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第10章  賞金を賭けられた美女たち 13話 ダメ男の模範とそれを克服した男

第10章  賞金を賭けられた美女たち 13話 ダメ男の模範それを克服した男


「まてー!ごらぁ!逃げても無駄だぞ!」

後ろからクソ生意気な声が聞こえてくるが、常に冷静沈着なオレは振り返って言い返したりはしない。

そんなことをすれば、いくら俊足と名高いこの俺でも追いつかれてしまう恐れがあるからだ。

身の程知らずにも俺様を追ってきている集団の先頭は、よく知る男、後輩のモブこと茂部天牙の野郎だ。

デカい図体を生かした力任せなことしかできない不器用なヤツだと思っていたが、細い路地裏に散乱しているゴミ箱などを華麗に飛び越えて、図体に似合わない俊足を見せ、徐々に距離を詰めてきやがりやがるのは、きっと俺の足の調子が悪いからだろう。

万全の状態なら、俺がモブなんかに後れを取るはずがない。

学生時代にタイマンしてやったときだって、あの日は朝から腹の調子が悪かったせいだ。

大山田種多可は本気でそう思っていた。

大山田は天才なのだ。

自分に都合の悪いことについて言い訳を考えることについてはだが・・。

何をやらせてもオールラウンドにできない人間ほど、言い訳を考える才能は素晴らしいのは、どのダメ人間にも共通する。

そして、ダメ人間だからこそ真実からかけ離れた結果を導き出すのであった。

モブの奴が俺らの店で見せた力・・、俺の能力とそっくりだった。

あんな奴でも能力者だってのか?

俺らの周りで、ほかに力を持ってる奴なんていなかったが、よりによってあんな野郎が・・、腕にガスボンベを仕込んでないとすると、あいつも火を使う能力者か?

ちっ、面白くねえ。

特別なのは俺だけで十分だってのによ。

まあ、モブが多少能力を持ってたって俺に敵うわきゃねえ。

そんなことあっていいわけねえんだ。

・・・あいつ一人だけで追ってきてやがるんなら、ギッタギタの返り討ちにしてやるところだが、卑怯にも3人がかりか・・。

逃げながら、後ろをチラりと振り返ると、モブだけでなくモブの後に続くショートストレートの黒髪と、亜麻色ロングの女もモブの後に続いて追ってきているのだ。

1人相手に3人たぁ男の風上にも置けねえなあ!なんであんな卑怯なクズ野郎が宮コーなんかに就職できてんだ・・?!あの会社の平均年収って1000万超えてんだろ?くそっ!面白くねえ!なんでこの大山田様って天才をスカウトしねえで、モブなんかに目付けてんだ?!どうせスカウトした奴も脳みそ空っぽだろ?!

大山田がそう罵ったとき、モブたちが追いかけっこをしている2kmほど東にある宮川コーポレーション関西支社内では、高嶺弥佳子にざっくりとショートカットに散髪されてしまった宮川佐恵子が鏡の前に座らされていた。

スタイリストたちによって、上場企業の重要なビジネスパーソンでもあり、宮コーの広告塔も兼ねている佐恵子の新たな髪型を提案し、希望や意見を求め、同意を促してきているが、いまだに首まで斬られてしまったかもしれないとショックを受け、呆然としている佐恵子は、大山田の罵りのせいなのか、突然盛大にくしゃみをしてしまっていた。

佐恵子の何の予備動作もないくしゃみのせいで、スタイリストが佐恵子の短くなった髪にあてがっていたハサミの刃が、佐恵子の髪を更に短くカットしてしまっていた。

生まれながらにして、才能に恵まれたお嬢様は唯一運には恵まれていないのだ。

裕福とはいえ家庭の環境、親族の不仲、生まれながらにして背負った境遇、男運など・・あまり恵まれているとは言い難いが、本人にはそれが普通だと思っていたのが救いである。

ふぁさぁ・・と案外大量に床に落ちた佐恵子の髪の毛を見たスタイリストは顔を青くして、頭を下げてくるも、急に動いたのは佐恵子なので強くも責められず、佐恵子は長年かけて腰までとどく見事な黒髪だったのが、いまや耳も隠せないほど短くなって鏡に映る自分の姿に涙目で怨めしそうに睨み、唇を噛んでいた。

そんな様子の佐恵子に加奈子がそわそわと世話を焼き、凪が慰めるように背中を撫で、真理が憂いの表情を顔に張り付けたまま、誰にも分らない程度でプルプルと小刻みに顔を震わせていた。

宮コー関西支社内で幹部たちがそれぞれ心境を揺さぶられているとは知らず、モブたちの路地裏チェイスと大山田の妄想肥大は続いている。

大山田は路地裏を右へ左と曲がり、なんとかモブたちを巻こうと全力で走っていた。

だいたい、みんな俺に対する接し方がなってねえ!親も世間も政治もみーんな俺をもっと賞賛しやがれってんだ!俺にたいする然るべき態度ってのがあんだろーがよ?!いかに俺が温厚で平和主義者だからっても、限度があらぁ!決めたぜ!これからは大山田様を舐めた態度の女は有無言わさず【強奪】してやる。男はみんな炎で消し炭にしてやるぜ!

と、出来もしないことを心の中で言う癖のある大山田は気分よく妄想に浸って追われているという現実逃避をはじめていた。

つい先ほど大の男3人がかりで、女一人に襲い掛かかり、後ろから不意打ちを決めた調本人かつ、無抵抗になった女に、スタンガンを20発以上撃ち込んだことを完全に棚上げして、思考能力微弱者特有の「都合の悪いことは何でもかんでも自分以外の何かのせい症候群」重症患者の大山田は脳内でお花畑満開の妄言を言うことによって、セルフ脳内麻薬を汁ダクに分泌しハイにキマっていた。

しかし、いくら脳内で自分は虎だと粋がってみても、リアルの大山田はひいき目に見てもネコに狩られるネズミである。

だいたい、能力者といっても今の大山田では一般女性一人を素手で犯すのも難しいし、いくら炎が使えると言っても人間一人を消し炭にするほど炎を発現するだけのオーラは、大山田をさかさまにして、雑巾のように絞ってもオーラの量が足りないのだ。

妄想で自分を慰め、幾分気分の良くなった大山田だったが、後ろを再度振り返った時、追いかけてくるモブとの距離が縮まっていることに驚愕した。

「くそっ!韋駄天の大山田様の足についてくるたぁ・・!・・さてはあいつ脚にもなにか仕込んでやがるな・・?!それにしても・・なんで全員俺を追っかけてくるんだ!?」

香澄を肩に背負い、覆面を被ったまま全速力で走っている大山田は、少ない脳みそを総動員しても、なぜ全員自分を追ってきているのかがわからなかった。

「ヒーローだからピンチが似合うのはわかるけどよ・・」

大山田は導き出した斜め下の結論を呟いてみるが、その結論は間違っているし、事態が好転することもない。

いくら紅蓮から【強奪】し、筋力や体力を向上させているとはいえ、気を失った女を一人担いだまま全力疾走するのは大変な重労働である。

そんな状況でもかなりの速度で走っている大山田はたしかに頑張っていると言えるが、そろそろ体力も限界である。

清水には途中でバラけて逃げることを提案され、そのほうが大山田自身も逃げ切りやすいと思って、清水のその提案に大賛成したのだが、全員が自分を追いかけてくるのは想定外だった。

女を担いでいれば、それを取り返そうと追いかけられるのは当然、という結論に達しないところが大山田のスゴいところである。

大山田は香澄を肩に担ぎながらも、能力者として目覚める前の自分とは比べ物にならないぐらい強化されている脚力を使い、全速力で走っているがその差はじりじりと縮まり、すぐ後ろを駆けてきているモブの足音がすぐ後ろで聞こえてきている。

くそっ!モブのくせに!!

もう真後ろまで迫ってきているモブの気配に大山田は大いに焦った。

そして、ついに逃げるのを諦め急ブレーキしそのまま後方に向かって短い脚を振り上げる。

がつんっ!

鈍い音が路地裏に響いた。

覆面をした大山田の顔面にモブの右ストレートが直撃したのだ。

大山田が振り向きざまに放った回し蹴りはモブの左腕で受け止められ、そのまま走ってきた勢いを乗せた右ストレートを顔面に叩き込まれたのだ。

モブは、香澄を担いだまま後ろに倒れようとした大山田の胸ぐらを掴んで支えると、香澄を右手で抱きかかえて、大山田をそのまま左足で蹴り飛ばした。

「ぐえっ!」

相当な勢いで蹴られた大山田は、お尻からアスファルトに路地に尻もちをつき、その勢いを殺しきれず二回転して雑居ビルの壁に後頭部を打ち付け無様な悲鳴を上げてようやく止まることができた。

「部長!部長?!大丈夫っすか?!」

「・・ぅ・・茂・・茂部くん?」

「怪我はないっすか?!部長!」

転げた大山田を無視し、モブは香澄を抱きかかえて無事を確かめるように声を掛ける。

モブに抱きかかえられた香澄は、うっすらと目を開けてモブを確認すると力なく笑顔を向けてくるのがやっとで、明らかにどこか怪我をしている様子である。

「どきなさい!」

ぐったりした香澄の様子に狼狽しているモブの後ろから雫が声をかけ、モブに抱きかかえられている香澄をゆっくりと受け取るように抱きかかえた。

「もう大丈夫ですよ。岩堀部長」

雫は香澄を抱きかかえて声をかけるが、香澄はまたもや意識を失ってしまったのだ。

「雫。どうなの?」

「外傷はほとんどないけどけっこうやられてるわ。・・きっとスタンガンね。こういうゴミ共が好んで使うってことは、スタンガンって使い勝手がいいのかもね・・」

かつて自分たちもスタンガンで襲われたことがある二人は、香澄の衰弱した様子を見て気が付くところがあったのだろう。

咲奈も雫もぎりっ!と歯ぎしりしながら地面にへたり込んでいる大山田を睨むが、香澄の治療が先決と思い至ったようで、香澄を雫の膝枕の上で、二人がかりで治療を施し出した。

「あんたはそいつふん縛っちゃって」

「了解っす。でも縛るもんなんてねえんで、動けなくなるまで殴るっすよ」

気を失った香澄を治療しながらそう言った雫に、モブも腕をぽきぽきと鳴らしながら応え、覆面をしたままの大山田に近づいていく。

「ひぃいい!」

背後はもうビルの壁なのでそれ以上後ずさりできないにもかかわらず、大山田はモブの雰囲気に怖じ気て無様な声をあげる。

そして、大山田はポケットからスマホを取り出し、何やら操作し出したのだ。

「今更無駄っすよ。仲間に連絡何てさせねえ」

ごきっ!

感情を感じさせないモブのセリフと同時に、鈍い音が響く。

大山田がスマホを握っていた左手の付け根あたりにモブの蹴りが刺さったのだ。

そして空中に舞った大山田のスマホをモブがキャッチする。

「ぐうううう!!うう!や・・やめてくれ!俺は下っ端なんだ!頼まれただけなんだ!見逃してくれ!この通りだ!」

モブの蹴りの激痛から、大山田は口から涎を垂らして土下座をし、必死で命乞いを始める。

「・・んん?頼まれりゃなんでもしていいってもんじゃねえっすよ。ってどっかで聞いたことある声っすね・・。まあいっか。連れ帰って支社長に見せりゃなんも隠すことなんてできやしねえからな」

モブがそう言って首を傾げながら、大山田が被っている覆面に手を掛けようと近づく。

「ちょっと!汚いわね!吐かさないでよ!そいつ連れて帰るったって、そんな汚いのを私の車に乗せないわよ?!」

その時、香澄を雫と一緒に治療している咲奈がマスクの口から血と涎を垂らしている大山田を見て不満をあげた。

普段おとなしい楠木咲奈という女性は、こと車のこととなると人格が変わるようであった・・。

「だ、だいじょうぶっすよ。あの高級車にはのせねえっす・・。暴力鬼・・いや、稲垣主任に連絡するんで、社の誰かに車寄越してもらうっす。稲垣主任にさっきの警察のこともお願いしなきゃいけねえっすしね。こんなつまんねえのをあんな車に乗せることねえっす」

モブが香澄を治療している咲奈の方へ向かってそう言った時、聞き慣れない声が聞こえた。

「まったく・・ね。つまらん仕事さ」

「ぼやいても仕方ない」

モブの左右から二つの声がしたのだ。

いったい何時からそこに居たのか、モブから5mほど離れた路地裏の壁に、それぞれ違う男がそこにはいた。

二人とも年のころは30前後だろうか。

見た目の服装や容姿は取り立てて目立つところはないが、二人が纏っている雰囲気は明らかに一般人のそれではない。

「えっ!?」

雫と咲奈もその二人の気配に声を掛けられるまで気づけなかったらしく、二人揃って驚きの声をあげて交互に二人の男に目を向けている。

「何もんだ?あんたら?」

モブも二人の気配に全く気づけなかったのだが、ヤンキーあがりのモブは、こういう時にこそ狼狽えて弱みをみせることが最も悪手であることを身に染みてわかっていた。

そのため、自分よりおそらく格上でしかも能力者であろう雰囲気を放っている二人の男に挟み撃ちされながらも、内心はともかく表情はやる気十分の気迫で言い返せたのだ。

「威勢のいいこって」

「めんどくさい。さっさと済ませよう」

二人の男はモブの問いには答えず、無防備ともいえる様子でモブとの間を詰め始めた。

肩をすくめ、気障に言ったダサい和柄のジャンパーを着た男と、そこまで背が高くないため、高級ブランド品ぽい黒いロングコートが絶望的に似合ってない男がモブを左右から挟み込む。

モブの体格や雰囲気からすれば、モブに凄まれればたいていの者はビビッてしまうだろう。

しかし、突如現れたダサい服装の二人の男たちはそんな様子を微塵も見せない。

(こりゃ・・やべえな)

モブはそう直感しながらも口と表情には出さず、視線だけを咲奈と雫に向けて「逃げろ」と目と表情で合図を送る。

「くくっ、身構えるなって」

そんなモブに気が付いたのか、和柄ジャンバーの方が短く苦笑して言った。

和柄ジャンバーの口元を抑え気障に笑う仕草にイラっとしながらも、モブは全身を伝う冷や汗を悟られないように、近づく二人を警戒し腰を落とす。

モブは、さっき逃げ出した覆面男の仲間が戻ってきたのかと一瞬思ったが、あの二人とは明らかに雰囲気が違うし、現れたダサい服装の二人は覆面すらしていない。

へたり込んでいるもう一人の覆面男、大山田に目を向けるが、その大山田も突如現れた二人の謎の男の様子に完全にきょどっている。

(こいつらの仲間じゃねえ?・・なんでじゃあこんなタイミングでこんな奴らが現れたんだ?今の俺じゃ手に負えねえ・・。今朝手合わせした凪の姐さんとじゃ、この二人はとても比べられねえけど、俺だと1対1でもたぶんこいつらに勝てねえ・・。さて・・どうするか。一人ぐらいは、って無理か。・・やられるにしてもせめて一発づつぐらいはぶん殴ってやらねえとな・・)

モブも苦手な思考を働かせるが、この男たちが現れた理由は皆目わからないので、考えるのをとっととやめ、どうやれば一矢報えるのかとできることに集中し頭を切り替えていた。

そして、横目で雫と咲奈が香澄を抱えてモブに頷き、去ろうとしているのを見てモブは笑顔で二人に頷き返す。

「お兄さんがた、どういう了見か知らねえが、やるなら相手になんぜ?」

格上と思われる能力者二人に対し、モブは平静を装い挑発して見せる。

モブが挑発をしたのは、負傷した香澄たちを無事逃がすため自分に注意を向ける為だ。

「生きてるな?・・よし」

「くっ?!」

しかしモブの心配をよそに二人の男は、へたり込んでいる覆面男の方に興味がある様だった。

黑ロングコート男の声が間近で聞こえたことに、モブは慌てて振り返ると、へたり込んで身を丸くして震えている大山田に向かって黒ロングコート男が声を掛けていたのだ。

「おい!そいつにゃ俺も用があるんだ。勝手なマネはしねえでもらおうか?!」

とモブが、黑ロングコートの肩に手を置いて振り向かせようとするが、モブの手は振り払われ振り向きざまに黒ロングコート男のボディブローがモブの腹部に突き刺さる。

が、モブのガードが寸前で間に合い男の拳の威力をなんとか打ち消せていた。

「へぇ?こいつ・・そこそこつかえるんだな?」

黒ロングコート男が驚いた表情のモブに、意外そうな様子とのんびりした口調でそう言ったのだ。

「ほっときましょう。面倒はごめんです」

モブの背後にいる和柄ジャンバーが自分の前髪を指でぐるぐるいじりながら気障なセリフで黒ロングコートにそう言う。

「・・だな」

黒ロングコートも和柄ジャンバーの意見に同意のようだ。

和柄ジャンバーと黒ロングコートはモブを警戒しつつも、へたり込んだ大山田のところまで近づいてきた。

そして、完全にきょどって自分を挟むようにして立っている男二人を交互に見上げている大山田の肩に二人は手を置き二人揃って呟いた。

「【転移】(ゲート)」

その瞬間モブの目の前で3人を黒い光が包み込み、光が霧散し出す。

「なんだ?!ゲートってなんだよ?!」

ゲートの意味が解らず、攻撃されると思ったモブは両手で光を防ぐようにして身構えてそう叫ぶが、光は徐々に輝きを失っていった。

「いねえ・・。どういうことだ・・?」

その光が消え去った後3人の姿はかき消えていたのだった。

「おい!お前!散々走らせやがって!!」

モブが一人放心していると、大声を上げ背後からモブの背中に体当たりをしてくる男がいた。

「っと!?」

モブが気配に気づき半身に身を捻って、男のタックルを躱すと、もう一人迫ってきた男がモブのスーツの襟首を持ち身体をすでに翻らせていた。

(背負い??速っ!?・・やべっ!)

油断していたとはいえ、モブの強化した身体能力に迫る速度でもう一人の男が背負い投げを仕掛けてきたのだ。

「くっ!」

咄嗟に腰を落とし、モブも中学生時代に少しかじった柔道技である裏投げで、背負いを返そうと男のスーツのズボンを掴む。

「やるな!」

必殺と確信していた会心の背負いを防がれた男は、悔しい表情ながらも何故か嬉しそうな声をあげて組みなおす。

モブと掴み合いながらも正面を向き、背負いを仕掛けてきた男はスーツ姿ながらも丸坊主で、先にタックルいや、たぶん諸手刈りという柔道技を仕掛けてきた男も同じく丸坊主であった。

「卓也気を付けろ!警官を二人一瞬でやったやつだ!」

「わかってる!今ので十分わかったぜ!こいつのヤバさは・・んん?・・君は?」

背負いを防がれたのが余程ショックだったのか、スーツに坊主頭の二人はモブのことを相当警戒しかけていたが、モブの顔を見て気が付いたようだ。

「おい君!さっきの仲間の女も身柄は確保してる!おとなしくしなさい!・・・って・・・あっ!君は宮川さんとこの?たしか・・茂部くんか?」

組み合ったままどうするべきかと迷っているモブに向かって、最初に諸手刈りを仕掛けてきた方の背の高い丸坊主がそう叫んだ。

二人の丸坊主男はモブの顔を見て気が付いたようだが、モブは気が付けない。

「いきなり襲い掛かってきて大人しくしなさい!って素直に言うこと聞けるか・・って!?さっきの仲間の女ってあの二人を?確保した??!それになんで俺の名を??!」

モブは咲奈と雫もこの男たちに捕まってしまったのかと慌てたが、スーツ姿の坊主男は、モブを振り払うと、みだれたジャケットとカッターシャツの襟を整え、内ポケットから黒い手帳を見せてきた。

「忘れたのか?刑事の粉川だ。ついこないだ一緒に食品工場に行っただろう?ほら、美佳帆さんたちと・・」

「同じく杉だ。暴走行為に公務執行妨害、それに傷害も加わるかな。とりあえず事情ぐらいは聞こうか?茂部君・・・。」

「おっさんたち・・・ああ!あの時の!刑事さん達っすか!」

モブもようやく、美佳帆、スノウ、佐恵子たちと寺野麗華の情報を探りに同行してもらった時の刑事たちだと気が付いた。

「ああ・・。さっき警官二人やっちまったの俺っす・・」

モブは大山田達を追う為に、大勢の通行人の前で制服を着た警官二人を当身で気絶させたことを思い出し、手のひらで顔を覆うようにして天を仰いだのである。

「おっさんって言われるほど年は食ってないはずだが・・まあ、そうだ。大人しくついてきなさい」

「・・それにしても宮コーの社員たる君が大変なことをしでかしたな?大事にならんようにしたいが、事によるぞ?」

「・・・しかたねえっす。あとで支社長か主任に連絡させてくださいっす」

杉と粉川に両脇を挟まれ、モブはパトカーまで連行されていったのだった。

【第10章  賞金を賭けられた美女たち 13話 ダメ男の模範とそれを克服した男 終わり】14話へ続く
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2020/05/18(月) 01:24 | | #[ 編集]
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筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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