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第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 6話 【回想】魔眼と銀獣のキャンパスライフ時代2

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 6話 【回想】魔眼と銀獣のキャンパスライフ時代2

佐恵子はスリットの入ったガウチョをなびかせて小走りに路地へと駆け込み、ビルの角からそおっと顔を覗かせ、今駆けてきたばかりの大通りを伺う。

伺う際に無意識に視力と聴力を強化してしまったのは、動物同然の鋭敏な感覚を持つ幼馴染の追跡を警戒したためだ。

大学の裏門から加奈子を振り切るために肉体を強化し、1kmほど全力疾走してきたので息はやや荒い。

歩道を歩く人たちに驚きの目で見られるのを気にして優雅に歩いていくわけにはいかない。

そんな悠長なことをしていれば、たちまち加奈子に追いつかれて車にねじ込まれ、武蔵野の稽古道場に連れていかれるのは必至だとわかっている。

佐恵子にとって認めたくないことだが、最近加奈子には組手では敵わなくなってきているのだ。

10歳まで無能力者だった加奈子の成長を佐恵子ももちろん喜んでいるが、毎回組手で負け続け出すと、面白いはずがない。

「痛っ・」

僅かに顔を歪めた佐恵子は片膝をあげ、ガウチョの裾を少し持ち上げた。

そこは、先日の組手で加奈子に蹴られたところが、生々しい青痣になっていたのである。

脳の使用領域開放のできる佐恵子と加奈子だが、佐恵子の方が脳の使用領域は広いことが宮川の検査でわかっている。

だが、個人の適性や特性に合わせて、得手不得手が出やすいことも宮川の研究でもわかっていた。

加奈子の脳領域開放は10歳以降と遅かったが、加奈子の身体を精密検査すると、もともと筋肉の密度が常人の8倍ほどあることがわかったうえ、開放した脳領域の分野も肉体を更に強化する部位がばかりが開放されている様なのである。

「ったく、馬鹿力なんだから・・。まさか今日見られることはないとは思いますが・・」

派手な青痣だが、押さえてみても思ったより痛みが引いていることに安堵したものの、別の心配で顔を赤らめた佐恵子は、脚を降ろして裾を直す。

今の佐恵子の表情が示す通り、今の佐恵子にとっては加奈子に惜敗しつづけていることも、些細なことに思わせるトキめきがあるのだ。

青痣が布で完全に隠れることを確認すると、佐恵子は目と耳に集中しているオーラを霧散させた。

「ふぅ・・大丈夫そうですわね。まったく加奈子の嗅覚ときたら・・人の体臭を個人別に嗅ぎ分けますからね・・」

そう警戒したものの加奈子の気配がないことがわかるとほっと息をつき、路地をそのまま駆け抜け、念のために角を何度か折れてからようやく大通りに戻り、今度こそ足取りも軽やかに歩き出した。

夏季休暇前の汗ばむ季節だが、佐恵子は多少の暑さも気にならず、これからの時間のことを思って無意識に口を綻ばせてしまう。

街路樹から蝉の声が騒がしく聞こえてくるが、今の佐恵子にとっては、そんな騒音にすら不快さを感じることはない。

目的の喫茶店の扉を開け、レトロなドアチャイムを鳴らせて入ると、いつものお気に入りの席まで店員が案内くれた。

アイスカフェオレを注文し、しばし空調の効いた店内から、初夏とはいえ強い日差しが差す通りを眺め、真新しい左手の腕時計を愛おしそうに眺めては撫で、待ち人を待つ。

空いている時間帯なので、すぐにきたアイスカフェオレにガムシロップを3個流し込んでよく混ぜると、加奈子から全力疾走で逃げた喉の渇きを潤すため、顎をあげて白い喉を見せ一気にグラスを傾けた。

3口ほど飲んで慌ててグラスを置いた佐恵子は、行儀が悪かったかしらと反省して赤面すると、バツが悪そうに周囲を伺って、少し腰を浮かせて椅子に座りなおし、お淑やかを装った。

まだ約束の時間にははやいので、宮川家の息女としてあるまじき姿を見られる心配はないのだが、今のうちにバックからコンパクトを取り出し、鏡でチェックを行う。

鏡に映った内容に満足そうに頷くと、パチンとコンパクトを閉じてバックに戻したところで、カランコロンとドアチャイムが店内に鳴り響いた。

肩には届かないが、男にしては長い髪、白いシャツの前をはだけてインナーを見せた格好ながらも、その青年の持った爽やかな雰囲気がラフさを感じさせない。

青年は入口のトビラの所でキョロキョロしていたが、軽く手を振る佐恵子の姿を見つけると、小走りに近寄ってきた。

「宮川さん。待たせちゃったかな?宮川さんのほうから呼んでくれるなんて珍しいのに遅れちゃってごめん」

慌てた様子で佐恵子の座る席まできた長身の男は、淡い色の髪をかきあげて人懐っこそうな顔を、やや曇らせて佐恵子に詫びた。

「い、いえ、わたくしも今来たところですわ。それにまだ約束の時間になってませんから、錫四郎さまは遅れていませんわ」

佐恵子はそう言っていそいそと席を立ち、錫四郎なる男の為に対面の椅子を引いて座るよう促した。

そんな佐恵子の正面に錫四郎は礼を言って座る。

佐恵子も錫四郎も頬を上気させて微笑んでいるだけで、お互いに暫く見つめ合ったまま何も言わない。

周囲から見れば、付き合いだしたばかりの美男美女が初々しいデートをしているのだとわかるだろう。

「あの、錫四郎さま。何か注文いたしましょうか?」

「あ!そうだね!じゃあ僕はアイスコーヒーで!」

店員を呼び注文をすますと、またもお互い沈黙になる。

決して気まずい沈黙ではないが、おそらくたちまち訪れるであろう『閉幕』に間に合うよう、佐恵子はさっそく本題を切り出した。

「今日お呼びだてしたのは、お祝いを言いたかったからですわ。・・・錫四郎さま。お誕生日おめでとうございます」

佐恵子は笑顔でそう言うと、バッグから小箱を取り出し、テーブルの上に置いたのである。

「あ、ありがとう!宮川さんから祝ってもらえるなんて本当にうれしいよ」

額にかかる淡い髪を手でかきあげ、錫四郎は嬉しそうに小箱を差し出した佐恵子の手を握りしめた。

錫四郎はブラウンの目に線の細い顔、育ちの良さを感じさせるさわやかな好青年である。

錫四郎は、嬉しさのあまり、つい佐恵子の手を握ってしまったことに気づいて、赤面して慌てて手を離しそうになるが、佐恵子の手が逃げずにその場にあることがわかると再び優しく握る。

「あっ・・いえ・・はい。気に入っていただけるといいのですが・・。さ、開けてみてくださいませ」

佐恵子も赤面し、触れられた手を動かしてしまいそうになるが、錫四郎の手に握られるままにして、嬉しそうにはにかんだ佐恵子は、小箱を開けるように促す。

「ありきたりなものですが・・」

佐恵子に促されて錫四郎は箱を梱包している包みを丁寧に解いていく。

そこには曲線のトノーケースが特徴的で、レトロな雰囲気を醸し出すスイス製の腕時計がおさまっていたのである。

「宮川さん・・」

錫四郎は特別ブランドに詳しいわけではなかったが、この腕時計が芸術と技術の融合の極致に近いところにある逸品であることはわかったのである。

誰が見てもそれだとわかる芸術的なデザインで人気のブランド。

独創的な形のケース、芸術品のような文字盤などが有名で、他のメーカーの常識とは違うデザイン性に目が行きがちになるが、そのブランドが内部機構も世界屈指の性能を誇っていることは言うまでもない。

「気に入っていただけましたでしょうか?」

小箱の腕時計を見て、驚いている錫四郎を不安げに伺っている佐恵子の左手首には、小箱に収まった腕時計を小ぶりにしたものがきらめいていた。

「・・・ペア、ですのよ」

佐恵子が恥ずかしそうにそう言って自らの左手に付けたお揃いの腕時計をみせる。

錫四郎は佐恵子の左腕を見て慌てながらも、丁寧に腕時計を取り出すと、ずっしりとした重みのある金属製のベルトを腕に巻き付けた。

「もちろん気に入ったけど・・宮川さん。こんな高価なもの・・。でも、宮川さんとペアなんてすごくうれしいよ。・・・こういうのは男の僕のほうからしないといけないのに」

「うふ・・。お小遣い奮発しちゃいましたわ。でも錫四郎さまに気に入ってもらえたみたいで嬉しいですわ。うふふふ・・・きゃ!?」

俯き、ロングストレートの黒髪で赤面した顔を少し隠した佐恵子だったが、正面のガラス窓の向こうにある光景を見て悲鳴を上げてしまった。

「ど、どうしたの宮川さん?」

「い、いえ・・!今日は来てくださってありがとうございます。今日は本当に楽しかったですわ。また夜電話いたします。それではわたくし、いかなくては・・」

たちまち来ると思っていた『閉幕』は、佐恵子の予想より早く訪れたのだ。

いそいそと会計に立ち寄る佐恵子を訝しがる錫四郎であったが、自分の時計に巻いた佐恵子の気持ちに目を細めると、店の扉を開けこちらを笑顔で振り返って手を振る佐恵子に手を振り返していた。

佐恵子が外に出ると、喫茶店の外には白いワンピースを着た華奢な女性が、同じく白い帽子で強い日差しを遮って立っていたのである。

汗一つかいてない白ワンピースの女性、最上凪。その最上とは対照的な、汗だくの加奈子も疲れた表情で佐恵子を出待ちしていたのだ。

その二人の姿が、先ほどの席から見える窓から見えたので悲鳴を上げてしまったのだ。

いくら加奈子から逃げ切ったといっても、最上凪の糸から逃れるのは困難を極めるのは佐恵子もわかっていたことである。

それにしても今日は恋人の誕生日だというのに、逢瀬の時間は短すぎた。


「あの男、調査と監視が必要。佐恵子、あの男と交際して長い?深い仲?」

「・・いくら凪姉さまでも口出し無用のことですわ」

「そうはいかない」

「無用と申し上げましたわ」

喫茶店を出てすぐに、佐恵子は黒塗りの高級車にねじ込まれたのである。

肘を車のドアについて、佐恵子は隣で座る白いワンピースを着た最上凪の問いかけに対し、そっぽを向いたまま口をとがらせて反論していた。

渋滞気味の道路を走る車の中、しばらく気まずい沈黙が続く。

そんな中、佐恵子の捜索に駆けずり回る羽目になった加奈子が口を開いた。

「佐恵子さん。プレゼント渡すだけならちゃんと言っておけば凪姉さんも私をあんなに責めたりしなかったと思うんですよ・・・」

控えめな口調でそういう加奈子には、散々探し回ったのであろう苦労が見て取れる。

加奈子の健康的だが白い肌は汗でしっとりと湿っているし、着ている白のカットソーにもうっすらと汗がにじんでいた。

「いまの凪姉さまの言葉を聞いたでしょう?錫四郎さまのことを言っても許してくれないのは確実ですわ。だから黙って行くしかありませんでしたの。それに、今日は彼の誕生日でしたわ。・・・プレゼントをお渡ししたらすぐ戻るつもりでした。実際そうしたでしょう?」

加奈子の言葉に、やはり視線を合わせず窓の外を眺めたまま、佐恵子は投げやりな口調で返す。

そんな様子の佐恵子に今度は白ワンピースの女性、佐恵子と加奈子の教育係の一人である最上凪が躊躇いがちに口を開いた。

「佐恵子。・・・いま佐恵子に男性交際は認められていない。貞操を護ることも佐恵子の義務の一つ。卒業すればその年に然るべき相手とのお見合いが予定されている。あの男との接触は今日限りにしたほうがいい。これ以上情を育てないほうが、あとあと苦しまなくて済む」

凪なりに言葉を選び、佐恵子をできるだけ刺激しないように気を使った言い回しのつもりだが、佐恵子の細い目はたちまち恨みの呪詛を爛々と燃え上がらせ、勢いよく振り返って凪を睨み、口を開いたのである。

「貞操を護れ?ふんっ!誰のために?!何のためにですの?!凪姉さままで、叔父様と同じようなことおっしゃいますのね!?叔父様はわたくしのことがお嫌いなのですわ。・・・でなければ、あのような者たちと縁談など!常盤や麻生の令息たちのいずれかと結婚なんて考えただけでもおぞましい・・!麻生にいたっては今年42歳ですのよ?わたくしは19。歳が違いすぎます!それに・・わたくしはあの者たちの感情が見えるのです!叔父様にも見えているはずですのに・・!わたくしのことを血筋のある政略道具として見てるだけではなく、すでに数多くいる愛人たちと同じベッドで嬲ろうと思っているような輩に嫁がなければなりませんか?!愛人たちと一緒にですよ・?それまで貞操を護っておけと?!冗談じゃありません!・・・そんな結婚受け入れられるわけがないではありません!・・宮川の人間としての自覚はあるつもりですが、こんな前時代なこと・・!・・どうにかなりませんの?!あんまりですわ・・!」

佐恵子はそこまで一気にそう吐き捨てると、再び車窓のほうを向いてみるともなしに外を睨みつけて黙ってしまった。

そして俯き、長い黒髪で表情を隠した佐恵子は、肩を小刻みに震わせだす。

そんな様子を加奈子は本当に気の毒そうに見ていることしかできないことに耐えかねて、隣で座る最上に助けを求めるように目を向けるが、最上もその無表情な顔に、困窮がにじみている。

最上凪も加奈子も佐恵子のことを大切に思っているが、巨大組織である宮川の避けようのない大きな流れに抗う術など持っていないのだ。

「・・・こんなことでしたら、わたくし・・錫四郎さま・・」

左手の時計を撫で、俯いたままそう呟いた佐恵子に、誰も何も答えることはできなかったのである。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 5話 【回想】魔眼と銀獣のキャンパスライフ時代2終わり】6話へ続く
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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