私は稲垣君の取ってきた工事依頼の
依頼書の作成を終え1階にある
工事部へ工事の依頼をかけに行く為に
階段を降りていた。
今所属する営業の殆どがこの工事依頼は
依頼書は営業補助が作成するが依頼は
自分でかけにいくのがウチの会社の通例
であるのだが・・・
何故工事依頼まで私が足を運んでいるかと言うと
今から私が会いに行く田尾さんと私の担当営業の
稲垣君は反りが合わないらしく稲垣君に唯一と言って
良いくらいはっきり彼の欠点を指摘するのも田尾さん
でそんな田尾さんに会いたくない稲垣君は工事依頼も
私に任せていた。
その田尾さんだが、今工事部の責任者の伊達部長が
身体を壊し長期入院中の為、工事部歴が長い田尾さん
が代わりに指揮を取り現場へ行かずに、工事依頼を受けたり
現場からの電話に指示出しをしたり対処していた。
田尾さんは稲垣君と反りが合わないだけあって私とは反りが合う。
山木由紀子や木下晴美以外では唯一私の愚痴を聞いてくれる人
でもあった。
見た目は大柄で熊のような容姿で見ようによっては怖い系の
職業の方にも見えない事はないが田尾さんの性格や人柄を知れば
その容姿も男らしいと形容できると思う。
そんな田尾さんに稲垣君の契約して来た工事の依頼をする
為に私は1階の工事部に足を踏み入れた。
今工事部は皆出払っていて田尾さん1人であった。
「失礼しま~すっ
あっ田尾さん~今お時間大丈夫ですか~?」
と私はいつも通り工事部に来た時は
ストレスも感じないので明るく声をかける。
「あっ中村さん~
中村さんが来たら
忙しくても忙しくなくなるよ~
俺はっ!
ははははっ」
「ははっ
ありがとうございます~
今日も1件お願いしたい
案件がありまして~
依頼書をと・・」
田尾さんは自分のデスクの横に
パイプ椅子を用意してくれて
私はそのパイプ椅子に
「ありがとうございます」
と腰を下ろす。
「あっ中村さん今日ミニじゃないですか~」
「ははっ
どうですか?
年甲斐も無く頑張ってみました」
と少し恥ずかしそうに私は
新しく買ったミニ丈のワンピースに
スポットが当たり嬉しくて
「いつも色っぽいけど
その服は反則ですよ~
めちゃくちゃ色っぽいですよ~
でも俺はもう少し短くても
歓迎しますよ~
ははははっ」
「え~
そんなに色っぽいですか~?
えっ無理無理この丈が限界ですよっ
それでなくても今私犯罪レベルで下半身
のお肉増殖中ですからっ」
「いやいやっ
そこが色っぽいんですって~
でもお肉増殖中って
中村さんストレス太りちゃいますか?
あの稲垣のクソガキにまた無理難題
押し付けられてんちゃいます?」
「ええ・・・・
実はぁ・・
って工事部門に
依頼かけるのも本当は
営業の仕事ですよね~?
クライアントと直接話して
いない私が来るのもおかしく
ありません?」
と田尾さんの前ではいつも
リラックスできる私はパイプ椅子に
深く腰かけ足を組みながら話す。
「それは本当にそうやよ~
でも俺は稲垣が来るより
中村さんが来てくれた方が
嬉しいけどな~」
「え~そういう問題じゃ
無いじゃないですか~」
と少しふくれ気味の表情を
見せるも私も実は稲垣君に
対する愚痴を聞いてくれたり
依頼書のミスを田尾さんが指摘
してくれこの場で修正し無かった
事にしてくれるのが非常に有り難かった。
もし私が作成した依頼書を稲垣君が
工事部へ持って行きそこで依頼書に
ミスがあったら後で何を言われるか
解ったものでもなくこうしてここに居るのは
私的には助かっているのだ。
「うんうん。
しかしあの稲垣のクソガキ今回も
また大きな工事取ってきたな~
あいつ性格はクソやけど営業は
やっぱり凄いな・・・・
うんうん・・・
あれ?
中村さんここ?」
と私が作成した依頼書に目を通しながら
田尾さんが止まった。
「えっ?何処かおかしい所ありました?」
と私が少し肩をすくめ舌を出しながら
おどけた表情で
「ほら?この内容だと・・・・
こっちでしょ?
マークする所間違ってる
訂正しておくわな」
「あ~!本当だっ!
いつもすみません~
例のごとく・・・・
彼には内緒でお願いします~」
と田尾さんが稲垣君に報告する事は
無いのだが一応念のために丁寧に
膝に手を揃え頭を下げる。
同じ頭を下げるにしても5歳も年下の
わがまま王子の稲垣君に頭を下げるのと
同じ5歳でも5歳年上の男らしい田尾さん
に頭を下げるのではストレスの溜まり方が
全く違う。
田尾さんには素直に謝れるしストレスも溜まらない。
「やった~これでまた中村さん
1発貸しなっ」
「あ~!はいぃぃぃ・・・
ではまた付けでお願いします~」
「もうこれでえ~と・・8発目やよ中村さん」
と大笑いする田尾さん。
これはいつも私が田尾さんに仕事のミス
を発見してもらいフォローして貰った時に
最初に田尾さんがエッチ1発貸しなっ
と言った事から始まり今日の工事依頼書の
作成ミスで8回分借りたことになった。
勿論お互い冗談で言い合っている。
「はぁぁぁぁ・・・・
そんなに田尾さんに助けて
頂いてるんだ私・・・
ダメだな~
今日はイライラしながら作ったから
余計ミスしてしまったんだなぁ・・・」
パイプ椅子でうなだれながら少し落ち込む私。
「気にしない気にしないっ!
まあ俺は中村さんとそのおかげで
8回もエッチできるんやからラッキー
やけどなっははははっ
あっ中村さん1回払いで分割は無しやでっ」
「え~っ1回払いって~
そんなの死んじゃいますよ~」
と田尾さんの冗談に乗るのは
お礼の意味も込めてで。
「大丈夫大丈夫っ
中村さんの色っぽい体あったら
俺瞬殺されるから1回がめちゃくちゃ
早いって」
「え~それはそれで
ざんねんかも~」
とこんな風にいつも笑いながら田尾さんに
愚痴などを聞いて貰いながら私のストレスは
プラスマイナスを繰り返す。
そして今日も何とか無事業務を終え帰宅し
母が学童に迎えに行ってくれて実家で夕飯まで
済ましてくれている息子の光を迎えに行き
主人の帰りを待つ。
遠方に勤務地が変わった主人を
起きて待っている事ができない
光は主人が帰宅するまでに寝てしまう。
そして帰宅した主人に今日も仕事の
事や同僚の事をマシンガンのように
話終えた後私はいつものように眠りに
つくために布団に入る。
お風呂から上がった主人がじゃれてくるが
そういう気にはなれずに上手くごまかすと
主人はそのまま背中を向けて寝てしまった。
私はもう1度お手洗いに行ってから寝ようと
思い身体を返し目覚ましのタイマーを
確認する為に寝所の頭の上に置いた
スマホを見てみると
LINEが1件入っていた。
誰だろう?と送り主を確認すると
【熊五郎】
あっ田尾さんから・・・
私はお手洗いにスマホを
持って行きお手洗いの中で
LINEを確認してみる。
【熊五郎:中村さんお疲れさま~
最近かなりストレス溜まってそうやね~(笑)
もし良かったら明日仕事終わってから食事でも
どう?会社の中じゃ愚痴れん内容もいっぱい
あるやろ?
良かったら聞くし~
あっこれは貸し1発には含まれんよ(笑)】
田尾さんからLINEが来たのは初めてで
LINE交換したのはかなり以前だったけど
主に会社の人でLINEをするのは山木由紀子と
木下晴美くらいだった。
仕方なしに稲垣君ともLINE交換はしていたが
こちらからする事など絶対ないし案の定稲垣君から
私にLINEで何かを言ってくることも無かった。
今の会社は飲み会などもそこそこあり稲垣君を含む
同部署のメンバーほぼ全員参加で個人的にも山木由紀子と
木下晴美の3人で飲みに行ったり食事に言ったりはしていた。
明日は金曜日かぁ・・・
弘樹君のシフトは確か金土が休みで光が学校終わったら
実家に顔出して泊まってくるってさっき言ってたよね。
だったら明日は大丈夫か。
田尾さんだったら何話しても黙っていてくれそうだし・・・
うん行きたいかもっ!
私はこの溜まりに溜まったストレスの大きなはけ口が
もう1つ見つかった喜びにすぐさま返信していた。
【美香子:田尾さん返信遅くなってしまい
すみません。お風呂に入っていて気づきませんでした。
お食事のお誘いありがとうございます。
運の良い事に明日は家族の心配もせずに
お付き合いさせて頂ける日でしたので是非
私の愚痴を聞いて下さい(笑)】
するとすぐに返信がきて
【熊五郎:おっ起きていて良かった~
しかし俺もラッキーでしたね~運良く
中村さんが行ける日に誘ったみたいで。
それでは今日は遅いから場所や時間は
また明日会社でLINEで連絡するわ~
PS:明日は念願の中村さんとの
デートだから今日よりミニで来てな~】
え~今解りましたと返信しようと思ったら
こんな追伸・・
と追伸を見ながら苦笑いの私。
う~ん・・
あるにはあるけど・・・・
サイズがね~入るかな~
タイトタイプのミニやもう少し短い
ワンピースなどもあるが実は去年の
物でサイズがキツイのが不安だった。
しかもこの年になりそこまでの露出も
恥ずかしかったが、薄地のレギンスで
ごまかすかな?
と思い
【解りました。
それではまた明日~
おやすみなさいませ~
PS:服装の件努力しますが
サイズがキツイ場合はお許し
下さい^^;】
と返信しお手洗いを出た。
布団に戻ると弘樹君の小さないびきが
聞こえて来て私も布団にもぐりこみ眠りについた。
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