2ntブログ

■当サイトは既婚女性を中心に描いている連続長編の官能小説サイトです■性的な描写が多く出てくる為18歳歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい■

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 2話 名工菊沢美佳帆の工賃そして幻魔来訪…

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 2話 名工菊沢美佳帆の工賃そして幻魔来訪…

「創作和食・良酒蘭」の座敷は、2次会特有のはっちゃけ気味な光景が広がっていた。

人工島カジノ「NANIWA・マリンピア」の落成式を明後日に控えた能力者の面々たちが、勢ぞろいし、ずいぶん酒がすすんでいるのだ。

17:00からは関西支社全社員による決起会と親睦会を兼ねたパーティーがあり、それがお開きになったその後は、佐恵子の計らいで能力を持つ幹部社員が、この「創作和食・良酒欄」に集められていたのだ。

「計画は成功ですわ。みなさま大いに飲んでください。今回はこのモブもお手柄でしたの。みなさま拍手を」

佐恵子が音頭をとりそう言うと、頭をかいて照れるモブに対し、すでに出来上がってる面々は盛大な拍手を送って更に盛り上がり始めたのである。

「みなさまのおかげっす!稲垣主任には頭が上がらねえっす!こないだアゴで使うような真似してマジすいませんっした!」

「そうでしょうともそうでしょうとも!加奈子さま最高って言ってもいいわよ?!」

「加奈子さま最高っす!」

モブと加奈子のやり取りに、どっと歓声が上がる。

その歓声と拍手がやむと、アゴは髭で濃いのに、額は薄い男が仕事で発揮できない本領を炸裂させだした。

「よっしゃ!次はワインや!今日はとことん飲むで~!!」

「ちょっとモゲくん!飲み過ぎよ!モゲ君はいつもとことん飲んでるじゃない!」

お嬢こと伊芸千尋は、酒瓶を片手に騒ぐ額の薄い彼氏を窘める。

「かまへんかまへん!今日は祝いやで?アジア最大のカジノの完成やで?こりゃ飲まんわけにいかんやろ!千尋ももっといっとけ!これなんかええんちゃうか?75年のロマネ・コンティや!千尋、赤も好きやろ?俺のおごりや!」

モゲこと三出光春は、すでにグロッキー気味になって酩酊している画伯こと北王子公麿と肩を組み、禿げあがった頭を皮脂でテカらせ、千尋を片手で抱くようにして、酒瓶をあおっている。

「モゲ君のおごりじゃないでしょ?!いくら何でもそんな高いの頼んだらダメよ?!!」

メニューに表示されている価格をみて千尋声をあげるが、そう言う千尋の顔も相当赤い。

今日ばかりは、普段お淑やかな伊芸千尋も飲んでいるのだ。

「せっかく真理さんが帰ってきてるのに、モゲ君!そろそろ離して下さい!真理さんのもとへ行かせてください~!」

真っ赤な顔で焦点も定まらない公麿は、ズレたメガネを直してそう言うも、言ったそばからすでに飲み過ぎているらしく、モゲに肩を揺さぶられるにまかせている。

菊一の面々は、もともと酒豪ぞろいのせいもあって、一次会に続き相当酒が進んでいた。

普段寡黙気味な菊沢宏ですら、サングラスをした顔を酒で赤くさせて、ぴたっと寄り添うように座ったスノウこと斎藤雪の言葉に相槌を打っている。

宏とスノウは仕事で、会話はするものの、仕事以外の会話はほとんどしないのだ。

スノウは、ここぞとばかりに宏を独占し、おしゃべりを楽しんでいるのである。

「部長。やっぱりお酒強いですね。ふふっ・・高校の時も、私たち何かあればこうやってお酒飲んでましたよね・・。校則やぶって飲酒しちゃうような不良なのに、部長、成績はずっとトップなんですもん。私いっつも部長に勝てるように頑張ってたんですよ?でもぜんぜん敵わなくって・・。ほんとに何時勉強してたんですかあ?あの時だって、私たちと朝まで走り回ってたのに・・ほら、画伯が半グレの人にさらわれた時ですよ・・。・・・聞いてます部長?」

いじらしくも宏の隣にピタリと座り、盃があかないようにと酌をしているが、相槌ばかりで、話しかけてくれない宏に焦れたスノウは、作戦を変えてみた。

「・・・私、酔っぱらっちゃったみたい・・・」

そう言ってスノウは宏の腕を抱くように掴むと、サングラスを下から覗き込むようにして目を潤ませている。

「そうかぁ・・スノウ・・ちょっと酔い醒ましたほうがええんちゃうか?」

「いいですね。外に涼みに行くのも・・。行きましょうか」

宏のセリフに、スノウは潤ませた目のまま、宏の腕を引っ張って立ち上がろうとする。

「・・・」

宏は、先ほどから積極的なスノウを気にしてか、美佳帆の様子をちらちらと伺って、スノウから離れてモゲのところに混ざろうとしているのだが、スノウは宏を独占できている今を逃さないように頑張っているのだ。

(なんってこっちゃ・・。なんで誰も止めにけえへんのや・・。誰か助けてくれ・・まあスノウやしな…別に嫌やないんやが…さすがにこりゃマズいんちゃうか?しかしスノウってこんなキャラあったかのう?酔うてもいっつも冷静あったのに…)

宏は、サングラスで隠した目を左右に泳がせるも、誰も宏に助け船を出そうとする者は見当たらない。

みんなそれぞれに楽しんでいるのだ。

そしてその宏たちの隣の席では、稲垣加奈子と菊沢美佳帆が、今日の決起親睦会の為に帰社した神田川真理と近況を楽しそうに話し合っていた。

美佳帆もスノウのふるまいと、宏の様子には当然気づいていたが、気づかぬふりを決め込み、久方ぶりに帰還した神田川真理との話に花を咲かせている。

橋元とひと悶着があったあと、宏と美佳帆も別居状態なのだ。

仕事中は普段通りなのだが、別々のところに住んでいる二人は、プライベートな会話は皆無となっていた。

橋元たちに凌辱されていたのを助けてくれたのは、夫である宏なのだが、それでもお互いに気まずい思いが拭えずに尾を引いているである。

それに美佳帆は、宮コーで緋村紅音と戦った時に、スノウの能力によってスノウの宏に対する想いを、嫌というほど知ってしまっている。

可愛い後輩の想いを知ってしまった今、スノウが宏に露骨なアプローチをしていることに対して、割り込むような真似をしてしまうことに気が引けてしまっているのだ。

美佳帆には文句を言う権利は当然あるのだが、夫の宏とは1年以上もレスである。

宏とは仕事上の会話はしているとはいえ、夫婦の営みはここ1年皆無なのだ。

そんな状態で、女房面をしてスノウを責めるのは、美佳帆としても気が引けたし、スノウが純粋に宏を慕っているのは、あの時によくわかってしまっている。

それに1年もレス状態あのである。

2人とも既婚者とは言え、元々モテまくる2人なので、優秀すぎる至極の雄フェロモンを無意識気に巻き散らかしながら歩く宏に言い寄る女性はスノウ以外にも山ほどいるし、美佳帆にしても今年で39歳を過ぎ40歳を迎えるとは思えない美貌なので、今でも20代の男性からでもアプローチがあるほどなのだ。

そんな事もあり、宏はわからないが性欲も性に対しても比較的アグレッシブな美佳帆の事なので、1年間宏とはレスなのだが美佳帆自身がレスだったかどうかはわからない。

そのため、美佳帆は真理が口にした意外な内容に対して、自身の心中を誤魔化すように、ことさら驚いたふりをして答えたのである。

「へぇ!私も高嶺の刀工鍛冶場を見てみたいわ!」

「弥佳子も美佳帆さんが造った鉄扇のことをおっしゃってました。菊沢部長が持っているのを見せてもらったことがあるそうなのです。弥佳子は、その出来栄えを頻りに褒めていましたよ?・・可能ならば自分用に1本見繕ってほしいと・・。刀を持ち歩くのはどうしても目を引いてしまうから、お忍びのときにも護身用に鉄扇が欲しいそうなのです。弥佳子が、高嶺の刀匠たちに造らせてみたものの、美佳帆さんが造った物とはずいぶんと出来が違うようなのです。彼らは、刀造りは上手なようですが、鉄扇は今まで作ったことがないそうで・・・。ですから、美佳帆さんさえよければなのですが・・。玉鋼など、必要な良質な鉄はいくらでも送ると弥佳子も言ってます。・・どうでしょう?」

1年も高嶺製薬に出向している真理は、高嶺製薬の代表である弥佳子ともずいぶん打ち解けている。

真理は頼みにくそうにしながらも、美佳帆に切り出してみるが、美佳帆はあっさりとこたえた。

「いいわよ」

美佳帆は親指を立てて、笑顔でウインクして言ったのである。

美佳帆の即答に真理は胸をなでおろした。

「よかった。断られるかと思ったので、弥佳子には期待しないでと言っておいたのですけど、肩の荷がおりましたよ」

真理が安堵して顔を綻ばせる。

「一本800万かな。希望の入魂や鍛錬は別途追加でいただくことになるけど、安くしとくわよ?!」

美佳帆は親指を立てたまま、笑顔である。

「ええ。そのぐらいはしますよね」

「真理さんの頼みだし、格安にしといたわ!」

流石は真理である。

心中はともかく美佳帆に対し、真理は笑顔を全く崩ずそう言ったが、横で加奈子がお腹を抱えて笑い転げだした。

「あはははっ!美佳帆さんこの顔覚えておいてくださいよ?!これは真理しゃんが、意表を突かれたときの顔です!写メ!写メ!」

「ちょっと・・加奈子。何を言い出すのよ?」

真理が笑い転げる加奈子を、じっとりとした目で睨みつける。

「だって!真理しゃん。いま『くっそ高っか!』って思ったでしょ?!いーひひひひ!その顔も最高!」

「あ、そうなの?」

と真顔の美佳帆。

「そんなこと思ってないのよ美佳帆さん」

真理が笑顔のまま応える。

「ウソばっか!」

加奈子は真理を指さして笑い転げている。

「えっ?えっ?!どうなの真理さん」

「いえいえ・・。ちょっと・・加奈子!」

「こんな顔の真理しゃんを見られるなんて、今日はこれだけでも価値がありますよ!いひひひっ!」

そう言って、加奈子は笑い転げながらもスマホのレンズを真理に向けてシャッターを押しだしたのだ。

真理の笑顔が少し違ったテイストの笑顔に変わる。

どぐっ!

「はがっ!?」

笑い転げていた加奈子が奇っ怪な悲鳴を上げて、身体をくの字にしたのだ。

加奈子のわき腹を、笑顔の真理が拳で抉ったのである。

「わかったわよ加奈子!こうされたかったんでしょ?!違いないわね?!もう何年もこうしてあげてなかったから久しぶりにしてほしいんでしょ!?」

「いやぁああ!真理しゃん怒らないでくださいよ~!!」

身を護るように身体を丸めた加奈子のお尻を、真理が平手で叩きだす。

お尻を平手打ちされながら、真顔で800万円を要求していた美佳帆の顔と、冗談ながらも怒った顔でお尻を叩いてくる真理の様子をみて加奈子は座敷で笑いだしたのだ。

無礼講とあって、真理と加奈子も羽目を外して大いに楽しんでるのである。

真理と加奈子の身体を張った催しに、固まって飲んでいた岩堀香澄とモブこと茂部天牙、そして、すっかりモブと和解した雨宮雫と楠木咲奈の二人も、直属の上司の珍しい寸劇にお腹を抱えて笑い出したのである。

ビジネスシーンでのお淑やかな二人のエリート淑女は、まるで別人と見間違うような笑い声をあげて楽しんでいるのだ。

「主任!ああ!・・・あの神田川主任が稲垣主任のことを・・!これは事件だわ!」

「きゃぁあ!主任たち何やってるんですか!?でも・・良い!シュールです!」

咲奈が両手で顔を覆い、雫も珍しくも信じられない光景だと言わんばかりの表情で二人の上司が畳の上でじゃれているのを興奮気味に見入っている。

「おおぅ!関西支社の双璧の才媛がこんなことに!・・もうちょっと・・!もう少しでお二人のパンチラが見えそうっす!これは本当に事件っす!」

「茂部君!」

香澄は茂部の耳を引っ張って、畳の上でじゃれている二人から引き離す。

「いててて!冗談っすよ!岩堀部長!いてて!」

双璧の才媛二人が畳の上でじゃれ合っているのと、モブと香澄の様子に、他の面々もどっと歓声を上げだした。

「みなさま、本日は無礼講ですわよ。浪花マリンピア計画をすすめてこれましたのも、みなさまのおかげです。大いに飲んで楽しんでください。三出さん・・今日ばかりはどんなに飲んでくださってもけっこうですわよ?ロマネ・コンティ注文なさい」

佐恵子も今日ばかりは仕事にストイックな仮面を外し、普段から下品なことばかり言うモゲこと三出光春にも、甘い顔を見せてやる。

「さすがや!愛してるで佐恵子さん!」

「調子に乗り過ぎない!!」

佐恵子の言葉に感激し、すかさず投げキッスを返すモゲに、千尋がモゲの頭を叩いてツッコミを入れる。

モゲと千尋のやり取りに、一同が声を上げて笑う。

「真理!加奈子!久しぶりに会ってじゃれ合うのもけっこうですが、怪我したりお店をこわしてはいけませんよ?今日は貴女たち二人が暴れても、取り押さえてくれそうな人たちが揃っていますが、この店に迷惑をかけないようにしてくださいね?」

佐恵子が盃をあげてそう言うと、更にどっと歓声があがる。

「じゃれてなんか無いわ佐恵子!ちょっとこのお調子者に教育しているだけですから!」

「きゃははは!くすぐったいですってば真理しゃん!」

「ええい!加奈子には一度きっちりわからせてあげようと思ってたんです!覚悟しなさい!?」

「ちっちっち!真理しゃんのパワーでは私をどうこうするなんて・・・・うきゃああ!?」

畳の上で押し倒されながらも、人差し指を左右に振って真理を挑発していた加奈子が嬌声に近い悲鳴を上げた。

真理が、加奈子のブラウスの裾から手を突っ込み、ブラの下に腕を通して首を掴んだのだ。

「覚悟なさいって言ったでしょう?!」

「ちょっ!真理しゃん!反則っ・・!」

関西支社きっての才媛の二人が、場を盛り上げようと頑張ってくれているのだ。

そんな様子に佐恵子も声を立てて笑い、隣にいる蜘蛛こと最上凪と、高嶺製薬から出向し、1年ほど佐恵子の業務を手伝っている高嶺静の肩を叩いて、真理と加奈子を見るように促している。

しかし、そんな楽しそうな様子の面々をよそに、末席の隅で鬱々としたオーラをにじませて一人飲んでいる男がいた。

豊島哲司である。

哲司は面々の楽しそうにしている様子を眺めていたが、高嶺静が席を立ち真理達を止めようと移動したのを見計らって、佐恵子の席まで近づいてきた。

「佐恵子さん」

哲司の声は聞こえたはずだが、佐恵子は目を合わせようともしない。

それでも哲司は構わずに佐恵子の席の前に腰を下ろした。

佐恵子の顔から笑みが消える。

「・・豊島さん。楽しんでらっしゃいませんね?もしかして、この場に相応しくない話をなさるおつもりですか?・・・どうぞ遠慮してくださいませ」

佐恵子は真理と加奈子の方へと向けた目そのままにして、辛辣な拒絶のセリフを哲司に浴びせかけた。

その佐恵子の様子をすぐ隣で聞いていた最上凪は、なんとか豊島哲司に助け船を出したいのだが、凪はそんな器用なことができる女ではない。

凪にできるのは、目だけで豊島に「がんばれ!」とエールを送るのみである。

「ほな、あとで時間とってくれるか?」

一人だけお通夜のような表情の哲司はそう言ってみるが、佐恵子の返事はつれない。

「・・・どうかしらね」

佐恵子はそう言って、グラスのリムに唇を当てちびりと喉を潤す。

そう佐恵子が言ったきり二人の間には沈黙が続く。

加奈子と真理を中心に騒ぐ面々をよそに、店員が忙しそうに新たな料理や注文されたアルコールを運び、空になった皿を下げ忙しく働いている。

真理と加奈子の寸劇で盛り上がっていた面々も、上座の様子に一人二人と気が付き始めた。

佐恵子と哲司の二人の周りには重苦しい空気が漂っており、そのとなりで白づくめのボディガードが、「この空気、誰か何とかして」という思いを誤魔化すように、佐恵子と哲司のことなど気づかないふりをして、白身魚のお造りを口に運んでいるのである。

本来なら険悪になる前に、佐恵子の近くに侍った側近が気を利かすのであるが、いま佐恵子の傍にいるのはコミュ障の最上凪だけである。

真理は、胡麻を擦る為の長さ20cmほどのスリコギ2本を使って、スカート越しとはいえ、加奈子のしりこぶたで太鼓の達人の真似事をしていたのを止めて立ち上がる。

「豊島さん・・」

真理が言いかけたところで、貸し切りにしていた個室の扉が突如開かれた。

木枠でできた襖が、スパンと音を立てて開き、暖房と酒気と熱気で温まった部屋に、清涼で乾燥した空気が流れ込む。

「っと・・よかった~!ここであってたわねえ。違う部屋だったらどうしようかと思ってたのよ」

部屋の空気の流れの変化と、よくとおるが聞きなれない女の声に一同は振り返った。

「お揃いですね。角谷部長に聞けばここだと教えてくれましたので、押しかけてまいりましたわ。私たちも混ぜてくださいな」

宮コーの指定のスーツに身を包んだ女性が、佐恵子の方に向かって両手を頬の横で合わせながら身体をくねらせてそう言ったのである。

佐恵子を含む古参のメンバーが、驚きのあまりとっさに言葉を失って突然登場した女性に目を見張る。

その女性を見た元菊一事務所の面々は、一様に「誰?」という表情をして佐恵子に顔を向け、すぐに真理と加奈子にも同じように視線を投げかけた。

しかし、佐恵子も真理も加奈子も驚いた表情のまま答えない。

最上凪だけは、近づいてきている彼女たちに気づいていた。

這わせていた【糸】にはとっくに反応があったのである。

凪は念のために指先に力を集中させた。

凪の気配の変化を敏感に察知した女性は、凪に対して軽く一礼をしてから声を掛ける。

「最上主任。お久しぶりですねえ。ご挨拶に伺っただけですから私たちに殺気なんてなかったはずですよぉ?もしそうだとしたら、私たち同じ宮コーとはいえ、とっくに仕掛けられてますよね?怖いですわあ」

ふっくらした唇に真っ赤なルージュを引いた女性は妖艶な笑みを浮かべて、黒く塗られた爪が映える白い手を振ってそう言い、蜘蛛を牽制する。

「宮川お嬢様。お久しぶりでございますね。突然このような場に押しかけて申し訳ありません。非礼をお詫びいたしますわ」

「いえ、ご無沙汰しております。常務のご活躍ぶりは私の耳にもよく聞こえてまいります。叔父様も常務にはとても期待なさっていると役員会でも言われていますわ」

「ふふっ・・それは身に余る光栄というものです。しかし、今回の宮川お嬢様のご活躍に比べれば、私の社に対する貢献など霞んでしまいますことですのよ。さすがは会長のご令嬢です。本当に感服いたしますわ」

そう答えた女は、佐恵子に対して慇懃に恭しく頭を下げる。

その所作は、初対面であう菊一の面々から見ても、洗練されていた。

そして、驚くべきことにまったく隙が無い。

初対面の菊一メンバーの顔にも、この女が只者ではないことがわかったようで、一同の表情に警戒の色が漂う。

「石黒実花。久しぶり。佐恵子。石黒は話があって来ただけだと思う。ぜんぜん殺気がない」

最上凪が、緊張しかけた場の空気をできるだけ解すように、口を開いた。

「あらん?・・名前覚えてくれてるなんて嬉しいわ。会うのは2度目のはずだからすっかり忘れられてると思ってましたよぉ。最上主任」

幻魔という二つ名を持つ宮川十指の一人、石黒実花。

宮川誠派の側近中の側近であり、表向きは、秘書主任と常務執行役員を兼任する太平洋に敷設された、巨大な資源採掘洋上プラントの責任者である。

そして裏では、暗部と呼ばれる宮コーの恥部の組織のトップでもある。

宮川佐恵子の参謀が神田川真理であるように、宮川誠の参謀はこの石黒実花なのである。

佐恵子は凪の言葉に頷いたが、石黒のすぐ後ろに、よく知る見知った顔を見つけ酔いも吹き飛んだのであった。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 2話 名工菊沢美佳帆の工賃そして幻魔来訪… 終わり】3話へ続く
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

最新記事
最新コメント
リンク
カテゴリ
ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へ
にほんブログ村
アダルトブログランキングへ
  • SEOブログパーツ
ご拝読ありがとうございます
ご拝読中
現在の閲覧者数:
問い合わせフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
官能小説 人妻 

ランキング