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第10章 賞金を賭けられた美女たち 6話 残念なモブの先輩大山田

第10章 賞金を賭けられた美女たち 6話 残念なモブの先輩大山田

「茂部くん、いい店知ってるじゃない」

香澄は目の前のテーブルに並べられた海鮮サラダと旬の魚をメインにしたお造りを見て、モブに意外そうな目を向ける。

「まあ、知り合いの店なんすよ。昼間っからお酒出してくれるしゃれた店ってここぐらいしかしらなくって・・。でも気に入ってもらえたみたいで良かったっす」

先ほどモブと香澄はとりあえずビールで乾杯したところであった。

和食料理店のウエイトレスとは思えないような、フリルのついたスカート姿の小さな女の子が給仕をしてくれている以外は、高級和食店のような雰囲気すらある。

香澄も最初こそ店構えを外から見た時に、雑居ビルの狭い入口に漂う雰囲気を怪しんだものだが、中に入ってしまえば意外にというには失礼なほど店内は高級感があり、座敷の床の間や出窓に飾られた調度品も物凄く品の良いモノが置かれている。

ぼろっちく間口の狭い、雑居ビルの入口には「創作和食-良酒蘭」とLEDの看板があり、その看板の隣には「麻雀個室あり」という看板も並んで設置されていたのだ。

店に入る前は香澄も眉を顰めて「ここって雀荘ってところじゃないの?」とモブに問い詰めたほどだったが、モブが「心配ないっす。雀荘なんておまけみたいなもんで普通に和食の店っすよ。雀荘のほうは・・俺の先輩がメインでやってて、和食のお店の方は先輩の相棒がやってるんすよ。心配ないと思うんすけど、昼間だから先輩は店に来てないはずっす。でも、前の俺の稼ぎじゃとてもこられなかったっすから、今回は部長が奢ってくれるって言ってくれてたけど、来れるようになったのは嬉しいっす」と嬉しそうに笑い、暖簾をくぐって行ってしまったので、香澄も仕方なくモブに続いたのであった。

当初行こうとしていた香澄が普段行きつけにしている居酒屋は、昼間からあいておらず、かといって牛丼チェーン店などで、ランチ時にサラリーマンがひしめく店内などでは、お酒を飲むのも嫌だったため、仕方なくモブの先輩なる人物が経営する店へと足を運んだのである。

しかし、モブのエスコートしてくれたお店は意外にも香澄の予想をいい方に裏切ってくれたのだ。

「お料理もおいしいわ。・・モブくんの先輩のお店って言ってたけど、どういう知り合い?」

お酒も箸もすすみ、香澄はビールで一杯目を空け、二杯目からは麦焼酎の水割りに切り替えていた。

「あーっと、俺の直接の先輩は雀荘の方を担当してるんすよ。学校の時の先輩で1コ上っす。でも俺が尊敬してるのはこの和食店のオーナーの徳川さんのほうっす。徳川さんも俺の先輩と同じ21っす。徳川さんの料理はまじ美味いんすよ」

「モブくんと1個違いってことは21?その若さで店をもって、こんなおいしい料理を作れるのってすごいわね」

「徳川さんはマジすごいっす。それに引き換え俺の先輩はちょっと困った人なんで、ここに来るのは迷ったんすけどね。でも、昼間っから雀荘してないっすからたぶん平気っす。まだこの時間ならあの人寝てるっすよ。まあそんなことより、今日は部長と俺の転職祝いと派手に行きましょうよ」

「あんなに落ち込んでたのに切り替え速いわねえ。で、今朝はどうしたのよ?」

「あ・・そっすね。それで誘ってくれたんでしたっす」

先付とお凌ぎと料理が進み、香澄もモブがあれほど落ち込んでいた様子からやや立ち直ったのを見計らって、今朝支社で起こった出来事を聞いてみたのだ。

大げさな身振りで、しかし浮かない表情で話すモブの様子を、香澄は時折相槌を打ちつつ、杯と耳を傾ける。

今朝、突然最上凪なる加奈子や麻里の先輩社員に呼び出しをくらい、腕試しをすると言われ、失格の烙印を貰ったこと。

その直後に現れた刀を携えた非常識な来訪者たちの一人によって、首に刀をあてがわれ死にかけたこと。

その来訪者たちとの穏やかではない話し合いのなかで、自分だけが他の秘書主任のように立ち回れず、足がすくんでしまっていたことなどをモブなりに話してくれたのであった。

「それで、あんなに落ち込んでいたのね・・。でも、ほんとにそんなことが・・。夢みたいね・・・」

「夢じゃないっす、ガチっす。・・・はぁ・・まじ凹んだっすけど、部長に話したおかげでなんだか少し楽になったっすよ。あざっす」

何も現状は変わらないが、話したことで少しは落ち着いた様子に香澄も最近身の回りに起こる不可思議な出来事と、自身の身体に起こっている変調が夢の中の話なのではないかと思いそうな錯覚に陥る。

そして、飲みたくなった原因をつくった元夫との先ほどの会話を頭から振り払い、務めて笑顔でモブ返す。

「ふふっ、いいのよ。私も今日は飲みたかったしね。・・・それに、だいたいあんな人間離れした人たちと比べて落ち込むって言うのが間違ってるわよ。先日の火災だってあの小柄な緋村さんがほとんど一人でやらかしたっていうのよ?信じられる?・・あれだけ支社を半壊させるほどの事件をよ?・・ったく・・、もし本当にそうだとしたら、とっくに人を辞めちゃってるレベルだわ。真理さんや加奈子さんは、あんなことをした人に立ち向かっちゃう人達ってことでしょ?その先輩の最上さんだっけ?・・その人もきっと普通じゃないのは間違いないわ。落ち込むことないわよ」

香澄はそう言うと、ヒラメの切り身を口に運び、十分に味わってから麦焼酎が入った陶器製の杯を傾ける。

香澄はモブにそう言い、喉を潤すアルコールを感じながらも、あの大火災の日に支社に向かう途中に感じた自分の人間離れした速力や、持ってきていた木刀を構えた時、そして宮コーの社員と思われる紅露なる大男と対峙したときに、身体で感じた周囲を目ではなく気配で見渡せた感覚や、木製でしかない木刀での突きで、コンクリート片に風穴があけられたこと思いだす。

(・・・どういうことなのかしら・・・。宮川さんって確かに仕事じゃ異常なぐらい人の心情を読むのが上手かったり、交渉も見てるこっちが冷や冷やするぐらいギリギリのところを攻めても纏めちゃう凄腕だけど、ちょっとおかしなこと言う時もあって・・。でもあれって、あの人にとっては普通のことなの?それが、私の身にも起きはじめてるってことかしら?・・この茂部くんにも・・?宮川さん達にであったせいで変化があったのかも・・?)

香澄が33年間生きてきた中で、ここ3か月の出来事は今までの経験にないモノばかりだった。

一人一人個人が持つ主義や信条や好み、あとは性格などでタイプこそ違いますけれども、人なら誰でも持っている力ですわ。思念の力、脳領域の開放にのみによって目覚めますわ。ほとんどの人は皆10%ほどしか脳を使いこなせておりませんわ。しかし、思念の力は訓練や努力で伸ばすことができる後天的な能力ですのよ。しかし、何事においても天性の素質やセンスを持って生まれてくるものがいるのは、どの分野においても同じこと。わたくしや緋村紅音、そして神田川家始まって以来の天才と言われている真理は生まれながらにして天性の素質を持っていましたわ。宮コーにはその他多数の天性の能力者たちを世界中からかき集めてますけれどもね。しかし、周囲を私の目の能力で見渡してみる限りにおいて、能力を使っている者はだいたい500人に1人の割合でいますわ。その力の多寡や巧拙は様々ですがね・・。ですからこの国においても20万人ぐらいの能力者がいるはずですの。本人が気付いていない場合もおおいようですけどね。・・・そして香澄、あなたもその無自覚な能力者の一人ですわ。言葉はあまり好きじゃありませんけど、宮コーでは、無自覚な能力者や、能力者を有する組織に属していない者達をノラと呼んでいますのよ。

香澄は宮川アシストに入社して1か月ほどした時に、宮川佐恵子に言われたセリフを思い出していた。

あの時は、真面目な顔で中二病じみたことを言う宮川佐恵子のことを、完全にイッちゃってるヤバい人かも?と思ったものだったが、好待遇で雇ってくれている会社の最高責任者に、そういう態度はおくびにも見せるわけにいかず華麗にスルーしたのだが、今はあの言葉が鮮明に思い出され、点と点が繋がって見えるようになってきはじめていた。

(宮川支社長にとったら・・日常的なこと・・?普段から当たり前のことだった・・ってこと?)

「・・モブくん。能力者って知ってる?」

香澄は控えめの声量で問いかけてみたが、モブの反応は早かった。

「もちろんっす。支社長から香澄さんも使えるって聞いてるっすよ?ちなみに俺も使えるようになったっす。あの鬼たちのシゴキはきつかったっすけど・・」

最後はシゴキの苦痛を思い出したのか顔を引きつらせかけたが、話の内容そのものは、あまりにもあっさりと肯定された上、自分自身のことまで言われたので香澄は驚いた。

「神田川さんが熱心に勧めてくれたのって・・いったい・・。・・・私、上場企業に運よく縁ができて栄転できて、今までの働きも評価してくれて仕事もやりがいあったし素直に喜んでたんだけど、これからどうなっちゃうのかしら・・?」

「宮コーにいる限り、命の危険が危ない場面がきっとくるっす」

香澄は、お造りの皿の上に盛られている大根のつまを箸でつつきながら、誰ともなしに声に出してしまっていたのだが、モブは自分に聞かれたと思い、勢いよく間違った日本語ではっきりと言い切ったのであった。

~~~~~~~

一方、良酒蘭の店奥にある雀荘ブースを管理する事務室では、モブの先輩なる人物が机に脚を上げ、椅子に座ったまま眠っていた。

その時、事務室の扉が勢いよく開き眠っている男に向かって、整った顔立ちに短く切りそろえた髪型が印象的な細身長身の男が声を掛ける。

「お?大山田。居てたんか?また帰らずに寝てたんかいな?しゃーないやっちゃな・・」

割烹着を着た男の声で大山田と呼ばれた男は「ああ・・?」と首をひねって扉のほうに眠そうな顔を向ける。

「おまえの雀荘のほう、どうせ昼間っから客来んやろうから。個室として使わせてもろうてるで?ええやろ?」

「お・・おう。ええで徳川。せやけど誰も来んってはっきり言われるんはけっこうショックやなぁ・・」

「あほ言え!お前が来る客来る客の卓に入って、あれだけ暴言吐いとったらほら誰も来んようになるわ!そもそもこの店の経費折版って約束やったやろが?お前が雀荘の客追い返してばっかりやから、最近家賃俺が全部持ちやないかい!」

「すまん・・。いまに巻き返すさかい。大目にみたってや。温かい目でみたってや?」

大山田は、徳川と呼ばれた男の言い分に慌てて立ち上がり、背もたれのある椅子を回転させて、その椅子の上に勢いよく正座で座りなおして椅子の上で頭を下げて土下座する。

「まあええわ。腐れ縁ちゅうやっちゃ。しかし、いまお前の雀卓の個室で女連れ込んで酒のんでるんって誰やと思う?」

「え?誰やねん?俺らの知り合いか?」

椅子の上で土下座していた大山田は顔を上げて徳川に聞き返す。

「モブや。あのモブやで?高そうなスーツ着いて、えらいベッピンの真面目そうなメガネちゃん連れて来てるわ」

「なんやて?!あのモブが?!良酒蘭みたいなクソ高い店来れるわけないやろ?!しかもベッピンの女連れやて?・・・あいつに近づく女ってヤンキー女ばっかりやったやないか。シンナーの吸い過ぎで前歯の欠けた女か、金髪でチェーンバッグに忍ばせてるような女ばっかりやったやないか」

イスに正座したままの大山田は驚いた顔で徳川に言い返す。

「他人の女事情なんぞ知るか!それよりクソ高いって何やねん。俺の店は新鮮な材料使うて、関西一やと俺自身が自負しとる腕を振るって、適正な価格設定してるんや。せやから常連さんも増えてきてるやろが。お前の感情的な行き当たりばったりの雀荘とは違うんじゃ。こないだもせっかく麻雀打ちに来てくれたお客さんに舐めた態度とってたやないか。おまえ商売舐めとったらあかんぞ?」

「うぐっ・・」

同年齢で、賃貸テナントの家賃を折半し合う対等な立場で始まった、大山田と徳川のコンビであったが、開業して1年で二人の立場は完全に一方に傾いていた。

それでも徳川は大山田を追い出すことなく付き合っていることから、モブが尊敬しているように徳川は少しお人好しで人格者なのだ。

「まあ、あとで挨拶ぐらいは行ってやれよ。あいつどんな手品使うたかしらんけど、あの宮コーに就職きまったらしいからな。一緒に来てるベッピンさんも宮コーの人らしいわ。あいつみたいなチンピラでもああやって更生してるんみると、感慨深いもんや・・・。大山田。先輩としてあとで挨拶したれよ?」

そこまで言うと、厨房のほうから徳川を呼ぶスタッフの声が聞こえ、慌てて徳川は厨房へとかえって行く。

「・・・あのモブが・・?女連れで徳川がやってるクソ高い店にくる日がくるやなんて・・。俺のこと笑いに来たんか・・・?」

徳川が去り、誰もいなくなった散らかった事務所の椅子に座りなおした大山田は腕を組んで爪を噛む。

「まあええ・・徳川は雀卓がある個室に居るいうてたな」

大山田はそう言うと、下卑た笑いを寝起きの目ヤニだらけの顔に浮かべると、パソコンを起動させ、キーボードとマウスを操作し出す。

「しばらく使うてなかったけど・・よっしゃ!個室に居るとは好都合や・・ひひひっ」

大山田はそう言って指を鳴らしてモニタを食い入るようにして身を乗り出す。

大山田の経営する雀荘では、違法とされている金銭を掛ける麻雀を日常的に行っていた。

かなりのレートでの勝負であり、それなりの金額が動くため、イカサマをするものが後を絶たなかったのである。

その為、イカサマ防止のために、その雀卓のある個室では複数の隠しカメラが設置されていたのであった。

もっと、ここ数か月はオーナーである大山田自身の接客態度の悪さから、監視カメラを使用することがなかったのであるが、今回モブが来ているということモブが連れている女を盗撮する為に稼働させたのである。

「おっ!モブのやつ・・マジで女連れや・・生意気な。こっからやと後ろ姿でツラは見ええんが・・モブのくせに生意気すぎるで・・。しかも高そうなコース頼んでからに生意気な・・まあええ。ひひひっ・・とりあえず録画や」

低能な者によくみられるボキャプラリーの少なさから、同じ単語を連発しながら、大山田は下卑た笑い声を漏らすと、卓の天板下に付けているカメラの一つを操作する。

すると複数あるモニタの一つが、旋回し景色を映し出し始めた。

そこにはタイトスカートからはみ出した、むっちりと言えるが、艶めかしい足がスラリと伸びている映像が映し出される。

「おおっ・・。ベージュのパンストか。これなら下着も映せるかもしれへんな。さてっと・・、徳川の話やとベッピンらしいからな・・こっちのモニタも・・おおぉぅ!モブのくせに!」

モブの正面に座っている女の顔が映し出され、大山田は思わずマヌケな感嘆の声をあげてしまう。

大山田が操作しているのは、個室に複数設置されている隠し監視カメラである。

その一つのモニタには香澄の膝小僧とパンストに包まれた脚、タイトスカートの間から覗く今はまだ暗い逆三角形の部分。

もう一つのモニタには、メガネを香澄の顔が正面に捉えられていたのだ。

「モブのくせに生意気な・・めっちゃベッピンやんけ。くっそ~。なんでこんな上玉がモブみたいな半ちく野郎なんかと昼間っから酒飲んでるんや!」

着衣しているとはいえ、香澄の両足の間の影になっているデルタ地帯のアップと、モブと談笑している笑顔のメガネ美人である香澄の顔のアップを二つのモニタを並べ見比べる。

「まあええ、まあええ・・。この女には何の罪もないが、こんなべっぴんがモブと酒飲みにくるってこと事態が、俺の自尊心がキズつくねん。その罰や。くらえ」

大山田はめちゃくちゃな理論を吐くと、ボタンを操作し香澄の暗く映っていたデルタ地帯向けてカメラに備え付けてあるライトを照らしたのである。

「ひひひっ!ざまあみろ。クールなメガネ美人のおパンツ丸見えや。ひひひっ。モブお前の彼女パンツ撮られてんで?ざまあみろっての。ひひひっ」

香澄の顔のアップと、下着の映った股間のアップの両方の画面の右上にRECと表示されているのを見て大山田は下卑た表情に下卑た笑い声をあげて手を叩いた。

画面には香澄の整ったクールな顔と、もう一つの画面にはクールなメガネ美女の下半身とは思えないむっちりとした艶めかしい脚が映り、その中心にはベージュのパンスト越しに鮮やかなブルーの下地に白のレースが施された上品な下着が、ライトに照らされはっきりと映されている。

大山田は更にカメラを操作して拡大し、香澄が足を組み替える一瞬の隙に確かに下着のクロッチ部分も録画したことに自らの股間も大きくしだした。

「ひひひっ、一瞬やったけど、あとでスロー再生や一時停止ボタンおしてじっくり辱めてやるからな」

そういうと大山田は香澄の顔と下半身のアップを交互に見ながら、自らのズボンとパンツを下ろして、すでにいきり立ったいち物を握って上下にしごきだしたのであった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 6話 残念なモブの先輩大山田終わり】7話に続く

第10章 賞金を賭けられた美女たち 7話 再会

第10章 賞金を賭けられた美女たち 7話 再会

【登場人物紹介】

大山田 種多加(おおやまだ たねたか)
身長165cm 60kg 22cm

モブの1つ先輩でモブと同じ学校出身。

モブと同じく高校は中退している。

先輩風をビュービュー吹かすくせに、大した実力のない典型的なダメ先輩。

自尊心は強いが、強いモノには弱く、弱いモノには強くでることで自分では合理主義者だと勘違いしているところがある。

容姿は千鳥の大吾似であり、素の格闘術では宮コーに入社して加奈子や真理にシゴかれる前のモブより劣り、体格的にも優れていない。

高校を中退後、期間労働や短期のアルバイトや口八丁で一時的に仲良くなった女性のヒモなどを転々としながらも、幼馴染の徳川将(とくがわまさる)にくっつき、なんとか雀荘をオープンするまで漕ぎつける。

しかし持ち前の自分勝手さをあらゆる場面で炸裂させるうえ、女性客が男性客と一緒に来店していようが見境なく口説きだすため、雀荘の評判と経営状態は良くない。

そのため、雀荘は現在では閑古鳥が鳴いており、同じテナントを賃料折半で借りている相棒の徳川将(とくがわまさる)にここ数か月は家賃を全額払ってもらっている負い目から、悪名高い清水探偵事務所の危険な副業に手を染めだしている。

先天的に僅かながら能力者としての下卑た力を持っていたのだが、つい最近まで自分自身でもその能力には気づいてはいなかった。

【強奪】:相手の意思による同意を得ずに性行為をした場合、相手が能力者であった場合は、相手の能力の1%~99%の範囲で奪うことができる。

【強奪】の条件が満たされた時の強奪率は、自分より能力が低い相手ほど力を奪いやすい。

大山田は生まれ持ってその能力を持っていたせいか、目を付けた女性への執着は強く、同時に何人もの女性をモノにするまで追い回す執念深さがある。

つい最近まで犯した女性の中に能力者がいなかった為、大山田は自身の能力に気付くことなくいたが、清水探偵事務所が香港マフィアから請け負った仕事のオコボレで、奇跡的にも国内屈指の能力者を犯すことに成功している。

そのため、非常にレアな能力であるオーラを炎に変換させる発火能力を【強奪】することに成功しており、絶賛増長中である。

徳川 将(とくがわ まさる)
180cm 75kg 23cm

大山田種多加(おおやまだ たねたか)の幼馴染で、容姿は鈴木亮平に似ており、現在は大山田と共同経営で創作和食料理店と雀荘を経営している。

徳川自身も高校中退をしておりながらも、料理の世界に飛び込み、努力と根性で料理の才能を開花させた。

文化人であり美食家としても名高い喜多大路魯山人の弟子となり、あの気難し屋で知られる喜多大路から料理の造詣と腕前を評価されている。

喜多大路は画家、陶芸家、書道家、料理家として様々な文化的な顔を持っている文化人で、会員制食堂美食倶楽部を経営しており、徳川はそこで15歳のころより腕を磨いていた。

5年間の厳しい修行を経て、自分の店を持とうと美食倶楽部を辞める時に喜多大路は大いに徳川を引き留めたが、徳川は夢を叶えるために慰留を断っている。

そのときの一件で喜多大路からは破門を言い渡されており、そのため料理人の世界では浮いた存在となるも、料理の腕前が評判を呼び経営の方は順調である。

大山田と同じテナントに借りることになったのは、徳川が開業する店を探しているときに、どこからともなく大山田が駆けつけ、頼みもしないのに店舗探しを手伝ってもらったのがきっかけで、いつのまにか大山田と折半で賃料を払う羽目になっていたというお人好し且つアニキ肌の男前である。

徳川自身も無自覚な能力者であり、生粋の【肉体強化】能力者である。

能力を有しているが故、学生時代からケンカはめっぽう強かったのだが、いまはヤンチャをすることはなく、また仕事柄戦闘を好んですることはない。

能力は食材の鮮度の見極めや、複数の料理を同時に調理するのに必要な高い集中力と、精密で素早い包丁さばきや、正確な時間管理に活かしており、能力を用いて犯罪などに手を染めることなく、正しく能力を世の中の為に使っている数少ない善良なノラである。



【本編】

「おう!モブ」

個室のドアが乱暴に開き、趣味のいいとは言えない、明るいグリーンのジャージ姿の男が、横柄な口調でそう言って部屋に入り個室内にいる二人の男女を舐めるように見回した。

個室に乱入した男、大山田種多可は、最初にモブ、そしてモブの正面に座る香澄に視線を走らせ、黄色い歯をむき出して下卑た笑顔を浮かべた。

香澄は大山田のその表情に、気づかれないようにブルリと背筋を震わせる。

(な・・なに?この人?気持ち悪い)

先ほど事務所で香澄の下着を盗撮し、その映像で、2度も白濁液を放出したてきた大山田であったが、年中発情し、繁殖欲旺盛な大山田は、映像とは違う生の香澄を値踏みするような、無遠慮で好色な目を向けてきたのだ。

「あ・・山さん。いたんすか?」

そんな大山田の不躾すぎる態度にむっとしたモブは、香澄に向けられている下卑た視線を逸らせようと、わざと大山田が反応しそうな口調で切り出した。

厳しい時もあるが優しい人生の先輩であるメガネ美人こと岩堀部長との楽しい時間を邪魔されたせいもあり、モブはあからさまに嫌そうな顔を大山田に向けて言ってみたのだ。

香澄をさりげなくフォローしたことにかんしては、モブのファインプレーと言える。

モブは短慮浅学ながらも、学生時代からその立派な体格と、それなりに整った容姿をもち、そのうえ女性にはさりげない気遣いができるところもあったので、ヤンチャさと時折みせる優しさのギャップから、ヤンキー女の中ではなかなか人気のある男ではあったのだ。

そんな自分よりモテる後輩を、心の狭い大山田先輩が快く思う訳がなかった。

学生のころから、些細なイチャモンをモブに付け、よく絡んでは腕力で自分に勝るモブに、軽くあしらわれていたのだ。

しかし、いまの大山田は経営する店の経営状態がどん底にも関わらず、最近奇跡的な出来事が身に起こり、絶賛増長中であった。

「おおぅ!?いたんすかとはなんや!?いたんすかとは?!ええモブ!ここは俺の店やぞ?居るん当たり前やろが?!それにおまえ、先輩に対して口のききかた。・・ちょっと会わん間に図体だけやのうて、さらに態度でかなったようやのう!?」

モブたちが知らないことをいいことに、大山田は家賃をここ数か月払ってない分際で、オーナー風を猛烈に吹かせて、顎を突き出すような角度で顔を傾けモブに迫ってきた。

「いまの全然態度でかくねっすよ。ここは先輩の店なのかもしれないっすけど、俺ら今日は客としてきてるし、先輩こそ客に対してその態度はないんじゃないっすか?」

「なっ!?てめ!?モブのくせにおまっ!?」

大山田は勢いよくスゴんでみたももの、後輩であるモブに、呆れ口調で至極正論を言われては無様に口ごもる。

(茂部くんの言ってた先輩?)

モブの反論で無様に狼狽える大山田を横目に、目と表情でモブにそう聞いた香澄に対して、モブはコクリと無言で肯首する。

「なんや今の!?なんやなんや!?二人で相槌打ちおうて人の前で内緒話してるみたいで態度悪いなぁ?!それに宮コーの社員さんがこんな昼間っからお酒飲んで、勤務中と違うんですかぁ?!通報しましょか?!」

モブと香澄の言葉のない一瞬のやり取りを、目ざとく気付いた大山田は、自分のことを蔑まれたのだと勘違いし、今度は香澄にもむかって絡みだす。

「ちょっと先輩。通報って・・どこにですか・・?通報したいのは俺たちの方っすよ・・。そんなこと言ってるとまた・・」

モブは席から立ち、香澄と大山田の間に割って入ってそこまで言うと、言いにくそうに口ごもる。

「お?!またってなんや?おまえ・・モブよ。俺があの時のままやと思うなよ?あれで俺に勝ったつもりでおるんちゃうやろな?!」

モブのセリフに、大山田は香澄からモブへと標的を変え、体当たりするようにモブに身体ごと押し付け、いきり立って聞き返してきた。

「勝った気になんてなってねえっすよ勝った気になんて・・・。完全に俺の勝ちだと思ってるっすよ。先輩俺に勝ったことなんて一度もないじゃねえっすか・・。俺もガッコの先輩を何度も殴るのなんて後味悪いっすよ。後輩らの目もあるし・・もうお互い社会人なのに勘弁してくださいっすよ・・」

いかに先輩と言えども学生時代に頻繁に絡まれていたモブは、大山田を仕方なく何度か腕力でねじ伏せたことがあるのだが、懲りずに絡んでくるこの人の精神と根性がイマイチ理解できずにいた。

(俺なんでこの人にこんなに嫌われてんのかなぁ?・・俺もバカだけど、自分より強い奴にイチャモンつけ続けるのってどういう神経なのかぜんっぜんわかんねえ。動物だって自分より強いもんにかかっていかねえって言うのに・・)

「ああん!てめえモブ!ちょっといい会社に就職できたからって完全に調子に乗ってんな?!・・・いいだろう・・てめえなんぞにゃもったいねえが、そんな社会のチンケなステータスなんか超越した俺の力を見せてやる!」

突っかかられて困惑顔のモブに、大山田はツバを飛ばしながらそう言うと、右手の人差指を立てて、なにやら力み始めた。

「ぬぉぉおおおお!」

モブはテーブルに置かれていたオシボリで、服や顔に飛び散った大山田のツバを拭いながら、力んで五月蠅くなった先輩から香澄を庇うようにして立ち迷惑そうに眺めている。

香澄もモブから困った先輩とは聞かされていたが、予想以上の益荒男ぶりに唖然とした表情で大山田を観察していた。

「なんなんすかもう。ウルサイっすね・・トイレでも我慢してるんすか?・・自分の店だからトイレの場所ぐらい知ってるっすよね?」

モブが心底ウンザリした様子でそう言うと、大山田がプルプル震わせている人差指に炎が灯った。

「どおだ!見たか!これが俺の力だ。選ばれし者だけがつかえる思念の力。いわゆるオーラってやつだ。ビビったかモブ?!あぁん?!てめえなんかじゃ逆立ちしてもできねえ芸当だろ?!」

「えっ!?」

大山田が粋がった会心のどや顔でそう言って、指先から発して炎を見て、香澄は驚いて声をあげた。

「心配すんなってねーちゃん。大人しくしてりゃ危害はくわえねえよ。だが先輩に舐めた口をきいちゃってる、この冴ねえ男のモブはちょっと教育してやる必要があるがなぁ!」

香澄の驚いた声に気をよくしたのか、大山田は黄色い歯を見せてどやぁ!という顔で香澄にそう言うと、モブに向き直って再びスゴむ。

「こうっすか?」

モブがそう言って人差指に灯した炎をみて、大山田の表情は激変した。

「なっ!!!なんでだてめえ!」

モブが立てた人差指には、大山田が口からツバと騒音をまき散らしてようやく灯したライターの火と同じぐらいの大きさの炎が灯っていたのだ。

「めっちゃオーラ食わねえっす。省エネ技能っすね。栗田先生の念動力の10億分の1ぐらいっす。戦闘じゃまったく使えなさそうっすけど。タバコとかキャンプで火つけるのとかは便利そうっす。まあ俺タバコ吸わねえっすけど・・・。でもこれ、とにかく火が小さくて制御しやすいし、とりあえずストックにいれとくっすよ」

「なっ!?まさかお前も火を使えるのか?いや・・、違うな。ガスボンベでも腕に仕込んでんだろ?そうだろうが?!ええ?!図星だろ?!」

モブの指先からでている炎をみて仰天した大山田が身体をのけ反らせて驚いたのは一瞬で、すぐに、ははーんといった表情になって名推理をした探偵のような仕草でモブを指さして言い放つ。

「・・・ガスボンベを腕に仕込むなんて、いったい何の役に立つんすか?腕に銃を仕込むとか漫画じゃありそうっすけど、ガスボンベって・・・無いっしょ。んなバカみたいこと言うのはやめていい加減にしてくださいっす。今日は会社の先輩と飯食いに来ただけだってのに何でこんなに絡まれなきゃいけねえんすか・・」

「炎を使えんのはこのオレ以外だと宮コーの紅蓮だけだって聞いてんぞ?!紅蓮の緋村紅音と双璧の、この爆炎使い大山田種多可様だけだ!」

後輩であるモブにあからさまにディスられていることに、大山田は気づくこともできず、自分の力を今度は言葉で誇示し出した。

少し実力を見せれば静かになると思ってのモブの行動は逆効果であった。

いまの大山田のセリフも、かの紅蓮こと緋村紅音に聞かれれば、鼻で笑われた挙句即座に灰にされそうなセリフを吐いて、更にうるさくなってしまった。

呆れてゲンナリしているモブとは違い、少し大山田の奇行に慣れて考えるゆとりのでてきた香澄は、モブと大山田のやり取りを冷静に観察できていた。

(この人・・なぜ緋村さんの二つ名の紅蓮という名を知っているの?私だってつい最近までそんなこと知らなかったし、宮コーの幹部社員たちが不思議な力を持ってるなんて全然知らなかったのよ・・・?部長の辞令書には秘書主任及び部長職以上の幹部職員は、各職員のパーソナルデータおよび、能力、技能について口外を禁ずる。という文面があったわ。読んだときはイマイチどういう意味か解らなかったけど、たぶん能力のことじゃないかしら?・・ってことは、宮川支社長はあまり気にしてないみたいだけど、宮コーという組織自体は能力者の存在を世間には秘匿しているってこと。それなのに、茂部くんの先輩の大山田さんだっけ・・いち雀荘の店主さんでしかないこの人が紅蓮イコール緋村紅音ということを知っているのはおかしいわ。これはどういうことなの・・・?)

香澄が頭を働かせている間に、ついに我慢の出来なくなった大山田はモブの胸倉をつかみ、拳を振り上げた。

「おんどりゃあ!ウチの客に何しとんじゃ!」

騒ぎを駆けつけた徳川が厨房から駆けてきたのだ。

「いだだだだだっ!すまん!徳川!いだだっ!」

徳川の登場に驚いた大山田は一瞬で腕を捻りあげ情けない声をあげだした。

「モブすまんな。今ならべてる料理も作り直すさかい、ゆっくりしていってくれや。そっちのおねえさんもえらいすんまへん。このとおりです堪忍してください」

大山田の腕を捻りあげたまま、徳川はモブと香澄に対して深々と頭を下げる。

「いや!徳川さんやめてくださいっすよ!徳川さんが頭を下げることじゃねえっす」

「こいつはウチの人間や。こいつが迷惑かけたってことは俺のせいでもある。モブほんますまんな。せっかく就職祝いでウチを選んでくれたってのにホンマすまん。今日は代金サービスするから、堪忍してくれや。こいつはきっちりヤキいれとくけん・・」

ようやく頭を上げた徳川は、心底申し訳なさそうな顔でモブにそう言うと、大山田の腕を肩甲骨当たりの高さまで捻りあげたまま裏に消えて行ってしまった。

「なかなか・・凄まじい人だったわね」

「部長・・面目ねえっす・・。先輩、前より磨きがかかってるっす。あそこまでブッ飛んだ人じゃなかったんすけど・・」

香澄のセリフに、モブが香澄の方へ振り返り申し訳なさそうに頭を下げた。

「ええ・・いいのよ。それこそ茂部くんが謝ることじゃないわ・・。それよりあの人、気になること言ってたわ。それにあの力・・・指から火を出して・・緋村さんのことも・・」

まさかの店側のスタッフからのクレームを受け、個室には訳の分からない嵐が吹き荒れていたが、嵐の去ったあと香澄は冷静に考え込んでしまう。

「紅蓮っすか。支社長の天敵っすね。俺は紅蓮にあったことねえっすけど、能力もってる幹部たちの間じゃ二人の不仲は有名らしいっすよ」

「そうみたいね・・。先日の支社での火災のとき・・私も直接見たわけじゃないけど、あの火・・全部緋村さんがやってたんだとすればとんでもない炎よ?・・あの緋村さんと茂部くんの先輩が双璧って言ってたから対等ってこと?あの人も緋村さんと同じような力を使えるの?・・なんで二つ名までしってるのかしら・・モブくん?あの大山田さんって何者なの?」

フリルのついたスカートを履いた小柄なウエイトレスが、サイドテールの髪を揺らし忙しそうにテーブルの食器を下げ終わって個室から出て行くのを見計らい、香澄はさっきの大山田のセリフを思い出しながらモブに問いかけてみるも、モブもそう詳しく知るわけではない。

「俺の先輩っすけど・・。たぶんそういうこと聞いてるんじゃねえっすよね?・・わかんねえっす・・。山さんがあんなことできるなんて今日初めて知ったっす。でも、俺の【複写】でコピーできたってことは、間違いなく山さんは能力者っす。・・・稲垣主任が言ってたんすけど、あのくそビッチ・・あ、すんません、紅蓮のことっす。稲垣主任、紅蓮のことそう呼ぶんでつい・・、紅蓮はマジでヤバいってしょっちゅう言ってたんす。あの鬼強い稲垣主任がそう言うんだから紅蓮はきっとガチでヤバいやつっす。・・昔の山さんのこと考えると、あり得ない気もするんすけど、もし山さんが紅蓮並みだったんなら、俺またもや命拾いしたってことっすかね・・・?」

モブが今朝に続き、今も命拾いをしたのかと苦い顔になって言うが、香澄は首を振る。

「違うと思うわ。私から見てもさっきの大山田さんの立ち振る舞い・・私の剣道で学んだ観察眼レベルの話にはなるんだけど…それでも何度も一本を取れたと思うの。それに宮川支社長のボディガードの稲垣さんがそう評価する紅蓮とその大山田さんが同列だなんてとても思えないのよ。茂部くんから見ても大山田さんに対してそんな感じしなかったんじゃない?」

「まあ・・そうっす。隙だらけの顔面に、マジで手が出そうになるの我慢するのが辛かったっすもん」

モブのセリフに香澄は笑いをこらえるようにして口を押えた。

「でも、なんだか引っかかるのよね。茂部くん大山田さんのこと少し教えてよ?・・宮コーが世間に公表してないような情報をあの人知ってたのよ?気にならない?しかも緋村さんって、こっちにいたのって3か月ぐらいなのよ?今じゃ都心の本社に帰ってるし、この3か月で大山田さんと緋村さんとで接触があったってことじゃないのかしら?緋村さんの仲間・・って感じじゃなさそうだけどね・・」

そして、香澄はすぐ神妙な顔になってそう言った。

「なかなか鋭いねえちゃんじゃねえか。ツラも極上で身体も熟れごろか…?これで能力者なら言う事ねえんだがな。」

モニタ越しに香澄を見ていた男は、感心と苛立ちの感情が混ざった表情でため息交じりに呟いた。

徳川に5発ほど小突かれ、顔を腫らした大山田が事務所に戻った時、大山田の椅子にはオールバックで細身のスーツ姿の男が椅子に座り、監視カメラが映し出している香澄とモブを眺めていたのだ。

「それに引き換え・・てめえはマジで使えねえな。ええ?大山田」

きぃ!と椅子を鳴らして事務室の入口に立っている大山田に男は椅子ごと身体を向ける。

「か、金山さん・・!来てたんすか・・!」

小突かれて腫らした顔を手で押さえていた大山田は意外な来訪者に狼狽えてそう言うのがやっとであった。

金山という男は、監視カメラ越しに大山田とモブのやり取りをずっと見ていたのだ。

ばきっ!

「ぐあっ!」

その金山が椅子から立ち上がりざまに一閃させた蹴りが、大山田のアゴにクリーンヒットしたのだ。

大山田は吹っ飛ばされ、机に置かれていた灰皿と吸い殻ともども派手な音を立てて床に転がる。

「てめえにゃ、良い思いさせてやっただろうが?おまけに自分の薄汚ねぇ能力にも気づけたんだろうがよ?!【強奪】だっけか?あの紅蓮の能力をほんの一部とはいえモノにしたんだろ!?紅蓮みたいな上玉をてめえ如きチンピラにオコボレで味見させてやるんじゃなかったぜ。おまけに紅蓮の能力までかすめ取りやがって・・。タナボタだな、おい?!そこまで面倒みてやったのに、てめえは何ペラペラと三味線奏でてんだ。おお!?」

どかっ!

金山は蹲っている大山田にそう言って、追撃の蹴りを食らわせるとペッと床に唾を吐いた。

「おい!大山田!今度はなんやねん!!?」

事務所での騒ぎに再び駆けつけた徳川を目にした金山は、苛立たしそうに舌打ちをして、大山田に「いくぞ?」とだけ言うと、肩で徳川を突き飛ばすように外へ出て行ってしまう。

「おい!どういうことや大山田?」

肩をぶつけられたものの、徳川は金山に蹴り飛ばされ鼻血の出た顔を抑えている大山田に駆けよって助け起こしながらも問い詰める。

「・・すまん徳川。なんでもないんや」

しかし、大山田はそう言って徳川の手を払うと、ポタポタと鼻血のあとを床に残しながら、よたよたと金山の後を追うようにして事務所から出て行ってしまったのであった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 7話 再会 終わり】8話へ続く

第10章 賞金を賭けられた美女たち 8話 宮川コーポレーション代表そして暗部登場


第10章 賞金を賭けられた美女たち 8話 宮川コーポレーション代表そして暗部登場

都心環状線駅近くの高級ホテルにあるラウンジのボックス席に陣取り、テーブルにはコーヒーの入ったカップと、ノートパソコンと資料を並べている大柄な長髪オールバックの男が、気難しく眉間に皺を寄せてキーボードをたたいていた。

宮川コーポレーション本社勤務で、執行役員である緋村紅音のボディガード兼執行役員付き部長である丸岳貴司である。

紅音が宮川コーポレーション関西支社長の任を解かれ、本社勤務になったのはつい2日前のことである。

緋村紅音のボディガードを兼ねている丸岳も、紅音の移動に伴い当然のように本社勤務へと移動になっていた。

しかし丸岳も紅音も、関西支社から帰ってきて本社にはまだ一度も出社してない。

いや、していないのではなく、実は出勤を禁じられている状況であった。

紅音のやらかしたことを考えれば、自宅謹慎という処置は甘すぎるが、紅音だけでなく連座で丸岳も謹慎処分を受けていた。

しかし、丸岳や紅音の謹慎理由は先の失態だけがすべてではない。

本社に出勤するよりも重要な仕事が今日ここであるため、その準備に丸岳は関西支社から帰ってきてからというもの、時期が来るまでホテルで待機するように命令されていたのである。

紅音は本社に帰ってからは、なにも仕事は与えられておらず、逮捕後の事件でのショックが大きいため、一人スイートルームで療養中であり、限られた人としか会えないほど精神が参ってしまっているのだ。

いっぽうの丸岳は、待機とは名ばかりで事件の後始末に一人忙殺され、普段なら健康的にみえる日焼けした顔がやや窶れ気味に見えるのは気のせいではない。

「コーヒーお持ちしました」

にゃん。

しなやかな身体つき、細身ながらも隆線的なボディラインのスーツ姿、アーモンド形のはっきりした目をした女性は、癖で出そうになった語尾をなんとか堪え、軽く膝を折ってテーブルにコーヒーの入ったカップをソーサーの上に重ねる。

緋村紅音の無茶ぶりで、孤島Sへの潜入及びディスク回収作戦に抜き打ちで投入されたミコにゃんこと猫柳美琴である。

本来ならホテルラウンジのウェイトレスが運んでくるべきものなのだが、尊敬する上司に自分で持っていきたい美琴が途中でウェイトレスからトレーごともらい受けたのだ。

「・・助かる。それにしても美琴には今回のことでは苦労を掛けた。戻ってきたばかりで働かせてしまってるが、体調は大丈夫なのか?」

丸岳は美琴の気遣いを労うと、笑顔を返し持ってきてくれた熱いカップに口をつける。

「私は大丈夫です。・・お嬢様派の治癒能力者に治療してもらってしまいましたが、あれが無ければ私の命はなかったと思います・・」

美琴を治療してくれたのは菊沢美里という四十路前の女性だ。

一部の界隈では有名な人物であり、その菊沢美里が宮川佐恵子の派閥に協力していたことはすでに丸岳には報告してある。

「まさか宮川お嬢様があんなコネクションを持っていたとは意外だったが・・。とにかくそれで美琴が助かったのだ。ひとまずは良しとしよう」

そのことで社長はかなり渋い顔をしていたがな・・。と丸岳は思うも、美琴のことを気遣い口にはしない。

医師として数多くの論文を発表し、医療雑誌などでも露出の多い天才外科医菊沢美里がSでの作戦になぜか混ざっていた理由はわかっていない。

衛星で送られてきている映像が解析され、菊沢美里本人に間違いがないとわかると、社長派の幹部たちが騒然となったのは昨日のことである。

菊沢美里は外科医として業界では普通に有名人だが、能力を隠さず公然と使い手術をする為、能力者の間でもとても有名人であり、美里が在籍する病院長も美里が移籍してしまわないかと心配しているほど、美里への勧誘は医療機関に限らず、民間はもちろん海外の政府筋からもあるほどなのだ。

多くの好待遇オファーを袖にし続け、府のいち総合病院に美里が籍を置いているのは、まったく謎であり周囲では様々な憶測が飛び交っている。

しかし理由はすこぶる明白であった。

菊沢美里の異常偏愛が一方的に注がれた弟の勤務地に一番近い総合病院がそこなだけである。

もし菊沢宏が無政府国家のソマリアや内戦が頻発するシリアに移住するならば、菊沢美里は、かつて追い返されたこともある国境なき医師団ならぬ、国境無視の医師としてそれらの国に躊躇なく引っ越すであろう。

周囲が噂している美里の移籍拒否の真相など実は大層なものではなく、優先順位一位の弟に近くにいられることが美里にとって最重要であり、その謎の真相を囁く周囲の憶測など本当にどうでもいいことであった。

その美里の神医と謳われる腕前は文字通り神がかっており、世界中からその噂を聞きつけた要人や財界人などの予約が殺到している。

しかし、美里は権力で迫られようが札束を積み上げられようが、2日以上先の予約は受け付けず、順番も先着順と非常に真っ当に医師としての勤めに励んでいるのだ。

そんな顔も名前も知らない要人たちとやらの腹や頭を切裂き、患部を取り除いて縫合するなどという面白みのない予定を詰めすぎてしまうと、可愛い弟に合う時間がなくなってしまうではないか。と美里は本気で思っている。

権力や経済力を持ちたいと願っている同業者からは、美里に対する嫉妬から、奇怪な変わり者と揶揄するものもいるが、当の美里はどこ吹く風といった様子である。

世界的に有名な外科医の望みは本当にささやかで、週に一度、いや贅沢を言えば2度、はばからず本音を言えば実は毎日、弟夫婦とディナーの時間を取ることと、そして欠かさず弟夫婦たちとお互いの誕生日を祝いあい、宏のあらゆる記念日には美里の手作りの料理や、手作りの装飾品などの贈り物をし、毎朝、毎晩の「おはよう」と「おやすみ」の通話が日課として守られ、一日に10通程度のラインのやり取りを弟とできれば美里はそれだけで人生を喜び、信じてもいない神とやらに感謝することもできるのであった。

本当にささやかだと美里本人だけが思っている環境が美里のすべてで、そのために美里は今日も出し惜しみなく能力を使い、できるだけ仕事を早く切り上げて、大学病院の勤務医だという時間不定期になりがちなブラック職業にも関わらず、驚異の定時帰社5時チンダッシュの為に毎日仕事に励んでいるのだ。

美里は、仕事が終われば今日も弟に会えるかもしれないし、会えれば会えたで少しでも仕事を早く切り上げたほうが、弟と過ごせる時間が長くなると思っている。

どこにでもいる至って普通の仲の良い姉弟なのだ。と美里だけが思っているが、最近は宮川コーポレーションなる大企業に可愛い弟が目を付けられ、弟の経営する探偵事務所が購入されたというではないか。

可愛い弟が優秀でタフで優しく頼りがいがあるのに、シャイな部分があって愛されまくりなのは、隠しようもないことなので他の者に弟が気に入られてしまうのは仕方がないが、そのために弟が忙しくなり、私と会える時間が減るなどということが有ってはならないのだ。

と普通の兄妹なら誰でもそう思う。私だって当然そう思ってる。と美里は思っており、宮コーに所属したことを懸念していた矢先の先日の事件だったので、美里は周囲が想像している範疇を越えて、宏の今後の身の振り方を考えているが、それがわかるのはもう少し先のことである。

その美里の能力だが、能力を使って手術するといっても、常人に美里のオーラを視認することはできず、一般人は美里の手術を見ても、神がかった神技にただただ舌を巻くだけしかできない。

その医師として高名で、かつ能力者の間では神医として名高い能力者菊沢美里がお嬢様派としてSという僻地まできていたことは、とにかく社長派としては仰天すべき事態であったのだ。

菊沢宏との関係に周囲が気付くのは時間の問題だが、天才外科医の名をほしいままにしている才色兼備の女医が、極度のブラコンを末期症状までこじらせ、本能の赴くままに行動した結果であることは、まだほんの一部の者しか知らない。

ラウンジのソファに座って足を組み、カップを口に運んで、医師且つ能力者という有能な人材が敵派閥に流れてしまったことよりも、自分の無事を喜んでくれて笑顔を向けてくれている丸岳に、美琴は感謝の意を表すように顔を赤らめ頭を下げてから尊敬する上司の体調こそを気に掛ける。

「それより丸岳部長こそもう二日も徹夜されてます・・。少しお休みになられては?」

いかがですにゃん?

と語尾は心中に留めおき、心底心配して提案してみたが、返ってくる返答は美琴の予想どおりだった。

「大丈夫だ。それより紅音の様子はどうだった?・・・今朝もまだずいぶん参っている様子で食事もとってないみたいだったが・・」

「いまは薬が効いてねむってます。お食事はやはりとられてなかったので、いま点滴しているところです」

にゃん。

美琴はやっぱりと思いながらも、出てしまいそうになる語尾を控えた。

今回の騒動で丸岳も酷い目にあったというのに、騒動の元であるお天気屋の上司、緋村紅音のことを心配している。

態度や口には表れていないが、丸岳貴司が緋村紅音のことを単なる上司と部下の関係ではないことを美琴はうすうす感づいていた。

一見強面にみえるが、毅然としているのに優しい丸岳部長は社員からの人望も厚く、女性社員には独身男性ということもあり非常に人気がある。

それだけの優良物件で女性を選びたい放題のはずなのに、丸岳は特定の女性がいる様子はなく、我儘を言いたい放題の緋村紅音を影のようにサポートし、つねにフォローしているのである。

二人の関係をあやしんだ美琴は、以前こっそり【完全不可知化】を駆使し、紅音と丸岳の関係を探ったことがあるのだが、美琴の予想は外れたのであった。

だが、それにしても丸岳の緋村に対する献身ぶりは、恋人のそれに近い気がしていた。

(・・・丸岳部長の趣味って、緋村さんみたいな感じなのかにゃ・・?二人の仲は悪くなさそうにゃんけど、付き合ってはないみたいにゃん・・。てことは、ミコにも脈はあるにゃん。こないだSでグラサン男に心を奪われそうになったにゃんけど、やっぱり丸岳部長のほうがかっこええにゃんなぁ・・。いきなり抱きしめるなんて不意打ちをされたせいでグラサンに浮ついちゃってただけにゃん。・・でも、わたしって・・惚れっぽいのかにゃ・・。・・・にゃ!そんなはずないにゃん。お付き合いした男性だって24にもなるっていうのに一人もいないにゃん。この会社というかこのポジションがブラックすぎてそんな暇ないのもあるにゃんけど・・断じて違うにゃん。ミコは純潔にゃ乙女にゃよ!)

丸岳が「そうか」と短く応えた一瞬の間に、美琴は場違いなことで思考を巡らせていたが、それを表情には出さず「はい」と返事をしたのであった。

「しかし、やっかいなことになった・・・。すでに出まわってしまっているが・・あの紅音がああも成す術がなかったとは・・くそ・・霧崎のやつめ。しょせん公安だと思って油断しすぎたか・・。真面目そうな顔して喰えんことする・・!それに香港の奴らだ・・香港の奴等も政府や公安ともつながっているのか?・・」

美琴が心中を悟られず密かにホッとしていると、丸岳が丸岳らしからぬセリフを独白したことに驚いて、次の言葉を待つが丸岳はそれ以上語らなかった。

丸岳はしまったという表情を押し殺してそれ以上口を開かず、手にはログイン用のUSBプラグを持って、それを忌々し気に見つめながら指で転がしているだけである。

「それは・・?」

美琴はなんとなく聞きにくかったが、ついに声に出して聞いたところで、丸岳が慌ててプラグをポケットにしまう。

「いや、なんでもない。それよりもうすぐ社長がいらっしゃる。公安の連中とは今回のことをはっきりさせる必要があるからな。それと紅音を一時とは言え逮捕したときに、紅音が負った怪我などのことを言及する予定だ。思いのほか紅音は重症だからな・・。警察庁の管理は国家公安委員会・・。すなわち政府は能力者を多数有する宮コーをもともと快く思っていないものが少なからずいるということだ。大臣や議員の多くは宮川の眼でほとんど骨抜きにしてあるが、全員ではない・・。それに、多くの省庁のなかで、ずば抜けて能力者比率が高いのが警察庁だからな・・。うちの力も警察だけには及びにくい。警察はうちとは敵対に近い関係だが、剣道などで指南役を務めている高嶺は警察とは仲が良いときている。・・・宮コー十指で組織内外にも有名な紅音を陥れ傷つけたのは警察・・もしくは警察と高嶺の両方だと社長も見当づけている。だがそれももうすぐはっきりする。社長の魔眼で即座に吟味できるからな。当事者だった霧崎美樹も今日このホテルに来るようにと伝えてある。奴が紅音を陥れていたのだとすれば全面戦争だ。そうなると面倒なことになるのは確実だが、こちらも十指の一人を的に掛けられたのだ・・こうなった以上断じて引くわけにいかん。・・・美琴。警察も能力者をSPに忍ばせてきているはずだ。今日は社長も石黒を連れてくると言っていたが、俺も万全を期したい。美琴も姿を消して二重に警戒にあたってくれ。妙な動きをしているものがいたら俺に知らせてほしいが、頼めるか?」

「承知しました。お任せください」

にゃーん?!

(警察とコトを構えるなんて、いかに宮コーでも大丈夫にゃんなのか?緋村さんが重症・・?外傷なんて全然なさそうにゃんよ・・?ちょっと手首や足首に擦り傷があっただけで、もうそれは治ってるにゃん。それだけでこんな大事にするなんて正直ミコにはわかんないにゃんけど・・)

「頼むぞ」

口では即答したものの美琴の心情を知らず、疲れた顔ながらも決意を漲らせいい笑顔でそう言う丸岳に対して美琴は

「はい」

と再度応えていた。

(ミコ・・流されやすいにゃん・・)

流されやすく、損な役回りばかりをしている美琴が内心でこのままでいいのかと思いなおす暇もなく、ロビーの方から恰幅のいいスーツ姿の男性を先頭にして、多くの部下らしきスーツ姿の男女を引き連れた集団がこちらに向かってきていた。

丸岳がソファから立ち上がり、姿勢をただしてその集団の先頭にいる恰幅の良い男性に頭を下げる。

「社長。お待ちしておりました」

頭を上げた丸岳が、先頭を歩いてきた男に慇懃な口調で挨拶をする。

背こそそこまで高くないが、威圧感十分なその風体でタダモノではないことが一目でわかる。

ダブルのスーツを着こなした男、宮川コーポレーション代表取締役である宮沢誠が警察幹部との会合にて魔眼を振るうべく部下を引き連れて現れたのであった。

タダモノだと感じさせない異様な威圧感の正体はその男の両目の色にもある。

宮川佐恵子と同じ目の色と球形ではない六角形にちかい瞳、目の色が特殊というだけでもかなり目立つというのに、純然たる経営者としても立ち振る舞いに雰囲気を纏っており、その仕草の一つ一つが王者の貫禄があった。

佐恵子の叔父である宮川誠は、宮川佐恵子に酷評されているが、表裏の多くを牛耳る巨大企業の最高責任者が、単なるお飾りで無能であるわけがない。

それは能力者としても経営者としてもである。

「ああ。丸岳君ごくろうだったな。徹夜が続いているのは知っている。だが敢えて言うがもうひと働きしてくれ」

「心得ております。緋村さんを陥れた者どもがくるというのに休んではいられません。その緋村さんですが、いまは睡眠薬を飲んでもらってねむっております。お会いになりますか?」

かつての恋人が目の前の男の愛人になっているのに、このような態度を取らなければならない自分自身の身を不甲斐なく思う丸岳だが、今はどうしようもないことだと割り切っている。

それになにより、これは紅音自身が選んだ道なのだ。

「いやあとにしよう。それより、あの件はかなり知れ渡ってしまっている。くれぐれも緋村君の耳にはいれんようにな」

宮川誠はもともと厳めしい顔を更に渋く歪め苦々しい表情にして言った。

その直後、宮川社長のすぐ後ろに立っている細身で化粧の濃い、既定の制服を着ているが、その雰囲気はいかにも一般社員とは違う女性社員が口を開いた。

「そうしても知られちゃうのは時間の問題だと思いますけどねえ。紅音ちゃんあれ見たら卒倒しちゃうんじゃないかしら?・・でも・・侮れませんわね社長?・・紅音ちゃん・・いえ、紅蓮ほどの能力者を一時的とはいえ、無力化する能力者がいるなんて・・わたくしも少しばかり公安を侮っていましたわ。飼われた犬などたかが知れたモノと思っておりましたのに・・」

そう言った女性は、一見してなよっとしているように見えるが、スーツに包まれたその肢体は見た目に柔らかそうな弾力が想像させられるも、その立ち振る舞いに隙らしいものは全く無い。

ややふっくらした唇に引かれたルージュは赤く、長く黒い髪をアップにまとめ、ぱっちりとした目は濃いアイメイク、肌は化粧のせいだけではない地肌のきめ細かい色白だとわかる。

くっきりとした顔立ちで、まばたきをするたびに、その長い睫毛がバサバサと動くのが印象的な、魅惑的な女性である。

一見化粧が濃いかもと思わせるタイプの女性だが、派手な顔立ちであるだけで化粧が濃いわけではない、そして出るところは出て引っ込むべきところは引っ込んでいるプロポーション。

艶めかしい、下品な言い方をすればエロいという表現がぴったりの妖艶な美女である。

「アレはああ見えて繊細だからな・・」

その美女に振り返ることなく紅音のことをそう評価する宮川誠の顔は渋かった。

そして、その表情をやや違うものに変えると更に続ける。

「公安は形骸化していたが、あの霧崎という捜査官が来てからだ・・。ヤツはうちを蹴って捜査官になった者であったな。気に入らんやつだ。・・やつのことを洗えと言ってあったな石黒くん?」

「はい社長。霧崎は都内のマンションに旦那と二人暮らし。旦那も公務員ですわね。でも結婚5年で夫婦間はすでに冷え切ってますわ。お互い仕事ですれ違いのようです。・・そのためか残念ながら子供はいません」

「そうか。あのサイトでも霧崎にも賞金が掛けられていたということは、香港の連中とは霧崎は繋がっていないと考えるべきか・・。それともそれ自体がそう思わせるミスリードなのかは、すぐにはっきりする。いずれにしても霧崎は始末するが、まずは洗いざらい情報を吐かせてからだな。夫に情はなくとも、子供がいれば子供を使えると思ったのだが残念だ」

厳めしい表情のとおり、宮川誠の嗜好には優しさはない。

目的のために有効と思われる手段は容赦なく使い、最短と思われるルートを迷いなく選択する。

佐恵子や佐恵子の父である昭仁とは決定的に違うのだ。

しかし、だからこそそれらを是とする者たちからの求心力は高く、従うものも多くいるのであった。

お嬢様派と呼ばれる佐恵子の派閥の勢力が20とすると、宮川誠の社長派と呼ばれる勢力は80である。

お嬢様派と目される宮コー十指に名を連ねるものは、いままでは神田川真理、稲垣加奈子、そして派閥の旗でもある宮川佐恵子の3人しかおらず、残りの宮コー十指はほぼ現社長である宮川誠氏の傘下であった。

そして宮コー十指の一人でも変わった立場の蜘蛛こと最上凪だけはどちらにも属さず、ほぼ現役を引退した宮川コーポレーション会長宮川昭仁のみに仕える側近だったのだが、会長から指示があったのか会長の一人娘である佐恵子の元へと派遣されている。

そのため十指の構成比率でいえばお嬢様派閥は4割をしめてはいるものの、組織全体の構成比率では2割程度なのであった。

十指最強と謡われる紅蓮を愛人として右腕として使い、いままた付き従えている妖艶な美女こそも、十指の一人として数えられる幻魔の二つ名を持つ石黒実花であった。

その幻魔こと石黒実花が宮川誠の思惑を理解したと伝える笑みを浮かべて頷いた。

「そのためにわたくしを連れてきたのでしょう社長?・・・でも、霧崎もうちに敵対するなんて相当自信があるのか、とんだおバカさんのどちらかですね。生真面目で成績優秀な優等生・・。優秀なのに、追うばかりで追われることは想定もしてないのかしらね。正義感に燃えて、悪と信じたモノを追うのはさぞ自尊心を満足させられるかもしれないけど、相手に与えた苦痛が大きければ大きい程、その代償は高くつくと相場は決まってますわ。・・・紅音ちゃんにされたこと、他人事だと思えるほどわたくしも冷めていませんからね。社長わたくしに何なりとご命じくださいな」

幻魔はそう言って目を細め、口元を黒い手袋を付けた手で覆って妖しい笑顔になった顔を隠して言う。

宮川誠は、睫毛の女性のセリフに「うむ」と力強く頷いたが、その表情はやや暗い。

「石黒。・・まさか紅音にも【鏡面桃源郷】を使うつもりなのか?」

社長の表情を読み取って深読みしたのか、丸岳が石黒に向かって問いかける。

「わたくしもそんなことしたくないのよ・・?でもそうするのが紅音ちゃんの為になるって思ったら間違いなくやるわ。・・・残念だけどね。その時は丸岳君も覚悟して。厳しい現実よりも優しい嘘のほうがいい時もあるのよ」

「・・だが・・」

(そうなれば、それは紅音ではない・・。紅音の形をした何かだ・・)

丸岳はそう反論しかけるも、石黒の背後に控えるスーツ姿の男女をみるとその言葉を口にはできず飲み込み、幻魔こと石黒実花にそれ以上返すことはできなかった。

十指の一人に数えられ、幻魔と恐れられる石黒実花も、同僚である紅蓮こと緋村紅音が無残に強姦されそれを撮影されて拡散されているということをすでに知っている。

自然の力である炎を操り、攻守バランスの取れた能力者の紅蓮ですらそうなってしまったことから、幻魔こと石黒実花自身も他人事ではないと思っているのだ。

それにあのお天気屋の緋村紅音と対等に話せ、そして比較的気の合っていた石黒実花だからこそ、紅音に対して同情の想いは強い。

その美しく派手な顔には、憂いを帯び長い睫毛の奥にある目は哀しみと怒りが混在しているのが見えたからでもある。

石黒の能力のエグさは、幻魔と呼ばれる石黒本人が一番理解している。

丸岳も紅音と石黒の仲が悪くないのは当然知っている。

石黒もまた同列の同僚である紅音に、負となる思い出や出来事を記憶から消し去ってしまう【鏡面桃源郷】を使うのは躊躇いがあるのは当然であった。

【鏡面桃源郷】は厳しい事実を脳裏から消し去り、そこを都合の良い優しい嘘で埋めてしまう幻覚術である。

消し去った負となる思い出や出来事が本人に与えている影響が強い程、術後対象に与える人格変化の影響が大きいのだ。

丸岳が懸念しているように、術後の紅音の変化次第では、紅音ではなくなってしまうと心配するのも当然であった。

現に、石黒の背後に控えている数人の既定の制服に身を包んだスーツ姿の男女は、一様にして同じような目の輝きをしている。

その者達は任務で敵に捕まり拷問を受けたり、性的な凌辱、家族や恋人と無残な生き別れ方をしたため、精神的に参ってしまい医学での治療が困難になってしまったものの末路である。

石黒自身の直属の部下たちはいわゆるそう言った者達ばかりで構成されているのだ。

明らかに以前の人格とは違ってしまっているが、当の本人たちにその自覚はない。

「実花さま。配置かんリョウ致しておりマス。以降のごシじを」

その時石黒の背後にタイトスカートを履いた宮コーの女性社員が近づき、片膝をついて石黒に頭を下げ報告してきた。

指示を仰いでいた女性社員はまばたきをせず目を見開き石黒を見つめている。

かつて優秀な能力者であったその女性は、敵に捕まり2か月にわってり軟禁されたことがある者だ。

その後助け出されたのだが、その2か月間に受けた拷問が彼女を完全に壊してしまっていた。

宮川の運営する病院でも彼女の精神は治療できなかったため、石黒実花をトップにして組織されている暗部へと配属されているのである。

彼女もまた幻魔こと石黒実花の施した【鏡面桃源郷】の中にいる一人である。

その女性はタイトスカートで片膝を付いたままの為、ピンクの下着がかなり大胆に見えてしまっているが、その女性は気にする様子もない。

辛いこと、嫌な思い出は忘却の彼方になった引き換えに、本来の自我や性格にも影響がでてしまっている。

よく見ればその整った顔付きの女性社員は化粧すらしておらず、パンストも履いていない。

ピンクの下着は身につけているが、どこか身だしなみや髪形にもチグハグな感じが見て取れる。

しかし、石黒の能力で彼女の心に不安や憂いはなく、心は平和で満ちているのだ。

周囲からは少し変わった子と思われるぐらいで、社会生活にもほぼ支障はない。

だが、こうなる以前の彼女をよく知る者からすれば、今の彼女がかつての彼女とは違うことに心を傷めるだろう。

「よくできたわ。次の指示があるまで持ち場で待機してなさい」

「はイ!」

石黒が優しい声でそう言うと、彼女は立ち上がって返事をすると、嬉しそうな表情を浮かべて持ち場へと帰って行った。

(・・・く・・。紅音もああなってしまうというのか?)

そのやり取りを見ていた丸岳は、強く拳を握りしめ奥歯を噛みしめてしまっていた。

丸岳は表情に出さないようにしているが、その隣では猫柳美琴がその様子を見て心配そうな視線を尊敬する上司に向けてるのだが、普段の丸岳は普段なら気づくその視線にすら気づけない程心はかき乱されていた。

「ふぅ・・。でもとにかく今は目の前のことに集中しましょ?」

このタイミングで丸岳にこういった場面を見せるのは、実花も疲れたようで話を逸らそうと丸岳に向き合ってそう言ってから、社長の宮川誠に向き直る。

「・・もっともだな。緋村くんのことは後だ。そういう選択肢も考えねばならん。・・・それに先方も到着したようだ」

宮川誠はそう言うと、ラウンジに歩いてきている男女数人の一団に向けて向き直ったのだった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 8話 宮川コーポレーション代表そして暗部登場 終わり】9話へ続く
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

第10章 賞金を賭けられた美女たち 9話 紅蓮凌辱回顧そして大山田の愚かさ

第10章 賞金を賭けられた美女たち 9話 紅蓮凌辱回顧そして大山田の愚かさ

「おごっ!ううっ!!」

膝をつかされヒップを突き出し、女性自身を貫かれながら喉も貫かれた赤毛の女は苦しそうな声をあげていた。

全身を汗で滑らせ、白かった肌は男たちの平手による鞭打で、様々なところが赤く腫れており、特に形の良い左右のヒップは真っ赤になるほど叩かれてた形跡がみてとれる。

脚の戒めは解かれているが、後ろ手の手錠はいまだにそのままで、膝を付いて前後の穴を凌辱されている格好でも両手を床に付くこともできずにいる。

口を犯す男は自慢の赤毛を乱暴に鷲掴みにし、口から涎と苦しそうな嗚咽を漏らし、男の猛った肉棒が快感を得る為だけに、乱暴に使われている。

本来ならその肉棒を噛み切ってやるところなのだが、女の口には歯が立てられないよう、特殊なマウスピースが取り付けられており、どんなに首を振り建てても外れないよう後頭部で3本の紐でキツク縛られている。

ヒップを叩きながら、秘部奥を固く漲った男の破壊槌が連打し、開きっぱなしにされた口も同じく別の男の滾った破壊槌が喉奥を抉るようにかき回しては、能力者としては最高位近い女の涙と唾液塗れの顔を眺めて優越感に浸り、時折頬にもビンタをくれてやっている。

普段は周囲を見下し、気が強くお天気屋な小生意気ロリフェイスの紅蓮こと緋村紅音を凌辱撮影会の宴は6時間を過ぎようとしていた。

紅音も最早抵抗するのをやめ、男達の行為が過ぎ去るのを待っているのだが、覆面をした男たち3人は好色なうえ性的にも肉体的にもタフであるのに、紅音を休ませぬよう巧みに3人でローテーションし、尚且つ玩具を使って紅音の快感が途切れないようにする狡猾さも持ち合わせていた。

「おぉ!・・うああ!!ふぐっうぅ!あぅ!!ふぐぅうぅ!!ああいっあうああ!おうあえて!おえあいああらぁ!!」

(あぁ!・・いやあ!!いくっうぅ!あぅ!!いくぅうぅ!!また逝っちゃうから!もうやめて!お願いだから!!)

涙と鼻水、涎塗れの顔に口を強制的に開かせる透明のマウスピースで、無様に大口を開けられて太い肉棒で容赦なく喉を抉られている紅音の顔がアップの画面に、何事か言葉にならない喘ぎ声をあげているが、その下に翻訳文字テロップが表示されている。

「楽しんでるか紅蓮?そろそろバッテリーも切れそうやし、3人で一緒に逝くか?」

ぴしゃりぴしゃり!と左右のヒップを叩きながら、紅音を犯している覆面の男が、紅音が一人逝ってしまわないように腰の動きを調整して紅音と正面の男に聞く。

「そうやな。上下の口同時受精やな」

「いくで?」

精液便所へと成り下がらせた紅蓮を前後から責めている男二人は、紅蓮の意思を無視して勝手に話をすすめると、すでに9合目付近にいる紅蓮が逝ってしまわないよう絶妙に調整しながら肉棒を打ち付けタイミングをはかる。

オルガズムのタイミングまで自由にならない紅音は、オモチャのようにいいように扱われている屈辱に身を焼かれながらも成すすべもなく、前後の男たちが発射するタイミングまで膣と喉マンコを使われている。

「おごっ!うふぐぅ!ううう!!」

涙があふれてくるがどうしようもない。

もう一人の男がそんな涙に濡れた紅音の顔にレンズを近づけてくるが、それすらもどうしようもない。

快楽と屈辱に歪んだ顔には肉棒が突っ込まれ、吐き出すことも噛み切ることもできず、男が快楽を得る為だけに乱暴に使われている。

前後の男たちのピストンが速くなる。

言葉はなくとも、クズにはクズなりの阿吽の呼吸というものがあり、生意気にも以心伝心できるらしい。

ぱんぱんぱんぱんぱんぱん!

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ!

んんっ!!んんっ!!んぁ!!んんぅ!!んんっ!!んんっ!!んぁ!!んんぅ!!

ヒップと口に男たちが打ち込む打楽器がリズミカルな卑猥な音色を奏でる。

また打ち込まれている二つの穴楽器自体が発した潤滑油も伴奏し、穴楽器自身の口からも無理やり昇り詰めさせられる屈辱の感情が籠った歌声が漏れ出す。

前後の男たちのリズムが更に速くなる。

奏者二人に挟まれた穴楽器も身体を真っ赤に染め、可愛いが狂った音程で更に鳴り響く。

前後の奏者の動きが更に早まり、これ以上にはないという速度から最後の一突きが前後から深々と穴楽器を貫いたと同時に、穴楽器自身もひと際高い嬌声を鳴り響かせてガクガクと激しく痙攣しだした。

3者が同時に最後を迎え、穴楽器が最後の余韻で激しくがっくんがっくん痙攣し、苦悶の嗚咽を奏でている。

しかし奏者二人は、穴楽器の余韻など無視して、前後の穴から乱暴に打楽器が引き穴楽器の放心した顔と姿を見下して満足そうに笑っている。

そしてもう一人の男が手にしたカメラと、設置している複数のカメラが、穴楽器の穴から流れ出す白濁液余すことなく記録していっていた。

見下ろされながらもビクンビクンといまだに痙攣のおさまらぬ穴楽器は、膝とおでこで身体を支えていたが、奏者の一人に肩口に足を当てられて押され、仰向けにひっくり返された。

「きゃぅ・・」

仰向けにひっくりかえらされた紅蓮という穴楽器は、弱弱しい悲鳴を発してから、ぜえぜえと呼吸を整えてようとしていた。

その艶めかしく動く汗まみれの身体には、いたるところに赤く平手で打たれた跡が残り、陰毛もプレイ中に剃り落とされてしまっている。

絶頂を何十回と叩き込まれたというのい、いまだにツンと尖った双丘の先端には、陰核並みに感度が上がる呪詛を施したピアスが飾られており、陰核自体にも違う形のピアスが施され穴楽器の愛液に濡れ妖しく光っていた。

そして荒い呼吸で艶めかしく上下している紅蓮のヘソの下の下腹部には、「Onahole紅蓮」と呪詛のついたタトゥーが彫られてしまっていた。

「おい。おわったぞ?・・・おまえも使うか?」

全てのカメラを止めたとき、奏者の一人が宴で締めきっていた扉を開けて外にいる男に声を掛けたのだ。

「は・はい!・・いいんすか?」

「ああいいぜ。ぐっちゃぐちゃだけどな」

そういって「はははっ」と笑う男は見張りの男を部屋にいれて、代わりに自分が部屋の外にでて覆面を外す。

代わりに部屋の中に入った男は、6時間にも及ぶ宴を一人ドアの外で見張りをしていたのだ。

ようやくオコボレがまわってきたの男は、汗と愛液と男の精液まみれになっている仰向けで虚ろな目をしている、余韻おさまりかねていない赤毛の女の足元に座った。

そして赤毛の女の左足首と右脚の膝を持って正常位の態勢をとらせると、自らのベルトを慌ただしく外し、すでに勃起し先走り汁でヌラヌラになっている男根で一気に貫いたのであった。

「おうぅ!?」

紅蓮の膣は散々使い込まれたはずなのに、締め付けは健在でオコボレに預かった下っ端の男は、1分もしない間に放出してしまった。

「うぅ・・お・・おわりじゃ・・なかったのか・・よ?」

余韻顔を撮影される目的ですでにマウスピースを外されていた紅蓮は、息も絶え絶えになんとか口を開いたが、紅蓮のその口調に、下っ端の男は取り得の性欲をバカにされた気がして、すぐに腰を動かし出す。

「うくっ!ああぁ!うううぅいやあぁ!」

「どうだ?!抜かずの2発目といくぜ?オナホールの紅蓮さんよ?」

見張りをさせられていた下っ端男は、無抵抗な最強術士である紅蓮を組み敷き、紅蓮に掘られた下腹部のタトゥーを撫でまわしながら下卑た表情で勝ち誇った口調で言う。

「あああっく!それは・・!やめろおおぉ!!」

撫でられた下腹部のタトゥーが青く光り、効果を発動する。

散々その呪詛で弄ばれ、威力のほどを味あわされた紅蓮は悲痛な声をあげて抗議するも、抵抗する手立てはなくどうすることもできない。

「やめろぉやめろよぉ!卑怯だぞ・・!もうさっきので終わりだろ?もうそれやめてくれよぉ!きゃぅ!うういやあん!!また・・ああくぁ!」

タトゥーの力で紅音は絶頂寸前まで一気に高まる。

膣であれば、あと一突き、陰核であればあと一撫で逝くというところまで強制的に一気に高まるタトゥーに刻まれた効力が発動するが、決して逝くことはできないとうおまけ付きの効力だ。

今挿入している男が中で果てるまで決して陰核でも膣でも子宮でも逝けないのだ。

「ひひひっ、ドアの小窓から覗き見してたからやり方は知ってんだよ!」

「あくっ!!・・・かっ!!・・あくぅ!・・あっ!!・・うぅ!!」

下っ端男の乱暴なピストンでオルガズムが確実に与えられる刺激にも関わらず、なぜか逝けない地獄の快感に、紅蓮は後ろ手に施錠された身体を捩らせ、鯉のようにパクパクと声にならない言葉を発して逝けない地獄を味わっている。

「これもだ・・!」

下っ端男は紅蓮の様子にチンケな自尊心を満足させるも、さらに乳首に施されたピアスのリングにテグスを通し、二点を引っ張り上げるように揺する。

「あがっ!?・・ひああぁ!ひゃめろお!!やめてよおおぉ!!」

両乳首のピアスには乳首が陰核並みの感度になる呪詛が籠っているのだ。

紅音は本来なら口もきくこともないような、ど底辺男に嬌声を上げさせられながらも、その刺激では決して逝くことがまだできない。

「どうだ?紅蓮?くやしいか?」

「こ・・ころす・・わ」

逝けずに悶え、それなのに下っ端男は自分が逝くことがないように腰を動かし、紅蓮を辱める為だけに抉っている。

当の紅蓮は、一擦り、一突きでも逝く極限状態のまま固定され突っ込まれている肉棒が逝くまで逝けないのだ。

それがどんなクズ肉棒でもである。

たとえばその相手が犬だとしても、犬が満足するまで絶頂ギリギリで待てをさせられるのだ。

「はははっ。おい大や・・っと・・。旦那に言われてる時間まであともう30分もねえからな。紅蓮で遊ぶのもそろそろ終わりにしろよ。またチャンスはあるだろうし、そのタトゥーや呪詛ピアスがある限り、紅蓮を抱くときまたオモチャにできるからよ」

宴で使っていた機材を片付けていた覆面男の一人が、紅蓮と下っ端男のやり取りを横目で見て笑いながら言う。

「はいっ。わかりました」

下っ端男は、素直にそう言うと紅蓮を見下ろす。

「そういうわけだからよ。巻きでやってくぜ?・・こっちもな・・」

「だめだめだめっ!!それほんとにだめだから!!」

下っ端男がテグスを引っ張る手とは別の手を、紅音の下腹部に伸ばしたのだ。

陰核に取り付けられたピアスには強制絶頂の呪詛が施されている。

ちゃりっ。

ピアスを摘まみ軽く引っ張ると紅蓮の身体が跳ね上がる。

「きゃううう!!?」

「ひひひっ」

「あくっ!ぜぇぜぇ・・!そ、それもうほんとだめだから・・やめておねがい!」

ぜえぜえと呼吸を整えながら紅蓮は下っ端男を見上げ、懇願するような眼つきになって言った。

「どうかなぁ?ひひひっ」

下っ端男は、抵抗できない美人女を許すような男気は無いようだ。

テグスを引っ張りながらタトゥーを再び撫でつつ、クリトリスのリングピアスをグリグリと左右に回転させる。

「ひぐぅう!!?ひあああ!!おねがいだからああ!!」

タトゥーが怪しく青く光り、クリピアスも効果を発揮しようとフラッシュのように光る。

男が放出するまで逝けないオナホール女になるタトゥーの効果と、摘まんで捻るだけで一瞬にしてオルガズムを与えるクリリングピアスの効果が発動しようと光る。

しかし、先に発動させた効果が優先するため紅蓮は逝けない。

しかし、クリリングの効果も絶大で、オルガズムに達する信号を直接脳に働きかけるも、脳からクリトリスに逝けという命令が下腹部当たりで止められる。

結果、脳としては逝っている間隔は味わえてしまうが、実際の陰核では逝ってないという地獄の寸止めが味あわされるのだ。

「ひーっひっひっひ!すげえ!これすげえ効果だ。これならどんな女もイチコロだぜ。言いなりにさせられるなぁ!」

顔を歪めてキャンキャン絶叫している紅蓮を見下ろし、自分は逝かない程度のピストンで紅蓮の膣を味わう。

「だろ?亭主の浮気依頼とかを調査してきやがる人妻にはよ、もれなくキメてるコンボだ。生意気にもてめえの亭主の浮気ごときで騒ぎやがる女にはいい灸だが、やっぱり紅蓮みてえな強力な能力者にも効果があんのがわかったのは収穫だな。俺らのエロに関する能力は、こいつらより強ええってことだ。くくくっ」

覆面男のセリフを途中までしか聞けず、すこし打ち付ける腰の動きを強めた下っ端男は大声で喘ぐ紅蓮の表情をスマホで写メっていく。

「ああ!!もう撮るなよぉ!!くひあ!もう逝って!お願い!!もうくるしい!!もうお願いだから終わって!これ以上ひぎぃいい!!」

紅蓮が言い終わらないうちに写メったスマホを構えたまま、再びクリリングピアスを摘まみ上げ、左右へのぐりぐりを再開させたのだ。

「じゃあよ。オナホール紅蓮で逝ってください。って言えよ。ひひひっ」

「オナホール紅蓮で逝ってください!!」

即答だった。

それほどオナホールタトゥーと強制絶頂クリリングピアスのコンボは凶悪なのだ。

強い精神と高いプライドをもつ紅蓮をしてもこの有様である。

「だめだ」

「あああああ!!!」

下っ端男はニヤニヤしながら用意していたセリフを言うと、乳首ピアスに括り付けているテグスを、紅蓮の下の犬歯に括り付けてしまい、自由になった両手で、左手でスマホを持ち、右手でクリリングピアス摘まんでクリピアスについたリングを左右にひねるぐりぐりを再開する。

「ひあっ!?ひあっ!いけないっ!!それ逝けないのよぉ!ひぐぅ!逝ってるのにいけない!!ああああ!!」

口を開いて叫ぶ度に犬歯に括り付けられたテグスによって、乳首リングが引っ張られクリ並みの感度の乳首が延ばされ快感をセルフ受動しながら、身もだえる姿をスマホに納めていく。

「おい。そろそろ時間が来るぞ?旦那に愛想つかされたら今後に響くからな。それぐらいにしとけ」

ほぼ機材を片付け終わった覆面男に言われると、下っ端男は仕方なく腰の動きを速めた。

「ひぎいいいぃいいい!!ひいぃいいいんん!!」

逝けないオナホールと化した紅蓮は、逝けないクリリングピアスの強制絶頂で半分だけ逝かされる乾いたドライオルガズムで無様な声をあげ、自らの口のうごきと首の仰け反りでクリトリス並みの感度の乳首を引っ張りたくっている。

「ひひひっ。バッチリ撮れてるぜ・・・。そろそろ俺も・・」

クリリングピアスのリングにテグスを通し、両乳首のピアスリングに通して、クリリングピアスの強制絶頂の効果を紅蓮自体の身じろぎで発するようセルフ強制絶頂状態にすると、自由になった右手で紅蓮のクビれた腰を掴み、ゲス男が持つには凶悪な22cmの男根を打ち込み続ける。

「ひっ!ひぃ!!ひあぁ!!ああっ!!おわって!!?オナホール紅蓮で逝ってぇ!!?オナホール紅蓮で逝ってよぉお!!」

頭がすでに真っ白になっているのであろう紅蓮は、普段なら絶対口にしないセリフを叫び下っ端男の男根が果てるのを待っている。

「うぉうう!!」

なんの前触れもなく下っ端男は紅蓮の子宮口に白濁液をゼロ距離射撃したのだ。

その瞬間タトゥーの効力と、クリリングピアスの止められていた効力が同時に発動する。

「きゃああああああああああああああああああああああ!?」

オルガズム解禁された陰核、子宮、膣のすべてがいままでクリリングピアスで貯め込まれたグリグリされた回数分と、自らテグスで引っ張りたくった回数分のオルガズムが紅音を一気に襲う。

「あああああああああああ!!!っ!!!!?」

身体をのけ反り、次々と襲い来る絶頂に身体をビクつかせる度に、犬歯に括り付けられたテグスとクリリングピアスと繋がれているテグスが更なる絶頂を与えてくる。

「あぐっ!逝ってる!!もういい!!!きゃうんん!!!おね・・がい!とめてえ!!とって・・!これとって!!もうとってよおお!!」

絶頂でのた打ち回っている紅蓮が、自分の動きでさらに絶頂している。

男根が抜かれた膣から白濁液をこぼし逝きながら、無様に転げまわりクリリングピアスのせいで包皮からズリだされた勃起クリがテグスで引っ張られ更なる絶頂を与えてられている。

「撮ってって言ってるぞ?撮ってやれ」

「ちがああううう!!取ってってい・・・って!るのお!!」

4人の男は自らのスマホを構え、紅蓮の痴態を個人のスマホにも記録していく。

強靭な精神力と、人並み以上の体力を持つため気を失うこともできずに、紅蓮は10分ほど男たちを喜ばせてしまっていたのだった。

~~~~~~~

紅蓮がセルフ絶頂でのた打ち回っている画像を一時停止ボタンで止めると、男は話し終わった男たちに椅子ごと振り返った。

複数のモニタを見ながら、動画編集ソフトを動かしていた男は部屋に入ってきた二人、金山と大山田に向き直ったのだ。

「大山田ちゃん。金山ちゃんの言い分がもっともだねえ。そこかしこで口にしていいことじゃないよ?」

笑顔だが困ったような表情、それでいてアウトローな凄みのある人相の男は立ち上がって、大山田に近づきながらそう言う。

「は・・はい。申し訳ありませんっした」

「んん~?本当に分かってるのかなぁ?俺たちがやってることのヤバさってわかってないからそんな軽率な行動がとれたんじゃないのぉ?」

どすっ!

言い終わったとたんに大山田の腹部にボディブローを叩き込む。

「ぐえ・・」

殴られて蹲った大山田の周りを歩きながら男は続ける。

「紅蓮はねえ。冗談抜きでヤバいやつなんだよ。どのぐらいヤバいかって口で言えないぐらいヤバいんだ。俺らが犯せたのは運と綿密な計画と、協力者がいたからさ。俺たちみたいな無能力に近い能力者じゃ紅蓮とまともに向き合うこともできやしねえ。悔しいけどねえ・・。だけどほとんどの女能力者ってヤツぁ・・、性を能力で防御してねえ。・・・大抵の男どもにまともな能力者が少ない理由って知ってるかい?大山田ちゃん?」

「わ・・わかんねえっす」

「答えは君だよ」

大山田の答えを予想していたのか、男は即答する。

「男はねえ。力を手に入れると欲望や快楽を女より我慢できないヤツが多いみたいなんだ。だからせっかく能力を持って生まれてきても、あとから目覚めてもさ、ダメな奴がおおいんだよねぇ~。お前みたいに。あっ、俺らもか」

カツカツと足音をさせて大山田の周りを一回りしてきた男は、大山田の鼻先に人差指を突きつけて言い放った。

そして、また大山田の周りをカツカツと足音をさせて歩きだす。

「ダメなんだよなぁ。男ってぜんぜん堪え性がねえ。ま・・人のこといえねえけど・・。すーぐにSEXに使っちまう。SEXや自分が気持ちよくなることに能力を傾けちまうんだよ男ってやつは。ナンパ・・はまだいいか。ヒモやジゴロって呼ばれる野郎どもは、能力をSEXに割り振ってやがるヤツばっかりなんだぜ?そうじゃなくても、よくて、新興宗教起こしたり、インチキ商法をやって、自身の自尊心や虚栄心を満たそうとしてる程度の野郎ばっかりさ男なんてな・・。大抵女を快楽付けにして、女の稼ぎを貪るってのが男能力者の定石な能力の使い方だ。でもよ、そういうやつって世間じゃとんでもねえクズって思われてるだろ?だがそれに嵌っちまってる女ってやつもそのクズと同じぐらいバカで、そういうモノを与えてくれるダメ男が大好きなんだよ。快楽を覚えさせられた女はクズ男から離れられなくなるのさ。・・・旦那や彼氏なんかじゃとても与えてくれねえ、脳が喜びに震えるほどの快楽からは離れられねえんだ女ってやつはよ。普段澄ましてる女が多いからこそ、そういうドロドロチーズ女さ。表面は固くっても、内面は解けたチーズのようにドロドロでさ、エロいもんだぜ」

「すんませんっした」

男の演説を聞きながら、正座をしたまま大山田は再度頭を下げる。

男も大山田の詫びに少し、気を取り直したのか話を元に戻した。

「話が脱線したねえ。紅蓮はヤバい。紅蓮のバックの宮コーもヤバい。俺らのバックもヤバい。協力者もヤバい。これはわかったかい?」

そうしてどんなバカにでもわかるように箇条書きのような言葉で大山田に言う。

「はいっ!」

大山田がびしっと返事をしたことに、満足そうに頷いた男は念をおす。

「俺らなんて存在がバレちまったら、紅蓮じゃなくても・・・そうだなぁ・・。こいつら、賞金額1000万しかねえこの小娘どもさえ狩るどころか、こっちが刈られちまうかもしれねえってことよおく覚えておきな。1000万スタートの賞金首っていうのは大抵能力者だ。覚えておくようにな」

男はそう言うと、手をチョキの形にして、自分の一物をハサミで切り飛ばすような仕草をしてからモニタに写った女たちを指さしたのであった。

その画面には、賞金首の一覧が上位から降順で表示されており、今月の新規ターゲットと表示されているアイコンが派手に点滅していた。

そのアイコンの中心には、見覚えのある顔の女が映っている。

岩堀香澄
164cm 54kg 87D、64、90
賞金:1000万
バツイチ子持ち。
剣道四段。高校時代インターハイで準決勝まで勝ち進んだことあり。
宮川コーポレーションに転職したての33歳。
神田川真理【14位.¥260,000,000.未達】から直接のオファーで登用されたため、おそらく能力者と推定される。
宮川佐恵子【4位.\530,000,000.未達】の側近を一時していた様子があるが、現在は不動産部の部長という異例の抜擢をされていることから、能力者であることはほぼ間違いないと思われるが、新たな情報を随時募集中。
現在、写真、動画、個人情報の買い取りを開始、情報が集まり次第2週間後にオークションスタート。

「こいつは・・!」

男が指さした先には、正面からの顔写真付きで、さっき後輩のモブと一緒にいた女が映っていたのだ。

大山田の隣に立っていた金山も、気づいたようで、

「ちっ・・あのまま付けてりゃよかった・・。けど大山田?おまえあの部屋盗撮してたな?こりゃまた、ちったぁ金になんぞ?」

と言って、大山田の頭を掴み、顔を顔を近づける。

「マジかよ。もってるねえ。さすが金山ちゃん。紅蓮の5億5千って訳にはいかないけど、俺らとしちゃ1000万でも手強い相手にゃ違いねえ。んでもって、まだ誰も手つけてねえ青田チャンスってわけだ。金にもなるし、俺らも気持ちいい、視聴者のみなさんも満足する、サイト運営者も儲かるし、犯された女も何度も逝けて大満足!みんな満足!打って良し走って良し守って良しってわけだ。俺らは近江商人より商売上手いかもしれないなあ。さっそく出るか?まだ大山田ちゃんの店にいるかもしれないしな」

男のセリフに大山田は慌ててスマホを操作して、事務所のカメラを画面に映す。

「いるっす。清水さん。あいつらまだいますね」

「ぐーっど!いいねえ!そうと分かればさっそく・・ぃくぜ野郎ども!」

「おい所長。ミックのやつは待たねえのかよ?」

清水と呼ばれた男は、大山田のセリフに親指を立ててニカッと爽やかな笑顔を浮かべてそう言うと、爽やかさとは対照的なゲス行為を行うべく事務所のドアを勢いよく開け、金山のセリフを置き去りにして二人を引き連れ出て行ってしまったのであった。

誰もいなくなった部屋には、Onahole紅蓮と下腹部に彫られた紅蓮が両手を後ろ手に縛られ、仰向けになって床で転がり、テグスを括りつけられた犬歯で陰核と乳首を引っ張って、ただ今逝ってる真っ最中といった顔がアップになったまま、一時停止された画面に映ったまま放置されていた。

宮コー十指最強と謡われた赤毛の超越者は、女の最も無様な姿を画面内で止められたままにされていた。

そしてそれはこの部屋だけでなく、変態サイトを訪れ、【紅蓮の痴態】と銘打たれた動画を100万円でダウンロードした3万人ほどが、同じようなことをしているのだった。

【第10章 賞金を賭けられた美女たち 9話 紅蓮凌辱回顧そして大山田の愚かさ 終わり】10話へ続く

第10章 10話 賞金を賭けられた美女たち 10話 岩堀香澄VSゴミ男3名

第10章 10話 賞金を賭けられた美女たち 10話 岩堀香澄VSゴミ男3名

【登場人物紹介】

清水 光一(しみず こういち)
48歳 180cm 75kg 19cm 
多少の【肉体強化】と、小動物を思い通りに10分間ほど操れる能力【獣使い】を使いこなす能力者。

清水探偵事務所の代表。

清水探偵事務所は、菊一探偵事務所が現れるまでは府では一番有名な探偵事務所として有名だった。

しかし菊一探偵事務所と仕事の色合いは大きく異なり、依頼者が法外な報酬額を請求されたとか、浮気調査を依頼した人妻などが逆に陥れられて風俗などに沈められたなどといった洒落にならない噂が絶えない悪徳探偵事務所であった。

一見人懐っこい話し方に騙されやすいが、清水の性格は残忍で狡猾、好色化で気の強い女性を無抵抗な状態にして蹂躙することにエレクトするゲス変態。

世界の牝能力者陥落動画の運営者との繋がりがあり、サイトでベスト100に入る高額賞金首を過去に数名狩ることに成功し、動画配信させることがある。

最近は菊一探偵事務所に仕事を軒並み取られてしまっているため、表向きの仕事は0に近い状態であるものの、副業としてやっていた女性能力者狩りに力を入れ今後は女性能力者狩りを本業にしようと目論んでいる。

世界の牝能力者陥落動画サイトではつい先日まで、億超えの賞金首は実質狩ることは不可能とさえ言われていたが、清水達は1億を大幅に超える5億5千万の賞金首である紅蓮の緋村紅音を狩ることに成功しており、世界の牝能力者陥落動画サイトでは清水達(HNは本名ではなく「極めて紳士」である)は、紅蓮を狩った英雄として崇められており、今後も紅蓮に続き、億超え賞金首を狩ることがサイト内の変態たちから期待されているサイト内のカリスマ。

金山 恵三
36歳 177cm 56kg 22cm

清水探偵事務所の所員。
清水よりは【肉体強化】能力に優れており、格闘技もテコンドーの経験者。
ノラ能力者としてはかなり多才で、能力は3つも有している。
せっかく能力者としては多才でも、性格はかなり難があり自分勝手で、他人のミスはとことん追求するが、自分のミスには寛大であり、また自分の身を護ることであれば、どんな見え透いた嘘も大声でつけてしまう困った人物である。

しかし、所長の清水には頭の回転で劣る為か、大人しく従っている。
強い者には媚びへつらい、弱い者、真っ当に謝罪してくる相手など立場的に弱いと決めつけた相手にはトコトン強くなるどこかの国民性に非常に類似する性格の持ち主。

能力は【肉体強化】以外に【寄生】と【雌犬】いう能力を持っており、【寄生】は相手の身体をほんの数分とはいえ意思とは関係なく自由に操ることができる能力である。

【肉体強化】も使えテコンドーの経験者でもあるといっても、宮コーの幹部能力者と比べられるような力はない。

【肉体強化】に特化している稲垣加奈子のような能力者からみると、金山程度では一般人と区別がつかない程度でしかない。

しかし、そんな金山の【肉体強化】であっても一般人にとってはかなりの脅威であり、弱い者には容赦のない性格の金山が持つには危険な能力である。

弱い者には極めて強いが、強い者には金山の力はほぼ通用しない。

ゆえに対能力者には金山の【肉体強化】は通用せず、【寄生】を使ってもほぼ間違いなく抵抗される。

しかし、対無能力者に対しては猛威を振るうことになり、金山の【寄生】で毒牙にかかった女性は数多く、表に出ていないが、金山が起こした性犯罪は100件を超えている。

また【寄生】は対能力者の場合も、相手のオーラを無効化しているような条件が整えば、非常に強力であるということが、つい先日証明された。

またもう一つの能力である、性能力に特化した【雌犬】は、金山がオーラを発動させ陰核に触れると陰核の性感感度をコピーでき、耳なら耳、指先なら指先、乳首なら乳首、ピアスならピアスに性感場所を複写できる日常生活では使えないゴミ技能であるが、使いどころが絞られているぶん型に嵌れば猛威を振るう。

金山は【寄生】と【雌犬】を駆使し、霧崎美樹の【霧散霧消】によってオーラが発現できなくなっていた状態の紅蓮を散々オモチャにし、陰核の感度や陰核が絶頂する瞬間のオルガズムをコピーして、様々なものに複写した人物である。


本編

「じゃあ茂部くん。今日はありがとうね。おまけに家までエスコートしてもらっちゃってさ」

香澄はマンション入り口まで送ってきてくれた若い後輩に笑顔でお礼を言う。

「いっすよ。俺の方こそご馳走様っす。徳川さんが代金はいいっていってくれたっすけど、部長払ってくれたっすね・・・。ほんとにありがとうございましたっす」

「私たちの入社祝いなのに変なケチがつくみたいで嫌じゃない。それにこれで茂部くんも、またあのお店に行きやすいでしょ?」

「気ぃつかってもらってマジすんませんっす」

モブが香澄に対して深々と頭を下げる。

大山田のことはともかく、モブとしても尊敬する徳川とは今後もいい関係でいたいので、香澄のこういった配慮は本心から嬉しかったのだ。

「それに、部長が山さんに付きまとわれても困るっすしね。あの人目を付けた女にはしつこいときもあったっすから念の為っす」

「大丈夫よ。あの子からみたら私なんておばさんでしょ・・まあ、ちょっとハプニングもあったけど、今日は楽しかったわ茂部くん」

香澄は自虐気味にそう言うも、すぐに気を取り直して、アルコールで僅かに頬を紅潮させてた顔で、モブに笑顔でそう言った。

「こ・・こ・・こっちこそ気つかってもらって・・、ありがとうございましったす。・・それに部長、そんなことないっすよ。・・・部長ってお堅いだけなのかと思ってたっすけど・・ぜんぜん・・その・・」

その香澄の表情にモブも、違った理由から顔を赤らめ、ドモり気味に言葉を続けようとするも、ボキャブラリーとこういった経験も少ないモブは口ごもってしまった。

「お堅いだけとは何よ。お堅いだけとは」

平安住宅に在籍していた時の香澄は、それこそ取引先や部下や上司など同僚なども含め皆、岩堀香澄はお堅い仕事人間と口をそろえて言う程、堅い人間であった事実が確かにあった。

親友の常盤広告に勤務する中島由佳子でさえ香澄には、『かすみんは堅すぎるんだからたまには羽を伸ばさなきゃ』とはよく言われていたのだが、香澄も転職をし宮コー参加の宮川アシストに出勤するようになってからは、最初の頃こそ気を張り持ち前の【堅さ】を発揮し社則や法律にそぐわない事なら、上司の佐恵子にさえ意見していたが、最近では自分自身少し丸くなってきたとは自覚していたのだが、ビジネスマンとしては話し方から何から何まで緩いと言わざるをえないモブからすれば、そんな香澄ですらまだまだお堅い女性上司に見えるのであろう。

ただモブの口調も、そのお堅いは決して悪い意味ではなく、厳格や厳粛という規律に厳しい自分すらしっかりと律することができる女性という誉め言葉として使っていたのだが、ボキャブラリーの貧困なモブには今の香澄を評する言葉としては堅いくらいしか出てこなかったのである。

そんなモブの様子に気付かない香澄は、お堅いという単語を聞きとがめ、腰に手を当てジト目で睨んで言い返す。

「い・・いえ!・・違うっすよ!そう言う意味じゃないっす・・。そう言う意味じゃ・・・」

少し怒った仕草をわざと見せて膨れたふりをしていた香澄に、モブはかなり真面目に否定するも語尾が尻すぼみとなる。

「ふふっ冗談よ。でも元気でたみたいね?茂部君・・。明日からまたちゃんと元気に出勤するのよ?宮コーに就職できてお母さんもあんなに喜んでくれてたじゃない。いま辞めなくって良かったって思える日が来るまでしっかりがんばんなさい」

香澄は冗談でそう言ったのであった。

今朝はこの世の終わりだといった表情のモブを元気づける為に、人生の先輩として少しばかり頑張ってみてあげたのであった。

しかし、最近のモブは香澄がそういった配慮をしてあげたくなるほど、仕事を頑張っていたからでもあったのだ。

香澄はそう激励しながら、モブと一緒に働いた宮川アシストでの出来事の一つを思い出していた。

モブが宮川アシストへ勤務し出して暫くしたころの出来事である。

宮川アシストへモブ所縁の人物がアポイントもなく突撃してきたのだ。

身体にぴったりとフィットした七分丈黒ラメのカットソーに、革のタンクトップジャケットにヒョウ柄のミニスカート、髪の毛はかなり白めの金髪ロングストレートの気が強そうなイケイケギャルが宮川アシストに乗り込んできたのだった。

「ごめんくださーい」

ヴィトンのショルダーバックを肩に掛けなおしながら、元気な声でそう言って店に入ってくる金髪ギャルが9cmぐらいありそうなヒールを響かせて入ってきた。

「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか?」

「あ、えっと・・その・・、このたびは天牙がお世話になってるって聞いて来ました。つきまして・・、ご挨拶と思てまいりました・・んです。茂部天牙の上司の方・・いてはるです?・・でしょうか?」

受付嬢の質問に、金髪ギャルは慣れない敬語を使っているためか、すこしきょどきょどとした様子ながらも、ちょっとおかしな言葉であるがなんとか受付嬢にそう言って頭をピョコと下げている。

「茂部くん。お友達かしら?私用なら手短にね?」

金髪ギャルが受付でそう言っているのが聞こえてきた香澄は、椅子に座っているモブの横顔にそう声を掛けるも、モブの反応はない。

「・・茂部くん?」

金髪ギャルを、目を見開き凝視していたモブは、訝しがった香澄に再度声を掛けられるも、またもや返事ができないどころか、その大きな身体を屈めて自分のデスクから離れ、ガタガタと事務用品に当たりながら、後ろのデスクの下へと隠れてしまった。

しかしそこのデスクの使用者がすでに帰社していることをモブは知らなかった。

宮川佐恵子は、キャスター付きの椅子を滑らせて資料棚からファイルを出し、開いたファイルを見ながら、椅子に座ったまま勢いよく床を蹴って自分の席に戻ってくる。

お行儀の悪い行為だが、まさか自分のデスクのすぐ下に人が潜り込んできているとは思ってもいない佐恵子は屈んでいるモブに椅子ごと衝突してしまった。

「えっ!?きゃ!!?」

がしゃーん!

どしんっ!

そこにあるはずのない重量物に衝突した佐恵子は、椅子からひっくりこけて、悲鳴をあげながら背中から床に落ちる。

いきなり、部下が自分の足元に潜り込んできていて、佐恵子も猛スピードのキャスター付きの椅子に座ってファイルを見ていたのだからこの結果は無理もない。

「く・・。な・・なんですの?!」

強打した腰と後頭部をさすり、ファイルからまき散らされた用紙を払いながら佐恵子が身を起こすと目の前にはモブがいた。

自分の右膝と左膝の間にモブの顔が見える。

そして、すぐにモブは座りなおして 尻もちをついた格好のままの佐恵子へ土下座をして頭を下げた。

「社長!!すんませんっす!!帰ってきてたとは知らなかったんす!!」

モブはそう言ってしばらく固まっていたが、周囲も無言なので不安になってチラと顔を上げる。

しかし、その景色は最初見たときと変わっておらず、捲れたスカートと、一見細身に見えながらも隆線の滑らかな黒パンストに包まれた太もも、そして黑パンスト越しには白いショーツがはっきりと透けて見えていた。

その景色を焼きつけながらも、モブは視線をきるように、頭を慌てて下げる。

(白?!社長は黒ってイメージっすのに!おかげで濃い黒パンストのにパンティラインがバッチリわかって、足とヒップとの境目や大事な部分の柔らかそうな肉質がばっちりわかっちまうっす・・・!・・ってそんなこというてる場合じゃねえっす。この茂部天牙一生の不覚!!いまもっとも死に近づいてる瞬間っす・・!考えろ!どうしたらこの難局をのりきれるかを・・!?)

「モブ。ケガはない?」

頭を下げて猛烈に頭を働かせていると、やけに優しそうな佐恵子の声が伏せている頭越しに聞こえてくる。

(怒ってない?彼氏もできて丸なったって噂も聞くし、こんなことじゃ怒らんようになったってことっすね・・。なんとか許してくれるんじゃ・・?)

モブはそう思ってばっと顔を上げるも、相変わらず景色は変わっておらず、黒パンストに包まれた太腿、透けて見える白ショーツ、そして膝と膝の間にある佐恵子の顔は笑顔であった。

が、佐恵子の表情はすぐに目を細め鬼の形相へとかわる。

イスから突き落とされ後頭部を強打し、下着をバッチリ間近で見られているのに、許してくれるわけがなかった。

「ひいいい!!ふ、不可抗力っす!!ゆるしてください!!」

「いつまで見てるのです!」

がすっ!!

パンプスの裏で顔面を思い切り蹴られたモブは仰向けにひっくり返る。

「マジすんませんっす!」

「言い残すことはそれだけかしら?」

モブ立ち上がりながらも、おでこと目の間付近に、ひし形の蹴り跡と、顎に丸い蹴り跡を刻まれた顔になったまま重ねて謝るが、ゆらりと立ち上がった佐恵子は一歩モブの方へと歩んできた。

そのとき、黄色く高い嬉しそうな女性の声が事務所内に響き渡った。

「おったおった!天牙!おるやんか!なんでそんなところにおるんや?」

「うげえ!」

今度はすぐ隣にきて大声を駆けてきた金髪ギャルに向かってモブは妙な悲鳴をあげる。

「申し訳ありません。どちら様でしょう?ここまで入っていただくわけにはいただけないのです」

「あ・・すんません。ウチこういうちゃんとした会社の勝手ようわかってのうて、えらいすんません。かってはいってたらあかんかったんですね」

社員のデスクが並ぶところまで侵入してきた金髪ギャルに、香澄は丁寧ながらも毅然とそう言うも、金髪ギャルは案外素直に謝ってきた。

「・・・うち天牙の母親です。茂部千代いいます。うちの子がお世話になってる言うんでご挨拶にと思てきましたんです」

申し訳なさそうに香澄に頭を下げた金髪ギャルは、誰も予想だにしない爆弾を投下し事務所全員を沈黙させる。

目が点となっている香澄と佐恵子も、お互いに顔を見合わせ再び金髪ギャルを凝視し、そしてモブにも視線を移して、再度香澄と佐恵子は目を合わす。

「お母さま・・・?でも・・えっと」

香澄が口ごもったのはもっともである。

千代と名乗ったモブの母親は、どこからどう見ても母親に見えないほど若い。

見た目も若い恰好だし、実際に若すぎる。

「・・・うちの母ちゃんです・・」

・・・・・・・・・・・・。

「えええええええええ!?」

モブの小さな呟きの後、少しの沈黙があってから、宮川アシストの事務所全員の声が響く。

どう見ても10台のイケイケギャルにしか見えない金髪ギャルは、茂部天牙の母親だったのだ。

その後応接室で、モブ、千代、佐恵子、香澄の4人は気を取り直して、微妙な空気の中、千代がモブのことをくれぐれもお願いしますということと、見た目ギャルながらもやはり母親のようで、モブを雇ってくれた佐恵子と香澄に涙ながらにお礼を言い、頭を下げて帰って行ったのであった。

モブママの千代の話では、千代は13歳でモブを出産し、なんとか中学を卒業したものの、飲んだくれて暴力を振るう父から離れ、父の暴力に耐えきれずいなくなってしまった母もいないなか、千代はモブを女手一つで育てたというのだ。

夜のバイトを掛け持ち、乳飲み子を育てた千代にもモブ同様、そういう環境で育った者に有りがちな、特有の暗い影がなく、ハキハキと明るいのが印象的だった。

千代の話し方や仕草は、どうしても稚拙な部分があるが、どうにかして息子を育てた母の貫禄が、見た目は金髪ギャルだというのに確かにあったのだ。

「・・茂部くんの家庭でも色々あったのね。きっと茂部くんたちも、人に言えないような苦労をしてきてるんだわ・・・。私もシンママになっちゃったけど、収入も十分あるし、息子もグレずに育ってとっても恵まれてるわよね。それにひきかえ・・・茂部くんの家庭環境の話も聞いたけど、すごく貧しかったのに茂部くんて、ヤクザまがいの道に外れそうになっていたとは言え、ぜんぜんそういうの普段見せないわね。・・基本的に明るいし、未熟からくる困った発言や行動もあるけど、上司の私のいうことも聞くし、案外にちゃんとしてる子なのかもね。神田川さんたちが目を掛けてるだけあって、あながちまるっきりのヤンキーってわけじゃないんだわ・・」

(茂部君たちから私も見習うべきところがあるってことね。・・元夫からちょっと復縁をせまられてるからって、そんなの全然大したことないわ。一回り以上違う後輩に言ったものの、私の方こそ前向きにいかなきゃ・・)

香澄は数か月前の宮川アシストでの出来事で物思いにふけりながら、茂部という青年のことと、自分のこととを比べ、自分は恵まれているのだと自覚しもっと前向きに生きて行かなきゃと思いなおしていた。

モブとはエントランスで別れ、香澄はエレベーターから24階のホールに降り物思いにふけりながら、部屋に向かって歩いている。

(それにしても千代さんって、私と同い年なんだわ・・。私より若く見えるのは髪型や服装のせい・・・ってだけじゃないわよね。・・・そう言った意味でも私も見習って精進すべきだわ・・)

香澄はマンションの廊下を歩き、千代の見た目の若さを思い出し、なにかに決意するような仕草で拳を握りしめて一人奮起しながらも、自分の部屋に近づきつつバッグからキーを撮してドアのカギを開ける。

「ただいまー。・・・・ん?」

バッグを置き、ジャケットを脱ぎながら部屋の雰囲気がいつもと違うことに肌が粟立つ。

息子が塾から帰ってくる時間にはまだ少しあるので、部屋が無人なのは当たり前なのだが、見慣れた部屋内に、説明しがたい違和感が立ち込めているのだ。

きちんと片付けられたキッチンのシンク、キッチンテーブルに置かれたグラスの花瓶に昨日活けたダリアとガーベラも出社する前とかわりない。

別段普段と違ったところがあるようにも見えない。

しかし、何かがいつもと違うのだ。

「な、なんなの・・・?」

香澄は直感に従い、冷蔵庫の裏に隠してある護身用の木刀を手に取り、部屋の中心へと移動して身構え周囲を伺う。

香澄が木刀を手にしたことにより、より一層違和感の気配が濃厚となるも、能力者として目覚めて日の浅い香澄は直感に従いきれずにいた。

(な・・なに!?これ?!・・危険・・ってこと??)

なにかはわからないが、粟立つ肌が、首筋の毛がチリチリと逆立つような感覚が香澄の脳に警鐘として伝えてくる。

「だっ!誰かいるの?!出てきなさい!!」

香澄は玄関ドアまで後ずさりして、ドアを背にして部屋の中へと木刀の切っ先を向けて大声を上げる。

香澄は無意識に【肉体強化】をし、それに加え木刀を握ったことで【肉体強化】と重ね掛けが可能な上位互換技能【剣気隆盛】まで発動している。

香澄に実戦の経験値があれば、もっと初動は変わったかもしれない。

しかし日常生活がもっぱら平和であった香澄は、まさかそんなはずがあるわけがないと躊躇してしまっていたのだ。

沈黙が続き、まだ緊張の糸を切るまいと再度意気込んだ香澄の背後で勢いよく玄関ドアが開いた。

ばちぃっ!!!

「きゃっ!!んんん!!」

突如開いた玄関から侵入してきた何者かが、香澄の腰にスタンガンを押し付けたのであった。

香澄は突然の激痛に悲鳴を上げてしまうも、声をそれ以上あげられないよう口を侵入者の手で塞がれてしまったようだ。

ばちぃい!!

「んくぅ!!?」

「なかなか勘がいいねえ。・・それにタフさ。この電圧で気を失わないたぁやっぱ能力者だなあ。大当たりってやつだね」

侵入してきた覆面男は、スタンガンの引き金を再度引いて香澄をのけ反らせると、羽交い絞めにしながら嬉しそうな声でそう言った。

げしっ!

ばきっ!

激痛に耐えながら香澄は、得意そうに言う男の足の甲を、かかとで踏み付け、痛みで前かがみになった男の顔面に、自分の後頭部を思い切り叩きつけたのだ。

「ってえ・・!このあまぁ」

覆面男は衝撃で玄関ドアにぶつかりながらも、一撃でノックアウトせず香澄にむかってそう言い注意深く距離を詰めてくる。

香澄も覆面男が怯んだ隙にリビングの中央まで戻って木刀をぶぅんと振り回すと、タイトスカートから足どころかブルーの下着が見えてしまうのも構わず、キッチンテーブルの天板に足を掛けると、隅っこまで一気に押し蹴った。

そして、木刀を十分振えるスペースをつくってから正眼に構え直す。

腰に撃たれた電撃が香澄の身体中を駆け巡っているが、今はそれどころではない。

ここはマンションの24階、覆面男に玄関を封鎖されているということは、目の前の覆面男を倒さなければ逃げることもできないということだ。

「残念。木刀を持った私に勝てる人なんかそういないわ。観念なさい?!」

しかし自分のスタイルにまで持ち込んだ香澄は、幾分ゆとりができたのか、覆面男に切っ先を向けたままゆっくり言い放つ。

覆面男も香澄が木刀を構えている雰囲気から香澄の実力を感じ取ったのか、それ以上近づけず、明らかに動揺しているのが覆面越しにも伝わってくる。

香澄のほうから覆面男にじりっと距離を詰めた時、、香澄の背後から更にもう一つの影が襲い掛かってきたのだ。

(っ?!二人いたの?!)

ぶぅん!がっ!

香澄は焦ったものの、空気の動きでそれを察知して、身体を翻して迫りくる一閃を木刀で撃ち落とす。

奥の脱衣所にすでに忍び込んでいたもう一人の覆面男が放った飛び蹴りを、木刀で撃ち落としたのだ。

二人となった覆面男から距離をとり、香澄は背中を取られないよう素早く移動し、和室とリビングを隔てる戸襖へ背中を預けて木刀を構え曲者二人を睨む。

「何が目的なの?!貴方たち程度が二人いても無駄よ!」

香澄は悪漢二人にそう毅然というも、内心は全力で気力を振り絞っていた。

それも当然で、いくら厳しい剣道の練習を重ねてきたとはいえ、こんな場面に出くわすことなど想定して普段すごしているわけではない。

香澄の心臓は緊張から早鐘のようにドキドキと鳴りっぱなしだ。

香澄の問いかけに覆面男たちは応えず、じりっじりっと間合いをはかるように少しずつ近づいてくる。

香澄も男たちがそのまま逃げ去ってくれるという淡い期待を捨て去り、覚悟を決めてゴクリと喉を鳴らす。

そして覚悟を決めた香澄は正眼から刃を平に倒し、どちらにも対応できるような構えになって腰を落とした。

腰を下げたときに、先ほどスタンガンで撃たれた腰が悲鳴を上げるが、治療は後だ。

すでに、ダメージを負っている香澄は、長期戦を避けるために、一気に香澄の方から打ち込むべき・・と思った時、背後の戸襖が外れ突如香澄の背にのしかかってきたのだ。

「きゃっ!?」

どしん!

和室に隠れていた3人目の覆面男が、戸襖ごと香澄の背中から押し倒したのだ。

「でかした!」

「ひゃっはー!」

床に戸襖ごとうつ伏せで倒れ込んだ香澄は、身を捩ろうとするも、次々と背中に背負っている戸襖に男たちが乗ってきて身動きが取れない。

「くっ!もう一人いたの?!ど、どきなさい!!お・・重い!!」

うつ伏せになりながらも諦めず立ち上がろうとするが、3人の男に背に乗られればそう簡単に動けるものではない。

香澄の必死の抵抗も空しく、50cmほどあるスタンガンの先端が、戸襖を突き破り無防備な香澄の身体に向かって突きあてられる。

香澄は自分が何をされるのかがわかり、顔を青くし、全身を強張らせ叫んだ。

「そんなっ!・・やっ!やめなさいっ・・・!!きゃあああああああああ!!」

叫びはすぐに悲痛な悲鳴へと変わる。

背中や腰、お尻といった無防備な個所に電極を青く光らせたスタンガンの先端が3本も襖を突き破り押し付けられ、ばちんっ!ばちんっ!と何度も引金を引かれはじめたのだ。

「ああああっ!!いやああ!!きゃああああ!!」

ばちんっ!ばちんっ!ばちんっ!・・

「こいつまだ気を失わねえのかよ。けっこうな強化系なのかもな。不意打ちじゃなきゃあぶねえところだったのかもだぜ。くわばらくわばら」

「叫べ叫べ。このマンションしっかりした防音でたすかるぜ・・。・・しかしよぉ、へへっ、コレはコレでおもしれえな」

「ひひひっ、ここか?ここが痛えのか?ひひひっ、ひひひっ!」

ばちんっ!ばちんっ!ばちんっ!・・

香澄の背にある戸襖の上に3人がかりで乗っている覆面男たちは、スタンガンを香澄の背やヒップがある当たりに見当をつけ、スタンガンで襖を突き破り電極のついた先端を香澄に押し当てては引金を引いているのだ。

「いやっ!!もうおねがい!!あああくぅ!!!降りてえ!もうやめてっ!!いやっ!もうっ!!だからっ!・・ああぅ!・・や・・やめてっ!!・・きゃあああああ!!」

ばちん!ばちんっ!ばちんっ!・・・

「まだ意識があるみてえだなぁ」

「ひひひっ。ここか?こここがケツだろ?ええ?左右交互で最後は真ん中のインターバルだ。ひひひっ」

「くあ・・っ・・!も・・きゃぁあ!!もう抵抗しない・・からっ!!・・やめっ・・てえええ!!・・・っ・・!!・・・・っ!・・・ぁぁ・・」

背中や首筋や腰や太腿、特にヒップには執拗に何度もスタンガンを押し当てられ、戸襖の下で悲鳴を上げていた香澄は、男達の嗜虐心が満足するまで引金を引かれ続け、気を失うまで悲鳴をあげさせられたのだった。

【第10章 10話 賞金を賭けられた美女たち 10話 岩堀香澄VSゴミ男3名終わり】11話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

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