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第8章 三つ巴 29話 魔眼不発!非道髙峰の南川沙織

第8章29話 魔眼不発!非道髙峰の南川沙織

稲垣加奈子vs井川栄一

闇夜を切裂さかんばかりの風切り音と金属が激しくぶつかり合う音を響かせ、拳と刃が、白と黒の影が交錯する。

戦闘を有利に進めながらも稲垣加奈子は焦っていた。対峙する相手に対してではなく想定外の人数で強襲された状況にである。

大塚の部屋から離れ、一人で井川栄一を相手に戦っているのだが、流石に一筋縄ではいかない。井川一人にかれこれ30分は費やされている。

思わぬところで意外な再会を果たしてしまい、井川栄一に対しての生理的嫌悪感や遺伝子的に受け入れ難いと感じる相手に敗北後に行われた屈辱的行為が思い出され、心中かき乱されていたのだが、いざ拳を交えだすと当時は歯が立たなかったあの井川栄一の剣捌きや体術に十分対応できている。

そのため目の前の戦闘には加奈子は今驚くほど頭が冷静に冴えていた。佐恵子の冷静付与のせいかもしれないが、それだけではない。当時はいいように嬲られていた栄一の剣閃に余裕をもって対応している自分を客観的に見ることができていた。

稲垣加奈子は3年前に初めて井川栄一と対決したときよりずいぶん腕が上がっていることを実感していた。

かつて皇居の堀に掛けられた二条橋の上で対決した際には、当時の井川栄一に対して出鱈目な強さを感じたのだが、加奈子の感覚が鈍ってないとすれば白いスーツの剣士こと井川栄一は以前対峙した時より確実に弱い。

よく見れば当時より若干太っているようにみえるが、そのせいだろうか。

(それとも私の油断を誘っている?でも演技のようには感じない・・演技の必要もないはず)

「はぁはぁ・・稲垣加奈子!・・ずいぶんと腕を上げましたねえ・・・」

考察中の加奈子に、栄一は乱れた前髪をかき上げ加奈子に称賛を送る。

余裕のある素振りを見せたいのであろうが、栄一の声には驚きと焦りが混ざり虚勢が透けて見て取れた。

先ほど加奈子が栄一の剣閃を掻い潜り、左わき腹に強烈なフックをお見舞いしたところを左手で押さえ、栄一は僅かによろめき顔を歪めた。

「・・・・あの時のあんたと比べたら今はずいぶん弱く感じる。一度戦ったあんたの能力はもう知ってるし、その速度が限界なら私には当たらない。・・・3年間私は自分自身を鍛えた・・。もうあの時とは違う」

加奈子の言葉に栄一は一瞬驚いた表情をしたが、すぐに怒りに染まった表情となり、唾液と血液が混ざった液体をべっと吐き捨てた。

吐き出した液体は唾液の割合に対して血液がずいぶん多い。

栄一の吐きだしたそれを見た加奈子は先ほどの渾身のボディフックが、相当の深手を与えたことを確信する。

「はぁはぁ・・げほっ・・よくも僕に対してそんな口をきけたもんです。・・調子に乗ってますねえ加奈子の分際で!以前は手も足も出なかったくせに!」

栄一は口元をぬぐいながらそう言うと加奈子を睨む。

折角の白いスーツも何度か転倒させたせいで、あちこち汚れてしまい、今も口を拭ったところが血で赤く汚れていた。

「無様ね・・・急いでるから今逃げ出すなら追わないかもしれない」

加奈子は内心の焦燥を見せないよう栄一に対して極力冷ややかな口調で言う。

井川栄一を圧倒できたのは加奈子が彼の能力を知っていて且つそれに対応する鍛錬を3年間重ねたからであり、決して井川栄一が弱いわけではない。

しかし今は、張慈円や千原奈津紀らと戦っているはずの支社長たちが気になって仕方なかった。栄一一人に時間を割き続けるわけにはいかない。

「いま・・何て言ったんだ?この僕に逃げ出したら・・追わないだと・・・・?!」

顔を伏せ身体を屈辱で小刻みに震わせながら栄一は加奈子を睨み上げてそう言った次の瞬間、耳元で加奈子のハスキーな声がした。

「一応忠告はしたわ」

「くっ!!」

加奈子の常軌を逸する瞬発力と爆発的なオーラ使用で、背後を取られた栄一は焦りの声を上げ、戦慄とともに身体を捻り回避と反撃を試みる。

「遅い」

低く憐れみを含んだ声で栄一に囁く。

栄一が振り返りざまの横薙ぎの一閃を加奈子に放とうとしている握り手はすでに加奈子に掴まれ封じられていた。

加奈子は至近距離から膝の伸身運動で威力を増した掌打で栄一の顎を打ち上げ、栄一の刀を封じていた手を離し、拳をつくると、オーラを込め仰け反って無防備になった栄一の臍付近に得意技の崩拳を、体重を乗せ打ち込む。

「はっ!!」

どしん!!

「ぐふぅ!!!」

鳩尾にまともに拳が入り栄一の苦悶の声と同時に、手放された主人から離れた刀が弧を描き回転しながら上空に投げ出され、月の光を反射させて舞う。

栄一は加奈子に打ち抜かれ、自慢の愛刀三日月宗近すら手放してしまい、真っ暗な夜の闇に吹き飛ぶ。

拳の手応えから加奈子は勝利を確信し、表情を緩めた。

吹き飛び離れていく栄一と目が合う。

崩拳をまともにくらい6階建てのマンションの屋上から外に飛び出そうとする栄一の目は恐怖で濁っていた。

どんな悪党が相手だとしてもさすがに罪悪感が無いわけではない。

(でも・・あいつが私にしたことを思えば同情には値しない)

崩拳を放った残身のままの姿で、加奈子はそう自分に言い聞かすと、恐怖に引きつった顔の栄一に憐憫の表情を向け小さく呟いた。

「さよなら。くそやろう」


神田川真理&斎藤アリサ&宮川佐恵子vs南川沙織&千原奈津紀

「さーて・・んじゃ、いきますよー」

稲垣加奈子に扉ごと一緒に吹き飛ばされたことで、激昂した井川栄一をひとしきり笑って堪能すると、沙織は抜刀の構えを取り極端な前傾姿勢になった。

上目遣いで舌なめずりをし、狂気の笑みを浮かべている。

「真理!そのゴスロリ気を付けて!!千原奈津紀並みのオーラよ!!」

美佳帆を庇いながら佐恵子が真理に叫ぶ。

「そんな!美佳帆さん下がって!この人も刀・・・髙嶺ってことね」

「ごめー・・・とー!!!」

がきん!!

沙織は目を見開き、そう言うや否や極端な前傾姿勢から一気に真理に跳躍し、対刃グローブを付けた真理の両手を凶刃の一閃で襲う。

「真理ちゃん!加勢する!」

真理のほうが旗色悪しと直感で感じたアリサはセリフと同時に、南川沙織にキックボクシング仕込みの蹴りを放ち参戦する。

「あらー!?二人ぽっちで大丈夫かしらあ?!」

沙織はそう言うと、アリサも加わり2対1になったというのに、むしろ嬉しそうに狂気の笑顔を深め応戦する。

「くっ・・アリサさままで・・!・・・麗華さま・・・、美佳帆さまを連れて逃げてください!」

佐恵子は、真理とアリサが沙織を相手に戦っている様子を油断なく注視しながら背後の麗華に振り向かずに言う。

「え?!・・何言ってんの!はじまったばっかじゃん!」

たしかに麗華は沙織の剣技に圧倒はされたが、佐恵子の予想外の発言に言い返す。

「不味いわ・・ここまでとは!後ろに千原もいるのが見えますわ。暗いところにいますが、あんなオーラは隠せません。麗華さまは美佳帆さまを安全なところまでひとまず逃げて、宏さまたちに連絡を!これは命令ですわ!」

佐恵子は真理とアリサが戦っている様子から目を離し振り向くと麗華に有無を言わせぬように言い放つ。

「・・命令しないって言ったじゃん・・!」

「そうよ!支社長!やってみないと分からないわ!」

麗華のセリフももっともであると言えるし、美佳帆も励ますように麗華のセリフに続く。

しかし戦力をオーラで見えてしまっている佐恵子は一瞬だけ表情を苛立たせた風になったが、唇を噛み眉間に皺を寄せ麗華と美佳帆にゆっくりと言う。

「では急いで宏さまや哲司さま達を呼んできて・・あの二人が居ればなんとか・・!これは命令じゃないですわ・・。お願いです」

「そ、そんなに不味い状況ってことね・・」

美佳帆の発言に対して「・・張慈円さまも来ているとすれば絶望的です」と言うと佐恵子は再び真理とアリサが戦っている沙織に向き、目に力を蓄え、沙織の隙を伺うように注視しだした。

「麗華・・!行こう!二人で突破するわよ?!」

「でもアリサが・・」

「支社長!宏たちすぐ連れてくるからそれまで頑張って!」

美佳帆はアリサを気にする麗華の発言には答えず佐恵子の背中に声をかけると、麗華の手を引っぱりベランダから飛び降りた。

「・・・哲司さま・・折角出会えましたのに」

自身に死をもたらす存在などいない。もしいたとしても死すら怖くないとつい先日まで思っていた自分の心境の変化に戸惑いながら、佐恵子はかつてない危機感と喪失感に身を固くし呟いた。

「く、、くうっ!!来る太刀筋は解っているのに・・・!速すぎる!」

小柄な沙織の居合による突進による剣圧に押された真理が辛うじて防ぎつつ呻く。

「はあああ!!」

真理の後ろから気勢を上げると、斎藤アリサは自慢の脚力を生かし、前かがみになっている沙織の顔面目掛けて右脚で蹴り上げる。

沙織は一瞬嬉しそうな笑顔で顔を歪めると、3寸ほど引いてアリサの轟音唸る蹴りを鼻先1cmほどのところで躱し、アリサの軸足のアーマースーツのない部分、アキレス腱を愛刀京極で断つべく一閃する。

ギギィン!

「させないわ!」

寸でのところで身を挺し、右腕を突き出した真理に刃が阻まれる。アーマースーツの性能で沙織の愛刀京極を辛うじて防いだのだが、さも愉快そうに沙織の嘲りを含んだ声が響く。

「残念でしたー!!」

「きゃあ!!」

屈んだ真理が見あげると、沙織の左手にはいつの間に抜き放たれたのかもう一振りの凶刃九字兼定が握られており、振り上げたアリサの右脚首のアキレス腱を切裂いていた。

「てぃやぁっ!!」

黙っていれば童顔美少女の沙織なのだが、狂気の笑顔を張り付かせた表情で更にそう叫ぶと、身体を捻り空中で脚を振り回した。

右足の甲で真理の顎を蹴り上げ、そのまま跳躍し身体を捻り左脚の甲でアリサの顎を叩くように蹴り抜く。

真理は顎を上げられ強制的に宙返りをさせられながらも、空中で態勢を立て直してなんとか着地し、アリサも器用に空中で側宙し、ダン!と着地するも右足首の腱を断たれた上、顎を蹴り抜かれたアリサは脳震盪を起こしたのかその場に転倒する。

せめて敵を見失うまいと上げた真理の顔は焦り表情で満ちていた。アリサはと見ると意識が朦朧とした様子で何とか立ち上がろうとしていた。

小柄な狂気の童顔女の太刀筋と体術の強さに真理とアリサは恐懼する。

「どいて!!」

真理とアリサはその声に咄嗟に左右に飛びのき、背後からした佐恵子の声に振り向きもせず反応する。すでに佐恵子の両目は見開かれ光を蓄えている。

「魔眼!!こいつを防ぎさえすれば私らの勝ち!!」

沙織は両刀を逆手に握りなおし構え直すと、素早く両手で印を結びオーラを練る。

【恐慌】!!

「ふっせげええ!【不浄血怨嗟結界】ぃ!!」

佐恵子の目から黒い光が迸り沙織を襲う。対する沙織の両手の印から円状に赤い霧状のオーラが展開し沙織を中心にし包みこむ。

黒い光に包まれ押された沙織は額に玉の汗を吹き出し、額には血管が浮き出るほど力を籠め、全開で思念防御結界である【不浄血怨嗟結界】を展開する。

【不浄血怨嗟結界】の中では放出したオーラは拒絶される。つまりこの結界を展開した沙織には生半可なオーラによる間接攻撃は無効となり、北辰一刀流の免許皆伝者で変則的な小太刀二刀流も使う近接戦闘特化の沙織と、近距離戦で対決しなくてはならなくなる技能である。

刀が吸った血の量に比例して性能を増す【不浄血怨嗟結界】で魔眼の能力を跳ね退けるべく、今日までたっぷりと血を吸った刀を二本とも使い、攻撃に回していたオーラもすべて【不浄血怨嗟結界】にオーラを注ぎ防御に徹する。

治療係としてだけではなく、思念を放出する技能を数多く持つ魔眼の対抗術の使い手として沙織は今回の作戦に抜擢されていたのである。

しかし、沙織は徐々に佐恵子から発せられる黒い光に押され始める。

「う!うぉおお!!う、嘘だろぉ・・!どんだけだよ!・・・お、押され!?・・・・っきゃあああ!!」

沙織はつい悲鳴を上げてしまい、オーラを展開している印を解き両手を顔の前で交差させ、少しでも黒い光を浴びないように目を閉じる。

「う・・うっ!!・・けほっ」

悲鳴を漏らした者の足元にぱたぱたと音を立て血がしたたり落ちる。

膝を着いたのは沙織ではなく佐恵子のほうであった。

「佐恵子!!きゃっ!!うぐっ!きゃあ!」

真理が慌てて佐恵子に駆け寄ろうとするが、佐恵子を攻撃した刃に阻まれ脇腹と内腿に峰打ちを浴び、刀の腹で頬を打たれ、悲鳴を上げさせられ床に倒され転がる。

「魔眼は強烈ですが技の発動中はやはり周りが見えていないようですね。こないだ私があなたの大技を躱したとき、最後まで私が見えてなかったようなのでもしかしたらと思っていたのです。・・こんな稚拙な攻撃を避けられないとは・・予想通りでしたね。」

奈津紀は振り抜いた和泉守兼定に付着した血を持っていた紙で拭うと、刀身を鞘に納めながら自身の考察を述べた。

奈津紀は少しでも出血を抑えようと首筋を抑え跪いた宮川佐恵子にゆっくりと近づいていく。

「ひゅー・・・!ひゅー・・・!・・・ごぼっ!!ごほっ!!・・っっ!ひゅー・ごふ!!」

喉を切裂かれ自身の出血で軌道に血が入り苦しそうな表情の佐恵子は、体温と意識が急激に失われつつあることを感じながらも、近づいて見下ろす千原奈津紀を睨み上げた。

「お疲れ様、沙織。魔眼の技をそこまで防いでくれたら十分よ。この事実は大きな収穫です。視界に入るだけで危険・・と言われる魔眼を数秒も防ぎました。やはり魔眼の能力は完全な戦闘用とは言い難いですね」

血の気が無くなり苦しそうな佐恵子を見下しながらも同僚の沙織を労う言葉を掛ける。

「くっそ・・!二刀とも使って防御に集中したら防げると思ったのに・・」

汗びっしょりになり肩で息をしている沙織が奈津紀に近づきながらも悔しそうに唸った。

「いえ、十分です。あんなの喰らったら私もどうなるか、と思えるほどのものです。それより、できれば生かして連れて帰りたいので・・さあ、神田川真理・・・仕事を差し上げましょう。・・・宮川佐恵子を治療しなさい」

「あ、あなたたちという人は!!」

峰打ちで強打された脇腹を抑えながら立ち上がろうとしながら、そう言うと奈津紀と沙織を睨む。

「問答をしている時間など無いように思いますけど?」

「きゃはは!早くしないと死んじゃうよ~?私も【治療】できるけどあなたのが見たいなぁ~♪できるって聞いてるよ?・・そういう機会ってあんまりないじゃない?」

見下ろしながら冷ややかな口調で促す奈津紀、そして奈津紀とは対照的な態度の沙織は楽しそうに言う。

「くっ!」

悔しそうな声を一瞬発すると、選択の余地などない真理は佐恵子に駆け寄り、能力を全開で発動させる。

「佐恵子・佐恵子!・・・しっかりして!!」

自身のオーラを使い全力で佐恵子の傷口に治療を施す。

(傷が深い・・・!すごい失血量・・・致命傷だわ!ほっとけば死んじゃう!)

真理は背後に立つ千原奈津紀の容赦のない一振りが自分にも振り下ろされないか寒気を感じつつも治療に専念する。

「ま・り・・ヒュー・・もう・・いきなさい・・ヒュー・・・こんな状況じゃ・・どのみち・・ぜんいん・・・ヒュー・・助からない・・わ・・まり・いままで・ありがとう」

力の弱い呼吸をしながら、佐恵子は真理の膝の上で頭を乗せたまま言う。

「何を言ってるの?!・・もう少しです佐恵子!・・命に別状がないところまであと少し・・頑張って!」

真理の治療をしている手を掴み、諭すような目で真理を見つめると、奈津紀に目をやり佐恵子は続ける。

「・・・・、千原・・奈津紀・・私を殺しなさい。目的はわたし・・でしょう?・・・その・・かわり・・ほかのみんなには・・手出し無用・・・これで飲んで・・・この条件で・・飲んで・・・くださる?」

佐恵子の自身の命を懸けた提案を聞き、考えている素振りの奈津紀に隣でいる沙織が全く別のことを奈津紀に問いかける。

「ねえねえ、なっちゃんさん・・・、もう二人いたけどベランダから飛び降りちゃったんだけど?」

「・・・心配ありません。張慈円様も何もしないのでは退屈でしょうから、あえて追いませんでした。それに、菊沢美佳帆を捉えるのは彼の仕事のはずです。我らは魔眼を抑えるのが優先事項ですのでね」

奈津紀の答えに「なるほどーそうだよねー」と沙織は納得の声をあげる。

「き・・聞いていますの・・?千原奈津紀・・!」

治療はされても流れ出た血のせいで顔色の悪い佐恵子が、少し苛ついた声を上げた。

「まだまだ元気じゃん!」

沙織はそう言うと佐恵子の肩口に愛刀の京極政宗を突き刺し肺に達っするのが確認すると柄を垂直に回転させた。

「ぎゃあああああああ!!!」

佐恵子は体験したことのない痛みに身をかわすこともできず、大声で悲鳴を上げた。

「な!!なんてことをするのよーーー!!?」

あまりのことに血相をかえ振り返り真理が抗議すると、振り向いた真理の顔面目掛け、京極政宗を収めていた鞘の底で強打した。

ガッ!!

「ぶっ!!!」

打たれた鼻を両手で押さえ、立ち上がりかけていた真理は激しく尻もちをつく。

「こっちも穴あけちゃえ♪」

沙織は気安くそう言うと、もう一つの愛刀九字兼定で真理の左鎖骨の下を突き刺す。

「ぐふ!!・・・うううくぅ!!」

真理は鼻血にまみれた顔を苦痛でゆがめ、刺突された傷を抑え悔しそうにして一瞬だけ沙織を睨むが、すぐに佐恵子に向き直り治療を全力で再開する。

「さ・・さえこ・・死んだら・・だめよ・・・いま治すから」

真理自身も致命傷を負わされ真っ青な顔でそう言うと奈津紀と沙織に背を向け、佐恵子の前に跪いて【治療】を佐恵子に集中する。

いまの不意打ちも【危険予知】を展開していれば防げたのかもしれないが、そんなことに最早メモリを割いている余裕は全くない。

二人のオーラを全部使い切っても佐恵子を治しきれるかどうか際どいところであった。

「・・見事です。自身ではなく迷わず魔眼佐恵子に【治療】を絞るとは・・。神田川真理・・覚えておきましょう」

普段ポーカーフェイスの千原奈津紀が感嘆の表情で真理の背中に声をかける。

「あんた・・・今私のことすごい嫌な目でみたでしょ?・・ねえ?!」

背後で苛立ちを孕んだ沙織の怒声に反応する余裕もなく真理は佐恵子に刺さった刀を徐々に引き抜きながら佐恵子の【治療】のみに集中する。

座り込んだ佐恵子と真理の足元には二人の流した血が溜まり、傷の深さを物語る。

「沙織・・これ以上は神田川の治療が追いつかず二人とも死んでしまいます。魔眼は殺さずに連れ帰りましょう」

「・・・わかったわ。魔眼は殺さずに連れ帰る・・・ね」

沙織は言い終わるが早いか二つの愛刀を交差させ背後から真理の首筋目掛け横に一閃させた。

【第8章29話 魔眼不発!非道髙峰の南川沙織 終わり】30話へ続く
コメント
No title
。・゜・(/Д`)・゜・。うわぁぁぁぁん
真理しゃーーん!!
佐恵子が死んじゃうよ~
誰か助けてー
駄目だ悔しくて泣きそうです。。。
加奈子ちゃん、早く戻ってきてー
2018/09/03(月) 02:22 | URL | カリスマ店員 #-[ 編集]
カリスマ店員様
いつも熱いコメントありがとうございます^^
カリスマ店員様が一生懸命お読み頂いているのがすごく伝わってきます^^
今後ともよろしくお願い致しますね。
2018/09/05(水) 00:46 | URL | 千景 #-[ 編集]
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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