子は、真理をその件で問い詰めるようなことをしなかったし、真理自身も加奈子に気づかれていることはわかっていた。

そもそも加奈子からすれば、真理がどんな男と遊ぼうが、興味津々ではあるものの関係がないのだ。

いや、正直言うと加奈子自身も、真理が男漁りをすることには少しは思うところがあるにはあるが、真理は宮川佐恵子が率いる派閥の中では誰よりも仕事をこなしていたし、加奈子も認めたくはないが、加奈子よりも真理の方が、佐恵子の役に立っている人材だと認めていたからでもある。

加奈子は、親友であり同僚でもある真理の少々の趣味には目を瞑ることにしていたのであった。

そして、なによりあの真理が男性を誘ったとしても、相手に無理強いをしていないことも知っていた。

真理から誘うが、応じるのは常に男であることを知っていたのだ。

そして、行為に及んでも相手の記憶を消してしまうし、行為で真理自身が妊娠してしまったり、妻子のある男性には手を出さず、その家庭を破壊するようなヘマを、真理は絶対にしなかったのである。

そう言う意味では真理と加奈子は、お互いに非常に分かり合っている仲であったのだ。

しかしそんな経験豊富な真理でも、自分と匹敵するほどの能力者とSEXをした経験はほとんどなかった。

宮コー内部には男性能力者は少ないし、いても手を出すのが難しい相手ばかりであったからだ。

宮コーの幹部社員以外にも能力者はいるが、部長職以下の社員では、真理のオーラの量と比べると微々たるオーラしか持たない能力者しかいないのである。

関係を持った男の中では唯一、自身と近しい能力を持っていたのが、北王子公麿であっただけなのだ。

基本的に能力者同士のSEXは感度が跳ね上がる。

その事実を知らない真理は、北王子公麿だけが、唯一自分と相性が合う男性だと思っていた。

神田川真理は、それが思い込みであったことを、今イヤというほど味わっている最中であった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 29話 まあまあの女 終わり】30話に続く

第10章  賞金を賭けられた美女たち 30話 エリート秘書主任本気の絶頂

第10章  賞金を賭けられた美女たち 30話 エリート秘書主任本気の絶頂


「あんたなんか能力使うとるやろ?」

ふいに忍者男が口を開いた。

真理はというと、忍者男の身体の下になり全裸で組み敷かれており、身体の中まで侵入されている最中である。

「めちゃめちゃ感じながらでも、あんたがめっちゃ警戒して能力展開してんのはバレバレなんやで?」

忍者男のセリフに、真理は目を泳がさないようにするのがやっとであった。

ただでさえ喉奥から漏れ出そうになる女の声を、必死で我慢・・いや、全然我慢できていないのだが、真理は図星をつかれ、悔しそうに忍者男の目を見てしまう。

「図星ですって顔に書いてあんで?わかりやすいなぁ」

快感を送り込まれていない普段の真理であれば、忍者男に表情を読み取られることなど絶対にないのだが、今は違う。

「言うんや。どんな能力やねん」

頭巾の奥の目がすっと細くなる。

答えない・・・。という選択をしたときとそうでないときの未来が、真理の能力によって、映像としてイメージを送り込まれてくる。

答えないわけにはいかない。

「・・・・・能力・・使ってるわ。でもあなたに害はないから・・」

答えない場合のイメージを回避すべく、真理は能力の内容を伏せたまま応えた。

(いまさら意地を張っても仕方ないけど・・能力の種類まではできれば・・知られたくないわ)

真理は自分にそう言い聞かせながらも、挿入されたままの尋問という屈辱にまみれながら小さな声で答えた。

頤を掴まれ、恥辱から逸らしていた顔をぐいと正面に引き戻される。

「どんな能力やって聞いてるやろ?」

頤を掴んでいた忍者男の手が、真理の頬に伸び、そしてその指先が額まで達した時、その手全体がぼぅと青い光で包まれた。

青い光の能力の正体が、脳にイメージとして流れ込んでくる。

「!」

とっさに息を飲んでしまうが、忍者男の能力を考えると答えざるを得ない。

真理は慌てて口を開いた。

「み、未来予知よ!」

ずちゅ!

「あんっ!!」

展開している能力を白状した瞬間に、すでにはしたなく粘着質に湿らせてしまっている蜜壺は、男根の侵入に喜びの恥辱音を発し、真理の上の口からは嬌声が洩れだしてしまった。

「・・なるほど、それでさっきのあの動きか。俺の動きを先読みしとったってわけか。納得できたわ。神田川真理さん・・・。さすが宮コーの幹部社員ってところや。戦闘力はいまいちやねんけど、その能力もっとるんやったら、戦闘も普段も上手いこと立ち回れとるやろ?周りの人間の行動が先読みできるんやもんな?」

「あっ!あああっ!!え・・ええ!そう・よ!あん!能力を常時展開してぇ!んっ!・・はぁ!ん!・・立ち回って!・・るわ!う、うごかないで!」

ずちゅっ!ずちゅっ!

そう答えながら、肯定、否定した時のイメージ映像が脳に流れ込み、自分の股間からありえないはしたない音が出ているのが信じられずにいたが、今はとにかく考えがまとまらないほど気持ちがいい。

彼氏である画伯こと北王子公麿の得物も素晴らしいが、今股間にめり込ませられてるモノも、悔しいけど公麿のモノよりも少し大きくて圧迫感がある。

そして、敵地の中、得体のしれない敵、命乞いをして身体を開く屈辱、それらの状況が混ざり合い、真理の高いプライドをいまだかつてないほど刺激しているのだ。

抗えない力の持つ者に、身体を自由にされて女性自身を貫かれるという思いは、常人から考えれば十分超人レベルの真理には普段はありえない事で、それが嫌であろうが納得してなかろうが、普段は当たり前のように身体を重ねている伴侶や恋人以上に感じてしまうスパイスとなる事を経験豊富な真理も今日始めて知る。

「【未来予知】の発動器官は目か?どのぐらい先まで見えるんや?」

ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!

「あぐっ!ひぐぅ!」

「善がっとらんと応えんかい」

「はひぃ!め、目・・よ!・・!見える先はまちまち・・1秒の時もあるし20分ぐらい先がみえる・・・ときも・・でもだいたい20秒ぐらいさき・・まで!あああぁ!う、うごかないでくださいぃ!」

見下ろしてくる頭巾の中で、忍者男が失笑している雰囲気が伝わってくるが、真理の限界は近づいており、せっかく能力を展開していても、正常な判断ができなくなりかけていた。

しかもある意味能力者にとっては、自身の能力の詳細を自白させられているという行為は、普通の女性が性癖を暴露させられながら犯されているのと同じくらい屈辱で、真理の自尊心を男根でえぐり取る膣奥とシンクロしながら脳内の性感帯も深くえぐられていく。

「言えたから、ご褒美で一回逝かせてやるわ。楽に逝けるんはこれが最後やけどな」

ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!

「えっ!?・・ああ!だめっ!ああああああああ~!!っくぅ!いくぅ!!」

正常位というオーソドックスな体位で、快感で歪む顔を見下されながら、真理は再び劣情を迸らせる瞬間を男の目の前で披露し、がくがくと身体を喜びに打ち震えさせる。

「はははっ。いい逝きっぷりや」

身体を小刻みに震えさせ、ぜえぜえと胸を上下に揺らしている真理を見下し、忍者男は楽しそうに笑った。

「しかしあんた、すでに誰かに【逝き宣言】の呪詛は張り付けられてるみたいやな。『逝く』って言わへんと深い絶頂できんのやろ?それって、女にとったらけっこう地味に屈辱的な呪詛なんやけどな。反射的に言うてるから、そう言わへんと思いっきり逝からへんから、言う癖がついてしもうとる感じやな。・・『逝く』って言わんと逝ったら、あんま気持ちようないやろ?どや?」

快感で混濁した意識のなか、自分の呼吸と心臓の音でよく聞き取れないなか、真理は最愛の彼氏のことを思い出す。

(ま、、まさか。・・そう言われれば・・・。でも、そんな技能が・・?ひょっとして公麿に・・?)

望まぬ相手に与えられた絶頂の余韻におぼれながら、まさか最愛の彼にそのような呪詛を貼り付けられているわけがないと思い、公麿との行為を思い出す。

「まあ、能力持っとる男やったら、内緒で女にへばり付けとる奴だらけやろな。貼り付けられたら女はもうどうしようもあらへん。セックスだろうがオナニーだろうが、逝くときは逝くって言わんと深いオルガズムは味合われへんようになるんや。宮コーみたいな大企業で幹部職員やっとる神田川さんみたいなエリートさんはこんなゲスな能力知らへんかもしれんな。あんたみたいなエリート女は、男は機会さえあったら絶対何らかの呪詛へばりつけてくるはずやで?男はお高い女ほど、汚したくなる生き物やからな」


真理は困惑顔のまま忍者男の発言を頭の中で咀嚼しつつ、口を噤んだものの、公麿と初めてセックスした日以降、色々と心当たりがありまくりなことに、動揺してしまっていた。

「まあ、能力者に抱かれた女はほとんどなんかの呪詛つけられとるはずやから諦めたほうがかえってええで?もっとえぐいんいっぱいあるからな。特定の音聞いたら感じやすいくされるとか、これって決められたモノやないと逝けんようになるとか、顔の近くでVサインせんと深いオルガズム得れんようになるとかな」

(能力にそんな使い方が・・・。なんてくだらない力の使い方なの。男ってほんとに・・・!佐恵子が男嫌いだったのは能力でそういう部分を感じ取ってたからかしら?・・・そんな呪詛貼り付けられるほうはたまったもんじゃないわ・・!)

真理は忍者男に犯され快楽の波打ち際で翻弄されながらも、新たな能力の使い方に驚いていた。

「そや。俺も名刺代わりに一つ神田川さんに呪詛プレゼントしとこか」

「えっ!?ちょ・・!ダメよ!・・変なの張付けたら・・!あんっ!!」

忍者男は真理の非難の声を男根の一突きで黙らせると、腰の動きを再開させたのだった。

30分後――――

「あああっ!もうっ!またっ!」

「ほら言えや。もう俺が張り付けた呪詛が効いとるからな。どんなにしたって勝手に逝かれへんで?逝きたかったら・・・さっき教えたやろ?吐くんや。」

ずちゅっ!ずちゅっ!

忍者男にまたがり、全裸で豊満な乳房を揺らし、汗で湿った髪の毛が肌に張り付くのもかまわず、真理は騎乗位で腰を前後に激しく揺すっている。

「くぅ!ひぎぃ!・・そ・・そんなこと!あんっ!・・言えるわけが・・!」

既に真理は、【未来予知】、【治療】、【肉体強化】と自身が使える能力をすべて洗いざらい白状させられていたが、まだ尋問は続いていた。

「逝くっ!逝くぅ!!」

「はははっ。無駄や。言うてもだめやってさっき教えたやろ?【逝き宣言】は誰かに付けられつけられてるみたいやけど、重ね掛けしてやったからな。もう『逝く』だけ言うても、逝かれへんで?」

真理は屈辱のセリフを吐いて【逝き宣言】呪詛の発動条件を満たしたものの、忍者男に新たに付けられた【逝き許可】の発動条件を満たしていないのだ。

「はぁはぁ!こんなこと!・・・あんっ!もうぅ!いつまで・・なのよ!」

【未来予知】を盲目にするため、真理の目には目隠しがまかれている。

【治療】で忍者男から受けた怪我を治療するように言われ、すでに痛みで感じにくくなることはない。

【肉体強化】をすれば、敵対行動とみなし殺すと言われているため、肉体は強化できない。

その代わり、感覚の強化をするように言われていた。

ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!

「おっ・・ぐぅ!!はぁはぁ!くっ!!うううううう!!」

(か・・感じすぎちゃう!感覚だけ強化してたら感じすぎるう!・・こんな目に私が・・!でも、気持ちよくて・・止められない!逝けないのに・・!・・見られてるのに腰を動かしちゃう!・・でもっ!・・気持ちよすぎるのに逝けない!・・許可って言われたって・・!ぜんぜん許可してくれない!でも・・言えないわ!自分のことは言えても・・!)

忍者男の腰の上にまたがった真理は、激しく腰をグラインドさせ汗を振り散らし、なんとか自力で絶頂を貪ろうと、肌を朱色に染めて悶えていた。

「無駄や。あんたにはもう【逝き許可】の呪詛貼り付けてるんや。『逝く』って言うだけやったもう逝かれへん。許可がないとな。ここまで高ぶって逝かれへんのはつらいよなぁ?言うなら許可やるで?どや?たまらんやろ?魔眼の能力のことや。知っとるんやろ?」

「こんなことで・・!こんなことで佐恵子のことを売るわけにはいかないわ!」

「ほう。・・関西支社長って肩書もっとる西方面の責任者、宮川佐恵子やな。あの女があんたの直属の上司ってわけか」


真理は忍者男のセリフで自分の失言に気づき、はっとなって口を噤む。

そんな様子の真理を、忍者男は下から串刺しにして揺さぶり、快感の波を下げないように甚振りつつ、考えを巡らせていた。

(たしかあの女がそうやな・・こないだ俺が紅蓮と戦っとる時に間違うて蹴り飛ばしてもた女や。・・・あの程度なら魔眼使ってきたとしても、瞬殺できそうやが、長距離から【千里眼】と【真死の眼】のコンボ決められたら、いくら俺でも気づかんうちに即死や・・。ほかにも【傀儡】や【恐慌】なんて反則技があるって聞くしなぁ・・。うーむ・・、俺のパウダーも汎用性抜群やが、如何せん魔眼は射程が長すぎるねん。視界の届く範囲って卑怯すぎるやろ。くそチート一族どもめが・・!美佳帆さんはあのとき、あの女のこと味方って言うてたけど、身内同士で派閥争いしてるんの助っ人の依頼主ってだけやろしなぁ・・。あの問題児だらけの菊沢一味が、あんな恐ろしい組織相手にどれだけ立ち回れると思とるんやろか・・。みんな一筋縄でいかん人材って言えるが、どこかポンコツなんよなぁ・・。今後どうなるかまで分かっとるんやろか・・・?宮コー本社は美佳帆さん達を懐柔するつもりか、美佳帆さんらが、あのお嬢様と心中する気やったら、消しにかかる構えやで・・・。宮コーは巨大な多頭のバケモンや。傘下企業もアホみたいにでかいし、能力者だらけやもんなあ。宮川本体も双頭で、あの一人娘の派閥は小さいんやで美佳帆さん。知っとるんやろか?本社の社長派も本格的に動き出してきよるみたいやし。あんな小さい派閥に協力してたら無事で済むはずないで?・・・宏のアホは腕はたつんやが、情勢に詳しい無いちゅうか、美佳帆さんと仲間以外のことに興味ないからなぁ・・。すすんで蛇の巣に入るようなことしよってからに・・。しかし、運よく宮コーの秘書主任捕まえることができたんは幸運や。できるだけコイツから情報聞き出しとかんと)

忍者男こと神宮司三郎は、菊沢宏と同窓であり、菊一の面々とは顔見知りで、菊一メンバーからはジンと呼ばれている。

先日、コングというバーで稲垣加奈子をナンパし、ホテルへお持ち帰りしたのもこの男である。

加奈子にサブローと名乗った着流しの男が、この忍者ルックの変態能力者で、凄腕の傭兵なのだ。

ジンは、知らないこととは言え、自身が安否を気遣う菊一の面々が、身を置いている宮川コーポレーションの幹部の二人、宮川佐恵子の両腕ともいえる、神田川真理と稲垣加奈子の両方を抱いたことになる唯一の男になっていた。

同窓生が籍を置いている宮コーのことを、ジンは客観的な情報でしか判断していない。

表向きはクリーンな大企業だが、裏は政界財界を魔眼で支配し、無節操なコングロマリット形式でライバル会社を排する非情な能力者集団とみているのだ。

(宏はアホや言うても、あんな危ない組織に与する奴やとおもってなかったんやけどなぁ。美佳帆さんは・・・金でつられてしもたんやろか・・?あんな組織からは手を引かせたほうがええ。コイツにしっかり吐かせて、美佳帆さんに情報もっていって、うまいこと立ち回ってもらわんとな。三合会みたいな有名なマフィアですら宮コーに噛みつきだしたんや。宮コーは政界どころか、ヤクザやマフィアまでとことん排他しよるから、今はもう敵だらけや。美佳帆さんらを何とか、宮コーから抜けさせてやらんとえらいことになるで)

忍者男こと神宮司三郎は、頭巾の中でそう決意を新たにして、真理を執拗に尋問しだししたのだった。

そのせいで真理は、絶頂の寸前という状況で30分近く尋問されていた。

1度の軽い絶頂と、2度の絶頂のあと、【逝き許可】なる呪詛を施され、男の許可がないと逝けない身体にされているのだった。

なぜ忍者男が【魔眼】のことを聞くのかは知らないが、魔眼の能力は強力で範囲も広く、おまけに使う技能は個人差も多少あることから、多くの能力者にその能力の秘密は垂涎の情報とされており、その情報は高く売れるうえ、自分自身が魔眼と対峙したときに攻略の糸口となりえるのだ。

しかし、実際には宮川と、魔眼と事を構えるような者は、国内の能力者ではいないだろう。

少なくとも真理はそう思っていた。

たまに、能力に目覚めたばかりの勘違いな万能感に酔った野良能力者や、よっぽど世俗に疎い能力者が、宮コーに歯向かうことがあるぐらいである。

にもかかわらず、忍者男の口調はどこか宮川と対峙することも厭わない覚悟が読み取れるのだ。

「ええかげんに言えや。魔眼の能力や。まずは、即死技能の【真死の眼】と【感情感知】の発動条件と回避条件や」

(とにかくヤバいんは、魔眼の代表ともいえるその二つの技能やからな。魔眼の技能は眉唾な噂と思いたいが、事実あの一族の眼で何百人も殺されとる。あの高嶺ですら二条城事件で100人近く殺されとるって話や。・・・それに【感情感知】もヤバい。感情を感知されてもたら、裏切りはもちろん、敵対もできへん。疑わしきは罰するやないんや・・。確信を持って奴らは敵となりえる組織の者を、ためらいもなく殺したり操ったりしとる)

真理は、絶頂寸前で逝くに逝けず、静まらせてももらえずに下から快感を打ち込まれ続けている。

「あああっん!ああっ!!こんなことで口を割るわけっ・・!ないでしょ?!っん!!」

深い絶頂を立て続けに二度も味合わされてから、敏感になった局部への激しく責められているものの、強制的な寸止め。

真理を精神的に大いに追い詰めはしたが、快楽拷問などで菩薩が墜ちるはずがなかった。

「ずいぶん頑張るやないか。快感だけ溜めるだけ溜めて一生逝かれへんようにしてやってもええんやで?あんたも宮川に属してはおるんやろうけど、魔眼に怯えて従っとるだけなんやろ?!義理立てする必要なんてあらへん。吐いて気持ちようなったほうがええで?」

名門神田川家の令嬢として、宮川の力をよく知っている真理だからこそ、忍者男の宮川に対する敵対心らしきものが理解できなかった。

「あなたはなぜ宮川を?・・魔眼で大事な人でも殺されたのかしら・・?でも・・それでも私は、いわないわ!・・あんっ!・・魔眼の能力を知ったところで・・・あうぅう!・・・一人を封じたところで、宮川はゆるがないわよ。魔眼の能力者は一族の人たちはほとんど覚醒してる。だからあなた一人が抵抗しても無駄よ・・。それに世間的にも歴史的にも宮川がやってきたことは概ね間違いじゃないわ。・・そのために宮川が多くを殺してることは私も知ってる・・。でも・・・そうした方がそうしなかったときよりも確実にマシだったってことも私は知ってるの・・。怯えてなんかいないわ。私は納得して宮川に身を置いているのよ。・・宮川が何百年続いてると思ってるの?400年以上続いているのよ。・・宮川がいなければこの国はとっくにどこかの植民地だったのよ。最高の結果とはもちろん言えないけど、戦後北方領土だけで済んだのは、奇跡なのよ?少なくとも北海道までとられるはずだったんだから。それを政府の意向を覆して北海道で戦ったのは宮川の意思と力よ?さもなければ、ドイツのように資本主義国と社会主義国とに、南北で分けられてたでしょうね。・・いまも政界に働きかけてなきゃ、多くの離島が他国に占拠されちゃう。・・・それを放っておくわけにいかないでしょ?この国は政治家や大臣たちに、この国の害になる日本人のような名を名乗る日本人のふりをした外国人が大勢混ざってるのよ?・・宮川は、あなたみたいな一介の傭兵に、どうこう・・できる組織じゃないし、しちゃいけない。あなたが、宮川に害を与えるつもりなら・・私も命をかけるわ・・。・・・さっきは、あなたが一介の傭兵だと思ってみっともなく命乞いしたけど・・・宮川を・・佐恵子をどうこうしようとしてるのなら話は別よ」


全裸で騎乗位。

忍者男からの許可が出れば1分と経たずに果ててしまうほど、真理は高ぶっていたが、話しているうちに普段の口調になり、頭が冴えわたり始めたのだ。

忍者男の腰の動きが止まり、沈黙が続く。

暫く忍者男にまたがったまま真理は高ぶった快感と息を整えようとしていたが、ふいに真理の【未来予知】を封じるための目隠しが外された。

またがっている忍者男と目があう。

真理の目は、目隠しの下では先ほどまで快楽で桃色に濁っていたが、菩薩の表情とも違う凛とした目になっていた。

「あんたは宮川と心中する覚悟があるんやな・・・さよか。ようわかったで。そこまで言うならそれは尊重する。けどな・・こんな状況や。とりあえず、あんたにはすっきりしてもらおか」

忍者男のセリフに、真理はドキリとしたが、【未来予知】は予想とは違う未来を見せてきた。

「逝ってもええで」

ずちゅっ!ずちゅっ!

「きゃっ!?え?!・・ずっとダメだって言ってたのにどうし・・きゃあっ!!」

今まで真理ばかりが動くように言われていたのだが、忍者男が腰を使いだしたのだ。

がっちりと腰を掴まれ、こすれ合う部分から離れることができない。


男が感じる為ではなく、騎乗位の女を感じさせるための腰の動き。

最奥に刺さったまま、前後に激しく腰を揺すぶられる。

「あああっ!あんっ!なんでっ!なんで急に!?あっ!ああああっ!ああああっ!あっ?!あああんっ!!??」

「『逝く』は言わんと深く逝けへんからな。誰に貼り付けられたんか知らんけど、まあ、能力持っとる男やったら、抱いた女全員にへばり付けていってる基本的な技能や。女にとったら災難かもしれんけど、男にとったら最低限の挨拶みたいなもんや。あきらめや。ほら、せっかくやし思いっきり逝きたいやろ?『逝く』って言うて逝けや」

一気に絶頂まで上り詰めらされた真理だったが、なぜか逝けないことに戸惑うも、忍者男の指摘と、おそらく彼氏である公麿に貼り付けられた呪詛のことを言われて、脳からエンドルフィンが大量に分泌されて思考が偏り、深い絶頂を味わいたい欲求が、恥を上回る。

「逝くっ!逝くぅ!逝くわ!」

その瞬間、最愛の彼氏である公麿に内緒で張り付けられていた呪詛が条件を満たし、発動する。

子宮から脳天に掛けて電流が走ったかと思うと、寸止めで蓄積されていた快感のすべてが真理の全身を駆けのぼった。

「ああああああっ!?こんなのぉお!あがっ!!ぐっ!!!?ああああああっ!!」

「あんた声もでかいし、いい逝きっぷりや。身体もええ・・。美人やと言えるけど、俺にとったらあんまそそらん顔や。しかし、どんな女でも逝くときの顔はかわいいもんやな。・・・ん??」

身体の上でのけ反り、痙攣している真理の乳房を撫で、労わろうと三郎が真理の腰に手をまわした時、異様な気配に部屋の隅に渦巻き始めた。

「あんっ・・・・。えっ!」

真理も【未来予知】の能力によらずともその気配を察知し、三郎にまたがったまま、両手で胸を覆うようにしてかくして身を固くする。

経った今逝ったばかりで、余韻に浸る暇もなく、真理は身を固くする。

そんな真理を、三郎は素早く身体の上から降ろし、部屋の一角に渦巻き始めた気配を低い姿勢で、注視しだした。

三郎は、ばさりと後方の真理に、真理から剥ぎ取ったアーマースーツを投げてやった。

「な・・なに?なんなの?」

真理も、部屋の隅に渦巻き始めた初めて見る異様なオーラの歪みに目を見張る。

そして汗以外の体液に濡れた肢体を窮屈そうに、慌ててスーツに押し込みだした。

「ほう。転移技能か・・・レア中のレアやな・・俺も見るんははじめてや。・・って、おいおい、ずいぶん派手にやられとるやんか。俺らに用があるちゅうわけやのうて、逃げてきた・・ってわけやな」

三郎は感心するような声をあげたが、現れた二人の惨状を見てそう呟く。

気を失ってる和柄ジャンパーの男は腹部から背中まで貫通して失血がひどい。

そして、その和柄ジャンパーを肩で支えている男は、もとはロングコートだったのだろうが、ぼろぼろのマントのようになってしまっていた。

現れた二人は袁揚仁の部下の二人で、短い期間とはいえ袁揚仁に護衛として雇われていた三郎も見覚えのある顔であったのだ。

「あ、あんたか・・・・。高嶺の六刃仙どもが複数きてる。俺たちだけじゃとても防ぎ・・って、お前は神田川か?!これはどいういうことだ?!」

現れた男のうちの一人、黑コートのほうが三郎と、三郎の後ろでアーマースーツのファスナーを首筋まであげた真理に向って口を開いた。

「侵入者排除しようとしてたんやが、契約期間がおわってしもてな。運よく神田川さんは一命をとりとめたところや」

黑コート男こと、佐倉友蔵はそう言う三郎の後ろで、息も絶え絶えの神田川真理と目が合い、身構える。

「だがその女は2億越えの賞金首だぞ」

「ほー・・」

佐倉友蔵のセリフに、忍者男こと神宮司三郎は意外そうな声をあげて、背後の真理に顔を向ける。

すっかりアーマースーツに身体を押し込んで、肌は隠れているが、顔は上気し目は潤み、髪の毛は汗で頬に張り付いている。

つい先ほどまで、激しくSEXをしていた相手である真理を、三郎はマジマジと見つめていたが、三郎の好みからは微妙にずれているため、その賞金額が意外だと表情に現れていた。

真理は三郎の考えていることがわかり、何度も気をやり上気した顔を何とも言えない表情にしてから目を逸らす。

「ジンさん。あんた、神田川に勝てたんだろ?そのまま捕らえてくれ」

黑コートと和柄ジャンパーは、千原奈津紀を逃がさないように見張っていたのだが、高嶺の二人の剣士の襲撃を受け、奈津紀を奪われたうえ、本人らも命からがら【転移】で逃げてきたのである。

せっかく得た獲物を失い、自身らも高嶺の剣士に惨敗したまま逃げたのでは、立場がないのだろう。

そのため黑コートは、神田川を圧倒した様子の忍者男こと神宮司三郎に、神田川の捕獲を期待したのだ。

しかしである。

「悪いけど契約期間は終わりなんや。あんたら二人で頑張ったらええやん」

黑コートの依頼に三郎はつれない言葉をかえした。

黑コートは、先ほど大石穂香に斬られた傷の痛みに顔をしかめたが、その渋い表情は痛みだけではなかった。

しかし、三郎のセリフに黑コートだけでなく真理も、身を固くしていた。

(じょ・・じょうだんじゃないわ。連戦じゃないのよ・・。いろんな意味で連戦・・。相手もボロボロみたいだけど、私もボロボロなのよ。どんな能力者かわかんないけど、転移技能なんて使ってくる相手だなんて、気味が悪いわ・・・。それに賞金首・・?私が?何の話しなの・・・?)

「ほな。俺はいくで?神田川さん、時間がなかったから俺はすっきりしてへんけど、あんたはだいぶ満足できたやろ?あんたは、あんまり好みやないと思たんやけど、思とったよりよかったわ」

「なっ!・・」

現れた敵の前で、自分の女としての味を軽く評価する忍者男に、真理は抗議の声を上げかけたが、忍者男は先ほど戦闘で見せた目にも止まらない速さで、言葉だけを残しその場から消え去ったのであった。

【>第10章  賞金を賭けられた美女たち 30話 エリート秘書主任本気の絶頂 終わり】31話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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