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第9章 歪と失脚からの脱出 9話 緋村紅音と神田川真理

第9章 歪と失脚からの脱出 9話 緋村紅音と神田川真理

以前は、安物ではないがそれなりの応接セット、佐恵子が大学時代から愛用していたという木製のテーブル、それと必要最低限の調度品しかなかった支社長室だったが、いまはそれらのものはすべて廃棄され新支社長の好みのものばかりに置き換えられていた。

神田川真理は、今の部屋主である紅音の前まで歩みを進めるまでに、新たに配置されたそれらを軽く一瞥すると、内心鼻で笑う。

(悪趣味)

前の部屋の主がいた時よりも、なにもかもが豪奢で華美なものに変わっていたこともそうだが、佐恵子の私物を本人の断りもなく廃棄したことがその感想の一番大きな理由だ。

しかし心中ではともかく、指定の制服に身を包んだ美人秘書は、内面の感情を微塵も感じさせず穏やかな表情を崩すことは無い。

(なんでも最高級のものばかりを揃えればいいってものじゃないことがわからないのかしら。成金趣味のひどいセンス。それに今日もまた同じ話でしょうし・・時間の無駄だけで済めばいいけど。こんな遅い時間に呼び出して、本当にくだらない・・)

支社長室の壁に新たに掛けられた、他の調度品とはバランスのとれていないモダンデザインな掛け時計はすでに午後九時を指している。

(はぁ・・。一応準備してるとはいえ、加奈子もブー垂れてるし、何事もないのが一番なんだけど・・)

そんな真理の心中など知る由もない紅音は、笑顔で両手を広げ真理を歓迎する仕草をみせてから口を開いた。

「真理。忙しいところ悪いわね・・。

こんな時間だけど呼んだのはほかでもないわ。この間の話よ。

考えてくれたかしら?

真理なら気づいてると思うけど、業績とは裏腹に上層部では現場との意識乖離が不味いところまできてるの感じてるわよね?

業績は順調でもこれじゃそのうち内部で分裂しちゃう。

上層部はほとんど親族役員ばかりだけど、実質は私達みたいな外様の能力者が実務を取り仕切ってるでしょ?

こんなんじゃ、そのうちみんなの不満がたまって収拾が付かなくなっていくわ。

そこでなんだけど・・こないだ言った提案、どうかしら?

賢明な真理ならいい返事をしてくれると思ってるんだけど・・?」


と、やっぱり真理の予想していた通り、いつもの話が始まる。

話の中身の大半は、体制批判から始まり、次に派閥への勧誘、そして佐恵子の誹謗中傷へと続く。

真理はいつもの話に、いつも通り口では失礼が無いよう上手く躱しつつ、心中で溜息をつきつつ、頭の中で独白する。

(宮川のようなコングロマリット・・傘下に小さな頭がたくさんある組織は、確かに問題が起きやすいわ。

でも佐恵子は能力を駆使してうまくコントロールしつつあったのよ?紅音。

・・あなたは確かにとても優秀だけど、組織運営に関しては魔眼持ちだった佐恵子の方に軍配が上がるわ。

この数か月で、もう数字がそれを証明し始めてる。あなたはこの結果に対しては偶然だと思いたいみたいだけどね。

魔眼を失ったとしても、宮川アシストで佐恵子はそれを証明してるわ。

この差は一朝一夕じゃ埋まらないってことよ。

あなたについてきている人は、打算や恐怖で動いている人が多いだけ、そこに気付けないあなたにはあんまり興味は感じないのよ。

佐恵子も独善的だけど、その独りよがりは紅音のそれとは明らかに違うわ。

佐恵子は一応かなり広い範囲の人達の幸福のために動いているけど、紅音は違うわね?

佐恵子は、ことに対する進め方も、法や倫理という観点で判断しているし、たまに変なことも言いだすけど、指摘すれば、後で泣きそうな顔でやってきて、ちゃんと反省もしてくれる。

おバカでとっても可愛いのよ?

でも紅音・・あなたのはやってることは、ただの背信行為で反乱の準備をしてる。

誰が喜んで誰が得するのかしら?その独善には私はお付き合いできないのよ・・。

宮川みたいな名門は、先人たちが連綿と紡いできた努力と功績で、いまの社会的信用やブランドを担保されてるのよ?

それをあなたは、欲と力にまかせて全部乗っ取ろうというの?

乗っ取ったその後はどうするの?そのブランドを維持できるとでも思ってるの?

私は、一応善良だと思える社会貢献を広範囲に行えるのは宮川が一番だと思ったからこそ、神田川から来たのよ?

ここなら、まだ一番マシそうだって・・誤算だったのは、佐恵子が思いのほか楽しませてくれてるってことだったの。

それなのにその佐恵子を追い出しちゃっったうえに反乱のお誘い?一族役員や株主から経営権を奪う?

くだらない。

私がそういうこと好きだとでも思ってるの?)

紅音の話を聞き流しつつも、真理は笑顔を崩さず、ほぼ聞き役に徹するようにしているが、真理は、珍しく自分の心中がかき乱され心穏やかではないことに、内心驚いていた。

真理の実家の神田川家は、有名な茶道の宗家でありながらも、複数の家業と神社まで保有している超がつく名門である。

それゆえ真理の美的感覚も、幼少のころから磨かれており、金額が高いだけの和洋中が入り乱れたこの部屋のありさまに辟易してしまうのは無理もないのだ。

神田川家は宮川グループの傘下ではなく、むしろ肩を並べるほどの格式がある。

財力では及ばないが、歴史にいたっては宮川家よりも50年以上古く、神田川家に向けられる世間からの印象は、言葉にすると格式高く清廉で厳か、というものが大勢を占めるはずである。

宮川は幅広くエンドユーザーを抱えるようなビジネスをしているため、人気の芸能人やCMを使ったイメージ戦略などを展開しているが、神田川にはそんな必要はなかったことも、そのイメージが定着している理由だろう。

宮川と神田川は商売の土俵が違うこともあり、敵対するようなことは今までなかったが、特別に懇意にしたこともなかった。

そのため新入社員の一人である神田川真理が、あの『神田川』の息女だと知った宮コーの幹部一同は、一様に驚き、なにか善からぬ思惑があるのではないか?と疑うものがでるほどであった。

しかし、真理のことを入社研修初日で、真理とは初対面にも関わらず気に入ってしまった佐恵子は、理由はどうあれ真理が手元に来てくれたことに大喜びして、自らの秘書にしたいと言い出したことと、神田川家当主から宮川家に『娘のことをよろしく』と丁寧な挨拶と、高給な付届けの品があったことから、幹部内だけでの一時的な騒動となったのはもう6年以上も前のことである。

その時から真理は徐々に佐恵子と仲良くなっていき、また宮コーにおいても居なくてはならない人物となっていく。

さらに近年では、神田川の茶道や和菓子などの商売で宮川と少しずつコラボし、協力し合うようになっていったのだ。

そんな事業展開にも貢献している真理は文句なしに優秀であるうえ、宮川佐恵子の派閥の要である。

神田川と宮川の共同事業的にも影響があるし、紅音はどんな手を使ってでも、真理のことを手元に置いておきたかったのだ。

しかしこの三か月間、あの手この手での熱烈な勧誘にも真理はまったくなびく様子はなく、紅音は先ほどまで何とか根気よく勧誘をしていたが、ついにその綺麗な赤髪をかき上げかぶりをふり、聞こえるように舌打ちをして口調を変えた。

「真理?やっぱりまだあの七光りに肩入れするつもり?あいつはもう終わりなのよ?力も立場もね。真理はそのうえで私に逆らう覚悟があるってことでいいの?いくら真理があの神田川とはいえ後悔することになるわよ?神田川には真理以外にろくな能力者が居ないことぐらいは調べがついてるんだから!」

ついに紅音は苛立ちと怒りを隠すのをやめ、その美形の童顔を不快気に歪めたまま勢いよく椅子から立ち上がり、手に持っていた万年筆をへし折って真理を恫喝する。

その直後、折れた万年筆を発生させた炎で一瞬にして塵に変えると、その煤カスを振り払うように煩わし気に手を振った。

佐恵子を会社から追い出したというのに、真理や加奈子は今までどおり佐恵子を警護すると言い張り、二人は宮コーでの業務が終わると、佐恵子の自宅のペントハウスにほぼ毎日通い続け、宮川アシストへの人材の紹介をしたりと紅音は苦々しく思っていた。

しかし紅音は、真理を側近として引き込みたいがゆえに、我慢してやっていたのだが、もう限界だ。

紅音はもともと我慢など得意な方ではない。

真理の視点からみれば、3か月という交渉期間は決して長くないのだが、紅音にとっては限界だったらしい。

しかし、怒り心頭の紅音を前にしても真理は、いつもの表情を変えることなく涼し気な顔で言葉を返す。

「肩入れだなんて言葉は適切ではありません。別段特別なことはしているつもりはありませんから・・・・。ただ数年来の友人にできるだけのことをしてあげたいだけです。それに神田川のことはご心配なく。すでに宮川とコラボで開発している商品やサービスについては、先だって継続は見送る・との通知がきております。新支社長とは一緒に仕事出来ない、とのことです」


支社長室のほぼ中央で、凛とした姿で笑顔の神田川真理はきっぱりと言い切った。

「な?なんですって?!」

初耳の情報に紅音は声をあげたが、真理の表情は何の感情も浮かんでいない。

社内で紅音にここまではっきり発言できるのは、宮コー社員では真理と加奈子だけであろう。

いるとすれば、宮コー社員としては新参者の元菊一の面々ぐらいであるが、彼らは少し例外枠だ。

彼らは、遠慮なく紅音に意見し、無理な要求には、以前佐恵子と交わした契約内容とは違うと主張し、要求を突っぱねることすら何度もあった。

元菊一の調査部の態度や、今の話で真理がけっして勧誘に応じないことがわかり、辛抱強く交渉や勧誘に心を砕いたつもりの紅音はついにキレた。

真理に対しては今日、元菊一事務所に対しては昨日、加奈子にいたってはもっと前からだ。

紅音は歯並びの良い白い歯を食いしばると、思い通りにならない奴等に心の中で悪態をつく。

(クソ加奈子の力は惜しいけど、あの脳筋はバカみたいに佐恵子信者だし、私への態度や暴言も酷い。

だから、殉職するような仕事をあてがってやってるのに、捨るつもりで連れて行った犬が、何食わぬ顔で何事もなかったみたいに毎回帰ってくる・・・!

昨日は昨日で口の利き方も知らないグラサン・・!私に向かって無礼な態度と言動・・!

せっかく幹部にしてやるって言ってやってるのに・・もう我慢の限界・・逆らっただけじゃなく私のことトップの器じゃないとまで言ってくれたわね・・・!

手始めにグラサンの嫁と、菊一の秘書でも攫わせて衝撃画像送ってやろうとしたのに、あんなチンピラに依頼したのが間違いだったわ・・・もう消したとはいえ、あんなにペラペラ情報もらすなんて・・・!私まではさすがにたどり着かないでしょうけど、あのルートはもう駄目ね・・。

そのうえ・・・真理も私には従わないって言うの!?

真理なら話せば解ると思ってたのに・・!どうしてあんな女がいいわけ?!

でも、もういいわ!どっちみち私一人でも十分なくらいなんだから!)

紅音はここ数か月の思惑がことごとく功を奏しなかったことに、心中で思い切り罵った。

紅音の顔は苛立ちと怒りで歪んでいるが、可愛らしい小悪魔的な容姿と、小柄な体形とその仕草から、大抵の男たちは怒った顔も可愛いと思わせてしまうだろう。

しかし、紅音の性格と能力を知る者が今の紅音の顔を見れば、全速力で逃げ出すはずだ。

だが、真理はいつもの笑顔ではないにしても、落ち着き払った様子である。

ただ、その表情は普段の真理とは思えないほど無表情で紅音を見つめ返している。

無表情の真理は実はとても珍しい。そのため、紅音は多少の気味悪さを感じながらも真理に対して言う。

「なによその顔?いい度胸ね。私にそんな目を向けるヤツがまだいるなんてね。でも一応聞いてあげるわ。真理これが最後よ?私に従いなさい!」

紅音は言うと同時に、それが最後通告だと証明するかのようにオーラを開放した。

紅音は、肩まで届いていた艶やかな赤髪は逆立たせると自身の周囲に炎を纏う。

「・・・私の意思はともあれ、要は力づくで従わせたい。ということ?」

臨戦態勢に入った紅音に対して、一応の確認を取る真理。

「余計なお喋りの時間は終わりよ真理。イエスかノーで答えなさい」

紅音はそう言うと真理に向かって一歩距離を詰める。

真理は、普段の真理が絶対しない仕草で大げさにため息をつき、おもいきり紅音を見下した表情になると、わざとらしく肩を竦めて口をひらいた。

「ノーよ。そんなつまらない誘いに私が乗ると本気で思ったの?くだらない。どこか他所の星でやってくれないかしら?」

普段の真理からは想像もできない冷たい目と、辛辣な口調で紅音に言い放つ。

「・・・じゃぁ・・死ね!!」

そう言った真理の表情と口調に、驚いた紅音だったがすぐに目にも怒りの炎を宿し吼えた。

ゴゥ!

「くっ!」

さっきまで真理の立っていた場所に、四方から炎が収束して火柱となる。

床を蹴り、まともにくらえば塵まで分解されるほどの炎を、辛くも交わした真理が床で回転して起き上がりつつ、ベストのポケットに忍ばせていた丸い何かを紅音目掛け二つ飛ばす。

「はんっ!なんだろうと無駄よ!・・・っな?!きゃあああああああ!」

真理が投げた丸い何かを、紅音が余裕をもって炎を纏った手で払った瞬間、ぼん!と音を発し大きな炎が巻き起こった。

「きゃぁああ!おのれ!おのれええ!この臭い!ガソリン?!くぅうう!」

「ご名答。いくら炎を操って耐性があったとしても、準備してなきゃノーダメージって訳にはいかないでしょ?」

真理のセリフに、燃えた液体を頭からかぶった紅音は、髪の毛や肩を焼かれ手で押さえているが、指の間から覗く目は烈火のごとく真理を睨んでいる。

真理は思惑通り成功した奇策に笑みを浮かべつつも、支社長室の出口に視線を走らせ脱出をはかる。

「私にこんなことして逃がすわけないでしょ?!」

紅音がガソリンで負った火傷を手で押さえながら、支社長室の内周に炎を張り巡らせる。

入口に駆けだしていた真理は炎に阻まれ、扉までたどり着けず、紅音の方に向きなおって構え紅音を挑発するようなセリフを浴びせる。

「ふん・・。紅蓮なんて二つ名を持ってるくせに火傷していいザマね?」

真理は額に汗を浮かべ、焦りを隠しきれていないが【未来予知】の時間範囲を最大まで展開して、防御の構えで、紅音との間合いをはかる。

「真理苦しんで死にたいようね・・こんなの大した傷じゃないわ。苦し紛れの小細工で、私を怒らせるなんて・・思ってたほど賢くはないみたいで安心したわ」

いっぽう紅音は、火傷した顔を右手で押さえ歯ぎしりしながらも、すでにガソリンによる炎は消え、警戒して距離をとろうとしている真理とは対照的に、無遠慮に間合いを詰めていく。

ゴウッ!

「きゃ!」

紅音が手を振ると、真理の周囲を余すところなく炎が囲んだのだ。

「くぅ!」

「どう?【未来予知】できるんでしょ?逃げられそうかしら?どこにもないでしょ?!大人しく私に従わないからよ。私の顔にこんな傷をつけて、いまさら命乞いしても許さないんだから・・」

真理を囲む、炎の輪が真理に向けて少しずつ小さくなっていく。

「きゃっ!く・・・!」

「ほらほら・・どうするのよ?まさかもう何も手はないの?」

真理を囲む炎の輪は、真理ともう10cmと離れていない。

真理は気を付けの格好で立ち、出来るだけ炎に近づかないようにしているが、熱でパンストは破れ素足が露出し出している。

「ふん・・男どもがいないのが残念でしょうけど、焼き尽くす前に恥でもかいてもらおうかしらね」

真理が苦しそうな態勢で顔を歪めているのを見た紅音は、妖しい笑みを浮かべてそう言うと、両手を振るい、真理の周囲に炎を舞わす。

「きゃ!熱っ!・・くぅ!!ふ‥服を・・!」

炎の輪によってとても狭い範囲でしか身動きできない真理は、襲い掛かる炎をまともに避けることもできないでいた。

しかし炎は真理自身を狙ったものではなく、真理の衣服を焼き切っているのだ。

「ふふふ!さすが真理!いい体してるわね。ほらほらぁ手ぇどけなさいよ!」

焼き切られ地面に落ちた宮コー指定の制服をずたずたに燃やすと、真理はパープル色のお揃いのショーツとブラだけの姿にされてしまった。

「・・・本当に・・憎らしいぐらいキレイね」

指定の制服をほぼ焼ききられ、パープルの下着姿になった真理にバイセクシャルである紅音が頬を赤くし、目を妖しく輝かせて感嘆したように言う。

「お生憎様・・。あなた興味はないし、スカーフェイスは私の趣味じゃないわ」

そんな紅音のセリフにつれなく真理が返す。

「・・そう?ならやっぱり死ぬしかないわね!」

紅音の目がギラリと殺気に満ち、真理に向けて両手を振るった瞬間、一面がガラス張りになっている壁面が盛大な音を立てて砕け黒い塊が飛び込んできた。

「真理から離れろ!!でぃああああ!」

黒い塊は、大声でそう叫ぶと、ガラス片と一緒に紅音に肉薄し、窓をぶち破った勢いのまま紅音に飛び蹴りを放つ。

黒いアーマースーツを着た女の飛び蹴りと、スーツ姿のままの紅音が慌ててはなった迎撃の後ろ回し蹴りが、交錯し脚と脚が空中でクロスしたまま鍔迫り合いよろしく押しあう。

「クソ加奈子!やっぱりお前も裏切るのね?!」

肉体強化した加奈子の飛び蹴りを、同じく蹴りで迎撃した紅音が怒りの形相で吼える。

「うるさい!もともと味方ってわけでもないでしょうが!」

肉体強化した自分の蹴りを、蹴りで迎撃した紅音に、戦慄を覚えながらも怒鳴り返した。

そして、窓をぶち破って入ってきた加奈子とほぼ同時に、支社長室に真理を救うべく駆けつけてきた人間がもう1人。

彼は加奈子とは違い、スムーズに正面から入って来たのだが、全身を煙に包まれていて、わずかに見える顔には、必要以上に光メガネをかけている。

(あれ?私以外にここに来る人間は、紅音の部下の能力者?何あれ?煙使いの能力者なんて、紅音の部下にいたかしら・・?)

紅音と脚と脚の交錯を終え、態勢を立て直し真理と紅音の間に、真理を守るように、晒した素肌を隠してあげるように立ちはだかった加奈子は視覚強化をさらに上げてその煙に包まれた男性を凝視した。

「新しい支社長は、信用できないと哲司君やスノウちゃんも言っていたけど・・・まさか僕の憧れの神田川さんを、襲おうとしているなんて・・・神田川さん、僕は栗田教授にずっと稽古をつけて頂いたおかげで、この煙の力を手にいれたのです。そして武術も哲司君から学びかなり強くなったので、僕が今日からあなたのナイトになりますよ!今も栗田先生に言われ、もしかしたらあなたがピンチになっているかも知れないから見てくるようにと・・・そして来てみればこれですよ・・・支社長、あなたは炎でしょうが、僕は煙、僕の煙であなたの炎を包み込めば、炎は煙を燃やすことはできずに煙に包まれ消えてしまいます。僕がいる限りあなたの炎は無力化できますよ。」

煙に包まれたメガネの男は、そう話しながら支社長室正面から、紅音に向かい歩を進めてくると、下着姿の真理を後ろから眺めれる方向から歩いてきているので、一通り約得を味わったであろうが、自分が着ていたスーツの上着を脱ぎ真理にかけてあげて、加奈子が紅音と相対する位置まで歩を進めた。

「えっ・・き・・北王子さん・・・なの?」

言動も容姿も以前に比べ段違いに逞しくなっている北王子公磨に、真理は何度も面識があったがすぐには気づかなかった。

そして加奈子も、

「えっ?あっあなた、菊一のメガネ画家!えっ?この煙あなたが?へ~やるじゃないっ頼もしいわよ。とりあえずは、あなたは味方と思ってよいのね。」

百戦錬磨の加奈子も、横に来た男を以前の北王子公磨とは別人のようなオーラの質に、明らかに体術も身につけている者の歩法で自分の横に立ち並んだ、【メガネ画家】を、戦力として認め、この狂った炎術者に相対するために頼もしく感じた。

(北王子さん・・・確かに才能はあった・・・そして栗田先生からも、彼を鍛えているとは聞いていたけど、まさか煙というような、高等且つ特殊な力に目覚めるなんて、栗田先生は炎に対抗すべく、北王子さんが煙の力に目覚めるようにわざと導かれたのかしら?加奈子に北王子さんが来てくれたのなら、私も栗田先生に授けてもらった奥の手も使う必要もなさそうね)

真理は、北王子にかけてもらったスーツで、素肌を隠せるだけ隠し、

「北王子さん・・・見違えるほど・・・お強くなられたようですね。そして、ありがとうございます。」

真理の謝辞に、北王子公磨は、振り向くこともせずに視線は紅音の周囲にまとわりつかせた煙のコントロールに集中しながら、

「あなたが危機に陥れば私はどこからでも駆けつけますよ」

と真剣な表情で呟く。

「うぅ・・・なにこの煙!ほっ炎が出ない!・・・どっどいつもこいつも!私をいらだたせるのが上手ね!あなたたちなんて、炎が無くても私が素手で無力化しようと思えば容易いのよっ!それにそこのメガネ?私に名前すら憶えられていないあなた!?あなたも私に逆らうと言う事はあの忌々しい菊一の能力者ね?とりあえずあなたたち3人を辱めるだけ辱めて、その動画を佐恵子にでも送り付ける事で宣戦布告といきましょうか?」


紅音は、公磨の力により炎をほぼ無力化されたというのに、加奈子を眼前にしてのこの余裕は、やはり己の肉体のみの戦闘力に相当の自信をもっていることに他ならないからであった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 9話 緋村紅音と神田川真理 終わり】10話へ続く
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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