刃物を出した男が私に近づいて来るのと同時に
他の男たちも私との距離を詰めてくる。
3人か?
久々だけどこんな男たち3人くらいに
どうこうされる私じゃないわよ。
「カンアニキ。
コノオンナ、ゼンゼン
コワガッテイナイデスゼ。」
ネオンが点灯していない昼は本当に
寂しいテナントの1階の踊り場に身を
隠していた男が私に近づきながら
刃物を手にして私と1番距離が
近い大柄な男にそう言う。
「フツウノシュフトキイテイタガ・・・
イガイニキガツヨイナ。」
カンアニキと呼ばれた男が
そう言いながら更に私に近づいて来る。
私は足にも自信があり全力で走れば
こんな男3人くらい十分置き去りにし
巻けたであろうが、私に近づいてきた
理由を知りたく、この男たちを
投げ飛ばし関節を締めあげて
その理由を吐かせてやろうと考えていた。
誠一に対する恨みか?
もしそうならこの男たち以外にも
仲間が居て誠一に危害を加える気が
あるのならば、それを先に誠一に
教えておいてあげなくてはならない。
刑事に妻だからね。
それくらいは・・・
そう思い私は目の前の刃物を持ったカンアニキと
呼ばれた男が私に刃物をチラつかせ近づいて
来てもう手の届く距離に居るのに身構えも
せずに油断していたのを見逃さず男の脇の下の
トレーナーを一瞬で掴むと自分の身体を素早く
反転させ1本背負いで地面に叩きつける。
シュッ!
ベキッ!!!
「ギャッ!!」
男は受け身も取れずアスファルトに叩きつけられ
悶絶してる。
それでも離さずに持っていた折り畳み式の
ナイフを私は男の手首を踏みつけ手から離し
遠くへ蹴り飛ばした。
そして地面でもんどりうっている男の喉元に
足先を差し込む。
「グッ!!オンナッ!オマエッ・・・ゲホッ!!ゲホッ!!」
私に投げられ動けずに居る男は私の足の下で
今度は喉に足先を差し込まれ苦しそうにしている。
残り2人の男たちは私に進めていた歩を止めると
一瞬固まっていたが、今までは言葉も発しなかった
上下黒のジャージ姿の男がポケットからスマホを
取り出し何処かに電話をしている。
私はおかまいなしに残りの2人に聞きたいことを聞く。
「あなた達!目的は何なの!?
どうしてこの私に近づいて来たの!?
私が刑事の妻だと知って近づいて
きたという事は目的は主人なの!?」
声と共に私の足元に転がっている男の喉元に
突き刺さる私のつま先にも力が入り男はゲホゲホと
苦しそうにしているが、そんな事は知った事ではない。
そもそも女性1人に男3人がかりで刃物まで持ち
襲い掛かろうとする輩なのだ。
どんな目に合されようが自業自得である。
「オマエタダモノデハナイ。
シカシカンアニキニ
ソンナコトシテ
オマエアトデコウカイスル。
カンアニキノサオハ
メチャクチャオオキイゾ。
オマエキゼツスルマデ
ツカレルネ。」
電話をかけていない方の白のジャージ姿の
男がそう言った。
「はあ?日本語下手で何言ってるか
わからないのだけど?
とりあえず私の質問に答えてよねっ!」
ギュ!!
とまたつま先に力を入れると私の足元で苦しむ男が
私の足首を掴む。
予想以上に握力が強く私の足首は男に掴まれ
男の首から外された。
「ゲホッ!!グフッ・・・
オマエヨクモヤッテクレタナ。
デンノイウトオリ・・・
アトガタノシミネ・・・」
男がよろけながら立ち上がると私はもう1度
投げ飛ばしてやろうと構える。
すると電話を切った男が
「カンアニキ。
モウダイジョウブ。」
私は目の前で立ち上がった大男から電話を終えた
男に視線を送ると私の斜め後ろから素早い人の
動きの気配があり私は振り変えると同時に脇腹に
強い電流を感じた。
ビリリリッ!!バチッ!!
「うっ!!・・・卑怯よ・・・
4人目が・・・」
ドガッ!!
電流で動けずにいた私のお腹に強い衝撃を受け
私はそのまま意識を失ってしまった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
私は気が付くと目隠しをされていた。
両脇には人の気配がして日本語で
無い言葉で会話が交わされている。
足首も縛られ手は後ろ手に拘束され手錠のような
物まで嵌められている。
口にも布のような物を巻かれ後ろでくくられているので
声もあげれない。
そして下半身が何やらスースーするなと思っていたが
どうやらジーンズを脱がされ下半身はショーツ1枚に
されていたようだ。
上半身は黄緑色のブラウスは脱がされていないようである。
そしてここはどうやら車の中で後部座席の
中央に私は乗せられているという事にも周りの音から気づいた。
この男たちはいったい何者?
私をどうする気?
何処へ連れて行こうとしているの?
誠一に何をさせる気?
何が目的なの?
色々な事が錯乱する頭の中でよぎるが
油断をしてしまい、こんな男たちに不覚を
取った私は今は声を上げることも動く事もできずに
下半身は下着1枚にされてしまいどこかへ
連れて行かれようとしていた。
《第7章 慟哭 30話 電流 杉桜子 終わり》
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