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第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 

第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 


「くそっ・・平気で違法行為してくるわね!スマホが使用不可にされてる。真理のはどうなの!?」

府内中心部から一駅離れた賃貸ビルの一室で、加奈子は拝借したタオルで身体を拭いながら、部屋のあちこちを歩き回って電波が拾えないか試している。

部屋には真理と二人しかいないため、加奈子は水に濡れて、更にぴっちりと肌に張り付いたアーマースーツの前ファスナーをヘソの下まで降ろし、あられもない格好のまま電波アンテナが立たないかとイライラとした様子で部屋をうろついている。

ボリュームのある白い双丘は形を崩すことなくツンと上を向いたままで、加奈子は「あーもうびしょびしょ」と言いながら、汗とスプリンクラーで濡れた身体を拭いつつ、スマホ片手に部屋を行ったり来たりしている。

そんな加奈子の様子とは対照的に真理はソファに座ってスマホを触りながら呟く。

「・・強引な手ね。紅音らしいわ。宮コーの執行役員ともなると権限の範囲は絶大だし、いろんなところに顔もきくものね。・・はぁ・・だめ・・これじゃモバイルオフラインパソコンだわ。佐恵子とも連絡がつけられないし、今後のことも考えなきゃいけないのに・・」

同じく真理も加奈子から投げ渡されたタオルで髪の毛を拭いながら、スマホ相手に暫く格闘していたが諦めて肩を落とした。

真理は公麿から借りていたジャケットを脱衣所に脱ぎ、引き出しに入っていた公麿のものであろう黒いTシャツを借りて着ている。

スプリンクラーの作動によって借り物のジャケットもパープルのショーツもびしょ濡れだったので、それらは脱いでしまっている。

いま真理は男物のTシャツ一枚をワンピースのように着ているという無防備な格好だ。

(北王子さん。あとで洗ってお返しするので、少しの間拝借させてくださいね)

心の中でそう断わった真理は、誰にもわからない程度で赤面する。

洗濯されてはいるが、Tシャツからは嗅ぎ馴染みのない男の香りに少しだけ鼻腔を擽ったからだ。

しかし、状況は芳しくない。

その北王子公麿の安否も気がかりだ。

公麿は心配ないとは言っていたが、そんなセリフは真理や加奈子を安心させるための方便であることは真理達にも分っていた。

能力者を多数抱える宮川コーポレーションだが、その中で宮川一族の次に有名な能力者は、紅蓮の二つ名を持つ緋村紅音だ。

その災厄に近い相手から北王子公麿は無事逃げおおせられたかどうか、真理は心配から両の手をぎゅっと我知らず握りしめていた。

しかし今は信じて待つしかできず、公麿の指定したこの部屋で祈るしかできない自分を歯がゆく思っていた。

真理は再度部屋を見回す。

メガネ画家こと北王子公麿が真理に託した画用紙には、この賃貸ビルの一室の住所と部屋番号が記載されていたのだ。

玄関は当然施錠されていたが、託された画用紙の切れ端にはドアナンバーも記載されていた為、問題なく部屋に入ることができたのである。

指示されたこの部屋は、オートロックでこじんまりとした2LDKの部屋であり、男性の部屋の割には、比較的整理整頓されているほうだ。

というよりも、部屋には、そもそも置かれているモノ自体が少ない。

部屋に生活感はなく簡素で大きなベッド、ソファそして姿鏡と大型テレビがフローリングに設置されているが、どれもまだ新しい。

キッチンも料理をしている様子はなく未使用状態のままで、冷蔵庫も封のされたままの水のペットボトルが数本と固形物の非常食が数日分入っているだけであった。

スマホを使うのを諦めた真理は、紅音が巻き起こした宮コーでの騒ぎがニュースになっていないかとふと思い、テレビのリモコンを操作し、深夜に放送している番組のチャンネルを適当につける。

テレビ放送の契約はしているようで、大きな画面に映像がうつり深夜のニュース番組がうつった。

「・・・北王子さんはなんのためにこんな部屋を・・職業柄こういう隠れ家的なものをあらかじめ用意していたのかしら?・・・それにしてもあんな騒ぎを駅前のビルで起こしたのに、パトカーのサイレンも鳴らないし、どこのテレビ局も報道してないわね・・・」

真理がチャンネルを変えながらポツリとこぼす。

部屋の中心に大きなベッドが置かれいる配置はやや不自然さを感じさせる。

しかし、加奈子が一通り身体と髪を拭き終わったようで、真理の独り言には応えず濡れたタオルを丸め、脱衣所にある洗濯用のアミかごにビューン!バシン!と投げ込んだ音で思考が中断される。

そして、乾ききっていないアーマースーツに再び豊満な胸を押し込みながら慌てた口調で口を開く。

「真理はここで待ってて、その格好で外に出かけてもらうわけにいかないし、佐恵子さんにもこの状況を伝えて連れてくるわ。私と真理の着替えと貴重品も持ってくるから・・。言っとくけど止めても行くわよ?」

加奈子は胸元のファスナーを開いて、胸の内ポケットに使い物にならなくなったとは言え置いていくわけにもいかないスマホをぐいっと突っ込んでからファスナーを再び首元まで上げると決意した表情で真理に言った。

しかし、真理は加奈子の予想とは違う返答をしたのだ。

「私も行くわ」

ソファに座り顔を伏せたままの真理は、加奈子が言い終わると同時にこたえる。

「止めても行くって言ったでしょ?!こればっかりは・・・え?・・真理も・・?だ、だめよ!私だけで行くの。真理はここにいて?」

加奈子は、てっきり真理に止められると思っていた。

今迄の加奈子の経験上、こういう時、真理はジト目でため息交じりに説教じみた口調で止めてくるのが通例だ。

しかし、止めるどころかまさか真理まで一緒に行くと言い出すとは・・。

「ど、どうして・・?」

言いながら加奈子は真理の表情を読もうとのぞき込む。

一緒に行くと言った真理の表情は、俯いているためよく見えないが、加奈子から見ると少しばかり暗く見えた。

普段から笑顔のポーカーフェイスの真理だが、付き合いが長いため、加奈子には今の真理の表情や態度には違和感を感じていた。

「・・どうしたの?なにか気になることがあるの?」

加奈子はソファに座ったままの真理に声を掛ける。

「紅音は・・今日たまたま我慢の限界がきたから私達を襲ったのかしら?」

真理は伏せていた顔をふぃと上げ、加奈子を見つめて言う。

「そうじゃないの?あいつ短気じゃん・・」

真理の見慣れない様子に加奈子は不安を感じつついつもの調子で応える。

「・・もういいと思ったのも事実でしょうけど・・。私たちがいないほうがいい・・。・・私たちがいないほうが・・都合がいい・・?今日までなら我慢した・・?」

真理はなにか言おうとしたが、途中からブツブツと口の中で煮え切らない自信の考えの方向を纏めるように反芻している。

「真理。なにか引っかかるの?何か知ってるの?・・・私、どうしたらいい?」

加奈子は真理の座っているソファの前にきて跪き顔を近づけて聞く。

真理の能力は【未来予知】。数秒から数十秒の範囲での危険を察知する能力であるが、その性質から、真理自身も普段から長中期的な計画を練る時は、リスクヘッジを必ずするように習慣化されている。

加奈子はいままでの経験上、真理の考えた通りに動いたほうが良いことは身をもって経験しているのである。

だから加奈子は真理の言葉を待った。

「・・まだ何とも言えないんだけど、加奈子にしてほしいことだけ言うわね?まずはとにかく佐恵子のところに行って無事連れてきてほしいの。あとは美佳帆さん達、調査部の人達の安否確認・・・かな・・」

かなりざっくりとしたプランだが加奈子は力強く頷いて即答する。

「わかったわ」

佐恵子のことは最初から連れてくるつもりだったし、美佳帆達の安否確認もお安い御用だ。

ただ確認のために聞いておかなければいけないことを同意の言葉の後に続けた。

「・・でも佐恵子さんのところには私たちが逃げ込んでないかって紅音は疑うだろうから、すでに手が回ってるはずよ?・・・どうするの?・・・誰かすでにきてたら・・やる?」

加奈子は元同僚とも戦いになるかもしれないということにさすがに躊躇したのか、真理の次の言葉をさらに待った。

その加奈子の様子に真理はようやく安心させるような笑顔になって頷き続ける

「ううん。極力戦闘は避けて。はななんかと戦えないし、・・それに、魔眼無しの佐恵子だと、紅音本人じゃなくても、彼女の部下・・松前常務や紅露部長が相手でもかなり厳しいわ。・・・こっそり接触して連れてくる・・と言うのが理想ね」

真理は目を閉じ、眉間に人差指と中指を当てて、「かなり難しいけどやるしかないわね」と自分に言い聞かすように呟いている。

「よし、じゃあそうと決まったら行くわ」

「加奈子。私達宮コーからは反逆者として追われることになると思うけど覚悟・・ある?」

両手で頬をパンパンと叩いて意気込む加奈子に真理は覚悟を聞いたが、彼女に限って心配はなかった。

「当然!」

「ふふ・・加奈子には愚問だったわね」

加奈子はサムズアップしたポーズで白い歯を見せて即答したのに対して、真理は目を細めて笑ってかえす。

「うんうん。でも真理。真理はここにいてね。メガネ画家が帰ってきたとき誰も居なかったら、彼どっかに探しに行っちゃうかもしれないから真理はここにいてよ」

加奈子の言葉に真理は細めていた目を見開く。

「・・・加奈子。一人で大丈夫?」

真理はそう言ったものの、加奈子の返答は予想してた。

「こういう事は私一人の方がうまく行く・・。真理も実はそう思ってるんでしょ?それにそんな恰好で出かけるより、その格好で男を出迎えてあげたほうが良くない?」

「か、加奈子!」

予想してたこと以外のことまで言われ、真理は頬を少し上気させて相棒を非難した。

「にしし・・。じゃ、行ってくる!必ず戻るから!・・・それに、メガネ画家もここに来るとしても、きっと無傷じゃないわ。彼も治療を使えるようだけど、真理も居てあげたほうがいい。・・・でしょ?」

「そりゃ・・そうかもしれないけど・・佐恵子をのほうをお願い。紅音がなりふり構わず彼女を狙ったらおしまいだわ。今の佐恵子じゃとても対抗できない・・。必ず連れてきて。紅音もさすがに無茶しないでしょうけど・・」

「もちろん!」

宮コーから追われ、紅蓮こと緋村紅音という災厄から逃げてきた二人には、思いのほか悲壮感はなかった。

ただ、真理と加奈子にとっては、これからやるべきことが増えて、少し変わっただけだった。

宮川の後継候補の中では、彼女たちの中では佐恵子しか考えられないのである。

加奈子がベランダから跳び夜の向こうに消えていったのを見送ると真理は窓を閉め、再びソファに座った。

・・・宮コー社内では常に業務のことが頭にあり休む暇もなかった真理は、この時この部屋でできることは無く、ただソファに座って今日助太刀に来てくれた男が無事帰ってきてくれるか祈るだけであった。

どのぐらい座っていたのか、真理はいつの間にか微睡んでしまっていたようで、ふと時計に目を向けると午前0時を少しだけまわっていた。

「いけない・・。20分ほど寝てたんだわ・・こんなときに・・」

自分を責めるが、それほど消耗していたことに気付かされる。

その時、玄関の方で物音がした。

反射で【未来予知】展開する。すぐ扉が開くが危険はないと能力が頭に伝えてくる。

「北王子さん!」

真理は声に出していた。

扉を開け倒れ込むようにして入ってきた男、北王子公麿を受け止める。

「真理さん・・。なんとか帰ってこれました・・。あ、失礼・・神田川さん」

「北王子さん・・よくぞご無事で!。こちらへ!ああ・・こんなに・・火傷が酷いです!・・やはり紅蓮の攻撃を随分受けたのですね!」

「大丈夫ですよ。これぐらい・・。大きなのを二つもらっちゃいましたけど、哲司君に鍛えられたおかげで、ほとんど避けられたんです。それに、僕の能力だと紅蓮と言えども刺しきるのは難しいようですね・・。痛つつ・!」

「しゃべらないで。すぐに治しますから!」

真理は公麿を部屋の中央にあるベッドに座らせると、真理自身も公麿の隣に座って、両手で治療の淡い光を発し、公麿の火傷の酷い肩から胸を手で覆った。

「ああ・・真理さんに治療していただけるなんて・・。逃げる時に全力で肉体強化したので、しばらく自分で治療を行えそうもなかったので助かります」

公麿の口調や態度とは裏腹に、肩口と胸に直撃したのであろう火球の後が、えぐい傷口となっていて真理の形の良い眉を顰めさせた。

公麿の着ていたシャツは炎でボロボロであり、真理はそれらを剥ぐようにして公麿の患部を露出し、必死に治療を施す。

「ああ・・ここも・・!そのまま、仰向けに横になってください」

真理は公麿をベッドに仰向けにすると、ところどころ焼き切れたカッターシャツを剥がし、火傷に手をかざす。

真理は、借り物のTシャツだけの姿だということも忘れ、ベッドの上に膝立ちになり、公麿の肩、胸、腰に治療の手をかざしていく。

「明日以降の事はどうなるかという事に関しては頭が痛いところですが、僕が大事だと思うのは、あの状況下で神田川さんあなたと、稲垣さんが無事であったという事です。それ以外の事は、今はもう大したことではありません」

治療に専念し集中している真理に向かって公麿は火傷の痛みが引いてきたのを心地よく感じながら、真理が膝立ちになっているためTシャツの裾がかなり際どいところまでたくし上がっているのをチラチラと盗みながら真理の表情も同時に見る。

北王子公磨は、今明らかに彼の人生では普通に生きていれば、ありえないほどの彼とは釣り合いの取れない女性が、今治療という名目とは言え、彼の身体にベッドの上でTシャツ1枚という姿で触れているという事実に命をかけた甲斐があったなとしみじみ思い、この先に起こるはずないであろうとは思うが、万が一の神田川真理という高嶺の花との情事を一瞬、無意識に頭をよぎらせては、首を横に振り大きく否定した。

【第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 終わり】12話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 12話 ミスパーフェクトと画家の交わる点

第9章 歪と失脚からの脱出 12話 ミスパーフェクトと画家の交わる点



真理は、先ほどの宮コー関西支社の支社長室での紅音との大立ち回りから逃れてきたときのままの格好で、ここは公磨の別荘的存在の部屋なので当たり前だが女性ものの着替えがあるはずもなく、上には公磨の上着であるスーツの上のジャケットを羽織っていたが今は公磨の物であろう黒の長めのTシャツをワンピースのように被っていて、、その下にはブラジャーも紅音にはぎとられたのでつけておらず、薄紫色のショーツ1枚だけの姿でいたのだがそれも戦闘中の放水により履いていても気持ち悪いだけなので脱ぎ捨てていた。

ベッドで横たわる公磨からは、膝立ちで公磨を治療する公磨の物である黒の真理が着たらロングTシャツのようなミニワンピースのようなシャツをかなり下まで引っ張ってはいても、さすがに隠せる素肌には限りがあり、視界には真理の艶めかしくも潤いを帯びた少し動いただけで、男心を刺激する肉感の太ももが嫌でも入ってくる。

公磨が、真理に視線のピントを合わせるとTシャツだけではとても隠し切れない、下半身の豊満ともいえる白く揺れる肉や、かすかに見えるいやや暗がりの為、陰になり奥までは見えないが真理の女性自身の象徴部分に発言の後に再度視線を外してしまう。

『北王子さん、今日は本当にありがとうございました。私と加奈子が無事に紅音から逃げることができたのは、北王子さんのおかげです。それに北王子さんが無事に帰ってきてくださった事に、私は本気で嬉しく思っております。あの時・・・あの紅音にとどめを刺されそうになった私たちを守って、殿を務めて下さると仰ってくださったときに・・・その北王子さんが、口にされた・・・事ですが・・・』

真理はそこまで話すと少しうつむき、白い肌を桜色に染めていくのがわかる。
恋愛経験も性体験も加奈子、佐恵子に比べれば同期の中でも群を抜いて豊富な真理ではあるが、それはこれまでは全て真理の性格上ドライなもので、彼女は男性に本気になった事などなかった。

その理由は、真理の隠し能力の1つで、性行為をした男性の性行為をした事実のみの記憶を消すという事が出来たので、真理が1度肌を重ねた相手でも、真理のお眼鏡にかなわなければ記憶を消されその行為自体無かった事になっていたからに他ならない。

そして真理は、栗田教授にこそSEXを1回分借りてはいるが、まだその権利を栗田自身が行使していないので、真理の数多い性体験の中にも能力者を相手にした事がなかった。

真理は現時点ではこう思っている。

(自慰行為以上に気持ちの良いSEXは無いのよ・・・)

しかし今そんなドライな男性遍歴を持つ真理が、間もなく三十路を迎えようとする年齢なのにも関わらず、1人の男性を相手に2人きりの空間に身を置く中、全身が彼への意識から紅潮してしまっていたのだ。

その真理が身体を頬を桜色に染めてしまった原因となる相手の口が開く、

『あっ・・・はい・・・あっあんな状況でしたので・・・ぼっ僕も、あのときはもちろん本気で生きて帰るつもりでしたが、相手が相手でしたのでそんな保証もなかったので・・・それで、神田川さん、あなたを初めて見たときから、僕があなたをどう思っていたかという気持ちを・・・その死ぬかも知れない前にお伝えしておきたく・・・』

真理も高いIQに、高学歴、それに場の空気を読むことも人並み以上に出来る一般よりは余程優れた良識ある社会人なので、公磨の気持ちには普段の素振りから気づいてはいたが、今日の今日までは、そんな公磨もその他の男性と同じ、有象無象と同じ扱いをしてきていたが、紅音のオフィスでの公磨の意外性と、勇気、そして真理としては意外にも男性に守られると言う経験が初めてで、守られるってこういう気持ちになるんだ・・・と今更ながら哲司にぞっこんになってしまっている佐恵子の気持ちがわかったのであった。

そんな公磨が、今2人きりの状態で、自分の対する好意を真正面からぶつけてきてくれている。そして自分自身その公磨の気持ちを嬉しく思っている。

数多の男性経験を有する真理ではあるが、今初めて心が動いているのかもしれない。これが恋なのかも・・・とこの年になり初めて感じている真理は、男性相手に経験した事も無い鼓動の激しさを感じていた。

『北王子さん・・・私も嬉しく思います。北王子さんのお気持ちも、今日私を救ってくださったときの、北王子さんの勇敢な行動も・・・北王子さん・・・北王子さんには先ほど一通り治療はほどこしはしましたが、まだ、小さな傷や火傷が数多くあるかと思いますので、その治療の続きをさせてください。せめてものお礼に、私にできることでお返ししたく・・・』


真理はそう言いながら、軽く公磨の手首に自分の手を回すと自分の方へ公磨を引き寄せた。

『あっ・・かっ神田川さんっ・・・いえ、自分は平気ですよっ先ほどのあなたの治療でもう元気です!それに僕が大切に思う人たちを・・・特に神田川さんを少しでも守れたという名誉の負傷ですので・・・あっ・・・そんな・・・膝枕まで・・・』

公磨の手を引き、正座を崩したような座り方をした真理のTシャツをワンピースのように着ている裾から、覗く白く豊潤な太ももを枕のように横たわらされた公磨。

『これくらいは・・・あっでも北王子さん・・・実は私、男性に膝枕をするのは、恥ずかしながら初めてかと・・・』

真理は性経験こそ多かったが、それは全て自分のストレスや性欲のはけ口にしていただけなので、男性に献身的に何かをしたいと思い、膝枕のような行動に出たのは事実初めてであった。

『そんな・・・凄く光栄です神田川さん・・・僕は、全国の神田川さんファンに殺されやしないでしょうか?緋村さんから逃げきれても今度は神田川さんのファンの男たちに撲殺されてしまいます・・・』

本気か冗談かわからない、いつもの口調で公磨は、真理の太ももの感触を頬で味わい、そろそろ眼を閉じようかと思いその前に見慣れた部屋をいつもより低い視線で見渡すと、神田川真理という1人の美女がいるからかそこはまた別の景色に見えてくる。

すると真理は、公磨には見えていないが、優しい暖かい視線を公磨に送り笑顔で、

『ふふふ・・・北王子さん、そんなファンなんて私には居ませんよ。もしいたとしても・・・(私の心はもうあなただけの物です・・・)北王子さんにこうしている事なんてその人たちにわかるはずもないじゃないですかっ』

と言いながら、さすがに真理自身の本心までは口には出せずに、しかし好意を持っている事は伝わるような口調で、公磨の傷はすでに先ほどの真理の回復で完治はしているが、治療を口実にこの体勢に持ち込んだので治療オーラをながしながら、なでるように公磨の肩から胸そして腹部へ手を滑らせていく。

(うっ・・・こっこれは、先ほど治療で触れられた時とは違い・・・なんだか、あの神田川さんに膝枕をしてもらい、優しく・・・しかも少しエロティックな指の動きで身体を這わされると・・・ぼっ僕の男性のシンボルが・・・まずいっこんなところでポテンシャルを最大限に発揮せずとも・・、しかもこんな体勢でシンボルが戦闘モードに入ると、僕を上から見下ろしている神田川さんの視界には絶対にその変化に気づくではないかっ!おっ大人しくするんだ子公磨っ)

公磨は頬には、官能的な肉感の真理の膝上の感触を、シャツは治療の為に脱がされ腹部や胸の素肌、そして今は膝のあたりから上に感じる真理の細く繊細な指のタッチを受け、公磨の男性器は瞬く間に、平常時の2倍以上に膨れ上がり、膝までまくり上げられたスラックスにはテントを張っていた。

(ふふふ・・・北王子さんったら・・・もうっこんなにしちゃって、でも、男性にこういうふうに大きくなられて、こんなに嬉しい気持ちになるのも初めてかも・・・あら、いやだ・・・・私、もしかしてすでに・・・)

勿論、真理には公磨の破裂寸前の大勃起状態は視界に入るが、今はお互い無言で膝枕をされている公磨を、まだ引き続き治療をしている真理という図式で表面上はいる2人。

しかし、真理は公磨の勃起を見てか、昂揚しながら公磨をなでる指先から感じ取れる公磨の興奮を抑えようとする挙動からか自身の股間も、公磨の股間同様、生殖行為を本能的に求めている状態にある事に気づきさらに頬に熱を感じるのであった。

公磨は、今頭を動かし顔を今向けている方から後ろを向けるだけで、眼前に広がる光景が、いつも自分や哲司が私用に使っている部屋の見慣れた風景から、一気にこの部屋にはあってはいけない美女の花園と景色が変わるのだという事を意識しはじめてからは、もう公磨には理性という防波堤を性欲という大波が乗り越えていくのには時間がかからない所まできていた。

公磨が、

(無念!もはや、僕の理性もここまでかっ!神田川さんっあなたの肌の感触に、全身から発する女性フェロモンに打ち勝てる男などこの世にはいません!いたらそれこそ勃起不全野郎ですよっ!)

と心の中でも、ツッコまれそうな事を思った瞬間、公磨のスラックスのファスナが降ろされる感触を、目を閉じながら感じていた。

(えっえっ・・・神田川さん・・・)

公磨が心の中でも挙動不審になっていると、真理の先ほどとは少し違う、いわゆる笑いながら話しているような笑声に少し妖艶さすら感じる声で、

『あの・・・北王子さん、こちらの方も・・・その苦しそうですので、少しズボンを緩めさせてください・・・失礼しますね・・・』

そういいながら、公磨の下半身を瞬く間にボクサーパンツ1枚にしてしまうと、公磨の怒張した男性器はヘソまで達するほど勢いを増していた。

『あっ・・・あらぁ・・・こんなに・・・こちらの方も・・・治療が必要のようですね。北王子さん・・・北王子さんが、ダメだと言っても・・・ここは治療系能力者の第1人者として、強制的に治療させて頂きますので・・・』

『えっ・・えっ・・・か・・・かんだがわ・・・さん・・・?』

公磨は現実なのか自分の妄想なのかもうわけがわからなくなってくるほど混乱した頭で、今起こっている事を理解しようとするが、ボクサーパンツ1枚にされたと思いきや、そのボクサーパンツの中に滑り込んできた、天使の指先が官能的な動きで自分の男性器の先端から、肉棒の茎、そして睾丸を包む袋まで這わされると公磨の理性のダムは公磨の心の中で音を立て崩壊し公磨は顔の向きを真理の花園に向けそのまま顔を真理の太ももと太ももの間に、うずめ込んでしまうのだった。

『あっ・・・北王子さん・・・そちらを向くと・・・あぁ・・・(私が濡らしてしまっているのがバレちゃいます・・・・)』

『かっ・・・神田川さん・・・不詳北王子公磨・・・これでも一応男のはしくれ・・・・あなたのような魅力的な女性にこのような接触を試みられてしまえば・・・大人しくしていられるほど、賢者ではございませんものでして・・・』

真理の股間に顔をうずめたまま、くぐもった声でそう言う公磨は、そのまま右手で真理の太ももの感触を確かめるように、揉みだしていく。

真理もその公磨の行為に応えるように、いやそうされる前から、公磨の男性器に治療を施していて、その治療にもさらに熱が入りだしていくのであった。

公磨と真理という世間から見れば、ベクトルは違うが浮世離れした2人がお互いの生殖器をお互いにさらしながらも、片方はまだ治療と言い張り、片方は意味不明な言葉でこの行為に対する言い訳を拒まれてもいないのにするのが滑稽ではあるが、能力者同士の性的行為は、通常に人間を相手にするよりよほど感覚が研ぎ澄まされ性感も何倍にも向上するので、このまま止めれるはずも無かった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 12話 ミスパーフェクトと画家の交わる点終わり】13話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 13話 能力者同士の交わりとその快楽

第9章 歪と失脚からの脱出 13話 能力者同士の交わりとその快楽

北王子公磨の別荘と言うにはほど遠いが、仲間の豊島や三出とのたまり場として使っているマンションの一室のベッドでは、今、この部屋の持ち主の北王子公磨と、国内屈指の企業のエリートキャリアウーマンにして道を歩けば男性なら誰もが振り返るほどの美女の空気感を漂わせる才媛、神田川真理がお互いがすでに身に1枚の衣服もつけていない姿で双方が双方の下半身の性器に舌を這わせていた。

(こっ・・・これが神田川さんの神秘の花園・・・神田川さんのような、清楚に見える女性であっても、このように淫らな液体が大量に流れでてくるものなんだな・・・)

北王子公磨も、豊島哲司や三出光春同様、独身をとおしてきた身なので、2人に連れられ性風俗店には良く行っていたので、性行為の経験は意外にも豊富であった。

そんな経験が意外にも豊富な北王子公磨も、神田川真理のようないわゆる高嶺の花とされるような、一流企業のエリートOLを相手にした経験は初めてで、童貞のそれのような感想を心の中で述べていたのであった。

しかし、公磨も性行為に関しては百戦錬磨、どこをどうすれば女性が感じるのかという事は、熟知していて目の前にある真理の白く豊かな臀部の双球、そしてその双球から伸びる美しくも肉付きの良い先ほどまで、その感触をおしみなく堪能させてもらった大腿部。

そして、公磨が神秘の花園と称する、濃くも薄くもない茂みの中央に広がる真理の肉ひだの中からは、透明の真理の快感を物語る量の淫液があふれ出てきていて、陰核を舌で包み込むようにして舌先でさらに刺激を与える行為をしている公磨の舌にもその液体が自然と流れ込んでくる。

そして、公磨の男性器を口に含み、【治療後の消毒】をしている真理の口の中では、公磨の男性器が2段階ほどにわけて、そのサイズは膨れ上がっていた。

真理も宮川コーポレーションの女性社員の中では、その性体験の豊富さは屈指で、佐恵子や加奈子に比べれば群を抜いているだけあり絶妙の口淫技術を誇っていたはずなのだが、公磨のまさかの高等技術と思える陰核責めから、蜜壺の中の肉壁のスポットを指で先ほどから刺激され続けてしまえば、公磨の男性器を口で【消毒】できなくなってきて、ベッドのシーツを両手で握りしめたまま、公磨の真理の治療の効果もあり元気に復活した男性器を口から放してしまい、バチンと頬に公磨の男性器にビンタされる形になった後、股間に顔をうずめたまま、公磨の真理への下半身責めの快感に防戦一方になっていた。

(まさか・・・・北王子さんがこれほど、慣れているなんて・・・あぁ・・・どうしよ・・・私が、北王子さんを気持ちよくさせてあげるつもりが、私の方が気持ちよく・・・そしてこのままじゃ私、北王子さんに、淫らな女性だと・・・思われてしまう・・・でっでも、こんなに気持ち良いことされてしまうと、もう北王子さんのご奉仕できる余裕なんかないわっ…あぁぁぁ声が出そうっ)

ペロペロペロ・・・チュパチュパ・・・ジュルルルッ・・・

六畳のベッドのある一室には、真理の精液が滴りそれを公磨が吸い尽くし、公磨の指の動きで真理の女性器の内部を、丁寧に刺激したり、時には激しく刺激したりすることにより、クチュクチュクチュという隠微な水温だけが響いていた中に、甘美な女性の声が混じるようになってくる。

『あっ・・・あんっ・・・はぁはぁはぁ・・・(気持ちいい・・・北王子さんの、舌、指が私の感じるところばかりを・・・)あっ・・・あぁ・・・』

クチュクチュクチュクチュッ!!!!!

『かっ・・・神田川さんっ!神田川さんが、こんなに濡らしてくれる女性だったとは・・・はぁはぁはぁ・・・もうすぐですからねっ!もうすぐ神田川さんの、ここから、たくさんの清き水が噴き出すはずですっ!いいですねっ!続けますよっ!』

クチュクチュクチュクチュッ!!!!!

ジュプジュプジュプジュプジュプジュプッ!!!!

真理のいわゆるGスポットと呼ばれる膣内にある性感帯を公磨は難なく発見すると、中指の第二関節を少し折り、指の先から腹をあて微振動のような動きをしたと思うと激しくその動きに合わせ出し入れもくりかえし真理の股間から奏でる、BGMは先ほどまでのリズムよりも2倍速にしたくらいの早さになりボリュームも心なしか上がる。

『えっ・・・北王子さんっ・・・うそっ私っ・・・こんなのっ!こんなっ(指だけでこんなに早く逝きそうなの初めてっ!しかももしかして・・・久々に吹いちゃいそうっはずかしぃぃぃ)あっああっ!あんっ!!きたおうじさん~!!!!!もうダメですぅぅぅぅっ!!きゃぁぁぁぁっ!!!んんんんっ・・・』

真理は公磨の、指の責めにノックアウト寸前で手で掴んでいたシーツを口に当て噛みしめながら、最高の快感で喘ぎ、絶頂を告げる言葉を吐くのを羞恥心から無意識に拒否した。

これまで数多くの性経験をしてきた真理は、その後、真理の能力により相手の男性は真理との行為の記憶を消されてきたので、真理も自由気ままに乱れてこれたので、このように快感を我慢し、乱れるのが恥ずかしいと思う相手との行為自体が初めてだったので絶頂を迎えるその時が、これほど羞恥により身体に熱を帯びてしまうのかと、股間から放水していき頭が真っ白になっていく感覚の中考えていた。

クチュクチュクチュクチュッ!!!ピシャァァァァ・・・・。

北王子公磨の指と舌により、公磨の顔に下半身を預けた四つん這いの態勢のまま、公磨の顔に潮を吹いてしまい、膣内の秘所を指で振動を与えるような刺激をされ大きく絶頂に達してしまっていた。

今日は、紅音との戦闘から、逃亡、そして北王子への回復に体力にオーラをかなり消費したあとに、まさかの絶頂をさせられた真理はぐったりとベッドに横たわる公磨に逆さにかぶさるように力が抜け力つきていた。

『か・・神田川さん、大丈夫ですか?・・・沢山素敵な神秘の液体が出ましたね・・・(本当に僕のメガネを最高の水で洗ってくださって・・・)神田川さんに感じて頂けて、僕も嬉しいですよ・・・』

そういいながら、公磨は真理の下半身の臀部の双球や、大腿部の白く豊潤な柔肉の感触を手で楽しみながら、再び陰核に舌を這わせている。

『あっ・・・はいっ・・・申し訳ありませ・・・あっ!!・・はぁはぁはぁ・・・北王子さんを、気持ちよくさせなきゃいけないのに・・・私、ばかり・・・あっそんな北王子さん、私、先ほど・・・んんっ・・ばかりですから、・・・あっ・・またっそんなにしちゃうと、また・・・んんんっ!!』

ぐったりした状態の真理は、公磨の戯れだけで再び絶頂感が襲ってきそうなほど、身体は熱を帯び、感じやすい身体へと変貌を遂げていた。

三十路を間もなく迎える年ごろの経験も積んだ真理の身体は、今1番旬なのであろうが、真理がこれほど感じさせられるには公磨が指にオーラを流しながら真理を責めていたからでもあり、能力者同士の性行為の場合、お互いが性感がより鋭敏となり感じやすいという特徴があった。

公磨も真理もこれまで、能力者との性行為の経験はなくこれが初めてなので、お互いが人生で経験した性行為の中で1番の心地よさを感じている。

真理の戸惑いもそのあたりが大きく原因していた。

(ダメかも・・・私、これを、アソコに欲しくなってきている・・・北王子さんが欲しい・・・どうしよう・・・自分から、挿入しちゃうのなんて、普段している記憶を消す前提でのワンナイトならどうってことないのに・・・私、今日はこのまま今後も北王子さんのパートナーにしていただきたいので記憶を消すなんてことはしない予定だから・・・今日のこの事実は、北王子さんの記憶にも残るし・・・北王子さんは、淫らな女性は嫌いかしら・・・私から求めて・・・北王子さん、幻滅したりしないでしょうか・・・あぁ・・・でも、もうっ・・・・)


そんなとき、公磨も同じ思いだったのか公磨も真理の下半身の肉を堪能しながら口を開く。

『あっあの・・・神田川さん、僕のがまだ大変元気なままなので、神田川さんのここにお邪魔して、こいつをスッキリさせてやりたいのですが・・・』

まさかの公磨からの挿入志願に、真理は一瞬声が裏返ってしまうが、

『えっ・・・あっ・・・はい・・・北王子さんでしたら、私は・・・喜んで受け入れさせて頂きます・・・』

と応え、真理は普段の凛とした表情とはかなり違う、うっとりとしたような笑顔で、公磨の方を向き公磨の段階を踏み巨大化してきた男性器を細い指でなでながら握ると公磨の下半身に跨るような体勢になる。

『あっ・・・神田川さん・・・・』

公磨も男性器に感じる、真理の手の感触で昇りつめてくる快感を受けながら男性器の先端まで真理の受け入れ態勢が整いすぎている女性器が迫ると、自然と真理の腰に手を添える公磨。

『北王子さん・・・それでは、私の中に北王子さんを迎え入れますね・・・んんんっ・・・・(先端が太くて・・・きつい・・・)んんん・・・あっ・・・』

公磨に腰を支えられながら、徐々に公磨の男性器先端を真理自身で締め付けながら、身体を重力に任せ自分の体重を乗せていく。

真理の体重を見事に支えきりそんなことはおかまいなしに天井に向かいそそり立っている公磨の鉄のごとく硬度を誇る男性器を半ばまで迎え入れた時点で、真理はまさかの3度目の絶頂感が襲ってくる感覚に見舞われていた。

『ぐっ・・・・神田川さん、すごい・・しめつけっ・・・きっ気持ち良すぎますっ』

公磨は、真理の腰を少しづつ自分の方へ寄せ挿入を少しづつ深くしていく。

『(こっこれは・・・・うそっ気持ち良すぎますっ!!こんなのっこんなのって・・・)あっ・・・あぁ・・北王子さんっ太いっ・・・あぁ・・・硬くてキツイですっ・・・』

真理はこれ以上身体を沈めてしまうと、まさかの挿入後すぐに絶頂というこれまでの性体験の中では、考えられない失態をおかしてしまうと思い少し腰を自力で浮かせたまま躊躇していたが・・・、

グチュリッ!!!!!!!!!!

なんと自分の腰にあてられていた公磨の両手が、真理の骨細の腰骨を力強くベッドへ向けて引き寄せた。

(最奥に何か来た・・・

私の奥に北王子さんの硬く太い先端が突き抜ける・・・

なにこれ・・・

なんなの・・・

私こんなの知らない・・・・)

様々な思いが同時に脳内をかけめぐり、そして真理の脳内からは、羞恥心という理性が快感という大波に包み込まれ、真理の口からは大絶頂を告げる声が漏れてしまっていた。

『神田川さんっすみませんっ!気持ち良すぎていっきに・・・』

グチュッ!!グチュリッ!!!

そして2度3度最奥を強烈な勢いで殴打する公磨の男性器。

『うそぉぉぉっ!!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!逝っちゃいますぅぅぅぅっ!!!!!!』

1度目の最奥への打ち付けにより、我慢の限界を超えた真理が人生で最も深いエクスタシーを感じ普段の話声からは考えられない大声をあげ、エビぞりになってしまうと第2撃、3撃目が今感じた大きすぎるエクスタシーの波が収まらない間に、さらに大きすぎる快感を与えてくる。

バスンッ!バスンッ!

(あっあの神田川さんが、のけ反りながら僕の突き上げで逝ってくれるなんて、そして大きな形の良い胸を上下に揺らせながら・・・あぁ・・・僕は今日この日をこの瞬間を経験するためにこの世に生まれてきたのかもしれない。全国の神田川さんファンに撲殺されても本望だ・・・しかし、神田川さんの股間の中は、これまでに経験してきた女子に比べても格段の気持ちよさだぞ・・・なんだこの気持ちよさは・・・普段は20分は持つのだが・・・これは・・・もしかしたら結構早く射精してしまうかも・・・もう出し惜しみはしていなれないですね。僕の振動男性器を神田川さんにも味わってもらわなきゃ・・・)

公磨はのけ反り、公磨の男性器に差し込まれていなければ、倒れてしまいそうな真理の腰を支えながら下からゆっくり突き上げていた速度を徐々に上げていくと、男性器にオーラを流し込み、自分の男性器に微振動を加える。

これが公磨が、性技にオーラを応用したオリジナルの技でまさに公磨の男性器は、バイブなどの大人の玩具以上に精密な振動を女性器の中で起こすというものでこれまで公磨の見た目は女性経験がとても豊富に見えない容姿のギャップに騙され数多くの風俗店の女性を鳴かしに鳴かせてきた技で、それは真理も例外ではなかった。

バスンバスンバスンバスンッ!!!ブルルルルッ・・・・グチュグチュッ!!!ピシャァァァァっ・・・・

『ウソっ北王子さんっ中でっ中で北王子さんが奮えていますぅぅぅ奥がっ!!あぁぁぁぁ奥に当たって震動してますぅぅぅぅきゃぁぁぁぁぁつ!!!またっまたきちゃうっ!!またきちゃいますぅぅすごいっ!!すごすぎますぅぅ!!いくっっ!!いくぅぅぅぅっ!!もうだめ~!!!!ひゃぁっぁっ!!』

真理は通常の公磨の騎乗位からの、最奥への突き上げですら未だかつて経験した事のない、膣奥への信じられないほどの刺激から、2度3度と挿入後にありえないペースでエクスタシーの大波の襲われていたのにもかかわらず、そこからさらに能力者同士の性感の共鳴で通常の10倍以上の快感に加えての男性器の最奥での微振動で、天国を味わっていた。

『神田川さんっ!!ごめんなさいっ!これ、次はもっとすごいかも。。。。』

公磨は自分の男性器の届く、最奥の部分に男性器先端を押し付けたまま真理の腰をさらにグッと下に動かしながら、男性器の微振動の振動の強さを上げていく。

ブルルルルルルルッ!!!!!!

『ひぃぃぃぃっ!!!!!!きゃぁぁぁぁぁダメですっ!ダメです~!!!!北王子さんっお願いしますっその振動止めてくださいっ!!私こわれちゃいますっおかしく・・・頭がもう何も考えれなくなっちゃうっ!!いくいくいくいくいくっ!!!いくぅぅぅぅぅっ!!!きゃぁぁぁぁぁっ!!!あっ・・!!!!』

真理は両手で自分の頭を押さえ、首を左右に振りながら美しい黒髪を振り乱し、豊満なバストを左右上下に揺らせながら、発狂したように公磨の腹部の上で踊り、そのまま隣人から苦情がくるかもしれないほどのボリュームで悲鳴をあげ、公磨の上に気を失ったままぐったりと力尽きていた。

『はぁはぁはぁ・・・・神田川さん・・・すごいですよ・・・こんなに乱れてくれた女性は、僕も初めてです・・・嬉しく思いますよ・・・・』

と、自分に倒れ込むようにして抱き着くように乗っかっている、真理の背中に手をまわし頭をなでながら公磨はそうつぶやいたが、肩で大きく息をしながら気を失っていった真理には聞こえていなかった。

この後、気を取り戻し復活した真理は、公磨がまだ射精していない事を気にして、2ラウンド目に突入し、再び今度はバックの体勢から公磨の微振動男性器の威力を味わい、2度目の発狂後の失神をさせられこの時にようやく公磨は、真理の背中に射精することができた。

そして2人はお互い体力が戻ると、今後は恋人同士寄り添い生きていくという誓いを言葉で交わした後、仲良く布団をかぶり幸せそうな表情でベッドに横たわっていいた。

その姿を、荷物を取りに行き帰ってきた加奈子は、何があったかを察し部屋には入って来ずに1人たたずんでいた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 13話 能力者同士の交わりとその快楽終わり】14話へ続く



第9章 歪と失脚からの脱出 14話 猫柳美琴と菊一三銃士

第9章 歪と失脚からの脱出 14話 猫柳美琴と菊一三銃士



シャワーで濡れていた髪も乾き、ジャケットの袖を通したところで扉がノックされた。

「いいわ。入って」

紅音は扉の方を見ずに姿鏡に映った自身の身だしなみを整えながらそう言うと、スーツ姿の大柄で長髪の男が入ってきた。

確認せず入室の許可を出したのは、この部屋まで来れるのは限られた人間だけだということを紅音は知っているからだ。

支社長室はめちゃめちゃに荒れてしまっているので、紅音は15階にあるスイートルームの一室を借り切っていた。

入ってきた男は鏡に向かい、身だしなみを整えている赤毛の背中に声をかけた。

「今日は災難だったな」

「・・来るのが遅い。まんまと逃げられちゃったじゃない」

紅音は鏡の方を向いたまま振り返りもせず、顔の火傷が完治していることを確認するように真紅の前髪をかき上げつつ、ブラシで髪を梳いている。

大柄で長髪の男、丸岳貴司は紅音の声色にすこし非難が含まれていることを察し、素直に「すまなかった」と低い声でこたえた。

紅蓮と恐れられる紅音と、敬語で話をしなくてもいい数少ない人物がこの丸岳貴司であった。

かつて肌を何度か重ね情事を貪り合ったことがある二人だが、近年その機会は全くなくなっている。

しかし、その信頼関係は損なわれているわけではない。

現在宮川誠の愛人としておさまっている緋村紅音に手を出すわけにはいかないのだ。

入社当初とは違い、二人を取り巻く状況は大きく変わっている。
丸岳は密かに紅音とよりを戻したいとは思っているが、それは紅音の性格を考えると無理だと分かっているので口には出さずにいる。

かつてそういう仲であったことも、最早誰にも知られるわけにもいかない。

社長の宮川誠に知られれば、紅音や丸岳にとって良いことは何一つないからだ。

「北王子公麿・・・っ」

丸岳の胸中を他所に、身だしなみを整え終わった紅音が姿鏡を見ながらふいに口にした人物には、丸岳はもちろん知っていた。

元菊一事務所のメンバーで、たしかメガネをかけたインテリ風の男だ。

かなり変わったところがあると噂は聞いているが、上層部からオーダーされている仕事の出来もいいし、丸岳が懇意にしている女子社員数人からの情報では、女子社員の間ではかなり人気もあるらしい。

たしかに、男である丸岳からみても、自分とジャンルこそ違えど、ルックスに関して言えばイケメンな部類に入るように思う。

今はああいうのが人気あるのか、俳優の星野源をもう少し細くしたようなとても戦いに向いているとは思えない風貌のイメージがる。

ただ、それは北王子に限らず、突然入社した元菊一メンバーたちはあらゆる人達からその特異な才や存在感から注目が集まっているし、菊沢宏、豊島哲司なども本人不在のまま、今は女子社員の中では噂の渦中の人である。

特に独身であるらしい豊島哲司と北王子公麿には宮コーの女子社員は興味津々の様子だ。
しかし、菊一のメンバーには既婚者も結構いるのだが、それでもおかまいなしなのはここ最近の時勢ともいえる。
逆に男子社員からは、菊沢美佳帆、伊芸千尋、斎藤雪、斎藤アリサ、今は行方不明となっている寺野麗華の美女たちのことが、少ない情報に尾ひれがつき囁かれている。

悲しい余談だが、三出光春と言われるニコラスケイジ風の濃い顔の男は、女子社員からの人気は低いらしいが、その原因は彼の禿げあがった頭髪から代表される風貌が原因ではなく、彼自身が持つ隠すこともしないだらしないオーラを充満させているからに他ならない。

女子社員の噂話は時として大いに役立つが、丸岳にとって彼らの容姿より、警戒すべきは、彼らが一流の能力者であるが、まったく能力が不明であるということだ。

是非とも味方に引き込んでおきたいものであるが、町探偵などをやっていた者達である。

紅音は彼らを何とか傘下に置きたがっていたが、丸岳はおそらく束縛を嫌う連中の集まりだという見当をつけており、当初から難しいとは思っていた。

全員能力者と聞いているが、能力の種類やオーラ量など詳しいことはわからない。菊沢宏がメンバーのそれを公にはしていないからだ。

能力者が自身の能力を明かしたがらないのは当然なのだが、彼らがすでに入社して3か月、能力を探る様に仕事を与えているが、いまだ芳しい成果は上がっていない。

先ほど現場からの報告では紅音は真理、加奈子に加えてそいつとも戦ったらしいと聞いている。

姿鏡に映る紅音の美しい顔は邪悪な笑みが張り付いていたため、丸岳は紅音の希望についておおよその予想は出来ていたのだが、念のため聞いてみた。

「その北王子がどうかしたのか?」

「あいつだけは必ず私の手で殺すから」

「そうか・・。すでにそういうつもりだったはずだが、わざわざ口にすると言うことはよっぽどむかついたんだな?」

紅音のセリフに丸岳は短く答えた。

「ええ!あいつはレアに焙ってからゆっくり殺してあげようと思ってるの。・・でも、のこりの奴等も予定通りよ」

「けっこうな予算と根回しが必要だったしな・・。紅音の思惑通り一石三鳥となればよいが・・。・・奴らはもうそろそろ集まるはずだ。先に美琴のやつに待機させているんだが、中止ではないんだろ?」

丸岳は以前から企てていた作戦開始のため紅音を呼びに来たのだった。

「そうね・・。思わぬ展開で真理や加奈子と戦うことになって慌てたけど、予定通り彼らには行ってもらうわ」

「それはよかった。いまからキャンセルされたのでは言い訳が思いつかんところだった」

「ええ」

紅音の同意の返答に、言い訳を考えなくてもよくなった丸岳は軽く笑みを漏らし安堵しているように見えた。

「ところであの神田川と稲垣、それとその北王子とういやつ、戦ってどうだった?・・いや、すまん。宮川十指の二人がいたとしても紅蓮相手ではどうにもならんな・・」

今後の参考までにと思い、丸岳は思い出したかのように振り返り紅音に声を掛ける。

「・・そうでもないわ。逃げられてしまったから苦戦した・・ってこと。転生炎も使わざるを得ないほど攻撃も受けたわ」

「まさか。そ、そんなにか?・・紅音が自己回復をしているところなんて俺でも見たことないぞ?」

いつも尊大な紅音がそういうセリフを言う意外さに驚いた丸岳は、自己回復技能を使わせるまで紅音を追い詰めた3人を軽く見ていたと驚く。

「・・北王子公麿というクソメガネ野郎が私の能力の発現を阻害する能力を持っているわ。だからとっとと殺すの。総出で捜索してちょうだい。数で掛かられると面倒。それにクソ加奈子が魔眼を持ってる。片目だけのようだけどね」

紅音の脳裏に北王子の最後っ屁で味あわされた屈辱が思い出され、すでにおさまった陰核が僅かに反応するが、同時に憎悪が胸を焼き、その沸き上がったわずかな快感をギリッと音をさせて歯をかみ合わせることで打ち消した。

「なに?北王子は炎の発現を阻害するのか?あいつは戦えんと聞いたから今回の作戦には入れなかったのだが?・・入れるべきだったか・・。それに稲垣が魔眼だと!?しかし、北王子でそのレベルだと言う事は、我々は菊一の奴らの力を見誤っていたかも知れないな・・・」

紅音の炎能力を阻害する北王子の力にも驚いたが、稲垣加奈子が魔眼能力を使うということにもっと驚いて呻いた。

魔眼を使える人間が増えるとなるとは由々しき事態だ。

オリジナルの方の宮川佐恵子の方も魔眼は使えるままなのか、それとも稲垣加奈子だけがつかえるのか、まさか二人とも使えるのか。

丸岳は事態の大きさに眉を顰めその端正な表情を曇らせた。

魔眼の威力はそれほど脅威なのだ。以前の力を持つ宮川佐恵子が眼力瞳術を発動すればみな震えあがったものだ。

オーラを色で識別され心中思っていることを知られてしまうのだ。

思考や忠誠心を計られ、佐恵子がその気になれば抗うのが難しい力強さで屈服させられてしまう。

抵抗力の弱い者に対しては手を触れずに死を与える技能すらあると聞く。

それは能力値で佐恵子に劣るもの全ての宿命であり、逃れえない災難であった。

しかし今は佐恵子が何らかの理由でオーラ量が減り、力を前ほど使えなくなったため、宮コーでは今や紅音の派閥が大いに膨らんでいる。

稲垣加奈子が、もし魔眼持ちとなるとそういった日和見主義な連中たちが、また浮足立つに違いなかった。

「七光りのところにも松前さんと紅露さんに行ってもらったわ。・・聞きたいことが山ほどできたからね」

「そうか・・・、いまのあの人相手になら二人で行けば絡めとれるだろう。しかし力を失っていたとしても、あの人がおとなしくしゃべるとは思えんが・・」

いまの宮川佐恵子なら松前や紅露の二人で行けば、どうにでもなるだろうとは思うが、さすがに一族直系の令嬢に手荒な真似をするわけにもいかない。

丸岳が宮川佐恵子のことをあの人と呼んでしまうのは、潜在的にまだ彼女のことを怖れているからである。

それに、慇懃に質問して、はたしてあの尊大なお嬢様が大人しく聞きたいことを言ってくれるとはとても思えなかった。

「聞き方なんていくらでもあるでしょう?・・オーラも少なくて魔眼のないあいつなんて雑魚能力者よ。おまけに社長もあいつのこと毛嫌いされているようだし、多少荒っぽくやってもいいんじゃないかしら?・・・冗談よ。ただ聞くだけ。聞いておかないとね。加奈子も恐慌を使ったのよ。由々しき事態だわ。事の真相を確かめてから本社に報告するから、丸岳君はまだ秘密にしててよね。丸岳君にしかまだ話してないんだから」

紅音が佐恵子を毛嫌いしているのは昔からなのだが、大局を見ると現時点で、宮川佐恵子をどうこうしてしまうのは、色々面倒は多そうであった。

荒っぽい手段を取りたい紅音は、言いかけて途中からまだ無理だと判断したようで、肩を竦め、首を振りながらそういった。

紅音も少し穏便に済ませざるをえないと思ったのを察した丸岳は、その件について考えるのは後回しにして、今に集中することにした。

「俺だけに言ってくれるとは光栄だな。しかし恐慌か・・。それは確かに由々しき事態だ。それを耐えたお前もさすがだと言わざるを得ないがな。・・・紅音。まだ、昭仁会長を支持する人も多い。手荒になりすぎん方がいいと思うのだが・・まあ、その匙加減は俺にはわからんし紅音に任せるが・・。さて、そろそろ俺は行く。美琴だけであいつらと一緒にいさせていると碌なことにならんような気がするからな」

「ええ、お願い。私もすぐ向かうわ」

言いたいことの半分以上を飲み込み、そう言う紅音の背に一礼し丸岳は部屋を後にした。


一方、宮川コーポレーション関西支社屋上にある塔屋の一室では、3人の男達と一人の女性が談笑をしていた。

「なんやさっき非常ベルがなったけど大丈夫やったんか?」

「もう鳴り止んどるやないか。テツよ。それよりいまはこの子や。こんな可愛い子を前にして興味示さんのは失礼に値するんやで?なあ?みこにゃん?それで?みこにゃんは幾つなんや?」

「えーっと、今年24にゃん」

「おおー若い!どおりで肌の張り艶がええと思たんや!」

「にゃーん?モゲさん面白い人にゃんですね」

みこにゃんこと猫柳美琴は細い目を更に細めて猫さながらのポーズで右手のこめかみに当てて愛嬌を振りまいている。

チャームポイントの八重歯は右側だけ大きく上唇から少し覗かせているのが、更に猫っぽさを彷彿させる。

細身でしなやかな身体つきだが、案外と身長は高そうで160cmはありそうだ。

宮コーの指定スーツに身を包んでいる美琴は、先ほど自己紹介で今回の作戦のオペレーターを務めると自己紹介をしていた。

(・・・若すぎへんか?・・・大丈夫なんやろか)

きゃっきゃっと、はしゃぐ美琴たちを横目に菊沢宏はサングラス越しに美琴を疑りながら観察していた。

(くそっ・・こういう時あのお嬢様みたいにオーラが見えたらええんやが、無い物ねだりしてもしゃーない。しかし、歩き方や立ち振る舞いからすると、こいつもタダモノやなさそうやな。逆にこの年でこんな仕事任されるちゅうことやと判断しとったほうがええちゅうことか・・。いったい宮コーにはどのぐらい能力者がおるんや・・)

宏が冷静にサングラス越しに美琴を観察していると、美琴と目が合ったが美琴は警戒している様子もなく笑顔と愛嬌を宏にも振りまき続けている。

「この子なら語尾ににゃんがついててもなんか許せてまうな・・不思議や」

哲司もモゲと美琴の会話に合わせてそのようなことを言っている。

15分ほど前に作戦のため集まった菊沢宏、豊島哲司、三出光春はこの塔屋にすでに待機していた宮コー本社から先日着任したばかりのこの猫柳美琴と、特にモゲこと三出光春はすっかり打ち解けていた。

「相変わらずやのう・・。モゲよ・・」

そうモゲに言いながら豊島哲司は心中では不安がさざ波の様に波打っていた。

これから行う潜入捜査のことではない。

作戦実行2時間前までに、モゲと共謀してお互いの彼女を交換して、お互いの彼女に自分たちをアピールする作戦のことだ。

しかし、テツはすっかりその気にさせてしまった千尋と、きっちりあのあと結ばれ、お互い初めての能力者同士でのSEXを体験した二人は、いままで体験したことのない強烈な快感に溺れ、時間ギリギリまで貪り合ってしまっていたのだ。

哲司の心配を他所に、モゲは猫柳美琴という宮コーの女性社員相手に上機嫌でしゃべりまくっている。

「せやねん~みこにゃん。こいつらもなかなかのデカさやけど、デカさは俺やな!俺のが一番や!たぶん日本一やで?!」

アーマースーツが肌にぴちっとはりついているため、股間の膨らみも確認しやすい。

モゲが、がしっ!と自分の股間を手で押さえ美琴に笑顔で猥談を持ちかけているが、美琴もにゃーんと笑い満更でもなさそうである。

(・・・モゲ・・こんな無邪気に・・。モゲは佐恵子さんとはなんも疚しいことなかったんやろな・・。それに引き換え俺は・・、学生時代の憧れのマドンナからあんなに求められたら断られへんやろ・・。しかし、はぁ・・どないしよ。さっきは今度から千尋はモゲの誘いに応じるはずやって太鼓判押してもたけど・・)

哲司は隣で機嫌よくしゃべりまくっているモゲを横目に、草臥れた笑顔で適当に相槌を打つしかできないでいた。

しかし、当のモゲこと三出光春は、哲司の予想に反してきっちり佐恵子のことを犯しまくっていた。

しかも、7年ぶり人生2度目のSEXという、性経験浅い佐恵子にとってはエグすぎる内容のフルコースをお見舞いしていたのだ。

哲司と千尋が時間ギリギリまで繰り広げたようなとろけるような口づけ、甘く熱い濃厚なSEXではなく、心を折るマウンティングだった。

無理やり何度も逝かされ、許しを懇願している佐恵子を縛り力づくで押さえつけ、呪詛を深めるという目的のために、卑猥なオモチャを複数駆使して、日本最大と豪語している肉棒で散々佐恵子にアクメを覚えさせたのだった。

オモチャと自称日本一の棒を使って、二つの穴奥からと、恥骨の上部から拳で子宮を圧迫し、可能な限りあらゆる方向から同時に子宮を潰すようにして責められた佐恵子は、味わったことのない快感で失禁すらし、何度も気を失った。

しかし、快感で気を失っても、絶頂をもって気絶から覚醒させられ、そしてまた気絶させられるという行為を繰り返し味あわされ続け、すっかり従順に躾けられてしまった。

そして最後はやめてほしければ、中に出してくださいと言え!と言いつけられ、力でも振りほどけず、快楽地獄から逃げたい一心で佐恵子は屈服のセリフを口にしてしまい、モゲの白濁した迸りを膣奥で受け止めることでようやく解放されたのだった。

高慢で生意気な、高嶺の棘のある花をソールの分厚いブーツで乱暴に踏みにじることでモゲは気持ちよく佐恵子の内部で弾けることができた。

そのうえ、ぜいぜいと苦しそうに呼吸している厚めの唇を舌と指でこじ開け、下の口に放出したスペルマとほぼ同量の唾液も佐恵子の口の中に注ぎ込み、飲み干させたのだ。

行為中にこれ以上後ろの穴だけで逝く無様を晒したくなければ、モゲの1200万ほどある借金を肩代わりしろと言い、確かに約束もさせた。

条件を満たしたことで呪詛も発動している。今後今日以上の絶頂を味あわない限り、この生意気女はモゲを見ると発情するし、この日の行為を思い出し自慰し続けることになるのだ。

しかも、今日味合わせた絶頂以上のアクメを体験しない限り、身体は疼くがほんの浅くしか絶頂することはできない。

(能力者とSEXするときは、行為中もオーラ防御解いたらあかんのやで?勉強になったやろ?バカお嬢様。あんなん手足縛られたまま真剣の刀持った達人相手と戦ってるようなもんや。まあ、お嬢様はSEXじたいが2回目や言うてたし、せいぜい一人で自慰しとったぐらいの経験しかほとんどなかったんやろな。今回俺が相手やったんが運の尽きや。ご愁傷さま)

恥ずかしがり拒否する佐恵子を、しないとまたお尻で逝かせると脅し、オナニーもさせてみたが、仰向けで両足をV字にピーンと伸ばしたスタイルでクリと膣を指で弄るスタイルだった。まるでオナニーを覚えたての女そのものだった。

身体を突っ張り伸ばして腰を浮かし自らの指を忙しく動かし果てる姿もばっちり撮影してやった。

しかしすでに呪詛が張り付いているため、忙しく手を動かし腰を浮かせて仰け反って無様に絶頂する様を見せたとしても、恥ずかしい思いをしてやっと逝けたというのに、浅い絶頂しか味わえなかったようで、不満そうな声をあげて逝き、泣きそうで困惑した表情をしていたのが最高に笑えた。

(今後お前はその浅い絶頂で我慢するしかないんやで?ええ気味や。まあ高い授業料やと思とけや。疼くけど浅いアクメしかできへんようになった身体で一生すごしたらええわ。俺に生意気な態度取った罰や。もし、また俺に抱かれに来ても重ね掛けしてやるからな)

モゲはいまだ目隠しをして、縄化粧を施された佐恵子を見下ろし、仕事の出来栄えに満足そうに頷いた。

佐恵子は能力呪詛による大量の媚薬を施され、しかも逝ってもほんの浅くしか逝けなくなった身体にされてしまっていた。

縛られ不自由な格好のまま、ベッドに突っ伏し動けず泣いている佐恵子の様子までもカメラにおさめたことで、モゲは上機嫌で鼻唄を歌っていたが、ふと佐恵子が愛用しているティーセットのシュガーカップが目入った。

(たしかこの女えらい甘党やと聞いたことがあるな・・)

モゲは、良いことを思いついた。と思いカップまで近づき蓋を開けると、砂糖を半分ほど洗面台の排水溝に水で流し捨て、生意気な風俗嬢に使う砂糖とほぼ色合いの同じ粉末状の媚薬を半分以上補充し、人差指で混ぜてから蓋を戻した。

モゲは、これでよし。と下卑た笑みを浮かべると、未だベッドでしくしくとすすり泣きをしている佐恵子を目隠しと手錠、そして縄化粧をしたそのままにして、シャワーを浴びて着替え、この場に集合したのである。

ここに来る途中、事前に哲司と示し合わせていた部屋で合流し【認識交換】を解除して、「今度から佐恵子さんもテツの誘いに応じるはずやで!あ!そや!あの女、浮気はしとらんかったみたいやから安心せえ!」と笑顔で哲司に言ったのだった。

むかつく生意気な女に中出しSEXし、借金も全部背負わせ、疼くがまともに逝けない身体にしてやったことにモゲは今大変満足していた。

「みなさんもアーマースーツばっちりにあってますにゃん。急ピッチでつくってもらったかいがあるにゃん」

いままだ女性用しかなかったアーマースーツだが、菊一メンバーが加入したことにより、宮川佐恵子がずいぶん前に作成を急がせていたのだが、それがようやく完成したのだ。

美琴はそれを今日の作戦のために本社より持参してきていた。

「揃っているわね」

4人がいる塔屋の扉が開き、赤髪小柄な女性と、大柄で長髪の男性が紅音に続いてすぐ入ってきた。

扉を開けながら言ったのは紅蓮こと緋村紅音である。

「支社長!お待ちしておりましたにゃん!」

猫柳美琴は紅音の姿を認めると、背筋を伸ばし敬礼のようなポーズをとるが、それを紅音は手をあげただけで応え宏達に向かって声を掛けた。

「説明は聞いたかしら?」

「おっ!緋村支社長やないですか!わざわざ支社長自らお出ましとは、よっぽど重要な作戦なんですな。それと、なんや今日ボヤがあったみたいですけど大丈夫でしたか?め組の火消し三人衆がここに揃ってまっせ?なんでも言うてや?」

神妙な顔で聞いた紅音を、いまだ上機嫌のままなモゲが割って入り茶化す。

「おい!きさま!支社長に向かってなんて口をきくんだ!」

モゲの態度に紅音の背後に控えている丸岳が声を荒げるがそれを紅音が制止した。

「いいわ。時間も押してるし進めましょう。菊沢部長、作戦は聞いているわね?」

冷静にそう言ったものの紅音はギラリと視線だけでモゲに殺気を叩きつけると、宏に向き直った。

紅音の熱を帯びた殺気に一瞬たじろいだモゲだが、その紅音の視線はすぐに隣にいる宏に向けられたため、ほっと安堵する。

「ああ、ばっちりやで。ここまで大規模な作戦は久しぶりやな。・・・しかしこんな大胆な作戦俺らみたいな新参者に任せてええんか?」

「・・あなたたちが適任なのよ。期待してるわ。ここから関空までヘリで移動して、宮コーの私設便で貨物に紛れて現地上空まで飛んで頂戴。そこで運悪く貴重な貨物3つをロストしてしまうことになってるわ。落下地点は座標で確認してるわね?落下地点からの指示は、ここにいる美琴が通信で行うからそのつもりで」


「おいおい。やっぱこの子がオペレーターやるんかいや?ちょっと若すぎる気がするんやけど、ほんまに大丈夫なんか?」


宏は紅音のセリフに、美琴と紅音を交互にみながら心配そう言った。

「にゃん!大丈夫にゃん!安心するにゃん!何度も説明したにゃん。菊沢部長は美琴のこと信用できないのかなにゃ?」

心外とばかりに可愛くポーズをとった美琴が、宏に向かって可愛らしい仕草で抗議する。

(ぜんっぜん大丈夫そうに見えんし、信用できそうにないんやけど・・)

宏はグラサンで表情を隠しているため、悟られないが今回の作戦の難易度を考えればかなり不安だ。

「心配するな、菊沢部長。俺も管制室にいる。直接話するのが美琴なだけで、指示は俺からもでる。安心してくれていい。それに、美琴はお前らが思ってるほど無能ではないと思うぞ。見た目はあれだが・・腕は確かだし、判断力も野生の動物なみだ。方向感覚も暗闇でも間違うことは無いし、視野も広い」

宏の表情に気が付いた丸岳が、美琴の肩を背後から軽くポンと叩きフォローする。

「そうにゃん!」

丸岳のフォローに美琴は胸をどん!と叩きどうだと胸を張っている。

(・・・直感的で、野性的な能力者なんやろな・・。適性を聞くと現場向きのような気がするんやけど・・、たぶん現場には向かへんやろな・・。この子のテンションやと潜入捜査は無理や・・)

もう少し具体的な能力を聞きたかったが、どうせ聞いても話してくれないだろうと思い宏は聞くのをやめた。下手に聞くとこちらの能力も詮索される恐れがあったからだ。

「まあええやろ。・・・わかった。作戦は頭に入っとるし、地形もほぼ完ぺきに覚えてるからな。潮の流れや満ち引きも問題あらへん。最悪指示がスカポンタンでもこっちの3人で連携取れれば大丈夫や。ただ潜入の経験上必ずイレギュラーは起きるもんや。こっちじゃ俯瞰的な見方はできへんからな。衛星も使うんやろ?その時は的確な指示頼むで?」

「任せておけ。俺も潜入捜査は何度もしているし、管制室からの指示も何度も経験している。今回はお前たち3人で行ってもらった方が、息が合うと判断したためだ」

「さよか。まあ、情報通りならさして問題ないと思うで。宮コー下部組織の汚職の処理ってだけの話やもんな」

宏に応えた丸岳は、宏から見ても能力的には信頼できるように思えたが、どうやらこの男が紅音の一番の側近であるようだ。そのため能力は信用できても、それ以外は信用できない。

「ああ、成功させてくれ。宮川重工業は扱っているモノがモノだけに、ことは慎重を要する。頼むぞ」

グラサン越しに見つめられる視線に疑念を感じとったのか、丸岳は言葉短めに締めくくった。

「さあ、時間も押してるわ。足も来たし向かってちょうだい。いいわね?とにかくまずは、宮川重工業の幹部の関与の決定的な証拠が欲しいの。見当はついてるけど潜入して音声と画像が欲しいわ。情報通りなら、その幹部も何かしらの能力者よ。おそらく護衛もいる。ただ、私達みたいな宮コーの社員じゃないはずよ。うちの能力者は私が全員把握してるからね。今回身内にそういう不届き者はこの幹部だけよ。能力者が居たとしてもたぶん、足がつかないように傭兵的な野良能力者を使ってるはずだわ。野良でも、たまに貴方たちみたいな突出した能力者もいるけど、大抵はプロレスラーに毛が生えた程度の戦闘力しかないはずよ。でも油断しないで。能力の相性によっては足元すくわれるわ」

紅音の言うように、塔屋の窓越しに屋上のヘリポートに黒いヘリコプターがローター音を響かせ近づいてきているのが、目でも確認できる。

「わかっとるわ。俺もこの世界でやってきてるんやで。能力の相性や適性はある程度熟知しとるつもりや。それに対する対応もな・・・紅蓮のあんたとやっても勝つと思うで?」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ冗談とも取れない宏のセリフに、紅音は先ほど北王子というクソメガネが捨て台詞で宣った捨てセリフを思い出す。

(我が事務所の所長や副所長と戦えば5分で殺されることでしょう。・・・だったかしら?町探偵如きが・・この私に比肩するヤツが何人もいてたまるもんですか。)

紅音は頭に一瞬で頭に血が上り何か言おうと一歩前に進んだときに、肩に丸岳の大きな手が置かれた。

「菊沢部長!これ以上余計なことは言うな!さあ、出発してくれ!」

紅音の気配が大きくなると察した丸岳が、紅音の激昂を抑えるように宏達に大声で促す。

「・・・菊沢部長・・お手並み拝見といこうじゃないの!」

紅音は、丸岳に置かれた肩の手をゆっくりと払うと、熱を帯びたオーラを纏い、怒りをあらわにした表情で紅音は宏になんとかそういうだけにとどめることができた。

「おっ。我慢の限界って顔やけど、そんなんで腹立ててたら、組織のトップなんて務まらへんで?町探偵風情と思とる俺らの力をとくと御覧あれってな。・・ほなら、テツ!モゲ!気合入れていくで!」

「応っ!」

目には怒気を強く孕んだ紅音のセリフに、宏は怖気る様子もなく軽口で更に返し、紅音に反論させる間も与えず、哲司とモゲを伴い、二人も宏に応じてヘリに飛び乗ったのであった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 14話 猫柳美琴と菊一三銃士 終わり】15話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後

第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後

ダウンライトの灯りを絞り、暗めの灯りの中、岩堀香澄は自室のパソコンの前に座っていた。

白のカットソーにグレイのスエットというラフな格好である。

仕事でキーボードをたたいているとはいえ、部屋着で時間に追われることなくリラックスしてデスクに向き合うこの時間を、香澄は気に入っており大事にしていた。

こういう時間だと電話も鳴らず、子供も寝静まっているので、誰にも気兼ねなく作業に打ち込めるのだった。

そしてたったいま、明日の仕事の資料を作成し終わったところである。

右手の小指で軽快にエンターキーを叩くと、そのままグラスに持ち替え、冷えたハイボールで喉を潤した。

強めに作ったためウィスキー独特の香りが喉と鼻腔を擽り、よく冷えた微炭酸の液体が喉を刺激する。

ふぅと息をつきデスクにグラスを置いたところで、氷とグラスがカランと心地よい音を奏でた。

「ふふ、怖いくらい順調だわ。こんな地図が変わるほどの仕事の一翼を私が担うことになるなんて・・やりがい十分だし転職は大正解ね!」

そう言って笑みを浮かべた岩堀香澄は、ここ3か月間の社会人生活が、今までの仕事人生でもっとも充実していることを実感していた。

平安住宅で主任という職席を得るまでに8年ほどかかったが、平安住宅での香澄の業績を、最も評価していたのは平安住宅ではなく宮川コーポレーションだったのだ。

神田川真理という宮川コーポレーション関西支社の幹部が、半年ほど前に平安住宅に香澄を口説きに来た時は驚きつつも、丁寧にお断りしたのだった。

自分よりいくつか若そうな、聡明な黒髪ボブの女性を信用できないわけではなかったが、あまりにも急すぎるオファーであったし、何よりあんな大企業からいきなり驚くほど良すぎる条件を提示され疑ってしまった。

しかし、神田川の熱心な勧誘と香澄自身を取り巻く状況の変化もあり、本当に転職することになったのだ。

香澄自身も当時を振り返り、人の縁はわからないものだと回顧していた。

香澄は現在、子会社とはいえ、有名上場企業宮川コーポレーション傘下の宮川アシストの部長という職位を戴いている。

部長という立場を得たことで、責任も権限も増えたが、平安住宅の時の給与からはほぼ倍増し、住居も息子の学校や、職場にも近いこのマンションの一室を社宅として借り与えてもらっている。

「・・・いい機会だったと思うべきだわ。平安はたくさんお世話になったところだけど、忘れたいことも多いしね・・」


グラスの氷が少しずつ解けているのを眺めながら、脳裏によぎる水島喜八の狡猾な罠に嵌り、座敷の料亭でうけた屈辱・・。

下の口でフェラチオしろ・・と言われ、屈辱的なあの快感を、忘れたいと頭では思っているのに、焼印を押されたかのような疼きはいまだ消えず、時折香澄を悩ませていた。

・・そして、水島や橋元に利用され、巻き込まれてしまった温厚で素直な大原良助君・・。

まだ若く頼りなかった部下だと思っていたのに、彼の強い正義感と私に対する本気の気持ち、そして非業の死と・・・まるでずいぶん昔のことの様に思い出される。

しかし、この一連の非日常の出来事の過程の中で、信用していた主人の浮気も発覚し、自分自身も自主的に、そして如何ともしがたい事情で2度、主人以外の男性と性行為を持ってしまった事から、主人との離婚に踏み出しても経済的に十分子どもを1人育てていける待遇で誘われた事が転職を決意した大きな要因の1つにもなっていた。

何より、全てを忘れて新しい環境で、新しい人生をやりなおすには私自身が平安住宅に居ては、いつまでたっても【あの一連の出来事】を引きづってしまいそうな気がしていたので、本当に丁度良い転職になったのだ。

夜一人になって、ふと仕事や子供のことが頭から離れると、いつものように思い出してしまうのを振り払うように、もう一度氷で冷えたグラス内の液体を傾けて飲み干すと、思いをかき消すようにたんっ!とデスクに強めにグラスを置き立ち上がる。

「・・さあ、思い悩むなんてのはらしくないわ・・・。子供の寝顔をみたらもう休まなきゃ。今日の商談も大成功だったし、社長も契約書にもう目を通してくれてるはずだから、明日また新たな展開があるはずよね。明日に備えなきゃ・・。今が本当に大事な時期だもの!」

香澄は宮川アシストに入社した直後から、いきなり大プロジェクトの中核人物に抜擢された重圧をはねのけるように自らを鼓舞するように言い聞かせる。。

神田川真理の推薦のせいか、その神田川のことを信じて疑っている様子のない宮川社長が、初対面の香澄に対して、広範囲にわたる権限と、大きな予算、20人もの人員を部下としてほいっと任せてきたのだ。

もちろん会社も、社長の宮川も全面的にバックアップしてくれるが、ここまで信頼されると元来生真面目な香澄としては、責任感から俄然やる気が沸いてきてしまうのだった。

(それに・・神田川さんにされたアレ・・。あれ以来頭が冴えわたってるわ。もうどんな商談だって纏められる気がする)

少し強引に神田川に促された手短なレッスンと、その後に行われたヨガのようなものと神田川は言っていたが、その施術後からである。

いままで、普通だと思っていた感覚から開放され、実は今までの景色に靄がかかっていたのだと分かったのだ。

仕事も順調だし、息子も学校に馴染み成績も上々のようだ。

まだ2年生だというのに、3桁の割り算も解けるようになったと塾の先生も驚いていた。

しかし、仕事や我が子のことは順調でも、長年連れ添った伴侶とは転職前に離婚していた。

私自身の事が伝わっていないのは少し気がひけたが、理由は旦那の浮気が原因での離婚となり今は、今年7歳になる愛息子の誠とこのマンションで二人暮らしなのだ。

親友の由佳子以外は、誰にも知られていないが、香澄自身も大原良助と一夜の過ちを犯してしまったので、旦那である浩二の浮気で離婚を決意したのは事実であるが、良心の呵責もあり旦那の親族やその周囲に旦那の浮気とは言っておらず、慰謝料も息子の養育費も一切請求していない。

香澄は、首を振り思い悩むのをやめると、椅子から立ちあがり、背伸びを軽くしてから足を息子と自身が寝ている寝室に向けた。

そのとき、モニターホンの子機がデスクの上でルルルと可愛い音をたてた。

「え?こんな時間に・・?」

香澄は訝しがりながらも時計を見ると0時を少し回ったところである。

(こんな時間にいったい誰よ。まさか浩二?いくらなんでもこんな時間に非常識じゃない?・・誠にはこないだ会わせてあげたばかりじゃないのよ!)

もし元旦那の浩二が来たのであるならば一言注意してやろうと思い、子機のモニタを確認する。

しかし、画面に映っている人物を見て、ほろ酔いかかっていた頭の靄が一気にはれ、完全に仕事モードになった香澄は、しかし訝しがりつつボタンをプッシュして極力平静を装って声を掛けた。

「社長。こんな時間にどうかされたのですか?」

「・・・・ごめんなさいね・・。非常識なのはわかってますわ・・。でも、とにかく中へ入れてちょうだい」

モニタには大きなキャリーケースを引っ張り、スーツは着ているが髪は乱れ、モニタ越しに注意深く見るとメイクも落ちかけている宮川佐恵子が蒼白な顔色で弱弱しい声でそう言い立っていた。

「・・・・・・・・承知しました」

上司と言えども、部下の家に非常識な時間に訪問し、そのうえ不躾な内容に眉を顰めた香澄だったが、断るわけにもいかず、しばしの沈黙を経てからしぶしぶ、しかし平静な声で承知した。

「・・ありがとう。本当に恩に着ますわ」

ドアを開けると、くたびれ衰弱しきった表情の宮川社長が、疲れた表情ながら笑顔で謝辞をいい頭を下げた。

今の宮川社長に、普段はスーツを着こなし高潔な圧迫感をまき散らして周囲に存在感を放っている影は全くない。

(こ、これは・・、一見衣服の乱れはないけど、きっと事件か何かに巻き込まれたんだわ。・・汗・?この臭い・・・ひょっとして襲われて乱暴でもされたのかしら・・?これはただことじゃないわ!)

宮川佐恵子の様子に香澄はそう思うも慎重に言葉を選んだ。

「こんな時間に・・どうされたんですか?・・・シャワー・・浴びますか?それとも・・・110番します・・?」

スーツを着ているが、今の佐恵子は髪も乱れ、間近で見るとメイクもモニタ越しで見たよりもボロボロで僅かに汗というか、男性のそれの臭いもしたためだ。

普段ローズマリーの香りをさせているが、いまは全くその気配はない。

「・・シャワー・・貸してもらっていいかしら。警察は・・大丈夫。・・あとで説明いたしますわ」

宮川は本当に申し訳なさそうにそう言うと、香澄に案内された脱衣所に消えて行った。

暫くするとシャワーの音がしはじめたので、香澄はリビングに戻ると、ポットで湯を沸かし、ソファにドサリと座り足を組んだのだった。

(社長、鍛えてるって言ってたけど、女ですもんね・・。敵も多いでしょうし、きっと逆恨みや腹いせであんな目に・・・。ひょっとして大勢に襲われて・・・そうだとしたら本当に酷い・・!・・・今回のプロジェクト・・あの橋元みたいな悪党も一枚噛みたそうにしてたって聞くし、私もひょっとして狙われちゃう立場なのかしら・・?でも、どうして自宅に帰らず私の家にきたのかしら・・?)

正解ではないが、遠からずといった推測をし、同じ女として勝手に憤りを感じている香澄は、以前水島の一件があったときに処方してもらっていたノルレボが残っていたのを思い出し立ち上がると、薬箱から一錠取り出して、水差しとコップと一緒にテーブルに置いた。

(こちらから詮索はするつもりないけど・・、必要なら使うわよね・・)

そして、いそいそと押し入れから予備の寝具を引っ張り出してきて、使っていない和室の部屋に広げたのだった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後 終わり】16話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 16話 作戦開始

第9章 歪と失脚からの脱出 16話 作戦開始


家電製品、精密機械、衣料品などが入った段ボールがうず高く積み上げられ、積み荷のない時はあれだけ広く感じられたカーゴ室だったが、今は茶色の段ボールで溢れかえっていた。

人の背丈の二倍ほどまで積み上げられている荷物が、ラッシングベルトとネットで荷崩れしないようしっかりと止付けられている。

宮コー傘下の宮川ロジスティックスが所有しているフレーター便の貨物機は、関空から函館まで飛ぶ予定で、先ほど離陸したばかりだ。

今回の作戦に先だって、紅音はこの機を2週間も前からチャーターしていたのである。

ほとんどの積み荷が、北海道にある大口のクライアントの品物で、明日中には納品できる手はずが整っている。

しかし、貨物の中には3つ、依頼にはない梱包があった。

貨物機が離陸してから水平飛行になったところで、1つの段ボールが内側からもぞもぞと動き、そして勢いよく破られた。

続けてその隣、少し奥にあったものも、丁寧に開けようとしたのを諦めたようで、内側から破裂するよう破られた。

「ふぅ!やれやれ・・ようやく出れたな。みんな大丈夫か?」

「段ボールが小さすぎるねん!・・まったく、いくら傘下企業にも知られんようにって慎重にもほどがあるやろ!」


「検品の時にぐるぐるされたせいで、サイコロの気分が味わえてしもたな・・」

1㎥より少し小さいぐらいの段ボールから、ピチピチのライダースーツのような服に身を包んだ筋骨隆々の男3人が、緩衝材をまき散らしながら、肩や腕を回しコリをほぐしつつでてきたのだ。

それぞれ、性格を表す独り言を吐きながら、たくましい筋骨が露わに強調された四肢を伸ばしている。

「大丈夫そうやな。よっしゃ、みんな集まってくれや。簡単に説明しとくぞ」

うず高く積まれた貨物の間にできた通路に胡坐をかいて腰をおろした宏が、哲司とモゲにも座るように手招きをする。

今回の作戦の概要は、事前に宏だけにしか詳しく伝えられておらず、哲司とモゲにはこのカーゴ室内で説明することになっていたのだ。

男ばかりが集まればいつもバカな話になりがちな菊一メンバーであるが、こういう時ばかりはさすがに表情が引き締まっている。

宮コー関西支社屋上でヘリに乗る前は、猫柳美琴という若い女性社員と浮かれてはしゃいでいたモゲですら、その濃ゆい顔の眉間に皺を寄せて神妙な表情をさせている。

普段はこういう説明をするのは妻であり、所長代行だった美佳帆の仕事なのだが、今回の作戦に美佳帆は参加していないので、仕方なく宏が哲司とモゲに説明をしている。

美佳帆がいればすすんでこういった説明を宏がすることは無いのだが、宏もそう言った説明ができないという訳ではない。

ただ美佳帆がいるとそういう部分は頼ってしまうだけである。

15分ほどかけて、事前に丸岳から聞かされている概要を二人にわかりやすく伝えきったところで宏は作戦の要を確認するように言った。

「今回の仕事の一番の目的は、汚職職員の身柄の確保、ディスクの回収ってことや」

「あの支社長が言うてたな。それだけやったら簡単なことやと思うねんけど、それだけやないんやろ?・・その宮川重工業が接触しようとしてるんはどこの誰やねん?その相手がややこしいヤツなんやないんか?」

宏は聞いてくる哲司に深く頷き、3人の前に広げている地図のある地点を指さした。

「そのとおりや。まあ聞いてくれ。おさらいしとくぞ?・・場所は日本海に浮かぶ通称Sや。着水ポイントはここらへん。1キロほど泳がなあかんけど、ここの海流はこう流れとる。思とるよりしんどないはずや。定期船なんかで近づいたら、すぐバレてまうからな。この島には、自衛隊のレーダーサイトがあるんやが、当然この機体にも気づくやろうけど、国内便のほうなんか警戒はしとれへん。・・で、肝心の相手なんやが・・・香港三合会や」

先ほどあらましの説明をする際には、香港の名前を出せば説明が中断すると思った宏は、あえて最初は取引相手の名前を伏せていたのであった。

「・・・そういうことか。それで俺らなんか」

哲司はそう呟き、モゲは目を閉じたまま首を後ろにカクンと倒すと、腕を組み、上を見上げるような恰好のまま、眉間に皺を寄せて顔をしかめている。

「続けるで?・・今日の明け方、この施設で香港の奴等と宮川重工業の常務取締役で樋口ってやつが密会する情報が入っとる。宮川重工業は、プレアーデスって商標使うて、表向きは車の製造会社やっとんは周知のとおりやねんけど・・まあ、テツやモゲに今更言うんもアレやが、裏では兵器開発と製造もやっとるやろ?日本はお国柄から公けにできへんけど、その技術を買いたい言う国は腐るほどあんねん。樋口が香港を経由してどこと取引してるんかまでは今回俺らには関係あらへん。とにかく樋口が香港の仲介を経てどっかと取引してるちゅう証拠押さえて、樋口の身柄と、流そうとしている情報の入ったディスクも回収するんが今回の仕事や」

「・・香港か・・それ、かなりめんどいなぁ・・。樋口ってやつも能力者なんやろ?そのうえ、そいつ護衛も雇うとるかもしれへんって話やったし、しかも、相手は香港やて?香港って、組織は3つあると思うねんけど、日本に来とるんは張慈円の新義安一派だけや。てことは、確実に張慈円の仕事やんけ。かなりどころか、相当しんどいヤマやで」

宏が話し終わったと同時にモゲが、首を正面に向け神妙な顔を崩し、開口一番溜息も交えて不平言った。

「張慈円か・・。まえにモゲや麗華と大阪湾の倉庫で対決したときは、あいつは手負いやった・・。それに完全にこっちが不意打ちに成功したからな・・。一方的に攻撃できたけど、結局は逃げられてしもたんや。スタジオ野口では、あの加奈子さんですら惜敗した相手や。一筋縄ではいかへん・・。・・気引き締めなあかんな」

そして、モゲに続けて哲司もそう言い、橋元の一件以来、何かと菊一事務所と因縁のある難敵、張慈円の凶悪さと強さを思い出し、腕を組んで苦い顔をしている。

その二人の様子に少し憤懣を滾らせた宏が、感情を抑えた低い声で切り出した。

「・・・あの緋村支社長のことや。難易度の高こうてめんどい仕事を俺らに押し付けたかったんは確かやろけど、張慈円とは俺らは決着つけなあかん。・・ええか、テツにモゲよ。俺はな、張慈円とは今回きっちり決着つけるつもりなんや。・・緋村支社長に依頼されとる仕事はもちろんするつもりやで?そやけどな、張慈円をぶっ殺すついでにやるんや。今回この面子でならやったるって支社長に言うたんや。この3人ならやれるってな。ええか?テツやモゲの言う通り、おそらく張慈円のクソもきとるやろ・・それで好都合やんか。今日で確実に張慈円のこと始末するんや。たぶん、敵さん大勢おるやろ。そやけど調べて分かったけど、香港の新義安だけなら能力者は張慈円と劉幸喜ってやつだけや。一人樋口の回収にかかりきりになっても、1対1でタイマン張れる。できたら俺が張慈円の始末つけたいんや。・・・あいつにはスノウや千尋が何日も散々世話になったんやで・・!?二人とも忘れたわけやないんやろ?自分より強い能力者に悪意持って犯されたら、どんな目にあうか想像つくやろ?!」

だんだんと声が大きくなり二人を、少しばかり叱咤するような口調で言った宏は、再び二人と目を合わせるように顔を動かした。

サングラス越しにでも宏の静かな、しかし強い怒気が二人にも伝わってくる。

「せやな・・!」

「そうや!そうやな・!許されへんな」

哲司とモゲの同調した声が重なり、二人は宏に同時に頷いた。

3人はスノウや千尋が犯された動画は見ていないが、美佳帆から一応聞かされていた。

張慈円のような好色で強力な能力者が、普通に犯すわけはないのだ。

モゲやテツも能力に目覚めていない一般の風俗嬢相手に、その猛威を振るった経験から、容易に想像できた。

特にモゲは、ついさっき行ったSEXを思い出し、あの高慢女に対しては同情する気持ちはそんなに沸いてこなかったが、千尋が張慈円に同じような目にあわされたかもしれないのは許せなかった。

「よっしゃ。二人とも、そのつもりでおってくれよ。そろそろ降下ポイントや、準備できたらインカム付けてあの猫女史から連絡あるまで待機しとってくれ」

哲司とモゲの表情が引き締まるのを確認した宏は、そう言うと胡坐をかいたまま目を瞑り、背を荷物に預けた。そのとたん・・、

「にゃーん!通信機はすぐつけるにゃん!故障かとおもったにゃんか!」

3人が耳に通信機のインカムを付け、電源オンにしたとたんに、3人の耳元で美琴が可愛らしい高い声で叫んだ。

「びっくりした・・!猫柳女史か・・・。すまんすまん!間違いが無いよう念入りに説明してただけや。しっかり聞こえてるで」

「おっ!みこにゃんか。怒った声もかわいいのう」

宏が耳を抑えながらも、美琴に通信を返すと、モゲも続けて美琴に返す。

哲司は無言で耳を抑えながらボリュームの調整をしている。

「なかなか繋がらないから慌てたにゃん!もうあと3分ぐらいで降下予定ポイントにゃんよ!みんな準備はいいかにゃ?」

美琴の声を聞きながら3人はバックパックを背負い、準備を整え終わると3人は互いに目配せし確認し合った。

「ええで。準備万端や」

「それじゃ、ハッチ開くにゃん。気を付けるにゃんよ」

皆を代表して宏がそう言うと美琴がすぐに返事し、カーゴ側面のハッチが電動でスライドしだした。

吹きすさぶ強風がカーゴ室内に荒々しく駆け巡る。

初秋とはいえ日本海上空の風は冷たく、今日はあいにくの曇り空であるのだが、宏はその天候に満足そうだった。

「おあつらえ向きに曇っとる。幸先ええな!テツ、モゲ!準備ええか?いくで!」

曇っている方が地上から発見されにくいことから宏がそう言うと、機外に身を躍らせた。

それに倣い二人も機外に身を投げ出す。

3人が夜間のスカイダイビングに身を投じフレーター便の側ハッチを閉じられると、美琴は一時的に通信を切り、先ほどとは違う低い声で静かに言った。

「・・・グッドラック」

普段いつも語尾に付けている猫語はなかった。

そして、そう言った美琴の表情は、宮コー屋上の塔屋で愛嬌を振りまいていた人物と同じとは思えないほど冷たい目をしていた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 16話 作戦開始 終わり】17話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 特別話 それぞれの思いと思い出

第9章 歪と失脚からの脱出 特別話 それぞれの思いと思い出

菊沢宏や豊島哲司、三出光春が宮川コーポレーションに所属し、特殊任務を受け猫柳美琴のオペレーションのもと、現地へ向かっている途中、貨物に紛れ身を潜め時間の経過を待っていたとき、菊沢宏は哲司たちに一通りの打ち合わせをした後、少し昔を思い出していた。

【菊沢宏】

親父・・・

菊沢宏は、京都生まれで京都育ち、祖父は開業医ではあるが、父は京都大学医学部に入学しながらも医師の国家資格に合格してすぐに海外の内乱が続く町や、医師の居ない町などへ赴き、傭兵兼軍医も務め、現地の怪我をしたのに治療を受けれない人たちを助けながら、その国その国の左派勢力に立ち向かうという生活をしていて、宏は幼いころから父と会うのはたまに帰国した数週間や長くても一か月であった。

そんな宏の父、正和の活動を正和の父、宏の祖母の康之は苦言を呈したり、自らの病院を継ぐように説得したりもしていたが、正和は、

『そんな金があり、治療を受けれる患者は親父が診てやったらええ。俺は俺しか診れん、俺しか治療に行けん場所で治療を待っている人たちを救う事に尽力するから。まあ病院は宏にでも継がせればええよ。まあ・・・でもあいつも嫌がるかもしれんけどな・・・この間、宏と話したらあいつ何を思ったか検事になりたい言うてたしなぁははははっ!』

と、康之の話に耳を貸すこともせず、自分の意志で自分のやりたいようにするという事を貫き、また正和は息子の宏にも生き方を押し付けることはせずに、宏の意志に任せていた。

宏の母の渚は、そんな正和に一言の文句も言わずに正和のしたい事を精一杯支えていた。

宏は、そんな父親の影響を大きく受けて育ったと言っても良い。

元々素頭が良い家系ではあったが、宏も例外ではなく京都では京都大学へ毎年1番多くの生徒を送る名門私立中学校、高校をろくすっぽ勉強をせずに入学。そして卒業と同時に京都大学法学部へ合格する学力は、父方の素養の遺伝に、自宅に最高の家庭教師ともいえる母、渚にしっかりと幼いころから勉強を見て貰えた事が大きい。

まだ小学校にも通わないうちから、中学受験時に必要な算数の特殊算などを解けるだけの学力が自然についたのは、まさに母の渚の宏に対する教育の賜物であっただろう。

しかし宏は、そんな母につけてもらった学力以上に、たまにしか会えない父に教わった、いわゆる喧嘩の仕方とレディの扱いの方を今ではありがたいと感じている。

会うたびに、母の渚と祖父の康之の目を盗み、近くの体育館の柔道場を借り、父正和が本物の戦場で身につけたグリーンベレーから受け継がれている傭兵術を幼いころから叩き込まれた。

正和は拳法や柔道、空手などおよそ武術という武術は全て黒帯で、そんな正和が戦場に行きさらに生き残るために自然と身につけたのが傭兵術だった。

そのうえ正和には宏をはじめ菊一探偵事務所の面々同様、特殊な能力が備わっていたので、戦場では傭兵として引っ張りだこで、医師である祖父以上の収入も得ていたのだ。

そんな父が、命を落としたのが戦場ではなくこの日本・・・しかも、死んだ理由も意味もわからないが、ただ宏が解っていたのは、

『親父は、誰かに殺された・・・』

それだけであった。

宏がそう思うのが、宏が京都大学法学部の2回生であった頃、父が6か月ぶりに帰国し祇園の正和の行きつけのBAR桔梗で宏と酒を飲みながら、話していたときに、

『宏、俺はしばらくは日本に滞在する事になったが、またちょっと行かなあかんところがあってなぁ・・・まあたわごとくらいに聞いておいてくれたらええけど、もし万が一、今後、俺の身に何かあったら、この人に連絡して今後はこの人を俺と思って頼れ。話はつけてあるから』

正和がそう言い、宏に渡したのが栗田教授の名刺だったのだ・・・。

そしてそれが宏が父と交わした最後の言葉になった。

宏は思っている。

(あの親父を殺れる人間なんか、数限られてる・・・親父は強い、俺が知る誰よりも・・・。

戦車をナイフ1本で刻む人間が、そう簡単に死ぬとは思えん・・・。

警察は事故や言うてたけど、あの親父が車に撥ねられたくらいで死ぬわけない・・・。)

宏は、棺桶にしがみつき泣き崩れる母の渚の姿を見ながら、

(親父・・・俺にずっとレディに手をあげたらあかん、レディは泣かせたらあかんって言うてたやん・・・それをアンタがしたら1番あかんやろっ!)

そう思いながら、流れ落ちる涙を拭きもせずに、

(親父・・・俺があんたを殺した相手を必ず見つけ出し、この手でそっちへ送ってやるからな。そしてあんたの言いつけはかならず守る。俺もあんたのようにやりたいようにやる。やりたいようにやる力を身につけて自由に生きるよ。しかし、まずは俺はやりたいようにアンタの敵討ちをする!そして親父のような人が、なんで狙われなあかんかったんか・・・それを解明したる!)

そして宏は、父に渡された名刺に連絡を取り、栗田と出会う。

栗田は父、正和の親友で相棒でもあったようだが、やはり父同様変わり者でもあった。

しかし、父も持ち、自分にも備わっていた特殊な力を医学的にも解明している人で、その引き出し方や使い方に精通していて、宏はもともとの傭兵術に加え、ほぼ我流であったオーラを使った様々な能力も栗田とこの後アメリカに渡りスラム街で、【仕事】をさせられた事により飛躍的に上ったのだった。

そして帰国後、父の敵討ちを最終目標として探偵事務所を立ち上げる。

その後、京都大学法学部時代の友人たちと再会し、近所に住み、中高時代からの先輩でもあった相沢美佳帆とも出会うのだった。

そして今・・・、

貨物の中で宏は思っていた。

(親父・・・、俺が今している事が親父の敵討ちに少しでも近づいているんかどうかは正直わからん・・・。
しかし親父に言われていたように、とりあえずはやりたいようにやっているよ。
親父・・・母さんもまあ、京都でまだ元気やけど、アンタが死んでから笑う事が減ってなぁ・・・孫でも見せてあげれたら少しは変わるんかもしれんけど、俺もまずはあんたの敵討ちが先かなと思ってんねん。)

そんな事を考えながら、宏は現場への到着を待つのであった。

【豊島哲司】

(そういや、俺はガキの頃からヤバい事をするときは、絶対この3人あったなぁ・・・宏とモゲ・・・まさかあいつらと中学高校だけやなく大学まで同じで、そのうえ今は職場まで一緒になるとはなぁ・・・まあ、今回の仕事も正直、宏の話では結構難易度高そうやけど、あの港区の倉庫に佐恵子さんたちを救いに行った時ほどヤバい事なんかそうないやろ・・・。
あの時は、張慈円も居たけど、あの黒スーツの千原ちゅう美人剣士はホンマ超ド級のヤバさあったからなぁ・・・あんな奴とやり合うんはもう2度とご免や・・・・)

豊島哲司の実家は京都でも、他府県から中学生や小学生の遠足や修学旅行の観光先になるような有名な寺で、その寺の1人息子であった。

哲司の父は何人も在籍する僧侶の中でも、その寺では最高位に位置する住職で、その息子ともなれば寺を継ぐことを当たり前のように育てられ、元来体格の良かった哲司は小学6年生で既に175cmの身長にまでなり、特筆すべきは幼いころから父に鍛えられたその身体能力は、小学6年生でリンゴを握りつぶし、クルミを指先で割れるほどの握力に指の力を得ていた。

哲司はもともと温厚な性格の為、喧嘩などは子どもの頃からあまりしないのであったが、大人数で1人を虐めている奴を見たり、明らかに年上が年下を虐めているのを見かけたときはその身体能力を活かし助けると言うことなどはしていた。

そして中学校で菊沢宏という気の合う友人が出来た中1の夏休みの事である。

豊島哲司と菊沢宏が通う中学校は成績順にA組からF組まであり、中学1年生の彼らのクラスはいわば入試の時の成績順であったが、当時A組の宏と、哲司は夏休みに繁華街のコインゲームで遊んでいた。

するとそこに1人の同じ中学生だと思われる男女3名がやってきた。

『うん?なんやお前ら?あっ、お前らB組の・・・確か三出君・・そっちは、斎藤さんか?君は確か・・・寺野さん?』

元来話した事のない人間の名前などは一向に覚えない豊島哲司とは違い、コインゲームをしながら、さらっと見ただけで近づいてきた3人が同じ中学校の同級生だと気づく宏の眼はこの時から特殊な力を帯びていた。

『えっ・・・・私をわたしたちを御存知だったのですね・・・菊沢君・・・』

線の細い女の子、白の膝丈でノースリーブのワンピースを着た黒髪を肩くらいでそろえている女の子が透き通るようなか細いしかし抑揚のない声でそう言った。

彼女が当時の斎藤雪。

現在菊沢美佳帆の秘書的存在として、菊一探偵事務所を経て宮川コーポレーションでも活躍するあのスノウであった。

『宏、すごいな~お前、ほかのクラスの子の名前もしっかり覚えてんやな~まあお前は、首席で入学して入学式で新入生代表で挨拶しとるから、彼ら彼女らがお前の事知っていてもなんらおかしくはないんやろうけど・・・』

と哲司がコインゲームをしていた、椅子から立ち上がり3人に向かった時、

『あんたも有名やよ、豊島君。』

『そうそう豊島君は、成績だけじゃなく運動にそして柔道の授業で先生をぶん投げちゃったりで・・・』

ともう1人のホットパンツに白のTシャツの中学1年生にしてはかなりグラマラスともいえる体系の寺野麗華に、本当に中学生かと思えるようなチンピラが着るようなシャツにベージュのチノパンを履いている三出光春が哲司を知っていると伝える。

すると、今度は宏が、ゲーム機を見たまま3人を見ずに、中学1年生なのにこの時から普段はかけていたサングラス越しにコインを200枚BETまでBETしてボタンを押し。

『何か困った事でもあったんか?斎藤さんは普通に見えるが、内心鼓動が激しそうやし、寺野さんに三出君は、見るからにあせっとるし・・・』

宏がそういうと3人が3人とも顔を見合わせながら少し驚いた表情の中、まず三出光春が口を開き、

『あっ・・・あのなっ、ホンマは警察に言うべきなんやろうけどっ・・・実は、今日俺らもう1人仲間がいて・・・4人で、今からプールに行く予定あったんやけど・・・その行きにな、もう1人いた北王子って奴が、麗華が変なおっさんに絡まれたんを助けようとしたときに、あいつ学校のセカンドバッグに着替えとか入れてもってきていたせいで、俺らが洛南の生徒やってバレてしもてな・・・それで、たぶんやけど親から金ゆするかなんかするためやろが、あいつ連れて行かれてしもて・・・俺や雪や麗華は走って逃げたからつかまらんかったけど・・・』

三出光春が、息を切らせながら一気にそこまでまくしたてるように話した。

宏たちが通う中学校では、素行が悪かったり、成績が芳しくない場合は、学年が変わるときに他の中学校を紹介されたり、元来通う公立中学校に通わなければならなくこともあり、それは学校にいるとき以外の行動も勿論含まれる。

しかし、今回のケースなどは普通に誘拐事件だろ?と哲司は思い、それこそ本当に警察に届けた方が良いのではないかとも思うが、北王子の実家は三出が話すにはあの誰もが知っている全国展開しているメガネチェーン店の社長らしく、三出は、北王子の実家にも気を使い、とりあえず自分たちで引き起こしたことなので、自分たちで解決しようと考えたらしいのだ。

『宏、こんなもん俺らのところに来られてもどうこうできる問題やないやろ・・・?』

と哲司がそうつぶやいたのは間違いではないのだが、宏は、

『三出君は、北王子君、自身が警察に言われたり、親に言われたりすることを本当に困ると思ったから、俺たちの所へ来たんやな?まあ、それはだいたいわかるが・・・』

宏もやっとコインゲームを切り上げて、立ち上がると三出光春にそう言った。

『あっ・・・ああ、そうなんや・・・まあ、あのおっさんらに無礼なこと言うたんは俺も北王子も、麗華も確かに言ったし、麗華はおっさんのスネ蹴り飛ばしてしもてるしな・・・でもなっ悪いんはあのおっさんやでっええ年して、中学生の麗華にスケベな事、言うてきおってからにっ!』

三出は非は自分たちにもあるし、この事が大げさになれば北王子だけでなく、自分や女子2人にも学校からなんらかのペナルティが課せられ、最悪の場合は2年生に上がれない事もあると考えての事だと宏も瞬時に悟った。

『北王子君がどこに連れて行かれたかわかる?』

宏は、三出たち3人より先に歩いていき、哲司もそれについて行った。

『き・・・菊沢君・・・助けてくれるんか?それに豊島君も・・・』

三出がそういうと、寺野に斎藤も、先ほどまで不安そうにしていた表情に若干血の気が戻ったように見えた。

『私が・・・車のナンバーを覚えています。もし、必要であれば所有者は割り出せますが・・・』

白のワンピースを着たお嬢さま、斉藤雪が小声でそう囁くと、さきほどまでは3人の顔を見ずに話していた宏が振り返る。

『・・・君、凄いな・・・ハッカーか?』

『えっ・・えっ・・・・』

斉藤雪が宏に見られると、初めて表情が変わり恥ずかしそうにうつむき、照れているような、申し訳ないと思っているような表情になる。

『いや、俺はハッキングする事をどうこう言うてるんやなく、純粋にわかるとしたらハッキングやろうし、もしそれがかなうのなら凄い思っただけやで。それでもし解るのなら、君たちが持ってきたこの案件は、俺が・・・哲司?手伝うよな?』

宏がそう言い哲司を見上げながら、

『・・・やるしかないやろ・・・』

と哲司が言うと宏が笑顔になり、

『という事やから、俺と哲司がなんとかしてやれると思うで。』

『はい!ありがとうございます。では、すぐそこのネットカフェですぐに調べてきますっ』

そういうと斎藤雪は、ひざ丈のワンピースから覗く細い脚で全力で地面を蹴り、警戒に駆けていった。

(ふぅ・・・あの時からやな~俺らが色々つるんで、ええ事も悪い事もするようになったんわ・・・。あの時はスノウが、調べてくれた車がやくざ所有の物で、あの近くの事務所に所属する者の車って知って、俺、宏と2人で乗り込み公磨を助けたんやよな・・・普通中学1年生でそれするか・・・まあ、あのときか・・・俺は普通の大人よりも自分がかなり強いと知ったんは・・・ほんで宏もな・・・相手18人もおったのに、全くびびってなかったからなぁあいつ・・・相手も相手で、たかだか中学生2人に乗り込まれて全員ボコられた事なんて隠したいから結局あの日の事は、知ってるのは俺ら5人と、思い出話で聞かせてやった千尋やアリサに美佳帆さんだけや・・・しかし、そう考えるとあの出会いが無ければ、モゲやみんなとはどうなっていたんやろうなぁ・・・)

哲司は、モゲや麗華、スノウとの出会いを思い出しながら、現場への到着を待つため無言で身を潜めながら到着を待っていた。

【モゲ】

そして三出光春はというと・・・結構危険な任務の可能性もあるが、昨夜の佐恵子への蛮行で体力とオーラをかなり消費したので、銅像のように眠りにつき英気を養っていた。

モゲはモゲらしく、深い眠りの中、先ほど出会っばかりの猫柳美琴を夢の中で凌辱するという、寝ても蛮行を行いつつもしっかりとオーラは回復されコンディションは整えられていた。

こうして、3名が3名それぞれの思いを抱きながら、紅音に指示された任務へ向かうのであった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 特別話 それぞれの思いと思い出終わり】
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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