とにかく小島君の話を聞くと彼には
私を貶める事や、金銭面の無心ではなく
ただ純粋に性欲を満たしたいという事で
ある事が分かった。
よくよく考えて見ると彼の仕事ぶりを
見ていれば分かる事であった。
彼は良い意味でも悪い意味でもそこまで
狡猾な考え方ができる程、思慮深くは無い。
単純明快な子で元夫の水島とは正反対の
性格のように思えた。
今日、彼とここで会うまでの私は
最悪の事も考えていた。
彼が吹聴することにより今の職を失うことまで
考えていたが思い過ごしだとホッと胸を撫でおろし
一気に肩の力が抜けると緊張感も解け
私はジョッキを握り一気に3分の2ほどまで
流し込む。
「ふぅっ・・・
ハハハッ
小島君って悪趣味だね~
何で私なの?
小島くんって確か24歳だよね?
もっと若い子の方が良くない?」
ただの性欲をむき出しにして向かって来る
人ならもう夜顔のバイトで慣れていた。
しかも相手は夜顔のお客様の海千山千の
熟練した男性達ではなく、まだ最近大学を卒業した
20代の前半の男の子だ。
私は緊張も解け、この子に悪意が無いことに安心し
既にこの場の会話を楽しむ余裕まで出来て
正座していた足を崩すとまた掘りごたつの
中に足を投げ出し足を組みリラックスした体勢を取る。
「え~悪趣味じゃないっすよ~!!
南川さんめちゃくちゃ綺麗じゃないっすか~?
僕元々学生の頃から年上めっちゃ好きですし
だからあんな店行ってたんすからっ!」
小島君が私の正座を崩しながら掘りごたつの中に
移動させた足に視線を走らせるが先ほどまでの警戒心も
解け嫌な気にもならずにむしろ若い子でもこんな
私に興味を持ってくれているのかと思うと少し逆の
気持ちにもなる。
「確かに・・・
2年前にあのお店に来てたんだから
22歳?だものね・・・
フフフッもうっ
やっぱりおかしいよ~
普通同年代の子に興味持つんじゃないの~?
それくらいの年の子って?
小島君なら私の年ならどちらかと言えばもう
自分の子供が小島君より少し若いくらいの
子が居ても不思議じゃないんだから」
「僕19歳の時からあの店行ってましたからっ
バイト代ほとんどあの店の代金で飛んじゃって
ましたよ~」
「うそ~!!
もったいない~って・・・
私が言えた事じゃないんだけど・・・」
と掘りごたつの中で組んでいた足を組み替えながら
ジョッキを一気に空けてしまう。
「いやいや・・・
十分価値はありましたよっ
特に南川さん・・・いやあのお店で
居た時はミナコさんでしたから
ミナコさんは・・・
あっビール頼みます?僕ももう無いし・・・」
こんな事を真剣に語れるこの子が面白く感じ
て来てこの情熱を少しは仕事に向けてくれれば
成績も上がるのになぁともったいなくなる。
2人ともジョッキが空になった頃上手く店員さんが
小島君が注文した焼き鳥を持ってきてくれて
私たちは追加で2人とも更にビールを注文した。
食欲の無かった私も小島君の本心が聞けて安心し
無かった食欲も安心すると一気に湧いてきて
シーザサラダに刺身の盛り合わせを注文する。
「もうっミナコさんはやめて~
私もあの時の事、思い出したくないし・・・
それに・・小島君そんな子じゃないと
思うけど私も好きで働いていたわけでは
ないからセンターのみんなには言わないでね」
私は掘りごたつの中で組んでいた足を組み替えながら
笑みを浮かべ小島君を見た。
「うおっ南川さん色っぽ過ぎっすっ!
やっぱり仕草とか角度が若い子とちゃうんすよっ
はい!もうミナコさんって呼びませんっ!
それにそんな事人に言いませんって~
そんな事言うたら僕が人妻風俗にはまってた
って自分で言いふらしてる事になりますやんかっ!?
言えるわけないっすよっ
でもそれっぽい人じゃ無く何か理由があり
本来そんな店で居そうな人じゃないから
南川さんめっちゃ良かったんすけどねっ
慣れて無さそうな見た目やのに
意外にめっちゃ上手かったし・・・
僕も何気なく言うてしまいましたけど
今の南川さんならあの時より更に魅力的ですから
倍払ってでもしてもらいたいっすよっ
ハハハハッ」
この子は本当に素直な子だなと思った。
元旦那の水島と正反対と感じたのはこの子が水島と違い
自分の思ったことを真っ直ぐにぶつけてくるからであろう。
水島のように含みを持たせた話し方や、駆け引きなど一切なく
思ったことをそのまま率直にぶつけてくる。
言わば分かりやすいのだ。
今の小島君の思いは何故かこんな15歳も年上の私に
人妻子猫でしていたような口でのサービスを求めているだけ。
小島君は19歳の頃から風俗に通っていたと言っているから
そういう事はお金を払ってするものだという概念があるらしいが・・・
今まで彼女とかいたのだろうか?
性格は素直で見た目も普通だし居てもおかしくないと
思うが価値観や礼儀作法の面は年代が違うから私には
少し理解しがたい部分もあるが・・・
それでも容姿は私の元夫よりは全然イケていると思える。
「え~そんな価値無いって~小島君っ
もうっおばさん、からかっちゃダメだよ~
それより小島君彼女とかいないの?」
私も率直な小島君には率直に聞こうと思い気になることを
聞いてみた。
「おばさんちゃいますっ!綺麗なお姉さまです~!!」
小島君は自分がおばさんと言われたような勢いで怒ってくる。
私はなんだかおかしくなり少しビールを噴き出してしまい
大笑いしていた。
「キャハハハッ何で小島君が怒るのよっ」
「南川さんっセンターでも1番綺麗なお姉さんっすよっ!
それに彼女っすか?僕大学の時から何回か彼女できましたけど
若い子とは長続きしないんすよ~
なんちゅうか・・・色気が足らんっていうか・・・
子供と付き合ってる感覚になるし・・・」
へ~天然で素直だから精神年齢低いかなと思っていたけど
結構小島君て精神年齢高いのかも・・・
「そうなんだ~まあ好みは人それぞれだものね~
あっ私なんかセンターで1番のわけないでしょ~!
うちのセンター結構美人揃いだよ~
高崎さんとか知原SVなんかも綺麗だし・・」
「そうなんすよ~マジ美人揃いで
仕事になりませんわ~
知原SVも良いっすよね~あの眼鏡にあの足・・・
ハハハッ
だから今の職場好きなんんで辞めたくないんすよっ
もうちょっと仕事頑張らんとマジで派遣契約更新して
もらえなさそうっす・・・」
「知原SVをそんな目で見てたの?
ハハッやっぱり小島君って見るところが
人と違うよ~ハハッ
そうだよ~女の子にうつつぬかしてたら
契約切られるよッ
小島君もう少し頑張らなきゃっ」
私は掘りごたつに放り出して組んでいた足を
掘りごたつから出し両足を左側に折りたたみ
座りなおす。
「ホンマっすよね~
南川さんが3万円の倍の6万円出すから
もう1回口でしてくれたら頑張れますっ
ハハッ」
「こらこらっ私にそんな価値ないよ~
・・・
てかそんなに私が良いの?」
私はお金を貰いこの子にサービスしようなんて
気は無かったが最初のLINEのイメージが最悪だったので
意外にも思ったよりも良い子であった小島君の
方向性はどうかと思うが純粋な気持ちや素直に
欲望をぶつけてくる感じが新鮮で少し心が揺らぎだしていた。
《第7章 慟哭 7話 悪意は無いが天然な彼 南川美千代 終わり》
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