私は建物に入ると怪しげな通路を通り
エレベータの前まで来た。
通路にはマネキンのような人形を鎖で
繋いだり縄で絞め吊るしたりしている
ようなオブジェが飾られてあり
稲垣が私にこのような事をしようと
しているのかと考えると気分が悪く
なってくる。
エレベータの扉が開き中に
乗るとエレベータの床の部分と
天井の部分が鏡と言う何とも
趣味の悪いエレベーターだった。
私はメモにかかれていた806号室
に行く為に8階を押す。
謝罪をしなくてはいけないストレスからか
このような異質な建物空間に初めて足を
踏み入れた非現実的な行動からか私の
心拍数はここに来てから上がりっぱなしで
手に汗が滲むのを感じる。
うつむいてみると今日の膝より少し
上の丈くらいの白のフレアスカートの
中が移り私が今日履いていた赤に黒の
柄物のショーツが映る。
上はクリーム色の半そでのブラウスで
これと同じ服装で以前出勤した時は
田尾さんに清楚な感じで色気もあり最高と
褒められたのを思い出していた。
浮かれすぎたんだ・・・
仕事面においても・・・
田尾さんとの事にしても・・・
私は普通の38歳の子持ちの既婚OL
なのだ。
全てを普通にしていたら
このような事にならなかったのかも。
主人の弘樹君のSEXの誘いには
理由をつけて最近は断っていた。
マンネリ化していて逝けないから
したくないというのもあった。
私は主人と結婚する前に何人か付き合っていた人も
居たしワンナイトの経験もあったので逝く事も
逝けない事もあったが結婚して出産して
同じ相手とずっととなるとさすがにマンネリ化
してくる。
弘樹君が悪いのじゃない事も解っていた。
セックスレスにしたのは私の方からで
私に原因があった。
しかし新しい職場の新鮮さ職場に慣れて
来て職場の人々との出会いの新鮮さ
その新鮮さや私をまだ女性として
新鮮な目で見てくれる男性の視線を
感じ私は家庭外で居る時しか女性では
なかったのかも知れない。
そして私の女性の部分を刺激
し続けてくれた田尾さんと一夜限りの
情事を交わした。
正直今までのSEXで1番気持ち良かったし
1番逝かされた。
1日にあんなに逝けるものなのかと
思うほどに・・・
そして私は私と主人の弘樹君がいつも
寝ている寝室でも田尾さんに抱かれた。
いつもの寝室いつもの布団。
しかし隣に居る人が変わるだけで
こんなにも違うものなのだと思った。
弘樹君が好きじゃないわけではない。
田尾さんを好きなのかと聞かれても
微妙だ。
しかし男性として私の女性の部分を
満たしてくれるのは圧倒的に
田尾さんだった。
そんな先週の事を考えながら鏡に映る
私の白のフレアスカートの中の赤の
ショーツを眺めながら田尾さんとの
事を思い出し股間が熱くなり、その
1週間後にまた今度は全く別の理由で
別の相手にこのような所に呼び出されて
いる自分の愚かさに主人の弘樹君にも
罪悪感を感じている。
弘樹君ごめんね・・・
先週は私が悪いの・・・
自主的に田尾さんに抱かれたわ・・・
今日は違うから・・・
稲垣がもし土下座以上に何か
しようとしてきても断るわ。
断れるの?
首になるわよ・・・
その結論は8階にエレベーターが到着した
今でもまだ出ない。
エレベーターが8階に到着して
私は806号室の前に行き
扉をノックする。
コンコン・・・
ノックすると扉が勝手に
開いた。
中から稲垣が開けたのだ。
「さあ。
入ってっ!」
いきなりの不遜な態度に私は
イラッとしたが無言で入り
部屋の入口付近に立ち尽くす。
それ以上中へ歩が進まなかったのは
稲垣と同じ空間に居たくないと
言う事もあったが、部屋がスマホの
画像で見た以上に想像を絶する
部屋であったからだ。
床に天井、おまけに壁の一部分が
鏡張り。
そして人を拷問するの?
と思えるような
ペケ字に磔にするような器具や
処刑をするようなギロチン台の
ようなものまである。
そして檻のような鉄格子の
中には四方から鎖が伸びている
ベッドがあった。
私は頭がクラクラしてくるような
思いで部屋を眺めまず足を閉じた。
「さあ。
中村さん。
君の謝罪を受ける前に
少し話をしようと
思ってね。
そこにかければ?」
稲垣はガラス張りの床を歩いて
行きテーブルの前に位置するソファに
座る。
ソファは1つしかないので私に
隣に座れと言う事なのだろう。
私はバッグを膝の前で持ちながら
ゆっくりと歩を進め稲垣が座る
ソファの左端一杯の所に軽く腰を
かけた。
「嫌われてるね~僕。
当たり前か?
しかしそこまで離れて
座られるともう開き
直れるねっ
中村さん念の為に聞くけど
今日はここに何しに来たの?」
自分から謝罪に来いと言って
おいて何!?
この言いぐさ・・・
イラッとしたが事態を悪化させに
来た訳でもないので仕方なく
屈辱ではあるがここは私が素直に
なるしかないので
「見積書の件で・・・
稲垣さんにご迷惑をかけましたので
謝罪をしに来たのですが・・・」
と
もしかしたら声が悔しさで震えて
いたかもしれないが何とかこれ以上
彼の気分を害さないように出来る限り
印象を悪くしないよう応えた。
「そう?
そんなに契約更新してもらえ
ないと困るの?
中村さんなら他にすぐに
仕事見つけれそうだから
正直来ないと思っていた
けどLINEが来た時は
驚いたよっ
ドットクラブで待つていうのも
冗談だったんだけどね。
僕はもう何されても許す気
無かったからね。
本当は。
だから腹いせにこんな
SMチックなホテルで
中村さんをお仕置きできたら
気が晴れるだろうなって
思って言ってみただけなんだけど
まさか本当に来るとはね?
中村さんって実はM?
そんなわけないか?
見た目はどう見てもSっぽいしね」
はぁ?
冗談で・・・
だったら最初から
言わないでよっ!
ってこれじゃぁ・・・
彼のペースだわ・・・
冗談でも何でも来てしまった
んだしここでキレたら負け・・・
何とかして契約を切られないように
もっていかないと・・・
しかも・・・私がM!?
ふざけんじゃないわよっ
こんな男相手にMになんか
なるわけないじゃいのよっ!
このナルシストがっ!
私は稲垣の言動に屈辱と怒りで
手や肩が震え出してきていたが
何とか堪えながら
「謝罪しに来ただけですよ・・・
冗談だったのですか?
謝罪したら契約社員の更新
の件も考えてくれるて
おっしゃってたじゃないですか!?」
「うん。
考えるよ。
でも中村さんの
いつも通りの謝り方じゃ
余計に僕の怒りに火を
つけるだけだからね。
そうだね・・・・
中村さんの1番屈辱的な
謝り方をまずは・・
見せてもらおうかな?
まずはそこからだよ。
それで考えるかどうかも
決めるよ。
何せ今日僕は君のせいで
クライアント先でかなりの
屈辱を味わったわけだからね。
君の変わりにクライアントに
どれだけ頭を下げたか・・・
それ以上の屈辱感をまずは
君が味わった後で今までの
君の僕に対しての非礼についても
話しあっていこうか?」
1番屈辱的な謝り方・・・
ようは土下座ね・・・
絶体に嫌だったけど・・・
ここには誰も居ないし
私が土下座しても稲垣は
私をこのような所へ
呼び出したなど誰にも
言うはずはないし・・・
「解りました・・・
約束ですよ。
謝りますから
契約の件は本当に
考え直してくださいね。」
「考える考えるっ
考えるくらいはするよ」
何か本当にこのまま
土下座してしまって
良いのだろうか・・・
もし謝罪しても稲垣が許さなければ
そうも思ったがそもそも何も
せずにこのまま帰ればただ喧嘩をしに
来て火に油を注ぎに来た事になる。
それこそ最初から来なければ良かった
わけで・・・
私はソファから腰を上げ
立ち上がると稲垣も立ち上がる。
「中村さん?
中村さんの1番屈辱な
謝罪方法ってやっぱり
土下座?」
そう言いながらソファから
立ち上がり部屋の少し奥に歩いて
行く稲垣。
確かにここではテーブルが邪魔で
土下座する事すらできないが・・・
「ええ。
そのつもりですが・・・」
「そう?
それなら土下座なら
ここでね?
ここならある程度屈辱感は
味わえると思うから。
嫌なら帰って良いから・・・」
稲垣は人を処刑するような
ギロチン台の前に立ち
そこで私に土下座せよと
そう言っている。
この・・・男は・・・
全く何て悪趣味な・・・
あのような台に
私を四つん這いに
なり首を拘束する気?
確かにこれ以上は
無いと思える屈辱的な
恰好である。
私は稲垣の立つギロチン台の
方へ少しづつ歩いて行きながら
今にも噴き出しそうな怒りを
抑えるのに必死であった。
「おっ?
おっ?
中村さんやる気!?
本気でこんなところで
四つん這いになるの?」
「そうしないとっ・・・
契約切る気なのでしょ!」
ついに私は今まで我慢していたが
口調を荒げてしまった。
「あ~あ~
中村さん君ね~
自分の立場解ってるの?
僕は前から君のその
僕に対する口の利き方が
本当に勘に触ってたんだよ。」
私もよっ!お互いさまでしょっ!
と言いたいが私はついに
やってしまったっ!
と思いつい口から出た言葉に
後悔していた。
「・・・・・
ちゃんと・・・
ちゃんとそこで
土下座しますから・・・
本当に契約の事は・・・」
「まあ。
今の発言でかなり
僕の気分は害したからね。
それだけでは僕の気が
収まるかどうかは
解らないがやるなら
とりあえずやってみれば?
もうこのまま帰ってくれても
良いくらいだけどね・・・」
稲垣の態度は先程にもまして
さらにイラつく態度に口調に
変わるがとりあえず今収入を絶たれたら
主人の収入だけではたちどころに今の
生活レベルが脅かされてしまう。
それは避けなければならない。
何処で土下座しようが土下座は
土下座だと思いもう開き直り
彼の言葉には一々反応する事を
止め私はギロチン台の首を
置く場所に頭を近づけ四つん這いの
ような態勢を取ろうと両手を
稲垣が立つギロチン台の頭の
部分の前に置いた。
《第5章 悲報 第17話 屈辱。屈辱。屈辱 中村美香子 終わり》
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