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第9章 歪と失脚からの脱出 3話 モブとハサミは使いよう

第9章 歪と失脚からの脱出 3話  モブとハサミは使いよう


・・・やっぱり。と確信を持ったのは、先ほどから一定距離でついてきていた足音の持ち主たちの会話が聞こえてきてからだ。

念のために展開しておいた【百聞】の半径に入っている一団、若い男達の声が頭の中に響く。

距離にして52m・・。足音は・・8コ・・・。速度があがったわね・・。徐々に距離を詰めてきてる。

「杉君、粉川君ちょっと待って・・。このまままっすぐ進んで次の角を路地に入って」

美佳帆は右手を上げて耳を指さすような仕草をして前を歩く二人に声を掛ける。

杉と粉川は美佳帆の能力のことを先日聞かされている為、無言で振り返り表情は変えずに、美佳帆に目だけで了解の意を伝えると何事もなかったかのように進み始めた。

美佳帆は流石現役刑事ね、と感心し二人の瞬時の判断に目で感謝を送りつつ、より【百聞】の精度を上げる。

「え?どうかしたんすか?ここじゃないんすか?」

しかし、そんなことは知らないし、機微の働かない無神経なモブは、立ち止まらずに進むよう指示した美佳帆に、のんびりとした口調で声を掛ける。

「・・・モブ。静かになさい」

美佳帆の能力を知る佐恵子も聴力強化したのであろう、振り返らず周囲を警戒しながらモブを窘める。

「え?な、なんなんすか?」

佐恵子の咎めるような鋭いセリフに困惑したモブは、状況を掴めず、今度は佐恵子に向かって話しかける。

すると佐恵子は、はぁ・・と短くため息をつくと、突如モブの腕を掴み、女が男にじゃれつくような仕草に見せかけ、笑顔でモブの胸に顔を押し付け小声で窘める。

「美佳帆さまが能力で索敵中ですわ。だから静かになさい。相手はこっちを見てるはずですから、あなたは自然にしてなさい。いい?よろしくて?」

「い、いろいろ、マジっすか・・」

ここ数か月、鬼たちにしごきまくられたせいで、さらに厚くなった胸板に、頬をくっつけた女上司の笑顔が演技だと解ってても、憧れの女上司の間近に迫った顔に見入ってしまう。

あの鬼達にこんなところを見られでもしたら・・・しかし、これは不可抗力だ。仕方がない。

佐恵子の小さな胸がモブの腕に当たっているのもしょうがないことだ・・。この女上司の態度は大きいが胸はかなり控えめだ。しかし、小さいとは言っても柔らかい・・。柔らかいは正義だ。

もしモブにハーブの知識があれば、微かに鼻孔を擽る香りがローズマリーだと分かったのだが、ハーブのことなどモブには興味がない。だが、良い匂いには違いがない。良い匂いも正義である。ローズマリーと佐恵子の匂いが混ざった甘酸っぱい香りをここぞとばかりに堪能する。

香りを吸い込むときに、女上司の鴉の羽のように黒く艶のある髪の毛を、鼻で吸引してしまわないよう、吸い込む力に気を付けなくてはならない。

髪の毛を鼻で吸い込むなどあってはならない。完全に嫌われてしまうどころか、流石にクビを言い渡されてしまう。

出来る限り嫌悪感を持たれぬ程度に、全力で鼻孔を擽る香りを吸い込み、腕に当たる感触を脳に記憶することに集中し実行する。

しかしそれもつかの間で、憧れの女上司の身体はすぐに離れて行ってしまった。

残念だが引き戻すわけにもいかず言われた通り、自然に振舞おうと襟を正す。

背筋を伸ばし挙動不審な動きと、真っ赤で不自然な表情になったモブをみて、佐恵子は再度ため息をついたが、これ以上注意するのは諦めたようだ。

佐恵子とモブの漫才を苦笑いで眺めていた美佳帆は、尾行してくる集団が今の漫才で不信感を抱いてないことを確認すると、尾行集団の会話に眉を顰め、表情を再度引き引き締めた。

「・・ずっと気になってた足音だけど・・。言いたい放題言ってくれちゃってるわね・・。みんな怒るかもしれないけど、聞いてもらった方が、説明が省けるわね。みんな我慢して聞いてね。・・スノウ、みんなに飛ばしてくれる?」

美佳帆はスノウの肩に手を置きそう言うと、「はい」とスノウが小さな声で短く答え、目を閉じ美佳帆に波長を合わせ集中しだした。

スノウの周囲にオーラが凝縮し、佐恵子とモブ、杉と粉川にそれぞれの波長に合わせたオーラのラインが繋がる。

その瞬間から美佳帆の【百聞】で探知している問題の集団の話し声をノイズカットされた状態で、一同の頭に直接飛び込んできた。

『依頼にない男が3人と・・・惚気てたガリの貧乳女が混ざってっけど・・どうする?』

『殺したり救急車呼ばれるのはダメだ。面倒は起こすなって言われてる』

『適当に脅したら男どもは、ビビッて女置いて逃げるんじゃね?』

『だな。服装はリーマンっぽいし楽勝だろ・・。てかなんであの二人のおっさんはハゲなの?・・つるつるじゃん。僧かなんかか?』

『知らねーよ。男なんてどうでもいいっつうの。それよりあの華奢なねーちゃんは俺がもらうから・・。お前らはメガネの年増な。ついでにぺちゃも譲るわ』

『んだよ!おめーが決めてんじゃねえよ。俺もあのねーちゃんのほうが好みだわ。年増と、ついでのぺちゃと代われ!』

『俺は年増でいい。メガネもそそるしな・・。それにあいつらそんなに年齢かわんねーように見えるけど?・・年増女を誰の種か分かんねえように、輪姦して孕ませるのは最高の娯楽だよな』

「あほか!孕ましたら売れにくいだろ」

「ああ?!あほはお前だ!孕んでるのがわかるまえに売るんだよ!そんなこと言うなら、お前はゴム付けてやれよ?!」

「いい加減にしろって!始まる前から内輪もめしてどうする。どうせいつも攫った女は、最低一巡はするだろうが。仲間も呼んで3回ぐらいずつぐらい味見してから薬漬けにして、マチ金で借金させてから売っちまおうぜ。孕んでたら堕胎するぶん差し引かれるだけじゃん。どうってことねえよ』

『ん~・・まだぺちゃが一番若そうにみえるな、・・胸はないけどツラやスタイルは俺的にはかなりアリだ・・やっぱ逃がさずぺちゃも攫わね?女は多いほうが金になるじゃん』

『まあ、たしかに女は多いほうがいいな。じゃあぺちゃも確保で。・・しっかしあのメガネ年増のケツたまんねーな・・。絶対男に見られてるの意識してるんだぜ・・。さあ、とっとと攫っちまって楽しもうぜ』

『あの華奢な女の澄ましたツラ・・泣き顔になった時を想像すると今からたまんねえよ』

『つぎの路地にでも都合よく入ってくれねえかな・・』

『だな・・。あっちはビルの裏口ばっかでこの時間はほとんど人の出入りがねえ・・。5分もありゃ終わる』

『決まりだな。・・もし路地に行ったら挟み撃ちにするぞ。車回しとけよ。・・5分ぐらいならだれも通らんでしょ』

聞いたことのない声色で頭の中に直接話し声が飛び込んでくる事態に、佐恵子とモブは最初、きょとんとした表情になっていたが、話の内容が飲み込めはじめると、明らかに表情が変わった。

「社長を輪姦すだと・・・!?どこの馬の骨かしらねーが、身の程知らずにもほどがあるぜ!・・俺が何十回挑戦しても全く無理だっつうのに・・。おまえらみたいなチンピラじゃ触れることも出来ねえぞ・・!」

前を向いて歩きながらもモブが拳を握り、額に血管を浮き出させ目をぎらつかせて呟く。

「・・・あなた・・いつもそういうつもりで私と組手してたの?」

心底呆れたと言った表情で佐恵子が呟くと、「あ、い、いや・・そんな訳ねえっすよ・・。誤解っすよ誤解・・。そんな恐れ多い・・そんなこと思ってるわけないじゃないっすか・・ほんとに・・ははは」と顔を汗だらけにして言うモブに佐恵子が「・・そう?そう言う意味じゃなかったのね。それならいいわ。私が勘違いしてしまったようね。謝るわ」と真顔で答えている。

そんなわけないでしょ・・・!鈍すぎる・・!と内心ずっこけた美佳帆は、冷静に頭を働かせる。

・・やっぱり宮川さんはパッシブスキルだった【感情感知】を本当に展開できてないのね

明らかにモブ君は宮川さんを性的な目で見てる節があるのに、モブくんの感情はまるで見えてない様子・・。能力に頼ってたぶん、そのあたりの感情のセンシティブが働かなくて、経験がなさ過ぎて鈍いんだわ。

以前のように刺すような鋭さの雰囲気がないのはこのせいね・・。これじゃ、人を見透かすどころか・・、いまじゃ単なるド天然のお嬢様になってるのかもしれないわね・・。

宏や哲司も、宮川さんには宮コーに返り咲いてもらいたいと思って動いてるみたいだけど・・、魔眼の力が弱まってるとすると、宮川さんはそれを望んでいるのかしら・・?

美佳帆は冷静に、佐恵子がどこまでの能力が使えなくなってるのか、今後の佐恵子の方針などを一度詳しく聞いておく必要があるな・・と思考を巡らせていると、その佐恵子が振り返らずにこちらに向けて口を開いた。

「それにしても・・【感情感知】で嫌でも見えてしまってた感情色にも毎日ウンザリさせられてましたけど、ああいう会話が聞こえてしまうのもかなりイラッときますわね。・・・それより【百聞】と【通信】・・?でしたわね。こういう使い方便利ですわ。もしかしたら私の【千里眼】なんかもスノウさんの能力で飛ばせるのかしら?」

佐恵子が狼狽えるモブの相手を切り上げ、振り返らずに後ろを歩くスノウに問いかけると、スノウはコクリと頷き「たぶん」とだけ答える。

佐恵子がそのまま振り返らずに「今度試させて?」と言うと、スノウも「わかりました」と笑顔で答えている。

・・と言うことは、使える能力もあるのね・・。まったく力を失ってるわけじゃなくて安心したけど・・と、美佳帆は少しだけ安堵する。

そうこう思考を巡らせているうちに、尾行集団は徐々にこちらに近づいてきており、30mほどの距離まで詰めてきている。

まだ、彼らが私たちの会話を聞き取れていない距離にいるのは、彼らの会話を聞いても明確だ。

美佳帆達は目的の場所を通り過ぎて、最初の路地に入り込み、しばらく進んで、もう一度角を曲がった。

しばらく曲がり角のない一本道の路地を、中ほどまで歩くと美佳帆は手を上げ一同に立ち止まるように合図する。

「きたわね・・」と美佳帆が言うと、向こう側の路地の角から、頭もガラの悪そうな若者が4人現れた。

年の頃はどう見ても20前後・・もしかしたらもっと若いかもしれない。

そりゃこの子たちから見たら私なんて年増でしょうね・・と美佳帆は少しだけ自虐的に笑う。

振り返ると美佳帆達が通ってきた方向からも、同じような風体の若い男たちが現れ、下品な笑みを浮かべている。

後方の男たちもまだまだ若いというのに、こんなことに手を染めて・・と憤りを感じつつも美佳帆は正面の男たちに一歩詰め寄り話しかける。

「さてと・・・。聞きたいことが山ほどあるんだけど、大人しくお姉さんの言う事聞いてくれるかな~?」

予定通り現れた男たちに美佳帆がそう声を掛けると、男達の中には美佳帆のセリフに怪訝な表情を浮かべた者が1人だけいたが、残りは頭が悪いのと、圧倒的有利を確信しているのであろう、下卑た笑みを顔に張り付かせ、こちら側を品定めするように無遠慮な視線をこちらの顔や胸、腰回りや脚にと這いまわらせてきている。

「気持ち悪い・・。けがれる」

スノウがポツリとその無遠慮な視線に対して、嫌悪感を口にするのを聞いて、美佳帆は橋元の恐るべき【媚薬】能力を思い出し身震いした。

(あの子たちにそんな能力ないでしょうけど・・、見ただけで感度上げられる呪詛能力ってのは・・私たちに女にとったら時間のかかる詰みよね・・。女にとったら・・・ん~・・、もしかして、男にとっても何か効果ってあったのかもしれないわね・・・。・・水島もずっと異常だったし、もともとあんなにぶっ飛んでるんだったら、社会生活に支障が出るわ・・。大塚君のお父様も以前は随分様子が違ってたけど、最近また落ち着いてきたような気がするって大塚君も言ってたし・・何か影響ってあったのかもしれないわね)

数か月前まで、美佳帆の身体を蝕みまくった【媚薬】の威力について考え込んでしまいそうになり、頭を振って思考をリセットする。

いまは目の前のことに集中するべきだし、あまり考えていると、あの時の感度は、下腹部に一時的だが戻ってくるのだ・・。

でも、今のところそれは誰にも内緒にしている。

「おい!おっさんら!痛い目にあいたくなきゃ女置いて失せろや!」

美佳帆の考え事を断ち切るように、正面にいるニット帽をかぶった男が、路地に置いてあったプラスティック製のごみ箱を大きな音を立てて蹴飛ばすと、大声で男性陣に威嚇してきた。

「それとも彼女たちの前でいい恰好みせてみるか?」

「ひひひっ、こんな女、ハゲのおっさんたちにはもったいないぜ。お前らの代わりに可愛がってやるからよ。とっとと行けや」

ニット帽の周りにいる他の男たちもニタニタ笑いながら、両手で丸い物を掴むような仕草をして、そこを目掛け腰を前後に振るマネをしてみせ、勝手なことを口にしている。

「すごいセリフ・・。きっと物語の脇役・・。名前も与えられず、物語に出てきた瞬間退場する人たち・・」

あからさまな雑魚キャラっぽいセリフに対して、感想を述べたスノウの辛辣な言葉に杉は口元を抑え苦笑していたが、粉川のほうはその雑魚キャラのセリフに憤慨したようだ。

「おまえら・・!」

我慢の限界とばかりに粉川が声を荒げようとしたとき、もう一人の大柄な男は粉川より短気なのを示すかのように、すでに飛び出していた。

「おらぁっ!!社長には指一本触れさせねえぞ!」

モブである。まっすぐに突っ込んでいき、すでにニット帽の男の顔面に拳を炸裂させていた。

「ちょっ・・!モブ君!・・・やりすぎちゃだめよ?!杉君!粉川君!フォローしてあげて!」

「「はい!」」

後方から現れた4人もモブ目掛けて駆け出したため、一気に乱戦になる。

「てめえ!やりやがったな!」

「こっちは何人いると思ってんだ!」

美佳帆は乱戦を躱して、ビルの隅に寄ると、挟み撃ちした意味全くないじゃない・・と突っ込みを入れながら、か弱いふりをし、スノウと佐恵子の手を引き、路地の隅に連れて行き、3人で固まって様子を見ることにした。

顔面にモブの右ストレートをまともに受けたニット帽の男は吹っ飛んで、ゴミと埃だらけのアスファルトの路地の上に仰向けで倒れている。

「お前らどこの奴等だ!俺のこと知らねえのか!ああん?」

正面の4人のうちすでに3人を殴り倒したモブが気炎を上げる。

「・・モブ。静かに倒しなさい。人が来てしまうわ」

「了解っす!!」

と大声で答えたモブに「わかってないから言ってるのよ・・」と額を抑えながら佐恵子が呟く。

「へえええ・・、彼・・モブ君。粗削りだけど、そのあたりのチンピラが何人来ても勝てないぐらい強くない?」

「ふふ、随分マシになりましたの」

額を抑えた佐恵子に、美佳帆がモブの想像以上の体術レベルを正直に褒めると、佐恵子は顔を上げ嬉しそうに答えた。

「・・截拳道と・・詠春拳?・・顔や雰囲気に似合わない体術を使ってる。大きな動きが少ない繊細な拳法・・。上手い・・」

モブに対する評価を随分上方修正したっぽいスノウが、乱闘をほぼ一人で制しつつあるモブのことを眺めながら「言葉遣いが残念じゃなければ・・残念」と小声で言うのが聞こえ美佳帆は笑いながら「紳士たるにはそこも大事よね」とスノウに返し、美佳帆もモブの動きを観察する。

「へえ・・なるほど・・真理さんや加奈子さんがあの体術を使うのね。短期間でよくあそこまで上達しましたね。素質ありますよモブ君。・・・で、彼もやっぱり能力者なんです?」

「ええ、加奈子や真理はいろいろな武術が混ざってますけど、概ねそうですね。ですが、モブは加奈子と比べることなど・・、それにオーラの使い方も拙いですわ。・・まだまだ私の護衛を務めるには役者不足ですわね」

腕を組みモブの動きを採点するように眺めている佐恵子は、いつも通りの上から目線で彼を辛口評価しているが、答えているその表情と口調は、部下を褒められるのは満更でもなさそうで嬉しそうにしている。

「こ、こんなの聞いてねえぞ・・・おい!」

「痛ってえ!くそが!てめえ覚えてやがれよ」

粉川に背負い投げでアスファルトに叩きつけられた男が声を荒げが、ダメージが大きいのだろう立ち上がれず地面で悶絶している。

「おいおい、手加減してやってるんだぜ?受け身もとれねー奴なんか、本気で投げたら死んじまうからよ」

童顔で真面目そうな顔の割に物騒なセリフをいいながら粉川が不敵に笑う。

「おい!卓也熱くなりすぎるなよ」

熱くなりがちな同僚に、美佳帆達の前で敵が近づかないように構えている杉が一応注意を飛ばす。

まともに動けるものがいなくなってきたとき、最初にノックダウンしたニット帽のリーダー格らしい男がモブのことを睨んでいたが、突如驚きの表情になり声を上げた。

「て、天牙さん?!もしかして天牙さんっすか?」

ニット帽の男は殴られた顔を抑えながらよろよろとようやく起き上がり、暴れまわるモブを見てそう声を掛けた。

「あん?俺のことを知ってる奴がいたのか。こりゃ話がはええ」

胸倉をつかみ持ち上げていた男から手を離し、モブがニット帽の男に向き直る。

「そんなスーツ姿だったからわかりませんっした。申し訳ありませんでした!天牙さん!」

「マジか!あの最悪の27年世代で負け無しの天牙さんだなんて知らなかったんです!」

「すいません!許してください!マジ強いっす!俺らが敵う訳なかったっす!」

ニット帽の男のセリフに他の若者たちも、肩や顔を抑えながらめいめいに立ち上がり、モブの周りに集まり土下座して謝り出した。

「俺のこと知ってんだな?気づかなかったとはいえ俺に歯向かったんだ。覚悟できてんな?」

ジャケットについた埃を叩くような素振りをしてから、ネクタイを締めなおし身体を逸らした格好で、モブがボロボロになったチンピラたちに凄んで言う。

「・・・モブくんて・・、不良の中じゃすごい有名なのね」

「・・・モブに対してあんな態度を取らざるを得ないなんて・・・あの子たち、どうしようもないクズなのね」

モブたちの様子を、やや微妙な表情ながらも賞賛の言葉を口にした美佳帆は、隣で興味なさそうな顔で、辛辣なことをいう佐恵子を見て、美佳帆はモブと見比べる。

モブは明らかに佐恵子のほうにドヤ顔を向けてアピールしている。

(いまの宮川さんのセリフを聞いたら、モブくん傷つくと思うんだけど・・・。それに、彼は宮川さんには哲司っていう彼氏がいることは知らないのかしら・・・?モブ君にとったらイバラの道すぎるけど・・まあ、青春の一環よね・・)

美佳帆はやれやれと思いながらも、モブに近づき背中を軽く叩いてモブの健闘を労うと、土下座しているチンピラたちを笑顔で見回し、ベストの内側から鉄扇をスラリと貫き、パシンと掌で叩いてから声を掛けた。

「さてと・・。あなた達の話じゃ私とスノウが目当てだったみたいだけど、いったい誰に言われてノコノコやってきたのかしら?・・・年増だとか、デカいケツだとか、脚出し過ぎだとか、男の視線を意識してる自意識過剰だとか言ってたわねぇ?」


「・・・おめーら、俺に聞かれてる以上に真剣に答えろよ?おめーらが狙ってたこの姐さんは俺なんかよりずっと強えんだからな。いいか?聞かれたら答え始めるのは2秒以内だ。・・じゃなかったら俺がぶん殴る。あと嘘をついて俺に恥かかせんなよ?どうせ嘘はすぐバレちまうからな?」

両手で握った鉄扇が軋んでやや曲がり、ギリギリと音を出せている美佳帆は笑顔の後ろに黒い後光がでていた。さらに、その美佳帆の後ろでは腕を組み、土下座しているチンピラたちを見下ろしているモブが目を光らせ、美佳帆の質問に答えるよう威圧している。

完全に心を折られた若いチンピラたちは、お互いに顔を見合わせ、意を決したような表情になると経緯を洗いざらい話し出した。


【第9章 歪と失脚からの脱出 3話  モブとハサミは使いよう終わり】4話へ続く


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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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