11時までに大正温泉に出す見積書の
作成を佐川鋼管工事のわがまま王子
こと稲垣君に指示を受けた私。
もう少し言い方ってものがあるでしょう!
と稲垣君の隣に位置する自分のデスクで
脚を組みながら上に組んでいる方の右足を
ブランブランと振りながら貧乏ゆすりを
するようにイラつきを隠せずに居ると後ろから
「かなりご立腹ね、中村ちゃん」
と私とプリンスの先程のやり取りを見ていたのか
山木由紀子が気をつかい声を掛けに来る。
「あっ山木さん・・・見た?あの態度・・・・」
とお互い小声で話し
「バッチリ見ていたわよ」
と苦笑いの山木由紀子。
「はぁ~あさイチからやる気
ゼロモード突入~」
「あはははっ・・
ドンマイッ」
と山木由紀子が去って行った後
私はプリンス稲垣に言われた大正温泉の
見積書の作成に取り掛かった。
稲垣君の見積書の作成は2種類必要になる。
稲垣君に付く歩合も考えて作る必要があり
彼に5%の歩合を乗せた見積書に
3%の歩合を乗せた見積書。
5%で商談が押し切れない場合に
彼は事務所に連絡してきて3%の方を
少し時間を置いてからFAxさせるという手法
を取る為2種類作っておく。
私はイライラしながら息子の光が習っている
剣道の事や学校の事などを考えながら
この6か月の勤務により少し慣れてきた
作業を続ける。
何とか11時までには間に合いそうで
10時30分くらいには出来上がった。
そして昨日からの仕事で稲垣君の
来週の新規訪問リストの作成に入る。
しばらくしているとプリンスが私の隣の
彼の席に帰って来て一言・・・
「中村さんっできた?」
「はい。
こちらが3%の分で
こちらが5%の分です」
と私は2枚の見積書を
渡す。
数字に間違いはない。
作成内容も完璧。
「うん・・・
いつも言ってるけど俺に渡すときは
5%が上!
何度言ったら分かるんだよっ?
次から頼むよ!」
「(イライライライラッ)・・・・
はい。すみませんでした・・・・」
「じゃあ俺もうすぐしたら出るから
この営業報告書1枚は本部長に
1枚は常務の部屋に持って行っておいて!
それくらいはできるでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・
はい。渡しておきます・・・」
と私が言う前に既に立ち去って行く王子。
あ~腹立つっ!腹立つっ!
もう~!何なの?あの態度!?
5歳も年下のくせに~!
しかも見積書同じ案件で2枚も作らせてるの
アンタだけなんだからっ!
どっちが上でどっちが下でもその場で入れ替えたら
結果は同じじゃないのよっ!
私はさらにストレスのゲージが上がるが
稲垣君に言われた営業報告書を同室の
最奥にある本部長の今西さんの所に持って行く。
「本部長。稲垣さんの営業報告書です。」
本部長はモニターを見ていた視線を私に
向け
「ああ。中村さん。
ありがとうね。
それといつも稲垣君の
世話もすまんね~」
と謝辞の部分までは通常のトーンで
その後の事はかなりトーンを落とし続けた。
「いえいえっ
稲垣さん私の主人と同じ年ですし
5歳も年下ですと少々の事は気に
なりませんので」
と笑顔で応えて
「そうか~
中村さんのような
しっかり者の経験豊富な
子が入って来てくれて
本当に助かっているよ~
彼(稲垣)は一応ウチのトップ
セールスだからと甘やかしすぎた
私も責任を感じていてね~
また何かあったら私に言ってくれれば
良いから」
と本部長も笑顔で応えてくれる。
私は
「はいありがとうございます。
常務の所にも行きますので失礼します」
とお辞儀をして立ち去った。
本部長本当に優しくて良い人
なんだけどな~温厚だし・・・・
でも本部長にプリンスの相談しても
何にも解決しないのは解っていた。
それに本部長ご自身が解っている通り
稲垣君を甘やかしあのようにしたのも
他ならぬ本部長自身なのだから。
そう考えれば苦言の1つも言いたい所だが
私は八方美人の性格の自分を恨めしく思う。
過去にスナック勤務や派遣社員としての
職歴があるせいか周りの人間と上手く付き合って
いくスキルは自然と身に付いた。
言ってどうなるものでもない事は言わない方が
身の為だ。
そういう風にこの社会に習ってきたのだ。
本部長に相談して何とかなるなら私の
前任者達が次から次へと辞める様な事にも
なって居なかったはずだし・・・
そう思いながら階段を上り4階へ行く。
一番奥から社長の部屋、専務の部屋
そして私が用がある常務の部屋がある。
私は常務の部屋のドアをノックする。
コンコン
「はいは~い。
どちらさんかな~?」
「営業部稲垣の補助の中村です。」
「中村ちゃ~んっ
待っていたよ~どうぞ~!」
いつもこんな感じで明るく
私や他の事務スタッフの時も
同じように
迎えてくれるのは錦常務。
凄く気さくで稲垣君とは正反対の性格なのだが
この人はわが社のセクハラ大王で錦常務に触られた
事が無い女子社員は居ないと言っていいくらいだが
誰もセクハラと訴える事もなく、本気で腹も立たないから
不思議と思う。
もう御年54歳になるらしいがその少年のように
輝かせた目と誰にでも分け隔てなく接する明るい
性格。
そして常務取締役であるのに全然偉そうにしない
器の大きさから本当に
【許される性格】
だと思う。
私はドアを開け
「失礼しますっ」
と部屋に入ると錦常務は嬉しそうに
商談用の向かい合い置いてあるソファの
所まで出て来て座る。
「中村ちゃんが来てくれるだけで
僕は今日出社してきた甲斐があると
いうものだよ~」
「ははっ
もうっ錦常務は
他の社員にもそうおっしゃってるんでしょ~」
私も笑顔で応えながらソファの対面には
座らずに常務の脇にしゃがみ営業報告書を
テーブルに置く。
「こちらが稲垣さんの営業報告書です。」
常務は営業報告書を見ずに
「ありがとう~中村ちゃんっ」
としゃがんでいる私のヒップに
手を伸ばす。
「だって仕方ないじゃない~
僕はどの女の子の社員の子が
部屋に来てくれても嬉しいんだもの~
今日もまた良いお尻だよ~
中村ちゃんっ」
初めての時は驚きもしたが
もう常務のセクハラにも慣れていて
本当に何故か嫌悪感は感じない。
それは他の女子社員も同じみたいで
何故かこんなことをするのに錦常務は
男女問わず人気があったりする。
「常務~もうっ
私のお尻は良いですから~
稲垣さんの営業報告書一応
お渡しいたしましたからね」
「そんな寂しい事言わないでよ~
お~中村ちゃん~またお尻大きくなったかな?
良いね~木下ちゃんのプリッとした感じの
お尻も良いけど中村ちゃんのはまた一段とこう
手に感じる重みがズッシリと・・・・
おっそれに今日の服装はまた中村ちゃんのキュート
さをより一層際立たせるね~
それはきっと僕の為に着てくれたんだね~」
「あ~ひどいです~確かに絶賛成長中ですがぁ
私のお尻批評は勘弁してくださいよ~
それに木下さんと比べられたら私のお尻が
可哀想です~
彼女スタイル良いですし
私はもう年ですしかなり崩れてきていますし~
あっこの服少し若作りし過ぎじゃないですか?
先週向かいのモールで買ったのですがぁ・・・
常務だけですよ~褒めて下さるのっ
だから常務の為に着てきました~」
とやっと私のヒップを撫でていた手が離れ
今は私の肩に常務の手がある。
「いやいや。木下ちゃんも中村ちゃんも
僕はみんなのお尻が好きなんだよ~
皆それぞれに良いからね~
若作りなんて十分若いじゃないか~
そんな事気にせずにまた僕のために
ドンドンセクシーな服で出社して良い
からねっ」
「ははっ
これくらいが限界ですよ~
でもありがとうございます。
それでは失礼致します。
ちゃんと報告書目を通しておいて
くださいね~」
とお辞儀をし笑顔で退室しようと
すると常務が
「え~もう行っちゃうの~
ゆっくり2人で楽しみたかったな~
中村ちゃんまた来てね~」
と本当に悲しそうな常務に私は
「それはまたの機会にお願いします~」
と言い退室する。
寂しそうに手を振っている常務。
たまに54歳のこの人が自分の
子供の様に思えてくることがあるが
私もまだお目にかかった事はないが
常務の営業力は本当に凄かったらしく
今でも稲垣君以上だろうとは陰での
先輩社員方の噂である。
丁度常務の部屋を出ると昼休憩を告げる
チャイムが鳴り私はいつもの3人で昼食を取る。
私達は佐川鋼管工事の丁度向かい側にある大型モールの
2階にあるフードコーナーで食事をしていた。
山木由紀子と木下晴美と私で今日も食事をするが
今日は2人には私の稲垣君に対するストレスの発散
のはけ口になってもらっていた。
そして今日も常務は絶好調であった事を話すが
これは私も不思議とストレスにもならないので
先程の稲垣君の話をするときよりも笑顔になり
まるで自分の子供の話をするような表情で話していた。
「今日の中村さんの服装なら常務喜んだでしょ~?」
と木下晴美がからかうように
「うん。
自分の為に着てきてくれたって
言ってたよ」
私も笑いながら応え
「私もこの間ミニ丈の
タイトで出社した時は
常務喜んでいたよ
しかもお尻スカートの中に
手を入れてパンストと
下着の上から
触られた
中村ちゃんはどうだった?」
とは山木由紀子。
「え~そうなの!?
私は今日はワンピースの上から
だったよ~
後半は撫で撫でではなく
むぎゅむぎゅだったけど」
と言い私も笑う。
「そのうち触られるって」
と山木由紀子も笑いながら。
「でも私たまに常務に
触られてると感じちゃう時
あるんだけど中村さんや
山木さんはそんな事ない~?
何かパンツの時とか際どい所に
手が来るし常務って絶体エッチ
上手だよ~きっと~」
と木下晴美がいつも通りだが
結構爆弾発言に過激な事まで言う。
「私はお尻じゃなく胸触られた時は
少し感じたかも・・・
確かに旦那の触り方より上手いしね・・・」
と山木由紀子まで普通に話している。
「え~そうなの?
2人共っ」
さすがに社歴の浅い私は
今の所本当にそういった
事が無く話しについていけずに。
「え~中村さんは無い~?」
「中村ちゃんは旦那に満たされているからよっ
木下ちゃん」
と木下晴美に山木由紀子が続く。
「無いよ~
ってそんな事ないって~山木さんっ
最近はめっきりだよ~うちも~」
「あはははっ冗談よっ中村ちゃん
あっでもそのうち直接アソコ触られるかもっ」
「え~!さすがにそれは
NGでしょ~!」
「うそうそっ」
といつもより少し
過激なレディーストークになったが
普段の食事も似たような感じで楽しんでいる。
今日2人に聞いた事を食事が終わり席に着き
午後の業務で先日稲垣君が契約して来たガス工事
の工事部へ出す依頼書の作成に取り掛かりながら
考えていたら常務は触り方が上手だからみんな怒らない
のかな?
でも私もそこまで感じるほどの事は無かったし不感症
なの?
それでもそこまで嫌な気持ちにはならないのよね~
不思議な人だなあ常務は・・・
と思いながら作業を進めて行った。
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