私は張の両手の手が隠れるほどの長い袖に
視線を集中していた。
手を少し動かすだけで恐ろしい速さで
何かが伸びてくる。
私は再びそれを交わすと何とか張に
短棒での一撃を加えようと距離を詰めるが
左腕から更に伸びてくる物によりそれを阻まれる。
えっ?
布?
私は張の手から伸びてくる何かが今一瞬私の
靴の先をかすめた時に布のような感じを受けた。
あれは?布?
それなら目的は私に巻き付け拘束すること?
拘束されなければ少しくらいかすらせても問題ないわね。
「ウゴキガイイデスネ。
カミヤサン。
サイトウユキ
ヤ
イゲイチヒロモ
ナカナカデシタガ
ジュンスイナ
シンタイノウリョクダケナラ
アナタノホウガ
ウエデスネ。」
張はそう言いながらゆったりとした歩法で
緩急をつけながら私に近づきは離れを繰り返す。
なっ何なの?
そうすると私には張が2人から3人・・・
3人から4人と複数人に見えてくる。
これは・・・
こんなの斉藤雪さんからの情報にも
無かった。
「オオ!
チョウサンノ
アンポ
ヒサビサニミタ!
アノオンナ
カナリヤルネ!」
張の部下の私たち2人を取り巻くうちの1人が
そう言うのが聞こえた。
アンポ?
闇歩とでも書くのかしら?
とにかく特殊な歩法で相手を幻惑させるのが
目的のようね。
私は張からかなり距離を取るように一時
離れるが複数にの張が私が離れるのと同じ速度で
距離を詰めてくる。
しかも脚力には自信があった私の速度に
ゆったりとした歩法で同じように距離を
詰められまた張の袖から布が伸びてきた。
シュルルル!!!
これは無理ねっ!
私は交わすのは無理と思い、張の袖から伸びて来る
紐を短棒ではたいた。
しかしもう片方の張の袖から伸びた布が私の
左足首を捉えた。
シュルルル!!!ギュッ!!
「っ!!」
くっ!しかしこんなものっ!
上下黒のパンツスーツ姿の私は足首を捉えられるが
今日がタイトスカートでは無くて良かったと心底
思いながら捉えられた足を軸足の高く宙に飛び上がると
私の脚力で紐が引かれ、張がピンと張った紐に引かれ
私の方へゆらゆらと寄ってくる。
私の足首を捉えた時点で複数人に見えていた張慈円は1人であった。
私の脚力で張をたくし寄せ私が短棒で張の喉元を狙い
鋭い突きを放つ。
「張慈円!確保しますっ!」
ビュッ!!
私が張の喉元を捕らえた!と思った瞬間・・・
ビリビリビリッ!!!
何と私の足首に巻き付いていた紐から私の全身に電流が走る感覚がした。
「くっ!!」
張の喉仏を捕らえかけていた私のチタン製の短棒は私の手から
落ち私の腰元には張のもう片方の手から伸びてきた布が巻き付き
私は張に身動きを取れないように腕を縛られた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
しまった・・・
張は電流の能力があると聞いていたのに・・・
まさか紐を伝い・・・
「サスガハ
カミヤサオリ。
ワタシニコノチカラ
ガナケレバアナタノ
カチデシタヨ。」
くっ・・・
このままでは・・・
張は紐で何処をどう絡めれば人が動けなくなると解っているかのように
私の身体を布で絡め取るとそのまま私の背後に立ち私を無理やり歩かせる。
私はそのまま張の部下の運転する車に乗せられ目隠しをされた。
そして車はエンジン音と共に動き出し私は張の乗る車でどこかわから無い所へ
連れて行かれた。
《第7章 慟哭 33話 張慈円VS神谷沙織2 終わり》