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第9章 歪と失脚からの脱出 2話 香澄と佐恵子とモブ

第9章 歪と失脚からの脱出 2話 香澄と佐恵子とモブ

美佳帆達一行は、大通りに面して建っている9階建ての雑居ビルの前まで来ていた。

オフィスのドアの開け方が乱暴になってしまうが、今はそこに気を使うゆとりはなかった。

美佳帆が勢いよく両開のガラス扉を開けると、オフィスの奥の方にいる半目三白眼の女性がやや意外そうな顔をして声を上げた。

「あら美佳帆さま?予定より随分とお早いですわね。・・それに今日は大勢で・・」

訪問する時間が早いことよりも、美佳帆たちの人数や顔付きのほうに驚いている様子の宮川佐恵子が、椅子に座り脚を組んで座ったまま訪問者たちを確認するように見てくる。

美佳帆はスノウが佐恵子のことを少し意識しているかもしれないと、心配してスノウに目をやるが、スノウは見事なポーカーフェイスでそれらしい素振りは全くなかったし、佐恵子のほうもスノウの姿を認めたが特別な反応もなかったので、内心でホッと胸をなでおろした。

それにしても、佐恵子が視界に入ってくる人を見てしまうのは癖なのだろうが、今はもう以前のような見透かす力は使ってきていないはずだ。

今も私やスノウ、杉君や粉川君のこともじっくり見ている

美佳帆以外の一同は、佐恵子に頭を下げ、佐恵子もそれに応えて薄く笑みを浮かべ頷いている。

しかし、美佳帆は、従業員が忙しそうに働いているデスクを横切り、佐恵子の座っているデスクまで歩いていき、デスクに両手をつき訪問時刻が早まった理由を端的に伝える。

「宮川さん!麗華が見つかったかもしれないの!」

細い目を、佐恵子にしては一瞬驚いたように見開き、そしてすぐに聞き返してくる。

「なにかお手伝いできることはございまして?・・目的地に向かいながらお聞きしましょうか?」

「うん。お願い」

佐恵子が以前の力を大部分失ってから、みんなで、交代で護衛と様子見を兼ねて訪問するようにしているのだ。

今日は元菊一事務所のメンバーも他の仕事で忙しく此方に来れないため、美佳帆が佐恵子の仕事に随行しながら、美佳帆の予定していた調査個所を回る予定になっていたのだが、その約束の時間よりも1時間も早く到着している。

予定より早い訪問者である私たちに合わせる為、佐恵子はオフィスにいる部下たちに矢継ぎ早に指示を出し、スマホでどこかに連絡したりしている。

その様子を見ながら美佳帆は、宏や哲司から聞いた内容を思い出していた。

佐恵子は宮コー社内での影響力はもちろん、実質的なオーラ量も格段に落ちているらしい。

現在の宮川コーポレーション関西支社は緋村紅音政権で、宮川さんが重用していた人材もすべて緋村支社長の部下とされ、宮川さんは本当に周囲を剥がされてしまった状態だ。

側近の真理さんや加奈子さんまで政敵ともいえるライバルに奪われた心境はいかばかりだろう。

それに加えオーラ量が格段に落ちてしまったらしいというのは、哲司の見解で、普段誰よりも佐恵子と過ごす時間が長い彼が言うので間違いはないのだろうが、詳しいことは哲司も言ってくれない。

しかし、佐恵子の力が弱まったのはおそらく稲垣加奈子さんの手術の後からだと美佳帆はあたりを付けている。

あのとき、宏の話ではベッドに寝かされている加奈子を前にして、取り乱している佐恵子に栗田教授が何事か耳打ちしたらしいのだ。

その後、彼女は大人しくなり、栗田教授と一緒に手術室に残って、継続して治療を手伝うと申し出た真理さえも手術室から退出させたのらしい。

栗田と佐恵子だけが手術室に残り、6時間ほどの手術は見事成功し、加奈子は一命を取り留めた。

佐恵子も手術後は頭と顔を覆うように包帯を巻かれていたが、栗田教授は輸血を協力してもらったと言っていたのみである。

たしかに加奈子は特殊な血液型であったようなのだが、輸血をするにも包帯の個所が皆気になっていた。

しかし、栗田教授の説明はそれ以上なく、佐恵子自身もそのとおりだというので、誰もそれ以上は聞けなかったのだ。

意識を取り戻した加奈子は、持ち前の強靭な精神力と回復力であっという間に完治し、今は本人が言うには、以前より元気なぐらいとのことである。

その加奈子は、昨日仕事が終わってから宮川アシストに着て佐恵子の護衛をしていたはずだ。

加奈子がプライベートな時間をつかい護衛している佐恵子は、先月本社から辞令を受け、この宮川アシストという宮川コーポレーションの下請け会社の社長に就任させられていた。

宮川アシストは、宮川コーポレーション関西支社の傘下で、本体で赤字部分を抱えていた不動産事業部をまるまる押し付けられたような会社である。

なんだか以前よりかなり雰囲気が丸くなった気がするなぁ・・。哲司とお付き合いしだしたからかしら?と佐恵子のことを眺めていたが、周囲にテキパキと指示を下し、出かける身支度をしている佐恵子のすぐ近くのデスクで座る若い男の子が目に入った。

たしかこの子が日中は佐恵子さんの護衛よね・・。なるほど・・いい体格はしてるわね・・。と美佳帆は思いながら彼をより観察しようとしだしたとき、佐恵子が彼に声を掛けた。

「モブ。あなたも行くのよ。ぼーっとしてないで準備して?」

「えー!?さっきはこのデータに入力して、それが終わったら出かけるからって言ってたじゃねーっすか!」

忙しそうに動きながら言う佐恵子のセリフに、まだまだスーツに着られている感じが否めない、大柄な若い男の子が悪態をついた。

美佳帆は佐恵子がモブと言って思い出した。

たしか茂部天牙という元不良だ。

哲司からは聞いているが、元不良と聞いていなくても、彼にはいわゆるそう言う雰囲気があり、美佳帆から見てもよくわかる。

成人して今は真面目に生きてますけど、昔やんちゃしてた・・という雰囲気が出てる人とたまに会う時があるが、彼はそのフレッシュバージョンだ。

鋭い目つきに、無意識に周囲を警戒して存在感を放っている。とは言っても美佳帆から見るとかわいいものではあるが、おそらく一般人の不良のなかでは大きな顔ができるレベルなのであろう。

佐恵子さんを護衛って・・彼より護衛対象の佐恵子さんのほうが断然強いんじゃないの・・?でも、哲司がモブって子も使いようによってはとんでもなく使えると言ってたっけ・・?

などと思いもしたが、彼の態度や言葉遣いがおおよそ宮川コーポレーションに相応しくないのは確かだ。

・・美佳帆は今の佐恵子の状況では贅沢は言えないのだろうと解釈することにすると、佐恵子がモブに諭すように話し出した。

「・・忘れたのですか?あなたの一番の仕事は私の警護ですの。さあ、早く支度してちょうだい」

「へいへい・・人使いの荒いこって・・」

以前の宮コー関西支社ではありえない宮川さんと部下とのやり取りに少し驚きながらも笑顔で聞き流し、美佳帆はさっきから声を掛けるタイミングをはかっていた佐恵子の席の前にいる女性に声を掛ける。

「香澄さんお久しぶり、お仕事は慣れてきました?」

美佳帆は茂部と佐恵子の間のデスクで、忙しそうに作業をしている女性に声を掛けた。

平安住宅にいた岩堀香澄である。

香澄は声に反応し顔を上げ、スマホで会話している相手と話をしながら、美佳帆に向かって笑顔でお辞儀した。

「あ、ごめん通話中だったのね」

美佳帆はそう謝りながら片目をつぶって手を合わせる。美佳帆も最近知ったのだが、岩堀香澄は、以前から神田川真理から宮コーの不動産部に来るようにと、熱烈なラブコールを何度も受けていたらしい。

美人なだけでなく、あの抜け目ない真理さんがすでに目を付けてオファーを出し続けてたなんて、香澄さんて仕事でもすごかったのね・・。と改めて感心してしまう。

真理は本来、宮川コーポレーションの不動産部に香澄を部長職として据えるつもりでオファーを出していたらしいのだが、宮コーの不動産部は子会社である宮川アシストに、不動産事業を丸ごと外注するようになっており、すでに宮コー本体の不動産部に実働作業はないため、宮川アシストに就職する運びになったのだ。

「ええ、しばらくぶりですね美佳帆さん。仕事は以前の職場でしていたことと変わりありませんから全く問題ありませんよ」

通話を終わらせた香澄が、美佳帆に笑顔で答える。

岩堀香澄が転職を決心したきっかけがご主人との別居で、今は子供と二人暮らしであるし、収入アップと職場が近いということ、それに、以前の職場では悲しすぎることを思い出しやすいからだということを、美佳帆は香澄から聞いた内容を思い出していた。

「そうよね。なんだか香澄さんもう何年もここで働いてるって雰囲気に見えますよ」

「あはは、そんなことないですって。平安の時とは顧客層が違いますからね。お会いしてないオーナーさん達も多いし、まだまだですよ」

そう言って謙遜する香澄の表情に初めて会った時の暗さが感じられず、美佳帆は安心したところで、佐恵子が香澄に話しかけてきた。

「じゃあ香澄あとはお願い致しますわ。カジノ外周を囲むようにあるテナントは留意事項も多いけど完成までに全店舗埋めるのよ。顧客の要望を早く聞き出しておかないと、工事のほうも進まないわ。・・・香澄・・。午後からの大口のクライアント・・期待していいのですのよね?」

「ええ、任せてください」

佐恵子の少し心配そうな問いかけに対し、意味深にニコリと笑った香澄の表情には自信が漲っていた。

真理曰く、香澄自身も自分自身で自覚はしてなかったが能力を仕事中に多用している人物だということだ。

実は自分でも気づかずに力を使っている人間は、オーラの多寡を言わなければ結構多く、経営者や組織やチームのリーダーなどにはままみられることなのだそうだ。

カリスマ経営者や宗教家は【呪言】など、アスリートやプロスポーツ選手は【限界突破】など、アーティストやミュージシャンは【脳振】など能力様々だが、微量にその力を使っている。

香澄も仕事を遂行する上で、身につけている力があったということ。

真理が言うには【事象拒絶】と宮コーでは名付けられている能力で、主に交渉や話合いで使われる力なのだそうだ。

以前は無意識に使っていた能力を、認知して使うと大抵の場合効果が増すと言われている。

稀に効果が減退する場合もあるようだが、香澄の場合は前者だったと聞いている。

あれこれと思いだしているうちに、佐恵子たちの準備が整ったようだ。

「おまたせしましたわ」

初秋で風が少し涼しくなってきてはいるが、まだまだ日差しが強いため美佳帆は暑くさえ感じるときがある時期である。しかし寒がりの佐恵子は薄めのコートを羽織った姿でそう言った。

「社長、お気をつけて。それと午後の結果報告は本日中に提出しておきますので、お帰りになられたらご確認お願いしますね」

そう言う香澄の手には今日午後から会うクライアント宛ての契約書がすでに作成されてクリアファイルにおさめられており、終わり次第すぐに提出できるという状態であった。

「わかったわ。それにしても香澄・・随分な自信ですわね。でもそういうの嫌いじゃないわ・・。香澄・・期待してますわよ」

「・・・社長。岩堀とお呼びください。普段から癖付けておかないと、いざという時にファーストネームで呼んでしまいかねませんよ?」

直属の上司である佐恵子の賛辞のセリフに対して、香澄はメガネをキラりと光らせて、手厳しい一言をお返しする。

「そうね。わかりましたわ。岩堀部長・・。まったく・・真理より口うるさいんだから・・」

軽くため息をつき肩をすくめてそう言う佐恵子の仕草を見て、美佳帆にはどことなく嬉しくなってしまった。そのやり取りに二人の信頼があるように見えたからだ。

(香澄さんも別居を悩んでた時期のときの表情とは違って生き生きしてるようだし、佐恵子さんも色々あったけど随分落ち着いた様子ね・・)

美佳帆がしみじみそう思っていると、ようやく準備の出来たモブが話の終わりを見計らって香澄に声を掛ける。

「香澄さん、行ってくるっす」

「・・茂部くん。何度も言わせない!「行ってまいります」よ?」

「あ・・すんません・・。行ってまいります」

香澄は上司である佐恵子にでも意見するのだ、部下の不出来には厳しいようだ。

香澄は目を吊り上げてモブにそう言うと、よほど香澄には頭が上がらないのだろう、モブは大きな体を縮めて香澄に言い直した。

どうやらこの大柄な男の子は、佐恵子より香澄のほうに気を使っているようね・・と美佳帆は観察しながらも笑みが出そうになるのを堪える。

「じゃ、美佳帆さま。行きましょう」

香澄とモブのやり取りはいつものことのようで、佐恵子は気にした様子もなく美佳帆にそう促し、オフィスの玄関に向かって歩き出した。


一行はオフィス街を歩きながら、要点を伝え麗華目撃と周辺情報を端的に佐恵子に話す。

「・・そういう事ですのなら、わたくしの予定はすぐ終わりますので、早速その会社に向かいましょう。・・今日は加奈子もいないのですが、面倒なことにはならなさそうですしね」

歩きながら美佳帆の話を真剣に聞いていた佐恵子は、美佳帆が話し終わるや否やすぐにそう言った。

美佳帆も、佐恵子が、麗華が行方不明になったのには責任を感じているのは解っていた。

佐恵子が支社長を退任してからも、個人的に出費し、警備部門の八尾部長にお願いして手伝ってもらったり、加奈子や真理、門谷さんにも依頼して捜索してもらってたのは美佳帆もよく知っていた。

途中で緋村紅音からの妨害があり、宮コー社員を使うことができなくなってしまったが、それでも佐恵子の行動は美佳帆にとってはその気持ちが嬉しかったし、逆に緋村紅音は、妨害はしてきたが、直接警備部門に紅音が命令を下し、麗華の捜索に宮コーの組織をいくつか使って協力をしてくれてはいる。

しかし、何となく紅音のそういったやり方に、美佳帆は意図を感じてしまうのだ。

「大丈夫っすよ社長。なんかあっても俺がいるじゃねーっすか。ここ3か月ずっとあの鬼軍曹達に死ぬほどしごかれてるっすからね。そのあたりのチンピラなんて瞬殺っすよ」

佐恵子の言葉に、彼女のボディガードとして着いてきているモブが自信たっぷりに佐恵子に言っている様子を見て美佳帆は思わず聞いてしまう。

「鬼軍曹・・達って誰なの?」

「・・・鬼つったらあいつらしかいねーっすよ。Dカップの菩薩モドキの鬼と、Eカップのアグレッシブな暴力鬼っすよ」

「な、なによそれ?」

少しだけ言いにくそうだったのは最初だけで、途中からはっきりとした口調で訳の分からないことを言うモブに、美佳帆は面食らって聞き返す。

「・・モブは加奈子と真理のこと言ってるのですわ。加奈子がモブを鍛えてくれたおかげで、わたくしも少しは安心できるようになりましたし、この子ったら最初はまともに計算もできなかったのですよ。・・ねえモブ?・・でも、真理が手取り足取り教えてくれたのですわ。鬼なんて言ったらいけませんよ。・・少しはまともな人間になれたのですから、泣いて彼女たちに感謝すべきですわ」

美佳帆の問いかけに、モブの代わりに佐恵子が答えた。

「・・・たしかに毎日泣かされてるっすね・・」

「へぇーー・・彼女たちにね。・・それってある意味けっこうラッキーなことなんじゃないの?」

側近を引き剥がされ丸裸になった佐恵子に、その元側近たちがこのモブという元不良少年を毎日鍛え上げて、佐恵子の親衛隊に成長させようとしているのだと分かった美佳帆は、素直に感嘆してそう言ったその直後だった。

「・・・言葉遣い」

「え?」

ボソリとスノウが言ったセリフに一同の視線がスノウに集まる。

「次は言葉遣い・・・ですね」

「ふふ・・スノウさん。これでも随分マシになったのですわ」

スノウのセリフに佐恵子が微笑んで応えた。

(あら・・。大丈夫そうね・・)と美佳帆は思ってスノウのほうを見ると、スノウも一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になり佐恵子に軽く目礼して、「そうですか。それならいいですね」と小さな声で言った。

「皆さんここです。ここで麗華さんと思われる方が働いています」

一行の先頭を歩く杉と粉川が振り返り、一同に杉が声を掛ける。

「さて、・・現役警官のパワーをちょっとだけ拝借させてもらいましょうか」

美佳帆は杉と粉川に笑顔でウインクしながらそう言うと、二人はニコリと笑って頷いた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 2話 香澄と佐恵子とモブ終わり】3話へ続く
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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