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第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後

第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後

ダウンライトの灯りを絞り、暗めの灯りの中、岩堀香澄は自室のパソコンの前に座っていた。

白のカットソーにグレイのスエットというラフな格好である。

仕事でキーボードをたたいているとはいえ、部屋着で時間に追われることなくリラックスしてデスクに向き合うこの時間を、香澄は気に入っており大事にしていた。

こういう時間だと電話も鳴らず、子供も寝静まっているので、誰にも気兼ねなく作業に打ち込めるのだった。

そしてたったいま、明日の仕事の資料を作成し終わったところである。

右手の小指で軽快にエンターキーを叩くと、そのままグラスに持ち替え、冷えたハイボールで喉を潤した。

強めに作ったためウィスキー独特の香りが喉と鼻腔を擽り、よく冷えた微炭酸の液体が喉を刺激する。

ふぅと息をつきデスクにグラスを置いたところで、氷とグラスがカランと心地よい音を奏でた。

「ふふ、怖いくらい順調だわ。こんな地図が変わるほどの仕事の一翼を私が担うことになるなんて・・やりがい十分だし転職は大正解ね!」

そう言って笑みを浮かべた岩堀香澄は、ここ3か月間の社会人生活が、今までの仕事人生でもっとも充実していることを実感していた。

平安住宅で主任という職席を得るまでに8年ほどかかったが、平安住宅での香澄の業績を、最も評価していたのは平安住宅ではなく宮川コーポレーションだったのだ。

神田川真理という宮川コーポレーション関西支社の幹部が、半年ほど前に平安住宅に香澄を口説きに来た時は驚きつつも、丁寧にお断りしたのだった。

自分よりいくつか若そうな、聡明な黒髪ボブの女性を信用できないわけではなかったが、あまりにも急すぎるオファーであったし、何よりあんな大企業からいきなり驚くほど良すぎる条件を提示され疑ってしまった。

しかし、神田川の熱心な勧誘と香澄自身を取り巻く状況の変化もあり、本当に転職することになったのだ。

香澄自身も当時を振り返り、人の縁はわからないものだと回顧していた。

香澄は現在、子会社とはいえ、有名上場企業宮川コーポレーション傘下の宮川アシストの部長という職位を戴いている。

部長という立場を得たことで、責任も権限も増えたが、平安住宅の時の給与からはほぼ倍増し、住居も息子の学校や、職場にも近いこのマンションの一室を社宅として借り与えてもらっている。

「・・・いい機会だったと思うべきだわ。平安はたくさんお世話になったところだけど、忘れたいことも多いしね・・」


グラスの氷が少しずつ解けているのを眺めながら、脳裏によぎる水島喜八の狡猾な罠に嵌り、座敷の料亭でうけた屈辱・・。

下の口でフェラチオしろ・・と言われ、屈辱的なあの快感を、忘れたいと頭では思っているのに、焼印を押されたかのような疼きはいまだ消えず、時折香澄を悩ませていた。

・・そして、水島や橋元に利用され、巻き込まれてしまった温厚で素直な大原良助君・・。

まだ若く頼りなかった部下だと思っていたのに、彼の強い正義感と私に対する本気の気持ち、そして非業の死と・・・まるでずいぶん昔のことの様に思い出される。

しかし、この一連の非日常の出来事の過程の中で、信用していた主人の浮気も発覚し、自分自身も自主的に、そして如何ともしがたい事情で2度、主人以外の男性と性行為を持ってしまった事から、主人との離婚に踏み出しても経済的に十分子どもを1人育てていける待遇で誘われた事が転職を決意した大きな要因の1つにもなっていた。

何より、全てを忘れて新しい環境で、新しい人生をやりなおすには私自身が平安住宅に居ては、いつまでたっても【あの一連の出来事】を引きづってしまいそうな気がしていたので、本当に丁度良い転職になったのだ。

夜一人になって、ふと仕事や子供のことが頭から離れると、いつものように思い出してしまうのを振り払うように、もう一度氷で冷えたグラス内の液体を傾けて飲み干すと、思いをかき消すようにたんっ!とデスクに強めにグラスを置き立ち上がる。

「・・さあ、思い悩むなんてのはらしくないわ・・・。子供の寝顔をみたらもう休まなきゃ。今日の商談も大成功だったし、社長も契約書にもう目を通してくれてるはずだから、明日また新たな展開があるはずよね。明日に備えなきゃ・・。今が本当に大事な時期だもの!」

香澄は宮川アシストに入社した直後から、いきなり大プロジェクトの中核人物に抜擢された重圧をはねのけるように自らを鼓舞するように言い聞かせる。。

神田川真理の推薦のせいか、その神田川のことを信じて疑っている様子のない宮川社長が、初対面の香澄に対して、広範囲にわたる権限と、大きな予算、20人もの人員を部下としてほいっと任せてきたのだ。

もちろん会社も、社長の宮川も全面的にバックアップしてくれるが、ここまで信頼されると元来生真面目な香澄としては、責任感から俄然やる気が沸いてきてしまうのだった。

(それに・・神田川さんにされたアレ・・。あれ以来頭が冴えわたってるわ。もうどんな商談だって纏められる気がする)

少し強引に神田川に促された手短なレッスンと、その後に行われたヨガのようなものと神田川は言っていたが、その施術後からである。

いままで、普通だと思っていた感覚から開放され、実は今までの景色に靄がかかっていたのだと分かったのだ。

仕事も順調だし、息子も学校に馴染み成績も上々のようだ。

まだ2年生だというのに、3桁の割り算も解けるようになったと塾の先生も驚いていた。

しかし、仕事や我が子のことは順調でも、長年連れ添った伴侶とは転職前に離婚していた。

私自身の事が伝わっていないのは少し気がひけたが、理由は旦那の浮気が原因での離婚となり今は、今年7歳になる愛息子の誠とこのマンションで二人暮らしなのだ。

親友の由佳子以外は、誰にも知られていないが、香澄自身も大原良助と一夜の過ちを犯してしまったので、旦那である浩二の浮気で離婚を決意したのは事実であるが、良心の呵責もあり旦那の親族やその周囲に旦那の浮気とは言っておらず、慰謝料も息子の養育費も一切請求していない。

香澄は、首を振り思い悩むのをやめると、椅子から立ちあがり、背伸びを軽くしてから足を息子と自身が寝ている寝室に向けた。

そのとき、モニターホンの子機がデスクの上でルルルと可愛い音をたてた。

「え?こんな時間に・・?」

香澄は訝しがりながらも時計を見ると0時を少し回ったところである。

(こんな時間にいったい誰よ。まさか浩二?いくらなんでもこんな時間に非常識じゃない?・・誠にはこないだ会わせてあげたばかりじゃないのよ!)

もし元旦那の浩二が来たのであるならば一言注意してやろうと思い、子機のモニタを確認する。

しかし、画面に映っている人物を見て、ほろ酔いかかっていた頭の靄が一気にはれ、完全に仕事モードになった香澄は、しかし訝しがりつつボタンをプッシュして極力平静を装って声を掛けた。

「社長。こんな時間にどうかされたのですか?」

「・・・・ごめんなさいね・・。非常識なのはわかってますわ・・。でも、とにかく中へ入れてちょうだい」

モニタには大きなキャリーケースを引っ張り、スーツは着ているが髪は乱れ、モニタ越しに注意深く見るとメイクも落ちかけている宮川佐恵子が蒼白な顔色で弱弱しい声でそう言い立っていた。

「・・・・・・・・承知しました」

上司と言えども、部下の家に非常識な時間に訪問し、そのうえ不躾な内容に眉を顰めた香澄だったが、断るわけにもいかず、しばしの沈黙を経てからしぶしぶ、しかし平静な声で承知した。

「・・ありがとう。本当に恩に着ますわ」

ドアを開けると、くたびれ衰弱しきった表情の宮川社長が、疲れた表情ながら笑顔で謝辞をいい頭を下げた。

今の宮川社長に、普段はスーツを着こなし高潔な圧迫感をまき散らして周囲に存在感を放っている影は全くない。

(こ、これは・・、一見衣服の乱れはないけど、きっと事件か何かに巻き込まれたんだわ。・・汗・?この臭い・・・ひょっとして襲われて乱暴でもされたのかしら・・?これはただことじゃないわ!)

宮川佐恵子の様子に香澄はそう思うも慎重に言葉を選んだ。

「こんな時間に・・どうされたんですか?・・・シャワー・・浴びますか?それとも・・・110番します・・?」

スーツを着ているが、今の佐恵子は髪も乱れ、間近で見るとメイクもモニタ越しで見たよりもボロボロで僅かに汗というか、男性のそれの臭いもしたためだ。

普段ローズマリーの香りをさせているが、いまは全くその気配はない。

「・・シャワー・・貸してもらっていいかしら。警察は・・大丈夫。・・あとで説明いたしますわ」

宮川は本当に申し訳なさそうにそう言うと、香澄に案内された脱衣所に消えて行った。

暫くするとシャワーの音がしはじめたので、香澄はリビングに戻ると、ポットで湯を沸かし、ソファにドサリと座り足を組んだのだった。

(社長、鍛えてるって言ってたけど、女ですもんね・・。敵も多いでしょうし、きっと逆恨みや腹いせであんな目に・・・。ひょっとして大勢に襲われて・・・そうだとしたら本当に酷い・・!・・・今回のプロジェクト・・あの橋元みたいな悪党も一枚噛みたそうにしてたって聞くし、私もひょっとして狙われちゃう立場なのかしら・・?でも、どうして自宅に帰らず私の家にきたのかしら・・?)

正解ではないが、遠からずといった推測をし、同じ女として勝手に憤りを感じている香澄は、以前水島の一件があったときに処方してもらっていたノルレボが残っていたのを思い出し立ち上がると、薬箱から一錠取り出して、水差しとコップと一緒にテーブルに置いた。

(こちらから詮索はするつもりないけど・・、必要なら使うわよね・・)

そして、いそいそと押し入れから予備の寝具を引っ張り出してきて、使っていない和室の部屋に広げたのだった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 15話 岩堀香澄の転職3か月後 終わり】16話へ続く
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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