2ntブログ

■当サイトは既婚女性を中心に描いている連続長編の官能小説サイトです■性的な描写が多く出てくる為18歳歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい■

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 11話【回想】小田切響子と緋村紅音

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 11話【回想】小田切響子と緋村紅音


宮コー十指、作者的能力者強さランキング

(まだ6人しか登場してませんけど・・・)

1.緋村紅音(紅蓮)【クソビッチ】

  「まあ当然の結果よね。あたりまえだわ」-緋村紅音

2.最上凪(蜘蛛)【ポンコツ】

  「ランキング?・・興味ない」-最上凪

3.石黒実花(幻魔)【腹黒】

  「あらん。後塵を拝しちゃったわねん。でもこのあたりが順当かしら」-石黒実花

4.稲垣加奈子(銀獣)【ミス宮コー】

  「いやいやいや!私の方が(腹黒より)強いでしょ?!」-稲垣加奈子

5.宮川佐恵子(魔眼)【フラットチェスト】

  「もう少しリハビリがすすめば後れなど取りません・・」-宮川佐恵子

6.神田川真理(菩薩)【菩薩モドキ】

  「強さを競い合うなんて、みなさん女性ホルモンが足りないんじゃないんですか?」-神田川真理

能力の相性などによってはランキング通りの勝敗にはなりません。
上記の能力者強さランキングでの(  )内は宮川十指に数えられる彼女たちの二つ名で、【  】内は稲垣加奈子がナイショで勝手に名付けている愛称です。

宮コー十指、作者的エッチさランキング

1.神田川真理(肉食)
真理は【忘却】技能を持っているので、つまみ食いした男の記憶を消しています。食べた男の数は・・・人(真理の名誉のため自主規制)。お上品な顔をして宮コー十指の中ではぶっちぎりでエッチな肉食女性です。ただその肉食ぶりの痕跡を残すことなく、そして誰にも知られずにいるため、今日も牡丹が綻んだような笑顔で周囲の男たちを勘違いさせています。男性諸君は憧れの高値の花、神田川真理をせっかく抱けても記憶に残らないという仕様となっております。

「あら?いけませんよ?〇〇さんには奥様がいらっしゃるじゃありませんか。でもどうしてもというのであれば吝かではありませんが・・」-神田川真理

2.緋村紅音(バイセクシャル)
実は自分より強い男に激しく抱いてもらいたい願望がある緋村紅音。しかし、個人として猛烈すぎる強さであるため願望が叶うことはない。そのうえ宮川誠の愛人であるので、宮川を恐れて紅音にちょっかいを出す男はいない。自分から他の男を物色することもできずにいるので、かなり欲求不満気味。その鬱屈から社内の同姓に手を出すも、紅音自身がM気質であるのに虐めてほしい女性ばかりが懐いてきて、紅音は辟易していました。

「ふにゃちんばっかりで、ろくな男がいないじゃないのよ!」-緋村紅音

3,石黒実花(オープンスケベ)
石黒実花は性に開放的。魅力的な男にアプローチされるのは大好きで、石黒のメガネに適った男はベッドを共に過ごしやすい。ただ、石黒に『男』という範疇に入れてもらえなかった男は「その他大勢フォルダ」にぶち込まれて能力でデクにされるという噂が絶えない。

「ベッドでは逞しくない男だったとしても、私にかかればあなたも高性能なバイブになれるわ。そのほうが貴方も恥をかかなくてすむでしょう?私も楽しめるしね」-石黒実花

4,稲垣加奈子(パイパンドM)
普段凛としていて活発な印象を与える明るい美人、ミス宮コーと自他とも認める稲垣加奈子はドM。ベッドでは男にリードしてもらいたい子ちゃん。好きなスタイルはバックで、お尻を叩かれながらされるのが大好物。能力発動しすぎると髪の毛の色素が薄くなるのが原因なのか、下の毛はいつの間にかなくなってしまってつるつる。本人はパイパンなのをかなり気にしている。

「四つん這いになれとか・・・私、毛がないからさ・・・丸見えになっちゃうじゃん・・ゴクリ」-稲垣加奈子

5,宮川佐恵子(むっつりスケベ)
宮川佐恵子は【冷静】の状態を得る技能を常に自身に付与している為、普段は余裕のある蠱惑的な笑みを湛えたお堅い鉄面皮。しかし、ただ恋愛に臆病なだけで自分が傷つくことから逃げているだけである。本性はむっつりスケベで【冷静】の効果がきれたり、オーラが枯渇して自制がきかなくなると、休日はほとんど自慰に耽ってしまう。
そうなってしまうことに対して自己嫌悪になるほど恥じている。

「わたくしが、こんなことしてるなんて知られたら立場も失ってみんなに笑われてしまいますわ!」-宮川佐恵子

6.最上凪(見た目は清楚清廉)
無表情で無口。何を考えているかわからない表情の最上凪は、他を寄せ付けない圧倒的な戦闘力を持っている。しかし性に関しては実は以外に普通である。ストレートに誘えばワンチャンスは十分ある女性なのだが、強さ的に宮コー内部では紅蓮と並ぶほどの名を馳せているため、誰からのアプローチもない。本人は何故自分はモテないのかと実は少しだけだが密かに悩んでいる。
誘えば案外とチョロいかもしれないのだが、宮コー内部では誰も声を掛けてくる猛者がいないのが現状。
ただ、最近モゲこと三出光春がやたらと話しかけてくるのだが、それに関しては本気で嫌がっている。
一時期は、宏を既婚者と知らなかった時に、佐恵子には宏がお似合いだと勧めようとしていた時期もあり、男性を見る目はあるし、凪自身も宏が好みだったようでもある。

「どうも生理的に受け付けない」-最上凪


―本編-

「葵さん、本日のお勉強はここまでです。もうリー群論やホモロジー代数学もずいぶん理解してきましたね。すごいわ。私が中校生の時はまだまだ基礎数学すら終わってなかったのに、本当に葵さんの理解力には驚かされます。・・・・この調子なら来月には解析学もはじめても大丈夫そうですね」

「えーーー!やーっと今日の勉強が終わったところなのに次の話ししないでよぉおおお~!それにしても長い!一日4時間の勉強時間は長すぎるよおぉお!」

葵と呼ばれた小柄で可憐な少女は、見た目の愛らしさには似つかわしくない口調で、青み掛かった艶のある髪をぶんぶんと揺らして首を振り、盛大に悪態をついた。

大理石の白い柱8本で支えられた天上の高い部屋の真ん中で、葵はそう言うと、マホガニーの椅子に反り返り、家庭教師である澄んだ目が特徴的な清楚な美人を拗ねた目で見上げた。

「学校に行きたくないから家で勉学に励めるようにしてと言ったのは葵さんじゃないんですか?学校から許可は得ているとはいえ、本当は午前、午後、夕食後に2時間ずつ勉強をさせるようにと葵さんのお父様から言われてるんですよ?そこを葵さんが4時間で6時間分頑張るからって言うから今のスケジュールにに変更させてもらったんです。・・それとも最初の言いつけ通りのスケジュールに戻しましょうか?」

椅子に浅く腰かけ身体を大の字に近い恰好にして座っている葵に対して、指定されているメイド服のような服装を着用している美女はそう言うと、少し悪戯っぽい笑顔を向ける。

「ごめんごめん!4時間でオッケ!響子さんの配慮にマジ感謝してるからぁ!響子さんと遊ぶ時間がなくなっちゃうじゃん!」

「まあ・・」

抱き着いてそう言う葵に対し、響子はそう言われたことに嬉しそうな顔で目を閉じ、うんうんとうなずき葵の頭をなでてやる。

響子は家庭教師としての仕事が終わった後は、葵と囲碁対局しているのだ。

中学生の女の子の趣味としてはかなり渋いが、葵は今囲碁に嵌っている。

それに響子にとって、ゲームと言えば基盤での火花散る静かな駆け引きが醍醐味の囲碁しかしらないので、女子大生の響子も渋い趣味の持ち主といえる。

(わたしの好みがちょっと古いだけなのかもしれないわね・・・。現に大学の友達じゃ碁をする人なんて一人もいないし・・)

心中でそう呟く響子に、葵は抱き着きながらゲームの時間をとり上げないでと、半分ウソ泣きを交えたそぶりで訴えている。

「今日こそは!今日こそは響子さんに勝つ!って毎日思うんだけど、いつもあと少し足りないのよね!今日こそは響子さんが一敗地にまみれた顔を拝むんだから!」

囲碁歴は響子のほうがはるかに長い。

しかし、葵は響子の指導もあって囲碁歴3か月にして驚異的な成長を見せ、めきめきと頭角を現してきているのだ。

「葵さん、もう中学生になったのですから、いつまでもそんな言葉遣いではダメですよ。前の家庭教師さんには言葉遣いのこと何も言われなかったのですか?」

響子は、葵の艶のある黒髪を撫でつつ見下ろしながらそう聞くが、葵から返答はない。

艶のある黒髪を響子に撫でられるにまかせたままで無言である。

響子が聞こえなかったのかな?と思って再度聞きなおそうとしたところで葵が抱き着いている響子の肩越しを見て「あっ!」と歓喜の声を上げたのだ。

「どうしたの?」

目を見開いた葵に対しても、響子は笑顔で優しく聞き返してやるが、葵や響子たちがいる部屋の外がなにやら騒がしくなってきていたのを感じていた。

部屋の外では家政婦たちがざわめき、執事が足音を乱れさせている気配が感じ取れる。

そしてしばらくすると、葵たちがいる部屋の両開きの扉がばん!と開かれた。

「お姉ちゃん!」

葵が響子から離れ、満面の歓喜を浮かべてお姉ちゃんに飛びついた。

かなりの勢いで抱き着いた葵を、葵の姉は難なくキャッチしてぐるんと抱きすくめたまま葵を一回転振り回してから降ろしてやる。

肩甲骨あたりまである赤髪が印象的な美少女、葵と双子だと聞かされてもそうかと納得してしまう容姿。

ただ、お姉ちゃんと呼ばれた葵の姉は、容姿は双子同然ほどに似ているが、目の鋭さや纏う雰囲気はまるで違う。

「ただいま、葵」

背丈や容姿は似ているのに、この赤毛の姉からは暴を含んだ圧迫感が発せられているのである。

響子は、初対面の葵の姉に対して、その存在感に圧倒されながらも雇い主の娘に失礼があってはいけないと、丁寧に頭を下げた。

「はじめまして。浜野と申しまして、葵さんの家庭教師をさせていただいております。以後お見知りおきください」

その姉は、丁寧に挨拶して自己紹介をした響子に対し、頭のてっぺんからつま先まで響子をジロリと一瞥すると、形のいい顎をつんと持ち上げて言ったのである。

「ふん?はじめましてですって?」

赤毛の姉は響子の挨拶に対して心外だと眉をひそめて語気を強めた。

葵の姉とは言え、見た感じそうさほど葵とは年は変わらないように見える少女から、年齢不相応なセリフが帰ってきたことに、響子は絶句する。

ワインレッドのワンピースに膝までの黒いレギンス、ワンピースと色をそろえたやや高めのヒールも、歩き方、髪をかきあげ、響子より背が低いにも関わらず見下すような仕草の一つ一つが女優の演技のように洗練されている。

装飾品のネックレスやピアスも一流品と一目でわかるが、この赤毛の女にとってそれらすら、自分を引き立てるためのモノのように感じさせる雰囲気を纏っていた。

予期せぬ言葉を浴びせられた響子がぽかんとしてしまっていると、葵そっくりの赤毛の女性が続けて口を開いた。

「記憶力がわるいのかしら?そんなグズだと葵の家庭教師はまかせられないんだけど?東都大学3年理学部の浜野響子さん」

初対面にも関わらず、かなりの暴言を吐かれたことに響子は言葉を失ってしまい、言葉を返せないでいると、そんな響子に姉に抱き着いていた葵が口を開いた。

「お姉ちゃん!家庭教師は響子さんがいいよう!」

「そう?でもねえ・・同じ大学に通ってる先輩であるこの私を知らないなんてどうかしてるのよね」

葵のセリフに赤毛の姉は、形のいい顎に指先を当ててから、その手を赤毛の前髪にやって髪を弄んで、迷った素振りを葵に見せている。

「あっ・・!」

響子はそのセリフで一気に赤毛の暴君を思い出した。

大学内で知らない者はおそらくいない人物。

黙ってさえいれば、12歳の妹と容姿が酷似しているが、この姉の年齢は響子より一つ上の22歳のはずである。

そして、目の前で前髪をもてあそぶ仕草には見覚えがあった。

前髪を指先でもてあそぶ赤毛の美女に、なぜ気づけなかったのだろうかと響子は心の中で叫ぶ。

わかっていればアルバイトを断っていたかもしれないというのに、ここで働きだしてすでに3か月も経ってしまっている。

(いままで、一度もこの屋敷にいたことなかったのに・・!)

葵の苗字を思い出して、響子は目の前の赤毛の女性の妹かもしれないと思い当らなかった自分の迂闊さを呪いたい気分だった。

「緋村・・紅音さん・・」

「なんだ。やっぱり私のこと知ってるじゃない。まあ、当然よね。葵からはずいぶん気に入られてるみたいだけど、なんで私のことすぐに分からなかったの?同じ学校なのに私のこと見たことないわけないでしょ?」

「申し訳ありません。普段学校での服装とかなり違っていましたので・・・。それに大学ではお話する機会も恵まれませんでし、紅音さんを近くで見たことなかったのから気づけませんでした」

紅音は学校内でも赤い原色系の衣装を身につけていることが多いが、今日のようにドレスに近い普段着姿など見たことがない。

響子は緋村紅音のような人目を惹き、周囲を平伏せさせるようなタイプの人とは、できるだけ関わらないようにしていたのだ。

それに、本当の妹のようにかわいがっている愛くるしい葵の姉が、まさかこの緋村紅音だとは想像もつかなかったのである。

「お姉ちゃん!響子さんをいじめないでよ!」

深々と頭を下げる響子を見かねたのか、葵が響子を庇うように声を上げる。

「わかったわよ葵・・。今度の家庭教師は良いっていってたわね」

三食ついてて、部屋も用意してくれてるせっかくの高額アルバイトを首になる。

ただ、それでもいいかもしれない。と思ってしまった響子だったが、妹である葵のセリフは、赤毛の姉には効果てきめんで、紅音の顔に現れていた剣が、妹の頭をなでている間にみるみるなくなってゆく。

妹とほぼ同じ身長の赤毛の姉は、葵の頭をなでるのを止め、響子の方へと視線をもどす。

「葵から聞いているわ。ずいぶんと葵は貴女のこと気に入ってるみたいね。・・勉強は私が教えてあげてもいいんだけど、私は忙しいしそれに・・・この子私と二人っきりになるとずっとこの調子だからね。勉強になりゃしないのよ。貴女のことは私も知ってたわ。なかなか成績優秀ってゼミの教授も言ってたしね。浜野さんなら中学生の葵の勉強なら十分みてあげられそうよね」

「ありがとうございます・・」

尊大な言葉を重ねる小柄な赤毛の美少女と言っても通用する姉、響子より1つ年上であるはずの緋村紅音のセリフに、響子はそつなく頭を下げてやり過ごす。

「葵も貴女のこと認めてるみたいだし、しっかり励みなさい」

艶のある赤毛を手で優雅に払うと、葵の姉、いや最高学府である東都大学に通う者なら知らない者はいない人物、緋村紅音は尊大で他を見下すような仕草で、どこか逆らい難い雰囲気があふれ出させながらそう言ったのだ。

「は、はい。ありがとうございます」

再度頭を下げた響子の態度に、紅音は満足そうな表情で、顎を突き出してロールした髪を肩の後ろに払う。

「ええ、私から見ても貴女が今まで来た家庭教師の中じゃ本当に一番マシそうだしね。葵、しっかり学びなさい。この子、一応お姉ちゃんと同じ大学に来れてる理学部の子だから数学はそこそこできるはずよ」

「うん!お姉ちゃんみたいになれるように頑張る!響子さんもやっぱりすごいんだね。お姉ちゃんと同じ大学で、お姉ちゃんにこんなに絶賛されるなんて!」

響子は今までのやり取りの中のどこに絶賛があったのかと盛大に首を傾げたい心境だったが、苦笑いを何とか押し殺して葵になんとか頷いてやることができた。

「じゃあ浜野さん、夕食後も葵と遊んでくれてるんでしょ?私は出かけるからしっかりお願いね」

響子は雇い主の長女に失礼が無いよう、「いってらっしゃいませ」と頭を下げる。

葵にも初対面のときに強烈な印象を受けたが、その姉である紅音はまた違った種類の強烈な印象を響子に与え、去り行く小さな背中からあふれる存在感をまき散らしながら、颯爽と去って行ったのであった。

最後まで、姉が出かけていく姿を惜しんでいた葵の姿を響子は姉妹愛もいろいろあるのねと感慨深げに見ていたのである。

しかし、響子の仕事はあくまで葵の家庭教師なので、今後もそこまであの紅音お姉ちゃんと絡むことはないだろうと思おうとし、自分に言い聞かせたのだった。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 11話【回想】小田切響子と緋村紅音 終わり】12話へ続く

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 12話【回想】緋村紅音

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 12話【回想】緋村紅音


店内にいるのは若い男女たちが大半で、そのほとんどが薄暗い照明の中、比較的テンポの速い曲に合わせ、お互いを物色するかのように音楽に身を任せ躍らせている。

なかにはグラス片手にアルコールを嗜みながら、その目的はリズムを踏んでいる者たち同様で、気に入った異性を探しているのだ。

そんなひしめき合う人達の方が避けるように道ができ、その中央を赤毛の女が率いる団体は店内を堂々と歩んでくる。

童顔で文句なしの美人と言えるが、表情には高慢不遜な色が宿った顔を店内の赤や青の照明が彩っている。

道を開ける者たちなどいちいち眼も向けはしないが、赤毛の女は周囲を睥睨するように闊歩していた。

その集団の先頭を歩くのはもちろん緋村紅音である。

紅音は取り巻き達にその辺で時間を潰すように言うと、一人奥にあるVIPルームの方へと歩いていく。

その様子は22歳の女子大生の小娘であるはずの女が纏っている雰囲気ではない。

すでに常連客は知っているのだ。

この赤毛の女が只者ではなく且つ、オーナーの特別な客だということを常連客ならだれもが知っていた。

しかし、今日はそんなことを知らない新参者たちがいたのである。

そんな新参者たちが、紅音に興味を持ち絡もうと動き出した様子に常連客は薄汚い期待や好奇心に満ちた目を向けるだけで、二人組のことを誰も止めようとはしない。

これから始まるであろうショーで、哀れな新参者たちがどんな目にあうのかを、黒い期待を込めて見守っているのだ。

周囲が避けていくその中を当然のように進む紅音の前に、大柄な男二人がアルコールの入ったグラス片手に、紅音の進路を阻むようにして話しかけてきたのである。

「ひゅー!近くで見ると思ってた以上にすげえ美人じゃねえかよ!」

「ようねえちゃん。よかったら俺たちと遊ばねえか?」

年のころ20代半ほどに見える命知らずな男二人組は、そう言って紅音の肩に手を組むようにまわし、そのまま紅音の着ているドレスの胸の下を、バストの形を確かめるように撫ぜるように触りだす。

クラブのボディガードの者たちが、二人組の行動に気が付き真っ青になって慌てて駆けだしたが、それに気が付いた紅音は軽く手をあげてそれらを無言で制する。

「驚いたわね。この店で私にこんなことしてくるのがまだいるなんて」

紅音がうるさそうにそう言って、身を躱し男の手を強かに払いのける。

ばちぃん!!

「痛って!!」

女の力とは思えない猛烈な威力で手を払われた男は、打たれた手首を手で押さえ演技ではなく素で悲鳴を上げたのである。

打たれた男は顔じゅうに脂汗をにじませ、手首を抑えて蹲る。

二人組の相棒のほうは、今日はこういうパターンで行くんだなと、阿吽の呼吸でわざとらしく紅音に向きなおって口を開く。

「お?こりゃあひでえな。ねえちゃん、俺の相棒をそんな目にあわせて、お前には体中を使ってきっちり看病してもらわなきゃいけ・・・ぐふっ!?」

手を払われてない男の方は、相棒の痛がる演技に調子を合わせ、紅音にそう言って詰め寄るがセリフは最後まで言えないまま、身体をくの字にして両ひざを勢いよく床に付かされたのだ。

手を払われた男の痛がりようは演技ではなかったのだ。

二人組の男は女を落とすために、様々なパターンを持ち合わせていたが男たちが持っているどのパターンも結局紅音には通用しなかっただろう。

「ぐおぉおおおお!・・この女!お、折りやがった!俺の腕を!・・・くっそっ!無茶苦茶しやがる!いてええええ!」

「私って優しいでしょ?折れただけなら治るわ。私の胸を触った手癖の悪い手なんて灰にしてあげてもよかったのよ?」

紅音は手首の骨を折られた男を一瞥してそう言うと、みぞおちを打たれて呼吸が止り悶絶している男のほうは見向きもせず、赤いヒールをカツカツと響かせ男に触れられた肩を手で払うと、奥のVIPルームへと歩いて行ったのである。

紅音たちが通り過ぎたあとは、男たちがクラブのボディガードたちに抱えられて連れていかれる間に呻き声をあげていた声だけが響いていたが、周囲の好奇の雰囲気が収まった後は、いつも通り男女の盛り場の雰囲気が店内をいつも通り覆い隠したのであった。

この高級クラブ『エデン』では最近ではすっかり珍しくなった紅音の振る舞いが久しぶりに見れたというだけのことであったのである。

「銀次郎。さっき久々に絡まれたわよ。ったくうっとうしいわねえ。ちゃんとボディガードの奴ら教育しときなさいよ」

VIPルームのさらに奥にあるオフィスの黒皮のソファにドサリと身を沈めた紅音は開口一番正面のデスクにどっしりと背を向けて座る男に悪態をついた。

「おぉ?すまねえな。何しろ人員不足なもんでな」

銀次郎と呼ばれた男は、VIPルームから下層のダンスフロアを見下せるガラス張りの壁に向いて座っていたが、椅子ごとぐるりと紅音の方へと向きなおり口を開く。

巨躯、銀次郎という男を一言で言うならその言葉が一番ふさわしいだろう。

かなり大きな椅子に座っているはずなのだが、銀次郎が座っているとどうしても椅子が小さく見えてしまうほどだ。

身長は2mほど、だがただ背が高いだけではない。

白いジャケットに窮屈そうに納まった胸板の厚みは尋常ではなく、人差し指の先端の太さでも直径3cmぐらいはあろうかという大男であった。

それに加えて、顔の頬には大きな傷があり、目つきもカタギのそれではない。

そんな異様ともいえる男に対しても、紅音は普段通りの態度と口調を変えることはなく言葉を続ける。

「まあいいわ。それより私が依頼した女。上手く事は運んでるの?」

「ああ?・・ああ、あいつか。本当に手ごわいやつなのか?お前がそう言うから念のために錫四郎の奴に任せたんだが、だいぶチョロいって言ってたぞ?」

銀次郎の言葉に紅音の顔が歓喜で邪悪に歪む。

「やったの?もう落とした?!」

紅音はソファから立ち上がり、銀次郎の前にある黒檀のテーブルに乗り出して聞く。

「いや、まだそんな段階じゃねえな」

「なによそれ。じゃあなにがチョロかったっての?」

掛けていたメガネを手に取り、レンズを拭きながらそういう銀次郎に向って、紅音は目を細めて機嫌悪そうに声を低くして聞き返す。

「お前さんが依頼を出してきてまだ2か月も経ってねえ。信用させるにはそこそこ時間がかかるんだ。そのぐらい分かんだろ?」

銀次郎の言葉にちっ!と大きな舌打ちを遠慮なくした紅音は再びどさりとソファに身を沈める。

「早くしてよ。目障りでしょうがないのよ」

憎々しげに虚空を睨み、赤毛の前髪を弄びながらそう言った紅音に対し、銀次郎は眼鏡を拭く手を止めて興味深そうに紅音に目を向ける。

紅音は2か月ほど前に行われた宮川家の会合の場で、来春宮川コーポレーション本社への配属が決定した辞令を受けていた。

これで紅音は入社初年度から秘書主任として配置されることが決定したのだ。

しかし、2年後には紅音が七光りと呼び嫌っている宮川佐恵子が紅音より上の役職、つまり社長付き秘書主任として配属されることが決定したことも聞かされたことに憤慨していたのである。

「冗談じゃないわよ・・!」

他人のオフィスであり、その主が目の前にいるにも関わらず大声で独り言ちた紅音の様子を見て、銀次郎は女同士の嫉妬かと思い微かに鼻で笑う。

「だがよぉ・・・。俺が見る限りお前さん相当なもんだ。お前がこのクラブに出入りし出して半年ぐらいだが、正直お前みたいな女は見たことがねえ。・・・おめえならうちはいつでも大歓迎だぜ?・・・女としても幹部としてもな」

「気持ち悪い目で見るんじゃないわよ。ヤクザなんてお断りよ。表向きはグリンピア興業だっけ?あからさまに胡散臭い会社作ってカタギ装ってやってるけど、銀次郎たちみたいなカタギがいるわけないじゃない?アンタのアニキや弟もね」

紅音は銀次郎の異様ともいえる容貌がにぃっと好色に歪んだのを、顔を反らして舌を出しながら吐き捨てて言う。

「力づくってのも悪くねえが・・・。それより、お前が依頼した女、お前なら自分でやれるんじゃねえのか?こんな面倒なことしなくてもよ?」

銀次郎の問いかけに、紅音は少し間を開けて返す。

「お前お前うるさいわね。ちゃんと呼びなさいよ。緑園銀次郎。私だってちゃんと名前よんであげてるでしょ?」

「ふん・・そうだな。女でも依頼主であることに変わりはねえ。気を付けるとするよ緋村」

怪異な容貌でにかっと笑いそう言って、巨躯をすくませてる銀次郎だったが、身体じゅうからは暴の雰囲気が立ち上っている。

「わかればいいのよ」

ただ、紅音もそんな銀次郎の異様に怖気づくようなタマではない。

ソファに深々と腰をかけ、脚を組み変えながらそっけなくそういってから言葉を続ける。

「気に入らない相手をただヘコますだけだと面白くないでしょ?」

「・・そうかい。女同士の確執ってのもなかなかエグイよなぁってことにしておくぜ。まあ、俺たちはシノギになればいいだけだ。しかしあの女いったい何者なんだ?あの女が能力者だからっていっても、緋村ほどの能力者がわざわざ俺らみたいなヤクザもんにネタつくるような真似しなくてどうにでもできるんじゃねえのか?」

銀次郎は紅音のことを女と認識した目で、舐めまわすように見ながら聞く。

「詮索しないってのも約束のはずよ?・・・それにネタって脅しのネタってこと?聞き捨てならないんだけど?この私を脅そうっていうの?」

紅音の殺気の籠ったセリフに対し、銀次郎はもともとつぶれているようなほど細い目を更に細めて殺気を返す。

ふたりの間にオーラのせめぎ合いが起こり、チリチリと乾いた空気が振動し合う。

「・・・やめとくぜ。お互いタダじゃ済まねえみてえだしな」

銀次郎がそう言って座ったままの格好で巨躯をすくめてオーラを霧散させる。

「タダじゃすまないのはアンタだけよ」

そう言い返して紅音もオーラを霧散させる。

「ふん・・。まあそういうことにしといてやるよ」

「とにかく早くしてよね。アイツは感情を読んでくる能力よ。いわゆる相手の思考を読んでくるのと同義。私が渡した脳波をガードするイヤホンちゃんとつけてないと何考えてるか見破られるわよ?そこんところマジできっちりやってよね?そうじゃないと黒幕が私だってこともバレちゃうかもしれないんだから」

「ああ。錫四郎にはちゃんと言ってある。それに錫四郎の話だと、まだ抱いちゃいねえが、仲はずいぶん進展したらしいぜ?誕生日プレゼントもらったって言ってたからな」

「それマジ?マジうけるんだけど。騙されてるって知らないで相手にプレゼント?何?あの女何プレゼントしてきたの?」

銀次郎の言葉の内容に、紅音は童顔で愛らしい顔で本当に愉快そうに声を上げ興味津々で身を乗り出して笑う。

ただ笑っている内容は最低だ。

「スイス製の腕時計だそうだ。50万ぐらいするもんならしいぜ?ペアで女も持ってるらしいから二つで100ぐらいだろうな」

「ふんっ。バカな女。いいわね・・世間知らずな佐恵子らしくってとってもいいわ。騙されてるとも知らず滑稽よ」

深々とソファに身を沈めたまま、邪悪な笑みを浮かべて紅音は一方的に嫌っている相手の間抜けな行動に満足気に頷いて鼻を鳴らす。

「最近は女子大生って商品が変態の客層から人気でな。まあちょうど案件とかぶるしついでだ。中には女子高生や女子中学生まで所望する変態どもがいるぐらいだから世も末だぜ。ってそれでしのいでる俺らがそんなこと言えたもんじゃねえよな・・」

「そんな変態どもの相手をあの女にさせたいのよ。・・それよりアイツのツレ回りは能力者が何人かいるわ。くれぐれも油断しないでね」

「なに?おいおい、そういうことは先に言えよ」

愉快そうに話した紅音のセリフに、銀次郎は細い眼を僅かに見開く。

「ターゲットの情報はちゃんと教えてるじゃない。契約違反はしてないわよ?」

「ちっ!これだからとーしろからの依頼は困るんだ。えらい違いだ。どんな能力者がいるんだ?それによっちゃ料金はずいぶん跳ね上がるぞ?」

銀次郎の態度が変わったことに、紅音は腕を組んだまま童顔の愛らしい顔を邪悪にゆがめてまたまた派手に舌打ちをする。

「たいしたことないわよ。・・・茶髪の脳筋の女と、すかした白い服しか持ってない能面女よ。茶髪は筋肉、白い方はオーラの糸を使うわ」

「脳筋の程度にもよるが・・脳筋はともかく、オーラを変質するタイプがいるなんてずいぶん面倒そうなやつじゃねえか。確認するがターゲットの宮川って女の能力は感情感知系で肉体派じゃねえのは間違いないんだな?」

「ええ、そいつは力づくならどうにでもなるでしょうね。よゆーよ」

紅音はソファにもたれたまま目を閉じ、肩をすくめて頷く。

しかし、銀次郎は念のために紅音に言葉を詰める。

「・・・・念のために聞くが、このクラブにいるボディガードの連中でもその宮川ってヤツは攫えるぐらいのヤツなんだろうな?」

「無理ね。あんな無能力なザコたちを頭数に入れる方がおかしいわよ。だいたいあんなザコでどうにかなるならここにこんな依頼しにこないでしょう?ちがう?」

バッサリ即答した紅音に対し、銀次郎は身を乗り出した。

「おいおいおい!最初と全然話がちがうよなあ?!その雌ガキは能力者だとはたしかに最初に聞いてるが、戦闘力はないって言ってただろ?」

「私に比べればッて話よ。それにアンタが行くなら問題ないと思うわよ?」

「ダメだな。話にならねえ。もし何かあったら錫四郎じゃ荷が重いかもしれねえじゃねえか」

銀次郎はそう言うと、黒檀のテーブルに置いてあるスマホを操作し、耳に当てすぐに相手が出たことを確認すると一気に用件を言い切った。

「錫四郎!俺だ。いまやってる女から手を引け」

「ちょっと!何言ってるのよ!前金もう払ってるでしょ!」

ソファに座ったままだが、慌てた声で紅音は叫ぶ。

「ああ!そうだ!・・・もう一息だと・・?それでも手を引くんだよ!・・・・・ああ!それでもだ!・・おっ!?こらてめえ!」

銀次郎のスマホを紅音が恐るべき速さで飛び掛かり奪ったのである。

スマホを奪い、黒檀の机の上に立ったままの紅音は電話に向かって「ちょっと待ってなさい!」と電話の向こう側にいるおそらく錫四郎に怒鳴ると銀次郎に向きなおる。

「いくら欲しいのよ!」

テーブルの上に立ったままの紅音だが、床に立った銀次郎より10cmほど高いだけだ。

少しだけ見下してくる態度の紅音に対し、ネクタイを整えながらため息をついた銀次郎は紅音にギリギリまで近づき目を見据えながらゆっくりと口を開く。

「・・・能力者3人分。今の5倍だな」

「5倍?計算オカシイでしょ?!」

紅音は可愛らしい顔で口角を上げて怒鳴るが、銀次郎は引かない。

銀次郎は丸太のような腕で紅音の腰に手をまわしてガッチリつかむと、顔を近づける。

「お前が俺の女になるって言うなら、前の値段のままでいいぜ?」

銀次郎の怪異な顔が好色に歪む。

「嫌なら5倍だ。情報を偽った慰謝料も含んでる。それも嫌ならこの話はナシで力づくでお前を犯すことにするぜ」

紅音の腰に手をまわした銀次郎がそう言い紅音を引き寄せ、小柄な紅音のヒップに伸びたところで紅音の可愛らしい手が、銀次郎の大きな手を掴む。

じゅう!!

と、いう音がやけにはっきりと部屋に響き渡ると同時に、何かが焼ける香ばしい香りが広がる。

紅音の目が怒りで爛々と輝き、両手には熱を帯びたオーラを纏ってそれが銀次郎の手を焼いたのである。

「いいんだな?ここで暴れても?・・・お前みたいな高慢な女を力づくで従わせるってのもキライじゃねえんだぜ?それに、お前が連れてきた取り巻きのお友達も売っちまっていいんだよな?」

短気で駆け引きなどされることが嫌いな紅音は、もうどうでもよくなりかけ、悪鬼のごとく表情を歪め始じめたが、銀次郎のセリフでオーラの膨張を止める。

紅音は遊びで連れ歩いているだけの取り巻き達といえど、その身柄が行方不明などになれば、真っ先に自分が疑われてしまう可能性が高いということに内心歯ぎしりしたのだ。

(ちっ!あいつら足を引っ張りやがって・・!)

「・・・・・・いいわよ。5倍払うわ。ただし、失敗したら本当に許さないわよ?」

真っ黒に焦げた銀次郎の右手を離して紅音がそう言うと、銀次郎も紅音を締め上げていた丸太のような腕を離す。

「オーケー。交渉成立だな。・・・それにしてもますます気に入ったぜ緋村。俺にもまったくひるまねえとはな。・・・抱き心地よかったぜ」

銀次郎はそう言って紅音を締め上げていた右手を眺め、紅音に焦がされた右手の甲を見て気味の悪い怪異な顔で笑い双眸を光らせたのであった。

「アンタなんてごめんだわ。サイズがちがいすぎるわよ」

紅音も抱えられていた腰回りに鈍痛を覚えていたが、それはおくびにも出さず銀次郎の怪異容貌を気味悪がるように顔を背けてやり返す。

紅音の身長は140cmほどで体重も40kgほどしかない。

それに対して銀次郎は200cmを超え、体重は150kgもある。

二人をならべてみると同じ生物とは思えないほどの体積差があるのだ。

「サイズが合わねえのは使ってたらだんだんなじむから心配しなくていいんだぜ?壊れたらそれまでの話だからよ。それにお前ほどの器量なら下取りしてくれる先は困らねえよ」

異様な怪異な容貌でそう笑う銀次郎に紅音は本気で気味が悪くなって吐き捨てる。

「ったくクズね!」

紅音はそう罵ったものの、七光りが「こいつら」のようなクズに回されればさぞ愉快だろうなと、内心ほくそ笑んだのであった。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 12話【回想】緋村紅音 終わり】13話へ続く

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 13話【回想】宮川佐恵子と西崎由香INエデン

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 13話【回想】宮川佐恵子と西崎由香INエデン


「錫四郎さま?どうかしまして?」

「い、いや。たいしたことじゃないんだ。兄貴から電話でね」

「そうでしたの。お兄様がいるとおっしゃってましたわね」

肩肘をテーブルについて形の良い顎に指を添えた黒髪ロングストレートの女は、蠱惑的な笑み向けてくる。

やや細めの三白眼で、上目遣いで見つめてくる姿は、品があり育ちの良さを漂わせるが、それと同時に態度の節々に尊大さがにじみ出ている。

そういった仕草は丁寧に見せていても、隠しきれるものではない。

先日の腕時計といい、普段の身なりや立ち振る舞いから言ってなかなか育ちのいい女なのだろう。

付き合って2か月近くなるが、態度からして俺のことが気に入っているのは間違いないが、個人的なことはほとんどしゃべらない。

わかっているのは、携帯の電話番号とメールアドレス、それと明成大学に通っている女子大生だということぐらいである。

ただ、会話のジャンルは広く女を退屈させない雑談力を持ち合わせているはずの俺のほうが、聞き言ってしまったりすることがあるぐらいだ。

そしていままで数えきれないぐらいの女を落としてきたが、こんなに警戒心が強い女は初めてでもある。

会話のネタはお互いに尽きないが、確信に迫ろうとするとはぐらかされてしまうのだ。

警戒心が強いのは、家庭的な事情からだろうか。どうやらお堅い家の娘らしい。

効率を考えると、このような手間がかかる女を敬遠するべきだが、兄貴からの依頼の女であるうえ、最近は、俺はむしろこの女との時間が楽しみになってきていた。

もう何度もデートを重ねているのに、身持ちが硬いこの女を何とか落としてやろうとむきになっているのかもしれない。

それにしても、この女の目。

アンバーアイというのだろうか。

琥珀色の角膜、よく見ると円形ではない瞳孔にギクリとさせられる。

魅惑的な唇の形も相まって、表情だけ見れば石原さとみに似ている美人なのだが、そのアンバーアイが雰囲気を打ち消してしまっているのだ。

なかなか慣れない眼に、あやうく驚きを表情に出してしまいそうになり慌てて咳き込むふりをする。

「錫四郎さま。大丈夫ですか?」

身を乗り出し心配してくる女の様子からは演技は感じられない。

「大丈夫だよ」と言葉を返すが、女はウエイターを呼び止めおしぼりを持ってくるように頼んでいる。

「佐恵子さん、本当に大丈夫だから」

暖かいおしぼりを手渡ししてくる女にそう言って安心させてやる。

女の顔に安堵の表情が浮かぶのは、本当に俺のことを心配していたからだろう。

「佐恵子さん。このあと少し動きたくない?佐恵子さんって明成に行くようなお嬢様だけど、見た感じけっこうスポーツもしてたんじゃないかな?ほら、すごくスタイルいいし」

さりげなく相手を褒め情報も引き出しながら、いまいるイタリアンレストランから目的地へ誘導しようと笑顔で言ってみる。

「う・・うごくとは?」

顔を真っ赤にして聞き返してくる女の態度が予想以上にオーバーだったことに些か面食らうが、おそらく動くという言葉でエッチな連想でもしたのだろう。

あながち間違いではないが、耳年増なだけでおそらく処女であろうこの女の誤解を解いてやる。

「クラブだよ。ちょっと踊ってみない?」

「クラブ・・ですか?わたくし行ったことございませんわ。ダンスを踊るところですの?」

「まあ、そうだね」

「で、でも・・」

クラブを知らないとはこの女、こんな美人なのに大学に入って夜遊びもしたことがないのだろう。

今までのデートでも会話も浮いた遊びの話しなどはなく、政治や経済か大学や高校のときの学校内での話がほとんどなのだ。

クラブと聞いて気がすすまないような仕草をしているところを見ると、恥ずかしがり屋なんだろうとは推測が付く。

「大丈夫だよ。そんなにお固く考えなくても。音楽に合わせてリズムをとるぐらいの感覚だよ」

「いえ、ダンスは一通り嗜んでおりますが・・、今日はそう言った服は持ち合わせておりませんし、それに・・ダンスとなると・・」

佐恵子の内心では、スタンダードだろうがラテンだろうが、お互いの身体にふれあい、かなり密着するということになってしまうということに赤面しているのだ。

「服はそのままでも十分素敵だよ。固く考えないでさ。俺は何度か行ったことあるし大丈夫だよ。行ってみよう?」

「ええ・・わかりましたわ・・」

女の様子からすると押せば大丈夫なはずと確信し、すこし強引に誘ってみたのだが、思った通り女は躊躇いながらも顔を赤くして頷いたのだった。


クラブ『エデン』の1階は看板どおり普通のクラブである。

しかし地下1F以下はVIP会員や、特別な趣味嗜好を持つが通常の店では受けられないサービスを提供しているグレーな場所であった。

そして普通のクラブである1Fの『エデン』にすら会員制でIDカードがないと入れず、入場者は手の甲に蛍光色のスタンプを押して部外者の侵入を警戒するという入念ぶりである。

そしてスタンプにはいくつか種類があり、入場者の目的に合わせて選んで押してもらえるのだ。

通常スタンプの種類は3つ、青い蝶、赤い花、白いスマイル顔である。

そして店のスタッフや警備の者に押されている、黄色い十字模様。

ほとんどの者がその青、赤、白の3色なのだが、まれにみる色がある。

VIP会員しか押せない紫の蝶、桃色の花の2つである。

入場者はおもにそのスタンプの色を見定めて、相手の入場意志を知ることができるのだ。

大抵の者は青か赤のスタンプを手の甲に押している。

男の手の甲には青、女の手の甲には赤色のスタンプがほとんどの入場者に押されており、白色のスマイル顔を押しているものはごくわずかだ。

青い蝶を押している男は、お相手を探しています。

赤い花を押している女も、お相手を探しています。

という明確な意思表示であり、いやゆる『エデン』の1Fにあるクラブはヤルのを目的とした社交場なのだ。

『エデン』は無軌道な若い男女のたまり場と思われがちだが、芸能人や財界人の多くも通う者がいるほど人気を博している。

その理由の一つが、入場時に仮面をつけることができる匿名性だろう。

店側は顧客をIDで管理しているが、顧客同士はお互いにそう言ったことを話し合わない限り、知られることはないのである。

身分や立場を隠し羽が伸ばせ、自分の偏った趣味や嗜好を満たせられる場として『エデン』は発展してきたのだ。

みんな最初は恐る恐る1Fのクラブから始めるが、気が付けば高額なVIP会員会費を払い入り浸ってしまう者も多い。

大手出版会社常盤広告に勤める西崎由香もその一人であった。

大学を卒業しすでに3年、もはや会社は新人扱いをしてくれない。

しかし、まだまだ独り立ちできるスキルとは言い難い西崎由香は、上司からの圧力と後輩からの突き上げに毎日ウンザリしていたのだ。

そんななか、1年程前にあまり取引のない得意先の営業マンに酔った勢いで誘われたこの『エデン』にド嵌りしてしまっていたのである。

最初は排卵日前後に訪れる欲求を発散するために月に一度ぐらいのペースで、1Fのクラブに仮面をつけ一夜限りの男を物色していたが、匿名性が守られるこのクラブでは徐々に大胆になっていったのである。

ヴィィィィィィィィィン!

「はぐっ!うぅううう!・・・いぐぐっ!いぐう!!」

「また逝っちゃったねえ。ユカリちゃん」

右膝を抑えた男が電マを片手に息も絶え絶えの私にそう言ってくるが、応えられる余裕はない。

ヴィィィィィィィィィン!

左膝を抱えている男が、すぐに違う電マを陰核に押し付けてきたからだ。

「おごっ!ふぅ!ふぅ!おおぉおおおお!」

首を振ってイヤイヤするが、笑い声と送り込まれてくる陰核への振動が止むことはない。

ユカリはここでの仮名。

ユカリは普段は大手出版会社に勤めるお堅いキャリアウーマン西崎由佳なのだ。

ユカリは目だけを隠す蝶の形をした仮面を付け、口にはゴム製のボールギャグ、首には真っ赤な首輪、その首輪に連結された手錠だけを身につけていた。

男たちの顔にもユカリ同様、顔を隠す仮面を付けている。

男たちの手の甲には青色の蝶、ユカリの両手の甲と恥毛の上あたりに桃の花をかたどったスタンプが押されていた。

つまりこの部屋の参加者は、ユカリ以外は通常会員ということになる。

3人掛けのソファの上でM字に両ひざを開かされるように座らされ、左右の男たちからは交互に電マを当てられては、浅ましくほぼ全裸と言える姿で絶頂を何度も晒している。

ふたりに足を広げられ、正面に立つ男はユカリに向ってレンズを向け、痴態を収めていた。

部屋にはユカリ以外に男が3人。

実はユカリと男3人は顔見知りである。

しかし、男3人は仮面を付けた女ユカリが西崎由佳だとは知らないのだ。

VIP会員となった女性は、匿名性が守られながら店側に要求が出せるのである。

3人の男たちは西崎由佳が普段印刷を発注している下請け会社の社員たちなのだ。

26歳となった西崎由佳よりも20歳ぐらい年上の男と記憶している。

普段は大手会社の発注元である西崎由香に対して、丁寧でへりくだった態度をとってくる3人の年上の男たちに、由香は今いいように弄ばれている。

『エデン』はVIP女性会員のアンケートや会話から、嗜好分析し優香に提案してきたのだ。

「ユカリさんのお知り合いかもしれない方がお見えになってます。ユカリさんの顔や素性をわからないようにいたしますので、彼らの部屋に行ってみませんか?」

ということであった。

由香はかなり悩んだが、プレイ内容や素性がバレないということを確認してOKしてしまったのだ。

先月は忙しすぎて『エデン』に来ることができず、2か月もご無沙汰にしてしまった影響も大きい。

ヴィイイイイイイン

「うぅ!うう!!っううっ!!!」

先月は指だけで我慢し、今月に入ってからは今日こそ『エデン』でお相手を物色してホテルインしようと、このさい今回の『エデン』側の提案に乗り、1か月近く禁欲生活を続けていた羽目を思いっきり外すことにしたのだ。

右側の仮面の男、仮面をしていても予め知らされていれば誰だかはっきりと分かる。

週に一度は会う下請け会社の平社員で、中川さんだ。

普段は地味な作業服で、おどおどと上目遣いで由香をチラチラ見てくる男なのだが、今日の態度は別人である。

「ほらもう一回だよ。ユカリちゃん」

その中川さんに今日何度目かの電マを陰核へと当てられる。

知り合いに、自分だとバレない状況で全裸に近いまま電マを股間に当てられるという背徳感が生む興奮は絶大だ。

「ふぐぅう!!ふぅー!ふっー!!んっ!!」

普段冴えない下請け会社の平社員さんに、電マを自身の最もな弱点の一つである陰核へとぐぃ!と押し当てられる。

鼻からしか息ができない為、無様な鼻息をだし身体をのけぞらせて快感を身体全身で受け止める。

プレイ内容は、電マやバイブのオモチャ使用可、お尻は禁止、マスクの取り外し禁止、ゴムの使用がルールである。

下請け会社の社員の前で、ほぼ全裸で何度も電マで気をやらされたユカリは、大きなゴムボールギャグを嚙まされて、鼻だけで息をして苦しそうに藻掻く。

「ユカリちゃん苦しそうだね?ボールギャグ取ってあげようか?」

左ひざを抱える仮面の男、牧野さんがそう聞いてくる。

牧野も中川同様、下請け会社の社員で40歳を過ぎの痩せぎすの男だ。

どうみても普段由香が、男としての魅力を感じる男ではない。

由佳は『エデン』のスタッフが言っていたことを思い出す。

「この大きめのボールギャグは苦しいでしょうが、ユカリさまの声と顔をわからなくするためのものです。苦しくても取らないほうが良いかと思われます」

ヴィィィィィィィィィン! ヴィヴィヴィィイイイイイイ!

ユカリが応えるより早く、牧野さんがバイブを挿入してきたのだ。

週に一度は顔を合わす相手だが、由香は牧野さんとはほとんど会話をした記憶がなかった。

それほど影が薄く、目立たない男なのである。

当然、由香の男性センサーに反応はしない。

「簡単に入ったねえ。こんな太いバイブなのに。ユカリちゃん。こんなところに来るぐらいだから欲求不満なんでしょ?今日はたっぷり可愛がってあげるからね」

牧野さんの声ってこんな声だったんだ。と由香は頭の片隅で思ったが、牧野がバイブをシェイクしてくる手つきは見事で、思考はすぐに遮断される。

ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!

バイブは膣の中に突っ込んでかき回せておけばいい。

そういうモノではないということがよくわかっているバイブの使い方だ。

膣の上側である陰核の裏側、そして最奥にある子宮口の入口付近、力まかせではなくまずは陰核の裏側を優しぐ抉り擦るように膣壁を卑猥な音が鳴り響くようにして擦り上げてくるのだ。

「ふぐっ!ふぐっうう!!んっんっ!!」

普段男とも見てない男の見事な性技で高められる自分の身体に興奮する。

既に陰核に当てられている電マに加えて膣内の陰核裏を押し潰しながら擦る圧迫感と、膣奥にバイブが到達したときに的確に与えられる振動。

疑似ペニスであるバイブに刺激され、出番かと勘違いして子宮そのものが降りてきて、子宮口を弛緩させられる。

すでに子宮そのものが感じはじめたことに驚いて、とっさに足を閉じようとしてもそれを許してくれない左右の男たち。

たえず陰核を責められ、Gスポットとポルチオをバイブで交互に甚振られてバイブ挿入から2分と持たず身体は白旗を上げる。

「うごっ!ほがっ!!ふー!ふっー!!んぅ!!うぐううううううううう!!いぐうぅうううう!」

足を広げられた格好で鼻水と涎塗れの顔で声も満足にだせずに絶頂に無理やり押し上げられたのだ。

「ふっー!ふっー!んぐっ!ふっー!んあああああぁ!!」

「よしよし。逝った逝った。奥もすっかり出来上がったな」

「ユカリちゃん。感じやすいねえ。今からこんなんだと大変だよ?」

絶頂の余韻に浸る暇もなく、中川さんと牧野さんはオモチャを止めることなく耳元で囁いてくる。

正面でレンズを向けてくる男、いつも発注数量を間違える下請け会社の無能な万年主任、今年50になるはずの笹野さんがボールギャグを押し込むように突いてきた。

この無能な下請け会社の主任のせいで、由香が自社の上司から叱られたのは一度や二度ではない。

そんな男がぐぃと由香が口に咥えているボールを押し込んできたのだ。

「おごっ!?」

ただでさえ大きなゴムボールギャグなのに押し込まれたために苦しさから私は無様な悲鳴を上げてしまう。

「ユカリちゃん。ゴムボール取ってあげようか?本当はダメだけどゴムボールはユカリちゃんが外してほしいって言ったら外してもいいんだよね?」

そう優しい声で言ってくるが、口調とは裏腹に笹野主任はボールギャグを更に押し込んでくる。

「おごっ!うぶぅう!!?」

首を振ってイヤイヤするが、笹野主任は私の頭を抑え更にボールギャグを口に押し込んでくる。

ヴィヴィヴィヴィ!ヴィィィィィィィィィン!

膝を抑えてて広げている中川さんと牧野さんも、息苦しさと何度も逝った私の様子をニタニタと笑いながらオモチャを押し当ててくる手を強めてくるばかりだ。

「ほらあ、ユカリちゃん。苦しいでしょう~?鼻だけで息してフガフガ言って可愛いけど、外してほしくないの?それとも窒息しかけながら逝きまくってみる?」

冗談じゃない。苦しすぎるわよ!と言いたかったが、声に出せるはずもない。

そもそも、ボールギャグを外してしまったら、口元はバレるし、声はもろにバレてしまう。

この3人にユカリが西崎由香だと知られれば、明日からこの3人に玩具にされるかもしれない。

しかし、息苦しさのあまり、ボールギャグぐらいならとっても大丈夫かもしれないという思いが湧いてくる。

でも、声で私だとバレてしまうかもしれない・・・。

でももうこの格好で責められ続けるのは、気持ちいいが苦しすぎる。

これ以上息苦しさが続くのは耐えられないと思ったとき、私は首を縦にコクリと振ってしまったのだ。

「オーケー」

と満足げな声で万年主任の笹野はそう言うと、カチャカチャとボールギャグのバックルを外しだす。

顔がバレるかもしれないという恐怖に一気に後悔しだすが、笹野主任が手を止めてくれるはずがない。

「ぶはぁ!!きゃうう!!ああああん!あああああああ!」

涎塗れのボールギャグ糸を引いてが外された瞬間、電マとバイブで甚振られていたため嬌声を上げてしまう。

「ユカリちゃんやっぱり思った通り声大きいねえ」

「こういう口元してたんだぁ」

「見ないで!いやっ!ダメ!っああああ・・・!いくっ!いくっ!いくぅう!!」

顔見知りの下請け業者3人に、正体がバレてないはずとはいえ、いいように玩具にされて逝かされる自分に興奮し、すぐさま絶頂に押し上げられる。

ボールギャグが外されたことで、顔も半分わかり、声色で西崎由佳だとバレてしまうかもしれないという興奮が、全身を粟立たせより高い絶頂へと打ちあげていくのだ。

「はははっ、すごい逝きっぷり」

「内ももまでびちょびちょだよユカリちゃん」

恥ずかしいことを指摘されるが、深い絶頂の余韻で耳抜きが必要なぐらい身体の外と内の気圧が違ってしまっているためまともに反応できない。

「ユカリちゃんもすっかり出来上がったことだし、そろそろ本番と行こうか」

本番?・・・と聞いて朦朧としていた意識が少し戻る。

そう、彼らはまだSEXすらしていない。

私をプラスチックのオモチャで少しばかりツツキまわしただけだ。

彼らが満足するには最低1回ずつは果てるのをこの身で耐えなければならない。

すでに逝きまくってしまった自身の局部が耐えられるか心配だが、そんなことは今の彼らには関係がないだろう。

それどころか私の嫌がる素振りすらも、彼らのやる気を更に出させてしまうかもしれないというのは、女であればわかってしまう。

笹野主任は部下の二人に私の足を広げさせると、カメラ片手に彼の貧弱なキャリアとは正反対の立派な男根を突き入れてきた。

「ああああああ!」

無機質なバイブの感触とは明らかに違う、熱く太いモノが自分の最奥に突き刺さる感覚が与えてくる甘美な味に我慢していても声を上げてしまう。

バイブのような玩具を使われるのも、弄ばれているみたいで被虐心を大いに揺さぶられるが、本物を入れられると体温や息づかい、なにより男の腰が自分に臀部や恥部にうち当たってくる感触はたまらない。

なんで私の身体こんなに粗末に扱ってるの?!と被虐心も膨らんでくる。

腰がっちりつかまれて、顔を隠そうとしても髪をかきあげられ快楽で歪んでしまっている顔を見られる。

笹野主任はカメラ片手に、蝶の仮面だけを付けた私の顔を収めつつ、器用にもう一方の手で、下腹部にある桃色の蝶のスタンプを親指で潰すように撫ぜる。

「んっ!!?きゃぅううう!!?」

笹野主任がスタンプを触った瞬間に私の身体の感度が跳ね上がったのだ。

「へっへっへ」

「スケベな女だねえユカリちゃん」

「あああっ!!あああああっ!いやぁ!なにこれええ!!?」

快楽に塗れながら困惑の声を上げる私とは裏腹に、男たちは私の反応をさも当然のように見て笑っている。

どういう原理かわからないが、下腹部に押されたスタンプを触られると感度が上がる。

笹野主任は私の反応を楽しみながら腰を打ち込んでいたが、カメラを中川に渡すと両手で私の腰を掴でピストンに専念してきた。

ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!ずちゅっ!

「ああっ!!ああっ!いく!逝っちゃうっ!!!」

笹野主任の男根であえなく絶頂に押し上げられそうになった私は、牝として屈服の悲鳴ともいえる逝く宣言をして身体をガクンガクンと震わせる。

・・・・ずちゅ!・・・ずちゅっ!・・ずちゅっ!・ずちゅっ!

「ああっ!ダメ!逝ったばっかりだから!」

「へっへっへ」

「ひひひ」

そう言う私を見下し、左右の中川さんと牧野さんが下品に笑う。

激しいピストンが再開され、またもやあっという間に絶頂付近まで押し上げられる。

「いやっ!ダメ!またっ!!」

私がすぐに逝きそうになってしまっているのに笹野主任はまだまだ余裕の表情だ。

(まずい・・こんな調子で3人も相手にさせられてたら壊されちゃう・・)

そう思ったとき、私の腰を掴んでいた笹野主任の親指が、私の恥部に押されたスタンプをグリグリと潰し始めたのだ。

「きゃうううううう!?はぐぅ!!?逝くっ!イクっうう!!!?」

「ははははっ!」

「何回でも逝ってもいいんだよユカリちゃん?」

ソファに上で反って絶頂を迎えている私に対し、左右から笑い声が聞こえてくるが、いまだにお腹のスタンプをグリグリされながらピストンされてはまともに反応すらできない。

「またっ!?いっくぅ!!??逝ってる!!逝ってるのにまた逝くぅ!!」

「すげえイキっぷり」

「淫紋スタンプの効果つっても、ユカリちゃんよっぽどたまってたかエッチな子なんだねえ」

淫紋スタンプという聞きなれないワードに突っ込むゆとりすらない。

笹野主任だけで何度も逝ってしまった・・。あと二人耐えられるかしら・・などとこの時はまだ思っていた。

「よし、じゃあ交代だな。つぎ中川だな?」

「はい!」

つい「え」と声を出してしまった。

何故なら笹野主任はまだ逝ってないからである。

「いただきまーす」

ずちゅっ!

「あぐうううぅ!」

「主任、ユカリちゃんの淫紋おねがいしますよ」

「しょうがねえな」

困惑する私をよそに、3人は場所を変え中川さんがさっさと挿入してきた。

ルールどおりゴムは付けてくれているが、ゴムが一物の半分ぐらいしか包まれていない程の巨根だ。

くわえて右側からはカメラを持った笹野主任が、私の顔をアップで撮影しながらお腹の淫紋なるピンクのスタンプ部分を親指以外の四本の指で押しつぶしてくる。

左側の牧野さんは、ボールギャグが外された私に首の後ろから手をまわし口に指を入れ、もう一方の手で乳房を激しく撫でまわし、時折尖らせてしまっている乳首を嗤うように引っ張り上げてくる。

「ああああっ!逝くっ!また逝くっ!!」

「はやいねえユカリちゃん。何回でも逝っていいんだよ?」

「逝くペース速くなってるねえ。時間までに耐えられなかったら大変だよ?」

3人そう言う理由は分からなかったが、中川さんに3回気をやらされたあと、牧野さんにも3回気をやらされた後にその理由がわかった。

全員わざと逝かないようにして、『エデン』で与えられている2時間という時間をめいいっぱい使うつもりなのだ。。

再び笹野主任が正面に回り、ビジネスパーソンとしては貧弱だったスキルとは真逆の性能を持つ、男根を当てがってきた。

「も・・もう!何度も逝ったからもう!!もうやめてください!」

1時間半以上も逝かせ拷問で回されていた由香はとうとう耐えきれなくなってそう言ってしまった。

「何言ってんの。まだ時間30分ぐらいあるし、俺たちも逝ってないからね。それともユカリちゃん。マスク取ってくれるなら、みんなちゃんと逝って終わりにしてあげるけどどうする?」

カメラを向けた笹野主任が意地悪く聞いてくる。

一人の女を男たちが逝かないようにローテーションを組んで輪姦してくるようなプレイは、由佳はもちろん初めてであった。

だが、3人の様子から女をこのように甚振るプレイに慣れているらしい。

3人とも暴発することなく、女だけ絶頂させ自分が逝きそうになるとクールダウンで次の男に代わるのだ。

こんなローテーションを組まれてしまえば女はひとたまりもない。

ただ、このクラブでは時間制限が設けられているのが救いである。

「ダメ・・です。仮面ははずせません」

「ふぅーんそうなんだ。じゃあハードに行くよ?」

笹野主任は私のセリフを聞くと残忍な表情になって、私の身体を持ち上げて体位を変える。

「おい、口も使っていくぞ」

「まってました。これで待ち時間が短くなりますね!」

「えっ!?きゃっ!!」

笹野主任は私を持ち上げてうつ伏せにすると、すぐに腰を引き上げてバックから突き込んできたのだ。

「うぐっ!?」

そして、膣への挿入と同時にお尻にバチンと笹野主任の腰がぶつけられると、髪の毛を掴まれて顔を上げられて中川さんの巨根が口に押し込まれる。

「うっ!うぐうぅうう!!??」

あまりの大きさに目を白黒させるも、下半身から打ち込まれてくる快感に脳がぼーっとなり始める。

中川さんの巨根は先ほどの咥えさせられていたボールギャグよりも太いし、当然長い。

そのうえ、さっきまで自分の膣を散々かき回した愛液だらけの巨根が自分の口に突っ込まれてる。

その被虐心で背中に鳥肌が一気に立つが、笹野主任はバックスタイルのまま、私の腰を掴んでいた手を這わし、お腹の淫紋スタンプを押しつぶしてきたのだ。

ボールギャグをはめられていた時よりも、苦しくハードなピストンがバックスタイルで打ち込まれる。

「はぐぅ!!?はぐっ!いぐっ!!いぐぅううううううう?!」

腰を掴まれたまま膣に突っ込まれ、頭を掴まれたまま喉に突っ込まれたまま身体を不自由にガクンガクンさせて激しく絶頂したことを男3人に見せつける。

「ははははっ」

3人の蔑んだ嗤い声が聞こえてくるが、そういうものすら興奮してしまう。

「ユカリちゃん。中出しは禁止だから、全員ユカリちゃんの口にだすからね」

朦朧とした意識のなかで、笹野主任がそういうことを言ったが、男3人に抑えつけられて快楽に塗れていてはまともな判断はできない。

どうして女というモノは快感に狂ってしまうと、頭が真っ白になってどうでもよくなってしまうのか。

「女は子宮に頭がある」など言われても若かりし頃は鼻で笑っていたが、どうやら私の脳も子宮にあるらしい。

四つん這いという屈辱的な恰好、尻穴も眺められながら犯され、男が逝きそうになったら私の前の方へと周り私の喉奥に射精していく。

ローテーションの最後である牧野さんが、冴えない顔の割には凶悪な一物を私の口に突っ込み果てると、栗の花を潰してぶち撒けたような鼻をつく強烈で濃厚な臭いが脳内に広がたと同時に、淫紋を押しつぶされながらバックから突き上げて来ていた笹野主任の男根によって絶頂で身体を振るわせられ、顔面精液塗れになってソファに突っ伏したのであった。


―唐突な作者の心の声―

男が女の声を演技じゃないのか?とよく疑う者がいるだろうが、もちろん演技の時もある。

しかし、考えてみてほしい。

あの嬌声が演技じゃなくガチだとすれば。

気持ちいい時はめっちゃ気持ちいい。

演技の時はもちろんあるといったが、恥ずかしながら演技じゃないときももちろんあるのだ。

普段冷静に振舞っていればいるほど、普段真面目に接している相手であればあるほどそんな声を出してしまうのは恥ずかしい。

自分で言うのもなんだが、私は普段おそらく男性たちにはこう思われている。

「真面目そう」「キツそう」「話しかけづらい」。

親しい異性に意見を求めたところ、近寄りがたい雰囲気はあるとのこと。

ふむ。・・怯えるでないぞ?

他の明るく振舞っている女たちと、そうさほど精神構造は変わらないはずですから。

今は諸事情からそう考えていないが、普通に彼氏欲しいなとか思っていた時期も長い。

「こんな男、ないわー」、「この人とこんな関係になってはダメだ・・。このあとどんな顔して会えばいいんだ」と思っている相手だからこそ感じてはいけないと思うし、そんな姿を見せたくはない。

男たちに、そんな姿を見られるのは絶対あってはならないし恥辱だ。

・・・ただ「恥>嫌」という状況になると、女は意思とは関係なく感じはじめてしまう。

男性諸君には、女がその気になる状況づくりというモノをもっと励んでもらいたいと常々思っている。

すごく我がままを言っているのはわかるが、「自分の過去の自慢話でオレマジでスゲーだろ?マウント君」、「俺の方が賢いぞ!どうだ!と見せたいがために女の意見に対し否定から入るイタイ勘違いマン」「店員などにイキって強さアピール?するIQ2君」、「不機嫌なオレを察してくれかまってくれないと拗ねちゃうぞ幼児ちゃん」などには『いい男だわぁ~』とはならない。

正直に言うと私はそんな男たちには『死ね』程度ぐらいのことを笑顔で思っているときがしょっちゅうある。

男は自己アピールの仕方をほとんどの場合、盛大に勘違いしていると思う。

「俺強くて賢くて魅力的マン」のアピール方法がサル以下なのだ。

しかも性質の悪いことに、ほとんどの男は自覚症状すらない。

そして男は正論で痛いところを突かれても、チンケなプライドを護るために、延々とウソにウソを塗り固めていくヤツが多いのである。

謝らない奴も多い。

男からすれば、「俺はこんなに強くて賢くて魅力的だって見せてるのにあの女は全然俺の魅力に気づかない!見る目の無い女だ!」って思っているのかもしれない。

マジで糞である。

そして、ものすごく猫なで声でアプローチしてきた挙句、こちらにその気がないとわかると、盛大な掌返しをしてくるのもクソ男の特徴だ。

此方は、怒らせないようにずっと丁重にお断りし続けているのに、本当に脈なしだとわかると言葉遣いや表情もがらりと変わる。

それぐらいならまだいい方で、身に覚えの無い悪口まで言うゴミすらいる始末だ。

話が脱線しまくってしまったが、ともかく男って本当にマジ糞って思うヤツばっかりなのが現状なのでここで愚痴ってしまった。

昔のように結婚していなければ女が生きていけない時代ではなくなったのだ。

最早女ばかりが我慢する時代ではない。

私の収入よりはるかに少ない男と一緒に暮らす価値がどれほどあるのか、価値観を共有するにはいまの時代おそらく男の方が見方を変えなければいけない。

女は炊事、洗濯などの家事全般をするのが当たり前という時代錯誤の脳ミソを持っているようなサル同然の男とは絶対うまくいかない。

そして、週に一回ぐらい洗濯をした、食事をつくった程度のことで、「俺は家事を手伝っているよね。ドヤァ」などとは口が裂けても周囲の友人や、自分の親などに言わないことだ。

状況がわからない人はその言葉を信じてしまうかもしれないし、なにより家事のほぼ99%をこなしているパートナーに謝っても許されないような暴言妄言である。

家事は毎日発生し、休みもないから大変なのだ。

断っておくが、私が炊事や洗濯などができないわけではない。

料理は私の趣味でもあるし、おそらくかなりの水準で料理はできるほうだと自負している。

昨今こんな高性能な家電製品があるおかげで、私のような女でも簡単に調理できるし、インターネットのおかげでレシピも簡単に知ることができる。

掃除に関してもルンバ君やブラーバ君がわずかな電力と消耗品で毎日やってくれる。

女が一人で生きていくのに死角なしの時代である。

太平洋戦争直後ぐらいは、炊事はするために朝4時起きで窯の火いれ、水は井戸から汲み上げ桶で運んでこなければ、お米が炊けず料理が作れない重労働だったが、今はそうじゃない。

だから、今の女たちで「私専業主婦です!専業主婦だから立派です!扶養で年金までバッチリもらえます!」というのも思考停止してると思う。

戦後直後ぐらいまでなら専業主婦はものすごく重労働だったと思うし、専業主婦ってだけで本当に立派だと思う。

そのうえ子育ても重なれば、その時代の主婦は現代の囚人より辛い過酷な労働かもしれない。

毎朝4時に起きて、炊事洗濯。

家電製品のない炊事や洗濯はさぞ大変だろうと想像できる。

冷たい水で、毎日大家族の衣服を手で洗うとか想像しただけでキツい。

そんな時代じゃなく現代に生まれることができたのは本当にラッキーだと思う。

ただ、恵まれた現代でも女として生まれたものなら誰しも、男尊女卑という考えや出来事に出会ったことがあるだろう。

男が女より優れている点はあるのは認めるし、女が優れている点があるのも把握しているつもり。

いままで男が社会的有利に生きてこれたのは事実で、女がここまで社会進出をしてきたのもここ50年ぐらいの話だ。

昔は強い男に選んでもらわなければ、自分も自分の子供も生命の危機に晒されやすかった。

そして、その強さの定義は基本的に腕力や知恵や地位だ。

選んでくれたオスが、他のオスより腕力がつよければ、自分や自分の子供が他のオスから乱暴される可能性も低い。

選んでくれたオスが、狩りが上手なら自分も自分の子供も飢える確率が少ない。

だから女は本能的に自分より大きくて背の高い男を好むし、スポーツや勉強ができる男を好む傾向にある。

イケメンがモテるのも、女が遺伝子的に左右対称の顔を選ぶ傾向にあるからだ。

男でよく、「男は顔じゃないハートだ!」という人がいる。

その意見には一定の範囲で激しく同意できる。

だが、本能的にイケメンを選ぶ傾向にある女が多いのはモデルやジャニーズの人気を考えれば明白だろう。

私は男と女の価値の違いというモノに偏見がある。

若い女の価値=1000 若い男の価値=100
オバさんの価値=10  オッさんの価値=90

上記の通りだ。

だから私は、オバさんになっても自尊心を失わない生き方をするために脳ミソを鍛え、収入減を人並み以上に確保することに尽力しているのである。

女は若いうちはただそれだけで価値が高いが、それを時限的なモノだと理解していないとけっこうしんどいと思う。

風俗業界でも女は18~22ぐらいまでの間に、2億円は稼ぐことができるが、それ以上の年齢になると需要がなくなるわけではないが相当キツイとそのスジの人に聞かされたことがある。

なので、わたしは身体を売る勇気もないけどそこそこの生活はしたいので、オバさんになっても、このひねくれた考え方の頭と貧弱なボディで乗り切るしかないのだ。

悩殺できるようなボディではないが、顔はまだマシだと・・・思いたい。

ただ、若くて顔がいいだけでは自尊心が保てない。もうすでに若くないが・・。

若い間だけ穴として需要はあるがそんな人生はゴメンなのである。

私の偏見に満ちた価値観の続きだ。

女はおそらく男以上に美が好きだ。

なぜなら、生存本能の名残だから。

(ただ極稀に私と変わらないくらい美意識の高い男性が居るが、美意識の高い男性はやはり社会的地位も年収も高かったと記憶しています。手が美しい男性は特に高収入な気がします。経験上。)

人は顔の左右対称性を見て、イケメンか美人かを判断している。

そして相手の顔のつくりが左右対称ならば、自分の子供が奇形に生まれたりする可能性が低い。

自分の子が、奇形に生まれてしまうとその集団のなかでのカーストボトムへと母子ともども落ちてしまい生きにくくなるからだ。

原始時代の30人ぐらいの集落で生活していることを想像してほしい。

生れつき指がない、腕の長さが違うなどの特徴を持って生まれてしまうと、狩りにいくのも不利だし、穴を掘る、家をつくったりするような土木作業も普通の人より出来なくなる。

そういった子を持つ家族がその集落の中で生きにくくなるのは必然だろう。

イケメン好き、手の造作、いわゆる手フェチと呼ばれる女が多いのもそういう防衛反応からだ。

例にもれず私もイケメン好きだ。

それゆえ、いい男の手の形やアゴの形とかをガン見してしまう時がある。

ついでに言うと、好みの臭いだったりする男がいると話すとき普段より近くに寄ってしまう。

そして、相性のいい相手からモテたいなら、香水を付けないことを強くお勧めする。

貴方が自分で気にしている体臭を、良い匂いと言ってくれる女性は必ずいると思うからだ。

遺伝子が遠ければ遠い相手ほど、良い匂いだと認識するらしい。

体臭は自分にはない長所を子孫に反映させるためのシステムで、自分とは違った遺伝子を持つ人間を人は匂いという本能で嗅ぎ分けているのだ。

「こいつ良い匂いだなぁ」と思う相手がいれば、その人も貴方のことを良い匂いだと思っている可能性は高い。

だから、変に香水とかで飾るのはお勧めしない。

私も基本的に香水は使わない。ローズマリーを抽出して、アルコールと混ぜて消毒を兼ねて使っているぐらいだ。

恋人にするなら顔の作りが左右対称に近くて、良い匂いの相手にしよう。

お互いが幸せならば収入はそれほど重要じゃない。

それに今の時代、やり方を見つけ努力を続ければ、身体を売らなくても女でもそこそこ稼げるようにはなる。

しかし、私のようなことを言うような女は男にも女にもモテにくい。

私は百合ではないので女にモテなくてもどうでもいいが、男にはモテたい。

そして悲しいかな、「女の脳は子宮にある」という言葉はどうやら本当で、どうでもいいから男ほしい!と思う時があるのだ・・・。

言葉にするとものすごく難しいが、男性たちは私が言っていることをわかってくれるだろうか。

たぶんほとんどの男が理解できないだろう。

だから男たちは「女はめんどくさい」という言葉で片づける。

ただ私も「女はめんどくさい」ということは身に染みてわかっているつもりだし、その意見には強く同意する。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 13話【回想】宮川佐恵子と西崎由香INエデン終わり】14話へ続く

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 14話【回想】 エデンの変


第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 14話【回想】 エデンの変


夜の繁華街の光をそのボディで反射させた黒い高級四駆は、店の前にゆっくりととまった。

運転席から降り、店のものにキーを渡して助手席側に回り込んできた錫四郎が、手を差しのばしてくる。

「佐恵子さん、ここだよ。僕の行きつけの店なんだ」

「え、ええ・・この店・・ですか?」

佐恵子は錫四郎の手を取り、車を降りながら何とか笑顔を返してそう言った。

手を引かれながら車を降り、店の外観を眺めた佐恵子は、彼氏にエスコートされているというのに笑顔に陰りが出てしまう。

錫四郎が連れてきた店は、繁華街の道沿いに堂々とある白亜の石張りの重厚な建物であった。

しかし、その白亜を植木からライトアップさせているライトの色が青や赤とけばけばしいすぎる。

白い照明でライトアップしていたならば、高級ホテルのような雰囲気がでるのであろうが、派手なライトが佐恵子的にはせっかくの建物の雰囲気を台無しにしてしまっていると感じていた。

(なんてセンスですの・・)

まあここは高級ホテルではなくクラブなのだからしょうがないのだが、佐恵子のような世間知らずには異様に映ったのである。

そしてさらに、その白亜の建物の周囲にたむろする若い男女の風貌のほうがさらに佐恵子は不安をかきたてる。

店の周りに屯する彼らの年恰好は比較的若いが、着ている服も髪型もいかにも夜の装いなのだ。

男たちはカジュアルな服をだらしなく着ており、夜だというのにサングラスをかけたり帽子をかぶっている者もいる。

そして女たちはこの距離でも匂うほどの香水が香っており、無駄に露出の高い服を着ているのだ。

錫四郎に手を引かれ車から降りてくる佐恵子に対して、そのたむろしている全員の感情がいっきに佐恵子の目を通して頭に流れ込んでくる。

そしていつもどおり、いっきに不快になりかけた感情が、【冷静】によって瞬時に霧散していく。

財閥の令嬢としての日々では決して出会うことのない人たちから、雑に言うと「得体の知れないお高そうなヤツが来た」という感情が一斉に頭に流れ込んできたのだ。

向けられる負の感情によってわいてくる怒りや不快の感情を【冷静】が一気に打ち消す。

佐恵子にとってはいつものことなのだが、気持ちのいいものではない。

【冷静】で感情の高ぶりは強制的に抑えられるが、彼らの感情の内容を遮断できるわけではない。

(なによあの女・・・、場違いな恰好で来ちゃって)

(レクサスにイケメンの彼氏・・あんなださい女に・・むかつくわね)

(そもそもこの店は男連れで来る店じゃねーんだよ。かえれよブス)

初対面だというのに同姓からは容赦のない敵意むき出しの感情が向けられてくる。

(男連れかよ・・。男と離れたすきに声かけてみるか)

(ひゅー・・。ちょっと細いがツラはなかなか・・・)

(足なげー・・。その足無理やり広げて犯してぇー)

そして男たちからは下卑た慣れすぎた感情を向けられる。

実際に言葉が頭に流れ込んでくるわけではない。

ただ、感情が色となって流れ込んでくるだけなのだが、長年この能力に慣れている佐恵子にとっては悪い意味で使いこなしてしまっているのだ。

頭に流れ込んでくる色と同時に、どんな言葉を言っているのかを想像できてしまうのである。

日常的に【感情感知】で他者の感情が目をとおしてとめどなく頭に流れ込んできてしまう佐恵子にとって、【冷静】などの付与術で自身の精神を常に防御していないと佐恵子本人がまいってしまうことは、子供のころからとっくにわかっていた。

【感情感知】は宮川家の者なら、多くのものが覚醒する瞳術だが、同時に付与術も身に着けているものが多いのは、このためだろう。

佐恵子もその例に漏れない。

(人が得体のしれないモノを受け付けないのは慣れてますが、ここにいる者たちはマイナスの評価を下すものが多すぎますわね・・・)

佐恵子は【冷静】のおかげで取り繕った笑顔を少し俯けてため息をつき、目の前の彼に目を向ける。

(それに引き換え・・錫四郎さま・・不思議な方ですわ・・)

佐恵子の眼で見ても錫四郎の感情は驚くほど穏やかで、好意と友愛、そして敬意の色が常に入り交じっている。

錫四郎に眼の能力どころか能力のことは話題にもしていない。

しかし、佐恵子から見れば錫四郎が能力者なのは間違いないことはわかる。

眼のせいでオーラ量が測れてしまうからだ。

錫四郎が無自覚な能力者かどうかわからないが、常人よりもオーラ量が明らかに多い。

(いろいろとお話したいことはありますが・・・まずは確かめなくては・・。私はこの人のことを・・好き・・だと思いますわ)

好きだ。と断言できないのは理由がある。

錫四郎が佐恵子に向けてくれる感情は確かに好意的なモノばかりなのだが、それにしても錫四郎の精神は安定しすぎている。

錫四郎には今まで何度か会ったが常に精神がほぼ一定なのだ。

佐恵子はこんな人には出会ったことがない。

先日プレゼントを渡した時、喜びの言葉もお礼も言ってくれたが、その時も今と同じで、感情の変化がほぼ認められないのだ。

いままでどんな人間でも、そういうときは感情の起伏が大きく見て取れただけに、佐恵子はかえって不安になったのである。

そのほかにももう一つ理由がある。

常に佐恵子が自分自身に付与している【冷静】効果のせいで、自分の感情もよくわからないのである。

【冷静】を常に自分に付与していないと、相手の感情が流れ込んできてしまい、それに自分の感情が反応してしまう。

敵意や嫉妬を向けられる時の自分の感情は【冷静】で霧散させてくれてもいいが、好意を向けられて芽生える自分の感情も霧散させてしまうのだ。

それゆえに佐恵子自身、自分の感情に自信を持てなくなっていた。

【冷静】は自分に付与した瞬間から徐々に効果が弱まりだすが、今の佐恵子でも最長8時間ぐらいは持つ。

学校に行く日は、出かける前と、お昼に掛けるので、学校にいる間は【冷静】は効きっぱなしだ。

そして、錫四郎と会う時間帯のときも【冷静】の効果は薄まってきつつあるとはいえ、ほぼ付与が効いている。

だが、【冷静】などの付与術は【感情感知】と違って、比較的コントロールできる。

すなわち自分の意志で解除できるのだ。

ふだんは錫四郎と会っても解除しなかったが、今日は解除するつもりでいる。

(今夜は・・・今夜こそは・・二人っきりになるときに、錫四郎さまを【感情感知】で見ながら、【冷静】を解除してみますわ・・・これで、わたくしの感情がわかります・・。できればクラブなどではなく、二人きりになれる公園などがよかったのですが・・いたしかたありません・・。この水曜日を逃せばまた来週まで錫四郎さまには会えなくなってしまいます・・・。錫四郎さまのことは凪姉さまにもバレてしまいましたから、長引けば水曜日の自由時間にも見張りや護衛が付いてしまうかもしれません・・・。それどころか凪姉さまが錫四郎さまに干渉する可能性すら・・。その前に自分の気持ちだけでも確認しておかなければ・・)

「佐恵子さん。こっち予約してあるんだ」

薄暗い店内を所狭しと男女がお互いを値踏みし合うようにして、音楽に合わせて身を任せる中、錫四郎は佐恵子の手を引き奥へと進んでいく。

「こ・・こんなところで踊るのですか?」

佐恵子が思っていたダンスとはずいぶん趣が違う。

薄暗い店内で身を寄せ合い音楽に身を任せている男女の中には、明らかに肌を合わせすぎ唇すら重ねている者たちもいるのだ。

「そうだよ。佐恵子さん真面目そうだけどたまにはこういうのもいいんじゃない?」

「きゃっ」

錫四郎に腰に軽く手をまわされただけで、少し悲鳴を上げてしまい佐恵子は自分の口を手で押さえた。

「ご・・ごめんなさい。・・おどろいてしまって・・つい声をだしてしまいましたわ・・」

「緊張しすぎだよ佐恵子さん。すこし何か飲んで落ち着いた方がいいね」

錫四郎は佐恵子の腰に手をまわし、身体をやや抱き寄せて優しくそういうと、近くのボーイに向かって指を鳴らして呼び、グラスを持ってこさせている。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

手渡されたボウルの細いグラスには薄いクリーム色の液体があわ立っている。

錫四郎も佐恵子と同じ形のグラスを手に取り、ぐいとグラスを傾ける。

つられて佐恵子もルージュが付き過ぎないようにリムに唇を当てて、グラスを傾けた。

思いのほか強いアルコールだったが、甘く微炭酸で口当たりがいい。

錫四郎はグラスを空にしているが、佐恵子は二口ほど飲んだだけだ。

グラスから唇を離し、ほぼ密着した錫四郎を見上げる。

見つめてくる錫四郎からは、好意を示す色が複数現れていた。

見える感情色に嬉しくなり、見とれてしまったのかうっかり腰に回された腕に体重をあずけ過ぎそうになる。

しかしいくら何でも体重をかけすぎてしまったと思い、身体を戻そうとするがなぜか腰から下に力が入らないばかりが、足も思った通りに動かせず足元がおぼつかない。

完全に体勢を崩し、崩れ落ちそうになったところで、錫四郎に支えられるように抱きすくめられる。

グラスもきちんと掴んでいられない。

床に落として割ってしまってはいけないという思いから、かろうじてステムの部分を摘まんでいる。

しかし、グラスを水平以上にかたむけてしまい、こぼれた液体が服を濡らしていく。

指に力が入らない。

パリン!

グラスの割れる乾いた音がするも、音楽と人いきれでかき消されてしまう。

こんなあり得ない失態をわたくしが・・・。

「すずしろぅさまの服をよごしてしまい・・まひたわ・・。もうひわけ・・ございましぇん」

「いいんだよ。服なんてすぐ脱ぐからね」

「・・なじぇですの?」

錫四郎に眼を合わせるが、視界が定まらない。

顎も唇も、歯医者で麻酔注射をされたときのように感覚がおぼろだ。

ろれつが回らない。

錫四郎がボーイに割れたグラスを片づけさせようと手招きしているのが見える。

「ふふふ、佐恵子さんが飲んだのはレイプドラッグ入りのシャンパンだよ。この店じゃ公認なんだ。今から起こることはよく覚えてないだろうけどちゃんと家に送ってあげるからね」

笑顔で錫四郎が何事か言ってくれるが、よく聞き取れない。

ぼやける視界が暗転しかけるなかで錫四郎の好意を示す感情色だけが安心できた。

・・・・・・・・・
・・・・
・・


一方、偶然か必然か佐恵子と同じエデンに居合わせた寺野麗華と豊島哲司サイド

「麗華・・・麗華!」

「んぅ?なによう」

普段のポニーテールをおろし、黒髪にジェルをつけてウエイブさせた麗華が熱っぽく返事をする。

「ちょっとくっつきすぎやがな」

「だってしょうがないでしょう?チークダンスなんだし。それにさ、いまさらこのぐらいくっついたからって・・ね」

黑のタンクトップにカーキ色のリブトップ、ボトムはワイドドレープ気味のデニムパンツ姿の姫こと寺野麗華が、店内のチカチカ光る照明で顔を彩りながら、笑顔を向け意味深にウインクしてくる。

超罪つくりな男、和尚こと豊島哲司も麗華の服装に合わせてタンクトップにむき出しの筋肉を隠すため黑のトップスを羽織った姿である。

麗華のダイナマイトな胸がきつそうにタンクトップにおさまっているのを間近で見下しながら、どうしても谷間に目が泳ぎそうになるのを堪えて哲司は声を潜める。

「・・そやけどこんな人が多いところでほんまに堂々とやってんのか?」

哲司のセリフに、麗華もうっとりしていた顔をやや引き締めて返す。

「たぶんね・・。私の担当じゃないんだけどさ。こういう案件を受けてる同僚の子がいるってこないだ言ったでしょ?」

周囲を警戒し小声で話しながら、麗華は哲司の胸に顔を寄せながらチークを踊っているのだ。

ここは『エデン』と呼ばれる最近人気のクラブである。

麗華が哲司から頼まれて調べていたグリンピア興業が運営しているクラブだ。

哲司によって麗華がとんでもない被害に合った夜からちょうど1週間後、麗華の仕事の伝手で最近急増しているレイプ被害者の捜査でこのクラブに潜入しているのだ。

麗華の獅子奮迅の働きで、被害者の証言などをまとめ上げこのクラブが巣窟になっているとあたりをつけたのである。

麗華は哲司の為にひと肌もふた肌も脱いでいるのだが、当の哲司はまさか麗華がここまで協力してくれたのは意外だったようで、いささか驚いていた。

「そやけど麗華さすがやな。いくら現役弁護士言うても、自分の仕事もあるのにこんな短期間で調べてくれてほんまたすかるわ。マジ感謝や。サンキュな」

「・・そりゃ・・さ。私だって・・・和尚のためなら・・がんばっちゃうわよ」

哲司の胸に顔を押し付け、真っ赤になったまま小声で言う麗華が、照れ隠しに更に密着してくる。

そのため、かなり弾力のある麗華のダブルダイナマイトが、哲司の腹筋に押し付けられてくることになるが、幼馴染の麗華にこんな積極的なことをされる覚えの無い無自覚な加害者、哲司は織田裕二似の顔で、口を真一文字にして密着している麗華によこしまな棒を固くして当ててしまわないよう念仏を唱え精神を集中させていた。

(南無阿弥陀仏!麗華いったいどないしてしもたんや・・!?めっちゃくっついてくるやんか・・!唇もめっちゃ近いし、息が・・・麗華の息が当たる・・・当たるといえば胸や!・・柔らかすぎず固すぎず・・・すごい弾力のダブルパワーでめっちゃ押し付けてくるやん!なんでや!?こないだまでツンツンキャラやったのに、こないにキャラが変わられたら戸惑うわ!)

困惑する無自覚な加害者、豊島哲司はあの夜の記憶は途中からまったく無い。

あの日、河川敷の粗大ゴミを、重機を使わず素手で持ち上げてトラックに積み込んだ重労働をしていた哲司はその日喉がカラカラだったのだ。

しかし、いくら酒豪の哲司とはいえ、スピリタスをポカリのようにがぶがぶ飲んでしまったのはいけなかった。

当然哲司は麗華に何をしたのか全く覚えていない。

一方、被害者である麗華は、あの日以降、愛してくれた男の為に自分の仕事が終わったあと、あやしい探偵事務所に勤める彼氏になったはずの哲司の手伝いを健気にしているのであった。

「こういう事件の被害者は、本当に氷山の一角のはずなの。でも被害者の女性で3人もこのクラブの名前を口にしてるのよ」

「・・被害者はもっとたくさんおるってことか」

「そういうこと。最初は頼まれて手伝うって感じだったんだけどさ。調べてるうちにこういうのって許せないなってなってきたのよね・・。特に被害者の人と話しちゃうと・・」

「・・せやな。俺も宏が帰ってくるまでに探偵の仕事ちょっとでも慣れとこう思てやってたんやけどな・・。宏の性格からしてもこういうこと我慢できへんやろうし、宏にうってつけの仕事やと思うで。困った人を助けたいってのもあるやろうけど、宏のええところはそれで見返りとか求めそうにないってところやな。そういう不快なことするやつを排除したいだけっていうのも宏の大きな動機な気がするな・・」

「寡黙でつかみどころないけど、ほんといい人よね。宏君って・・。あのスノウが熱を上げるのもわかるわ・・でも私はお・・」

麗華が言いかけた時、哲司は奥の方でかすかなざわめきを聞き逃さなかった。

「しっ!麗華・・聞こえたやろ?!」

「えっ?なにがしっ!よっ!?」

哲司と違い麗華は聴力を強化してなかったので、聞こえなかったようだ。

哲司は不満顔の麗華には後で謝ることにして、耳に能力を集中させる。

「ガラスが割れた音や!・・・それに・・これは・・」

音楽で聞こえにくいが、哲司に聴力をピンポイントに照準を定めて強化されてしまえば、もはや聞き逃すはずがない。

下卑た男たちの笑い声。

幾人かで何かを引きずる音。

哲司は目星をつけた方向に目を向け視力強化もする。

明らかに視線を阻むように不自然に立っている男たち。

しかし、微かに見えた。

「おい!ちょいまてや!」

急に大声を出した関西弁の男に、周囲で何も知らず踊っていた男女たちが一斉に哲司と麗華に目を向ける。

哲司には一瞬だけ見えたのだ。

見間違いなどではない。

ぐったりした髪の長い女が奥の方へと何人かに抱えられて連れていかれるところを。

「おい!とまれ言うてるやろ!」

人をかき分け進む哲司であったが、その様子に気づいたクラブのボディガードたちが駆け寄ってきたのだ。

「騒がないでください!どうしたんですか?!」

口調は丁寧を装っているが、ボディガードたちは哲司たちを奥に行かせないように立ち、明らかに哲司を威嚇している。

「ほう!・・こりゃ・・ほんまに当たりみたいやな・・」

「ね、ねえ・・。大事になっちゃわない?」

戸惑いを見せる麗華を背に護るようにして少し後退った哲司だったが、先ほどの女の様子を見る限り一刻の猶予もなさそうだと感じていた。

(どこかに連れ去られたら終わりや。証拠も無しにされて、うやむやにされてまう)

「どかへんのやったら無理やり通るだけやで」

「摘まみだせ!」

哲司のドスの効いたセリフに対し、リーダー格の男がボディガードたちに嗾ける。

屈強な男たちが哲司に目掛けて、肉薄する。

「どけ!無駄や!」

哲司は筋骨隆々の身体に似合わず流麗な立ち回りで当身を食らわし、致命傷にならないようボディガード二人を一瞬で失神させてしまった。

クラブ内にいた客たちも、この騒ぎで悲鳴を上げ、この乱闘に巻き込まれないよう入口に駆け出し、店内は軽く恐慌状態に陥ってしまう。

その時である。

「きゃっ!」

麗華をボディガードの一人が背後から羽交い絞めしたのだ。

「おい!やめとけや!その女は・・!」

哲司が叫ぶ。

「おとなしくしろ!女に怪我させたくねえだろ!?・・ひっ!?」

ずどん!

ボディガードは麗華を羽交い絞めにしたままそう哲司に叫んだ直後に地面に叩きつけられたのだ。

「きったない手で触らないでよ!私が大人しく囚われの姫なんてやるわけないでしょ!!」

麗華は羽交い絞めにされたまま、背後の男の首に両手をまわし、そのまま力任せに男を地面に叩きつけたのだった。

柔道技でもなんでもない。

ただ、相手の首とアゴを掴んで、腰を曲げながら前に叩付けただけの荒技である。

到底麗華のような見目麗しい女の子がするようなことではない。

「だからやめとけ言うたのに・・。麗華、もうちょっと手加減せんと殺してしまうぞ?そいつ泡ふいとるやないか」

「はぁはぁ・・だって・・いきなりだったし驚いちゃって」

哲司の身のこなしと、思い掛けない麗華の力技でボディガードたちがたじろいていると、ボディガードたちの背後から小柄なボーイが駆け寄ってきて、リーダー格の男に耳打ちしだした。

小柄なボーイが息を切らしながら何事か囁き終わると、リーダー格の男は焦った顔で小柄なボーイに言う。

「来てらっしゃるのか・・・?このことは知らせるな。俺たちだけで対処する」

ボーイは何度か頷いて了承の意を伝えたが、遅かったようである。

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 14話【回想】 エデンの変 終わり】15話へ続く

第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 15話【回想】 哲司VS銅三郎 紅音VS銀次郎


第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 15話 【回想】 哲司VS銅三郎 紅音VS銀次郎


ボディガードたちの肩を掴み押しのけながら、その男はゆっくりと現れた。

道を開けたボディガードたちの顔は蒼白になっている。

「なんでこんなことになってんだ?」

見た目の風貌には微妙に似合わないのんびりした口調。

その男の目はつぶれているように細いため、常に笑っているように見える。

だが笑顔のような顔でも、好意的な印象は全く相手に与えない。

整髪剤でこってり光ったリーゼント、白いダブルのスーツ越しでもわかる、はちきれんばかりの肉体、身長は2mを超えているだろう。

クロコダイル革の靴のサイズは、30cm以上はあるだろうか。

「ど、銅三郎さん!・・すぐにすみますんで!」

ボディガードのリーダー格の男が気を付けの姿勢になり、蒼白の顔で声を裏返し銅三郎なる巨漢に訴える。

「いや。俺はなんでこんなことになってんの?って聞いてるんだけど?」

銅三郎はその丸太のような腕をリーダー格に向かってにゅと伸ばす。

「ひっ!?ぎゃあああ!」

銅三郎と呼ばれた巨漢はリーダー格の頭を片手で掴み、そのまま持ち上げたのだ。

銅三郎の握力で、みしみしとリーダー格の頭が不吉な音を上げている。

周囲のボディガードたちも自分たちの上司が持ち上げられる姿を見て、恐懼し尻もちをついているものすらいる。

「わっかんないかなぁ?質問にちゃんと答えないと。・・・ってあれ?」

銅三郎に掴まれていた哀れなリーダー格の男は、掴まれたまま動かなくなったのだ。

「あちゃぁ~、強すぎたか・・・じゃあ、こっちに聞こうかな」

銅三郎は動かなくなったリーダー格の頭から手を離すと、すぐ近くにいたボディガードの一人に向け手を伸ばすそぶりを見せた。

「ひぃい!あの男が急に暴れ出したんです!」

床に倒れ動かなくなった上司の二の舞とならぬように、目を付けられたボディガードが悲鳴を上げながらも、哲司を指さし端的に説明する。

「うん・・。なるほど。じゃあ結局お前ら仕事できてないってことじゃねえか」

銅三郎はそう言うと、躊躇なくボディガードの頭を掴みギリギリと頭を締め付け始めたのだ。

「ぎゃああ!すいません!ぎゃああああ!」

この怪異な巨漢は、人の頭をひと掴みできるほどの手の大きさがある。

銅三郎が手に力を入れると、またもやみしみしと不吉な音がしだす。

他のボディガードはその様子を見て逃げ散り、掴まれた男は同僚たちに見捨てられたことも知らず苦痛から悲鳴を上げ続けている。

「やめんかい!」

巨漢の振る舞いを見かねた哲司が、言うが早いか銅三郎の手を手刀で強かに打ちつけたのだ。

哲司の手刀で銅三郎の手から逃れたボディガードはその場に倒れ込み、頭を握りつぶされかけた激痛で頭を抱えてのたうち回っている。

「痛てえなあ。てめえ誰だ?うちのもんの教育の邪魔してなんのつもりだ?」

哲司に打たれた手首を摩りながら、正面に哲司を捉えのそりのそりと歩を進めてくる。

「麗華!こいつは俺に任せて行ってくれ!奥の部屋や。女の子が連れていかれたはずや!」

「で、でも!」

「大丈夫や。なんてことあらへん。すぐに追いつくから心配せんといってくれ。それよりこの店の外に連れ去られてしもたらどこに行ったか分からへんようになる!行ってくれ!」

哲司は銅三郎から目を逸らさず、背後の麗華とやり取りし、麗華が通る道をつくるために、のそのそと向かってきている銅三郎に一気に距離を詰めた。

常人には到底とらえられない速度である。

「お兄さん頑丈そうやし、ちょいと強めにいくで!」

「おぉ?!」

油断から一瞬で懐まで潜り込まれた銅三郎は、素っ頓狂な声を上げてしまって哲司の渾身の当身を腹部にもろに受けてしまう。

どしん!と鈍い音が響き、銅三郎の身体が衝撃でビクリと揺れる。

その機を逃さず、麗華は脚力を強化し一気に駆け抜け、奥の扉まで跳躍した。

しかし、その跳躍した麗華の足を銅三郎が掴んだのだ。

「なんやて?!」

「えっ!?なに?!」

殴った哲司も驚きの声を上げ、麗華も予想だにしなかった足への感触に驚き声を上げてしまう。

(つ、掴まれた!?哲司に殴られて動けないんじゃないの?それにこの速度なのに私の足を掴んだっ?!)

「離さんかい!」

足を掴まれていた戦慄から我に返った麗華が反撃するよりも早く、気炎を吐いて哲司が銅三郎の手首を再び打ち上げ気味の手刀で払ったのだ。

「麗華!行け!」

そういう哲司の顔に、先ほどまで表情にあった余裕はない。

この一瞬のやり取りで麗華にも分かった。

風貌怪異な巨漢はそれほどの相手だということだ。

「でも!」

麗華も哲司のセリフと表情で、瞬時にこの巨漢相手に自分では足手まといになると察したものの、だからこそ恋人をこんな強敵の前に置いていきたくない。

「ええから!俺なら大丈夫や!楽勝やから心配せんと行ってくれ!連れ去られた子は見た感じ意識ないはずや。連れて行かせんといてやってくれ!頼む麗華」

「わ、わかったわ!でも・・早く来てよね!」

哲司と目があったのは一瞬だけだったが、麗華は哲司を信じることにし、そう言って奥の扉を勢いよく開けて駆けて行く。

「頼んだで麗華」

麗華が行ってくれたことに安堵した顔になった哲司は、再び銅三郎なる巨漢に向きなおる。

「いってぇ。楽勝だとぉ?てめえ・・ミンチにしてやるぜ」

手刀で打たれた手首を摩り、殴られた腹あたりを手でパンパンと払った銅三郎が怒りで顔を赤くして哲司を睨みつけてくる。

といっても目はつぶれたように細いので、睨んでいるかどうかはわかりにくい。

そして、そう言う銅三郎は、哲司の攻撃に対し、ほとんどダメージらしいものを負った様子はない。

「おいおい、ミンチにしてやるって穏やかなやいな。俺らは客やのに店の店員らが俺らをいきなり襲ってきよったんやで?それに、なんや奥の部屋に気失った女の子引っ張りこむんが見えたんや。・・おまえらやっぱりこんなことしてるんやな?」

銅三郎は哲司のその問いかけにはこたえず、距離を詰めてくる。

(やっぱりそういうことかい)

銅三郎の反応に確信を持つと、近づいてくる巨漢との戦闘は避けられないと察した哲司は、肩をコキコキと鳴らして上着を脱ぎ棄てる。

上着を脱いだことで哲司の筋骨たくましい肉体をタンクトップという生地の少ない服が強調するが、目の前に銅三郎のような巨漢がいると、哲司の隆々とした肉体ですら小さく見えてしまう。

(腹に入れたんはかなり手加減したけど、最後の手刀は手首折るつもりぐらいでやったんやぞ!・・・こいつめちゃめちゃ強いやんけ!それに見た目からして完全にスジもんやなないかい!スジもんにもこんな気合入った能力者がおるんかいな!麗華の速度にも難なくついていってたし・・こりゃやばいもしれへんな・・)

表情こそ織田裕二似の顔で眉間にしわを寄せ、渋く決めてはいるが、哲司の内心は銅三郎の想定外すぎる強さと、ヤクザ者と殴り合いをしてしまうと今後どうなるのだろうかということに焦りまくっていた。

倒れているボディガードと哲司と銅三郎以外、ホールの人はすでに外に逃げていない。

細い目の為に笑っているように見える表情の銅三郎。

しかし、笑っているのではないのは明白である。

「兄ちゃん、覚悟はできてるよな?」

銅三郎はそう言うと、腕を思いきり振りかぶり哲司に襲い掛かってきた。

・・・・・・・・・・・・・・

一方、エデンのVIP室が多く集中する地下室3階では、紅音は用を終え部屋を後にしかけたところであった。

「じゃあまた来るわ銀次郎。何か進展があったらすぐ教えてよね」

かなり不本意な金額を要求されたが、「七光り」を貶めることができそうなことに溜飲をさげることにした紅蓮こと緋村紅音は、そう言いながら銀次郎に背を向け手をひらひらと振ってドアに向かう。

しかし、銀次郎は帰ろうとする紅音の背を一歩追うようにして歩を進めると、手を紅音の肩に置いた。

「ちょっと待て。お前の要件はそれで済んだんだろうが、こっちにはまだ用があるんだよ」

銀次郎の言葉に、紅音は歩みを止め顔だけ振り返り「なによ」とそっけなく言う。

「来春、宮コーに入るんだってな?」

銀次郎の言葉に紅音の目じりが吊り上がった。

紅音は肩に置かれた銀次郎の巨大な手をゆっくり払って、向き直る。

紅音の表情は緊張感があふれ周囲の空気がやや捻じれるほどの、オーラが収束しだす。

「私のこと・・・調べたの?」

巨漢の銀次郎と間近で対峙しているため、紅音はほぼ見上げるような恰好であったが、目じりを釣り上げたまま低い声で聴き返した。

「悪いとは思ったが、おまえさんどう見ても普通じゃねえからな。興味持つなってのが無理だぜ。その尋常じゃねえオーラ量、オーラを炎に変換する高度な技術、さっきみせた肉体強化も相当なもんだ。それになにより、女だてらにその肝っ玉。・・・さっきはうちの組織に入るのは袖にされちまったが、緋村、お前さんが宮コーに入るってのも悪かねえんだよ。俺たちとしちゃあな・・・」

紅音を見下ろしながら肩をやや竦めてそういう銀次郎だったが悪びれた様子は見受けられない。

むしろ前のめり的に、小柄な紅音に覆いかぶさるように口説いている話の続きなのだ。

組織にも引き込めず、自身の女としても囲えないなら、宮コーという強力な巨大企業へのパイプ役を紅音に担わそうとしているのである。

しかし、銀次郎の好意的な勧誘にもかかわらず、紅音は両手を開き気味にして腰当たりで開き、手のひらを銀次郎に向け、完全に警戒体制だ。

見るものが見ればわかる。

紅音の両の掌には練られたオーラが収束し、危険な量で纏わりついていう。

紅音ほどの術者がこれほど練り上げたオーラなら、周囲を巻き込む大火災を一瞬で発動させることが可能だろう。

ただ室内なので、威力を抑えなければという冷静さを紅音は当然持っている。

熱で建物が崩落してしまうと、いかに紅音といえども深刻なダメージを受けかねない。

しかし炎の威力を弱めて発動したとしても、室内では紅音自身も炎にまかれてしまうことはわかっている。

ただそれは炎の強さを、自身を覆う防御オーラ以下の火力にすればいい。

そして、その操作は紅音にとってたやすいことであった。

能力を発動させるときは全力で発動したい紅音にとってはストレスになるが、紅音は致し方なしと内心で舌打ちして納得することにする。

「落ち着けよ。悪い話じゃねえ」

紅音の危険すぎる雰囲気を察してなお銀次郎は動ずる素振りすらみせない。

紅音の炎に耐えきる自信があるのだ。

それが過信か確信なのかは別として、銀次郎のその態度は紅音を相当イラつかせた。

「とっとと続きを言いなさいよ」

先ほどより紅音の声量は大きくなってきている。

紅音は我慢や駆け引きは好きではない。

紅音には当然銀次郎の勧誘内容が大体推測できているが、直接聞かないと納得できない性格でもある。

「宮コーが一昨年に1社、そして今年に入って2社、大手ゼネコンを傘下にしたのは知ってるよな?」

「バカにしてんの?もちろん知ってるわよ」

紅音にとっては知ってて当たり前のことを聞かれ、イラついた口調で銀次郎に返す。

「俺たちの仕事にも影響することだ。うちは公共工事にも絡んでるからな。それなのによう、宮コーが国内大手5社のうち3社も傘下にするなんてとんでもねえ。金だけの問題じゃねえのは明らかだ。あんなでけえゼネコンなら国土交通省からの天下りもたくさんいる。それなのにいくら資金力があるからって一企業である宮コーが3社も買い付けるなんてのは無茶苦茶だ。ゼネコンは官僚や政治家どもと太いつながりがあるんだぞ。それに宮コーが入札を牛耳りだすと俺らのシノギが少なくなるってわけだ」

「でしょうね。で?それが?」

紅音は、銀次郎の不満にイラついた口調ながらも冷ややかかにこたえる。

「そこで緋村、おまえさんだよ。調べさせてわかったんだが、ただの新卒入社じゃねえ。成績もずば抜けてたみてえだが、それだけじゃねえ。小中高、大学も宮コーの支援をうけてる超がつく特待生じゃねえか。宮コーを改めてすげえと思ったぜ。ずっと前から緋村の才能を見出して資金をつぎ込んでたってことだ。そんな緋村をただの新卒どもと同じように扱うわけねえと思ったら案の定ってわけだ。おまえさん、いきなり秘書主任って幹部職での採用なんだってな。こりゃ俺たちにとっちゃ都合がいいってわけだってことになったんだよ」

「・・・・へぇ」

紅音は低い声でそう言って、目をすぅと細める。

「だからよ。お前みたいなのがうちに入ってくれりゃあとは思ったんだが、ダメならセカンドプランを提示しろって兄貴に言われてんだ。俺としちゃあ、お前みたいな上玉の能力者が入ってくれるにこしたこたぁないんだがな・・。いいもんだぜ?アウトローもよ。それにお前みてえな好みの上玉を逃したくねえんだよな」

銀次郎は、紅音の警戒レベルがレッドゾーンに突入したことには気づいていたが、それでもなお続けた。

怪異な容貌の銀次郎が好色そうに笑みを浮かべ、紅音を改めてしげしげと嘗めるように眺めまわす。

「今すぐに返事が欲しいな。うちに入るか、宮コーに入って俺らに協力するか・・。でないと、入社直後に幹部職員に確定してるようなエリートさんがこんな依頼しただなんてバレちまったら困るんじゃねえのか?このさいおとなしく俺の女に収まっとくほうが面倒はおきねえし、うちに入った後も俺の女ってだけで顔が利くぜ?」

紅音は駆け引きも交渉も好きではない。

駆け引きは自分より低能な者にしか通じない技法であり、交渉などは対等に近い二者間で有用な手法である。

紅音は誰に対しても、自分はそのどちらでもないという自負があった。

だからこそ、格下のみに通用する『脅し』という行為は、紅音にとって到底我慢できる行為ではないのだ。

紅音のことを調べたにしては、銀次郎は紅音の気性までは調べ切れていなかったのであろう。

紅音にとってはごく自然なことだが、紅音は当然キレた。

(万死に値するわ!)

コンマ1秒にも満たぬ時間で紅音の掌にオーラが収束し、能力が発動する。

「爆ぜろっ!!」

紅音の突き出した両手のひらの先端から、深紅の熱線が銀次郎に向かってうねる龍のごとく襲い掛かった。

ずあっ!どおぉおおおん!

龍のように見えた炎の濁流は銀次郎を一気に包み込み、そのまま勢いを殺さず銀次郎の背後にあった黒檀に机を灰にしてそのまま壁に激突して、部屋中を舐りつくすように舞い上がったのであった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、エデンの1階のダンスホールでは二人の男が対峙していた。

ずどおぉおん!

「なんや!?」

哲司は銅三郎のボーリングの玉ほどもある拳を躱して、建物を揺さぶった轟音と振動の気配を探る。

「ちょこまかうごくんじゃねえ!」

火災報知器がけたたましい音を立てて鳴り響きだしたが、銅三郎はそれにはまったく関心を示さない。

銅三郎は哲司にすっかりご執心である。

「こんなときに火事かい?どっからや?!」

奥の扉とは別の非常口と書かれた扉から、悲鳴をあげながら大挙して人がダンスホールに入ってくる。

しかし逃げ出した者たちは、哲司や銅三郎たちにはほとんど見向きもせず、そのまま玄関口や裏口に向かってしてゆく。

避難する人たちには全く関心がない素振りで、銅三郎は先ほどから何発か哲司からもらっている個所をさすって苛立ちをその顔面にあらわにしていた。

なぜなら、銅三郎の攻撃は一度も哲司に当たっていないのである。

銅三郎の細い目のせいで笑顔のように見えるが、顔面は怒りで真っ赤だ。

「何が起こってんや・・?ここでこいつとやりあってる場合やないんやないか?」

頭に血が上っている銅三郎とは裏腹に、哲司は考えるべきことがさらに増え冷静を通り越し、焦り始めていた。

銅三郎の打たれ強さから推測するに、攻撃力も相当であると見当がつく。

それゆえ、哲司は必殺の間合いを詰め切れずにいるのだ。

それにくわえて麗華の安否、そしてこの爆発音である。

警察や消防が現場に来るのも時間の問題だろう。

しかし、目の前の銅三郎なる巨漢のヤクザの身のこなしや強さ、そして目は細くて確認しずらいが、隙がないと哲司の直感が言っている。

やり過ごすのも無理だし、逃げ出すのも無理だということだ。

哲司は覚悟を決めた。

雑念をすっぱり捨て、ふぅーと大きく息を吐き、腰を低くして構えなおす。

そして、不敵な笑みを浮かべると、銅三郎のような巨漢に対しいては明らかに挑発となるセリフを投げかけた。

「力の強さ比べといこか!?」

【第11章 人工島カジノ計画に渦巻く黒き影 15話 【回想】 哲司VS銅三郎 紅音VS銀次郎 終わり】16話へ続く
筆者紹介

千景

Author:千景
訪問ありがとうございます。
ここでは私千景が書いた小説を紹介させて頂きたいと思います。
ほぼ私と同年代の既婚者が主役のものになるかと思います。登場人物同士が
つながりを持っていて別の物語では最初の物語の主人公が脇役を務める様な
小説全体につながりを持たせ想像を膨らませていけたらと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します

最新記事
最新コメント
リンク
カテゴリ
ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へ
にほんブログ村
アダルトブログランキングへ
  • SEOブログパーツ
ご拝読ありがとうございます
ご拝読中
現在の閲覧者数:
問い合わせフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
官能小説 人妻 

ランキング