バスルームでひとしきり身体を流し終え私は
脱衣場で少し濡れた髪を乾かすと、簡単に化粧を
整え、籠に入れてあった黒のブラジャーに黒のショーツに
身を包むとホテルに設置されてあったピンクのバスローブに
身体を通し小島君が待つ部屋に戻った。
部屋は私がバスルームに入る前より少し照明が落とされたのか
うす暗い明かりに変わっており、そしてやや赤がかったライトが
点灯している。
「お待たせ~小島君」
小島君はソファには居なく私は視線に部屋中を探らせると彼は
ベッドの脇でしゃがんでいて、どうやら自動販売機の前で居たようだ。
私は彼が居る方へ歩いて行くと、小島君がしゃがむ少し離れた
ベッドの脇に腰を下ろす。
「あっ・・・南川さんっ」
小島君は少し焦ったような表情で何か悪いことをしていたのを
見つかった子供の表情になっていた。
それを見て私はまたおかしくなってきて、小島君のその表情の
原因を知りたくなったがそれは、小島君の目の前の自動販売機を
見てすぐに分かった。
「小島君~何見てたの?」
小島君が見ていたものは大人の玩具が売られている
自動販売機。
私はそれが解っていて少し意地悪をする感じで
ベッドの脇に座り足を組みながら聞いてみた。
「あっいやっえ~とっ・・・
何売ってるんかなぁ思いましてっハハッ」
「良い物あった?」
私は更に意地悪そうな表情で笑いながら聞く。
「えっ・・えっ・・」
小島君は自動販売機の前でまた挙動不審になり
私は本当におかしくなり少し声を出して笑ってしまっていた。
「アハハハッ・・もうっ小島君おもしろいっ
どうしたの?そんな物私に使いたいの~?」
「あっいえっ・・え~と・・・はいっ・・・」
「え~そんなの使わなくても私、感じやすいよ~
でも今日は口止め料だからねっ
小島君の好きにすれば良いんだよっ」
小島君は目を見開き、その見開かれた目は仕事中の
彼のやる気の無さそうな目とは違い少年のように輝いて
いるように見え、私はもう本当にこの子は・・・
とも思いながら、そんな小島君の純粋な欲望が羨ましくも
思いベッドから立ち上がり財布の入ったバッグを取りに行く。
すると小島君も走ってきて自分の綿パンの後ろに入れていた
財布を取り出し
「ダメっすっ!あれは俺が買いますからっ!」
「え~良いよ~私が出してあげるから~」
私もそう言うが小島君はここは譲れないという感じで
手で私を遮ると
「今月はもう風俗行かなくて済むので風俗代で
買いますからっ」
と言い財布を持ち、自動販売機の前に走って行った。
小島君のお給料の使い道はどうなっているかは分からないが
彼なりの計算があり、その中で風俗代が大人の玩具代に今
瞬時に入れ替わったのだろう。
まあ良いかと思い私は、バッグをソファに置くとまたベッドに
戻り今度は大きな枕が2つ並べられている左側に座った。
ガチャンッ、ガチャンッ・・・ガチャンl・・・
ちょっとちょっと・・・小島君いくつ買うの~?と思うほど
自動販売機から商品が出てくる音が部屋中に響く。
音が鳴り終わるとそのうちの1つを小島君が手に取り私が足を
伸ばし座るベッドの隣に移動してきた。
《第7章 慟哭 13話 自動販売機 南川美千代 終わり》