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第9章 歪と失脚からの脱出 36話 鎮火された紅い炎

第9章 歪と失脚からの脱出 36話 鎮火された紅い炎

紅音は、先ほど黒装束の男に発射したものと同等の威力のある高熱の白熱大火球を放ったところで、驚き身と顔を強張らせた。

驚いた顔の菊沢美佳帆、焦った顔をしつつ先ほどの【霧散無消】という技能を放とうとしている霧崎美樹、その前に長い髪を靡かせ右目を黒く光らせた宮川佐恵子が火球を止めようと、紅音と美佳帆達のあいだに飛び込んできたからだ。

「えっ?!佐恵子?!っ無理よ!」

紅音はとっさに叫び、放った火球を解除しようとしたが、すでに手から離れてしまっては術者といえど、もはや止めることはできない。

白熱色の大火球は、紅音の込めたオーラ分の威力を内包したまま、美佳帆と霧崎目掛け放たれた勢いを失わず唸りを上げ突き進む。

「紅音!これ以上させないわ・・!」

肉体を極限まで強化した佐恵子は魔眼の右目を光らせ、大火球の軌道を逸らそうと身構えたのだ。

「避けなさいよっ!佐恵子!」

紅音は声を裏返し悲鳴に近い声で、何故そう叫んでしまったのか自分でもよくわからなかった。

霧崎美樹も美佳帆を背に隠しつつ、【霧散無消】を放つが、火球の威力のすべてを奪いつくすには、迫る火球の速度が速すぎた。

「くっ!消しつくせません!」

発射された時よりも火球はやや小さくなったが、着弾までに消しきれそうにないと悟った霧崎美樹は無念そうに短く唸った。

しかし佐恵子は、自身が大怪我をしてもこれ以上紅音に罪を重ねさせまいと覚悟を決め、両手を重ね、火球を弾き飛ばそうと振りかぶり肉体を強化していた。

「はぁああ!」

佐恵子が決死の覚悟で吼えた時、急に何者かに身体を抱きすくめられ振り回され視界が猛スピードで流れる。

「えっ?きゃああ!」

「はああああああぁ!」

とっさに叫んでしまった悲鳴は佐恵子自身の声で、ハスキーな声での咆哮は佐恵子にとっては聞きなれた声であった。

ぼぅんっ!

白銀の髪を靡かせ、佐恵子を抱きすくめ抱えたまま回転し、紅音の放った大火球を右脚の一閃で、遥か上空へと蹴り飛ばしたのだ。

弾かれた火球はそのまま朝焼けの雲を蹴散らし、雲の向こうに消えて見えなくなった。

「熱っつ!くうぅうう!・・」

「加奈子ぉっ!」

「・・佐恵子さん、遅くなって申し訳ありません・・!」

銀獣こと加奈子は、銀色に輝く髪のまま佐恵子を両腕で抱え遅参を詫びた。

「ああっ!加奈子っ・・!無事だったのね!電話が繋がらないからてっきり加奈子にもなにかあったのかと・・・でも、無事だったのですね。来てくれて助かったわ・・さすがに今のは死ぬかと思いましたから・・!」

佐恵子は抱えられたまま加奈子にそういったが、加奈子は佐恵子ににっこり笑顔を向けてから、すぐにキッと紅蓮こと緋村紅音を睨み上げた。

しかし、当の紅音も火球が弾き飛ばされ逸れたことになぜか安堵した様子で、手錠された両手を床についてガクリと崩れ落ちてしまった。

加奈子は紅音のその様子に「ん?」と眉を顰め訝しがるも、紅音らしくないとは言え紅蓮の動きを注視し油断なく構えた。

しかし、その紅音の様子を好機と察した霧崎美樹は、オーラを霧散させる技能を展開させたまま、紅音との距離を一気に詰め、一瞬で紅音を押し倒し床に組み伏せたのだ。

「きゃあ!・・っ痛ったいわね!もう抵抗しないわよ!!痛っ!痛いったらっ!霧崎っ・・!・・ちょっ!このデカ女!!」

「デカくありません!あなたが小さいだけです!」

少し気にしていることを言われたのか霧崎美樹はそう言い返すと、紅音を膝で地面に組み伏せ、抵抗しないと悪態をつく紅音の言をもはや信じる気もない様子で、容赦なく地面に押し付けている。

「紅蓮のオーラを無力化してる間に拘束して!はやくっ!」

「承知しました!」

霧崎と紅音の体格差はずいぶんと有り、豊満だが、がっちりした筋肉質な霧崎に、小柄で華奢な紅音が地面に押し付けられているという図である。

そこに霧崎の指示に勢いよく返事をした警官隊員たちが殺到しだした。

霧崎美樹に抑え込まれた紅音は今度こそ完全に拘束されだし、赤く艶のある巻き毛は床を這い靴で踏まれている。

大勢の警官たちに膝や脚でのしかかられた小柄な紅音は、耐えるような小さな悲鳴を上げ、悔しさに滲んだ顔を歪め屈辱と痛みに耐えているように見えた。

「あ、紅音・・」

そんな様子の紅音と目があった佐恵子は、抱きすくめている加奈子だけに聞こえる程度の声で思わず幼馴染であり先輩でもある名を呼んでしまっていた。

「・・・佐恵子さん・・。紅音に同情しちゃダメです。あいつは私や真理も・・メガネ画家まで殺そうとしたんですよっ!美佳帆さんたちだって・・たった今まで・・死線の上を綱渡りしてたはずなんです!支社だってこんなめっちゃくちゃに・・」

佐恵子の心境を知ってか、加奈子が嗜めるように佐恵子の耳元でささやく。

「そうね・・。みんなわたくしのせいですわ。・・わたくしの力が及ばないせいで・・紅音をここまで暴走させてしまったのです・・」

「佐恵子さんのせいじゃありません・・」

政敵とは言え幼馴染の紅音が、オーラを封じられ力づくで拘束されている様子に佐恵子は同情を滲ませたが、加奈子の心境は微妙だ。

地面に押さえつけられ、霧崎美樹の【霧散無消】を照射されっぱなしの紅音は、武装警官たちに乱暴に抑えつけられ、背中や脚、さらには頭にも膝を乗せられ体重をかけられて、床に顔を押し付けられて苦しそう歯を食いしばり、目を固く瞑って耐えている。

すでに身体の前で戒められていた手錠を解かれ、再度、背中側に両手を捻りあげられ厳しく戒められたうえ、さらに念には念をということだろうか、指錠までも嵌められだしたのだ。

「ちょっ!そんなことまでしなくても動けないって!・・痛っ!・・て、抵抗しないって言ってるでしょ!ちょっ!痛い!!もうっ!痛いってばあ!乱暴にしないでよぉ!指錠とか肉を挟んでるからっ!痛いって言ってるじゃないっ!」

手を後ろ手に手錠されたにも関わらず、更に厳しく戒められだした紅音は再度声を上げて抗議し出した。

霧崎美樹の【霧散無消】を至近距離で照射されっぱなしの紅音は、得意技の炎はもちろん肉体強化を行うことも全くできない。

見た目通り華奢で小柄な女並みとまではいかないが、いまの紅音は純粋な筋力でしか力を出せていないのだ。

しかし、先ほどまでオーラを纏った紅音の猛威を目の当たりにし、実際にその技を受けた武装警官たちは紅音に容赦はなかった。

「足も拘束しろ!どんな能力を使うかわかったもんじゃないぞ!」

「痛いつってんでしょお!?今はあの爆乳のせいで使えないわよ!あなたたち上司の能力も知らないの?!・・重いっ!ううぅ!!きゃっ!どっ!どこ触ってんのよ?!止めっ!脚を触るな!痛いのよお!もうぅ!き、霧崎!私は能力使えてないのよぉ!わかってるでしょ?!こいつら止めさせてぇ!」

警官隊員たちにもみくちゃにされ、紅音が着ていたジャケットは破れて床に落ちており、ブラウスのボタンははだけ、タイトスカートもスリットから腰の部分まで縦に破れてしまっている。

紅音の身につけている赤いブラとショーツが、ブラウスとスカートから覗くと警官隊員たちの心の何かに少しずつ点火しだしてしまったのだ。

先ほどまで人外と思える膂力で自分たちを蹴り飛ばし、銃弾さえもほとんど炎と業風で弾き飛ばした超人である紅蓮が、今では単なる女になり、見た目通りの華奢な身体では自分たちを跳ね退ける力が無いことに、妙な高揚感を覚えだしたのだ。

霧崎美樹は紅音の言い分を聞きながらも肩や脚にある銃創を最低限の治療で失血を止めただけで、警官隊員たちを制止はしない。

「ち・・治療よりもこいつら止めさせてよ!・・重いわっ!わ、私はオーラで肉体を強化してなかったら、素の力はそんなに強くないのよぉ!いっつも普段から肉体は強化してるだけなのよ!だからっ!いまは・・!・・・く・・苦しいのよぉ!」

悲鳴どおり、紅蓮と言えども能力が使えなければ、自分たちの力でも抑えつけられると分かった警官隊員たちの心情に、嗜虐心が混ざりだしているのを霧崎もわかっていた。

しかし、霧崎は紅蓮を今度こそ完全に無力化させるのを優先し、公務員にあるまじき部下たちの少し行き過ぎた行為に少目を瞑ることにしたのだ。

武装した屈強な警官隊員たちに何人も身体の上に乗られ、後ろ手の手錠と足首も同じく施錠されだした。

「くっ・・くそ・・・こんな格好っ!・・私にこんな・・ただじゃ済まさないわよっ!霧崎ぃ!・・お前なんかどうにだってできるのよっ!?」

うつ伏せにされ、破れたスカートから覗いているであろう自分の下着をせめて隠そうと膝を閉じようとするが、先ほど紅音に蹴り飛ばされた警官の一人が紅音の足の間に座り込み両足首の施錠をしだしたのだ。

先ほど紅音に蹴り上げられた警官の一人は、わざと紅音の膝が閉じられないようにして膝の間に割って座り込み、地べたに這いつくばっている紅音の形の良いヒップがよく見える位置で見下ろしゆっくりと足首に施錠しだす。

警官隊たちは一様にフルフェイスのヘルメットをかぶっているため、表情は読み取れないが、ヘルメットの下の顔の口元は緩んでいただろう。

真っ赤な下着に包まれたヒップを隠すこともできずに歯を食いしばり悔しがっている紅音の無防備な股間に、下着ごしとは言え乱暴に靴のつま先がめり込むほど押し当てられている。

「こっ・このっ!こんなの許せない!・・いい加減にっ!・・きゃっ!?」

恥辱から顔赤くした紅音は、うつ伏せのまま顔を上げ後ろの男の顔を確認しようとしたとき、髪の毛を掴まれて頭に黒い布をすっぽりと被せられ、素早く首のところで括られてしまったのだ。

「もういい!これだけ拘束すれば大丈夫でしょう・・連れて行きなさい!」

紅音に【霧散無消】を十分施した霧崎は、額の汗を手の甲で拭いながら、ようやく部下たちに指示を出した。

腰のところで両手と両脚を戒められた紅音は、赤いショーツが丸見えになった格好で二人の警官たちに持ち上げられ、袋をかぶったままの無残に戒められた格好のまま連行されて行ってしまった。

「ふん・・。ざまあ・・だわ」

銀髪でなくなった加奈子が、顔に袋を被せられ、何かを喚きながらも、担がれて連れていかれている紅音をみて一言そう呟いた。

「・・・」

加奈子のセリフに佐恵子は何も言えずに目を伏せていたが、加奈子がその表情をみて口を開く。

「悩み過ぎですよ佐恵子さん・・。紅音は昔から嫌なヤツでした。同情の余地なんてありません。それにあいつが今日やったことは許されることじゃないです。私や真理や美佳帆さんたちまで、あいつはみーんな殺すつもりだったんですからね!あいつに同情なんてしちゃいけないんです!・・・本社も今回ばかりは紅音にキツイお灸を据えてくれるのを期待します・・でないと・・」

私が許さない。という雰囲気の加奈子のボルテージが上がりすぎないように、佐恵子は口を開いた。

「そうね・・。そのとおりだわ・・。加奈子の言う通りよ。でも・・加奈子ありがとう・・来てくれて。おかげでせめて紅音に殺人をさせずに済みましたわ・・。わたくしだけでは到底、紅音を止められませんでしたから・・加奈子が来てくれてなければ、私もどうなっていたか・・」

「い、いえ・・えっと・・私こそ、遅くなってすいません。で、でも、佐恵子さん達が無事でよかったです。・・あっ!・・佐恵子さん!ずいぶん髪が燃えて縮れちゃってますね・・せっかくの綺麗な髪だったのに・・」

加奈子はまさか行きずりの男との情事が良すぎて気を失って着信音に気付かなかった、などとは言えず、少ししどろもどろ気味になるのを誤魔化すように、熱で縮れた佐恵子の髪の毛を手にしてそう言った。

佐恵子は香奈子の様子に気付いた様子もなく「そんなのいいのよ」と言いつつ、霧崎に手を貸してもらって立ち上がろうとしている美佳帆のところに歩き出した。

「美佳帆さま!よくぞご無事で」

「無事~ってことないけど生きてる。はははっ・・とんでもないヤツだったけどなんとかなったわね・・・。みんなのおかげだけど・・。まったく・・宮コーにはあんなのがいたのね。今回ばっかりは本気で死ぬと思ったし、私ももっと精進しなくっちゃって思い知らされたわ。・・4人ならもっと戦えると思ってたのに・・」

駆け寄り二人は手を取り合って無事を喜びあう。

「あの紅音相手によく生きのびてくれましたわ。美佳帆さま・・本当によく持ちこたえてくれました・・。美佳帆さまたちをこんな危険に晒してしまったのはわたくしの失態ですわ・・。ここまで大胆な行動をとらないと・・紅音のことを甘く判断してしまってました・・」

「ま・・私たちもなんとか無事だったし・・支社はめちゃめちゃでこれから大変そうだけど・・問題はこれから・・よね?・・宮川さんはどうするの?」

火傷やキズは霧崎捜査官に癒してもらったのだが、ススだらけなのはどうしようもない。

美佳帆はススで汚れた顔を神妙にさせて、佐恵子の返答を待った。

「・・・本社に行きますわ・・。目が使えないからなどと気弱になってました・・わたくしらしくもない・・。本社に・・お父様と叔父様にわたくしを宮川コーポレーション関西支社長に戻すようにと言ってまいりますわ」

美佳帆が何を言わんとしているのか察した佐恵子は、ふぅと軽く息を吐き出してから、静かな声ではあったが、はっきりとそう言った。

「そうよね。そうこなくっちゃ!私たちを宮コーに誘ったのは宮川さんなんですからね。宏だって口では、なんだかんだ言っても宮川さんには期待してるみたいだし・・、私としても、宮川さんには今日の危険手当や損失分・・深夜残業に必要経費もばっちり見てもらわなきゃ・・・、それに・・これからもちゃーんと稼がせてもらいますからねっ!?」

「まあ!・・ふふっ・・美佳帆さまったら・・」

「ここだけの話・・紅蓮は支払いのほうもなかなかシビアでさあ・・だから、宮川さんにはまた期待してるのよ?」

手の甲で口を隠すようにして、顔を近づけてペロリと舌を出し、悪戯っぽい顔でそう言った美佳帆に、破顔した佐恵子は美佳帆の顔の前に人差指を立てた。

「う~~んと働いていただきますからね!」

佐恵子はそう言うと珍しく声を立てて笑い、美佳帆もススで汚した顔で同じく声を上げて笑う。

「また佐恵子さんのことを支社長って呼べるようになりますね!」

そう言うと加奈子も二人に合わせて笑った。

半壊した宮コー関西支社の屋上近くのフロアで、登る朝日を浴びながら3人は大いに笑ったのだった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 36話 鎮火された紅い炎終わり】37話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 37話 ただの女である事

第9章 歪と失脚からの脱出 37話 ただの女である事

窮屈な格好で四肢を縛られた挙句、頭には袋のようなものを被せられているせいで状況はわからないが、今は周囲に人の気配はなさそうであった。

「ったく!どこに行ったのよ!霧崎ぃー!」

うつ伏せで手足を腰の後ろでまとめられている紅音は、顔だけ袋の中という窮屈な暗闇の中で叫んでみたものの、暫く待ってみても返事はどこからもかえって来ない。

武装警官たちにこの部屋に担ぎ込まれ、地べたではないとはいえ、何か硬いテーブルのようなものの上に乱暴に降ろされたままそれっきりで、暫く時間が立っているのである。

そろそろ30分ぐらいになるだろうが、未だに警察側に何か動きがある様子はない。

「くっ・・・何よ・・!私をこんな格好でいつまでほったらかしにしておくつもりなのよっ!」

紅音は暗い視界の中、誰ともなしに悪態をつくがそれに応えるものはこの部屋にはいない。

すでに当然何度か試してみたが、やはりまだオーラを満足に練り上げることはできず、素の筋力だけの力だけしか発揮はできないようだ。

「あ~!!もうっ!ちっくしょう!霧崎のやつ・・念入りに掛けちゃってくれてるわね!」

霧崎美樹の【霧散霧消】という技能で、紅音はオーラが使えないという今までにない状況に不安になり、こんな格好で放置されている不快感と屈辱から大声で叫んだ。

(いったい、いつまで待たせる気なのよう・・。丸岳君やはなたちは何してるの・?私がこんな目にあってるっていうのに・・・!はやくきなさいよ!)

紅音は硬く冷たさだけを伝えてくる硬質なテーブルのようなものの上で、腰の後ろで手足をチタン製の手錠でまとめて施錠されている上、頭には黒い袋がかぶせられており、その袋は首筋で窄まって紐で緩く縛られているのだ。

視界は暗闇で今の自分の姿を見ることはできないが、自分の今の格好を想像することはできる。

ジャケットもベストも破れ、その下のブラウスも武装警官たちにもみくちゃにされた際にボタンがいくつも千切れ飛んでしまっている。

警官共に撃たれた銃創は、霧崎の【治癒】によってほぼ完治していたが、警官たちに拘束具を付けられたときにできた傷や、衣服の破れはどうしようもなくそのままだ。

更にスカートはタイトスカートのバックスリットが、大きく破け紅音の丸く形の良いヒップを包む真紅のショーツが丸見えであり、それを更に包んでいるパンティストッキングは派手に伝線して、より一層エロティックさを感じさせてしまっているのだ。

「く・・・早くどうにかしてよ。こんな格好・・うちの社員たちにみられたら・・」

オーラも練れず、単なる肉体だけの力ではチタン製の手錠をどうすることもできない紅音は、強がりを言いたいところではあるが、さすがに気弱なセリフを呟いてしまう。

そのとき、紅音が運び込まれてきた扉の方向から物音がした。

がちゃっ

極力音を立てないように注意した雰囲気で扉を開ける音だ。

紅音はあられもない恰好をしていることを意識してか、身を固くして部屋に入ってきたであろう者の発言を待つが、何故か何も言わない。

「・・き、霧崎なの?・・・それとも丸岳君?!・・助けに来てくれたの?」

恥ずかしい恰好をしたままでの沈黙に耐え切れず、物音発した正体の見当をつけて誰何するが返事はない。

「・・だ、誰よ!?」

返事がないことに焦った紅音は更に誰何をするが、返事の代わりに複数の足音と、扉が閉められカチンと扉が施錠される小さな音が聞こえてきた。

「・・・な、なによ・・黙ってないで何とか言いなさいよ!」

暗い視界の中、紅音は不自由な身をよじって声を上げるが、言葉での返答はない。

侵入してきた者たちの足音や、扉の施錠音からして、自分がテーブルぐらいの高さのものの上に置かれているのだと分かってくる。

「ちょっと!誰でもいいから・・いい加減この手錠と指錠外してくれないかしら?結構苦しいしちょっと痛くって・・。それに、この袋も外してくれない?・・ねえ?聞こえてるんでしょ?何とか言ってよ」

紅音はそう言いつつも、あたりの気配を注意深く探る。

自身の周囲には3人の気配が囲むようにしてあるのだ。

足音を止め、自分自身を見下ろす視線を、オーラは使えず真っ暗の視界とはいえ感じていた。

紅音の質問には誰も応えず、その代わりに急に、どさり!という音が顔のすぐ近くてして、自分が寝そべっている平場の上に何かが置かれたのが振動で伝わってくる。

「な・・なによ。・・何とか言いなさいよ。あなたたち!・・霧崎の部下でしょ?!」

質問には応えが返ってこない代わりに、顔のすぐそばに置かれたもののほうでジィィィという音がした。

ジッパーを開く音だ。

(ってことは何かのバッグ?・・な、なんだってのよ。霧崎の部下にしたってなんで何にも言わないのよ・・)

紅音は明らかに異常な状況に、さすがに様子がおかしいと感じ不安になりだしていた。

顔のすぐそばに置かれた袋らしきものは、そこそこの大きさがあるらしく、男の一人が何かを取り出し、紅音が寝かされているテーブル上に何かを並べ、組み立てるような音がしているのが聞き取れる。

「な・・何とか言いなさいよっ!聞こえてるでしょ?!」

紅音がたまりかねて何度目かのセリフを言ったとき、顔を覆っている袋の首筋にある紐がきつく締められた。

「ぐっ!・・ちょっ!ちょっと!何するのよ!く・・くるしい!」

霧崎の能力で一時的にとはいえオーラが使えなくされている紅音は、突然のことに恐怖を感じ、声を裏返して叫んだが、それには軽く鼻で嘲笑した声が返ってきただけだった。

一瞬このまま絞殺されてしまう恐怖に怯えたが、嘲笑した男たちはどうやらその気はないらしい。

何故なら、すぐに身体に何本もの手が這いまわってきたからだ。

「え・・?!やっ!やめろ!やめなさい!何考えてるの?!こんなことしてあんたたち!やめろっ!こんなこと!・・私に触るなんて!許されることじゃないわよ!?」

6本の手はうつ伏せの紅音をすぐに仰向けにひっくり返し、みだれた服の上から胸や腰、股間に手を這わし始めたのだ。

「ちょ!い、いや!こんなことしてタダで済むと思ってるの?!私を誰だと思って・・むぐっ!」

袋を被せられた紅音の顔の上から、口の部分目掛け丸いボール状のものが押し込まれたのだ。

(な・・なによこれえ!)

紅音は周囲の者達が自分自身に何をしようとしているのかわかった。

(ま、まさか!この私をレイプしようとしてる・・!?)

紅音の口に頬張るには大きすぎるピンポン玉のようなゴムボールが、顔をすっぽり覆っている袋の上から無理やり突っ込まれ、吐き出せないように後頭部で縛り付けられてしまったのだ。

ふー!ふーっ!

鼻でしか息ができなくなった自分自身の無様な呼吸音が、自分の耳にやけに大きく聞こえる。

情けなさと、まさか自分がという思いに気が動転している間もなく、ブラウスにまだいくつか飛ばずに残っている水牛の角でできたボタンが次々と外されて、破れてはいるが、かろうじて下着を何とか隠せそうなスカートが一気に腰の上までたくしあげられてしまったのだ。

ショーツとお揃いの真っ赤なブラジャーは胸の上にずらされ、パンスト越しのショーツは丸見えの状態で両手両足を腰の後ろに戒められた格好で、仰向けになり無防備な身体を6本の手にいい様に弄られている。

異常な状況に頭の処理がついていかない。

周囲の者達が発する僅かな嘲笑などで、曲者が3人の男だということがわかるが、視界もなく体中から送り込まれてくる怪しい愛のない刺激だとしても、性癖に広いストライクゾーンを持つ身体が反応し始めてしまう。

「ぅふ・・ん」

声を我慢していても身体を逸らせ、頤を上げて感じ出してしまう様に、周囲の男たちの気配も嘲りを含みだしたのが伝わってくる。

「っふっ!ふぐっ!」

我慢しようとしても、口を大きく開けたまま閉じれないように突っ込まれたゴムボールのせいで、声を満足に発することも、声を完全に我慢することもできない。

黒っぽい袋に頭ごとすっぽり覆われていて視界は全くないのだが、目が慣れてくると三方向から光で照らされているのがわかってきた。

2か所は固定した位置で点灯しているが、もう一つは男の一人が手で持っているようで、今まさに顔のすぐ近くの正面に構えている。

「ふぐっ!?(カメラなの?撮ってる?!)」

紅音はあられもない今の状況を撮影されていると察して、声を上げて身をよじろうとするが、オーラの使えないこの身ではチタン製の手錠はガチャリと無情な音を響かせただけで、ほとんど身動きが取れない。

「撮ってますよ。緋村支社長」

突如耳元でした声に紅音は驚き声を上げようとしたとき、自らの股間付近から派手な音がした。

ばりばりばりっ!

履いていたパンティストッキングが、素手で引き千切るようにして破られたのだ。

「んんっ!!」

表情は被らされている袋のせいで晒さずに済んだが、紅音は驚いた顔で、満足に上げられない悲鳴を上げた。

そしてすぐに別の手がショーツのクロッチ部分を無造作に掴み、ぐいっと横にずらして女性の部分を露わにしたのが伝わってくる。

股間にライトのついたカメラを近づけられているのだろうか、股間周りがほんのり暖かい。

「おっ・・毛もキレイに整っててあそこもキレイじゃん・・。でももうやっぱり濡らしてやがるぜ。へへへへっ。無理やりされても濡れちまう・・。女ってのは惨めな生き物だな」

「んんんんんんんっ!!」

(み・見るな!・・こ・・こんな・・私にこんなことして・・。抵抗しようにもオーラが使えなくて力がでない・・!こんな雑魚どもに・・この私がいいようにされるなんて・・!)

自身の女性の部分を、評価されたことに何とも言えない感情に焼かれるが、そんな感情を処理する間もなく男たちは次の手順に移ってきた。

「むっぐ!・・っうう」

股間に冷たく硬質な物が押し当てられ、そしてそれはすぐに小刻みに振動し出したのだ。

ブブブブブブッ!

「うううううっ!」

(こ、このぉ・・!こいつら私を無理やり感じさせて辱めるつもりなんだわ!こいつらの思い通りになんてさせないわ!)

不自由な格好で、ほぼ半裸に剥かれ、胸や股間を晒した状態でクリトリス目掛け電気マッサージ機が押し当てられたのだ。

紅音は心中強がってみたものの、本来とは別の用途をされている電気マッサージ機が与えてくる快感振動は強烈で、なんとか逃げようと左右に腰を揺さぶってみるが、電気マッサージ機は陰核に強く押し当てられたまま、振り切ることができない。

「んんっ!んんんんっ!」

ゴムボールのせいで、大声で悲鳴を上げることもできないが、快感で声を我慢することも難しい。

股間に与えられてくる無機質な振動のせいで、このまま続けられたら無様な瞬間を晒してしまうのは時間の問題だ。

紅音は首を左右に振り、言葉にならない声をあげつつ電気マッサージ機を振り切れないか試みるが、腰をどんなに動かしてもせいぜい半径30cmぐらいの動きでしかない。

紅音の感じまいとする必死の腰振りダンスは男たちの思うつぼであった。

「はははっ。がんばれがんばれ」

「えっろい動きだなおい」

「そうやって逃げないとすぐ逝っちまいそうだもんな?」

紅音からは確認できないが、男達は紅音が思惑通り腰を振って逃げようとしている無様な様子をみて男たちは口々に罵りつつ笑っていたのだ。

しかも、男達は紅音が必死に無様な瞬間を晒すまいと、腰を振って電気マッサージ機の振動から逃れようとしている一部始終を、ビデオカメラ片手に下卑た笑みで見下ろし笑っていた。

そんな紅音の様子に、嗜虐心を刺激された股間担当の男の電気マッサージ機を押し付ける手にも更に力が入る。

紅音が逃れようと腰を左右前後に振るが、男は絶対に陰核を電気マッサージ機のヘッドで捕らえて逃さない。

「へへへっ、惨めなもんだ」

ブブブブブブブッ!

「ふぐっ!ふぐぅう!!」

逃げても逃げても、ぴったりと吸い付くように落ち着けてくる電気マッサージ機が与えてくる振動に、紅音の身体は火照り出し、じっとりと汗を浮かせ出して可愛らしい不自由な声を上げだしてしまっている。

ピチビチビチッ!

潤い始めた紅音の愛液が、振動のみの機械音だけではなく波音を立てだしたのだ。

(くっ!・・・くやしい・・!なんで私がこんな目に・・!)

紅音は感じながらも自身の股間から発した水音に耳まで真っ赤にして歯を食いしばった。

紅音の白い肌はすでにピンクに染まり、Cカップとやや控えめだが仰向けでも型崩れしないバストは紅音の動きに合わせて可愛らしく揺れ、先端の突起は見るからに固く膨張している。

「ふぐっ!ふううううっ!」

男の一人に頭を、腰をがっちりと掴まれ抑え込まれ、足の間に陣取っているもう一人の男には、陰核に電気マッサージ機のヘッドの柄の部分が曲がるぐらい強く押し当てられている。

(も・・もうダメ!)

「ふぐっ!ふぐっぅ!っふぐううううううううううう!」

不自由な身体を更に押さえつけられたまま、紅蓮は逃れきれず、我慢しきれず無理やり絶頂に押し上げられ、3人の男たちが見ている前で、肩こりや腰痛に使うはずの機械の振動で逝き果てたのだ。

「まだまだだぜ」

しかし、乾いた深い絶頂を味あわされた紅音だが、男はそのまま電気マッサージ機を押し付け、電マの振動を止める様子はない。

紅音はたまらず腰を上下に振りたくり、キツイ快感から逃れようとするが、男が操る電気マッサージ機は陰核を捉えたまま外さず、下卑た笑顔を張り付けたまま、さらに強く陰核に押し付けてくるばかりだ。

「ふぐっ!むぐぐう!!ふぐぅう!!んんん!!」

「ははははっ、逃がさねえよ」

がちゃがちゃと手錠を鳴らし、腰を上下に、頭を左右に振って悶える紅音の様子を、たっぷり楽しんでいるのだ。

男達は、逝った直後が女の一番の甚振り時と心得ており、執拗でそして容赦がなかった。

(やめてっ!逝ったのに・・!余計に・・!こ・・こいつら!私を甚振って楽しんでるのね!)

腰をテーブルから浮かし、右に左に必死に逃げ回るびちょ濡れの股間を、ライトで煌々と照らされ撮影されながら、紅音は強すぎる快感から逃げようと身体を捻り捩る。

「はっ、こいつまた逝くぜ」

男の一人が思わず漏らした失笑に紅蓮は怒りを感じながらも、更に快感を高いステージへと押し上げてしまう。。

「ふぐっ!ひぐっ!んんんんんんっ!」

腰を浮かせて濡れた股間を突き出すようにして電気マッサージ機のヘッドを躱そうと、腰を派手に上下に振りたくっていたが、電気マッサージ機からは逃げられず、紅音は男たちの前で無機質な電気マッサージ機の振動にまたもや陥落し、敗北の痙攣を披露して男たちを楽しまった。

紅音が二度目の絶頂を晒しても、男達は電気マッサージ機を離してくれる様子もなく、ずっと陰核に当てっぱなしだ。

(こ・・こいつ!逝っても止めない‥つもりなのね!・・・こんな扱いを私にするなんて・・!)

「ふぐっ!ふぐっ!ふっ!~~っう!んんっ!んんい!んいい!」

紅音は二度も陰核のみで連続ドライオルガズムを与えられたというのに、その陰核はいまだ激しく振動している電気マッサージ機のヘッドからは解放されていない。

ゴムボールを押し込まれた口では、満足に喋ることもできずに何やら抗議をしているようだが、男達にとってはそれすらも娯楽の肴であった。

紅音は容赦なく浴びせ続けられる電気マッサージ機の刺激を避けようと、形振りかまわず腰を振って無様に逃げ回っていたが、陰核を刺激され続ければ、さすがに紅蓮といえども女であった。

(も・・もうだめ!!こんなひどい扱いで感じさせられて・・・また・・また逝っちゃう――!)

「ぐっ!ぐう!おうあえて!んえ!っ!んえて!!んあんてええ!んぐぅ――――!」

我慢しきれず果てしまい、絶頂の余韻でひくついている紅蓮を男たちはニヤついた様子で満足そうに眺め、カメラに納めていった。

「三回目か?おい、まだまだこれからだからな?」

「おい。そろそろ声も入れて顔も撮ってやろうぜ」

「そうだな。用意もできたしいいぞ」

「んぅ!?(い・・いや!)」

紅音は男たちのセリフに驚いた声をあげ、愛液に濡れた腰を隠すようにできるだけ両ひざを閉じ、立て続けに三度も逝き白濁した意識の中ではあったが、顔を上げて抗議の声を上げる。

しかし男達は、オーラの使えない非力な紅音の顔を抑えつけ、ゴムボールを外すと、一気に袋を取り払らった。

外気が顔に当たったその時、紅音の目の前が真っ白になる。

眩しくて目を細め何事かと確認すると、顔のすぐ正面にはレンズがありその周囲を煌々と照らす眩いライトが並んでいたのだ。

いや、それはレンズの周囲にライトが搭載されたカメラだった。

あまりの眩しさに、周囲を伺い見ることはできない。

眩しさから顔を逸らそうにも、男の内の一人が頭をがっちりと掴んでいるのだ。

目の前にレンズを認めた紅音は顔を背けようとしながら叫んだ。

「や・・やめろっ!撮るな!」

口が自由になり声が出せるようになった紅音は、レンズが向けられていることに狼狽して叫んだが、男達は紅音の狼狽ぶりを笑っていた。

「ひひひっ!こりゃ大物だぜ。しかし、紅蓮もこうなりゃただの女だな」

「いい値段になるだろうぜ!あの紅蓮の緋村紅音の痴態だもんな」

「やめろっ!やめろっ!やめてちょうだい!撮らないでぇ!」

「悲しいよなあ。ほんとに嫌なんだとしても女は撮るとすげえ感じ出すもんな。こっちの口は涎でびちょびちょだし、おかわりって言ってるようだぜ」

「い、言うな!やめなさい!」

立て続けに3度も無理やり果てさせられた陰核に、再び電気マッサージ機が押し当てられたのだ。

男達の言う通りで、紅音の身体はすぐに4度目の絶頂に向かって、身体をのけ反り、腰を振って登りだしてしまう。

「あああっ!やめっ!はなせえ!こんなっ・・ことして!オーラが使えるようになったら、あんたたちなんか殺すのわけないのよっ!・・ああああやめてえええ!ぐ・・・・・・っく!!ひぐっっ!!・・・・くそ・・くそっ!・・そんなっ!・・くっ!・・っん!っ!っん!!んんっ!!んっ!んんっ!!・・かはっ!んぐぅ!!んん!んんっん!!んん!」

口では強がり、眩しい光の向こう側にいるであろう男たちを睨みつけて凄むが、すぐに快感の波に飲まれて、可愛らしい声を上げて身体を痙攣させだした。

「おいおい支社長さんよ?ちゃんと逝くって言えよ」

「言えるまでやり直しさせるからな」

「それとも、ずっと続けてほしいんじゃねえの?」

「ぜえぜえぜえ!っ・・っ!くっはぁ!も、もうやだ!こ、殺してやる!あなたたちなんて・・・力が使えれば・・・はぁはぁ・・・この世に何も痕跡が残らないくらい・・・はぁはぁ・・・焼き尽くして消し去ってあげるんだからっ!」

陰核を電気マッサージ機で責められ四度も乾いた絶頂を無理やり与えれた紅音だったが、果ててしまい虚ろになりかけた目に怒りをたたえて強い口調で凄む。

「はははっ。誰だかわからん奴を殺すって言ってもな。おまえから俺らは見えんだろ?こっちからはお前の顔はよく見えてるけどな」

確かに紅音は眩いライトで視界を封じられて、相手の顔を知ることはできない。

「くっ・・・そもそも、あんたたちみたいな雑魚どもが!・・この私に触れるなんて許されないっのよ・・・ぅぐ!」

オーラを強化して視力を強化しようにも、筋力を強化して手錠を引き千切ろうにも、霧崎美樹に施された【霧散霧消】のせいで、どのぐらいの時間効果があるのかわからないが、一定時間オーラが使えないのだ。

「まだまだ減らず口が聞けてるから、まだだいぶ楽しめそうだな」

「へへへっ、逝くってちゃんと言えるまで何度でも鳴かしてやるよ」

「女は辛いよな。女からやめることはできねえんだよ。男が飽きるまではな」

股間の間に陣取った男は持った電気マッサージ機を陰核に押し付け、カメラを片手に携え、宮コーの紅蓮とその存在を恐れられた、恐怖の炎術者の痴態を余すことなく記録していく。

「ひっ・・!ま、また!も、もう止めっ!止めなさいよっ!!・・・っ・っ!っ!・・・く!」

紅音は今更ながら、声を上げて男たちを喜ばせないように歯を食いしばり強烈な快感に耐えているが、その様子すら男達からすれば楽しむ材料である。

「ほうら!緋村紅音ちゃん。また派手に逝くところ見せろよ!逝くって言わなくても、おまえすげえガクンガクンなるからよくわかるぜ」

「気安くっ・・!名を呼ぶ・・なっ!」

「いいねえ。その調子その調子。いい絵が撮れるよ。逝くって言うまで泣いても止めねえからな?」

「くそぉ!力さえ戻ればお前達なんて!すぐさま消し炭にしてやるのに・・!ああっ!・・い、今にも私の力が戻るかもしれいわよ?・・ひっ・・ぐっ!・・・いまは・・ああっ!・・そうやって調子に乗ってても、私に・・くぅ!!・・力が戻れば・・・あんたたち程度なんて一瞬よ!・・きゃうっ!・・せいぜい恐怖に怯えてなさい!」

「4回も逝ったのにまだまだ元気で楽しめそうだな」

「くっぅ!くぅうう!」

男は紅音の脅しに、怖じるどころか逆に紅音が逝ったことを持ち出してきたので、紅音は恥ずかしさから言葉に詰まってしまう。

「霧崎美樹は本当に優秀な捜査官様だぜ。能力者のテロリストを無力化させる【霧散霧消】に被害者を瞬時に治療させちまう【治癒】の使い手だ。その霧崎に【霧散霧消】の照射をあれだけ念入りにされたんだ。あんた丸一日以上は使えねえと思うぜ?」

「ま・・丸一日?・・・じょ、冗談・・でしょ?」

「いや、冗談なんかじゃねえぜ」

「警察組織がこんなマネして・・ああっ!」

「なんか勘違いしてるようだが、まあいいか」

「えっ?警察じゃない?・・じゃ、じゃああんたたちは誰なのよ!?」

「そんなことお前は考えなくてもいいんだよ」

男はそう言うと、電気マッサージ機の他に俗にいうバイブを持ち出し、紅音の股間にあてがった。

「ひゃっ!」

眩しくて周囲が見えてない紅音は、突然の感触にマヌケな声を出して腰を浮かせて逃れようとするが、陰核に押し当てられた電気マッサージ機でもってして、お尻を腰ごと平場の表面にくっつけるように押し付けられてしまう。

「ぐうぅう!!ぃぃぃいい!!これ以上変なモノ使わないでぇ!」

陰核への責めだけで、すでに大洪水のそこは極太の電動バイブをすんなりと受け入れられるほど濡れていて、陰核を潰すように押し付けられていた股間の膣に遠慮なく突き込まれたのだ。

「はぁはぁ!ああっ!ぬ・・抜きなさい!くああぁあ!ひぎぃ!あ・っ!!だ・・だめだ!うくっう!」

すでに何度も果てさせられた陰核は、電気マッサージ機で腰をテーブルに押し付けるようにして当てられているが、膣には黒光りしている太い電動バイブが、膣の中から子宮の入口を擦るようにして、腰を持ち上げるようにして突き上げてくるのだ。

「ははははっ、すげえ顔だぜ支社長さんよ?ダメだって?もう逝く気かよ?バイブ突っ込んでまだ30秒も経ってないぞ?お前らみたいなお高く留まったキャリアウーマンってやつらは、上手に息抜きしてるか、男を遠ざけてストイックに仕事に打ち込んで欲求不満になってる奴かどっちかだよな。お前もご無沙汰なんだろ?」

「う・・うる・・さい!・・・・・・ああああっ!・・・・・くはっ!!くっ!・・くはっ!・・はぁはぁ!・・・んっく!・・抜いて!抜いてぇ!あああっ!こ・・こんな!・・あんたたち!覚えて・・ああっ!おき・・きゃっ!・・くぅううううううううううううううううう!」

男が何事か言っていたが、最後までよく聞き取ることができず、紅音は電気マッサージ機と電動バイブの2点責めにあっけなく陥落し五度目の痴態をレンズの前で披露してしまった。

「支社長、あんた見ごたえある逝きっぷりするよな。男受けいいだろ?くひひっ」

「感じて逝きまくってるくせに、態度や口では堕ちてねえところが甚振りがいあるよな」

「すげえ締め付け・・!バイブのスイングを膣圧で止めてるぞこいつ」

「はぁ!はぁ!はぁ!・・っく!・・あ、あんたたち!このままじゃ・・・すま・・さない!わよ・・!!紅蓮の・・わたしをこんな目にあわせて・・生きていられると思わない・・ことね!」

男達が操るオモチャだけで、いいように逝かされてしまっている紅音であったが、決して心は折れていなかった。

「・・そ、そりゃこわいな」

紅音のセリフに男たちは、背筋を凍らせかけたが、紅蓮は能力を封じられている上、チタンの手錠で戒められている。

一瞬たじろいだ男たちではあったが、絶対的有利を確信し、人外の能力者紅蓮を甚振れる優越感を堪能しようと、再度その手に玩具を持ち紅蓮の弱点にあてがい辱めだす。

「くっ・・くそ・・・」

紅音は紅蓮と恐れられる鋭い目つきで、眩しさで見えない男たちを睨みつけているが、陰核に電気マッサージ機を、膣に20cmはあるであろう電動バイブを、両乳首を指で弾かれだすと、その整った怒りの童顔を再び悔しそうに快楽に歪めだし、びっしょりと汗に濡れ、戒められた身体を不自由に捩っては、またもや男たちを喜ばせだしてしまっていた。

【第9章 歪と失脚からの脱出 37話 ただの女である事終わり】38話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 38話 貫かれた権威

第9章 歪と失脚からの脱出 38話 貫かれた権威

「きゃううう!も・・う・・ほんとに!・・ちょ・・っとぉ!とめてっ!やすませてぇ!!」

悔しさの涙と、快感からの涎で濡らした真っ赤な顔をして紅蓮は叫んだ。

「休ませねえよ。辛いのわかっててやってるんだからよ」

「辛くても、嫌でも気持ちよくなって見せたくもないアへ顔を晒しちまうのが、嫌でどうしようもねえのに、それがもっと気持ちよくなるんだよな?」

電気マッサージ器と20㎝バイブでのシンプルな二点責めに、6度目の痴態を無様に披露してしまった紅音は、更に与えようとしてくる男たちの淫具の責めから逃れようと、腰をくねらせる事により小柄だが女性を象徴する部分には男性を楽しませるには十分な上質な肉をつけていて、それが淫らに揺れることにより、無駄な抵抗は余計に紅音を責め立てる男たちを楽しませてしまう。

「だめだめ。イクってちゃんと言ってねえじゃねえか」

そう言って、紅音の右側に陣取り、閉じれないよう右膝を大きく広げるように抑えている男が、髪の毛と同色の陰毛を無造作に鷲掴み、紅音の普段の姿とは正反対にだらしなく幾度もの絶頂により淫らな水浸しになった女性自身をカメラの正面から外れないよう、ぐいっとベストアングルまで引き戻す。

「ぐちゃぐちゃのマンコに、ぐちゃぐちゃの顔、どっちもたまんねえよな。どっちもフレームに納めてやるよ」

同じく左膝を大きく割るように固定している男もそう言うと、紅音の艶のある赤髪を鷲掴みにして、レンズの方に向け固定した。

陰毛を引っ張り上げられ、頭髪も掴まれ顎が胸にくっつくほど押し付けられる。

後ろ手で、両足首も背面で戒められている紅音には、非常につらい恰好だ。

国内屈指の大企業、その中でも実務能力も能力者としても最高位に近い位置に居る緋村紅音がこのような目に合う事などおよそ考えれなのだが事実、今ありえないと思えることが現実に我が身に起こっていることは、紅音自信が1番信じれないだろうし信じたくないであろう。

「ぐぅ・・くるしい・・!やめろっ!やめろっつってんだろ?!やめて・・と・・撮るなぁ・・こんな格好ひどすぎるだろ・・」

目の前にある眩い光を放つ中心の黒いレンズを一瞬だけ目を合わせると、紅音は最後のほうは、現実を受け入れ始めたのか弱弱しい声でそう言い目を逸らした。

電気マッサージ器とバイブで散々虐め倒されたおかげで、顔も股間も紅音の発した液体でぐちゃぐちゃに汚してしまっているのだ。

そこに、レンズを向けられ、顔と股間が同じフレームに入るように押さえつけられたまま、再び淫具が押し付けられる。

「はああっう!・・・はがぁ!・・っく!も、もう!!やめて!」

顎を上げ再び仰け反るが、頭髪ごと掴まれているせいで、顔がフレームからはみ出さないように、強引に定位置に戻される。

よじった腰も、陰毛を鷲掴みにされて強引に引き戻される。

「今度はちゃんとイクって言えよ?」

「逝きまくった、紅蓮のだらしないマンコとお顔でーす」

カメラと振動するマッサージ器を持った男のセリフで、はっとなった紅音は、快楽に歪みそうになる表情をできるだけ引き締めたが、それが男達や、これから視聴するであろう者たちをより一層喜ばせてしまうということまで気がまわらなかった。

「ぐっ!っくぅうう!こんな・・無抵抗にしてなきゃ・・複数人じゃなきゃ・・女一人も抱けないようなカス・どもにっ!きゃあっ!!」

「そのカス共相手に逝きまくってるのは誰だよ?」

左側の男は嘲りながらそう言うと、黒光りする20㎝バイブを喰い締めている膣奥まで押し込んだのだ。

「きゃぁああう!お・・おくぅ!・・だめえ!」

「はははははっ。これだろ?このコリコリしてるところがいいんだろ?・・気持ちいいよなあ?感じまくって膣口下がってきてるぞ?」

「はぐぅ!ほうっ!きゃ!んんっ!」

バイブを動かされる度に、股間からはぐちゅ!ぐちゅ!と粘着質な液体と、空気が混ざったような卑猥音を奏でてしまう。

身体内部に与えられる強烈な快感で奇妙な声を上げさせられ、突き刺されたバイブを陰核側、ヒップ側へ起こしたり倒したりと刺激され、最奥の固くなった部分を潰すように刺激され、腰を跳ね上げさせてしまう。

そのうえ、与えられる快感に震えている顔と股間は、陰毛を鷲掴みにされレンズから逃れることができず、その羞恥心がスパイスとなり7度目の痴態に押し上げられてしまった。

「んっ!!っっ!!くぅ!!んはぁ!!っぐ!!」

がちゃがちゃ!

「おおぉ~」

紅音の激しい逝きっぷりに男達は感嘆のような嘲笑をもらし、紅音を戒めている手錠が鳴る音が重なる。

紅音は激しくガクガク震えているが、絶頂を悟られまいと何とか声は我慢しているのだろうが、我慢できずに嗚咽は真一文字に結んだ口から洩れ、表情や身体の痙攣などからも果ててしまっているのは丸わかりだ。

声を必死に我慢している紅音の真っ赤な表情が男たちを、更に喜ばせる。

「ぜぇぜぇ・・!っく・・うぅうう!も・・もういいでしょ?!もう散々じゃない・・!」

激しい絶頂の余韻を振り払うように、周囲の男たちを睨むが、相変わらず視界は眩い光で真っ白だ。

男達はここでようやく電マとバイブからの責めから紅音を開放してやった。

淫卑な刺激から解放され、一息ついた紅音は、この隙に能力が戻ればと思い、四肢に力を込めてみるが無情にも未だ力は使えないようで、悔しそうに唇をかむ。

しかし、何とかと思い、力の限りを振り絞って身をよじり、手足をばたつかせても、オーラを遣えない非力な女の力では、やはりチタン製の手錠にも男三人の腕力にも敵わなかった。

それどころか、自ら動くことにより胸やヒップや太ももの肉が男たちを誘うかの如く淫靡に揺れ、男たちの性欲を増進させるだけであった。

「お前いいな。いい反応で面白い。普段の振舞い通り、気も強いみたいだな」

「マンコの締め付けも強いし、バイブが押し出されそうだったぜ。紅蓮は名器持ちだな」

「女なんて選び放題のはずの大財閥社長の愛人になるだけあるってことか・・」

口々に好き勝手なことを言う男たちのたわごとを聞き流し、紅音は散々弄ばれながらも、いまだ心は堕ちてはいなかった。

虚ろになりかけている目にはいまだ闘志が宿り、戒めを解こうとオーラが練れないかと淫具に甚振られながらも常に試している。

「じゃあ、そろそろその名器を味見させてもらおうか」

正面の男のセリフに、紅音はぎりっと歯ぎしりを立て鋭い目つきを返すが、あられもなく、幾度もの絶頂する姿を晒した、顔と女性器が丸出しの格好では、普段恐れられているその表情でも、男たちをたじろかせることはできなかった。

「こいつにも俺たちのモノがどれぐらいか見せてやった方がよくね?」

「だな。俺たちも名器なんだぜ?」

「・・しゃあねえ。煩わしいが面被るか」

睨みつけてくる紅音を見下ろしながら男たちはそう言うと、覆面をかぶり始めた。

紅音からは視界が0だったが、光源が落とされ紅音の視界に白以外の色が戻ってくる。

「・・こ・・こんなに!」

視界が完全に戻った紅音は、左右二か所においてある三脚の上に載っているカメラと、男たちの持つハンディカメラ、そして一人はスマホを持って、計4つのカメラで紅音を撮影していたのだ。

「しっかり録画したぜ?有料サイトだけに流すからよ。まあ、すぐには人生壊れねえよ」

「ふ、ふざけんなっ!流すって・・何言ってるのよ!」

男のセリフに、がちゃん!と手錠を鳴らし噛みつくが、ほとんど動けない。

「まあ、有料サイト見たやつが録画してどっかに貼ったらそれで終わりなんだけどな」

「だから、ふっざけんなよっ!肖像権侵害だし名誉棄損だわ!これも傷害致傷だし、私はそんなところへの動画配信は許さないわよ!私の受ける損害額や社会的信用の喪失は何億もするわよ?!わかってるの?!あんた達じゃ払えない額のはずよ?!それに私、損害金を回収しきったら絶対にあなたたちを殺すわ!絶対にやるわ!その覚悟、あなたたちにあるのっ!?」

「すげえなこいつ。この格好で俺たちのこと脅してるぜ」

「何回もイカされて、これだけ言えるのは・・・ますます虐めがいがあるな」

男達はブリーフに黒い仮面すがたで、顔をうかがい知ることはできないが、口元を下卑た笑みで歪め、かえって紅音の発言に、股間の怒張は肥大化している。

紅音のセリフに男たちが怖気づく様子もなく、股間を膨らませている様子に信じられないという表情でそう呟いた。。

「くっ・・あ、あんたたち・・脅しじゃないのよ?」

「紅蓮にはかなりの値がついてるからな。これは高~く買ってくれるんだよ。世界中の男たちのおかずになれるなんて、お前も嬉しいだろ?」

三脚の上に置かれているカメラを指でコンコンと指しながら、男が馬鹿げたことを言う。

「宮コーの女幹部連中の痴態は軒並み高額の賞金首なんだぜ?紅蓮、魔眼、銀獣、菩薩、蜘蛛、幻魔とかの宮コー十指にはいる奴等と、忍猫とかいう若いのと、百聞て四十路前の年増が最近賞金首になったぜ」

「お、おいっ!」

一人の男が饒舌に口を滑らせたのを、もう一人の男が鋭く嗜めたが、それよりも当の紅蓮が苛烈に反応した。

「はぁあ?!・・ざ・・ざっけんな!なんなんだよそれ!誰だよそんな賞金かけてるクズ野郎は?!・・嬉しいわけないだろっ!今すぐそのカメラ床にたたきつけて壊せよ!さもないと・・・」

「さもないと・・なんだよ?」

「さもないと、あんたたちを焼き殺すって何度も言ってんでしょうが!」

「せっかく賞金額3位の大物紅蓮を捕らえたったのに、こんなチャンスみすみす不意にできるかよ。大金も手に入るし、お前のこの感じやすい淫乱な身体・・・この際たっぷり楽しませてもらうぜ」

「霧崎の能力を受けて、どうにもこうにも抵抗できねえだろ?紅蓮・・お前もこの際楽しめよ?」

(3位ってなんだよ!ちっくしょう!バカにして!1位と2位は誰なんだよ!)

こんな状況でも、順位が気になってしまう紅音であったが、男は無防備な紅蓮の股間に手を伸ばし、先ほど責められまくって敏感になっている陰核を摘まみ上げた。

「ひぁ!ちょっ!!・・くぅ・ま、まだやるのかよ・・?!」

「まだやるのかって?ははっ・・まだなにも始まってもいねえよ。これからじゃねえか。1本で2時間半の尺があるんだぜ?4時間ぐらい撮って編集しねえとな」

紅蓮の気弱なセリフに男は、さも当然かのように言うと、男達はブリーフを脱ぎだした。

「ば、ばかかっ!そんな長時間身体がもたないわよ!・・・・っ!!」

紅音が反論し始めたところで、男達はブリーフを脱ぎ、ブルンと現れたそれらに紅音は息をのんだ。

何故なら男達のそれらの大きさは3人とも人並み以上であり、全員長さ20cmはゆうに超え、反りも著しく、先端は大きい、すなわちカリと陰茎の直径の差がかなりあるのだ。

「くっ・・!なんなんだよそれ!なんなんだよお前ら・・そんなのを私に使うつもりなのかよぉ・・」

紅音はそんなものをこの身に使われれば、ひとたまりもなく感じまくる様を見せてしまうことがわかり、すでに屈辱から歯噛みしてしまったのだ。

二人の男に左右から両ひざを抑えられ、1番手の男がゆっくりと正面から近づき、そそり立った弩張を近づけてくる。

テーブルの上で後ろ手、後ろ足で背面に戒められ、脚を閉じられないように広げられた格好で、串刺しにされるのを待つしかできない紅蓮は、悔しさから目尻に涙を溜めて身をよじる。

「やめろ!これ以上は・・やめて!犯すなんて!さっきみたく道具でやるのとまったく違うじゃない!!だめっ!やめてっ!犯されるなんてやだっ!ゴムも付いてないじゃない!!私は宮川誠の愛人なのよ!!?こんなことして、彼も黙っちゃいないわよ?!う・・ううう!!やめっ・・あああああああああっ!」

紅音の悲鳴を香辛料として更にそそり立った弩張りを、ゆっくりとその濡れぼそった名器に突き込んだのだ。

ずっ・・ちゅぅぅぅぅ!

「おぉ・・」

戦闘においては、宮コー十指最強と謳われる紅蓮こと緋村紅音という人外の能力者を、初めて犯した非能力者の一般人である男の第一声はそれだった。

「はぁ・・ん!・・くっ・・くそっくそっ!!こんな奴に・・ぃ!あ・・ぅん!」

ついに犯された紅音は涙目で拒絶のセリフを口にしているが、身体は勝手に反応し膣圧をあげ、名も知らない男の弩張を喰い締め、両乳首は固くそそり立たせている。

両隣で膝を抱えている男たちは、そのそそり立った乳首をそれぞれに指で弾きだした。

「おぉ・・すげえ・・入口がすげえ締めつけて、絞り出そうとしてくるみてえだ」

紅音の身体を味わっている一番手の男がそう言いカメラ片手に、紅音の腰を掴んで自らの腰をゆっくりとグラインドさせだす。

「うっ・・うごくなぁ!んんぅ!」

そうは言ったものの、すっかり電マとバイブで暖機運転というには激しすぎるウォーミングアップをされている紅音のそこは、本人の意思に反して脳に強烈な快感を送り付けてきた。

「はぁ・・う!はぁん!いゃん!あっ!あんっ!あんっ!きゃっ!・・うんっ!んっ!んっ!んっ!」

耐えられず紅音は、男の腰をうちつけてくる動きに合わせて可愛らしい声をリズミカルに発し出してしまう。

その様子を両サイドの男からは、にたにたと眺められ、レンズにとらえられているのが紅音からもよく見える。

しかし、そういった状況に更に興奮してしまい、股間から送り込まれてくる快感は高まるばかりだ。

「こいつはすげえ・・。散々女は犯してきたが・・、こいつのマンコはすげえ」

「きゃん!きゃん!きゃっ!あんっ!う・・ごくなぁ!っくぅ!あんっ!ああっ!いやぁ!だ、だめっ!」

拒絶しながらも、紅音はついに男の言葉にまともに反応できなくなってきてしまっていた。

悲しいことに紅音は、同年代の女性と比べても感度は非常に高い方だと言える。

もともと、女性能力者は通常の人間に比べても感覚が鋭い分、非常に性感も高性能なのである。愛する、本来行為を行うべき相手との性交渉であればそれは能力者の利点ともいえるのだが、今の紅音のように望まない相手に行動不能にされたうえでの蹂躙とも呼べるべき性行為にはもはや能力者として優秀な事は仇としかならない。そのうえ頼みの能力も使えないともなれば、紅音の高度な能力はただ人より物凄く性感が高い女性でしかないのである。

そして紅音はプライドも高く、身体を重ねた男性の数は多くない。プライベートでも親しい仲の男性は丸岳貴司の他にはいない。

その丸岳とも、もう10年近く身体を重ねてはいない。

宮コーに入社して2年で宮川誠の愛人となり、一時期は愛人の宮川誠と毎日のように情事に耽ったものだが、ここ数年はその回数も稀になり、年に一度か二度ほどになっていた。

紅音は立場上、男性を一夜限りの相手としてつまみ食いするわけにもいかず、丸岳とも寄りを戻すわけにもいかない紅音は、はっきりいってSEXに飢えていた。

男性のつまみ食いをするわけにいかなかった紅音は、幾人か女性にも手を出してみたこともあったが、彼女たちは紅蓮に従順になりはしたが、責めてくれることはなかったのだ。

故に久しぶりの刺激に紅音の身体は、本人の意思に反して、全力で快楽を貪ろうと貪欲になっていた。

「こいつすっげえ感じてやがる」

「電マやバイブでもあんなによがってたのに、本物だとより感じるみたいだな」

「うっ!はぁん!だれ・が!もう!きゃん!あんっ!やめっ!って!・・んっ!はっ!」

男の腰の動きに合わせて喘いでいるが、未だに拒絶を口にしている紅音だが、どうやら限界は近いようであった。

「嫌って言いながらもしっかり感じてやがる」

「なんだよこの乳首。カチカチじゃねえか。こんなにそそり立たせて恥はねえのか恥は?」

膝を抑えている両サイドの男も、そそり立った紅音の乳首を人差指で、素早く弾いて楽しみながら紅音を言葉で煽る。

「おぉ!締め付けがすげえ・・!こっちが先にまいっちまう・・おいっ!この女に電マも食らわせろ!」

犯している男がそういうと、紅音の右隣りの男が電気マッサージ器を紅音の下腹部に押し付けた。

「きゃうううううん!だ、だめえ!!だめ!そんなことされたらあ!」

「すげえ反応・・。我慢できねえんだろ?顔も知らねえ初めて会った男のチンポで逝っちまうんだろ?ええ?・・そんなことされたらどうなるんだよ?言ってみろよ」

名も顔も知らない男に犯されながら、撮影され電マで陰核を押しつぶされた紅音は女らしい声を上げ、一点に向かって一気に登り始めた。

男の問いかけに応える余裕などない。

20cmはあろうかという弩張に、女性の急所を蹂躙され、興奮して大きくさせてしまっている陰核には電マが、同じくそそり立たせてしまっている乳首は両隣の男の指で弾かれまくっている。

「はっ・・!っく!だめぇ!やだぁ!やだぁ!!・・ああっ!あああああああああああああっ!」

ひと際大きな声を上げると、紅音は全身をガクガクと痙攣させ、激しい絶頂に身もだえる。

その様子を、その痴態を、身体を閉じたり、身をよじって隠せないよう、左右の男が、膝をがっちり掴み、股間を曝け出させ、顔と髪の毛を掴んでレンズから背けられないように押さえつける。

犯されて絶頂を迎える様を、余すことなく撮られた紅音は呆けた顔で激しく呼吸をしているが、犯している男は腰の動きを止めるどころかもっと早く、深く動かし出したのだ。

「あ!あっ!がっ!ひぃ!また!またなっちゃうから!だ、だめ!ああああああああっ!」

深い絶頂の余韻を味わう暇もなく、紅蓮こと緋村紅音は絶頂が終わり切らないうちに再度強引に絶頂へと押し上げられ、身体を痙攣させたのだった。

男達はその様子を眺め、紅音の顔をアップでレンズに納め、にたにたと笑っていた。

「紅蓮なんて二つ名で恐れられてたっても、しょせん女だな。責めたら股間から愛液吹いて、無様なアへ顔晒すもんだぜ」

「ま、普通の男にゃ、コイツほどの女を好きになんか到底できねえだろうけどよ。下手すりゃ殺されちまうもんな・・」

「だからこそ俺らみたいなのが稼げるんじゃねえか。コイツみたいな能力者の女には高値が付く。社会的地位や知名度が高い程な高い値が付く・・・。稼げるうえ楽しめるってわけだ。まともに戦ったら俺らみたいなチンケな能力者じゃ手も足も出ねえけど、やりようによっちゃこの通りってわけだぜ。はーはっはっはっはっは」

「だな。こいつらは自分らの強さや社会的地位のせいで、まさか自分が襲われるなんて思ってもいねえみてえだからな。力を持つ強い女ほど屈服させたがる男がいるなんて思いもしねえのかねえ?」

2連続の強烈なオルガズムを叩き込まれて全身を痙攣させ、脳まで揺さぶられ続けている紅音には男たちのセリフと笑い声は頭に入ってこなかった。

紅音はのけ反り、ぜえぜえと肩で息をし、女の部分をとじることもできず、汗で全身光らせ疲労困憊であるが、男たちにとって宴はまだまだ始まったばかりであった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 38話 貫かれた権威終わり】39話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 39話 猫柳美琴と前迫香織

第9章 歪と失脚からの脱出 39話 猫柳美琴と前迫香織

背の高い草の茂みの中を、更に身を屈めて駆け抜け、音もなくしなやかに動く黒い影は、耳をそばだて、頭は動かさず眼球だけの動きで周囲を探る。

「はぁ・・。無茶苦茶なのよね。急に県外出張なんて・・。ブラックすぎるじゃないのよ・・。しかもヘリの中で着替えだなんて・・・私だって年頃の女なのよ?」

しなやかで隆線的なボディがよく分かる漆黒のスーツを身に纏った女、猫柳美琴は愚痴をこぼした。

できるだけヘリの貨物室の隅っこで、操縦士などに見られないように宮コーのアーマースーツに着替えていたのだが、能力者であるが故、美琴はお揃いの上下黒の下着姿をチラチラと盗み見されているのがわかっていた。

「せめて上下お揃いのメーカー物で良かった‥。油断してゴムがのびのびのショーツで、上下とも別々の安物のとかじゃなかったのが、まだ救い・・・・ってそんな心配してるのってどうかしてるよね!?この発想って私ブラックな職場に染まりつつあるよね?!」

と一人ボケ突っ込みをしてしまう。

男からすれば、美しい年ごろの女が見られてもしょうがない場所で着替えているのであるから、覗くなというのが無理かもしれないが、今回はあまりにも命令が強引すぎる。

直属の上司である緋村紅音に緊急出動を要請されたおかげで、下着姿を覗き見されたうえ、任された仕事の難易度もかなり高い。

そのうえ、いつも通りだとすれば、緋村支社長が特別手当を出してくれることもないだろう。

これまでも、かなりハードな命令が積み重なり、さすがに今回の件で宮コーを転職しようかとも一瞬頭をよぎったが、「退職したい」と切り出したら、あの紅蓮がいったいどういう態度をとるのかがわかっているだけに、胃が痛くなった。

「はぁ・・やるしかないよね。ガンバレ私」

そうやって、溜息をつき、一人どことも知れない草むらの中で自分を励ましてみるが、周囲からはリーンリーンと虫の泣き声しかしてこない。

こんな任務でなければ、秋風と虫の声のするいい季節なのだが、今はそんな気分にはとても慣れない。

美琴は、頭を切り替え、冷静に状況を考える。

自分の能力からすれば、今までの経験からしても今回のような高難易度の仕事だとしても、成功確率の方が圧倒的に高い。

とはいえ失敗するとまず命はないだろう、ということもわかっている。

さすがに潜入捜査では場数を踏んでいる美琴は、経験からそう判断を下すと、潜入捜査のいつもの作業に取り掛かる。

「さてと・・」

そう誰にも聞こえない程度の声で呟くと、美琴は頭に叩き込んでおいた地図から自分の位置を割り出し把握しなおしてから、通信機のついた耳に手を当てる。

「ブレイズツー。聞こえてますか?こちらハイドワン。現地到着いたしました。作戦を開始します」

美琴は普段使っている自身のコードネームを告げ、密かに憧れを抱いている上役の丸岳貴司に向けて通信を飛ばした。

「了解だ。ハイドワン」

すると、すぐに聞きなれた低いダンディな声が返ってきた。

美琴はその声を聴くと、一気に安心した気持ちになり少し表情を緩めてしまったが、続けて聞こえてくる内容に、驚きから徐々に目を見開いてしまった。

「こちらからもそちらの姿がよく見える。対象はまだアジトの倉庫にいるのは間違いない。鷹と土竜は西北の海岸付近の岩壁で戦闘中だ。今のうちに作戦を遂行しろ。・・・気を付けろ。最初から能力を出し惜しみなく使っていくのだ。鷹や土竜のほかに、アジトには吹雪の一味も来ている。一瞬たりとも気を抜くな。今回の取引の雷帝の取引相手・・ということだ」

「えっ?・・そ、そんなこと聞いていません!雷帝にくわえて吹雪もいるなんてっ!吹雪がいるということは、当然あのボディーガードもいますよね?そんなヤツ等ががひしめくところに、私なんかじゃとても・・」

「落ち着け。いいか?ハイドワン。何度も言うが奴等と戦う必要はない。ブレイズワンが言っていたことは忘れろ。樋口は始末しなくてもいい。むしろできるだけ接触は避けろ。目的物奪取のことだけを考えるんだ。目的物を手に入れたらそのまま現地からの離脱を最優先しろ。ハイドワンの能力ならよほどのことが無い限り見つからん。ただ、念のためにここから能力を展開していけ。・・・心配するな。こちらからも衛星でその島にいる能力者の動きは手に取るようにわかる。変な動きがあればすぐに教えてやるから、ハイドワンが敵より先に捕捉されることはない」

「・・・は、はい。わかりました」

美琴は想定以上の敵対勢力の多さに息を飲み弱音を吐いたが、通信機から聞こえてくる丸岳が真剣に自分を心配してくれている様子が伝わり幾分冷静になれた。

ブレイズワン、紅蓮こと緋村紅音のことだ。

樋口を殺せと最初命令してきたのだが、そんな敵だらけの中で戦闘をしてしまうと、樋口以外の者達にもすぐに駆け付けられ、あっという間に、自分より強い能力者複数人に囲まれて袋叩きにされるだろう。

ブレイズツー、丸岳貴司から「樋口を始末しなくていい」と改めてそう念を押してもらったことは有難かった。

「俺もお前に死なれたくないのでな」

「はい。ありがとうございます」

「期待しているぞ」

「は、はいっ」

気を遣ってくれているのがわかったうえ、密かに憧れている上役に、期待していると低くダンディな声でそう言われてしまって、無意識に美琴はすっかり気を取り直すと、いい返事を返していた。

通信を切った美琴は、ふぅと小さく息を吐きだし、上役の優しさの余韻に少しだけ浸ってから、すぐに表情を引き締める。

「道なき道は猫の道、抜き足差し足忍び足・・。パーフェクトインヴィジビィリティ(【完全不可視化】)」

美琴は発動前に癖になってしまっている簡単な紡ぎ言葉を発し、能力を発動させた。

オーラにより自身周囲の空間を屈折させ、技名通り自分を完全に周囲から見えなくさせる技能である。

両手を地に付け、長身とも言えるしなやかな身体、伏した身体で強調するようにヒップだけを上げる姿、細いがアーモンド形の美しい緑がかった瞳を持った目、口元からは右側だけから僅かに覗く八重歯、ボーイッシュな短髪黒髪が、美琴の特徴ともいえるそれらは完全に周囲の景色と同化し見えなくなった。

(一気にいこう・・!長時間使える技能だけど、素早く見つからずに・・!周りは化け物ばかり・・見つかったら、私なんてすぐに殺されちゃう)

能力を展開し、暗闇の草むらや森の中を、猫のようにしなやかな動きで駆け抜けながら、美琴は敵対する圧倒的な能力者たちが、数多く徘徊する島へ単独で潜入してきていることへの緊張から、身を震わせ乾いた口の中を湿らせるように舌で唇を濡らす。

任務の難易度からくる緊張で、宮コーのアーマースーツを纏っている肌はしっとりと汗ばんでいた。

猫柳美琴は潜入捜査専門の能力者で、戦いにおいては一般人相手なら難なく圧倒するが、能力者相手にであれば、たいていの場合歯が立たないという程度の力しか持たない。

ただ、周囲からの視覚を完全に阻害するという【完全不可視化】は、その非力さを補って有り余るのである。

しかし、今回はさすがに周囲にいる能力者が、自身のあらゆる能力を使っても手に負えない相手だと美琴は自覚していた。

「本当に慎重にいかなきゃ・・。あの二つ名持ちの人達なら隠密能力と機動力に特化している私よりも移動速度が速いかもしれない・・。見つかったら、純粋な追っかけっこじゃ追いつかれる可能性もある・・。でも、丸岳部長の期待に応えたいし・・、いざとなれば奥の手もつかって絶対に逃げ切るんだから」

美琴は暗闇を音もなく駆けながら、そう言い森を飛び抜け跳躍する。

空中に躍り出ても、美琴の姿は誰の目にも見ることはできない。

明け方に近いとはいえ、曇天模様のおかげで周囲はほぼ暗闇で視界は悪いのだが、【完全不可視化】を展開させながらも、美琴は【暗視】も当然発動させている。

跳躍した美琴の眼下には、もうすでに目的地の錆びに塗れた古い倉庫が現れた。

ところどころにある窓からは、淡い灯の光が漏れている。

菊沢宏達とは真逆の方向から倉庫にたどり着いたのだ。

(あのどこかの部屋に樋口がいる!作戦開始からまだ15分・・!きっといつも通りすぐ済むわ。いかにあいつ等が強くたって見つからなきゃなんてことないはずよ!)

そう自分を叱咤し、美琴は音もなく着地すると、まっすぐに倉庫へと駆け出した。

~~~~~~~

前迫香織はオーラで練り出した光の矢を3本、長弓を模したオーラの弓へ番え狙いを定めた。

「これでお仕舞です。下品な男」

香織が上空でそう呟き指を離す瞬間、展開している【見】に不可解な反応があった。

「え?・・なんですかこれは?こんな気配は初めてです・・!」

索敵能力であり、護衛対象の周囲に展開させていた【見】から今までに感じたことのない違和感が伝わってくる。

ただ普通に【見】で敵を補足しただけなら、ここまで驚かなかった。

敵と思しき者は【見】で気配は感じるものの、姿が全く見えなかったのだ。

香織らしくもなく慌ててしまったせいで、すでに離してしまっていた指の狙いのズレを感じて声を上げてしまう。

「・・し、しまったっ!」

引き絞った弓から放たれた白い矢が、対象としていた派手な色のブーメランパンツだけを身につけた男から僅かに逸れ、しかもこちらの気配が漏れたのか、男は身を捻って躱しながら、ビー玉を弾いて反撃をしてきたのだ。

「きゃっ!!」

「ぅおっと!」

ビューン!

ドカッカッ!

びしっ!

女と男の声、空気を切り裂く矢の音、木の幹に硬質な物が刺さる音、そして、硬質な物が柔らかいモノに当たった音が、静まり返った森の中で響いた。

必殺のはずの矢は3本共逸れ、木の幹に2本、もう一本は遥か森の暗がりに吸い込まれて行ってしまったきりだ。

一方の香織はというと。

「く・・っ。迂闊・・・」

上空に斥力で浮遊したままの格好で、膝を付いて血にまみれた右手を左手で押さえて呻いた。

「どらあああぁ!」

利き手をビー玉によるカウンター狙撃で負傷させられた香澄に、下からほぼ全裸の男が拳を振りかぶって飛びあがってきたのだ。

「くっ!」

香織はブーメランパンツ男の拳を咄嗟に左手に持った刀の柄で防ぐが、男の渾身のパワーに押し切られたうえ、男は地面にたたきつけるように蹴りも放ってきたのだ。

「きゃぁ!」

香織は、拳は防いだものの左頬を蹴り抜かれついに上空から地面にたたきつけられた。

「くっ・・・名もなき能力者に・・このわたくしが・・・!」

顔を蹴られダメージもあるが、隙を作るまいと、弓形状に変形させていた長刀を、刀の形に戻し薙ぎ払いつつ防御の構えをとるが、ブーメランパンツ男はすでに肉薄してきた。

「ようやく見つけたで!もう逃がさへんからな!」

ブーメランパンツ男は全身血まみれながらも、このチャンスを逃すまいとしているのか、不用心ともよべるほど猪突猛進して拳を振るってきた。

「くぅ!」

千原奈津紀と共に、高嶺六刃仙の双璧とも呼ばれている前迫香織であるが、接近戦はやや苦手であった。

得物の長さもさることながら、技能も遠距離に特化したものが多い。

その分距離をとった戦いでは、比肩する者はいないのであるが、この状況では香織の優位性は全て潰されてしまっている。

ブーメランパンツ男、モゲこと三出光春は、ギャンブルで鍛えた嗅覚からここが攻め時だと心得ていた。

もっともそのギャンブルでは散々に負け越しているのだが、ことこの場面においてはその判断は正しかった。

「くっ!・・っ!・・・っう!」

明らかに前迫香織はモゲの強引な殴打攻撃を防ぐのに精いっぱいで、長刀を左手だけで器用に操りながら後ずさりを余儀なくされている。

前迫香織は、【見】に反応した気配で気を逸らしてしまったうえ、遠距離攻撃に備えていた展開していた【斥力排撃】をビー玉に貫かれてしまうほど弱めてしまったのであった。

それにモゲの卑猥なオーラが籠ったビー玉が、香織の想定以上の威力が込められていたこともあるかもしれない。

「もう逃がさへんで!どらどらどらどらぁ!」

モゲの猛攻に追い詰められ、大木を背にぶつかった香織は、顔面に向かって突き出されてくるモゲの必殺の拳を寸でのところでよけ、再び上空に逃れようと跳躍したが、モゲはそれを予測していた。

「逃がさへん言うてるやろが!」

飛びあがった香織のベルトのバックル部分を掴むと、強引に地面に叩きつけたのだ。

ばちんっ!びりびりっ!

という何かが千切れる音と、布が引き裂かれる音と共に、どぅ!と香織の細身が、モゲの膂力によって激しく地面に叩きつけられる。

「くぅ!あなたっ!よくも・・・・このわたくしにこんな事を・・・!」

前迫香織はパンツスーツの前部分をベルトごと引き千切られ、淡いブルーの下着を隠すようにして慌てて立ちあがり、モゲから距離をとる。

「ほっほぉお!可愛いの履いてるやないか。お仲間は赤パン、白パンやったな。お前は青パンか!これでみんな平等やな!」

「だ、だまりなさい!」

左手だけで長刀を構え、意味不明な発言をするモゲを牽制しつつ、血まみれの右手で丸出しになった下着を隠すように手で覆った格好で香織は怒鳴った。

「お前だけ下着見せてくれへんかったからな。ぶちのめす前にどうしても見ときたかったんや」

モゲのセリフを無視して香織は、長刀を持った手で耳の通信機をONにした。

「奈津紀、沙織!アジトの方に何者かが高速で向かっています!この者たちの仲間かもしれません!この者達は陽動だったのかもしれません!速度からして能力者に間違いないはずです!でも【見】でも姿は確認できないの!相当な使い手ってことです!」

想定外の状況と、パンツスーツを引き裂かれ下着を思い切り露出してしまったことから激しく動揺しつつも、香織は仲間に状況を伝える。

「はぁ?俺ら以外に誰か来てんのか?」

「この期に及んで、とぼけたふりを・・・」

モゲは素直に本心からそう呟いたのだが、生真面目な香織はそうはとらなかった。

今すぐこの男を片付けて、アジトの方へ戻りたいのだが、パンツスーツは引き裂かれ、両膝のところへかろうじて引っかかっていた生地も地面に落ち、ついに下半身はショーツのみという格好になってしまっている。

「私がこんな目に・・・」

このままではこの男を撃退しても、この格好でアジトに戻りづらい香織は、奈津紀か沙織の応答を待っているのだが、何故か応答がないのだ。

「奈津紀!沙織!聞こえていないのですか?!」

下半身ショーツだけになった香織は、右手でできるだけ下半身を隠しつつ再度通信機に向かって声を上げてみるが、すぐに反応はなかった。

「はっはっはー。お仲間はもうやられてもたんちゃうか?」

「彼女たちは髙峰屈指の使い手ですよ!そんなはずありません!」

モゲの場違いな余裕のある口調に苛立った香織は、声を荒げた。

「せやかて返事ないんやろ?そういうことやと思うで?なんせ、宏もテツも俺より強いからな。まあ、あいつらのことやから、殺しはしとらんはずやから安心せえや。妙にあいつら女には甘いんや。力量から言うて、俺とやってるあんたが一番ラッキーやったんや。しかし、女やからっていうて、優しいにしてもらえんという点においては、あんたはアンラッキーやけどな」

「あなたが一番弱いのは見ていてわかりました。しかしそれでも奈津紀や沙織があの者達に負けるはずありません。あなたも私に勝っているわけではないのですよ?!」

「せやな。せやけど、いまから下着丸出しの女と戦うんや。やる気・・・湧いてくるなぁ!・・・俺があんたのことアンラッキーや言うたワケ・・・・これからたっぷりわからせてやろう思てるんやけどなぁ!男には女には無い最強の武器がある言う事をなっ!」

「ひぃ!」

香織の名誉のために捕捉するが、決してモゲのオーラに怖気ての悲鳴ではない。

明らかに先ほどよりもブーメランパンツの前を大きくさせた男が、凄みながら拳を構え近づいてきたことに、香織は本能的に小さく悲鳴を漏らしてしまっただけである。

先ほど海岸でこの男の全裸を見た時に、サイズは確認している。

戦闘中にそんなことはあり得ないが、人間離れしたあのサイズに狙われているということに、女として本能的に怯えてしまっただけだ。

そんなことを思っている香織の耳元でザザッと通信が繋がった音が聞こえた。

すぐに耳をそばだてた香織だったが、思いもかけないセリフが同僚の二人から返ってきたのだ。

『香織っ!思いのほか手こずっています!くっ・・・このサングラスの者は予想以上の手練れでっ・・・沙織か香織で向かってください・・ザザッ』

『かおりんっ・・!いま手が離せない!・・・うぅっこの人、見た目通りの脳筋じゃなかったのよっ!きゃっ!・・こんのぉ!離せっ!離・・・ブツ』

「な、なんてことでしょう」

香織は聞こえてきた同僚のセリフに、わなわなと肩を震わせてそう言うと、正面にいる変態が声を掛けてきた。

「お仲間なんて言うてたんや?まだ生きてたんか?宏もテツのやつも、敵の女とっ捕まえて楽しむなんて趣味ないと思とったんやけど。まさか真っ最中やったんか?」

「くっ。不埒で下賤な妄想はおやめなさいっ!」

香織はモゲのネジの外れた発想からくる発言に怒鳴ると、カチャリ!と長刀を左手だけで構え直し、仕方なく雇い主である張慈円にチャンネルを合わせた。

「申し訳ありません張慈円様。そちらに何者かが向かっております。こちらは交戦中ですぐには迎えそうにありません。どうかそちらで対応してください」

『ザザッ…、前迫香織か。どうしたというのだ?六刃仙が3人もいると言うのに手こずっているというのか?…まあ相手があの菊一の小僧どもという事なら・・・しかしだ、こちらはもう直ぐ取引なのだぞ?なんとか貴様らだけで対応しろ。そういう契約のはずだ』

「で、ですが・・・もうしばらく時間がかかるかと、それに近づいている者の気配や速度からすると、相当な手練れのはずです。我らも急ぎ駆けつけるようにしますが、何卒ご警戒を・・くっ!」

張慈円と通信している最中ということもお構いなしどころか、チャンスと見たモゲは隙を見計らって下卑た笑みを貼り付かせた表情で香織に殴り掛かったのだった。

かろうじて躱した香織であったが、地面を這う木の根に足をとられ、不覚にも転倒してしまう。

すぐさま身を翻し起き上がるが、制服でもあるパンツスーツを履いていないのである。

回転し起き上がる姿を、モゲが追撃の手を止め、厭らしい目つきでじっくり堪能していることに気が付き、羞恥からどうしても動きに冴が無くなってしまっているのだ。

「ふ、不埒な・・っ!」

『ん?どうしたのだ?前迫香織。何とかなりそうか?それに千原からはそう言ったことは、何も連絡が来ていないぞ?』

「は・・はっ・・。大丈夫です。こちらで対処し、すぐに向かいます」

『うむ、相手があの忌々しい小僧どもでも、お前たちならなんとかなるだろう・・・そう思いお前たちに大枚をはたいているのだ。それにお前たちで何ともならんような相手をここに来させてもらってはその方が困るぞ。そういう事なので、ではよろしく頼む』

張慈円はそれだけ言うと通信を切ってしまった。

一方ブーメランパンツ男が、通信中も容赦なくちょっかいを出してくるのは、致し方ないのだが、ちょっかいの出し方がどうにも厭らしく、眼つきも表情も厭らしい。

その表情や目が、厭らしく嫌悪感を感じてしまう。

右手も掌から甲にかけて、ビー玉で撃ち抜かれているため刀を握るのは難しい。

そしてなによりも、下半身がショーツのみという格好が、なんとも心許ない。

「なんや形勢逆転やな・・・。俺・・なんか楽しなってきたで!ほほう・・・長身やから細く見えていたけど、足に腰回りなどはさすがに鍛えられた剣士の肉付きやなぁ・・・俺はあのメガネの姉ちゃんの声聞きたかったけど、同じようにお堅く済ました感じのスレンダーなあんたも中々にそそるで~」


ピンクと黒の派手で生地の少ないブーメランパンツの股間を、男性器の形を浮き上がらせて膨らませている変態が、拳を構え香織に迫ってきていた。

「なっなにを戯言をっ!私だけでなく奈津紀にまでそのような目で・・・髙峰を愚弄するのも良い加減にしなさい!こ、この変態!・・・しかし!・・舐めないでいただきましょう・・!この前迫香織・・利き手が使えずともあなた如きに後れを取るものではありません」

香織はそう言うと、切れ長の目を鋭く光らせ、左腕のみで長刀を半身にして構える。

能力者としては、幾分格下のはずの男相手に、こうまで手こずることになってしまった香織だったが、自身の今の格好などを考えないよう集中し、できるだけ男の股間に目を向けないようにして、敵を鋭く射抜く目になったのだった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 39話 猫柳美琴と前迫香織終わり】40話へ続く

第9章 歪と失脚からの脱出 40話 天才外科医菊沢美里の不安

「美里先生、ご苦労さま。いつもながら見事だったね」

仕事を終え、患者の血が付着した手袋を脱ぎ棄てたところで病院長が声を掛けてきた。

「いいえ、病院長。おつかれさまでした」

「うん、お疲れ様」

大学付属病院の病院長自らが、オペを終えただけの一医者にねぎらいの言葉を掛ける為に、わざわざ足を運んだというのに、女は明るい笑顔で理知的な声で応えたはしたが、普段とは少し様子が違っていた。

医療用キャップ脱ぎ、肩まで伸ばした黒髪を手櫛で手早く整えると、病院長に笑顔で礼儀正しく頭を下げ、速足にその場を去ってしまう。

「菊沢先生、どうしたんでしょうね。デートでしょうか?」

速足に立ち去る彼女の背を見ながら、病院長の秘書も兼ねている看護師が、普段と些か違う雰囲気の彼女のことを訝しがったのか病院長にむかって呟いた。

「・・うん、少し疲れているのかもしれないね。ここのところ断り切れない急な依頼が多かったせいで、彼女には無理をさせてしまったからね。彼女・・手術前に休暇依頼を出してきたんだ・・。彼女も独り身であの美貌だからね。私がもう30歳若ければ・・ごほん!昨今はこういう冗談も言えない風潮だな。聞き流してくれたまえよ」

「はい、大丈夫ですよ。でも、そうなんですね。菊沢さんはうちのエースですし、お休みできるときはしっかり休んでもらった方がいいですよね。彼氏とのデートをすっぽかさなきゃいけないほど予定詰めちゃうと、他所の病院に移られちゃいますよ。そしたらウチとしては大損ですもん。なんたって彼女は文字通りオペの成功率100%ですもんねえ。ブラックジャックも真っ青です」

病院長の言葉に秘書兼看護師もそう言いながらうんうんと頷いている。

今日の患者は財界大物の親族であった。

大学病院は、公正公平を建前としている公の機関ではあるが、何事にも秘めたることはあるもので、財界や政界、権力を持った者達は当然のようにそれを行使してきている。

一般の患者とは違い、最高の設備に最高の医者を有り余る財力で優先的使用権を得ているのは、どの世においても致し方ないのかもしれない。

しかし、この医療の世界でも腕利きの外科医として名を轟かせている彼女、菊沢美里本人は患者に対し、特にそういう分け隔てはしていない。

どの患者にも全力を尽すのが、彼女の当たり前のことであった。

今日の彼女の様子がいつもと違ったように見えるのは、彼女にしか感じることのできない全く別のことで心中にさざ波が立ってしまっていたからであった。

その様子が、普段の彼女を知る者たちに僅かながらも違和感を与えてしまったのである。

速足のまま駐車場にある赤い愛車のドアを慌ただしく開け、勢いよく身体をシートに沈めた菊沢美里は、キーを回し軽くアクセルを吹かせてから一気に駐車場から公道へと走らせた。

長時間の勤務で疲れていないことはないが、美里の表情に疲れは現れていない。

気になることが頭の片隅にあり、疲れていると脳が感じている余裕すらないといったところである。

手術室に入ったのは深夜を少しまわったぐらいであったのだが、いまはもう朝方と言ってもいい時間帯になっていた。

その為か通行量も少なく、スピードを出しやすい。

美里は手術前には気のせいかもしれないと思っていた感情をかき消すように、肌身離さず身につけているネックレスのトップをきつく握っては、気のせいではなかったことに表情を曇らせる。

手術前に一度試してみていたのだが、その時はコール音すらしなかったのだが、それはどうやら今も同じのようである。

「・・・コールすらしないなんて・・こんなこと今までなかったのに」

美里は車を走らせながら、スマホをきると、ふうと肺に溜まった空気を吐き出す。そして、朝方、深夜とも言える時間ではあるが、思い切ってもう一度スマホを操作し出した。

今度は先ほど掛けた相手とは別の相手だ。

「・・・・お願いです。出てください」

コール音を耳で聞きながら、美里は焦りからつい声に出してしまっていた。

静かだが切実な願いが聞き届けられたのか、コール音が耳元で途切れ、明け方近い時間帯だというのに、耳元でのどかな口調で、いつも通りの調子の声が聞こえた。

「おはよう~美里くん。こんな時間に電話を頂けるなんて、ついに僕の求愛に応えてくれる気になったのかな?人目をはばかるこんな時間というのはさすがに奥ゆかしい君らしいね。君さえ大丈夫なら僕はもちろんいつでも大丈夫だよ。特に今日の朝立ちはいい感じですよ」

「おはようございます先生!こんな時間に起こしてしまって申し訳ありません」

菊沢美里は恩師の穏やかないつもの口説き文句と軽いセクハラ発言には、さすがに対応するゆとりもなく、こんな時間にも関わらず電話が繋がったことによる喜びから、普段より大きな声を出してしまった。

「・・なにかあったのですね?」

聡い元部下のらしからぬ様子に、恩師も気づいたようで穏やかながら声色がやや変わった。

「申し訳ありません。まだ何かあったのかはわかりません・・。でも宏ちゃんのことで」

美里はネックレストップが伝えてくる不安を握りしめてかき消すようにしながら、高速道路にのった愛車を走らせたのであった。

~~~~~~~

身を刺すような冷たさの強風にその髪の毛が、いいように靡かされているのを構うゆとりもなく、千原奈津紀は正面で膝を付いた男に刀を向け見下ろしていた。

船舶で運ばれてきた荷物を仕分けする巨大なクレーンの残骸の上部に立ち、同じくその上で蹲り、血にまみれたサングラス男に向かい奈津紀は正眼に構え直す。

サングラスの男、菊沢宏は奈津紀の攻撃を、かいくぐりついに取引の現場である倉庫のすぐ近くの船着き場まで到達していたのだ。

しかし、相手は暗殺者集団、高嶺六刃仙筆頭剣士である千原奈津紀、まさに現代の剣聖とも呼べる達人を相手にしているのだ。

なんとか目的の張慈円のいるところまであと一歩まで突き進んできたのであるが、むろん無傷と言う訳にはいかなかった。

剣聖千原奈津紀の絶技は、多彩なうえ容赦ない猛剣であった。

クールな表情と口調からは想像もできない、苛烈な猛攻猛撃が千原奈津紀なのである。

「見事です」

普段と変わらぬ口調で、剣聖は目の前の男を賞賛した。

無数の刀傷を受け、呼吸も荒く、血まみれのサングラスの男を見下ろしながら、千原奈津紀は正眼に構えた格好のままサングラスの敵に対し、正直にそう言葉を発していた。

「ぜぇぜぇ・・ははっ。あんたもな」

奈津紀の言葉を聞いて、サングラスを人差指と中指でくぃと持ち上げなおした宏は、よっこいしょと言いながら、狭い足場の上に立ち上がりそう言ってかえす。

上半身裸である宏の肉体は、奈津紀によってつけられた刀傷と、自らの血で彩られておりダメージは見た目どおり相当なものであると分かる。

しかし、宏を正面から見下ろし正眼に構えた剣聖、千原奈津紀の姿はもっと悲惨で深刻であった。

身につけていたスーツのジャケットは戦いのさなかに千切れてすでに無く、ブラウスもボタン部分から破れ、片紐だけになった赤いブラジャーがその豊満な胸を何とか、双丘を零さないように包んでいる。

タイトスカートも激しい戦いのせいで破れ、ホットパンツのように短く千切れている上、スリットとはとても呼べないような縦にさかれたほつれになっていた。

風に弄ばれる髪は乱れ、汗と泥などで美しい顔は汚れていた。

奈津紀のトレードマークでもある、フチなしの片方のメガネはヒビが入ってしまっている。

そして、身体の至る所に痛々しい裂傷の後があり、血を滲ませていた。

それが天穴を応用して剣の形を模したオーラで打たれた箇所であった。

その傷は今日だけで付いたキズであり、そしておびただしい数であった。

奈津紀が剣聖と謳われるほどの腕前であるが故に、菊沢宏の攻撃をかろうじて防げてしまい、躱し続けた結果、膝を屈するほどのダメージの蓄積に至るまでに、多くの攻撃を受け過ぎてしまったのだ。

白く美しい豊満な奈津紀の身体は、宏としても不本意だが傷だらけにしてしまったのである。

「くっ!」

普段どおりのポーカーフェイスで正眼に構えていた奈津紀だったが、我慢していたダメージと痛み、そして点穴特有のオーラ発現の阻害効果に耐えきれず、ついに特に裂傷のひどい肩口を抑えその場で膝を付いた。

「ぜぇぜぇ・・もうええやろ?雇い主に対して十分義理立てしたんとちゃうか?」

宏は、拳と剣を交わらせ生死を掛けた戦いをした千原奈津紀という達人に素直に尊敬の念をいだいていた。

戦い始めたお互いの力量が定かではない最初こそ、なんとか無傷で戦いを終わらせようと思っていたのだが、それは本当に最初だけだった。

途中から宏は全力で戦っていたのだ。

とてもそんな余裕を持って制することが可能な相手などではなかった。

現に宏が全力をもってして戦っても、偶然が重なれば勝敗はわからないほど伯仲していた。

しかし今は、すでに両者とも決着はついたと悟ってもいた。

しかし、当の奈津紀の目にはいまだ輝きを失ってはいない。

それどころか、戦い始めた頃よりも目には精気があるように見えた。

「・・ふ・・ふ・・菊沢宏・・相変わらず甘い男ですね。この期に及んでまだそのような・・。それにまだ勝負はついていません」

かすれた声で微かに笑い、軽く首を振りながら奈津紀はそう言ったが、奈津紀の目には宏を敵として認めている様子がうかがえた。

千原奈津紀は、もはや服とは呼べなくなったボロボロの布をまとい、下着も露出させ肉付きの良い身体を惜しげもなく披露してしまっているが、自らの死ですらすでに覚悟している不屈の表情で刀を構えた姿は何故かエロティックさがあり、それでいて高名な芸術家が描いた絵のような神々しさすらあった。

その覚悟と姿に感じ入った宏も、女は不殺と誓っていたのだが、その誓いに迷いが生じた。

(はじめて女を殺ることになるかもしれん・・・。せやけど、ここでこの女の覚悟に応えんのは、それこそこの女に失礼な気がするが・・しかし・・これほどの奴を・・この女も、ああは言うてるが、もう勝負はついとるってわかっとるはずや・・)

「いきますよ。菊沢宏」

高いところで構えた千原奈津紀、クレーンの先端という高いところではあるが、その先はもう無いのだ。

敵を見下ろしてこそいるが、そこは追い詰められた場所であった。

剣技を極めたと言っても過言ではない使い手は、ここにきて更に見目美しく、そして自らの敗北を悟っていてもその覚悟と心意気は気高く美しい。

落ち着き払った澄んだ声で、攻撃を宣言した奈津紀の声に迷いは感じられない。

「ああ。こいや」

宏はこういう時に、よりいっそう口数が少なくなってしまう。

天穴により、ほとんどオーラを練れない奈津紀は、ほぼ生身の剣技のみで戦わなくてはならない。

最後の僅かに発現できたオーラを振り絞った千原奈津紀の殺気が膨らみ、正眼からのほぼ振りかぶらずに打ってくる最速の上段攻撃が宏の眉間に振り下ろされる。

がきぃん!

ようやく明け方になって雲の合間から覗いた月光りに、奈津紀の愛刀和泉守兼定の刀身を煌めかせた。

奈津紀は刀こそ手放さなかったが、宏の青白いオーラ状の剣は奈津紀の白刃を弾き、徒手空拳にオーラを纏った宏の右手の刃は奈津紀の左胸部を貫いていた。

「ぅく!・・・見事・です。生身とはいえ私の剣を見切るとは。・・・しかし・・なぜ・・この期に及んで私を愚弄するのですかっ・・あなたほどの腕ならば・・ぐふっ・・心臓を貫くのは訳もなかったはず」

宏の右手のオーラに胸を貫かれ、力なくその身を宏に預けてきた千原奈津紀は、口から血を伝わせつつ、宏の攻撃が急所を外れていることに困惑した声をもらしたのだ。

「最初にも言うたけど・・やっぱり女は殺されへん・・。とくに別嬪さんはな・・」

宏はそう言うと、もはや力なくうなだれた豊満な奈津紀の身体を受け止め、貫いたオーラ状の剣を引き抜くと、優しく奈津紀をクレーンの金網の平場にゆっくりと下ろした。

「くふ・・この私が・・女ということで情けをかけられるとは」

宏に抱き下ろされた奈津紀であったが、そう言いすぐに上体を起こし立ち上がろうとする。

手にはいまだに愛刀和泉守兼定が握られているが、奈津紀には最早その剣を振るう意思なないように見えた。

「私の負け・・です」

奈津紀を抱き下ろした格好のままの宏は、なんとか立ち上がってそういう奈津紀を見上げていた。

「このキズは点穴・・なのでしょう?生き残っても、まともにオーラが使えなくなった私はもはや生きている価値など有りません。死ぬときは戦いの中でと思っていたというのに、菊沢宏・・・あなたのような甘い男と最後に相対したのが私の運の尽きです。御屋形様・・ご期待にそえず・・申し訳ありません」

「そないに自分を責めんなや。・・・オーラが使えんようになったとしても、死ぬことあらへんがな。あんたならいくらでもどんな道でもやりなおせるんちゃうんか?」

左胸の傷口を抑え満身創痍、フラフラでようやく立っているといった様子の奈津紀はそう言い、宏のセリフを聞き終わると自嘲気味に首を振って笑い、その身を遥か眼下にある海へと翻した。

「あっアホか!」

身を投げ出した千原奈津紀が握った刀の剣先を、とっさに宏のグローブのような分厚い手が鷲掴む。

奈津紀の全体重の乗った和泉守兼定の刀身を、刃によって斬られた宏の掌から噴き出した鮮血が赤く染めた。

「は‥離しなさい」

「ぼけぇ!お前なにやってんねん!捨て鉢になるんやない!」

すでに死を覚悟した奈津紀は、愛刀と共に逝こうとしていたのだが、宏がそれを阻止してしまったのだ。

「・・・どこまでも思い通りにさせないつもりですか・・せめて兼定と逝きたかったのですが・・致し方ありません。・・菊沢宏・・私を破った貴方にならいいでしょう。この刀は・・和泉守兼定という名です。・・あなたに・・差し上げましょう」

必死の形相で自らの血で濡れた刀身を掴み、金網の平場まで奈津紀を引き上げようとしている宏の顔を眺めてそう呟くと、奈津紀は柄を握る手を離した。

「あほおおおぉぉぉぉぉ!」

闇に小さくなっていく奈津紀の表情は、穏やかではあったが、少しだけ心残りの憂いをたたえつつも微笑んでいた。

宏の叫びが、波と風の音にかき消され、奈津紀の姿は遥か眼下で激しく白波を立てる昏い海へと消えていったのだった。

【第9章 歪と失脚からの脱出 40話 天才外科医菊沢美里の不安終わり】41話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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