私は今怪しげなホテルの最上階
の部屋に居る。
同じ部屋に居るのは私や主人の
菊沢宏の因縁の相手ともいうべき男
橋元浩二である。
どうやらこのドットクラブという
おかしな趣向のホテルは橋元が実質的な
オーナーで彼のビジネスパートナー?
の古賀という男が表向きの経営者らしい。
このドットクラブの10階の
VIPルームの一室は彼が個人的に
様々な理由で利用しているらしく
室内からガラス張りの扉を出れば
露天風呂まで設置されている。
そして室内には様々な拷問器具のような
物に女性をいたぶる為に作られたとしか
思えないような器具も多くある。
そもそもこのホテルがそういう
目的で作られた物であるので当然で
あると言えるがここに私が来るまでに
1階の無人受付で見た限り8割ほども
部屋が埋まっていて利用者がこんなにも
いる事にも驚いた。
私は部屋をノックして室内に通され
今は橋元が座りタバコを吸っている
ソファの対面のソファに座っている。
そして部屋に入り今まで本題とは
関係の無いこのホテルの
所有が自分である事や
今までどのように使ってきたなどと
いう話を聞かされていた。
「そう。
あなたが趣味の為に
どれだけ大金をかけるかが
ようく解ったわ。
しかし私が来たのは
そんな話を聞く為ではないの
だけど・・・」
私は腰に手を当てるふりを
して扇子が刺さっている事を
念のために確認しながら足を
組み替えながら彼の自慢話に
応えた。
「連れないですな~
菊沢美佳帆さん。
あなたの欲しい情報は
ここに来てくれた時点で
話す事はもう決めてiいますわ~
そう焦らんとここに来る前に
2時間で解放しますと言いましたやろ。
少しづつ話しますさかいに
少しは会話を楽しむと言う事を
しましょうや」
「そう。
私はあなたとの会話が
楽しい物になるとは
どうも思えないんだけど・・・
できれば早く教えて欲しいわ。
水島をあのビルに置き去りにしたのは
もう彼があなたにとって
必要なくなったからかしら?
それと大原良助さんの事も
聞きたいわ。
彼が今どこでどうしているのか
あなた方の中の誰が彼にかかわって
いるのか?
教えて下さるなら
あなたとここで居る時間は
無駄にはならないのだけど・・・
結局話す気が無いのなら
力づくで聞き出す事も
できるのよ。
今はあなたの護衛のあの2人の
外国人。
張にマイクも居ないみたいですしね。
それとも私と1対1でも
大丈夫という自信がおありなのかしら?
橋元さん・・・」
私は背中に汗をかいている
自分に彼のプレッシャーに
耐えながら今言った言葉の
殆どが虚勢である事を自分自身が
1番理解していた。
そしてそれが橋元の彼の能力に
より見破られている事も・・・
橋元は煙草の煙をふ~と
噴き出すと私に向けて上から下まで
視線をなぞらせながら笑い
「あんたは本当に
強い女性ですな~
あの場で私が引いたのは
本当はあなた方が怖いからでは
無いと言う事も解っているんでしょう?
菊沢美佳帆さん。
まあでもあんたもここまで
来てくれたんですからな。
まずは水島さんの事でも
話しましょうか?」
私は橋元の視線を受けるだけで
身体全体にゾクゾクとする
ような軽い電流が走る感覚を
味わいながら何も無い振りを
するのに精いっぱいで再び足を
組み替え扇子に手を当てていないと
居られないくらいの不安な気持ちも
押し隠し
「ええ。
聞かせてもらえるかしら?」
と余裕を装い応えた。
しかし彼に見られるだけで
この感覚は何?
これは私の百聞の能力に
起因するものなの?
普通の女性はこうはならないのかしら?
まるでSEXの前戯を受けているこの
感覚・・・
こんな所に2時間もいれないわ・・・
聞き出す事だけを聞けば早く立ち去ろう。
「がはははっ
菊沢美佳帆さん
あんたのような経験豊富な
女性には私の媚薬は応えるでしょうな~
いや~水島さんの事を話す前に
私の事をもう少し
私はね~菊沢さん。
この力に目覚めてから少ししてね~
自分にはもう1つ素晴らしい力が
ある事に気づいたのですわ。
まだ20代の後半の頃でしたがね。
あるクラブでホステスを
横につけて飲んでいた時ですがな」
「橋元さん。
その話長くなりそう?」
私は彼の力については知りたかったが
これ以上彼に見られるのに身体が
耐えきれそうになくもう挌闘に
持ち込んででも情報を引き出したいと
思い始めていた。
「まあ。
聞きなさいよ・・・
菊沢さん。」
橋元はトーンを落とし
声だけで私を身動きが
取れなくなるような
感覚に陥れる。
何これ?
彼の命令には逆らえないような
【何か】
があるの?
私は橋元に聞きなさいと言われ
心が聞く姿勢になっていることに
言いしれようのない不安と不快感を
感じていた。
「そう。
それが大人というもの
ですよ菊沢さん。
がはははっ
それで・・・何処まで話しましたかな?
そうそうそのホステスですがな。
その時の私には凄くべっぴんで
良い女に見えたのですわ~
まああんたほどでは無いですがね~
そしてそのホステスを抱きたいと
心の底からこう思いましてな。
彼女のつま先から頭の先までを
私はねえ。
犯すような視線で見てしまって
いたんですな。」
さっき私にしたようにか・・・
それでそのホステスの女性は
彼に欲情してしまったのね・・・
そして橋元に抱かれたのかしら?
しかしこれは・・・
橋元に見られ性欲を刺激されると
橋元にではなく近くに居る
男性に
いや男性で無くとも
女性の部分に何かを求めて
しまうのでは?
それが視線を浴びせている橋元が
どうしても近くに居るから
彼の思惑通りになってしまうのだわ。
そうよきっと・・・
私は彼の話を聞きながらそう思っていた。
「するとそのホステスがですな・・・
ほうっ・・・もうあんたの
ような頭の良い女性にはすべてを
話す必要は無いようですな。
まさしくその通りですわ~
その後も私の太い男根で
何度も何度も天国を味わって
いましたな~そのホステスは
今までで1番良かったと
喜んでいましたわ~
がはははっ
しかし私は私に魅了されて
抱いたと思っていましたが
あんたの考える見解は違った
ようですな~
私もどうしてこのような
力が手に入ったかはわかりませんが
あんたが思うように周りにいる男や
それに代わるものを挿入したく
なるとしても・・・
どちらでも結果は同じですわな。
この媚薬と私は呼んどるんですが
この目の力に気づいてからは
本気で抱きたいと思った
女を抱けなかったことは
ないですわ~
がはははっ」
この話が本当なら・・・
私を含め女性エージェントじゃ
この男には太刀打ちできないじゃない・・・
読心術に女性を見ただけで感じさせる
力・・・
ありえないでしょ?
そんな力・・・
私はこのバカげた話が嘘だと思いたいが
今私の身体に起きている異変がそれを
嘘だと肯定させない事に
苛立ちを隠し切れなかった。
橋元は私の足から股間にかけて視線を
集中するように見て来る。
そして話を続けた。
「あの百聞の美佳帆さんが
仲間からはそう呼ばれて
るんですわな?
その百聞の美佳帆さんが
もうビショビショである事は
おいておいてと・・・
がはははっ・・
水島さんはね~
やりすぎたんですわ。
彼はね~
うちの張の部下を
私や張に許可なく使い
彼自身の目的の為に使い始めた。
そのうえあの
連続主婦失踪事件で
死体が府と県の境の山奥から
みつかりましたわな~?
あんたの事務所の人間が
犯人のその男2人を
捕らえましたでしょ?
あれは私も張も
関係おまへんで。
全て水島さんの独断で
勝手にやったこと
なんですわ。」
それは解っていたが
本人の口から聞けて
確信が持てたわ。
しかし水島の単独行動
だったとは・・・
予想はしていたがこれで
大塚君たちが捕らえた水島の
処分はしやすくなるわね。
「水島の事は・・・
だいたいわかったわ。
それと橋元さん
水島の件で少し
お願いがあるのだけど
聞いて下さるかしら?」
「ほう~
菊沢さんからのお願いとは
これは嬉しいですな~
まあ聞けることと聞けない事が
ありますが
私にもそれ相応の見返りが
あるのでしょうな?
大原君の情報も与えるのですから
あんたもタダでとは思って
いないでしょう?
うん?」
やはりそう来たか・・・
橋元の見返りは十中八九解っているが
それをこちらから提案し提供する気は無い。
それでなくとも私は一刻も早く
彼の前から立ち去りたいのに・・・
情報を引き出す交渉がこれほど長く
感じたことは初めてだわ。
「見返りね。
何が望み?
私のお願いとは
府警の大塚刑事が
うちの菊沢が水島から
情報を抜いた後に
彼を連行し留置所に
入れるでしょけど
通常の裁判から
実刑が下り普通の流れで
彼が処分されるのを
邪魔しないで欲しいの?
あなたもその方が都合が良いでしょ?
平たく言えばいつもやっている
ように府警の本部長に圧力をかけないで
下さるかしら?
こんな事あなたも元からする気が
無さそうであったけど念の為にね。
何もしなくていいのですから
見返りは必要ないでしょ?」
「がはははっ
確かにそうですな~
私も今更水島さんを救うつもりなど
ありませんがな~
ありませんが・・・
それを約束させられるのは
ちょっと面白くないですな~
菊沢さん。
この世の中にタダは無いのですよ~
特に情報と動かないと言う確約はね~
しかしそうですな~
あんたのその強気な姿勢と
辛抱強さそれにあんたとは
今後もビジネス抜きで会いたい
ですからな~
私があんたに出しはずであった
条件を譲歩しましょう。
実はあんた達とは金輪際
構えたくはないというのは
事実ですからな~」
本心か?
しかし答えを小出しにする男ね。
全く意図が読めない・・・
条件を譲歩・・・?
どういう事?
「・・・
それは大原君・・
大原良助さんの行方
と彼に関与した人間とに
何が起こったか
それをあなたが全て知って
いてここで今真実を私に
伝えれると言う事が
可能であるのが前提で
後は本当に水島に関して
府警本部長を動かさない。
この2つを約束できるという
事を前提で話しているのかしら?
それならあなたの言う条件を
教えてもらえるかしら?
私もその2つと引き換えになら
その条件を聞いてみようとも
思うわ。
但し
どこをどう譲歩したかも
含めてね。」
私は橋元に見られ続けて
いることにより全身にビリビリ
流れる微弱の電流のような感覚が
徐々に刺激から快感に変わって
来ていて既に自覚できるほど
私の女性の部分は潤っている事に
焦りを感じていた。
しかしこの男の前でそんな
部分は見せたくないので今は
まだ交渉の段階でもあるので
精一杯虚勢を張り冷静さを装う。
「がはははっ
そんな事ですか~
それならば大丈夫ですわ~
勿論大原君の行方、
現在どうなっているかも私は
知っていますしそれを先に伝えて
からあんたには約束を守ってもらう。
大塚本部長には圧力をかけない
というのは元々あんたが言ったように
そのつもりでしたからな~。
約束しましょうあんたが求める2つの
条件は必ず守りますわ。
私の条件はね~
私は強い女を屈服させるのが
好きでしてな~
そんな女が喘いで逝き狂う姿が
何よりの好物で最初はここに
ある器具を色々使って
あんたを責め立ててやろうと
考えていたのですがな。
それはいきなりは少し勿体
無い気がしましてな~
だから私からの条件は
私とのSEXですわ~
勿論これはあんたにとっても
秘密の交渉ですからな。
私以外の人間に知られることは無いですわ。
それと譲歩した部分はせっかくの
こんな部屋ですがここにある物は
一切使いませんわ。
ってあんたがこの条件で
イエスと答えるのは私はもう
解ってるんですがな。
がははははっ!」
予想通りというか
予想以下・・・
私としてはこの部屋にあるような
器具を使われてと
言うのは正直プライドに
触り耐えかねる部分がある。
それがただ橋元とのSEX。
それだけだとしたらたやすい。
いやたやすくはないか・・・
今までも情報収集や危機を脱するために
身体を張った事はあったが相手が能力者と
言うのは初めてであった。
主人の宏以外の能力者とのSEXは
もし私がこの条件を受けるなら初めてとなる。
宏のSEXは普通の男性とは違い能力者同士のそれは、お互い感性が常人離れしているからか、通常の男性と行うSEXに比べてありえないほど感じる。
しかも橋元はその力をさらにSEXに応用してきたような
節がある・・・
正直そこが怖かった。
それともう1つ気になるのは・・・
私は今まで任務で身体を張ってしまった場合は
宏に全て報告して来た。
うちの旦那は気が短いが物分かりが良く
きちんと報告すればそのことで私を責めることも
しないし引きづる事も無い。
全て無かったことにしてくれる。
それ以上の対価を得ているからというのもあるが。
しかし橋元・・・
この男は私が嫌悪感を覚える以上に
宏は嫌っている男・・・
そんな男に特大の情報と引き換えとはいえ
身体を張ると言う事を主人に報告など
したくなかった。
どうする・・・
宏の事が無ければ私はきっと仕事と割り切り
出来ると思う。
しかし・・・
どうする・・・
今回に関しては報告はしないでおこうか・・・
私は無言でいると橋元に見られ続け下半身の
潤いだけが決断をせかすように増していく。
「いやいや。
それは悩みますわな~
私はね~菊沢さん。
ただ単純にあんたのような
強くて美しいしかも頭も
キレるし決して折れない心を持つ
そんな女とやりたい
だけなんですわ~
その後ね。
あんた達夫婦にもめられるのも
私としたことで
あんたが不幸になるのも
ごめんでしてな~
まあそこが水島さんとの違いでも
あるのですが
私も彼も悪人は悪人ですがな。
その悪人ならではの知恵ですが
私を追い詰めてシバキあげて
聞きだした事にしたら
宜しいんやないのですか?
簡単に口を割ったと思われたら
大原君の事も水島さんが
勝手にやった事
ですので私は
そろそろ水島さんを切りたかった。
そこは事実でっしゃろ?
それに私が水島さんを売ろうとして
率先して水島さんの情報を話して
大原君の事も水島さんに
なすりつけたような
感じで話しなはれ。
そうすりゃ辻褄も合うし
何せ本人が言うとるんや
殆どホンマの事ですわ。
がははははっ」
そうか・・・
確かに橋元の言う通り
宏に言えば・・
何の問題も無い事だった・・・
しかし一瞬で私の思考を・・・
この男・・・
私の何処までを知っていると言うの・・・
「もう結構見せてもらいましたわ~
あんたの好きな体位も
弱い所も全部ね~
過去の経験人数も
他にも情報と引き換えに
SEXした事も
海外のマフィアに摑まりそうに
なって銃口向けられたままハメられ
そこから相手を縛り上げて逃げた
事もあったでしょう。
海外マフィアに銃口向けられながら
ハメられもっと早く逃げれたでしょうに
あんたは逝くまで犯させておいてから
相手の銃を無効化したのは
あんたがホンマはSEXが好きという
事ですわな。
がはははっ!」
「なっ・・・
そんな事・・・
一々言わなくて良いわよっ!
ふぅっ・・・
はぁ・・・
さあ大原君の
居場所と大原君に
起こった事を全て
教えてくれるかしら?」
私は足を組み替えながら
今度はこちらから橋元を
見据えた。
「宜しいでしょう。
交渉成立ですな。」
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