私はセンターのあるビルを出ると
今の仕事に就いてから幾度となく
センターの同僚たちと飲みに行った
義経に向かい歩を進めた。
義経はスナックやラウンジなどが多数をしめる
テナントビルが立ち並ぶ通りの焼き肉屋や
うどん屋、大手牛丼チェーン店が並ぶ並びに
あった。
義経に向かう途中の私の携帯が鳴る。
どうやらLINEが届いたようで確認すると
【小島信二:南川さん~
義経着きました~先に入ってま~す。
今日は2人なので一応個室を抑えています。
12番の部屋で居てますね~】
あんなLINEを送ってきたというのに
何でこのテンションでLINEを送れるのだろうと
15歳のジェネレーションギャップを感じながら
私は義経に入り小島君がLINEで知らせて来た
12番の個室へ向かった。
この店の個室はセンターの同僚の子とも
来た事あるので勝って知ったるで作りもわかっている。
中は堀こたつ式の向かいあって座るテーブルに
なっていて入口はしゃがんで入るようなくらいの
大きさの引き戸になっている。
私は12番の部屋の引き戸を開けると
一応上座を空けて手前側に座る小島君が居た。
「あっ南川さんっお疲れ様ですっ!」
何でこの子はあんなLINEを送ってきて
おきながらこんなに普通なの?
と思いながら私は引き戸の前の下駄箱に脱いだヒールを
置くと引き戸の前にしゃがみ込み頭を下げて部屋に入る。
「お疲れ様~・・・」
私は部屋に入ると小島君が空けてくれていた
部屋の奥側の座席に座る。
「南川さんっ何飲みますか?」
「えっあっ・・・うん・・
じゃあビールで・・・」
とても乾杯なんかできる気分でも無いが
素面でできる話でもないかと思い今日は
夜顔のバイトも無いから良いかと思い
ビールを頼む。
「それじゃあ僕もビールで・・・」
そう言うと小島君はタッチパネルで
ビールを2杯注文した。
「おつまみ何にしますか?」
と何故かいつもと変わらない感じの
小島君にあのLINEは本当に小島君が
送ってきたものかどうか疑いたくなる。
「えっ・・あっ・・うん・・・
後でいいわ・・・」
「そうっすか?
じゃあ僕ココロとネギま先に
注文しちゃいますねっ」
と小島君がタッチパネルの
焼き鳥の注文をするところから
注文する。
「え~と・・・
小島君・・・?」
私はスーツの上着を脱ぎ後ろのハンガーにかけると
堀こたつ式のテーブルの下に足を入れ
足を組みながら座る。
「えっ?なんっすか?
あっこの間送った
LINEの事っすよね~?
ハハハッやっぱりあの
人妻子猫のミナコさんって
南川さんっすよね?
口元のほくろも覚えているし」
この子凄い記憶力ね・・・
あんなうす暗い部屋でよくほくろの位置まで・・・
最初から私じゃないと言い張るのは無理だと
思ってはいたけど・・・
「うん・・・
その・・・
小島君の目的は何かは分からないけど
少し聞いてくれる?」
私は掘りごたつの中に放り出し
組んでいた足を掘りごたつから出し
正座する。
するとタイミングが良いのか悪いのか
丁度店員さんが生ビールを持ってきた。
「失礼しますっ!生2つと付き出しですっ!」
枝豆が入った2つの小皿と生ビールを小島君が
受け取ると店員さんは引き戸を締めて立ち去った。
「あっはい・・・
南川さんっとりあえず
乾杯します?」
と小島君は至って普通で何だか少しイラついてくるくらいである。
「あっ・・・
うん・・・」
と私も小島君のペースに流され少しジョッキを傾け
小島君のジョッキとカチンと鳴らす。
「乾杯~」
と1人元気に小島君の声だけが響く。
「あっ南川さんの聞いて欲しいことってなんすか?」
私は店員さんに話の腰を折られ正座したまま
再度先ほど話しかけた話の続きをする。
「あのね・・・
小島君が言っている人妻子猫ってお店で
働いてたミナコは私だと思う。
でもあの時の私はお客様の顔など見ずに
接客していったから・・・
その私は小島君を接客した覚えがないの。
覚えがないというか本当にただ作業のように
していたので小島君でなくてもあのお店で
接客したお客様は誰1人覚えていないのよ・・・」
小島君はジョッキを片手にビールを流し込みながら
私を見ている。
「ふ~ん・・・
そうなんすかぁ・・・
そういうもんなんすかね?
まあでも僕は覚えていますよ~
南川さんのフェラは最高でしたから~」
この子のセンターでの成績が悪いのわかる・・・
センターでの業務ではギリギリ大丈夫な敬語だけど
プライベートだと先輩相手にももうこんな感じだし・・・
「それでね・・・
こんな事言っても仕方ないのだけど・・・
あの時私は実は離婚した直後で・・・
それで仕方なく生活の為に少しの間
あの店で働いていたのよ・・・」
「そうでしたか~
僕ミナコさん・・・あっ南川さんが
次行ったときに指名してもういないって
言われたときマジショックでしたからね~
ハハッ
でも今のこの仕事が決まったから人妻子猫
辞めたんすね。」
「・・・そういう事なの・・・
それで・・・
思い出話するだけが
目的じゃないのよね?」
「えっ?あっ・・・
そうっすね~
僕実はOJTで南川さん
に付いてもらった時から
もしかしたらとおもっったんですが・・・
本当はそれ確かめたかっただけなんすけどね。
あっでももし南川さんさえ
良ければあの時に人妻子猫で払っていた
金額払うからもう1回して欲しいなぁと
思って・・・
ダメっすか?」
えっ?それだけ・・・?
この子の目的って・・・
私が次に店に来た時に既に辞めていたから
偶然会った私にあの時のお店に払っていた
金額を支払ってまでもう1度フェラチオを
して欲しかったってただそれをいう事が
目的だったの?
しかも今の口調では断れそうだし
断っても普通に諦めそうな感じにも見える。
前の主人の水島により極度のネガティブ思考を植え付けられて
いる私は物事を悪い方へ考えすぎる傾向があった。
そのせいか今小島君から聞いた内容で少し拍子抜けしている
私がそこに居た。
《第7章 慟哭 6話 彼の真意 南川美千代 終わり》
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