私は今ある探偵事務所で働いている。
最初は素敵な女性所長だと思い
働き心地も良かったが
所長があのバカだと解ってから
というものうちの事務所はもう・・・
と思っていたら休暇なのに
その所長から電話だ・・・
「もしもし~グラサン?
え~
任務~?
私さっき起きた所で
今日はスポーツクラブで
エアロビの予定なんだけど~
えっ!?
美佳帆さんが?
うん!
わかったすぐ行くよ!
場所は!?
分からないってあんたね~!
分かったわ美佳帆さんの
GPSをスノウに探知させて
追跡するわっ
分かってるわよ~!
急ぐよ勿論っ!
えっ?
スノウは現場担当じゃないから
連れていくなって?
あなたバカなの!?
スノウが居ないと
美佳帆さんの居場所が
わかんないじゃないのよっ!
大丈夫!
私が居れば危険な目には
合わせないからっ!
もうアンタうるさいわよっ!
急いでるんでしょ!
切るわよっ!」
せっかくの休暇だと言うのに
これだからうちの事務所は・・・
本当にブラック企業だわ。
しかし普通の仕事なら
グラサンに言われたくらいじゃ
受けないけど
今回は特別。
私がただ一人尊敬する
女性、菊一探偵事務所の
所長!
グラサンが所長なのは
飾りだからね真の所長は
美佳帆さんだと皆
思っているはず。
その美佳帆さんが今、
任務で単独追跡をしていて相手が
ヤバイ男だから助けに行って欲しいと
グラサンから連絡があった。
グラサンと言うのは私の高校時代の
同級生で一応私が勤務する
菊一探偵事務所の
所長でもある。
一応ね。
でも私達エージェントは
皆所長は美佳帆さん
だと思い美佳帆さんの
命令なら何でもする
というエージェントが多い。
美佳帆さんは私達
エージェントには優しいし
頭も良いしそれで強いし
何といっても同性から
見ても美人だしね。
本当に憧れる。
私達の同級生で
お嬢と言われチヤホヤされて
いる千尋なんかよりよっぽど
色気もあり綺麗な人だと思う。
そんな美佳帆さんが私の助けを必要な
くらいの相手を追跡しているの?
グラサンもかなり焦っていたようだし・・・
とりあえず私は事務所に連絡を取り
GPS追跡が得意な美佳帆さんの
助手と言う地位を手に入れ気に入らない
女ではあるがスノウこと斉藤雪に連絡を
取り事情を説明した。
スノウは美佳帆さんのピンチの時は
仕事の速度が2倍は早くなるが今回も
スノウは速かった。
事情を説明し電話を切り
1分も経たない間に折り返しが
かかって来た。
今美佳帆さんのスマホはドットクラブという
ホテルの10階にあるらしい。
スマホがあると言う事はそこに美佳帆さんも
居ると考えてまずは動く事になる。
というかそれしかない。
スノウは電磁波に意志を乗せある程度
そこにある状況を分析できる力も持つ。
この力を気にいられて美佳帆さんの
秘書的な役目を手に入れたのだ。
私のように脚力が異常に上がるだけの
身体活性タイプは和尚同様
現場向きだそうである。
スノウが言うには美佳帆さんは今
1人の男性とソファで向かい合い
会話をしているらしい。
現状はまずい事にはなって
いないようだが相手の顔を
スノウが分析したところ
橋元という男でかなりやばい
男らしく既にドットクラブの
前のコンビニに天然ことアリサにも
援軍を頼み向かわせたから私にも
そこに来るようにとクールに言い放ち
電話を切った。
やっぱり気に入らない女だ。
しかし橋元・・・
何処かで聞いたような名前だなぁ・・・
グラサンもグラサンでそんなにやばい奴なら
先に言えっていうの!
あっ言ってたか?散々・・・
私はスポーツクラブに
行く予定だったので
半そでのピンクのTシャツと
スパッツという
スポーティーな服装だったが
エアロビをするのが
この美脚でその橋元という男を
蹴り倒すだけに
運動が変わるだけなので
急ぐことだしこのまま
の格好で問題ないと思い
すぐさま自宅のマンションを
出てスノウが言っていた
ドットクラブの前のコンビニを
目指した。
コンビニに着くとどうやら
私が1番最後だったようで
「姫~遅いよ~
美佳帆姉さまピンチみたいよ~
今スノウが言うには情報
引き出そうとしているけど
どうやら相手も能力者の
可能性があって美佳帆さん
精神戦で結構
押されてるみたいだよ~」
コンビニの中から私をみつけて
先に走って来たのがバカ、
いやバカはグラサンに和尚で
この大馬鹿はうちの事務所の
ド天然の斉藤アリサ。
キックボクシングを
習得していて現場担当で
かなり強いのだが
おつむがどうも弱く
それでも他の所員よりは
私はまだ仲良く
できる子である。
「あの美佳帆さんが
精神戦でピンチ~?
うそでしょ?
そんな奴いるの?」
私が天然に腕をつかまれ
絡まれている所に
気配も感じさせぬまま
背後から話しかけてくる
無礼者が居た。
「私の予想では
相手の橋元も能力者。
しかも対峙した相手の
精神に深く入り込む類の
能力と推測されます。」
私は振り向き
「くお~らっ!
スノウ!
あんたいつも私の背後に
こっそり立つなって
言ってたわよねっ!
しまいには振り向きざまに
私の蹴りお見舞いして
しまうよっ!
あ~!
しかもあんた現場
舐めてるの!?
今から美佳帆さんの
援軍に行くのにどうして
そんな格好なの?
あんたはこれから
デートにでも行くの!?」
天然こと斉藤アリサは
さすがにバカでも現場慣れ
していてちゃんと動ける
ように黒色のTシャツにジーンズ
とまともな格好をしているが
本当のバカはこっちだった・・・
IQ180かなんだか知らないが
この子はダメだ・・・
現場に行くのにノースリーブの
水色のブラウスに
白のミニ丈のフレアスカートと
全く動く気がないのが見え見えの服装・・・
「私は頭脳労働専門ですから。
野蛮な事はお2人にお任せ致します。
その分相手の橋元という男の
力を分析してお2人にお伝えして
無事に美佳帆さんを連れ戻す
事が最優先でそのために服装は
関係ありませんわ。
着替えてくる時間も勿体ないくらい
急いでおりましたしね。
でもお2人が・・・
特に玲華さんが居れば私は
動く必要も無いのではないですか?
玲華さんの蹴り技の凄さは私も
よく知っておりますよ。」
終始淡々とした口調で
話す斉藤雪。
前半は私の必殺の蹴りを
先にこの女に炸裂させてやろうかと
思っていたが後半の部分で私も
溜飲を下げる。
というかこの女おだてるのが
上手いのか
私が単純なのか
完全に乗せられていた。
「まっ
まあね。
あんたのような
華奢なお嬢様は
仕方ないから
私が守ってあげるから
私の後ろにでも隠れていなさい。
さあそれでは行くよ!」
「はい。
その時はそうします。
しかし少しお待ちください。
玲華さん。」
勢いよく歩道を渡ろうとした
私がこけそうになる。
「きゃはははっ
姫おもしろい~」
「こら~アリサ~殴るぞっ!
ってかスノウなんなのよっ!」
「その歩道を渡り
2メートル先が美佳帆さんの
百聞の能力の1番外側に
なります。
そこまで行って一旦
待機して私達で美佳帆さんに
今から向かう事を伝えましょう。
そうすれば美佳帆さんも
私達が来ることを前提で
動きが変わってくるはずです。」
「わあ~
さすがスノウさん
賢い~」
こいつは・・
緊張感が全くないと言うか・・・
しかしこの女はさすがに
美佳帆さんの助手なだけある。
「そうね。
そうしましょう。
ではとりあえず渡るわよ。」
私達は次の青信号でコンビニ前から
歩道を渡りドットクラブの直前で
立ち止まる。
「それでは
玲華さん私のスマホに
電話をかけて下さい。」
「はぁ?
あんたいきなり
何言ってるの?」
「私と美佳帆さんで
取り決めている事があり
任務中の美佳帆さんに
百聞で聞いて欲しい事が
ある場合は私のスマホの
着信音を美佳帆さんの好きな
洋楽のメロディーに変えてから
鳴らした上で話すのです。
そうすれば美佳帆さんがすぐに
百聞で拾ってくれます。」
「なるほど・・・
わかったわ・・
かけるわね・・・」
タララランッ・・ルルルル・・・
スノウのスマホからエンヤの
曲が流れる。
「これでいいわ。
美佳帆さん聞こえますか?
スノウです。
今から玲華さんとアリサさんとで
向かいますから。
くれぐれもご無理はなさらないで
下さいね。」
「美佳帆姉さま~アリサが
行くからね~
待っててねっ」
2人が次々と美佳帆さんの百聞に
届くように話す。
「美佳帆さんっ!
目の前に居るバカ
私が蹴り倒してやりますからっ!
どんな奴か知らないけど
早まったまねはしないで待っていて
下さいねっ!」
「これだけ
話せば拾って
もらえたと思います
行きましょう。」
スノウの合図とともに私達は
ドットクラブの中に入って行った。
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