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第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 7話 【回想】豊島哲司と寺野麗華

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 7話 【回想】豊島哲司と寺野麗華

ずっしりと重みのある最後の段ボールを荷台に乗せた豊島哲司は、額の大汗を手拭いで拭うと、大きく息をついた。

「ふぅ。これでおわりやなっと!」

手に付いたホコリをパンパンと叩いてふるうと、哲司は持参してきていたペットボトルの水を、喉を鳴らして一気に飲み干した。

今年25歳になる豊島哲司は都内の小さな探偵事務所に勤務していた。

哲司は、京都の有名な観光地である寺の住職の息子である。

しかし、いきなり本業を継ぐのを良しとしない方針の父親の勧めもあり、10年は社会勉強をしてこいと言い渡されたのだ。

大学卒業して2年間は定職に就かず、国内外を旅とも言えない放浪生活をしていたのだが、数か月前から『何でも屋!兼☆探偵事務所yeah!八王子店』に厄介になっている。

屋号は八王子店と名乗ってはいるが、この探偵事務所は、八王子店以外他に店舗はない。

哲司は大学卒業後の2年間、日本内外でアルバイトなどをして日銭を稼ぎ、定職に就かなかったのだが、今回が初めての正社員としての働き始めたのだ。

定職に就かなかった哲司がどういう心境の変化で就職しようという気になったのかというのも、親友である菊沢宏から国際電話で伝えてきた内容のせいであった。

親友である菊沢宏は大学卒業と同時に、宏の父親の伝手で渡米してしまったのだが、来春にも日本に帰国するというのだ。

その時に「日本に帰ったら探偵事務所を開業する」からと哲司を創立のメンバーに誘ってきたのである。

哲司は住職の父に言われたとおり見識を広めるということを、なんとなく雲を掴むような感覚でしかとらえられず、どうも日々無駄に過ごしてしまっていると思っていたところであったものであるから、哲司の心の中で親友の誘いに得たりと思ったのである。

父親に言われた見聞を広めるという具体的に目的もない行動の日々に、哲司は何事においてもどうもやりがいを見いだせず日々浪費してしまう感覚に苛まれていたので、宏からの誘いは、自身の心の方針を決める指標となったのである。

宏が日本に帰ってくるのは来年の春3月中旬ということだったので、それまでの間少しでも探偵業がどういう仕事か知るために、哲司は都内で探偵事務所を開業しているところへと片っ端から履歴書を送りまくったのだ。

しかし京都にある日本屈指の難関国立大学、京都大学法学部卒業という輝かしい肩書をもってしても卒業後2年間の放浪生活のせいで、履歴書は甚だ怪しい経歴と自己紹介文で埋まってしまい、哲司の経歴と人格は、多くの採用担当者からとっても怪しく思われてしまったのである。

しかも、勤務希望期間は1年で来春には退職したいという旨を履歴書に堂々と馬鹿正直に記載している為、まともに取り合ってくれる会社が少ないのだ。

せっかく資格蘭に書いた司法試験合格という記載も、甚だ疑わしく見える。

「高学歴で世間知らずな変わり者」

そういう「扱いにくい人間」というレッテルを貼られてしまうのは、哲司の履歴書を見れば致し方ないとも言える。

そんな中、数多く応募した探偵事務所の中から、唯一採用通知を哲司に届けてくれたのは、『何でも屋!兼☆探偵事務所yeah!八王子店』と屋号に☆やら!マークのついた怪しげな探偵事務所一社だけだったのだ。

「しっかし、探偵事務所言うても、実際何でも屋みたいな仕事ばっかりやねんなあ」

首に巻いたタオルで顔の汗をぬぐいながら、哲司は一人ぼやいてみせる。

実際、哲司が入社して3か月の間、与えられた仕事内容は引っ越しの手伝いや、ゴミ屋敷の掃除、建築現場の解体作業などばかりなのだ。

脳領域の開放を物心がつく前に身につけてしまっている哲司にとって、常人なら過酷すぎる肉体労働も、哲司にとっては単なる作業としか感じることができず退屈になりかけているのだ。


「なーんか俺が思ってる探偵業と違うんよなぁ・・。宏が思とる探偵事務所とも違う気がするし、このままここで続けてええもんなんか・・どうなんやろか」

川沿いの高速道路の高架橋近くで、不法投棄された粗大ゴミを積み込んだトラックの傍らで哲司はぼやいた。

少し考えこみ始めた哲司はちょうどいい大きさの石に腰をおろし、雲一つない夏の空を眩しそうに見上げて汗をタオルで拭う。

そんなときである。

「いたいた!おしょー!来てあげたわよー!」

哲司の背中に、少し離れた道路の方から哲司の学生時代の愛称を大声で呼ぶ者がいた。

豊島哲司のことをその愛称で呼ぶ者は両手で数えるほどしかいない。

遠目にもわかる女性らしいプロポーション。

出るべきところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいるポニーテールの美女。

黑のぴったりとしたタイトスカートに同じく七分丈のジャケットを着こなし、手を振って哲司のいるところへと、道路のフェンスを華麗に飛び越えてくるところであった。

常人にはとても飛び越えられるような高さではない3mほどのフェンスを、難なく飛び越えてくることから、彼女も脳領域を解放した能力者である。

その彼女はいかにもできるキャリアウーマンという颯爽とした歩き方であり、彼女の背後に停めてある赤いスポーツカーも、並みのサラリーマンの収入で買うには難しい金額の車種である。

実際彼女は哲司とは同じ大学の同窓生であり、卒業後は都内の大手法律事務所にずっと勤めている。

それに、宏や哲司と同じく在学中に現役で司法試験に合格したエリートなのだ。

「お!」

哲司は、聞き覚えのある幼馴染の声に気づいて伸びをしていた身体を戻すと、立ち上がって振り返り笑顔で手を振った。

「麗華か。ほんまに来てくれたんか?!ひっさしぶりやなー!元気そうでよかったわ」

「はぁ!?来いつったのは和尚でしょうが?!・・それに連絡寄こすにしても久しぶりすぎるんじゃないの?!」

気の強そうな声で言い返してきたのは哲司の幼馴染の一人、愛称は「姫」。

黙っていれば誰もが認める美人なのだが、通称、「残念な美人」という女性としては無念すぎるレッテルを貼られている女、寺野麗華、その人であった。

麗華とちょっとでも会話をすればわかることだが、彼女のお転婆ぶり、言葉遣いの荒さ、気の強さに、昨今増殖中の草食気味な男性諸君は、瞬く間に怖気づき麗華と距離を取り出すのである。

しかも、麗華も哲司と同じく京都大学法学部の卒業生なだけあって、頭の回転も非常に速い。

女と侮り、迂闊なことを麗華に対して口走ろうものなら、荒々しい言葉遣いで理詰めに論破され、男のプライドをズタズタに引き裂れて再起不能とされてしまうのである。

いままで麗華に言い寄った多くの男性は、麗華という美しい駿馬を乗りこなすどころか、近づく前に鋭利なスパイク付きの強靭な蹄でボコボコにされてしまうのである。

しかし当の本人は、自分は美人なはずなのに何故にこんなにモテないのかと密かに悩んでいる始末である。

今のところ本人にモテないことに対する改善の兆しが見えない為、美人で頭のいい気の強すぎる麗華は、彼氏無し歴=年齢という記録を絶賛更新中であった。


気の強すぎる美人は誰にも手を出されていないのある。

そんな彼女の周囲にいる男の中で、麗華から「朴念仁」とあだ名されてしまっている豊島哲司だけは、麗華のスパイク口撃に唯一耐えると言っていいタフさを持つ稀有な男となっているのだ。

「いやいや。すまんすまん!怒るなって。麗華仕事が忙しそうやったから、来れたらでええで。ってぐらいの軽い気持ちだったんや。気ぃ悪うにすんなや」

なだめる哲司に向って麗華はずいずいと歩を進めながら、コンビニで買ったばかりの冷えたポカリのペットボトルをかなりの速度で哲司に投げて寄こしながら、口撃を続ける。

「何よそれ!哲司がや~っとまともに就職したって連絡寄こしてきたからこの忙しいのに美人の幼馴染が顔見せに来てあげたのよ?!それなのに『来れたらええってぐらいの軽い気持ちだった』ですって?!信じらんない!それに何よその恰好!・・・司法試験まで合格しといてなんでそんなことしだしたのよ?!馬っ鹿じゃないの?!・・この際だからついでに言っときますけどね私に会いたいって男はたくさんいるんだからね!そんな中わざわざ和尚の為にこんな水や木しかないようなところまで来てあげたのに・・・軽い気持ちで呼んだだなんて言わないでよね・・」

言葉尻は声が小さくなったが、麗華の目は鋭いままだ。

実際、麗華に会いたいという男は多いには違いないが、二回目会いたいという男は今のところ皆無である。

「すまん言うてるやろ!あ!そや!俺今日はこれで仕事あがりなんや!一杯奢るから勘弁してくれや。・・・な?」

「奢るったって・・!和尚あんたねえ・・」

麗華はジャケットにきつそうに納まったFに近い豊満な胸を揺らして、腰に手を当て、哲司の鼻先に人差し指を押し付ける。

麗華が相手を口撃するときのいつものスタイルに入ったのを見計らって、手慣れた哲司は早々に白旗を上げて手を合わせたのだ。

哲司はさっさと謝ってしまうのが吉だということを、麗華との長年の付き合いでよくわかっている。

「ま・・まあ、私も忙しい身だけど今日はもう直帰するだけだし・・。和尚も反省してるみたいだし・・、久しぶりに会った同窓生の誘いを断るのはやぶさかじゃないから・・・いいわよ。でも、・・・私を誘うにしたって和尚、大丈夫なの?・・・そのお金とか・・今の仕事ってお給料大丈夫・・なの?・・・それに、そんな恰好でどこに連れて行ってくれるっていうの?」

麗華は哲司に誘ってもらったことが満更でもない様子だったが、誘った男の懐具合を心配するというタブーを犯したうえ、哲司の格好の難点を見て眉をひそめたのだ。

哲司は盛り上がった筋肉が強調する汗びしょびしょのタンクトップに、ボトムはニッカポッカに足袋という姿である。

たしかに麗華のような美人キャリアウーマンを飲みに誘うにはかなり無理がある恰好である。

麗華としてもこのまま労働者たちが雑多に座るドブ板飲み屋にでも連れていかれるかもしれないという心配をしたのだろう。

しかし今の哲司の身なりはお金があるように見えないが、もともと哲司の実家は現在も観光地でもあるうえ、大昔からある有名な歴史的な古刹である。

各地で転々とアルバイト生活をしてきただけの哲司だったが、無駄遣いをする性格ではない。

たまにこっそりと風俗店に行くぐらいしか無い娯楽ではお金を使わないのだ。

よって今はアルバイトでの稼ぎしかない哲司なのだが、生活には困らないし少しばかりの貯えもあった。

「あー・・・。お金は心配あらへん。でもこの服はたしかに問題やな・・。そやな・・このトラック会社に置いて着替えてからでええか?どうせ会社があるあたりまで戻らへんと店もないしな」

「ったく。じゃあこんなところに呼び出さずに最初からそっちに呼んでほしいわよ。私だってこんな辺鄙なところにいるクライアントなんて一人しかいないんだからね・・。予定合わせるのだってこっちはこっちで大変だったのよ?・・で、どこよ。和尚の会社って」

「八王子や」

「ま、いいわよ。って会社に戻ってからって、それからまた和尚んちに行って着替えるの?」

「そや。それなんやが麗華。会社から俺の下宿先まで麗華の車で送ってくれへんか?・・そのほうが早いし頼むわ。ええやろ?」

哲司は道路に路駐してある麗華の愛車を目ざとく見つけていたのであった。

「え・・うーん・・・ま、まぁ・・いいわよ」

哲司の汗だくドロだらけの姿に、麗華は自分の愛車のシートが汚れることを躊躇する様子を見せたが、麗華の頭の中でなにかと天秤にかけた結果、哲司のお願いはなんとか通ったようである。

「でもね言っとくけど、私の車の助手席に座った男なんかいないんだから感謝してよね」

麗華の「私は自分の車で男とドライブした経験はありませんよ」という墓穴掘りの刺々しい言い回しも寛大な哲司には通用せず、哲司は「悪いな」と若かりし頃の織田裕二似の顔で爽やかにはにかんで良い笑顔を見せるぐらいの度量を持ち合わせていた。

10年後に、麗華とはタイプの違う尊大な彼女と付き合うのに必要な土台は、すでにこの時には出来上がっていたのである。

「じゃ、じゃあ行くわよ。さっさとトラックに乗りなさいよ。和尚の運転について行くからさ」

やや顔を赤くさせた麗華が、照れた顔を隠すように振り返って愛車へと歩き出したその時、哲司の携帯が、陰りはじめた夕焼け空にけたたましく鳴り響いた。

「もしもし!あ、社長!はい!はい!ばっちりです!はい・・・・終わりました。・・え?・・ええ・・・はい・・・え?・・・はい・・・ええ・・」

どうやら哲司の勤める会社からの電話だと麗華も気づくと、歩みを止めて憤然気味に腰に手を当てる。

「すまん麗華」

電話を切った哲司は開口一番そう言った。

「なによ?!」

「説明する前から怒んなって」

腰に手を当てたまま勢いよくそう言った麗華に、哲司は両手を広げてまあまあという仕草をしながら言い返す。

「いや、ちょっと会社に帰ったら社長が話ある言うてな。話自体はすぐ終わるって言うんやけど、麗華すまんけどその話が終わるまで待ってくれるか?10分ぐらいで済むらしいから」

「なんだ、そんなこと・・」

哲司の説明に麗華はあからさまに安堵した様子でそう言いかけたが、すぐに気を取り直して残念な美人ぶりを炸裂させる。

「私をそんなに待たせるなんて、ほんっとに特別なことなんだからね?」

麗華はくびれたウエストに手を当てて、もう一方の手の人差し指を哲司の鼻の頭に突き付ける、いつものスタイルになって念を押すように言う。

「わかっとるって、まあやっと探偵らしい仕事を俺にも任せてくれそうなんや。あとで飲みながら麗華にも話すわ」

携帯をポケットにおさめた哲司はそう言うと、トラックに乗り込み麗華に向って「ほないくでー?」とエンジンキーをドルン!と回したのであった。

「もう!?ちょっと!急にエンジンかけないでよ!排気ガスもろに浴びちゃったじゃない!」

「す、すまん!」

「ったく。信じらんない!」

浴びた排気ガスを手で払い、麗華はゴホゴホと咳ばらいをしながらブツブツと悪態をつく。

久しぶりの再会した二人は、学生時代となんら変わらぬ微笑ましいやり取りをしながら仲良く車を八王子方面へと走らせたのであった。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 7話 【回想】豊島哲司と寺野麗華終わり】8話へ続く

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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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