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第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 

第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 


「くそっ・・平気で違法行為してくるわね!スマホが使用不可にされてる。真理のはどうなの!?」

府内中心部から一駅離れた賃貸ビルの一室で、加奈子は拝借したタオルで身体を拭いながら、部屋のあちこちを歩き回って電波が拾えないか試している。

部屋には真理と二人しかいないため、加奈子は水に濡れて、更にぴっちりと肌に張り付いたアーマースーツの前ファスナーをヘソの下まで降ろし、あられもない格好のまま電波アンテナが立たないかとイライラとした様子で部屋をうろついている。

ボリュームのある白い双丘は形を崩すことなくツンと上を向いたままで、加奈子は「あーもうびしょびしょ」と言いながら、汗とスプリンクラーで濡れた身体を拭いつつ、スマホ片手に部屋を行ったり来たりしている。

そんな加奈子の様子とは対照的に真理はソファに座ってスマホを触りながら呟く。

「・・強引な手ね。紅音らしいわ。宮コーの執行役員ともなると権限の範囲は絶大だし、いろんなところに顔もきくものね。・・はぁ・・だめ・・これじゃモバイルオフラインパソコンだわ。佐恵子とも連絡がつけられないし、今後のことも考えなきゃいけないのに・・」

同じく真理も加奈子から投げ渡されたタオルで髪の毛を拭いながら、スマホ相手に暫く格闘していたが諦めて肩を落とした。

真理は公麿から借りていたジャケットを脱衣所に脱ぎ、引き出しに入っていた公麿のものであろう黒いTシャツを借りて着ている。

スプリンクラーの作動によって借り物のジャケットもパープルのショーツもびしょ濡れだったので、それらは脱いでしまっている。

いま真理は男物のTシャツ一枚をワンピースのように着ているという無防備な格好だ。

(北王子さん。あとで洗ってお返しするので、少しの間拝借させてくださいね)

心の中でそう断わった真理は、誰にもわからない程度で赤面する。

洗濯されてはいるが、Tシャツからは嗅ぎ馴染みのない男の香りに少しだけ鼻腔を擽ったからだ。

しかし、状況は芳しくない。

その北王子公麿の安否も気がかりだ。

公麿は心配ないとは言っていたが、そんなセリフは真理や加奈子を安心させるための方便であることは真理達にも分っていた。

能力者を多数抱える宮川コーポレーションだが、その中で宮川一族の次に有名な能力者は、紅蓮の二つ名を持つ緋村紅音だ。

その災厄に近い相手から北王子公麿は無事逃げおおせられたかどうか、真理は心配から両の手をぎゅっと我知らず握りしめていた。

しかし今は信じて待つしかできず、公麿の指定したこの部屋で祈るしかできない自分を歯がゆく思っていた。

真理は再度部屋を見回す。

メガネ画家こと北王子公麿が真理に託した画用紙には、この賃貸ビルの一室の住所と部屋番号が記載されていたのだ。

玄関は当然施錠されていたが、託された画用紙の切れ端にはドアナンバーも記載されていた為、問題なく部屋に入ることができたのである。

指示されたこの部屋は、オートロックでこじんまりとした2LDKの部屋であり、男性の部屋の割には、比較的整理整頓されているほうだ。

というよりも、部屋には、そもそも置かれているモノ自体が少ない。

部屋に生活感はなく簡素で大きなベッド、ソファそして姿鏡と大型テレビがフローリングに設置されているが、どれもまだ新しい。

キッチンも料理をしている様子はなく未使用状態のままで、冷蔵庫も封のされたままの水のペットボトルが数本と固形物の非常食が数日分入っているだけであった。

スマホを使うのを諦めた真理は、紅音が巻き起こした宮コーでの騒ぎがニュースになっていないかとふと思い、テレビのリモコンを操作し、深夜に放送している番組のチャンネルを適当につける。

テレビ放送の契約はしているようで、大きな画面に映像がうつり深夜のニュース番組がうつった。

「・・・北王子さんはなんのためにこんな部屋を・・職業柄こういう隠れ家的なものをあらかじめ用意していたのかしら?・・・それにしてもあんな騒ぎを駅前のビルで起こしたのに、パトカーのサイレンも鳴らないし、どこのテレビ局も報道してないわね・・・」

真理がチャンネルを変えながらポツリとこぼす。

部屋の中心に大きなベッドが置かれいる配置はやや不自然さを感じさせる。

しかし、加奈子が一通り身体と髪を拭き終わったようで、真理の独り言には応えず濡れたタオルを丸め、脱衣所にある洗濯用のアミかごにビューン!バシン!と投げ込んだ音で思考が中断される。

そして、乾ききっていないアーマースーツに再び豊満な胸を押し込みながら慌てた口調で口を開く。

「真理はここで待ってて、その格好で外に出かけてもらうわけにいかないし、佐恵子さんにもこの状況を伝えて連れてくるわ。私と真理の着替えと貴重品も持ってくるから・・。言っとくけど止めても行くわよ?」

加奈子は胸元のファスナーを開いて、胸の内ポケットに使い物にならなくなったとは言え置いていくわけにもいかないスマホをぐいっと突っ込んでからファスナーを再び首元まで上げると決意した表情で真理に言った。

しかし、真理は加奈子の予想とは違う返答をしたのだ。

「私も行くわ」

ソファに座り顔を伏せたままの真理は、加奈子が言い終わると同時にこたえる。

「止めても行くって言ったでしょ?!こればっかりは・・・え?・・真理も・・?だ、だめよ!私だけで行くの。真理はここにいて?」

加奈子は、てっきり真理に止められると思っていた。

今迄の加奈子の経験上、こういう時、真理はジト目でため息交じりに説教じみた口調で止めてくるのが通例だ。

しかし、止めるどころかまさか真理まで一緒に行くと言い出すとは・・。

「ど、どうして・・?」

言いながら加奈子は真理の表情を読もうとのぞき込む。

一緒に行くと言った真理の表情は、俯いているためよく見えないが、加奈子から見ると少しばかり暗く見えた。

普段から笑顔のポーカーフェイスの真理だが、付き合いが長いため、加奈子には今の真理の表情や態度には違和感を感じていた。

「・・どうしたの?なにか気になることがあるの?」

加奈子はソファに座ったままの真理に声を掛ける。

「紅音は・・今日たまたま我慢の限界がきたから私達を襲ったのかしら?」

真理は伏せていた顔をふぃと上げ、加奈子を見つめて言う。

「そうじゃないの?あいつ短気じゃん・・」

真理の見慣れない様子に加奈子は不安を感じつついつもの調子で応える。

「・・もういいと思ったのも事実でしょうけど・・。私たちがいないほうがいい・・。・・私たちがいないほうが・・都合がいい・・?今日までなら我慢した・・?」

真理はなにか言おうとしたが、途中からブツブツと口の中で煮え切らない自信の考えの方向を纏めるように反芻している。

「真理。なにか引っかかるの?何か知ってるの?・・・私、どうしたらいい?」

加奈子は真理の座っているソファの前にきて跪き顔を近づけて聞く。

真理の能力は【未来予知】。数秒から数十秒の範囲での危険を察知する能力であるが、その性質から、真理自身も普段から長中期的な計画を練る時は、リスクヘッジを必ずするように習慣化されている。

加奈子はいままでの経験上、真理の考えた通りに動いたほうが良いことは身をもって経験しているのである。

だから加奈子は真理の言葉を待った。

「・・まだ何とも言えないんだけど、加奈子にしてほしいことだけ言うわね?まずはとにかく佐恵子のところに行って無事連れてきてほしいの。あとは美佳帆さん達、調査部の人達の安否確認・・・かな・・」

かなりざっくりとしたプランだが加奈子は力強く頷いて即答する。

「わかったわ」

佐恵子のことは最初から連れてくるつもりだったし、美佳帆達の安否確認もお安い御用だ。

ただ確認のために聞いておかなければいけないことを同意の言葉の後に続けた。

「・・でも佐恵子さんのところには私たちが逃げ込んでないかって紅音は疑うだろうから、すでに手が回ってるはずよ?・・・どうするの?・・・誰かすでにきてたら・・やる?」

加奈子は元同僚とも戦いになるかもしれないということにさすがに躊躇したのか、真理の次の言葉をさらに待った。

その加奈子の様子に真理はようやく安心させるような笑顔になって頷き続ける

「ううん。極力戦闘は避けて。はななんかと戦えないし、・・それに、魔眼無しの佐恵子だと、紅音本人じゃなくても、彼女の部下・・松前常務や紅露部長が相手でもかなり厳しいわ。・・・こっそり接触して連れてくる・・と言うのが理想ね」

真理は目を閉じ、眉間に人差指と中指を当てて、「かなり難しいけどやるしかないわね」と自分に言い聞かすように呟いている。

「よし、じゃあそうと決まったら行くわ」

「加奈子。私達宮コーからは反逆者として追われることになると思うけど覚悟・・ある?」

両手で頬をパンパンと叩いて意気込む加奈子に真理は覚悟を聞いたが、彼女に限って心配はなかった。

「当然!」

「ふふ・・加奈子には愚問だったわね」

加奈子はサムズアップしたポーズで白い歯を見せて即答したのに対して、真理は目を細めて笑ってかえす。

「うんうん。でも真理。真理はここにいてね。メガネ画家が帰ってきたとき誰も居なかったら、彼どっかに探しに行っちゃうかもしれないから真理はここにいてよ」

加奈子の言葉に真理は細めていた目を見開く。

「・・・加奈子。一人で大丈夫?」

真理はそう言ったものの、加奈子の返答は予想してた。

「こういう事は私一人の方がうまく行く・・。真理も実はそう思ってるんでしょ?それにそんな恰好で出かけるより、その格好で男を出迎えてあげたほうが良くない?」

「か、加奈子!」

予想してたこと以外のことまで言われ、真理は頬を少し上気させて相棒を非難した。

「にしし・・。じゃ、行ってくる!必ず戻るから!・・・それに、メガネ画家もここに来るとしても、きっと無傷じゃないわ。彼も治療を使えるようだけど、真理も居てあげたほうがいい。・・・でしょ?」

「そりゃ・・そうかもしれないけど・・佐恵子をのほうをお願い。紅音がなりふり構わず彼女を狙ったらおしまいだわ。今の佐恵子じゃとても対抗できない・・。必ず連れてきて。紅音もさすがに無茶しないでしょうけど・・」

「もちろん!」

宮コーから追われ、紅蓮こと緋村紅音という災厄から逃げてきた二人には、思いのほか悲壮感はなかった。

ただ、真理と加奈子にとっては、これからやるべきことが増えて、少し変わっただけだった。

宮川の後継候補の中では、彼女たちの中では佐恵子しか考えられないのである。

加奈子がベランダから跳び夜の向こうに消えていったのを見送ると真理は窓を閉め、再びソファに座った。

・・・宮コー社内では常に業務のことが頭にあり休む暇もなかった真理は、この時この部屋でできることは無く、ただソファに座って今日助太刀に来てくれた男が無事帰ってきてくれるか祈るだけであった。

どのぐらい座っていたのか、真理はいつの間にか微睡んでしまっていたようで、ふと時計に目を向けると午前0時を少しだけまわっていた。

「いけない・・。20分ほど寝てたんだわ・・こんなときに・・」

自分を責めるが、それほど消耗していたことに気付かされる。

その時、玄関の方で物音がした。

反射で【未来予知】展開する。すぐ扉が開くが危険はないと能力が頭に伝えてくる。

「北王子さん!」

真理は声に出していた。

扉を開け倒れ込むようにして入ってきた男、北王子公麿を受け止める。

「真理さん・・。なんとか帰ってこれました・・。あ、失礼・・神田川さん」

「北王子さん・・よくぞご無事で!。こちらへ!ああ・・こんなに・・火傷が酷いです!・・やはり紅蓮の攻撃を随分受けたのですね!」

「大丈夫ですよ。これぐらい・・。大きなのを二つもらっちゃいましたけど、哲司君に鍛えられたおかげで、ほとんど避けられたんです。それに、僕の能力だと紅蓮と言えども刺しきるのは難しいようですね・・。痛つつ・!」

「しゃべらないで。すぐに治しますから!」

真理は公麿を部屋の中央にあるベッドに座らせると、真理自身も公麿の隣に座って、両手で治療の淡い光を発し、公麿の火傷の酷い肩から胸を手で覆った。

「ああ・・真理さんに治療していただけるなんて・・。逃げる時に全力で肉体強化したので、しばらく自分で治療を行えそうもなかったので助かります」

公麿の口調や態度とは裏腹に、肩口と胸に直撃したのであろう火球の後が、えぐい傷口となっていて真理の形の良い眉を顰めさせた。

公麿の着ていたシャツは炎でボロボロであり、真理はそれらを剥ぐようにして公麿の患部を露出し、必死に治療を施す。

「ああ・・ここも・・!そのまま、仰向けに横になってください」

真理は公麿をベッドに仰向けにすると、ところどころ焼き切れたカッターシャツを剥がし、火傷に手をかざす。

真理は、借り物のTシャツだけの姿だということも忘れ、ベッドの上に膝立ちになり、公麿の肩、胸、腰に治療の手をかざしていく。

「明日以降の事はどうなるかという事に関しては頭が痛いところですが、僕が大事だと思うのは、あの状況下で神田川さんあなたと、稲垣さんが無事であったという事です。それ以外の事は、今はもう大したことではありません」

治療に専念し集中している真理に向かって公麿は火傷の痛みが引いてきたのを心地よく感じながら、真理が膝立ちになっているためTシャツの裾がかなり際どいところまでたくし上がっているのをチラチラと盗みながら真理の表情も同時に見る。

北王子公磨は、今明らかに彼の人生では普通に生きていれば、ありえないほどの彼とは釣り合いの取れない女性が、今治療という名目とは言え、彼の身体にベッドの上でTシャツ1枚という姿で触れているという事実に命をかけた甲斐があったなとしみじみ思い、この先に起こるはずないであろうとは思うが、万が一の神田川真理という高嶺の花との情事を一瞬、無意識に頭をよぎらせては、首を横に振り大きく否定した。

【第9章 歪と失脚からの脱出 11話 離散そして勇者の帰還 終わり】12話へ続く
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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