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第8章 三つ巴 45話 橋元逝く・・そして炎上

【宮川コーポレーションメンバー】

現社長宮川誠派

緋村紅音(ひむら あかね)
145cm 45kg 31歳 80,54,82 65C
通称:紅蓮(チビ魔人、火遊び枕営業、赤ビッチ:稲垣加奈子が勝手に命名)
宮川コーポレーション本社勤務。宮川コーポレーション現社長宮川誠の側近兼愛人。
某アイドルグループの大島優子をさらに小柄にした容姿で、髪は艶のある美しい赤毛セミロング。
宮川コーポレーションが全国から能力者をかき集めだしたころに新卒入社した生れつきの能力者。
非常に強力な発火能力を有しており、発火能力のみならず肉体強化も並みの能力者以上の使い手で才能の塊。
能力の才能に恵まれているだけでなく、頭脳も明晰で有名国立大学を首席で卒業。
当時の周囲からの評価は、気は強く他を寄せ付けない近づき難さはあるが聡明で頼れる存在とのこと。
しかし、その聡明で整った顔の裏側では、自己顕示欲や物欲が強く渦巻いており、手段を選ばない非情さと、大胆な行動力を兼ね備えた怜悧狡猾で邪知深い人物である。
自己評価が高く、自身に副わない対応や待遇を不満に思っている。
実際に緋村紅音の能力値は平均的に非常に高く、そのためか能力の系統はまったく違う、よく似た能力値の2個下の後輩、一族という事で、組織から優遇されがちである宮川佐恵子のことを毛嫌いしている。
多様かつ極めて攻撃的な技能を複数保有している上に、中国拳法も独自で北派南派のいくつかをマスターしており、遠近隙の無い戦闘力を持つ。

丸岳 貴司(まるがく たかし)
191cm 85kg 31歳 15cm
通称:(オールバック、垂れ目筋肉:稲垣加奈子が勝手に命名)
宮川グループ傘下の丸岳家の御曹司。丸岳家は代々医者の家系。
例に漏れず丸岳貴司も医師免許を取得しており、宮川コーポレーションに籍を置いているが、丸岳家が運営する京都府の総合病院の理事も兼任している。
宮川グループが能力者の収集をし始めた第一次募集組と同じ入社。緋村紅音と中原はなとは同期だが、丸岳だけは入社試験を受けずに宮川参加企業の子息ということで縁故入社している。
黒髪長髪のオールバックで髪を後ろで一つに結っており、の江口洋介を垂れ目にして酷薄にした顔立ち。胸板は厚く、筋肉質な体躯の持ち主。
丸岳家の道場で幼少期より日本武術を鍛錬しており師範代の肩書も持っている上に能力者でもある。肉体強化系の能力を保有しているとされている。
普段からダーク色のスーツを着こなし知的な見た目通り冷静沈着で仕事も出来る。
社内では余裕のある態度と口調で過ごしているため、独身という事と、ミステリアスさを感じさせる雰囲気が意外と女性社員に人気が高い。
緋村紅音とよく行動を共にしているため、宮川誠派と目されている人物。

中原 はな(なかはら はな)
185cm 77kg 31歳 98,73,103 80C
通称:(イケメンレディビルダー:稲垣加奈子が勝手に命名)
宮川コーポレーション本社勤務。宮川佐恵子、神田川真理、稲垣加奈子の2個先輩で緋村紅音、丸岳貴司とは同期組。
容姿は渋く掘りの深いイケメン顔に可愛らしいサイドテールやツインテール、そして圧倒的な肉体の持ち主・・。幼少期より空手一筋で鍛え上げた鋼の肉体を持つ能力者。
趣味は筋トレと柔軟運動、そして相撲観戦という女性らしからぬ偏りぶりであるが、宮コーの変態異常者揃いの能力者の中では神田川真理と並ぶ双璧の常識人。
見た目のゴツさとは裏腹に、協調性を旨とする平和主義者な為、頼っている社員は多い。
お人好しな面があるため宮コー内部での派閥争いに、いつも巻き込まれているが、本人はどちらにも仲良くしてもらいたいと思っている。
好きな男性のタイプはジャーニーズ系のイケメンではなく角界の猛者で、浴衣を着て髷を結っている男性を見ると、すき油の匂いに引き寄せられるのかフラフラと近づいていく。
以前、中原はなの誘いで宮川佐恵子、稲垣加奈子、神田川真理が相撲観戦に行ったときに、1畳程度しかない枡席に4人で座っている様子が社内のブログに貼られているが、座っているはなの巨躯に3人が枡の隅に押しのけられている図で、その絵は、はなのボリュームを説明するときによく使われている。
能力は肉体強化しか保有していないと記録されているが、内緒の隠し持った能力があり、本人以外誰も知らない。

〇宮川コーポレーション調査部(元菊一探偵事務所)

菊沢宏(きくざわ ひろし)
172cm 61kg 35歳 15cm
通称:グラサン(三流ホスト、むっつりグラサン:稲垣加奈子が勝手に命名)
菊一探偵事務所元代表であり、菊沢美佳帆を妻に持つ。古流武術、芹沢流の免許皆伝者。
膨大な思念量と屈強な肉体の持ち主。普段からお堅いフォーマルな恰好を良しとせず、Tシャツにジャケット、スラックスで黒を基調にラフに着こなしている。容姿はGLAYのテル似ではあるが、普段は寡黙で表情をそう動かすことなない。
普段からトレードマークであるサングラスを愛用しているのは、魔眼とは異なるが能力解放時に目が赤く発光してしまうのを隠すためである。
美佳帆には芹沢流の扇子術のみを伝授した。【肉体活性】、【残り香】、【キルマインド】など多彩な力を持ち、指刀では指が名刀の如く切れ味と化すことができる。
学歴も高学歴ながら、同高校大学の先輩の妻、美佳帆には普段はアホ扱いをされているのは直情的な性格から子供っぽい一面を見せるためである。
高い戦闘能力と様々な経験から、多様な対応力を持っており、思慮深く女性には絶対に手をあげないなどフェミニストな面もある。しかし、口数が少なく言葉も使いも荒くなりがちなので、初対面の人には怖がられる時も多い。
宮川コーポレーションと橋元一味の抗争が激化していく中、自身や会社を守る為、能力者集めに執心している宮川佐恵子に、熱烈な懇請を受ける。
当初は乗り気でなかったものの、凶悪な能力者と対峙した際に仲間を自分だけでは守り切れないかもしれないという葛藤と、愛妻の菊沢美佳帆や宮川佐恵子に好意を持ちつつあった副所長の豊島哲司の後押しもあり、命令は受けないなど、いくつかの条件付きで宮川コーポレーションの社員となった。
現在は宮川コーポレーション関西支店調査部部長という肩書を持っている。上場企業の部長職になったが相変わらずスラックスにジャケット姿のスタイルを崩さず、菊沢美佳帆の頭痛の種になっている。

菊沢 美佳帆(きくざわ みかほ)
155cm 48kg 38歳 83,62,87 75C
通称:百聞の美佳帆、大蔵大臣(外ヅラ菩薩、熟女枠:稲垣加奈子が勝手に命名)
菊沢宏の妻で菊一探偵事務所の所長代行。菊沢宏や豊島哲司と同じ高校に通っていて当時からの顔見知り、そして宏らの2個先輩である。
常に前向きで周囲に優しく明るく接する、菊一事務所のリーダー的存在。体調によって多少変動するが能力は半径100mにも及ぶサークル形内での傍受能力【百聞】を得意とする。
肉体の強化も行えるが、それほど得意ではない。それを補う為に菊沢宏からは芹沢流軍配術を指南されており、普段から美佳帆のバッグには鉄扇という物騒なものが忍ばされている。
また知識欲旺盛で、多数の資格を取得している勉強家にして事務所の頭脳、その知識は時に非常にマニアックな部分まで掘り込んでいるときがあり周囲を驚かれることもある。
マスターした技能の中にはハッキングやキーピッキングなど、まさに探偵っぽいものは国際クラスの腕前である。
此度の橋元一味との抗争に巻き込まれているうちに、橋元不動産社長橋本浩二に目を付けられ【媚薬】という呪詛を貼り付けられてしまい、抗い難い性欲に塗れた熟れた豊満な身体を橋元に堪能されてしまう。

豊島 哲司(とよしま てつじ)
182cm 84kg 35歳 16cm
通称:(支社長のイイ人、以前は風俗通い、白刃取りの彼:稲垣加奈子が勝手に命名)
菊沢宏らと同じ高校出身。中、高、大学と陸上競技で短距離走をしていたが、社会人になってからは仕事の持ち場的に、短距離選手とはかけ離れた仲間の盾役に相応しい体形に鍛錬して身体を作り上げている。
実家は京都にあり、知らないものがいないほど有名なお寺で、そこの跡取り息子である。性格は正直者でやや暑苦しいところもある正義漢。見た目もそこそこ暑苦しく織田裕二似のルックス。
普段は寡黙ながらもルックスと渋い表情の合間に時折みせる、白い歯が印象に残るは笑顔が武器になっており、実は女性にはモテている。しかし女性と話すと緊張しすぎる体質もあり20代前半までは彼女ができず、大学を卒業するころにようやく初めての彼女ができた。
もともと高い身体能力に加え、常人離れしている握力を持つ。稲垣加奈子と能力の偏りは似ており肉体強化に全振りした構成である。スピード重視が加奈子とするとパワー重視の哲司である。
つい最近まで彼女無しの独身で、仲の良いモゲとよくつるんで遊んでいたのだが、宮川コーポレーションの宮川佐恵子と出会い、哲司がほぼ一目惚れしてしまう。
相手の感情を色で識別できてしまう佐恵子に、その想いはすぐ気づかれてしまい付き合うことになったが、お互いに中学生なみの恋愛経験値しかないため、今のところキスまでしか進展していない。


~~本編~~

第8章 三つ巴 45話 橋元逝く・・そして炎上

黒いストレッチャーの上にヒップを突き出した格好で顔を押し付けられている美佳帆は、汗と精液で汚れた顔を動かし、たった今けたたましい音を発して吹き飛んだ扉の方に顔を向けた。

「ま、待ったよ~・・宏ぃ・・」

疲れ果て絶望しかけていた美佳帆の顔と目に色が戻る。

全裸でこんな状況と恰好だが、美佳帆の前にはグラサンを掛けた旦那と、その背後には意図的にこちらを見ないようにしている副所長の豊島哲司が部屋の隅にいた男たちに向かって走り出す。

「美佳帆さん!すまん!!待たせすぎた!」

それだけ言うと美佳帆が置かれているストレッチャーまで走る。

「き、菊沢宏!・・何故ここが!」

「とっとと離れんかい!このカスが!!」

美佳帆の髪を掴み、口を犯していた一物を隠しながら、服を探す橋元であったが、走りながら怒鳴る宏に両手で掴まれ、壁に向かって投げられ叩きつけられる。

「ぐぇ!・・ひぃ・・ひぃ・ま、ま、ま、まて!お前の淫乱妻の痴態を撮ってあるんや。もし、私にこれ以上乱暴したら、あんたら夫婦はもちろん事務所やってただじゃすま・・」

壁際に全裸で尻もちをついた橋元は、鬼気迫る表情の宏に右手を挙げて声をあげるが、

ばきぃ!!ぼきぃ!!

「ぎゃーーーーー!」

橋元は自らの話の途中で突如悲鳴を上げる。

投げ出していた橋元の両膝を宏が無言で踏み砕いたのだ。

「橋元お前は万死に値するんやが、なぶる趣味は無いんや!目ざわりや!もう死ねや!もっと早う殺すべきやったんや・・!」

宏はそう言うと右手の指先にすでに集中していたオーラを鋭利な形状に変え橋元の首を切り飛ばした。

栗田教授直伝の点穴を応用した技能で指先のオーラを切れ味の鋭い刃物のように変化させる技能である。

宏と哲司がこの部屋に突入してから15秒ぐらいの出来事で、スタジオに集まっていた他の面々は呆気にとられたまま呆然といまだに立ったままである。

「え?」「なにこれ?演出?」「え?血?まじ?」とAV男優たちが口々に現実を脳が容易に受け入れられずにいる発言をしているが、一人だけカメラを構えたスタジオ野口の支配人である野口啓介が悲鳴を上げた。

「ひいいいい!わ、私は橋元さん、いや橋元に頼まれただけだったんだ!・・いわくつきの女だとしか聞いてなかった。知らなかったんだ!助けてくれ!!私は無関係なんだ!ひいいい!」

床にごろりと橋元浩二の首が転がるのを、引きつった顔で悲鳴をあげつつ後ずさりし見ながら、続いて橋元の首を切り落とした、グラサン男の宏に目を見開いて嘆願する。

が、宏は床を蹴り野口に迫ると無言で右手を薙いだ。

ビシャアアアア!音をさせ、野口の立っていた後ろの壁面に赤い液体が飛ぶ。

呆然と見ていたAV男優たちの顔や身体に生暖かい赤い液体と、べっちゃりとした肉片が付着する。

先ほどまで目の前で叫んでいたカメラマンの顔の上部半分が吹き飛び、自分たちの身体に野口啓介の一部が飛び散ってきたのだと悟ると、AV男優たちは一斉に悲鳴を上げた。

「ぎゃああああああああ!」

一瞬で男たちの阿鼻叫喚の大合唱となるが、宏は無言で腕を振る。

哲司も止めることはせず、着ていたジャケットを美佳帆に掛け、ストレッチャーに拘束されていた美佳帆を介抱している。

美佳帆も、宏は大して怒っていないときは、ギャーギャーうるさいが真に怒りの頂点にある時は、無言でその腕を振るい続ける事を知っていた。

そして今がまさにそれで、こうなると誰が何と言おうと止まらないし、自分が今の姿で居る事に対しての怒りである事に、嬉しくもあり同時に先ほどまで自分の身体にされていた仕打ちを思い出すと胸が締め付けられるような痛みに襲われた。

周囲はカメラマンも含め宏から見て男優だと断定した男たちは、みんなほぼ全裸で下半身を露出させている。

露出させていた下半身の男性器はみな一様につい直前に使用した形跡が見て取れた為、宏は頭に血が上るのを感じたが、迷うことなく全員を殺すことにした自分の判断に何の躊躇もなかった。

「・・・」

両手を真っ赤に汚した宏は動く者がなくなると、ゆっくり美佳帆のいるほうに向きなおり、美佳帆に駆け寄る。

哲司に掛けてもらったジャケットを両手で押さえながら美佳帆は近づいてくる宏の胸に身体を預けるようにして倒れ込んだ。

「すまん!美佳帆さん・・!」

「へへへっ・・、やっぱり来てくれたね・・。ほんのちょっとだけあいつ等に触られたけど、宏達が助けに来てくれたから何とか無事よ」

汗と何かの液体で顔面ぐちゃぐちゃの美佳帆は、明らかな嘘で宏に強がってみせたのであるが、宏は無言で自身のジャケットも脱ぎ美佳帆の顔を拭いた。

「う、うわっぷ・・・あ、ありがと。宏」

スタジオの隅で、二人して見つめ合い立っている宏と美佳帆に控えめに哲司が声を掛けてきた。

「撮影されてたみたいやったから、機材は全部破壊しておいたで・・。無事・・・とは言えんけど美佳帆姐さんも取り返したし・・・橋元もあの様や・・」

哲司は破壊した機材の山を親指で指しながら言った後、床に転がっている橋元の首を見やりながら言葉を更に続ける。

「ああなってしもたら、呆気ないもんやな・・。能力者あったっちゅうても、橋元は戦えるような能力やなかったんやろな。・・・あ!そや・・、姐さん!身体はどうです?宮川支社長の予測やと、女性を蝕むような呪詛があるはず言うてましたけど、どないです?」

橋元が事切れたのであれば、呪詛は霧散するはずだと聞いていた哲司は美佳帆に言う。

宏も「そ、そや!美佳帆さんどないや?!」と美佳帆の肩を抱きかかえたまま聞いている。

「・・そ、そういえば・・無いわ・・。大丈夫みたい・・。あんなに酷かったのに嘘みたいに平気よ!」

「そ、そうか!よかった~!」

美佳帆の答えに宏は安堵した様子で今日初めて笑顔になり、美佳帆の肩を強く抱きながら言った。

「美佳帆さん取り戻せたけど、外には色々居るみたいなんや・・。宏は美佳帆さん連れて行ってくれや。張慈円のカスも来とるみたいやし、俺が助太刀にいってくるさかい」

哲司が宏と美佳帆を気遣いそう言ったところで、宏と哲司の表情が引き締まり緊張が走る。

「な、なんや!?」

「これ不味ないか?・・!これは」

「え?どうしたの?」

宏と哲司の緊張したセリフに驚いた美佳帆が二人の顔を交互に見上げ聞くが、二人は美佳帆の問いかけには答えずオーラを放出する。

「え?え??」

披露しきった美佳帆は感じ取れなかったのは無理もないが、周囲は強大なオーラが渦となり収束しつつある状況でこれから何かしら周囲に変化をもたらすことが確実なように思えた。

危機と断定した二人の行動は早かった。

宏と哲司は長年のコンビネーションで言葉なく、阿吽の呼吸で美佳帆を間に挟み最大でオーラを放出させ防御障壁を展開する。

「ど、どうしたのよ!?二人とも!?」

「美佳帆さん、後で説明する!動かんとリラックスしてくれてたらええねん。テツ!気張れよ!」

「まかせとけや!チームの盾は俺やねんで?!」


哲司のセリフの直後に周囲の景色が歪み、続いてに轟音が響く。

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

3人の姿を紅蓮色の渦が包み込み、高熱と噴き上げる業風が襲う。

周囲の撮影機材や照明器具などが熱で変形し、ガラス製品はパリンと音を立てて砕け散る。床や壁面はコンクリートのようで炎の高熱に形状変化はないようだが、金属は融解され、コンクリートの表面に付着していた石油系の建材などがバチバチと爆ぜる音をさせながら、消し炭と化してゆく。

周囲に転がっていた亡骸が、水分を奪われ黒い塊に変化していく。更に熱で徐々に変形させられていく様は、悶え苦しんでいるように見えるが、熱と業風は止む気配はなく周囲を焼き尽くす。形状をとどめることができなくなるほど炭化したそれらは、紅蓮色に染まる世界の中で塵ほどの大きさまで分解されて、空中に霧散していった。

府内で警察さえも牛耳り不動産業を一代であれほど成長させ、【読唇】【媚薬】という常人離れした力を用い、悪事の限りを尽くして栄華を極めようとしていた橋元浩二であるが、炎であの世に送られようとしている様は、周囲の亡骸となんら変わりないように見えた。

【第8章 三つ巴 45話 橋元逝く・・そして炎上< 終わり】46話へ続く

第8章 三つ巴 46話 銀獣散る・・・悲しき走馬灯

第8章 三つ巴 46話 銀獣散る・・・悲しき走馬灯


幾何学的な模様で美しく敷きならべられていた煉瓦の駐車場はところどころ表面にヒビが入り、ひどいところに至っては砕け散り歩くのは困難なほどだ。

先ほどまで、LEDの灯りで周囲を照らしていた見事な南欧風石柱の灯篭は腰高付近から、砕け倒れてしまっている。

剪定の行き届いていた植栽達は枝から折られ、シンボルツリーとしてあったクスノキに至っては、幹の上部は斑に焦げた模様があり、また幹の背丈ほどの部分には中世西洋の攻城兵器のバリスタの矢でも打ち込まれたかのような穴が空いている。

色とりどりの可愛い小さな花を満開にさせていた花壇は無残に踏み荒らされ見る影もない。

今やスタジオ野口の入口正面付近の駐車場とアプローチは当初の美観は損なわれ、まるで廃墟の様相である。

そんな中、乱れた呼吸を整えようと細身の黒い影が極力大きく息を吸い込み吐き出す。

銀獣から受けた左右連続の猛烈な横鉤突きで抉られた腹部を、やせ我慢で何とかやり過ごそうとするが、激痛で上半身を前かがみにしてしまいそうになる。

しかし、黒い影の人物張慈円は喉奥からこみ上げる血液交じりの苦い液体を吐き捨て、痛みを無視するように胸を張り、自分自身とここまで戦える女を心中で感嘆する。

しかしそれを表情には出さず煉瓦の床に、色素の薄い髪の毛を乱れるままにしてうつ伏せで呻いている女に向かって放つ。

「・・・ふん・・女狐が・・。手こずらせおって」

地面に這いつくばり何とか身を起こそうとしている銀獣こと稲垣加奈子は、いまだ闘志の宿る目で張慈円を睨み上げてくるが、その顔には裂傷による出血と、吐血で血にまみれており、ダメージが深刻なのは見るからに明らかである。

よろよろと、ようやく立ち上がった銀獣であったが、左手で右肩を抑えており痛みにその美しい顔を苦痛に歪ませている。

「・・支社長をおいて・・こ、こんなところでやられるわけには・・」

ゼエゼエと荒い呼吸で肩を揺らし、独り言を呟いた銀獣はカッと目を見開くと、肩を押さえていた左手に力を込める。

ゴキリという生々しい音が妙に響き、銀獣は更に苦悶の表情を濃くして小さく悲鳴を上げた。

どうやら脱臼した肩を無理やり入れたようだ。

白銀色に輝き逆立っていた髪の毛は、最早輝きを失い。色素の薄い髪の毛は汗でしっとりと濡れ、肩で息をしている加奈子の額に張り付いている。

オーラはもうない。

130%ほどオーラ出力で戦っていたのだが、パワーやスピードで張慈円を圧倒できた為、それ以上の力を使わずに戦った結果、戦闘巧者の張慈円に翻弄され徐々にペースを乱されていたのだ。

最初の不意打ちで受けた張慈円渾身の崩拳もまずかった。

井川栄一や南川沙織と連戦を重ねてきた加奈子では、ほぼ全快している張慈円と対等に相対すること適わず最初から無茶であったのだ。

全力になる150%の開放オーラ残量もなく、徐々に体力を奪われこの有様である。

オーラを使わず肉体のみで張慈円と戦うのは無謀すぎるが、ほかに手はない加奈子は痛みで軋む身体に鞭を打ち、構え張慈円を睨に顎をしゃくって張慈円を挑発する。

「くくく・・やはりな・・。貴様のような奴はもはや勝ち目がないと分かってもそうくるものだと分かっていたぞ。そうでなくてはな!・・・それでこそ貴様のような女でも楽しめるというものだ!生意気を抜かしたツケを払わせてやるぞ!」

張慈円は満身創痍の加奈子を観察し愉快そうにそう言うと、間合いを詰める。

牽制してくる加奈子の左ジャブを、左手でいなし半身で躱すと同時に、がら空きの腹部に右肘をめり込ませ、衝撃で前かがみになった加奈子の右頭部の髪の毛ごと掴むと、そのまま身体を開き加奈子を地面に再び叩きつける。

「ぐふぅ!」

空中で一回転させられて背中を地面に強打させられてしまった加奈子は、痛みで悲鳴を上げる。

すぐに目を開けるも、当然窮地のままであり目の前には不気味に笑う張慈円の顔が間近にある。

張慈円は加奈子の左手を掴んだまま手首を直角に折り曲げて体重をかけ、加奈子の手首と肘、そして肩の3点を同時にキメる。

「あっ!くぅ!・・っ!っっっっ~~!!!」

「くくくくく!いい表情だ!もっと叫んでもよいのだぞ?!」

苦痛に歪む加奈子の顔を歪んだ笑顔で堪能しながら張慈円は言い放つ。

「っ~~!!んんんんん!」

せめて悲鳴をあげまいと下唇に歯を立てて声を我慢している加奈子の顔を見ながら張慈円は興奮で下腹部が膨張してくるのを感じていた。

「くくくくく・・いいぞ。いい顔だ!どうだ?稲垣!・・貴様のような女でも楽しみ方はあると言った意味が解ったか?!」

痛みでそれどころではない加奈子は何とか逃れようと、両足を回転させ張慈円の頭を狙う。

しかし、それを予期していた張慈円はあっさり蹴りを躱し、加奈子を開放すると、今度はその脚を掴んで捻り加奈子をうつ伏せにする。

加奈子の両脚首をキメたまま加奈子の腰の上に勢いよく座ると同時に、張慈円は身体をのけ反らし加奈子の足の裏が加奈子の肩に付くほど引き上げる。

所謂、逆エビ固め、ボストンクラブというプロレス技のような見た目で、それをより厳しく逸らした格好である。

「ああああああ!!や、やめろお~っ!!あぐう!」

「・・・これでは貴様の表情が楽しめんな」

激痛でのたうつ加奈子の発言を無視して、少しでも痛みを和らげようと上体を逸らしている加奈子の髪の毛を、加奈子の両足をキメていた右手で器用に掴むと張慈円の手首に巻き付けた。

「っっ~!!~~っ!!!!っ!かはっ!!~~っ!!」

「これでよい」

更に身体を逸らせた状態にされた加奈子は悲鳴らしい悲鳴を上げることもできず、苦痛に歪む顔をすぐ間近で張慈円がニタニタした表情で観察している。

立ち技と違い寝技や関節技は双方の技術の優劣が現れやすい。

そしてその差は致命的な結果となる。

立ち技で敵わない場合は最悪逃げるという手が残されているが、寝技や関節技で相対する敵に及ばない場合はそういう訳にはいかないのだ。

それに今の香奈子はオーラもなく身体へのダメージも深刻で、とてもまともに戦えるような状態ではない。しかし、張慈円は解っていて加奈子にとどめを刺さず悲鳴をあげさせ苦悶の表情を楽しんでいるのだ。

加奈子の髪の毛を巻き付け引き絞り、足首にしっかり括り付け、セルフボストンクラブの格好で固定してしまう。

その態勢でひとしきり憐れな格好の加奈子を足蹴にして甚振ると、楕円形の形に逆エビぞりで固定されている加奈子の右腕を掴む。

「くくく・・。こちらの腕は先ほど脱臼したほうだな?・・・どれ」

張慈円が薄笑いを浮かべながら無常に手首を捻りあげるとコキッと乾いた音がして加奈子の右肩が再び脱臼する。

「きゃあああああ!・・・ああああっ!!っ~~!・・・張慈円~~!!・・さっさと殺りなさいよ!!なんなのよ!!?」

「くははははは!痛かろう?!・・・さあこちらの腕もだ」

「や、やめ!やめて!もう嫌!!やだヤダヤダ!!やだ!!やだああああぁぁぁぁ!!!」

逃れようともがく加奈子の左腕を掴み、右腕と同様に加奈子の背面で左腕をキメて左肩を外す。

「ああああ!うううぅ!こ、こんなことして!ただで済むとおもって・・ああああああっくぅ!!」

脂汗をびっしょりとかいて悪態を口にし出した加奈子を無視して、張慈円が加奈子の右手の小指を、加奈子の手の甲の側へ一気に折り曲げたのだ。

「何か言ったか?俺の聞き違いか?んん?」

加奈子の脇に座りこみ加奈子の形の良いヒップを特殊スーツ越しにパチンと叩きつつ、張慈円がわざととぼけたようなセリフを楕円形に逆エビぞりの形に固定された加奈子に投げかける。

「このおおお!張慈円~~!!許さない!絶対許さないわよ!!」

「まだ9本あるな・・」

「な、何言って・・・!!く・・っくっそーーー!・・・きゃゃああああああ!!」

加奈子のセリフを無視して張慈円は加奈子の右手の薬指をへし折ったのだ。

「魔眼の小娘はまだ生きているのか?どうなのだ?」

「ああああっ!・・うう!・・この!!このっ!殺す!」

質問に答えず、痛みで悶絶しながらも罵る加奈子の中指が、張慈円によって容赦なく折られる。

「あああっ!!くぅ!!つぅ・・っくはっ・・!!」

加奈子の右肩は脱臼しているうえ右腕の上には張慈円の尻に敷かれている。

左腕も脱臼させられており、反対側にいる張慈円には届かないし、まともに動かすこともできない。

「くくく、さっさと言わんから痛い思いをするのだ」

「し、支社長が死ぬわけないでしょうが!」

厳しく身体を逸らされ顎をあげさせられた格好でも、加奈子は張慈円を横目で睨みながら痛みに耐えつつ毅然と言い放つ。

「そうだ。その調子だ。素直であれば痛い思いはしなくても済むぞ?それにしても、やはり死んではいないのか・・。それはそれで・・ふむ・・」

張慈円の妙な冷静なセリフを聞き、ハッとした表情になった加奈子は口を真一文字に噤んで歯を食いしばり、目を閉じた。

「ん?どうした・・?そうか・・なるほど。魔眼に義理立てしようというのだな?」

折った加奈子の小指、薬指、中指をグリグリと甚振りながら、張慈円がさも愉快そうに仰け反ったの加奈子を覗き込むように聞いてくる。

「・・・・黙れ・・!一瞬でもあんたのことを支社長に許してもらって、使えないかと進言しようと思った自分を全力で後悔してる。死ぬほど反省してるだけよ!・・それより、さっさと私のこと殺した方がいいわよ?今回偶然私に勝てたからって次は無いわ!」

オーラもなくなり、絶体絶命の加奈子であったが、カッと見開いた目には強い意思があり、張慈円を睨みながらはっきりと言い放つ。

「くくく、しかし、その格好では何を言っても滑稽にみえてしまうな」

逆エビぞりの格好で凄んだ加奈子は赤面させたが、その顔を隠すこともできず悔しそうに張慈円を睨む目に力を込めギリギリと歯を噛みしめる。

折られた指、脱臼させられた肩などが痛すぎてどこがどう痛いのか加奈子はもうよくわからなくなっていた。

「・・魔眼の能力にはどういうものがある?恐慌と眼光と言ったな?ほかにはどういうモノがあるのだ?弱点はないのか?」

加奈子の羞恥や痛みを他所に張慈円は質問を続ける。

「張慈円・・あんたのデカいんでしょ?・・・自分で自分のをしゃぶってれば!?・・っひぎぃ!!」

ぼきぃ!と生々しい音とともに付け根から折られた加奈子の右手の親指はあり得ない方向まで開き、開いたまま戻らなくなった。

「聞いたこと以外のおしゃべりは禁止だ。二度言わんぞ?」

仰け反らされたままの加奈子は痛みで悲鳴を上げまいと歯を食いしばりぶるぶると小刻みに震えている。

「魔眼の弱点はなんだ?」

「・・・・・・死ね!クズ野郎!」

ぼきぃ!ばきっ!

「あああ!うぐう!っ~・・・!!はぁはぁ!っ~~っ!!」

加奈子の人差指は第二間接後逆に曲げられ、その直後根本を更に手の甲にくっつけるようにして強引に倒されたのだ。

今は加奈子の右手の指は全てが折られ、指はあちこちな方向に不気味に折れ曲がり広がったままでいる。

「くくくく・・。いい声を上げるではないか。もっと楽しみたいが・・ここではな・・・。しかし、その目つきはいただけんな。・・・態度を改めんともっと厳しい責めになるぞ?・・言え!・・・あの宮川の小娘、魔眼の弱点を言うのだ。視界に入るだけで危険と言わしめるあの目で出来ることを洗いざらい話せ。」

張慈円は真一文字に口を噤み睨み上げてくる加奈子の視線を見据えながら、言い聞かせるようにゆっくりと問いかける。

張慈円は加奈子の顔を右手で掴み、掴んだ手の親指を加奈子の左目に宛がった。

言葉はないが口を割らないと次は目だ。と言っているのは加奈子にも伝わったが、加奈子の表情は変わらず張慈円に答える。

「・・魔眼に弱点なんかないわ!知ってても絶対に言うもんですか!それより【恐慌】の味はどうだった?!後遺症があるでしょう?夢でうなされたりしてない?暗がりが怖くなったでしょう?」

張慈円と目を合わせたまま加奈子は挑発し、張慈円の反応を探る。

「あははははは!ざまあみろだわ!うなされてよく眠れないんでしょ?!夜一人でトイレに行けなくなっちゃった?」

張慈円の表情がわずかに曇り、目を吊り上げたのを加奈子は見逃さず、声を上げて嗤う。

ずぶっ!

「あぐっ!」

「二度は言わんと言わなかったか?」

加奈子の左目に張地円の親指が突き刺され、加奈子の視界の左半分が真っ赤になり温かい液体がほほを伝う。

「貴様はここで殺すつもりであったが、気が変わった。もっと体に聞いてやる」

のけぞった格好で視界は半分に減り、痛みで脳がジンジンと響くが、張慈円のセリフは聞こえていた。

加奈子は右目だけを動かし確認すると、張慈円はスマホを取り出し中国語で連絡をしだしている。

中国語はほとんどわからないが、おそらく加奈子自身を拷問するために連れ帰ろうと部下に連絡しているのだと察した加奈子は覚悟を決めた。

(万事休す・・・か・・。ぶん殴りたくっても拳が握れないや・・・左目ももう・・)

右手を握ろうとするが全く動いてくれない。少しでも動かそうとするといろんなところに激痛が走った。激痛を堪え機能してない左目の眼球を意識して動かそうとしてみるも、動いている感触はあるのだが視界の半分はやはり失われたままだ。

痛みで頭がガンガンする。まだまともに頭が働いているうちにと加奈子は、張慈円がスマホでの会話に集中していることを確認する。

(私が捕まってしまったら重要な情報を敵に知られすぎてしまうわ。口を割らなくっても、そういう能力者がいたらと思うと・・。支社長・・ごめんなさい。生涯支社長の剣であり盾になると誓ってたんだけど・・。真理、あとはお願いね・・)

加奈子はのけ反った格好で舌をできるだけ突き出し、恐怖で一瞬だけ躊躇したが意を決して思い切り歯を食いしばった。

激痛が走り、口の中が暖かい液体で満たされ、脳をつく甘い匂いが口中に充満すると同時に、その液体によって呼吸が妨げられる。

「ごぼっ!!がっ!ごぼぼっ!」

涙と血で視界がよく見えない。生命活動を停止しようとしているためか、すぐ隣で張慈円が何かを叫んでいるがよく聞き取れない。

体中の感覚が鈍いのか、痛みが引いていく。息が苦しい。右目もよく見えなくなってきた。張慈円が何か口走りながら頬を掴んで口に指を突っ込んでくるのが煩わしいが、手足も動かせず成すがままだ。

でも口に指を突っ込まれているはずなのに触られている感覚も遠のいていく。

今度は寒い。暗い。怖い・・。


~~~~~~

・・・これは夢?

「宮川佐恵子と言いますわ。日本は初めてで慣れませんの。よろしくお願いいたしますわ」

「およしなさい!わたくしの目の前で弱い者いじめは許しませんわ!」

「あなたも泣かないで・・。あなたは純粋で優しいだけよ」

「わたくしの家もこちらですの。稲垣・・加奈子さん?一緒に帰りましょう?」

「稲垣さん・・!あなたすごい力ね!こんなの誰にも真似できないわ・・!」

「お父様!ご紹介させてください。こちらは稲垣加奈子さん。私の日本での初めてできたお友達ですの。すごく力が強いですのよ?ほら!知恵の輪がこんなに・・!こんな解き方思いつきませんでしたわ!」

「ご両親は毎晩お仕事で夜遅くまで帰ってらっしゃらなくて加奈子さんはいつも一人で待ってるそうですの。わたくしとここでお稽古やお勉強して過ごしてもいいかしら・・・?・・・ありがとうお父様!大好き!」

これは・・・ジュニアスクールの時・・・?

支社長が転校してきたときだわ・・。

くすっ・・。支社長・・いまと全然変わらないですね・・・。

私の両親が無理して見栄で入学させてくれたインターナショナルスクール・・支社長が転校してくるまでは地獄だったわね・・。

周りはお金持ちばかり・・。古びた服や靴を着せられているのに、人一倍身体も大きくって、胸の発育もはやくて目立っていた私は10歳になるころから周りに虐められてた・・・。

2個上の緋村紅音のグループの子たちにちょっかい出されてよく泣いて帰ってたっけ・・。

そんな時、すごいお金持ちが来るって噂が流れて支社長が転入して来たのよね・・。

驚いちゃった・・。あんなに大勢の取り巻きがいる緋村紅音に転校初日から毅然と立ち向うんだもん・・。

あれから私の人生変わったんだと思う・・。

「会長。そんなことは私がやりますから!」

「ふふ、大丈夫よ加奈子。これも生徒会長たる者の職務ですわ。造作もないことです 」

「だけど・・生徒会活動の他に文化祭と体育祭、それに広報業務までしてたら来月の模試に響いちゃいます!」

「加奈子・・。そんなのこなすのは当然だわ。私は宮川なのよ・・・。普通の学生とは違いますの。加奈子、あなたは無理しなくてもいいのよ?」

「そんなことありません!私にだってできます!」

「・・そう?・・さすが加奈子ね」

ジュニアハイスクールに上がってから支社長は血が目覚めたのか、12歳で生徒会長に立候補して当選しちゃったんだよね。

そうそう・・紅音のやつが僅差で負けて地団駄踏んでたわね・・。

支社長の自宅で私も同じように習い事させてもらってたけど、支社長はどんどん人の上に立つようになっていっちゃったんだよね。

なんでもこなしちゃうんだもん・・。置いていかれないようにいつも必死だった・・。

でも、それが嬉しくて支社長がそういう立場になるのが自然で当たり前だと思ってたし、今でもそう・・。

「そうよ加奈子!その調子!思念が身体を纏ってるわ!そのまま維持して!・・・すごいわ!かなりのオーラ量よ!これであなたもオーラを使えるようになるわ!」

10歳からという思念開発としては遅すぎるスタートを切った私でも15歳のときになんとか脳領域の開放ができた。

支社長、自分のことのように喜んでくれたっけ・・。

支社長の一族が魔眼と呼ばれる眼力瞳術の遺伝一族で、思念波と呼ばれる力を操り財界や政界に大きく影響力を持ってると分かり出したのは私の能力が開花してから・・。

支社長のお父様に呼ばれてお話されたっけ・・・。

思念のこと、宮川家のこと、かいつまんでた部分もあるけど、当時の私によくわかるように丁寧に説明してくれた・・。

「加奈子ちゃん。うちの佐恵子をよろしく頼むよ。佐恵子は大人になるにつれて敵も多くなる。これは避けられないことなんだ。そんなとき加奈子ちゃんみたいな良い子が佐恵子の側にいてくれたらおじさんは安心だよ」

宮川昭仁会長はそう言って私の手を両手で握って言ってくれたの。

その時から、私は宮川家の為に、いえ・・支社長の為に生きようと思ったんだわ・・。

「あんたたち!会長を襲おうなんて身の程知らずもいいとこね!」

「加奈子。それぐらいでいいわ。次またわたくしたちに、危害を加えるようなことを企てる気概などなさそうですからね」

普段の尊大な態度と、清廉だけど強引な方策を推し進める生徒会長宮川佐恵子はハイスクールになっても健在で、少数派の意見を汲み取らない独裁会長と呼ばれ、校舎の内外でもよく襲われたっけ・・・。

前代未聞の6年間生徒会長を務めた長期政権で、あの学校の伝説として残ってるもんね・・。

「少数派の意見・・・?そういうの意見じゃありませんわ。クラスに1人ぐらいどうしたって変なのがいるでしょう?それよ。そんなの少数意見じゃないわ。頭のおかしい考えってこと。検討に値しないわ」

「会長・・またばっさりですね。・・・まあ・・、もうすこしオブラートに包むべきじゃないかと・・」

「あんな〇産党みたいなこと言われても相手にできませんわ。言ってる本人にもメリットは無いし、一体全体どういうつもりですの?理解できませんわ」

「も、もう会長は黙っててください!私たちが対処しておきますから!」

ハイスクールの時は本当に色々あった・・。

会長も女としてすごく綺麗になってきたし・・、まあ美貌やスタイルに関して言えば加奈子ちゃんのほうが一歩リード・・いえ二歩リードしてるとはいえ、お金持ちで成績優秀な美人の生徒会長は、いい意味でも悪い意味でもイベント発生源だったもんね・・。

「加奈子。わたくし宮川系列の経済流通大学に進学いたしますわ。・・・加奈子はどうするの?」

「今更ですよ~会長。もちろん私も行きますってば!ていうか、そんなの愚問です」

「そう・・ありがとう。加奈子がいてくれたら心強いわ。でも加奈子の偏差値ならもっと良い所あるわ。本当にいいの?難なくいけるでしょう?」

「だから~愚問ですってばぁ。それにそれを言うなら支社長だっていろんな選択肢あるじゃないですか」


「わたくしは・・そこがわたくしにとって都合がいいだけですわ。わたくしは運命から外れられないし、わたくし自身そんなつもりもないけど、加奈子・・・あなたはこれ以上わたくしに着いてきたら引き返せなくなってしまうわ。・・・本当にいいの?宮川に・・私のところにずっといてくれるって言うの?」

「・・・愚問ですってば。私んちみたいな貧乏な家でこんな英才教育コース通ってこれなかったし、会長に会えたのだってすごい感謝してるんです」

「・・そんなのはいいのよ。加奈子の本当の意思で決めてもらいたいの」

「何度も言わせないでください。それに会長・・見えてるんでしょ?私のオーラや感情」

「・・そうだけど、揺さぶれば変わる人もいるわ。大勢ね・・。」

「私は変わらなかったでしょ?」

「・・ええ、もう聞かないわ。行くわよ加奈子」

「はーい」

「・・ありがとう」

「え?何か言いました?」

「何も言ってないわよ」

大学に入って支社長はハイスクールの時より大人しくなったけど、性格はもちろん相変わらずで周囲を振り回してた・・。

支社長が学校理事長を兼ねている宮川昭仁会長の娘だということは伏せられていたから、比較的平和に過ごせたというのもあるけど、支社長はどこにいててもやっぱり支社長だったよね・・。

あんまり話してくれなかったけど、支社長一度だけ男の人とお付き合いしてすぐ別れちゃったよね。

「わたくし・・なんでも上手くできる・・だなんて思いあがってましたわ・・」

支社長のあんな顔見るの初めてで、わたしも心が締め付けられたの覚えてる。

・・・そう言えば、豊島さん支社長と上手くやっていってくれるかしら・・。

モゲって呼ばれてるギャンブル依存症の男と仲が良いみたいだから、ちょっと要注意よね・・。

しっかり見張っておかなきゃ・・。

大学在学中に私たちは専攻の経済学の単位はもちろん法学や語学、情報処理の単位も、宮川家の計らいでどんどん取得していかされたよね・・。

死ぬほどハードだったけど、世の中ってこんなに学べることが多いんだってわかって、まだまだだなと思い知らされたっけ・・。

あれだけストイックに勉学に励んでるのに一日3時間のトレーニングも・・。

でもそのおかげで大学2年あたりのころから組手で支社長にほとんど負けなくなったのよね。

支社長は喜んでもくれたけど、すごい悔しかったみたいで、あれから毎日内緒で特訓してましたよね・・。

でも私は支社長に勝てるようになってすごい嬉しかった。

だって、これで支社長が自分で勝てない敵が現れた時、私の出番ってことだもんね。

卒業旅行は2週間海外いろんなところ行きましたよね・・。

常夏の島でビキニではしゃいだり、でもその二日後には北米のロッキー山脈でスキーを楽しんで汗を流して、極寒のアラスカの露天風呂で背中洗いあいましたよね。

こんな美女二人が歩いてるんだもん。ナンパもいっぱいされたけど、支社長の男性に対して冷たいこと・・。

もう男はこりごりって暫く支社長の口癖でしたよね。

卒業旅行から帰ってきてすぐに宮川コーポレーションの研修が始まって、そこで初めて真理と出会ったんだよね・・。

「・・加奈子。あの子。ほら、黒髪ボブのあの子」

「あの子がどうかしたんですか?」

「只者じゃないわ。加奈子は何か感じない?」

「うーん・・。私ほどじゃないにしてもまあまあの美女ってところですね。・・とまあ、冗談はさておき・・あの子強いですよ。体幹がしっかりしてるし隙が無い。・・・かなりの使い手だと思います」

「そう・・。加奈子がそう言うなら相当腕が立つんでしょうね・・。でもそれだけじゃないわ」

「というと?」

「あの子、能力者だわ」

「・・また霊感商法や新興宗教家とか?」

「いいえ、私達が学生の時に潰してきたような人達とは違う。そんなチャチなオーラじゃないわ。私たちと遜色ない量と力強さよ・・」

「えっ!そんなのって・・あの子警戒しておきます」

「ええ・・お願い。スパイや敵だったりした時は頼りにしてるわ」

真理は研修の時から目立ってわね。いままで私達の周りには佐恵子さんや私以上に目立つ人がいなかったから、ああいうの初めての感覚だった。

温和で清楚、美人で頭脳明晰・・。

非の打ちどころがないっていうのは真理の為にある言葉ね・・。

・・・親しくなればそのうち真理しゃんの天然ぶりと、真っ黒い部分が見えてくるんだけど・・。

でもそんなこと言ったら、あの僕っ子にすごい良い笑顔で仕返しされる・・。

「神田川真理と申します。よろしくお願いしますね。宮川さんに稲垣さん・・。お二人ともすごくお綺麗で皆さんの目を引いてましたよ。それに、もしかして宮川さんって・・苗字が同じだけど・・宮川コーポレーションの宮川さんとご関係が・・?」

「ええ、ありますわ。今の社長は私の叔父様ですの」

「ちょ、佐恵子さん!そんなあっさりバラしちゃっていいんですか?」

「いいのよ。内緒にしててくださる?・・神田川・・真理さん?」

「え、ええ・・」

「それより神田川さん。その力はどうやって身につけたのです?・・・わたくしあなたにすっごく興味ありますの」

「え?えっと・・、もう集合時間に遅れちゃいますよ?・・急ぎますのでまた後程・・」

あの時からしばらく真理は支社長のことすっごく警戒してたなぁ・・。

でも研修の最終日に地震が起きて・・、真理が予知能力で地震を察知してみんなで避難させてくれたっけ・・。

それで支社長と私で真理を問い詰めたんだよね・・・。

出会った時はあんなにぎくしゃくしてて、支社長のアプローチに、何年も冷たかったのに今だと真理もすっかり支社長を信頼してくれてる。

あれ・・・?

これって世間でよく言うあれなの・・・・?

昔のことこんなに思い出すなんて・・・・・。

走馬燈・・?・・・覚悟はしてたはずなのに、やっぱやだなぁ・・・。

【第8章 三つ巴 46話 銀獣散る・・・悲しき走馬灯 終わり】47話へ続く

第8章 三つ巴 47話 波紋と波乱と失脚

【第8章 三つ巴 47話 波紋と波乱と失脚】

府内を東西に分けるように流れる河川の、北側にある宮川傘下の総合病院に、玄関口ギリギリまで社用車で乗附させた佐恵子は、運転してくれた八尾部長に、一言も発する余裕もなく飛び降りるようにして降りると駆け出した。

受付前の長いすが並ぶエントランスに、全身ほんのりと煤にまみれたグラサンこと菊沢宏が立っているのを確認すると佐恵子は短く聞く。

「何号室ですの?!」

「・・・稲垣さんは集中治療室や。部屋やない」

「~~っ!・・容体は?!どういう状況ですの?!」

「・・・鎖骨と肋骨の骨折が5か所、右肩左肩靱帯損傷、両脚の靱帯も傷ついとる。それに右手の指は全部折られてる上に左目も潰されとる・・。指のいくつかは複雑骨折や。あと・・」

「あと、なんですの?!」

宏のジャケットを両手で掴み食い入るようにして聞く。

「・・死を悟ったんやろな・・。自分で舌を噛み切ってしもうとる。そやけどまだ息はあるんや・・死んでない」

さっき宏本人からも全く同じ連絡があったのだが、宏は再度全く同じ説明を佐恵子に丁寧にしてくれた。

「嘘!・・あの加奈子が・・!」

宏のジャケットを左手で掴んだまま、右手で口を押え嗚咽が漏れないようにしている佐恵子の手を、宏はゆっくりと掴んで佐恵子の肩を撫でると、長椅子に座らせた。

「・・・まだ手術中や・・・。・・稲垣さん、まだ頑張っとるんやで?敵がとどめ刺しに来んとも限らん。テツを手術室内に無理言うて待機させてもろうとる・・」

長椅子に座らせた佐恵子は顔を伏せ小刻みに震えていたが、肩を撫でている宏の手を払うと涙顔で宏に食って掛かった。

「あなた!・・・あなたは!!・・うぅ!!ど、どうして」

宏のオーラが見えている佐恵子は、言葉を詰まらせたが続きを言ってしまった。

宏の言葉に嘘や偽善はない。しかし、宏の服や顔はススで汚れてはいるが、体力とオーラにはかなり余裕があるのも見て取れる。

「なぜ加奈子に助太刀をしてくれなかったの?!!加奈子は・・!加奈子は・・自ら死を選ばなきゃいけないほど追い詰められていたのよ?!菊沢部長!・・哲司さまもいらっしゃったのでしょう?!なぜこんなに膨大なオーラを残したまま帰ってこれているの?!どうしてなの!?言いなさい!!」

「・・すまん」

ばきぃ!!

拳で殴打した後にカシャン!という乾いた音が病院のフロアに響き宏のサングラスが壁際まで飛んで行った。

「はぁはぁ!・・許せないわ!」

オーラによる強化は行ってないとはいえ、佐恵子は思い切り宏の左頬を殴ったのだ。

更に宏のジャケットを掴み、佐恵子は宏を見上げるように睨み上げて続ける。

「あなた美佳帆さまのことばっかり気にかけて加奈子を蔑ろにしたんでしょう!?・・・すまんですって?!やはり私も行っていれば・・!」

サングラスを身につけてない宏の胸倉を掴み前後に激しく揺すり、時には胸板を叩きながら佐恵子は宏を罵る。

「・・・すまんかった」

宏は胸倉をつかみ見上げ睨んでくる佐恵子の両肩に手を置き、再度ゆっくりとそう言った。

佐恵子は一瞬驚いた表情になったが、再度目をぎらつかせジャケットを掴んでいる手に力を込めて何かを言いかけた時、病院の入口の自動ドアが開きカツカツとヒール音がかなりの速足で近づいてきた。

「佐恵子!落ちついて!」

そう言い、背後から佐恵子の手を掴み宥めてきたのは神田川真理である。
連絡を受けて真理も病院に急行してきたのだ。

「・・・真理。・・・離しなさい。ここはいいから真理も手術室に向かってちょうだい!」

宏の胸倉をつかんだまま、顔だけ振り返った佐恵子の目は、まるで何かを抑えているように、どす黒い光が淀んでいた。

真理は危険を感じてたじろいだが、躊躇いながらもはっきりと言った。

「離さないわ。加奈子がどういう経緯で大怪我をしたのかは、まだよくわかっていません・・。菊沢部長を責めるのはよくありません」

「・・・・真理。あなた加奈子が死にかけていたときに、あの教授と自分の部屋で何をしていたの?」

顔だけ振り返った佐恵子の目が纏った黒い光が膨らみだす。

「さ、佐恵子・・・!わたしは・・」

先ほどより強い危険を感じた真理は顔を引きつらせて言葉に詰まってしまう。

「ええそう!?・・・言わなくてもいいわ!自分の楽しみ事を優先したくて、わたくし達が強襲に参加するのを止めたんでしょう?!・・とっとと手術室に行って加奈子を治療してきなさい!」

佐恵子の両目は危険な光を真理に向かって放ってしまうかに思われたが、寸でのところで光は縮まり、佐恵子は真理から顔を逸らして宏に向き直った。

その瞬間バチーン!と大きな音が病院のエントランス全体に響き渡った。

長かった髪も南川沙織に斬られたため、変で中途半端なヘアスタイルになっているが、佐恵子は長い髪を振り乱して、自身の頬を打った人物にキッと顔を向けた。

「あなた・・!誰ですの?!」

「・・これが私たちの雇い主なのですか?」

佐恵子の頬を打った人物、スノウこと斉藤雪は打った手が痛かったのか、手をひらひらとさせながら、呆れたと言わんばかりの表情で、頬を抑えたままの佐恵子をしり目に宏に聞いている。

「スノウ・・!下がっとけや。ちょっとやばいぞ・・」

そう言って佐恵子とスノウの間に身体を滑り込ませた宏に、スノウに食って掛かろうとしていた佐恵子は阻まれる。

「このわたくしに・・よくも手を上げましたわね!真理!いつまでそこにいるの?!あなたは手術室に向かいなさい!手遅れになったら許さないわよ!」

宏に阻まれながらスノウに詰め寄ろうとしていた佐恵子は、顔だけ振り返り真理に指示を飛ばす。

「・・は、はい。・・菊沢部長・・・、佐恵子を・・お願い・・」

真理は佐恵子に向かって短く了承の意を伝えると、宏に対してすごく申し訳なさそうな顔向けると勝手知ったる病院なのであろう、真理は一気に手術室向かって駆け出した。

「支社長さん、稲垣さんのことが心配なのはわかるけど、所長も和尚も美佳帆さんだって・・、アリサも私も・・死にかけたのは同じです!あの張慈円や髙嶺・・!あいつらが襲ってきたんですよ!?・・それを、あなただけ喚き散らして!周りに当たり散らして!・・美佳帆さんも酷い目にあって今手術室にいるわ!・・所長も和尚も焼き殺されそうになったの!・・私だって・・!死ぬのを覚悟したわ!」

「スノウ!わかってる!わかってるから、気持ちは解るけどここは押さえてくれや」

「いいえ言うわ!美佳帆さんだってひどい目にあってたのよ?!それなのに所長が貴女みたいに喚き散らして周りに八つ当たりなんてしてないでしょう?!どうしてかわかる?わかんないんでしょ?!貴女、人の感情は見えても人の気持ちなんてわからないんでしょ?!」

「こ!この!!・・言わせておけば!許しませんわ!」

スノウと佐恵子の間に入った宏は二人を宥め、引き離そうとするが、佐恵子の目が再び黒い光を蓄えスノウを視界に捕らえる。

「ひっ・・!」

「マジか!!ええかげんにせんかい!!」

射程に入り照準を合わされたのが本能的に察知できたスノウは小さく悲鳴を上げた。
死が放たれるかもしれないと予感させるほどの圧力を感じ、スノウが身を屈めたとき、宏も声を荒げたのだが、光は止まらない。

咄嗟に宏はスノウを抱きかかえ佐恵子に向かって防御のオーラを展開し大きな背を佐恵子に向ける。

「やれやれ・・。ここまで情緒不安定とは些か買い被ってましたかな・・」

「・・かっ・・くっ!」

病院の入口には、右手を佐恵子に向け念動力を飛ばしたのであろう栗田教授が、普段の笑顔ではなく険しい表情でそう言い佐恵子の動きを封じていた。

「師匠・・!」

「宏君。女性に手を上げないのは結構なことですが、時と場合によりますよ?特にこのような聞き分けのできない駄々っ子にはね」

そう言った栗田教授の表情はやはりいつもの好々爺ではなく、険しいものであった。

「・・くっ・・!このエロジジイ・・!あなたが真理を唆したせいで!・・おかげで加奈子は・・!」

「真理君ほどの才女があれだけ気を使ってくれているというのに・・。真理君はまだまだ重症だったんですよ。首を切断されていましたからねえ。輸血を終えて体力が回復したので再度治療していただけです。長いお付き合いでしょうに、あの真理君がそんなことするわけないと分からなかったのですか?真理君は貴女をからかっていただけですよ。・・・・それにしても、ほう・・この金縛りでも動くとは・・ですが、いまは暫く大人しくしてもらいましょうか。」

栗田教授がそう言うと佐恵子の身体は後方に吹き飛び、待合室の壁に、どん!と大きな音をさせてぶつかると悲鳴を上げた。

「ぐぎぃ・・!」

妙な発音を発し両手がだらりとさせ、顔を俯いたまま佐恵子は動かなくなった。

「命に別状はありません。少し静かになってもらっただけです。意識もあるでしょう。・・・おや・?・・お客さんのようですよ?」

栗田教授は自分の後方から近づいてくる気配と足音を察知して振り返るとそこには、3人の人影があった。

「あらあら・・少し前から見物させてもらってましたが、酷いものですね」

カツカツとヒールの音を病院の床に響かせながら、ゆっくりと歩き栗田教授の脇を抜け、床に座り込んでいる佐恵子の前まで進んでくる。

「・・・紅音!」

佐恵子は念動力で封じられた不自由な身体で紅音を見上げる。

「「紅音さん」でしょう?相変わらず目上に対する言葉遣いができてないですね」

「・・なるほど・・。菊沢部長達が焼き殺されそうになったっていうのは貴女の仕業ですわね?・・貴女がやりそうなことですわ・・!」

「ふん・・、貴女にそういう事言われるほうが驚きです。・・それに、橋元不動産に関することは全て抹消せよとの命令を受けていたのでそうしたまでです。たまたま居合わせた従業員を攻撃に巻き込んでしまったのは先ほどお詫び申し上げたところです。ねえ?菊沢部長」

「・・・まあ、な。言いたいことはたくさんあんねんけど、いまはええわ。それでなくてもごたごたしそうやしな」

紅音は宏に対してそう言うと、宏も魔眼の脅威が去ったのを確認してスノウを開放すると紅音に向かって言った。

「そういう事ですね。後で聞きましょう。緊密に話し合わなければいけないことも多いようですし・・ね」

紅音は自身の綺麗な赤髪を人差指で弄びながら、笑顔で菊沢宏にそう言った。

そして、佐恵子に向き直り、ベストのポケットから折りたたんでいたA4用紙を取り出し広げて佐恵子に向けると、文字通り見下した笑顔で続ける。

「宮川佐恵子。辞令を申し渡します。今月限りにて関西支社長の任を解き、関西支社総務部部長代理へと降格いたします。神田川真理、稲垣加奈子の両名は引き続き支社長主席秘書を務めよとのことです。・・・すなわち両名はわたくしの部下・・と言うことになります」

「な・・なん・・?ですって・・?」
 
【第8章 三つ巴 47話 波紋と波乱と失脚終わり】第48話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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