第8章 三つ巴 8話 雫・咲奈救出作戦|~強襲悪魔の巣窟~ 宮川佐恵子
関西支社のある市内駅前の中心部から、車で15分ほど走らせた場所に目的地の一つのマンションはあった。
「あれね・・こんな近くに・・、雫、咲奈無事でいて」
助手席に座っている真理が、遠目に見えてきた目的のマンションを手元のタブレットのマップと見比べながら呟く。
「まずは一か所目。二人とも、あのマンションの105だっけ・・?にいればいいんだけどね・・・」
運転しながら香奈子も心配そうな口調で真理に答える。
「美佳帆さまのおっしゃってた情報ですと、ここに監禁されている確率が高いわ。次に私達が買収協議をしている港湾地域の倉庫ね。・・・今日中に助け出しますわよ。でないと、襲撃をかけた情報が敵に知られて、対策をとられて咲奈と雫は、どこか違うところに移動させられるでしょうね・・・。加奈子、真理・・・もし、咲奈や雫がいなくても、焦らず、まずは敵を必ず全員捕まえて!・・通信させる暇を与えたり、逃がしたらダメよ?」
後部座席から二人にそう指示しつつ、二人を見る。力強くうなずく二人のオーラは、さすがに充実している。若干の思念の乱れがあるのは、逸っているためだ。
この程度の乱れなら問題ないわね。まあ、此方は宮川の中でも10指に入る手練れの能力者が3人いる。しかもこのスリーマンセルだとバランスも良くて隙も少ない。それに、そもそも私の思念波を防げないような使い手しかいなかった場合、何人いようと、敵に勝ち目はない。
敵能力が不明で、能力には相性があると言っても、このメンバーならよほどのことがない限り負けない。それどころか、過剰戦力だ。
ならば戦力を二分すればいいということなのだが、このメンバーで戦力を二手に分けると、とたんにバランスが悪くなる。前衛の加奈子無しでは、イレギュラーが起きた場合、対処しきれない可能性があり、さすがに危なすぎるのだ。
たしか美佳帆さまのお話では敵能力者は、たった2名程度と言っていた。若干の誤差があっても、多くて5人程度でしょう。
それに敵は、おそらく私達みたいに訓練を受けていないはず、野良能力者が思念の力を手に入れて有頂天になっているだけのチンピラ集団・・というところでしょうね。・・思念だけの勝負だと、今年小学5年生になる私の従弟よりも弱いはず。
今まで、何度も野良能力者に会ったけど、その類の大体が、素人相手に狡い商売や、宗教紛いのことをやっている、つまらない連中がほとんどだった。
凡人が運よく能力開花してても、訓練無しだと、能力の出力も練度も貧弱で、私たちの相手にはならないのは、今までと同じことでしょう。
・・・そういう意味では、今日お会いした菊沢さま夫妻。特にご主人の思念は凄まじかった・・・。何者なのかしら・・?
つい先ほど会ったサングラスの男のオーラを思い出し、体中に沸き上がった鳥肌を、やや鈍い光沢のある黒い服の上から撫ぜる。あのオーラ量と殺気・・・、ぶるりと悪寒まで走らさせる・・・。不快ね・・・、こんな感情抱かされるなんて・・。
「支社長もう着くわ。いきなり突入でいいわよね?」
両肘を抱えて、摩っていると加奈子が聞いてくる。
「・・ええ、、私と真理は正面、玄関からとりあえずチャイム押してから入るわ。加奈子はベランダに回って、チャイムの音がして10秒したら突入して」
不快なグラサン男を思考から追い払い、二人に簡単な指示を出し、軽く深呼吸をする。
雑魚ばかりのはずと言っても、多少の緊張感は沸いてくる。意識を集中させ、再度自分と加奈子と真理に、沈着の感情を付与させる。
「ありがとう」
「もぅー!せっかく荒ぶってたのに・・・」
付与に対して真理がお礼、加奈子が文句を言ってくる。真理に笑顔で返事を返し
「加奈子・・あなたさっきのままだと殺しちゃうわよ?」
運転席にいる加奈子の後頭部を人差指でつつきながら言うと
「・・ダメだったの?」
前を向いているせいで、表情までわからないが、加奈子は半分ぐらい本気かもしれない。
「ダメに決まってるでしょ?喋れる状態で確保して。あとで情報吐かせるのですからね」
「・・と言うことは、喋れたらいい?」
「・・ええ、悲鳴だけとかうめき声だけだせる、とかじゃないならいいわ」
「了解、ばっちり!」
加奈子が振り返り、妙にいい顔でにかっと笑ってサムズアップして元気よく返事した。
・・・念を押したので大丈夫だとは思うけど、などと思っていると、車はマンションオルガノ近くの路上に駐車した。
【第8章 三つ巴 8話 雫・咲奈救出作戦|~強襲悪魔の巣窟~ 宮川佐恵子終わり】第9話へ続く
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エッチな7話〜緊迫の8話に転換に楽しさを感じながら。
本当に佐恵子、真理、加奈子のスリーマンセル最高です!
3人の性格や関係性が見て取れて素敵です。
沈着を付与した時の2人の対比が可笑しいですねw
特に突撃モードの加奈子が腰を折られての『もー』が加奈子の性格が現れていて可愛く思えますw
続きを期待しています!
佐恵子、加奈子、真理の3人は8章ではかなり重要な役割を担う人物になりますので、お気に入り頂き嬉しいです。
不定期ではありますが、出来る限り頑張って更新してまいりますので今後とも千景の一夜を宜しくお願い致します。
御返答につき、有難うございます。
無理をなさらずに末永く楽しめる小説執筆をお願いします。
急かさず、急がず、慌てず、騒がずで、進めて頂きたく存じます。
益々の展開を愉しみにしつつ、御期待申し上げます。