第10章 賞金を賭けられた美女たち 29話 まあまあの女
まっすぐと男の目を見ることができない。
それどころか目を開けてすらいられない。
目を開けるのが怖いのだ。
こんなことは初めてであった。
アーマースーツ越しに柔らかな絨毯な感触が背中に伝わってくるも、自分の汗が冷えて、不快感しか感じない。
目を開くと自身が展開している能力で先が見えてしまう。
自分にとって都合のいい未来が見えるかもしれないが、今の状況だとその可能性は低い。
だからこそ、真理は目を開くことができずにいるのだ。
真理は、能力ではなく想像で、蜘蛛の毒で干乾びて死ぬ自分を思い浮かべてしまい、慌ててそれを振り払い、更にぎゅっと目を閉じる。
【未来予知】を解除すればいいのだが、いま身体の自由を奪っている忍者男の感覚は鋭敏である。
真理の肩口は忍者男の膝で抑えられ、その指は首にあてがわれている。
生身で触れられているため、些細な動きも、僅かなオーラの流動ですら忍者男に察知されてしまうかもしれない。
(いま能力を解除したり、防御しようとオーラを動かせば敵対行動だと判断されるかもしれないわ)
真理は今、仰向けで目を瞑り、両腕をできるだけ広く開いて、手のひらは抵抗の意思がないことを示すため開いて見せている。
そして敵である男の身体の下で、自らの呼吸をできるだけ整えようと、意識するでもなくアーマースーツの胸部分を緩やかに上下させ、ふくよかな胸をアピールしてしまっていた。
そうしている時間が長く経過したように真理は感じていたが、実際は数秒である。
真理は先ほど降参の意思を伝えた。
今も抑えつけられた恰好ながらも、忍者男に対して、可能な限り抵抗の意思がないことを見せている。
忍者男の判断を待つ以外にないのだ。
できるだけゆっくりと息を吐き呼吸を整えようとするも、緊張から心臓は早鐘のように速い。
おそらく、忍者男には脈の速さも知られてしまっているだろう。
無抵抗の意思を示した真理に、もはやこれ以上できることはない。
しかし、真理は目を閉じているとはいえ忍者男の殺気が些かも小さくなっていないことを感じ取っていた。
その殺気が衰える様子はなさそうである。
真理は、強張り僅かに震えていた全身から力が抜けていくのを感じた。
(・・・おわり・・かしら。・・・あっけないものね。こういうときって)
真理の気持ちは妙に落ち着いてきたのだ。
真理はこれが諦めの心境なのかと思い至る。
真理は目を閉じたままであったが、これから起こりうることを受け入れようと、普段の菩薩の微笑になった。
(・・・最後だって言うのに走馬燈っていうのもないし、気の利いたセリフって思い浮かばないものね。・・・やるならはやくやってよ。こんな変な恰好した人に殺されるなんてね・・・。私としたことが・・ツイてないわ)
普段の真理らしく、菩薩の表情のまま、心中で毒舌を吐く。
その時、忍者男の懐から僅かだがメロディがこぼれだした。
能力者でないと聞き取れないほどの音量。
時代劇のテーマソングである。
その場違いなメロディにつられ真理はとっさに目を開けてしまう。
想像していた死の色。
赤色の世界か広がっていると思い、とっさに目を閉じようとしてしまいかけたが、眼前に広がる色は違っていた。
目の前では、軽くため息をついて、殺気のなくなった忍者男の姿が、さっきと変わらぬ姿でそこにある。
だが、殺気が無いにしても真理を拘束している忍者男の手からは力が抜けていない。
ただ、すでに忍者男の気配に殺気はなくなっているのは間違いない。
何故なら、真理の【未来予知】による死の色が消え去っていたのである。
「殺さない・・?なぜ・・?どうしたの?」
一気に安堵した真理は、目の前の忍者男にすら聞き取れないかもしれない小声で、独白ともとれるように問いかけた。
「仕事は終わりや。聞こえたやろ?今のは契約期間が終わったのを知らせるアラームやねん」
忍者男はそう言うと、真理から奪ったアトマイザーを二つともを、真理の手の届かない絨毯へと転がして答えた。
忍者男のそのセリフで、真理は先ほどかいていた汗とは別の種類の生暖かい汗がどっと全身から噴き出したの感じながら、大きく息を吐きだした。
「おわり・・なの?・・・おつかれさま。・・また今度何処かでかしら・・?」
真理はそう返し、忍者男が立ち上がってくれないかと様子を伺っていたが、忍者男は何故か真理の身体の上からどいてくれない。
「ど・・どうしたの?」
忍者男の様子を伺いながら問いかける。
忍者男は、仕事は終わったと言ったものの、いまだに真理の身体の上で、真理の自由を奪ったままなのだ。
「侵入者は始末するようにって言われてたんやが、あんたさっき言うたこと覚えてるか?助けてくれるんやったらなんでもする言うたな?」
忍者男はそう言って、真理を縛めたままである。
「そ、そうね。でも、もう仕事は終わったんでしょ?それに、私はまだ仕事中なの。そういうワケだから、そろそろどいてくれると嬉しいんだけど?」
訝しがりながらも真理は、忍者男の目を見ながら、菩薩の笑みをつくり慎重に問いかける。
「俺もあんたを殺すつもりで仕掛けたから、あんま言われへんのやけど、アンタもエグい毒物つこうて俺のこと殺そうとしたやろ?それにあんなこと言われたら、やらへん男なんておらへんと思わへんか?」
そう言うと忍者男は、頭巾の隙間から、真理の目を見つめてきた。
「え・・っと・・。でも、今私は仕事中だから、後日私を訪ねて来てくれないかしら・・?名乗ったでしょ?私、宮コーにいるわ」
「いや、待てへんな。嘘かもわからへんし、行っても罠があるかもしれん。それに、あんな怖い会社にそう何度もノコノコと出向くんは気が進まへんな」
「何度も・・?」
「あー・・・っと、この話は終わりや。結論。またへん。いまからや。OKやな?ていうてもアンタに拒否権はないんやけどな」
「ちょ・・ちょっと強引すぎない?」
真理は忍者男とのやり取りを交わしながら、油断なく【未来予知】を注視していた。
(危険はない・・。生命を脅かす色はない・・・。・・・でも・、こ・・これって・・この色は・・ほんとにやる気だわ・・・)
先ほど恐怖で飲み込んだ生唾とは違う意味合いで、真理はごくりと生唾を飲み込んだ。
死を意味する赤ではない。
致命傷などを負う可能性のある赤褐色でもない。
それよりも軽度の怪我を負う可能性のある黄褐でもない。
そのどの色とも違った色が視界に広がりだしたのだ。
(ほ・・ほんとに?ここで・・?・・ええええぇ!)
真理の心臓はドクンと跳ね上がり、下腹部の芯がきゅっと反応する。
女の部分を守るように膝と膝を合わせて足を動かしてしまう。
数秒先に起こることがわかってしまうがゆえに真理は、吐息を漏らさぬように下唇を噛んでしまった。
「んぅ・・」
しかし、完全には吐息を殺しきれていない。
自分が女の表情になってしまっているかもしれないと思ったが、漏れた吐息は女のそれであった。
(さっきは、蜘蛛の毒から逃れようと、とっさにそう言ったけど・・・この人・・本気で私のこと・・・あっ!)
忍者男の手がアーマースーツのファスナーを摘まむ。
「・・・わかったわ。抵抗しない・・・。でも私はまだ仕事があるの・・・。あまり時間はかからないのでお願いするわ・・」
出来るだけ平静を装いながらも覚悟を決めた真理だったが、その熱くなった声色は明らかに普段の真理の声色とは違っていた。
忍者男は殺気こそないものの、先ほどと同じ口調で答えた。
「さっきも言うたやろ?あんたは俺と対等に交渉できる立場やないねん。そやろ?」
ジィッ!
「っ・・!」
能力で、そうされることがわかっていても、声が出てしまう。
「ぅ・・」
これから何をされるのかが鮮明に頭に流れ込んでくるが故、声が漏れてしまう。
まずはファスナーが臍の下まで引き下げられ、汗にまみれた双丘がこぼれたのだ。
脈拍が再度上がり始め、真理は忍者男から目を逸らす。
(公麿ごめん!こ・・こんなっ!こんなことって・・)
真理は公麿に詫びずにはいられなかった。
真理は死ぬぐらいなら、それ以外の選択肢を迷いなく選ぶぐらいの合理的な考え方をする。
現に、さっきは死ぬのを回避できるなら、忍者男に貞操を奪われてもかまわないと思っていた。
犯されるのも覚悟していた。
しかしである。
真理が想像しているのとは、【未来予知】で伝えてくるイメージが違い過ぎるのだ。
それゆえに、真理は恋人である北王子公麿に謝ってしまったのである。
忍者男との戦闘では数秒先すらも覗かせてもらえなかったが、今はなぜか10分以上先も覗けてしまっていた。
(くっ・・こ・・こんなこと・・私が・・?)
未来を見てしまった真理の肌が粟立つ。
逸らせていた目を確かめるように忍者男に合わせる。
真理の目線からも、零れた白い双丘で尖った桃色の突起は、【未来予知】で見えているイメージをすでに期待し硬くなってしまっていた。
「お互いに少し楽しむだけや。あんたみたいなエリート女が、あんなセリフ言うたんや。男として据え膳喰わぬはなんとやらちゅうやろ?・・・妙な気起こすんやないで?出来たら仕事以外で殺しはしとうないんや。・・・あんたも期待しとるみたいやしな?」
忍者男はそう言って、真理の左の先端を摘まみ、やや強くひねったあと指で弾いた。
「んっ!」
不覚にも声をあげてしまう。
真理は【未来予知】を展開したままSEXをした経験はなかった。
10分ほど先の自分自身に起きる出来事に、半信半疑ながらも、いままで予知されてしまえば裏切られたことがないことを思い出す。
「・・・い、いいわ。それで命がたすかるのなら安いものだものね・・。でも、汚いのや痛いのとかキズが残るのはイヤよ・・?」
真理は覚悟をきめるも確認するようにそう言った。
「物分かりがようて助かるわ。日本に来て二人目や。初日の子は、二度とお目にかかれんぐらいの最っ高な上玉やったけど、あんたも・・まあまあってとこや。・・・幸先ええなあ。まぁ、あんたも妙な気起こせへんとおとなしいにしとったら、今までどんな男とのSEXよりも気持ちいい思いさせたるからな。またこれで、俺を思い出してオナる女が増えるんやと思うと、ええ気分や」
かなり失礼なことをしゃあしゃあという忍者男から殺気が消えたとはいえ、隙は無い。
ただ、真理はキレた。
(こ、このクソコスプレ野郎何言ってるのよ!わ、私がまあまあですってぇ!?・・・この私がまあまあですってええええ?!!このっ!こんなヤツが私をっ・・・!)
忍者男の戯言に対して、真理は心中で盛大に罵りだしたが、自分の能力の精度を、真理はよく知っている。
相手の力量によって、見通せる先は違ってくるが、予知できた範囲での結果は絶対なのだ。
(このクソコスプレ忍者男を振り払って逃げるのは・・無理だわ!。高嶺弥佳子がどれだけ持つかわからないけど・・・。この男の相手をこの身で・・受けなければ・・死ぬ。・・・でも、私のことをまあまあだだなんて評価する男に抱かれるのがこんなに屈辱だなんて・・・・!・・・それに、【未来予知】が伝えてくるイメージ・・・!わたし・・こんなヤツに・・・!!)
真理が頭の中で、高速で思いを馳せている間にも、忍者男に肩口のアーマースーツを掴まれ、一気に腰まで引きずり降ろされてしまった。
「きゃっ!」
「おっ、女らしい声出すやないかい。宮コーのエリートさん。秘書主任言うたら超エリートさんやなぁ?神田川真理さん?あんま好みやないんやけど、しっかり刻ましてもらうで?あんたもせっかくやし楽しんでや?」
(うっさい!なにほざいてるのよ!服脱がされて平然となんてしてられるわけないでしょ?!バッカじゃない?!何が好みじゃないよ!頭巾のせいで見えないけど、どうせあんたも大した顔じゃないんでしょうが!?顔に自信が無いんでしょ?!だからそんなコスプレして顔隠してるに違いないわ!このブ男!ブサイク!)
声に出さずに、真理は顔の見えない忍者男のことをブサイクと決めつけて罵りまくっていた。
しかし、手を出して抵抗すれば確実に死ぬことが【未来予知】で察知できてしまう。
そして、抵抗しなければ約7分後には、このクソコスプレ忍者ブサイク男に、今まで経験したことのない絶頂を味わされてしまうのが見えていた。
そして、その絶頂のあと能力で見通せる時間の限界まで続いているのだ。
(そんなぁ・・。な・・なんで私がこんな目に・・・!でも、さっさと終わらせないと張慈円と戦ってる高嶺弥佳子もやられちゃうかもしれないわ・・・。それにこんな姿誰にも見られたくない・・!・・こうなったら、このクソコスプレ忍者ブサイク男が早漏であることを祈るのみよ!)
そして何より、真理の脳裏には、先日愛し合い始めた恋人の顔が浮かぶ。
しかし、選択の余地はない。
腕力で抵抗すれば死ぬのがわかっているのだ。
(ここは・・恥を忍んで・・さっさと終わらせるべきだわ・・)
「ふっ」
真理がそう覚悟を決めた時、頭巾の中から失笑が聞こえた。
アーマースーツを掴んだ忍者男の手が真理のくびれた腰に達した時、真理はアーマースーツを忍者男が引きずり下ろしやすいように、腰を浮かせてたからであった。
さっさと忍者男の欲求を解消してやらないと、真理自身も仕事に戻れず、おそらくオーラを封じられたまま張慈円と戦っている高嶺弥佳子の援護に向かいたいがための行動であったのだが、その行為を忍者男に笑われてしまったのである。
(こ・・この野郎がっ!こっちの気も知らないでっ!)
「・・は、恥ずかしいわ・・。優しくして・・ね?」
女のいじらしい表情と仕草でそう言って見せるが、真理の心境はいまだかつてないほど、複雑な感情で焼かれ口汚く罵っていた。
しかし、抵抗すれば忍者男が自分を簡単に屠ることがわかっている。
【未来予知】で予知してしまった結果は絶対である。
そうならないように行動や言動を選び、回避するのが利口である。
真理が嫌悪している目の前の、クソコスプレ忍者ブサイク男に、いままで味わったことのないレベルでの絶頂が与えられることも確実なのがわかってしまっている。
死と今まで味わったことのない甘美な絶頂が与えられるSEXの両方が見えているが故の真理の思惑が行動に出た結果なのであるが、真理は今までに感じたことのない屈辱に焼かれていた。
真理は、羞恥と怒りで顔を真っ赤に染めていた。
「こんなに照れて可愛えなあ」
(死ね!)
真理の両手は、忍者男の手からは開放されているが、腕は開いたままで、手のひらも無抵抗を示すため開いたままであった。
(この私が・・・この私がこんな目に・・・!せめて私のことを絶世の美人だとか言えば、ほんの数ミクロンでもレイプされるのにも納得できたかもしれないのに!・・・まあまあですってぇ!?)
だが、怒りに任せて腕を振るえば、忍者男になんなく防がれ、反撃として激しく頬を殴打されるのが能力で伝わってくる。
(くっそ・・くっそくっそ!)
だから腕は動かせない。
腕を動かさずに忍者男に無抵抗を貫けば、はしたなくも甘く屈辱にまみれた甘美な絶頂が待っているのが見える。
(こんなヤツに・・!)
そして、その絶頂の先は、波が鎮まることなく延々と続いているのだ。
(・・・公麿・・ごめん。私が・・あなた以外の男とこんなことになるなんて・・)
公麿と出会うまでに、数多の男をつまみ食いしてきた真理をして、忍者男とのSEXは過去のすべてを上回っている。
まだ愛撫行為が始まったばかりだが、【未来予知】を持つ真理にはそれがもうわかってしまう。
(ご・・めん・・。公麿以外と・・もうするつもりなんてもうなかったのにっ・・!しかも・・こいつは私のこと好きでも何でもない・・・!そこそこの女だから一応抱いておくか・・ってぐらいの感情しか持ってないっ!)
既に足首からアーマースーツは引き抜かれ、全裸にされてしまっていた。
「んあっ!くっ・・あうっ!」
真理は、ついに忍者男の反り返った男根に貫かれたのだ。
「うっ!・・はぁ!」
それだけで、軽く絶頂に達し、顎をのけぞらせ軽く痙攣している姿を晒してしまう。
忍者男からまた失笑が漏れるのが聞える。
(く・・くやしい!こ・・こんなことが・・!こんな男ので・・こんなにすぐ果てるなんてっ!)
真理は羞恥で顔を逸らし、自分の異常な感じ方に狼狽したが、忍者男はそんな真理のことなどお構いなしに行為を進めてゆく。
膝を持ち上げられ、正常位の格好にさせらる。
「やっ!やだっ!・・んんっ・・ああっ・う!」
やや腰を持ち上げられ、陰核の裏当たりを膣内で擦りあげるような動きに真理は、耐えられず嬌声をあげてしまった。
当然今までより深いところを抉られる。
【未来予知】でどうなってしまうか、既にわかっているだけに真理は狼狽えずにはいられない。
「ああっ!だ、だめっ!」
自ら誘った相手や、恋人ではない相手とのSEX。
力の差を見せつけられ、意思とは反して相手の顔色を窺わねばならないSEXは、真理にとっては初めての経験である。
そして真理は、【未来予知】で見えてしまっている。
自分がよがり狂う未来を。
自分のことを大して好いてもない男に、いいように逝かされてしまう未来を。
しかし、すでに自分自身の身に起きることが確実な行為に、鼓動を弾ませ、期待し、今までに無いぐらいはしたなく蜜を溢れさせてしまってもいる。
(私が・・私は・・神田川真理・・なのよ!こんな目にあうなんて!何かの間違い・・でしょ?!)
「いやっ!いやっ!ああっ!・・だめっ!・・いっ・・いっくぅ!ああっ!だめぇ!!いやぁ!!」
十数回のピストンであっけなく深い絶頂に押し上げられた真理は、忍者男の背中に手をまわした。
もはや服従を示すために両腕を開いていることもできない。
押し上げられたあまりにもの絶頂の深さに、快感を与えてくれた男に反射的に抱き着いてしまったのだ。
「おお、おお、もう逝ったんかいな?だいぶたまってたみたいやなあ?宮コーのエリート主任さん?神田川真理さんやっけ?名前も覚えたで?自分はしたないなあ。今日であったばっかりの名前も知らん男にこんなに抱き着いてきて。よっぽど欲求不満やったんやなあ。どうせ彼氏もおらへんか。おっても大した男やないんやろ?さっきまで戦ってた相手に犯されてソッコー逝くぐらいやからなぁ?」
忍者男が煽るセリフに、真理は言い返したかったが、再び上り詰めらされそれどころではなくなっていた。
そして真理は自身の能力で見ている未来と、現実とが重なり二重に快楽を貪り始めた。
そのため、忍者男のセリフが現実なのか未来のことなのか、よくわからないままおぼれ始めたのだった。
名門神田川家の一人娘として生まれた真理は、高校に入学してからはすぐに男性との経験もしていた。
真理の通う高校で頭が最もよく、女生徒から最も人気のあった生徒会役員の男子生徒を選び、真理から誘って行為に及んだのである。
宮コーに入社したのちも、宮コーの内外を問わず、真理の目に適った優秀な雄は、すべて味見してきた。
上司である宮川佐恵子のことを、ひそかに狙っている関西支社勤務の角谷道弘部長ですら、とっくに真理の毒牙にかかっている。
真理からすればSEXは火遊びである。
親友であり、上司でもある佐恵子の見合い相手など、将来上司の夫となる可能性のある男と関係を持ったりもした。
もちろん、佐恵子がその見合い相手に興味がないことを確認してからであったが、それでも十分スリルを味わえたのであった。
そういう背徳感で相当な興奮を得ることはでき、何度か誘惑し行為に及んだものの、そのうち自慰の方が感じてしまうようになった。
実際数多の男を経験した真理であったが、実際は真理を満足させてくれる男はいままででただの一人だけであったのだ。
普段の菩薩の笑顔の裏で、能力者であり、生まれつき性欲の強い真理を、唯一満足させてくれた男は、同じ能力者である北王子公麿だけであった。
真理は、SEXの時にいままで【未来予知】を使ったことはなかった。
行為事体がつまらなくなると思ったからだ。
それに、ホテルまでノコノコついてくる男の性技を、出会ったばかりの状態から見通せるほど真理の【未来予知】は遠くまで見通せない。
真理は菩薩の笑顔の裏に隠した旺盛な性欲を満たすため、真理の選別眼に適った雄をクジ感覚で摘まみ喰っていたのだ。
日本屈指の名門神田川家の令嬢、神田川真理が食った男は、宮コーに籍を置いてから実は100人を超えている。
そんな豊富過ぎる性経験を持った真理を満足させた男はほとんどおらず、真理を満足させることができた男は、つい先日恋人となった北王子公麿ただ一人だけであったのだ。
そして、神田川家の令嬢である真理が、そんな男漁りをしても周囲に気づかれていないのは、真理が【忘却】という技能を持っているからである。
性行為に及んだ男の記憶を、行為の時間を含め、行為の前後1時間ほど忘却させてしまう能力を持っているのだ。
だからこそ、立場もある神田川真理が自らの性欲を満たすべく奔放に振舞っても、誰も気づかなかったのである。
常時【感情感知】を発動させていた佐恵子でさえ、真理の火遊びに気づいていなかったのである。
単に佐恵子が、性経験に乏しく、知識も疎いためであるせいでもあるのだが、真理は周囲には品行方正の淑女とみられていた。
唯一野性的な勘と、人一倍以上の嗅覚を持つ加奈子だけが、真理の本性に気づいていたのである。
しかし加奈子は、真理をその件で問い詰めるようなことをしなかったし、真理自身も加奈子に気づかれていることはわかっていた。
そもそも加奈子からすれば、真理がどんな男と遊ぼうが、興味津々ではあるものの関係がないのだ。
いや、正直言うと加奈子自身も、真理が男漁りをすることには少しは思うところがあるにはあるが、真理は宮川佐恵子が率いる派閥の中では誰よりも仕事をこなしていたし、加奈子も認めたくはないが、加奈子よりも真理の方が、佐恵子の役に立っている人材だと認めていたからでもある。
加奈子は、親友であり同僚でもある真理の少々の趣味には目を瞑ることにしていたのであった。
そして、なによりあの真理が男性を誘ったとしても、相手に無理強いをしていないことも知っていた。
真理から誘うが、応じるのは常に男であることを知っていたのだ。
そして、行為に及んでも相手の記憶を消してしまうし、行為で真理自身が妊娠してしまったり、妻子のある男性には手を出さず、その家庭を破壊するようなヘマを、真理は絶対にしなかったのである。
そう言う意味では真理と加奈子は、お互いに非常に分かり合っている仲であったのだ。
しかしそんな経験豊富な真理でも、自分と匹敵するほどの能力者とSEXをした経験はほとんどなかった。
宮コー内部には男性能力者は少ないし、いても手を出すのが難しい相手ばかりであったからだ。
宮コーの幹部社員以外にも能力者はいるが、部長職以下の社員では、真理のオーラの量と比べると微々たるオーラしか持たない能力者しかいないのである。
関係を持った男の中では唯一、自身と近しい能力を持っていたのが、北王子公麿であっただけなのだ。
基本的に能力者同士のSEXは感度が跳ね上がる。
その事実を知らない真理は、北王子公麿だけが、唯一自分と相性が合う男性だと思っていた。
神田川真理は、それが思い込みであったことを、今イヤというほど味わっている最中であった。
【第10章 賞金を賭けられた美女たち 29話 まあまあの女 終わり】30話に続く
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