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第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル

第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル

哲司と佐恵子は、宮コー関西支社の近くにある、ホテルの高級レストランの個室にいた。

今日昼過ぎに、突然哲司からの誘いがあり、ディナーをすることになったのだ。

突然のことだったが、平日ということもあり哲司からリクエストのあったこのレストランの予約が取れたのである。

佐恵子は哲司の誘いに喜んだが、哲司はモゲこと三出光春と、お嬢と呼ばれている伊芸千尋も一緒にという提案をしてきたのだ。

佐恵子はできれば哲司と二人っきりでディナーを楽しみたかったが、お付合いするということは相手の友人関係も理解すべき、と思い快諾したのであった。

佐恵子にとって人生初のダブルデートと言うイベントであるが、どのような振舞いをしてよいかはわからない。

一応彼氏である哲司に恥をかかさぬよう、佐恵子はスーツから着替え、七分丈のネイビードレスに、同じくネイビー色のヒールで服装の統一感を持たせ、髪の毛はメッシーバン気味のシニヨンで緩くアップにして身だしなみを整えている。

佐恵子なりにフォーマルすぎないように気を付けたのだが、ダブルデートとなると相手側にも配慮しなくてはならないと思い、かなり服装には迷ってしまったであった。

しかし、モゲとお嬢は来ておらず、二人の席にはナプキンが置かれているのみである。

二人が来るまでの間、佐恵子は今日あった出来事を哲司に話していた。

「本当に残念でした・・。おそらく直前に巻き込まれた揉め事のせいと思うのですが、麗華さまかもしれない人物に勘づかれてしまったようで、姿を晦まされてしまったのです・・」

「そうか。残念やったな・・。佐恵子さんも折角同行してくれたって言うのに・・。せやけど姿晦ますってこと事態が、自分で怪しいって言うてるようなもんやな。アパートの方も、もぬけの空やったんやろ?・・・てことは今回のが麗華やないにしても、なんか事件性はありそうやな・・。それにその襲ってきたチンピラ共もタイミング的にも気になるし、どこの依頼なんやろな・・・」

残念そうに語る佐恵子に、哲司は頷き同意する。

佐恵子も麗華の行方にはかなり責任を感じ、佐恵子が私財を投じ捜索させていたのは哲司もよく知るところである。

「はい、美佳帆さまも哲司さまと同じことおっしゃってましたわ。明日あの食品会社とアパートに行くそうです。美佳帆さまが、食品会社の社長とアパートの管理会社には話をすでに付けてきたようですので・・。明日は、スノウさん以外にも、伊芸さまと北王子さまも同行して本格的に追跡すると息巻いておられました」

「そうやな。それなら盤石の態勢やな。そこまで情報が揃とって、その3人に追われたら時間の問題やで。いつもの必勝パターンや。うちは府内・・いや、たぶん探偵業やったら日本一のはずやからな。実際、県外依頼も3割ぐらいあったんや。手が回らへんから、どうしても後回しになりがちになってたんやけどな・・。明日は俺も一緒に行きたいところなんやけど、宏もモゲも俺も明日は支社長・・あ、すまん」

哲司は、紅音のことを佐恵子の前で、支社長と呼ぶのは悪いと思ったのだが、杞憂だったようで、佐恵子は哲司に優しい笑みを向け促す。

「気になさらないで?続けてください」

哲司は、咳払いをし、軽く頭を下げてから続ける。

「・・緋村さんからの直接の依頼で、明日から3人とも別々のところに潜入捜査なんや。そやから明日はアリサが皆の護衛として行く手はずになっとる」

哲司のセリフに佐恵子は、僅かに表情を曇らせる。

「・・そうですか。では暫く寂しくなりますわね。いつ頃こちらにお帰りに?」

佐恵子の、寂しくなる・・という発言に、少しだけ疑問とまではいかないが、哲司は心に僅かに引っかかりを感じたのだが、表情に出さず続ける。

「佐恵子さんにそう言うてもらえるのは、男として光栄の極みやな・・。せやけど日程はちょっと不明なんや。1週間もかからへんと思うんやけど、一応予定は内密なことらしくてまだ明かされてないんや」

「・・・そうですか・・。帰ったらまたご連絡くださいませ。・・・それにしても、明日は護衛対象が多いですわね。アリサさまお一人では何かあった時大変そうです。真理か加奈子に依頼できればいいのですが・・」

哲司の帰ってくる日程が不明なのが残念なようで、佐恵子は声のトーンが少し下がってしまう。

そのうえ、今の立場では、親会社の従業員である、かつて側近の部下だった二人を動かせない自らの不甲斐なさを嘆いているようにも見えた。

「ありがとうな佐恵子さん。気を使うてもうて。でも大丈夫や。アリサも美佳帆さんがおったら的確に指示には従うし、なにより公麿以外はみんなかなり強いからな。心配あらへんと思うよ。あれ以来香港の奴等も全然噂聞かへんしな。張慈円クラスの達人なんかそうそうおらへんよ。それ以外やったら相手の方が気の毒なことになるから。実際今日そうやったんやろ?」

哲司はなるべく佐恵子に気を使わせないよう、冗談を交え優しく言いふくめる。

「・・・モブをそちらにお貸しいたしましょうか?」

哲司の言葉に、モブを貸せ、と言われてると勘違いしてしまったのか、佐恵子は自身の身辺が手薄になるのを、少し心配している表情ながらも哲司に提案してくる。

「いやいや、それはダメや。ただでさえ佐恵子さんの護衛はあいつだけになってしもうとるのに・・・。これは俺の言い方悪かったな勘違いさせてしもて・・。それにしてもまったく・・、一族直系のご令嬢に対して護衛の一人も寄こさんと宮川家はいったいどういうつもりなんや・・」

佐恵子のモブ貸出提案をきっぱりと断り、余計なことかもしれなかったが、哲司は少しだけ不満を吐露した。

「・・・仕方ありませんわ。お父様と叔父様はここ10年ほどずっと不仲ですもの・・。叔父様からすれば、病床のお父様はともかく、最近魔眼の力を増しつつあった、わたくしの影響を今のうちに削いでおきたかったのでしょう・・。それに宮川家始まって以来、女が当主になった歴史はございませんわ・・。わたくしが一族の当主となるには、もともと反対も多いのです・・。本社から聞こえてくる話では、私の魔眼の力が弱まったのを喜んでいる声もある・・、と聞き及んでいますわ」

哲司は余計な一言を言ってしまったと思ったが、少しだけ気弱になっているのか佐恵子は、普段は全く話さない宮川家のことをこぼした。

「・・・なんて話や。可愛い姪っ子が奮闘して、会社大きいにしとるちゅうのに・・!」

哲司のセリフに佐恵子は驚いた顔してすぐに、口を片手で押さえ、くすっと笑うと「叔父様が、わたくしのことを可愛いなどと思っているはずございませんわ」と言って続ける。

「そう、そうですわね。哲司さまの感覚が普通なのかもしれませんね。・・・でも哲司さま・・よいのです。わたくしの眼力瞳術は、ついこの間までは叔父様の力をも上回っていました。・・そのせいでここ数年様々な嫌がらせや妨害を受けましたわ。叔父様には、本当にわたくしのことが驚異だったはずなのです。ここだけの話・・、わたくしも叔父様にできれば引いて頂きたいと本気で考えていましたしね。でも、今の状態は紅音から聞いているはずですし、真理が言うには、こっそり叔父様本人も、こちらに確認に来ていたようです。・・わたくしのオーラ量を叔父様は魔眼でご覧になったはず・・さぞ安心しているでしょう。・・叔父様は息子の・・わたくしからすれば従弟ですね。従弟の史希(しき)が一人前になるまでは、宮コーを切り盛りして頑張るおつもりでしょう・・・・。それに、わたくしの力が弱いほうが、一族から色々な謀略を受けませんわ。・・・つまり安全ということになります。能力の力は乏しいわたくしが、宮川の為の仕事だけはこなす・・。このほうが身内からは狙われにくいのです。皮肉なものですがね・・」

そう言うと佐恵子は静かにふぅと息を吐き、食前酒としてオーダーしていた、フルーツブランデーのグラスをくゆらせて、揺れる琥珀色の液体を視線を落した。

「佐恵子さんはそれでええんか?」

哲司は、二人っきりの時に佐恵子が時折見せる儚げな目を見て、優しくそして力強く聞いた。

「・・・宮川の為になるのであれば・・と思って、今はできることをやってはおりますが・・、どうでしょう・・・。IR法で解禁になったカジノ計画が一区切りつけば・・、少し考えなければならないのかもしれません。宮川アシストの株は持っておりませんが、今のところ宮川アシストの人事権は全てわたくしにございます。・・・落ち着けば香澄に任せようと思ってますわ。あの方、本当に優秀ですから・・。少し強引でしたけど、真理が香澄の能力を強引にこじ開けてしまいましたわ。香澄といいモブと言い、本来ならやってはいけないこと・・オーラを直接流し込むという。・・真理や加奈子にはわたくしの為に、ともすれば相手を壊してしまうかもしれないことをさせてしまったのです。・・・哲司さま、今のはなし・・誰にも言わないでくださいね?」

佐恵子は、今後の未定で不明確なことと、真理や加奈子の強引な手法を容認してしまったことを哲司以外には誰にも言わないつもりなのだろう。

モブには加奈子が、香澄には暴漢にみせかけて真理が、オーラを直接相手の体内に流し込むという強制開花を促したのだ。結果的に二人とも後遺症もなく無事能力を扱えるようになったが、それはただ運がよかっただけで、失敗すれば重大な後遺症を残す可能性があるのだ。

哲司もオーラを扱う以上その手法は理屈ではわかっていた。

そのため、佐恵子は念のために誰にも言わないよう哲司にくぎを刺したのであった。

「ああ、言わへんから安心してな」

哲司のことを信頼して秘密を語ってくれている佐恵子に対し、哲司はこれからしようとしている企みを思い出して、痛みが胸にはしった。

「ありがとうございます哲司さま。お願いいたしますわ。でも、こんな手法をしてしまうわたくしのこと嫌ってしまいませんか・・・?」

罪悪感から哲司の顔が僅かに強張ったが、もはや【感情感知】すら使えない佐恵子は哲司をすでに信頼しきっている。

佐恵子はアンバーアイの不思議な目の色で哲司を見つめてお礼を言い、そして不安をにじませ嫌われるのを怖れた、悲し気な表情で訴えかけてくる。

「大丈夫やから・・っお・・。ようやく来たようや」

哲司は佐恵子の顔を直視しにくくなってきたちょうどその時、個室の扉が開かれ、千尋を伴ったモゲが騒がしく入ってきた。

「すっごい部屋やな!おお?!府内の夜景が一望できるやんか!・・あれが今開発工事やってるところやな~?上からみると随分広いんがようわかるやないか!なあ千尋!?あれうちの会社がやってんのやで?すごいやろ~!」

時間から10分ほど遅れてきたモゲが挨拶もなく、一面がガラス張りになっているところまで行って、ガラスに手を付いて大声で夜景に感動している。

「ちょっと!モゲ君ってば!やめてよ恥ずかしい!モゲ君の会社じゃないでしょ!ごめんなさいね宮川さん、和尚・・。モゲ君!いい加減に窓から離れて!」

高すぎない黒のヒールで足元を飾り、シックな黒のワンピースドレスに黒のストールを羽織った千尋は、ワンピースに深めに入ったバックスリットが大人の色気を醸し出しているが、千尋自体の雰囲気は、いかにも清楚なお嬢様としての品の良さを十分に感じさせる。

しかしその千尋が、窓ガラスに張り付くモゲの腕を掴み、やや足を開いて引き剥がそうとする姿がなんとなく、そのせっかくの品の良さと美しさをコミカルに感じさせてしまう。

「お、おう!すまんすまんついな!」

穴があれば隠れてしまいたいほど恥ずかしそうにしている千尋とは対照的に、モゲは高いテンションを維持したまま、全く悪びれた様子もない謝罪を口にしてようやく窓ガラスから手を離した。

「モゲよ。遅かったやないか。19時って言うとったやろが」

モゲの相変わらずの様子に、しょうがないやつやな、と言いながら哲司が声を掛けるが、テンションの上がったままのモゲはモゲ節を続ける。

「すまん。まあほんの少し遅れただけやないか。誤差の範疇やろ?!」

「あのなモゲよ。それは俺らが言うんなら成り立つセリフであって、お前が言うたらあかんセリフやねんぞ?」

苦笑交じりに親友を窘める哲司だったが、今までの経験上モゲにはあまり効果がないことは解っているようで、哲司も本気で言っている様子ではない。

「ほんとごめんね」

そんなモゲの隣で千尋は、佐恵子と哲司に申し訳なさそうに頭をかなり深めに下げて謝っている。

「ええからええから。これから美味しいもん食うのにそんなに謝っててもしゃーないやろ。楽しいにやろや?な、千尋ももう座れや。ほらこっちの席や」

雰囲気を悪くさせないように哲司が千尋に優しく席を勧める。

それでもまだ申し訳なさそうに畏まる千尋に、佐恵子も笑顔を送り、軽く会釈するが、まともな謝罪の言葉もなく左隣の席にどかっ!と座ったモゲを一瞥する佐恵子の目は冷ややかだ。

千尋も哲司の隣にようやく座ったところでレストランの支配人が挨拶に現れた。

「皆様本日はありがとうござす。コースを承っておりますが、お好み等があれば仰ってください。まずはいらっしゃったお二方のお飲み物からお伺いさせていただきます」

~~~~~~~~~~

牛ヒレ肉のクリスピーステーキのメインディッシュをガツガツと平らげ、続けて出されたフルーツの盛り合わせを食べ終えたモゲが言う。

「ん~・・!んまかったな!しこたま食うたで~。それにしてもテツよ。おまえあのお嬢様にいつもこんなメシご馳走してもらってん・・」

「んなわけないやろが!コース以外のもんまでがんがん注文しよってからに・・ここは俺とお前が出すんやぞ?!」

ジャケットのボタンをはずし、お腹をさすりながら言うモゲのネジの緩んだセリフに、哲司がかぶせ気味に反応して言う。

「ええぇ~?嘘言えやぁ・・。テツの彼女大金持ちやん?あのお嬢様に出してもろうたらええやないか」

「・・あのなあモゲ。男が誘ったら男が出す。当たり前やろが?」

びっくりしたような顔で言うモゲのセリフに、哲司があきれ顔で諭すように言う。

佐恵子と千尋はさきほど化粧直しに席を立ったところで、いまテーブルには哲司とモゲしかいない。

女性たちがいなくなった二人の口調は、とたんにざっくりしたものとなる。

「そうかもしれへんけど、一番金持っとんは確実にあのお嬢様やで?」

「はぁ・・。そういやおまえ文無し言うとったな・・。しっかしその感覚は重症やぞ?千尋にええところ見せるんちゃうんか?・・佐恵子さんがもってるんはそらそうやろうけど、こういうのは男が出すもんやろが」

「そうか・・ええとこな・・。そうやったな。・・そらそうや。そらそうやな。わかった!俺らで払おう!そらそうや!千尋にええところ見せんとな!・・・けどテツ・・ここはおまえが立て替えとってくれ」

「まあそうなるよな!おまえ文無しやもんな?!文無しなくせになんでこんな高いとこ行きたいっていうたんや?!」

千尋に良い所を見せなければ・・と言うことを思いだしたモゲは払おうと決心したが、払うものがなかったので、いつもどおり哲司に頼るが、哲司は呆れを通りすぎかけた口調でモゲに言う。

「怒るなって。俺てっきりお嬢様払いと思とったから・・」


「んなわけないやろ・・。こっちからデートに誘っといて4人分の食事代を、人の女に全部払わすつもりやったっちゅう神経がまったく理解できんわ・・・。畑に花ばっかり植えとったらあかんぞ?」

そう言うと哲司ははぁ~と大きなため息をついた。

「はっはっは、相変わらずテツは冗談が上手いな。・・まあ・・テツよ。そんな冗談言うとる場合ちゃうぞ?・・今のうちや。二人が便所行っとる間に入れ替わるぞ?準備ええか?」

「・・化粧直しって言うたれや・・。し、しかし・・ほ、ほんまにやるんやな?」

こいつほんまなにいうてんねん・・とテツはモゲのセリフにいろいろ突っ込みたい気持ちを抑え、このデート本来の目的を思い出しゴクリと喉を鳴らす。

「あったりまえやがな。せっかくこんな高いレストラン奢ってんねんで?・・それに、俺から見ても悔しいけど千尋はお前のこと尊敬しとる。・・なんやお前のほうにばっかり気を使っとるやんか。・・ほなけどその感じでこれから3時間千尋に接してやってくれや。それできっと俺の印象も上がるはずや。さっきお互い部屋で飲みなおすことになったやろ?きっちり頼むで?」

奢ったんは俺だけな。おまえは全く奢ってないからな・・?いやむしろお前の分すら俺が払ってるからな?立て替えるったってお前いままで一度も返したことないやろ?・・と哲司は再び突っ込みそうになるが、もう一度ぐっとこらえ自分の心の準備をする。

「まじか・・・。わかったわ・・。ほな、おまえこそ佐恵子さんにちゃんと聞いてくれや?」

「もちろんや。任せとけ。なんで彼氏である俺とのSEXを避けとるんや?って聞くだけや。簡単なこっちゃ。しっかし佐恵子さんも間近で見るとフェロモンむんむんやのう・・。一つ一つの仕草がたまらんわ。これでオアズケくらわされ続けたら流石にテツも我慢の限界やったやろ?」

不安いっぱいの哲司とは違い、モゲは根拠のない自信たっぷりの顔で胸をどんと叩いて頷いた。

「おまえ・・もし佐恵子さんとそう言う雰囲気になったらどうするつもりや・・?」

モゲのセリフに不安を抱いた哲司が不安そうに聞くと、モゲは哲司の心配そうな顔を見てニヤッと笑って言う。

「まあ心配するな。いくら俺のことをテツと認識しとっても、俺みたいな態度や口調の男に絶対その気にならへんと思うで?・・さっきからずっと俺に対してあの女から一言も話しかけてこうへんし、目すら合わせてけえへんで?・・それよりテツよ。おまえこそ千尋に変な真似するなよ?・・まあ、いままでの感じからして、いくら何でも千尋が急に俺に身体許すなんてありえへんと思うわ・・残念やけど・・な」

モゲはほとんど可能性がないとは思っているが、そう言いながらも成り行きで佐恵子が身体を開きそうであれば、頂くつもりでいた。

どうせ本人にバレることは無いし、モゲにすれば佐恵子には罵られ、今日は一言も会話もなく目すら合わせてこない女である。

借金の借換には手を貸してもらったが、モゲの借金がなくなったわけではない。

実はモゲは3年ほど前フリーの探偵時代に、宮コーがらみの件で宮川佐恵子を調査したことがあったのだ。

その時も今回使う【認識交換】が効果を発揮し、かなりの情報を持ち帰ることができ大儲けに繋がった。その仕事のついでで得た情報の中に、宮川佐恵子個人の資産だけでも相当な額だったということは憶えている。

なぜなら通帳に印字されているカンマの位置が、見たこともない桁にあったからだ。

自分を見下して人前で罵り、自分がなくて困っている金を、使い切ることができないほど持っている女がマヌケにも自分を哲司と勘違いして身体を開いたのならば、遠慮なくハンティングトロフィーの証を佐恵子に刻んでやるつもりでいた。

哲司はいまだ佐恵子と肌は重ねていないと言っていた。そうだとするとまだ佐恵子の裸体すらまともに見たことがないはずなのだ。

それはモゲも同じことなのだが、他人の女というものはどうしてこうも掻き立てるものがあるのだろう。それに持ち主すらまだその身体を味わっていないのだ。

そこに持ち主よりも早く土足で侵入し、最初の足跡を残す優越感はどのぐらいの快感を与えてくれるのだろうと、モゲもそして哲司も密かに考えを巡らし下腹部に血が行き過ぎそうになっていた。

風俗の女とは違い、人妻やキャリアウーマンをいただいてしまうのは何とも言えない恍惚とした感覚がある。ましてや佐恵子も千尋もタイプは違うが間違いなく美女と断言してもいい水準の女たちである。

このレストランの個室まで着飾った彼女を連れてくる際、モゲも哲司もすれ違う男やカップルに優越感を抱くことができる女たちなのは間違いなかった。

しかし、あと一歩というところで身体を許してくれない自分たちの彼女のことを、哲司とモゲは少しだけ怨めしく思い、もしかしたら今日、自分に身体と心を許すかもしれない身近な人の女に意識を向けてしまうのは無理もないことなのかもしれなかった。

「まあ、大丈夫やって。心配するな」

「お、おう。しっかり聞いてきてくれや?俺の方もきっちり決めてくるさかい」

モゲにそう言われても哲司は、正直不安は多かったが、さっきの食事中に隣に座る千尋の普段とは違うドレス姿を間近で見られるという好奇心が哲司の心を確実に揺さぶっていた。

それに佐恵子は普段は優しく接してくれるが、いざベッドに行こうとすると、突然突き放し避けてくる態度は、正直男としては内心かなり自尊心が傷つけられているのも確かだ。

おそらく女にはこの感情はあまり理解できないのであろう。SEXを避けている真意を確かめたい、何か理由があるのかもしれないとは思うが、3か月も断り続けられると、さすがに怒りに近いものが心の奥底で燻ってくることがあったのも確かだ。

その佐恵子の態度を今回の作戦を決心した理由にこじつけ、高校からの幼馴染である学校中から正統派美人として人気のあった千尋と二人っきりで過ごせるチャンスを見逃すのは惜しい、とも思う。

哲司は佐恵子と付き合い始めた頃にはこういう事は思いもしなかっただろうなと、心境の変化に驚きつつ、こういう心境になったのはやはり愛を確かめるという行為を拒絶され続けたにほかならない。

千尋にはよくモゲのことで相談されていた。そのときに信頼し接してきてくれる千尋は無防備で美しかったが、親友の彼女であるため、いい人でいなければならなかったのは正直辛いものがあった。

その千尋に、哲司本人だとバレることなく近づき肌に触れられるかもしれない。もしかしかしたらそれ以上のことになるかもしれないという、暗い期待がむくむくと湧いてくる。

しかし、それでもモゲの毒牙にまんまと佐恵子を晒してしまうのは・・と決心が鈍りかけた哲司の表情を読み取ったモゲが手を叩き大きめの声で言った。

「よっしゃ!ほな帰ってくる前にやるで?」

そう言うとモゲは、かき上げる必要もないぐらい短く薄い前髪を大げさに片手で上げ、哲司に催促する。

哲司もモゲのその額を出したポーズをみて覚悟を決めた表情になり、額を重ねた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 5話 進展の無い二組のカップル終わり】6話へ続く


コメント
No title
いつも楽しく読ませてただいております。
作中のキャラたちの悪だくみ、上手くいってほしいような失敗して痛い目を見てほしいような、何とも言えない気持ちです。笑
これからも更新がんばってください。
ちなみに私は真理のファンです。
2019/04/07(日) 20:16 | URL | マリアンヌ #-[ 編集]
マリアンヌ様。
いつも一夜をお読みいただきありがとうございます。
真理のファンでしたか、真理は作中でも、私も加奈子同様、思い入れのある登場人物ですので今後も数多く登場していただく予定ですのでご期待くださいね。
悪だくみをなにやら考えている輩がいますが、どうなるかは彼らのみぞ知るなのですが、次話かその次くらいでは明らかになるとは思います。
今後とも一夜をよろしくお願いいたしますね。
2019/04/07(日) 23:24 | URL | 千景 #-[ 編集]
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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