第8章 三つ巴 20話 能力者集団結成
佐恵子は、パトカーの後部座席で体の大きな警察官と、指揮を執っていた女性捜査官に挟まれるようにして、長時間座る羽目になり、力を使い過ぎた疲労は限界まで達していた。
隣に座った、お堅い捜査官からは質問攻めにされ、さすがに辟易していたところだ。
「・・・着替えたいですわ」
質問に疲れてきた佐恵子は、ポツリと呟いた。
隣に座る捜査官は、形の良い綺麗な眉を、片方だけピクンと跳ね上げたが、佐恵子は気にする気にもなれなかった。
たしか、霧崎何某と名乗っていたが、心身の疲労は限界に達しており、覚える気にすらならない。
その霧崎美樹は、佐恵子に気づかれないようにため息をついた。
そのとき、霧崎が座っている側の窓ガラスがノックされた。
パワーウィンドウを開けた霧崎が、目で促すと、ノックした若い捜査官は「これを」と言って、霧崎に資料を手渡す。
「先ほども、申し上げましたが、弁護士を通してお話させていただきます。・・・この場で、お互いの言質も取らず発言するほど、素直ではございませんの」
佐恵子の発言を聞きながら、美樹は資料に書かれている内容に目を走らせる。
資料から顔を上げた美樹は、一瞬だけ眉間にしわをよせると、佐恵子のほうを向いた。
「結構です。宮川さんでしたね。では、後日会社のほうにお伺いさせていただきます。長時間おつかれさまでした」
「・・・ええ、お疲れ様」
先ほどまでのしつこい質問責めから一転し、あっさりと佐恵子は開放された。
パトカーから出ると、加奈子と真理、門谷さん、それに支社の警備部門の人たちも大勢もいた。
(なるほど、門谷さんが手を回してくれたのね)
疲れた顔ではあったが、みんなに笑顔を向けながら、門谷さんだけには目礼を送る。
「支社長!」
加奈子が呼びながら、近づいてくる。真理もヨタヨタと近づいてきており
「佐恵子・・。顔の傷も力が回復したら治しますからね・・」
真理が顔の傷を摩りながら、安心させてくれる。
「ええ・・、ありがとう。心配かけたわね・・。とりあえず今日は帰りましょう。明日の朝反省会をしましょう・・」
佐恵子がいつもの速度ではない速度で歩を進めながらそう言うと、
「ええ、きっちりと反省会をしなければいけませんね」
と、話の途中で珍しく門谷さんが割って入ってきた。
門谷さんになんの説明もなく、私や加奈子や真理が満身創痍になっているのだ。説明をしないわけにはいかないなと思い、素直に謝罪を口にする。
「・・ごめんなさいね。門谷さん。あとで説明しますわ」
佐恵子は、珍しく素直に謝罪すると、
「ええ、しっかりと説明をお願いします。・・・ですが、いまは休養が何よりも急務のようですね。滞りなく手配しておりますので、こちらの車にどうぞ」
と、門谷さんのすこし険しかった表情が、いつもの営業スマイルにもどると、普段は使わない普通車のミニバンに乗るように促す。
佐恵子、真理、加奈子が一言ずつお礼を言いながら、車に乗り込む。
車に乗り込にシートに身を沈め、窓から外を見ると、菊一事務所の連中が、若い捜査官を中心に警官に取り囲まれ、事情聴取されていた。
そこに、霧崎が加わり、更に質問をされている。
凶刃から私を守ってくれた織田裕二似の人、ニコラス・ケイジに似た、頭髪が後退した顔の濃い男、黙っていれば木村文乃に似ている豊満な肉体をしたお転婆な女・・・。
菊一探偵事務所の、その3人がジェスチャーを交えて、身振り手振りを交え、大げさに説明している様は見ていて、何となく笑えてしまった。
佐恵子はひさしぶりに、【感情感知】を発動していない。オーラが無くなり過ぎて、発動するのも億劫なほど消耗していたためだ。
だが【感情感知】を使わなくても、何となく彼らが善人であることは、その様子を見ていると伝わってきた。
車の窓は閉まっているし、距離も少し離れているため、会話は聞こえないが、その様子を、佐恵子は疲れ果てた表情で、しかし優しい声で、
「貸しを返さないといけませんわね」
「ええ、そうですね」
何気なく呟いてしまった発言に、真理が追従してくれた。
「支社長、あのかなり腕の立つ熱血男に何か渡してましたよね?」
「え?いえ、なに?なにも?」
加奈子の質問に内心ドキッとし、さすがに獣並みの感覚を持った加奈子には気づかれたか・・と思ったが、とっさに、嘘をついてしまった。
「ええぇ~?支社長~なにか白いの渡してたじゃないですか~」
「名刺よ!名刺を渡しただけ!危ないところを助けてもらったわけですからね・・。連絡が取れなかったら後でお礼も言えないじゃない」
「ふぅ~ん・・・。じゃあ、いまなんで嘘ついたんですか?支社長のそういう反応珍しいですよね・・・」
「う、うるさいわね」
自分の顔が少し、紅潮してしまっていることを悟られまいと、外を眺めたまま加奈子に返す。
その様子を、真理がクスクスと笑って眺めていたところに、運転席に門谷さんが入ってきた。
「そろそろ、出発します。前後をうちの警備の車が走るので、そんなにスピード出ませんけど、20分ほどで保養施設に到着します。もちろんそちらの警備も万全ですので、ご安心ください」
いそいそとシートベルトを閉めながら、説明してくれる門谷さんを見ながら、「ええ、ありがとう」と謝辞を述べたと同時に車は発進した。
佐恵子は車内の時計に目をやるとデジタルは、PM22:10と表示されていた。
こんな時間だというのに、スーツをきっちと着こなし、てきぱきと仕事をこなしてくれる、門谷さんにお礼を言うと、佐恵子は過度の疲れから、すぐに微睡んでしまった。
翌日、
「ふぅ・・やっと帰ったわね・・・」
日は明け、昨夜とはまた別の意味で疲弊した表情で佐恵子が呟くと、
「仕方ありません・・。スマートに片づけられなかったせいで、大事になってしまいましたしね」
と佐恵子同様に疲弊しているが表情には出さずに真理は答えた。
「朝は、門谷さんにも説明させられましたしね・・。疲れました」
と、加奈子も2人と同様に疲れている意志を示す。
2階の応接室から階下を見下ろし、霧崎美樹と錦雄二が正面玄関から出ていく様子を確認すると、嘆息が混じった発言をしながら背伸びした。
雨宮雫、楠木咲奈という従業員を保護していると連絡があり、引き取りに行ったのだが、保護ではなく軟禁されており、引き取りに行った我々に対しても襲ってきたので、必死に抵抗した。
苦しい言い訳ではあったが、おおむねの説明はそれで通した。
連絡があったというところ以外は、あながち間違いでもない。
あの霧崎と言う捜査官なら、直ぐに裏をとり、辻褄が合わないことには気づくだろうが、話していて感じたことなのだが、彼女の狙いは、私達以外のほかの事、ほかの人物にあるようであった。
「それにしても、昨日は気づかなかったけどあの女も能力者ね・・・。やっかいなことにならなければいいけど」
呟き、利害が一致すれば協力はするが、邪魔ならば・・。と物騒なことを考え始めた佐恵子は頭を振る。
その排他的で傲慢な考えが今回の失敗につながったからだ。
自分の力に絶対の自信を持っていた為に、目を使わずに楽しんでしまったり、モブという敵の力量を見誤り、油断で大ダメージを負い、髙嶺の千原という思いがけない強敵の出現で、あわやというところまで追い込まれたのだ。
あの織田裕二が来なければ・・。
「どうしました?まだどこか調子が悪いですか?菊一探偵事務所に伺うのは後日にします?」
赤面しかけて、ぶんぶんと頭を振っている佐恵子に、真理が不思議そうに声をかけてきた。
「いえ、行きますわ」
「わかりました。車は準備できているはずですので」
「あの人たち飲むかなぁ・・」
(飲まないときは・・・)
加奈子の発言に、またもや物騒な考えをしそうになった頭を慌てて、停止させる。
(菊沢夫妻に昨日の3人・・・今の支社の戦力だけでは難しいですわね・・・)
ただ戦うだけなら、いろいろと方法はあるかもしれないが、佐恵子が望む形に持っていくには、難しいように思えた。
「とりあえず、提案はしてみましょう。断られた場合は、それから手を考えましょう・・それと、はなを本社から呼びました。1週間ほどでこちらに着任するはずですわ。」
「よく許可が出ましたね・・・」
真理が意外そうな顔で尋ねるが、すぐに察したような顔になり
「松前常務に呼ばせたのですね?」
「そう、名目は彼らの護衛ということですけどね。こっちに来てしまえば、此方のものです」
佐恵子は含みを持たせた笑みで、真理に答えると
「はなはなかー。久しぶりですね。これで、支社長の護衛ももっと強固になるのです」
嬉しそうにそういう加奈子に佐恵子は預けていた者がいたことを思い出し、聞いてみる。
「加奈子、彼の様子はどうなの?」
「あ、彼ですね・・。まだ、昨日の今日ですよ。まだまだ重症です。あいつあんなに動き回っていたのに、すごい怪我だったみたいで、まだ監視カメラ付きの独房個室のベッドの上ですよ。・・・支社長が言ってた能力開花の可能性を測るにも、本人がまだお眠です・・・。あとで真理しゃんにお願いしないといけないかも・・それとバカなのは殴られ過ぎじゃなく元々のようです。」
「ええぇ・・、ボク、もう昨日からフル稼働で、疲れてるからまた今度ね・・」
真理が更なる重労働の依頼を、幼い駄々をこねている男の子の口調で断る。
真理は、興奮したり冗談を言うときは、【身内】の前では、男の子言葉になる癖がある。
「あう・・ボクにそう言われると思ったのです」
加奈子も真理に合わせ、真理の事をボクと言い、断られた事に肩を落としながら。
私達が派手に大けがをしていたので、真理のオーラが回復した端から真理のオーラを使い怪我を直してもらったのだ。
回復系の力を持つのは、今は真理だけなので、どうしても真理への負担が大きくなる問題を何とかしたいとは、佐恵子も常々考えていた事でもある。
「ありがとう真理・・・。真理がいてくれなければ顔にキズが残ったままだったかもしれません」
ワイヤーで傷だらけにされていた顔に手をやり、キレイに治っているのを再確認しながら、真理に改めてお礼を言う。
「そんな・・気にしないでください。それと、あの男も、ひと段落したら回復させてあげます。加奈子に言ったのは冗談ですよ。それに咲奈と雫の試験もありますし、合わせてあの男も検査をしてみるつもりです」
「ええ、忙しいとは思うけどお願いね」
「冗談でからかうなんてひどいのです」
真理は、加奈子に向かってクスリと笑うと「いきましょう」と言って、応接室の出口にほうに歩いていった。
今3人は菊一探偵事務所に、昨日、救ってもらったお礼という名目である交渉を持ち掛けに来ていた。
そして菊一探偵事務所の応接室には、菊一探偵事務所の所長、菊沢宏に、その妻で所長代理の菊沢美佳帆が、佐恵子、真理、加奈子と向かい合っていた。
私たちの目の前に居る3人。
宮川コーポレーションの、関西支社、支社長にその部下2人、彼女らは私たちに昨日、依頼を持ってきたクライアントなのではあるが、本日はまた私たちが驚く大きな商談を持ちかけてきたのだ。
この宮川佐恵子と言う人の発言には、私も正直昨日から驚かされる事ばかりであった。
「なんやて?それは、つまりどういうことや・・・?」
神田川さんと私でずっと宮川コーポレーションの意向を聞き、話していたのだが、隣に座る部屋の中でもトレードマークのグラサンをかけたままの私の旦那さまが話に入ってきた。
「有態に申し上げますと、御社を買いたいと申し上げております」
神田川さんは、私から旦那の宏に向きなおり、簡潔に質問に答える。
「今まで通り、業務は行っていただいて結構です。今までのクライアントも、こちらでどうこうと働きかけすることはございません。私どもから、調査等の依頼案件は増えるとは思いますが、基本的に今まで通り活動なさってください」
来客用のソファの真ん中に宮川佐恵子、左側に神田川真理、宮川さんの後ろには稲垣加奈子、その神田川さんの提案に、最初はポカーンとしてしまっていたが、冷静にパチパチと頭の中で算盤を弾く。
「・・・条件があるのでしょう?」
私は、眼前で脚を組み座る、宮川さんに負けじと、脚を組み替えながら聞くと、旦那さまの宏がまた口を挟む。
「ちょいまち美佳帆さん・・条件とかそういう問・・」
「少し待って、聞くだけよ。ね?宏」
今回の話の、宮川さんの真の目的に、それがなんであるかの当たりをつけた私の直感はおそらく正しい。私の直感通りなら、橋元一派ひいては張慈円と繋がる怪しげな一族と構えるのに、私たち所員の能力での助力を宮川さんは欲しいだけで、我が探偵事務所を自由にしたいわけではない。
要は自分たちを絶対に裏切らない傭兵が欲しいのだと私は感じていた。
「うむむ・・美佳帆さん、金が絡むと怖いんやもんなぁ・・・」
宏が私が圧をかけるように諭したので子どものようにぶつぶつ言いながら拗ねているが会話の邪魔をしないよう大人しくなったので、神田川さんが
「よろしいでしょうか?」
と声をかけてきたので、手で促す。
「もし承諾していただけた場合ですが、その際は弊社、宮コーからの依頼を最優先でお願いします。給与その他出来高払いになります。詳細はそちらの用紙をご確認ください。それと、宮コー関西支店の5階に空きテナントが300㎡ほどありますので、今後はそこをお使いください。それと、金額ですが・・・」
神田川さんはいつものにこやかな様子とは違い、引き締まった表情で、淡々と説明を行い、最後に契約書面を机の上に置き、私の前についと持ってきた。
「からやないか・・」
隣で宏が、呆気にとられたように呟くのも無理はない。
神田川さんが差し出した契約書面には金額が記載されていなかったのだ。
「金額はご記載ください」
神田川さんの隣で、目を閉じ、脚を組んで聞いていただけの宮川さんが、静かにそう言った。
「ただし、契約金を受け取ってすぐに退職するなどと言うことはお考えにならないように・・菊一探偵事務所の方々が、そのような事をする方々でないのは勿論存じ上げてはおりますが・・・詳細は契約書にも書いてございますので、熟読してくださいませ」
念を押すようにそう言うと、再び目を閉じ黙ってしまった。
「わかりました、少し相談するのでお待ちいただけます?」
私は金額欄が空いているのは、いくら書いても大丈夫だということなのだろうが、あまりにも無謀な金額を記載すると、前に座っている宮川さんが黙ってはいない気がした。
パーテーションで仕切られている、奥の部屋まで宏を引っ張っていき、小声で宏と相談する。
相談と言っても、契約内容を聞いた時点で私の意思は固まっていた。
「あのね宏・・、みんなにも相談しないといけないとは思うんだけど」
「み、美佳帆さん・・ちょっと、おれは今更サラリーマンなんて嫌やで?あの女のいう事なんか聞けるかい。どんな無理難題ふっかけられるか・・」
「・・・聞こえてますわよ?」
「うお!」
掛けられた声に宏が大げさに驚いて、振り返るとそこには宮川佐恵子が立っていた。
「み、宮川さん・・こちらはスタッフルームでして・・」
「存じ上げておりますわ・・。扉にスタッフオンリーと書いてありましたから・・・。それでも、きちんと私の口からもお願いしたかったのです・・」
宮川さんはコツコツ足音をさせ喋りながら、私達の間近まで歩いてきた。
「ご存じの通り、我々宮川はコングロマリット企業体で、家業という稼業を持ちません。利益が上がるものであれば、違法なものや倫理に欠けること以外は、何でも見境もなくやってまいりました。・・故に敵も多く、私達自身で自分たちの身を守らなければなりません」
私達の方を向いてはいるが、どこか遠くを見ているような目で、滔々と宮川さんが語りだした。
「私たち一族は能力者です。・・・世間では超常の力と呼ばれている力も、あなた方からすれば、才能や努力の延長線上にあるものだとは理解していただいていると思います。・・・我々宮川はあくまで社会の味方であり、自衛手段として能力を開花させ使用してます。・・・時にはビジネスにも使用いたしますが、そのルールは私達にも適用されます」
「つまり、自分たちが使う以上、相手も使って構わない。と?」
私は話の腰を折ってしまうかと思ったが、つい聞いてしまった。しかし、即座に質問として返っててきた。
「対等ではないと?そうお思いですか?」
「いえ、全然そう思わないですよ。私たちも力を使って仕事をしてますから。それだからこの人数でこの街1番の探偵事務所とまでこの短期間で言われるほどになったのですから。ただ、私たちもこれまではあの橋元の所の張慈円のような相手も能力者で、悪党な場合は苦労しますけどね」
この宮川さんという方は、その普段の態度の大きさは育ちと生まれながらの立場が原因であると思われるが、持っている本質は正義感の塊と思える。
うん?態度が大きく、正義感の塊?
そう思った時私は思わず吹き出しそうになってしまった。性別や性格や温度差は違えど、私の旦那様の宏とそっくりじゃない!そう思い笑いを堪え表情は真剣な表情のまま、宮川さんをみつめていると、宮川さんが私の言葉に対して、
「その通りでございます。ご理解いただいたと解釈します・・。宮川は大きくなりました。ますます、大きくなるでしょう。一族の能力者だけでは宮川を守れないほどに・・・。そして、ご指摘のとおり、敵対する勢力にも手強い能力者が居る場合もございます・・・。私の部下をもうご存知ですよね?」
「神田川さんと稲垣さんね?あの2人は宮川さんの一族じゃないんでしょ?」
「彼女たちは私には過ぎた部下です。ですが、一族ではありません。つまり、私たちには社員や私たちに関わった人々、そして私たち自身を守るには能力を悪用する輩に抗う力が足りないのです・・。組織を守るにはもっと優秀で強い人材が必要なのです。そこで、お互いに折り合う条件を提示できればと、この度提案させていただいたのです」
やはり、特大企業の創始者の一族、そのご令嬢だけあり、お若いのに大した迫力と説得力である。真剣に話す宮川さんの言葉には私の心に突き刺さる何かがあった。
「せやけど、俺いまさら宮仕えはできへんで・・・?」
先日の尊大な態度とは裏腹な宮川さんの態度に、少々警戒しながら宏が口を出した。宏は元来、自分の行動を束縛されるのを何より嫌う。彼も宮川さんの力になりたいと今の話を聞き思ったのだろうが、宮川コーポレーションの一部になるという事だけが引っかかるのだろう。
「命令ではありません。・・あくまで依頼としましょう。その他報酬規程の出来高払いに反映させます。ですが・・・菊沢様・・・あまた方は依頼の優先順位を間違うようなお方には見えませんわ・・。私からのお願いです。私の元に来てください」
そう言うと、宮川佐恵子は長い髪が床に付くほど、頭を下げた。
宏と二人で頭を下げた宮川さんを凝視する。
5秒・・・もっと立ったかもしれない。あのプライドの高い宮川さんが、ポーズと言えども、こんなに長時間頭を下げるだろうか・・。
何か言わなければ、と焦っていると、頭を下げる宮川さんの後ろから見慣れた顔が現れた。
「ええんやない?この内容やと仕事は増えそうやし、俺らの給料も絶対に増えるやん?それに駅前にあるあのでっかいビルの5階やろ?・・契約書に書いてあるけど、家賃も格安で光熱費込みやんか。俺は副所長として賛成でええで?」
和尚こと哲司が契約書をバサバサとさせながら、軽い口調で言った。
「て、哲司さま!」
少し慌てた声をだし、下げていた頭を上げ、宮川さんが後ろを振り返る。
「うん俺もそれでええわ・・。しかし命令は聞かへんで・・?内容は所長代理と副所長が承認してるから間違いあらへんのやろ・・・。あとは、美佳帆さん・・金額やが俺が金に興味ないん知ってるやろ?・・あとは任せるで・・」
さすがに宏も、条件付きではあるが了承の意を示す。
「任せておいて」
宏の言葉を聞いた私は、一言そう言うと、哲司が持っていた契約書を、パッとひったくり、さらさらと金額を書く。
「宮川支社長、これで如何?」
にっこり笑って、宮川さんに向かって見えるように、契約書を返す。
「もちろん結構ですわ」
にっこりと笑みをたたえ差し出してきた宮川さんの手を掴み、私達はがっちりと握手した。
【第8章 三つ巴 20話 能力者集団結成終わり】21話へ続く
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核爆弾搭載ですかね…
宮コー&菊一かぁ~素晴らしいのです。
負けっ放しは寂しいですからね…
巻き返しを期待します。
とは言え・・・宮コーが負けるのも中々楽しいと言う事には気が付きました。
これからも頑張ってください。
展開につきましては、カリスマ店員様の、ご希望に沿う展開になっているのでしょうか?
今後は、出来るだけ、ドキドキした展開で書き進めて行きたく思っておりますし、どうなっていくかは、ここでは話さないでおきますので楽しみにしていてくださいね。